(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022074989
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ディスプレイ用封止剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20220511BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20220511BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C09K3/10 B
C09K3/10 Z
C09K3/10 E
C09K3/10 L
C08F299/02
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185488
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武藤 正嘉
(72)【発明者】
【氏名】舘野 将輝
【テーマコード(参考)】
4H017
4J127
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AA31
4H017AB01
4H017AB08
4H017AC03
4H017AD06
4H017AE05
4J127AA03
4J127BA151
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
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4J127BD182
4J127BD201
4J127BF361
4J127BF36X
4J127BF371
4J127BF37X
4J127BG031
4J127BG03X
4J127DA12
4J127DA46
4J127EA12
4J127FA15
4J127FA21
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】
本発明は、フレキシブルディスプレイや湾曲形状のディスプレイにも適用できるディスプレイ用封止剤に関する。より詳細には、ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートを含有するディスプレイ用封止剤に関する。このディスプレイ用封止剤は、被着体との接着強度に優れ、柔軟性と低透湿性を両立している為、特に有機膜との接着性が要求されるディスプレイやフレキシブルディスプレイ、湾曲形状のディスプレイ用封止剤として有用である。
【解決手段】
ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートを含有するディスプレイ用封止剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートを含有するディスプレイ用封止剤。
【請求項2】
更に、硬化性化合物を含有する請求項1に記載のディスプレイ用封止剤。
【請求項3】
更に、有機フィラーを含有する請求項1または2に記載のディスプレイ用封止剤。
【請求項4】
前記有機フィラーが、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、及びスチレンオレフィン微粒子からなる群より選択される1又は2以上の有機フィラーである請求項3に記載のディスプレイ用封止剤。
【請求項5】
更に、熱硬化剤を含有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のディスプレイ用封止剤。
【請求項6】
更に、光ラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のディスプレイ用封止剤。
【請求項7】
更に、熱ラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のディスプレイ用封止剤。
【請求項8】
液晶滴下工法用液晶シール剤である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のディスプレイ用封止剤。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤によって封止された液晶ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルディスプレイや湾曲形状のディスプレイにも適用できるディスプレイ用封止剤に関する。このディスプレイ用封止剤は、柔軟性と低透湿性を両立できるものである為、特にフレキシブルディスプレイや湾曲形状のディスプレイ用封止剤として有用である。
また、本発明のように柔軟性に富んだ封止剤は、被着体との接着強度に優れる為、高接着強度が要求される用途においても有用である。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用封止剤とは、例えば液晶ディスプレイ用シール剤、有機ELディスプレイ用封止剤やタッチパネル用接着剤等を挙げることができる。これらの材料として共通していることは、優れた硬化性を有しながら、アウトガスが少なく、表示素子にダメージを与えないという特性が要求される点である。
最近では、湾曲した形状のディスプレイや、フレキシブル性に富んだディスプレイが開発され製品化されている。こういったディスプレイに使用される基板は、従来のガラスのような剛直なものに代わって、プラスチックフィルムのような柔軟なものが使用されている(特許文献1)。
こういった背景から、ディスプレイ用封止剤には基板等のたわみに追従するような、すなわち硬化後においても柔軟であるという性質が要求されつつある。
【0003】
また、柔軟性に優れる封止剤は、接着強度においても有利である。例えば、衝撃による剥離や機材破壊を軽減することができる。この観点からも、封止剤に対する柔軟性付与という要求は高くなっている。
【0004】
一方、硬化物の柔軟性を高めるためには、硬化物の架橋密度を下げることが有効な手段である。しかし、架橋密度が下がると透湿性を悪化させるのが通常である。これはネットワークの緩い部分から水分が侵入する為であると考えられる。従って、低透湿性を担保する為には、架橋密度を下げずに柔軟性を高めるか、架橋密度は下げるが透湿性を悪化させないという、相反する特性の実現が必要となる。
【0005】
従来、接着強度向上の観点から、柔軟性を有する表示素子用接着剤の開発は行われてきた(特許文献2)。しかし、上記の柔軟な基板に適応するための十分な性能を備えたものは未だ実現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-238005号公報
【特許文献2】特開2016-24240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フレキシブルディスプレイや湾曲形状のディスプレイにも適用できるディスプレイ用封止剤に関する。より詳細には、ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートを含有するディスプレイ用封止剤に関する。このディスプレイ用封止剤は、柔軟性と低透湿性を両立し、接着強度にも優れるものである為、ディスプレイ用封止剤として有用である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートを含有するディスプレイ用封止剤が柔軟性と低透湿性に非常に優れることを見出し、本発明に至ったものである。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味する。
【0009】
即ち本発明は、次の[1]~[9]に関するものである。
[1]
ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートを含有するディスプレイ用封止剤。
[2]
更に、硬化性化合物を含有する前項[1]に記載のディスプレイ用封止剤。
[3]
更に、有機フィラーを含有する前項[1]または[2]に記載のディスプレイ用封止剤。
[4]
前記有機フィラーが、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、及びスチレンオレフィン微粒子からなる群より選択される1又は2以上の有機フィラーである前項[3]に記載のディスプレイ用封止剤。
[5]
更に、熱硬化剤を含有する前項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のディスプレイ用封止剤。
[6]
更に、光ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]乃至[5]のいずれか一項に記載のディスプレイ用封止剤。
[7]
更に、熱ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]乃至[6]のいずれか一項に記載のディスプレイ用封止剤。
[8]
液晶滴下工法用液晶シール剤である、前項[1]乃至[7]のいずれか一項に記載のディスプレイ用封止剤。
[9]
前項[8]に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤によって封止された液晶ディスプレイ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のディスプレイ用封止剤は、柔軟性と低透湿性を両立し、接着強度にも優れるものである為、ディスプレイ用封止剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のディスプレイ用封止剤は、ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートを含有する。ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートは併用して用いても構わない。
本願において、ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとは、ダイマー酸変性エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であって、エポキシ基が残存しないものをいい、ダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートとは、ダイマー酸変性エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であって、一分子内にエポキシ基と(メタ)アクリル基を併せ持つものをいう。
【0012】
ダイマー酸変性エポキシ樹脂とは、ダイマー酸で変性したエポキシ樹脂をいう。ダイマー酸変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は100~1000g/eqであることが好ましく、300~800g/eqであることがさらに好ましい。
ダイマー酸変性エポキシ樹脂としては、例えば、jER871、jER872(三菱ケミカル社製)、新日鐵化学(株)製の商品名YD-171、YD-172(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等などが挙げられる。
【0013】
本発明のディスプレイ用封止剤は、ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、ダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートを含有するため、柔軟性を有しつつ低透湿性にも優れる。ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレートの含有量は、ディスプレイ用封止剤の総量中、5~50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10~40質量%である。
【0014】
柔軟性は、弾性率や巻き付け試験で評価することができる。紫外線3000mJ/cm2(測定波長:365nm)照射後に130℃40分の条件で硬化させた100μmの厚みの硬化物の弾性率としては室温(25℃)において100MPa以上3000MPa以下であることが好ましく、300MPa以上2500MPa以下であることが更に好ましく、400MPa以上2000MPa以下であることが特に好ましい。上記範囲のディスプレイ接着剤は、ディスプレイに掛かる応力に追従することができることから好ましいと言える。
【0015】
巻き付け試験は、長さ50mm、幅5mm、厚さ0.1mmのサンプル片を直径4mmの棒に巻き付けて、10秒間固定した際に、試験片が割れないものであることが好ましい。
【0016】
透湿性としては、300μmの厚みの硬化物において、透湿度が80g/m2*24h以下であることが好ましく、70g/m2*24h以下であることがさらに好ましく、60g/m2*24h以下であることが特に好ましい。
【0017】
[硬化性化合物]
本発明のディスプレイ用封止剤は、ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、ダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレート以外の硬化性化合物を含有してもよい。
硬化性化合物としては、光や熱等によって硬化する化合物であれば特に限定されないが、(メタ)アクリル基またはエポキシ基を有する化合物である場合が好ましく、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン化合物である場合が特に好ましい。
【0018】
[(メタ)アクリレート]
(メタ)アクリレートの具体例としては、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルジアクリレートやネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルのε-カプロラクトン付加物のジアクリレート等のモノマー類を挙げることができる。好ましくは、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0019】
[エポキシ(メタ)アクリレート]
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性の観点から適切に選択される。
なお、エポキシ基の一部をアクリルエステル化する部分エポキシ(メタ)アクリレートが好適に使用される。この場合のアクリル化の割合は、30~70%程度が好ましい。
【0020】
[ウレタン(メタ)アクリレート]
ウレタン(メタ)アクリレートはウレタン構造特有の柔軟な骨格を有していることにより、硬化物が柔軟かつ低透湿性の特性を有し、フレキシブルディスプレイにおける折り曲げにも追従することができるため、硬化性化合物として使用することが好ましく、ポリエステル構造を有するものを使用することがさらに好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)ポリオールと(b)有機ポリイソシアネートと(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応して、常法で合成することにより得ることができ、必要に応じて錫化合物等の触媒を使用する。
ウレタン(メタ)アクリレートの合成においては、前記成分(a)の水酸基1当量に対して、成分(b)のイソシアネート基1.1~2.0当量を反応させることが好ましく、1.3~2.0当量を反応させることが特に好ましい。反応温度は、室温(25℃)~100℃が好ましい。
成分(a)と成分(b)との反応物中のイソシアネート基1当量あたり、成分(c)中の水酸基0.95~1.1当量を反応させることが好ましい。反応温度は、室温(25℃)~100℃が好ましい。
【0021】
(a)ポリオールの具体例としては、トリシクロデカンジメタノール、水素化ポリブタジエンポリオール、ダイマージオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-イコサンジオール、1-メチル-1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリ(n≒2~20)エトキシジオール、ビスフェノールAポリ(n≒2~20)プロポキシジオール等のジオール(a-1)、これらジオール(a-1)と二塩基酸又はその無水物(例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸あるいは、これらの無水物)との反応物であるポリエステルジオール(a-2)等を挙げることができる。好ましくは、トリシクロデカンジメタノール、ダイマージオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びそのポリエステルジオールを挙げることができる。
成分(a)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。
【0022】
(b)有機ポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4、4’-シクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジメリルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3、3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。好ましくは、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。
【0023】
(c)水酸基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレートのGPCにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量の下限値が1000以上であることが好ましく、更に好ましくは2000以上、特に好ましくは3000以上、最も好ましくは4000以上である。また、上限値は10000以下であることが好ましく、更に好ましくは8000以下、特に好ましくは7000以下、最も好ましくは6000以下である。上記範囲にあることにより、柔軟性、透湿性を良好に保ちつつ、ディスプレイ用封止剤の粘度が適切な範囲となる。
【0025】
[エポキシ樹脂]
本発明の態様として、硬化性化合物中に、エポキシ樹脂が含有される場合も好ましい。
エポキシ樹脂としては特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。また、ダイマー酸変性エポキシ樹脂を使用することも好ましい態様の1つである。
【0026】
[ポリブタジエン化合物]
また、硬化性化合物中に、エポキシ基または(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物を用いることも本発明の好ましい態様である。エポキシ基を有するポリブタジエン化合物としては、例えば、日本曹達株式会社製JP-100、JP-200として市場から入手することができる。(メタ)アクリル基を有するポリブタジエン化合物としては、例えば、日本曹達株式会社製TEAI-1000、TE-2000として市場から入手することができる。
これらポリブタジエン化合物の数平均分子量は、ディスプレイ用封止剤からの発ガスや、液晶周辺材料、例えば液晶シール剤として用いる場合の液晶汚染性低減の観点から、成分下限は500が好ましく、更に好ましくは750、特に好ましくは1000である。また、ハンドリング性の観点から、数平均分子量の上限は10000が好ましく、更に好ましくは8000、特に好ましくは6000である。
【0027】
硬化性化合物は上記の材料を単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明のディスプレイ用封止剤において、硬化性化合物を使用する場合には、ディスプレイ用封止剤の総量中、10~95質量%であることが好ましく、さらに好ましくは20~90質量%である。
【0028】
[有機フィラー]
本発明のディスプレイ用封止剤は、有機フィラーを含有しても良い。上記有機フィラーとしては、例えばウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子及びシリコーン微粒子が挙げられる。なおシリコーン微粒子としてはKMP-594、KMP-597、KMP-598(信越化学工業製)、トレフィルRTME-5500、9701、EP-2001(東レダウコーニング社製)が好ましく、ウレタン微粒子としてはJB-800T、HB-800BK(根上工業株式会社)、スチレン微粒子としてはラバロンRTMT320C、T331C、SJ4400、SJ5400、SJ6400、SJ4300C、SJ5300C、SJ6300C(三菱化学製)が好ましく、スチレンオレフィン微粒子としてはセプトンRTMSEPS2004、SEPS2063が好ましい。
これら有機フィラーは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また2種以上を用いてコアシェル構造としても良い。これらのうち、好ましくは、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子であり、アクリル微粒子であることが特に好ましい。
上記アクリル微粒子を使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、特に好ましくはコア層がn-ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが好ましい。これはゼフィアックRTMF-351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
また、上記シリコーン微粒子としては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体等があげられる。また、複合シリコーンゴムとしては、上記シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆したものがあげられる。これらの微粒子のうち、特に好ましいのは、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋粉末のシリコーンゴム又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。これらのものは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、好ましくは、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状が良い。本発明のディスプレイ用封止剤において、有機フィラーを使用する場合には、ディスプレイ用封止剤の総量中、5~50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5~40質量%である。
【0029】
[熱硬化剤]
本発明のディスプレイ用封止剤は、熱硬化剤を添加して、反応性の向上を図ることができる。
熱硬化剤としては、例えば、分子内に芳香環に結合したカルボキシ基を有する化合物、多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド等を挙げることができる。ただしこれらに限定されるものではない。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジンジヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジドであれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4-シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’-ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド、トリス(1-ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3-ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1-ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3-ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
【0030】
[硬化促進剤]
本発明のディスプレイ用封止剤は、硬化促進剤を添加して、さらに反応性の向上を図ることができる。硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2-カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル-4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明のディスプレイ用封止剤において、硬化促進剤を使用する場合には、ディスプレイ用封止剤の総量中、0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
[光ラジカル重合開始剤]
本発明のディスプレイ用封止剤は、光ラジカル重合開始剤を含有しても良い。光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2-エチルアンスラキノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9-フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、OXE03、OXE04、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTMTPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。これらの中で、好ましくは、オキシムエステル系開始剤であるIRGACURERTMOXE01、OXE02、OXE03、OXE04である。
また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用する事が好ましく、例えば2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2メチル-1-プロパン-1-オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
本発明のディスプレイ用封止剤において、光ラジカル重合開始剤を使用する場合には、ディスプレイ用封止剤総量中、0.001~3質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.002~2質量%である。
【0032】
[熱ラジカル重合開始剤]
本発明のディスプレイ用封止剤は、熱ラジカル重合開始剤を含有して、硬化速度、硬化性を向上することができる。
熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH-50L、BC-FF、カドックスB-40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22-70E、23-C70、121、121-50E、121-LS50E、21-LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP-70、TMPO-70、CND-C70、OO-50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC-75、AIC-75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。
【0033】
また、アゾ化合物としては、VA-044、086、V-070、VPE-0201、VSP-1001(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0034】
熱ラジカル重合開始剤の含有量としては、本発明のディスプレイ用封止剤の総量中、0.0001~10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005~5質量%であり、0.001~3質量%が特に好ましい。
【0035】
本発明のディスプレイ用封止剤には、さらに必要に応じて、無機フィラー、シランカップリング剤、ラジカル重合防止剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。
【0036】
[無機フィラー]
上記無機フィラーとしては、シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムが挙げられるが、好ましくはシリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。
無機フィラーの平均粒子径は、大きすぎると狭ギャップの液晶表示セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、2000nm以下が適当であり、好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。また好ましい下限は10nm程度であり、さらに好ましくは100nm程度である。粒子径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS-30)により測定することができる。
本発明のディスプレイ用封止剤において、無機フィラーを使用する場合には、ディスプレイ用封止剤の総量中、5~50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5~40質量%である。無機フィラーの含有量が5質量%より低い場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機フィラーの含有量が50質量%より多い場合、フィラー含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0037】
[シランカップリング剤]
上記シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。本発明のディスプレイ用封止剤において、シランカップリング剤を使用する場合には、ディスプレイ用封止剤総量中、0.05~3質量%が好適である。
【0038】
[ラジカル重合防止剤]
上記ラジカル重合防止剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2-ヒドロキシナフトキノン、2-メチルナフトキノン、2-メトキシナフトキノン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-メトキシピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチル-4-フェノキシピペリジン-1-オキシル、ハイドロキノン、2-メチルハイドロキノン、2-メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール、ステアリルβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β―(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン]、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-sec-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4-メトキシ-1-ナフトール、チオジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA-81、商品名アデカスタブLA-82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系、ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2-ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-P-クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明のディスプレイ用封止剤総量中、0.0001~1質量%が好ましく、0.001~0.5質量%が更に好ましく、0.01~0.2質量%が特に好ましい。
【0039】
本発明のディスプレイ用封止剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、ダイマー酸変性エポキシ(メタ)アクリレートまたはダイマー酸変性部分エポキシ(メタ)アクリレート、必要に応じて光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、ラジカル重合防止剤を加熱溶解する。次いで室温まで冷却後、必要に応じて熱硬化剤、硬化促進剤、有機フィラー、無機フィラー、シランカップリング剤、消泡剤、及びレベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明のディスプレイ用封止剤を製造することができる。
【0040】
また、本発明のディスプレイ用封止剤は、液晶表示セル用接着剤として、特に液晶シール剤として非常に有用である。本発明のディスプレイ用封止剤を液晶シール剤として用いた場合の、液晶表示セルについて、以下に例を示す。
【0041】
本発明の液晶表示セル用接着剤を用いて製造される液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80~120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90~130℃で30分~2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。また光熱併用型として使用する場合は、紫外線照射機により液晶シール剤部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500~6000mJ/cm2、より好ましくは1000~4000mJ/cm2(測定波長:365nm)の照射量が好ましい。その後必要に応じて、90~130℃で30分~2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、2~8μmであることが好ましく、さらに好ましくは4~7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量部に対し0.1~4質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~2質量部、特に好ましくは0.9~1.5質量部程度である。
【0042】
本発明のディスプレイ用封止剤は、硬化性、異なる被着体への接着性、耐湿熱信頼性の要求される分野の接着剤用途の使用に非常に適するものである。例えば液晶シール剤、有機EL用封止剤、タッチパネル用接着剤である。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0044】
[合成例1:ダイマー酸変性エポキシ樹脂エポキシアクリレート(A)の合成]
ダイマー酸ポリエステル型エポキシ樹脂102.0g(製品名:jER871、三菱ケミカル株式会社製 エポキシ当量:451.61g/eq)をトルエン120gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.4gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸17.5gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的の化合物110gを得た。
【0045】
[合成例2:ダイマー酸変性エポキシアクリレート(B)の合成]
ダイマー酸ポリエステル型エポキシ樹脂107.6g(製品名:jER872、三菱ケミカル株式会社製 エポキシ当量:672.37g/eq)をトルエン120gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.4gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸11.5gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的の化合物111gを得た。
【0046】
[合成例3:ダイマー酸変性部分エポキシアクリレート(A)の合成]
ダイマー酸ポリエステル型エポキシ樹脂エポキシ樹脂110.0g(製品名:jER871、三菱ケミカル株式会社製 エポキシ当量:451.61g/eq)をトルエン120gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.4gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の50%当量のアクリル酸8.8gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約8時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的の化合物105g(エポキシ当量:903.23g/eq)を得た。
【0047】
[合成例4]
市販ベンゾピナコール(東京化成製)100部(0.28モル)をジメチルホルムアルデヒド350部に溶解させた。これに塩基触媒としてピリジン32部(0.4モル)、シリル化剤としてBSTFA(信越化学工業製)150部(0.58モル)を加え70℃まで昇温し、2時間攪拌した。得られた反応液を冷却し、攪拌しながら、水200部を入れ、生成物を沈殿させると共に未反応シリル化剤を失活させた。沈殿した生成物をろ別分離した後十分に水洗した。次いで得られた生成物をアセトンに溶解し、水を加えて再結晶させ、精製した。目的の1,2-ビス(トリメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタンを105.6部(収率88.3%)得た。
【0048】
[実施例1~4、比較例1~3]
下記表1に示す割合でダイマー酸変性エポキシアクリレート、ダイマー酸変性部分エポキシアクリレート、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤、ラジカル重合防止剤を90℃で加熱溶解させた後、室温まで冷却し、熱硬化剤、硬化促進剤、有機フィラー、無機フィラー、シランカップリング剤を添加し、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、ディスプレイ用封止剤を調製した。
【0049】
[評価]
[透湿度]
実施例及び比較例で製造されたディスプレイ用封止剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み、厚み300μmの薄膜としたものにUV照射機により3000mJ/cm2(測定波長:365nm)の紫外線を照射後、オーブンに投入して130℃40分熱硬化させ、硬化後PETフィルムを剥がしてサンプルとした。サンプルの60℃90%での透湿度を透湿度測定機(Lessy社製:L80-5000)にて測定した。
【0050】
[弾性率]
実施例及び比較例で製造されたディスプレイ用封止剤をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み、厚み100μmの薄膜としたものにUV照射機により3000mJ/cm2(測定波長:365nm)の紫外線を照射後、オーブンに投入して130℃40分熱硬化させ、硬化後PETフィルムを剥がしてサンプルとした。サンプルをテンシロン万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、RTG-1210)を用いて、室温(25℃)下、試験速度5mm/分で引張試験を行い測定した。
【0051】
[巻きつけ試験]
弾性率測定方法と同様の方法によりシール剤硬化膜を作製し、長さ50mm、幅5mm、厚さ0.1mmの長方形上にカットし、サンプル片とした。得られたサンプル片からPETフィルムを剥がして、直径4mmの棒に巻き付けて、10秒間固定した。サンプルを観察して試験片が割れないものを○、試験片が割れたものを×として評価した。
【0052】
[接着強度]
ガラス基板に配向膜液(日産化学株式会社製:NRB-U738)をスピンコートし、80℃ホットプレートで3分仮焼きを行い230℃オーブンで30分焼成した。さらに、この配向膜付き基板をUV照射機により500mJ/cm2(測定波長:254nm)の紫外線を照射させ、さらに230℃オーブンで30分焼成した。
実施例及び比較例で製造されたディスプレイ用封止剤100gにスペーサとして5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌を行う。配向膜を塗布したガラス基板上に、このディスプレイ用封止剤を1cm×1cmのコーナー部分を再現する形で塗布し、対向の配向膜塗布基板を貼り合わせUV照射機により3000mJ/cm2(測定波長:365nm)の紫外線を照射後、オーブンに投入して130℃40分熱硬化させた。その配向膜塗布ガラス基板の引き剥がし接着強度をボンドテスター(西進商事株式会社製:SS-30WD)にて、コーナー部分を押す形で測定した。接着強度が1.5kgf以上は〇、1.0~1.5kgfは△、1.0kgf以下は×と評価した。
【0053】
【0054】
【0055】
表1の結果より、本発明のディスプレイ用封止剤は、柔軟性と低透湿を両立し、接着強度にも優れることが確認された。
本発明のディスプレイ用封止剤は、被着体との接着強度に優れ、柔軟性と低透湿性を両立している為、特に有機膜との接着性が要求されるディスプレイやフレキシブルディスプレイ、湾曲形状のディスプレイ用封止剤として有用である。