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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075004
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】クロックデータ再生回路および受信機
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/08 20060101AFI20220511BHJP
   H04L 7/033 20060101ALI20220511BHJP
   H03L 7/093 20060101ALI20220511BHJP
   H03L 7/081 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H03L7/08 107
H04L7/033 100
H03L7/093
H03L7/081
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185514
(22)【出願日】2020-11-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/高い環境耐性を有するキャリアコンバータ技術の研究開発 5G時代に対応した大容量・低遅延・シームレスな光/ミリ波変換デバイスの開発と実証評価」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】591128453
【氏名又は名称】株式会社メガチップス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】金 英毅
【テーマコード(参考)】
5J106
5K047
【Fターム(参考)】
5J106BB02
5J106CC21
5J106CC46
5J106CC59
5J106DD13
5J106DD24
5K047AA16
5K047GG08
5K047GG22
5K047MM33
5K047MM45
5K047MM63
(57)【要約】
【課題】高速なADCを用いることなく、受信データ信号に基づいてクロック信号を再生することを課題とする。
【解決手段】クロックデータ再生回路23は、基準クロック生成回路22により生成される基準クロック信号の位相を調整し、受信クロック信号MCLを生成する位相補間回路24と、クロック信号MCLに同期して、アナログデータ信号D1をデジタルデータ信号D2に変換するADC21から出力されたデータ信号D2を処理するフィルタ200と、フィルタ200の出力に基づいて、送信側クロック信号と基準クロック信号の位相差データPD1を出力する位相比較回路203と、位相補間回路24に設定する位相データPD2を生成するループフィルタ204とを備える。フィルタ200は、タップ数NのFIRフィルタ201と、タップ数N+1であり、FIRフィルタ201よりも半クロック遅延した信号を出力するFIRフィルタ202とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロック生成回路により生成される基準クロック信号の位相を調整し、受信クロック信号を生成する位相補間回路と、
前記位相補間回路において生成された前記受信クロック信号に同期して動作し、受信アナログデータ信号を受信デジタルデータ信号に変換するアナログデジタル変換器から出力された前記受信デジタルデータ信号を入力し、前記受信デジタルデータ信号にフィルタ処理を施すフィルタと、
前記フィルタから出力された信号に基づいて、送信側クロック信号と前記基準クロック信号の位相差データを出力する位相比較回路と、
前記位相比較回路から出力された前記位相差データに基づいて前記位相補間回路に設定する位相データを生成するループフィルタと、
を備え、
前記フィルタは、
タップ数Nの第1FIRフィルタと、
タップ数N+1であり、前記第1FIRフィルタよりも半クロック遅延した信号を出力する第2FIRフィルタと、
を含む、クロックデータ再生回路。
【請求項2】
前記第1FIRフィルタおよび前記第2FIRフィルタは、FIRフィルタを構成する遅延器を共有する、請求項1に記載のクロックデータ再生回路。
【請求項3】
前記フィルタは、
前記第1FIRフィルタの出力の上位所定ビットを抽出する第1ビット抽出回路と、
前記第2FIRフィルタの出力の上位所定ビットを抽出する第2ビット抽出回路と、
を含む、請求項1または請求項2に記載のクロックデータ再生回路。
【請求項4】
前記第1FIRフィルタおよび前記第2FIRフィルタは、伝送チャネルの周波数特性の逆特性となるようにフィルタ係数が設定される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のクロックデータ再生回路。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のクロックデータ再生回路と、
前記基準クロック生成回路と、
前記アナログデジタル変換器と、
を備える受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信データをサンプリングするためのクロック信号を再生する回路およびその回路を備える受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムでは、送信機および受信機の間でクロック信号の周波数および位相の同期を取る必要がある。受信機が備えるクロックデータ再生回路(CDR回路:Clock and Data Recovery回路)は、送信機から送信されたランダムなデータ信号に基づいて、クロック信号を再生する。受信機が備えるアナログデジタル変換器は、CDR回路が再生したクロック信号に基づいて、データ信号をサンプリングする。
【0003】
下記特許文献1のクロック再生回路は、クロック信号とクロック信号を180度反転させたクロック信号を用いて、入力データと再生クロックの位相差を求めている。そのほか、2倍オーバーサンプリングしたクロック信号を用いて、送信機側のクロック信号と受信機側のクロック信号との位相差を求める方法などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-120214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、2倍オーバーサンプリングされたクロック信号、または、位相が180度反転したクロック信号を用いて、送信機側のクロック信号と受信機側のクロック信号との位相差を求めるアナログ回路を構成することは、回路の製造コストが高くなる。したがって、デジタル変換されたデータ信号においてクロック信号の位相差を求めることが望まれるが、そのためには、アナログデジタル変換器のサンプルレートを高くする必要がある。そのような構成は製造コストが高く、コストや製品仕様などの条件によっては、実現が困難となる場合もある。
【0006】
本発明の目的は、高速なアナログデジタル変換器を必要とすることなく、受信したデータ信号に基づいてクロック信号を再生することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従うクロックデータ再生回路は、基準クロック生成回路により生成される基準クロック信号の位相を調整し、受信クロック信号を生成する位相補間回路と、位相補間回路において生成された受信クロック信号に同期して動作し、受信アナログデータ信号を受信デジタルデータ信号に変換するアナログデジタル変換器から出力された受信デジタルデータ信号を入力し、受信デジタルデータ信号にフィルタ処理を施すフィルタと、フィルタから出力された信号に基づいて、送信側クロック信号と基準クロック信号の位相差データを出力する位相比較回路と、位相比較回路から出力された位相差データに基づいて位相補間回路に設定する位相データを生成するループフィルタとを備え、フィルタは、タップ数Nの第1FIRフィルタと、タップ数N+1であり、第1FIRフィルタよりも半クロック遅延した信号を出力する第2FIRフィルタとを含む。
【0008】
本発明の他の局面に従う受信機は、上記のクロックデータ再生回路と、基準クロック生成回路と、アナログデジタル変換器とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高速なアナログデジタル変換器を必要とすることなく、受信したデータ信号に基づいてクロック信号を再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】通信システムの全体図である。
図2】本実施の形態に係るクロックデータ再生回路の内部構成を示す受信機のブロック図である。
図3】本実施の形態に係るフィルタの回路図である。
図4】本実施の形態に係る位相比較回路の回路図である。
図5】データ信号とクロック信号とのタイミングを示す図である。
図6】データ信号のサンプルタイミングを示す図である。
図7】4値PAM信号のサンプルタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態に係るクロックデータ再生回路について説明する。
【0012】
(1)通信システムの構成
図1は、通信システムNSの全体図である。通信システムNSは、マスタ1およびスレーブ2を備える。マスタ1およびスレーブ2は、通信線NCで接続されている。つまり、本実施の形態においては、マスタ1およびスレーブ2は、有線高速通信を行う。マスタ1およびスレーブ2は、同一の施設内に設置されていてもよいし、異なる施設内に設置されていてもよい。あるいは、マスタ1およびスレーブ2が、自動車などの乗物内に設置されていてもよい。マスタ1およびスレーブ2は、例えば、TCP/IPを利用した通信を行う。なお、この実施の形態においては、マスタ1が送信機として動作し、スレーブ2が受信機として動作する場合を例に説明するため、以下においては、マスタ1を送信機1、スレーブ2を受信機2として説明する。ただし、各装置(各端末)が以下の実施の形態において説明するマスタ1およびスレーブ2としての機能を備えていてもよい。
【0013】
送信機1は、デジタルアナログ変換器(DAC)11および基準クロック生成回路12を備える。デジタルアナログ変換器11は、基準クロック生成回路12により生成された基準クロック信号に基づいて、送信するデータ信号をアナログ変換して通信線NCに出力する。基準クロック生成回路12は、例えば、水晶発振器やPLL(Phase Lock Loop)回路などを備えて構成される。基準クロック生成回路12より生成される基準クロック信号は、本発明における「送信側クロック信号」の例である。
【0014】
受信機2は、アナログデジタル変換器(ADC)21、基準クロック生成回路22およびクロックデータ再生回路(CDR回路)23を備える。アナログデジタル変換器21は、クロックデータ再生回路23において生成される受信クロック信号MCLを利用して、通信線NCを介して受信するデータ信号をデジタル変換する。基準クロック生成回路22は、例えば、水晶発振器やPLL回路などを備えて構成され、基準クロック信号BCLを生成する。クロックデータ再生回路23は、デジタル変換されたデータ信号に基づいて、基準クロック信号BCLの位相を調整し、受信クロック信号MCLを生成する。
【0015】
(2)クロックデータ再生回路を含む受信機の構成
図2は、クロックデータ再生回路23の内部構成を示す受信機2のブロック図である。受信機2は、図1で示したように、アナログデジタル変換器21、基準クロック生成回路22およびクロックデータ再生回路23を備える。
【0016】
アナログデジタル変換器21は、通信線NCを介して受信したアナログのデータ信号D1をデジタルのデータ信号D2に変換する。アナログデジタル変換器21は、位相補間回路24により生成された受信クロック信号MCLに基づいて、データ信号D2をサンプリングする。基準クロック生成回路22は、基準クロック信号BCLを生成する。位相補間回路24は、基準クロック生成回路22から出力された基準クロック信号BCLを入力する。位相補間回路24は、クロックデータ再生回路23によって生成された位相データPD2に基づいて基準クロック信号BCLの位相を調整し、受信クロック信号MCLを生成する。
【0017】
クロックデータ再生回路23は、図2に示すように、フィルタ200、位相比較回路203、ループフィルタ204および位相補間回路205を備える。フィルタ200は、FIRフィルタ201およびFIRフィルタ202を備える。FIRフィルタ201およびFIRフィルタ202は、デジタルのデータ信号D2を入力し、フィルタ処理後のデータ信号D3およびD4を出力する。データ信号D4は、データ信号D3よりも半クロックだけ遅延した信号である。FIRフィルタ201,202の構成については後で詳しく説明する。FIRフィルタ201が、本発明の「第1FIRフィルタ」の例であり、FIRフィルタ202が、本発明の「第2FIRフィルタ」の例である。
【0018】
位相比較回路203は、フィルタ200が出力したデータ信号D3およびデータ信号D4を入力する。位相比較回路203は、データ信号D3,D4を用いて、送信機1の基準クロック生成回路12が生成した基準クロック信号と、受信機2の基準クロック生成回路22が生成した基準クロック信号BCLとの位相差データPD1を算出する。位相比較回路203の構成については後で詳しく説明する。
【0019】
ループフィルタ204は、平均化回路および積分回路を備える。ループフィルタ204は、位相比較回路203において算出された位相差データPD1を入力する。ループフィルタ204は、位相差データPD1を平均化回路において平均化処理する。ループフィルタ204は、平均化処理された位相差データPD1を積分回路において積算することで位相データPD2を算出する。ループフィルタ204は、位相データPD2を位相補間回路205に与える。
【0020】
位相補間回路205は、ループフィルタ204から出力された位相データPD2を入力する。位相補間回路205は、位相データPD2に基づいて基準クロック信号BCLの位相を調整し、受信クロック信号MCLを生成する。位相補間回路205は、受信クロック信号MCLをアナログデジタル変換器21に与える。
【0021】
(3)FIRフィルタの回路構成
図3は、本実施の形態に係るフィルタ200の回路図である。フィルタ200は、乗算器31、FIRフィルタ201、FIRフィルタ202、ビット抽出回路37およびビット抽出回路38を備える。乗算器31は、デジタルのデータ信号D2に乗算係数Gを乗算する。乗算器31の出力は、FIRフィルタ201およびFIRフィルタ202に与えられる。データ信号D2(データ信号D1)が、多値PAM(Phase Amplitude Modulation)信号である場合、乗算器31の乗算係数Gにより多値PAM信号の振幅を調整する。
【0022】
FIRフィルタ201は、N個の遅延器32(1),32(2)・・・32(N)、複数の乗算器33(0),33(1)・・・33(N)および加算器35を備える。つまり、FIRフィルタ201は、タップ数NのFIRフィルタである。FIRフィルタ202は、N+1個の遅延器32(1),32(2)・・・32(N),32(N+1)、複数の乗算器34(0),34(1)・・・34(N),34(N+1)および加算器36を備える。つまり、FIRフィルタ202は、タップ数N+1のFIRフィルタである。このように、FIRフィルタ201およびFIRフィルタは、N個の遅延器32(1),32(2)・・・32(N)を共有している。これにより、フィルタ200の回路規模を小さくすることができる。
【0023】
FIRフィルタ201は、その周波数特性が伝送チャネルの逆特性となるように、乗算器33(0),33(1)・・・33(N)の乗算係数が設定される。同様に、FIRフィルタ202は、その周波数特性が伝送チャネルの逆特性となるように、乗算器34(0),34(1)・・・34(N),34(N+1)の乗算係数が設定される。また、FIRフィルタ201およびFIRフィルタ202の周波数特性はできるだけ近似するように、各乗算器33,34の乗算係数が設定される。
【0024】
さらに、FIRフィルタ201は、乗算器33(0),33(1)・・・33(N)の乗算係数が図3において左右対称または左右反対称となるように設定される。つまり、乗算器33(0),33(1)・・・33(N)の乗算係数をh(0),h(1)・・・h(N)とすれば、左右対称とは、h(0)=h(N),h(1)=h(N-1),h(2)=h(N-2)・・・(以下同様)となるよう乗算係数が設定され、左右反対称とは、h(0)=-h(N),h(1)=-h(N-1),h(2)=-h(N-2)・・・(以下同様)となるよう乗算係数が設定される。同様に、FIRフィルタ202は、乗算器34(0),34(1)・・・34(N),34(N+1)の乗算係数が図3において左右対称または左右反対称となるように設定される。つまり、乗算器34(0),34(1)・・・34(N),34(N+1)の乗算係数をg(0),g(1)・・・g(N),g(N+1)とすれば、左右対称とは、g(0)=g(N+1),g(1)=g(N),g(2)=g(N-1)・・・(以下同様)となるよう乗算係数が設定され、左右反対称とは、g(0)=-g(N+1),g(1)=-g(N),g(2)=-g(N-1)・・・(以下同様)となるよう乗算係数が設定される。
【0025】
このように、FIRフィルタ201の乗算係数が左右対称または左右反対称に設定されることにより、FIRフィルタ201の群遅延T1は、T1=(N-1)/2となる。また、FIRフィルタ202の乗算係数が左右対称または左右反対称に設定されることにより、FIRフィルタ202の群遅延T2は、T2={(N+1)-1}/2=N/2となる。これにより、FIRフィルタ201,202の群遅延の差T2-T1は、N/2-(N-1)/2=1/2となる。つまり、FIRフィルタ202が出力するデータ信号は、FIRフィルタ201が出力するデータ信号よりも0.5サンプル(半クロック)遅延した受信データ信号となる。
【0026】
本実施の形態のFIRフィルタ201およびFIRフィルタ202は以上の構成を備えることにより、受信したデータ信号D2をアナログデジタル変換器21のサンプリングレートの2倍のサンプリングレートで疑似的にサンプリングすることが可能である。これにより、2倍のオーバーサンプリングが可能なアナログデジタル変換器などを使用することなく、デジタル処理で2倍のオーバーサンプリングを実現可能となっている。
【0027】
ビット抽出回路37は、FIRフィルタ201から出力されたデータ信号の上位ビットを抽出することにより、データ信号D3を生成する。例えば、ビット抽出回路37は、FIRフィルタ201から出力されたデータ信号の上位3ビットを抽出する。ビット抽出回路38は、FIRフィルタ202から出力されたデータ信号の上位ビットを抽出することにより、データ信号D4を生成する。例えば、ビット抽出回路38は、FIRフィルタ202から出力されたデータ信号の上位3ビットを抽出する。ビット抽出回路37が本発明の「第1ビット抽出回路」の例であり、ビット抽出回路38が本発明の「第2ビット抽出回路」の例である。本実施の形態においては、受信するデータ信号D1(データ信号D2)として、多値PAM信号が用いられている。ビット抽出回路37,38において抽出された上位ビットにより、受信すべき多値PAM信号が取得可能となるように、乗算器31の乗算係数Gにより多値PAM信号の振幅が調整される。
【0028】
(4)位相比較回路の回路構成
図4は、本実施の形態に係る位相比較回路203の回路図である。位相比較回路203は、遅延器41,42、比較回路43,44,45、AND回路46,47、反転回路48、加算器49および平均化回路50を備える。
【0029】
遅延器41は、フィルタ200(図3参照)から出力されたデータ信号D3を入力する。遅延器42は、フィルタ200(図3参照)から出力されたデータ信号D4を入力する。上述したように、データ信号D4は、データ信号D3と比較して0.5サンプル(半クロック)遅延した受信データ信号である。ここで、遅延器41から出力されたデータ信号をDとすると、遅延器41が入力するデータ信号はDn+1で表される。データ信号Dの添え字nはサンプルタイミング(クロック)を示す。また、遅延器42から出力されるデータ信号をEで表す。これにより、Eは、Dに比べて0.5サンプルだけ遅延した信号であり、Dn+1は、Eに比べて0.5サンプルだけ遅延した信号となる。
【0030】
比較回路43は、データ信号DおよびDn+1を入力する。比較回路43は、データ信号DとDn+1とを比較し、値が異なる場合には1を、値が同じ場合には0を、判定データA1として出力する。比較回路44は、データ信号DおよびEを入力する。比較回路44は、データ信号DとEとを比較し、値が異なる場合には1を、値が同じ場合には0を、判定データA2として出力する。比較回路45は、データ信号EおよびDn+1を入力する。比較回路45は、データ信号EとDn+1とを比較し、値が異なる場合には1を、値が同じ場合には0を、判定データA3として出力する。
【0031】
AND回路46は、比較回路43から出力された判定データA1および比較回路44から出力された判定データA2を入力する。AND回路46は、判定データA1および判定データA2の値がいずれも1である場合に、LATEデータB1として値1を出力する。AND回路46は、判定データA1および判定データA2の値のいずれかが0である場合に、LATEデータB1として値0を出力する。ここで、判定データA1が値1を示すのは、データ信号Dとデータ信号Dn+1とが異なるときであり、判定データA2が値1を示すのは、データ信号Dとデータ信号Eとが異なるときである。図5は、データ信号のクロック信号とのタイミングを示す図である。図5(A)において、データ信号Dとデータ信号Dn+1との値が異なるという条件の元では、データ信号Dとデータ信号Eとの値が異なる。つまり、AND回路46がLATEデータB1として値1を出力する状態を示している。つまり、入力するデータ信号D1(データ信号D2)に対して、受信クロック信号MCLの位相が遅れていると判定される。図6は、データ信号のサンプルタイミングを示す図である。図6(A)は、図5(A)と同じサンプルタイミングのデータ信号列を示す。図6(A)において、サンプルタイミングSTにおいてサンプリングした場合、データ信号Dとデータ信号Dn+1との値が異なるという条件の元では、データ信号Dn+1とデータ信号Eとの値が等しくなり、データ信号Dとデータ信号Eとの値が異なる。
【0032】
AND回路47は、比較回路43から出力された判定データA1および比較回路45から出力された判定データA3を入力する。AND回路47は、判定データA1および判定データA3の値がいずれも1である場合に、EARLYデータB2として値1を出力する。AND回路47は、判定データA1および判定データA3の値のいずれかが0である場合に、EARLYデータB2として値0を出力する。ここで、判定データA1が値1を示すのは、データ信号Dとデータ信号Dn+1とが異なるときであり、判定データA3が値1を示すのは、データ信号Dn+1とデータ信号Eとが異なるときである。図5(B)において、データ信号Dとデータ信号Dn+1との値が異なるという条件の元では、データ信号Dn+1とデータ信号Eとの値が異なる。つまり、AND回路47がEARLYデータB2として値1を出力する状態を示している。つまり、入力するデータ信号D1(データ信号D2)に対して、受信クロック信号MCLの位相が進んでいると判定される。図6(B)は、図5(B)と同じサンプルタイミングのデータ信号列を示す。図6(B)において、サンプルタイミングSTにおいてサンプリングした場合、データ信号Dとデータ信号Dn+1との値が異なる条件の元では、データ信号Dn+1とデータ信号Eとの値が異なり、データ信号Dとデータ信号Eとの値が等しくなる。
【0033】
反転回路48は、AND回路46が出力するLATEデータB1に-1を乗算し、LATEデータB1の符号を反転したLATEデータB3を出力する。加算器49は、反転回路48から出力されたLATEデータB3およびAND回路47から出力されたEARLYデータB2を入力し、それらを加算する。つまり、加算器49においては、入力するデータ信号D1(データ信号D2)に対して、受信クロック信号MCLの位相が遅れている場合には、LATEデータB3として-1が加算される。加算器49においては、入力するデータ信号D1(データ信号D2)に対して、受信クロック信号MCLの位相が進んでいる場合には、EARLYデータB2として1が加算される。加算器49は、LATEデータB3とEARLYデータB2との加算結果の値を平均化回路50に与える。平均化回路50は、加算器49から入力した加算結果の値を所定サンプル分だけ蓄積し、その平均値を求める。平均化回路50は、算出した平均値を位相差データPD1として出力する。位相差データPD1は、受信したデジタルのデータ信号D2と受信クロック信号MCLとの位相差、つまりは、送信機1で生成された基準クロック信号と、受信機2で生成された基準クロック信号BCLの位相差を評価するデータである。
【0034】
位相比較回路203において、正しくLATEデータB3およびEARLYデータB2が得られているときは、加算器49は、-1の値または+1の値を出力する。しかし、例えば、受信したデータ信号D1が4値のPAM信号である場合などは、誤判定により、LATEデータB3が-1の値となり、かつ、EARLYデータB2が+1の値となる場合もある。しかし、このような場合であっても加算器49においてこれらの値が加算されて0となるため、誤判定により位相比較回路203の出力が不要に変動することが抑制される。また、LATEデータB3およびEARLYデータB2が交互に値-1と値+1を出力するような場合であっても、平均化回路50において値が平均化されるため、位相比較回路203の出力が不要に変動することが抑制される。ただし、位相比較回路203において、平均化回路50を設けることは必須ではなく、平均化回路50を設けない構成とすることもできる。
【0035】
図7は、受信したデータ信号D2(データ信号D1)が、4値PAM信号である場合の例を示す。データ信号D2は、4値PAM信号であるので、-3,-1,+1,+3のいずれかの値である。図7の例では、データ信号Dが+3であり、データ信号Dn+1が-1の場合を示す。このとき、データ信号Dからデータ信号Dn+1に遷移する過程で、半クロック遅延したデータ信号Eは+1の値として判定される。このようなケースでは、LATEデータB3が-1の値を示すとともに、EARLYデータB2が+1の値を示すことになる。しかし、加算器49による加算によりこれらの値は加算されて位相差としては評価されない。あるいは、LATEデータB3およびEARLYデータB2のいずれかが値0を示し、他方が誤判定をして+1または-1の値を出力した場合であっても、平均化回路50またはループフィルタ204においてそれらの値は平均化されるため、位相データPD2の生成には大きな影響を与えることはない。また、送信機1より送信されたデータ信号が一様乱数に近い状態となるようにスクランブラが適用されている場合には、LATEデータB3およびEARLYデータB2による誤判定の確率も一様になる。したがって、誤判定されたLATEデータB3およびEARLYデータB2についても平均化によりその影響を除去することができる。
【0036】
(5)ループフィルタおよび位相補間回路の動作
図2を参照する。ループフィルタ204は、位相比較回路203から出力された位相差データPD1を入力する。ループフィルタ204は、平均化回路および積分回路を備える。ループフィルタ204は、位相差データPD1に対する平均化処理をした上で、平均化処理後の位相差データPD1を積算する。これにより、ループフィルタ204は、位相データPD2を生成する。
【0037】
位相補間回路205は、ループフィルタ204から出力された位相データPD2を入力する。位相補間回路205は、また、基準クロック生成回路22から出力された基準クロック信号BCLを入力する。位相補間回路205は、位相データPD2に基づいて基準クロック信号BCLの位相を調整し、受信クロック信号MCLを生成する。位相補間回路205は、受信クロック信号MCLをアナログデジタル変換器21に供給する。これにより、アナログデジタル変換器21は、位相が調整された受信クロック信号MCLにより、受信したアナログのデータ信号D1をサンプリングする。
【0038】
(6)他の実施の形態
上記の実施の形態においては、フィルタ200において、FIRフィルタ201とFIRフィルタ202とが遅延器32(1),32(2)・・・32(N)を共有する構成とした。これ以外の実施の形態として、FIRフィルタ201とFIRフィルタ202とがそれぞれ遅延器を備える構成としてもよい。回路規模を小さくするためには、FIRフィルタ201とFIRフィルタ202とが遅延器32(1),32(2)・・・32(N)を共有することが望ましい。
【0039】
上記の実施の形態においては、FIRフィルタ201とFIRフィルタ202は、その周波数特性が伝送チャネルの逆特性となるように、乗算器の乗算係数が設定される。これ以外の実施の形態として、周波数特性を調整するためのフィルタをFIRフィルタ201とFIRフィルタ202とは別に設けるようにしてもよい。
【0040】
(7)本発明の態様
<1>以上説明したように、本実施の形態に係るクロックデータ再生回路23は、基準クロック生成回路22により生成される基準クロック信号BCLの位相を調整し、受信クロック信号MCLを生成する位相補間回路205と、位相補間回路205において生成された受信クロック信号MCLに同期して動作し、受信アナログデータ信号D1を受信デジタルデータ信号D2に変換するアナログデジタル変換器21から出力された受信デジタルデータ信号D2を入力し、受信デジタルデータ信号D2にフィルタ処理を施すフィルタ200と、フィルタ200から出力された信号D3,D4に基づいて、送信側クロック信号と基準クロック信号BCLの位相差データPD1を出力する位相比較回路203と、位相比較回路203から出力された位相差データPD1に基づいて位相補間回路205に設定する位相データPD2を生成するループフィルタ204とを備え、フィルタ200は、タップ数N(Nは正の整数)のFIRフィルタ201と、タップ数N+1であり、FIRフィルタ201よりも半クロック遅延した信号を出力するFIRフィルタ202とを含む。これにより、2倍のオーバーサンプリングが可能なアナログデジタル変換器などを使用することなく、デジタル処理で2倍のオーバーサンプリングを実現可能となっている。
【0041】
<2>FIRフィルタ201およびFIRフィルタ202は、FIRフィルタを構成する遅延器32(1),32(2)・・・32(N)を共有してもよい。これにより、フィルタ200の回路規模を小さくすることができる。
【0042】
<3>フィルタ200は、FIRフィルタ201の出力の上位所定ビットを抽出するビット抽出回路37と、FIRフィルタ202の出力の上位所定ビットを抽出するビット抽出回路38とを含んでもよい。上位ビットを用いることで、クロックデータ再生回路の計算量を削減することができる。
【0043】
<4>FIRフィルタ201およびFIRフィルタ202は、伝送チャネルの周波数特性の逆特性となるようにフィルタ係数が設定されてもよい。フィルタ200において、受信データ信号の周波数特性も調整することができる。
【0044】
本実施の形態に係る受信機2は、上記<1>~<4>のいずれかに記載のクロックデータ再生回路23と、基準クロック生成回路22と、アナログデジタル変換器21とを備える。
【符号の説明】
【0045】
2…受信機、21…アナログデジタル変換器、22…基準クロック生成回路、23…クロックデータ再生回路、200…フィルタ、201,202…FIRフィルタ、203…位相比較回路、204…ループフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7