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特開2022-75027コンクリート型枠用せき板及び該型枠用せき板パネル
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  • 特開-コンクリート型枠用せき板及び該型枠用せき板パネル 図1
  • 特開-コンクリート型枠用せき板及び該型枠用せき板パネル 図2
  • 特開-コンクリート型枠用せき板及び該型枠用せき板パネル 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075027
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】コンクリート型枠用せき板及び該型枠用せき板パネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/86 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
E04B2/86 601H
E04B2/86 601B
E04B2/86 601Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185547
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】390026723
【氏名又は名称】東京鐵鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】寺戸 亮平
(57)【要約】
【課題】せき板と補強用鉄筋を良好に溶接でき、せき板と補強用鉄筋の接合強度を確保できるようにする。
【解決手段】コンクリート型枠用せき板10は、所定間隔で複数配置されたリブ11,11Aと、リブ11,11A間に設けられ複数の網目15が配置された網目部12と、を備える。リブ11,11Aは、その断面形状が内側(裏側)に突出する屈曲形状をなしている。網目部12には、溶接しろ16が設けられている。溶接しろ16には、外側(表側)から補強用鉄筋20が溶接により固定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で複数配置された支柱部と、
上記支柱部間に設けられ複数の網目が配置された網目部と、を備え、
上記網目部に、補強用鉄筋を溶接するための溶接しろが設けられていることを特徴とするコンクリート型枠用せき板。
【請求項2】
上記支柱部は、その断面形状が表裏のいずれか一方の側に突出する屈曲形状をなしており、
上記溶接しろには、他方の側から補強用鉄筋が溶接により固定されることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート型枠用せき板。
【請求項3】
上記溶接しろは、上記網目部の網目を形成する条線を太くすることにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート型枠用せき板。
【請求項4】
所定の溶接位置にある補強用鉄筋の軸線方向に対して、上記溶接しろは傾斜をなしていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のコンクリート型枠用せき板。
【請求項5】
上記支柱部を介して隣り合う2つの上記溶接しろは、互いに異なる傾斜をなしていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のコンクリート型枠用せき板。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のせき板の溶接しろに補強用鉄筋が溶接されたコンクリート型枠用せき板パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート型枠用せき板及びそれを用いたパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート構造物の構築においては、合板や金属板等のせき板を張設して型枠を形成し、この型枠内にコンクリートを打設し、打設したコンクリートが硬化した後に型枠を解体している。この型枠の解体は工期を長期化させる要因となっている。
【0003】
そのため近年では、解体の必要のない捨て型枠が使用されている。捨て型枠は、打設したコンクリートの硬化後、コンクリート構造物にその構成要素として一体化される。これにより、解体の必要のある型枠を使用した場合に比べ、作業を省力化でき、ひいては工期を短縮できる。
【0004】
下記特許文献1には、コンクリート構造物の構築に使用される捨て型枠の側面部をなすせき板パネルが開示されている。このせき板パネルは、所定間隔で複数配置された縦に延びる鉄筋と、所定間隔で複数配置された横に延びる鉄筋と、これら縦の鉄筋と横の鉄筋との間に挟まれた金網とを有している。金網と鉄筋の接合部は溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-309699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のせき板パネルでは、鉄筋とスポット溶接等で接合される金網は、細い条線で形成されている。そのため、溶接の際の加圧力、電流値、通電時間、電極形状等の溶接条件の設定が難しかった。溶接が過度であれば、条線が溶け落ちてしまい、溶接が不十分であれば、金網と鉄筋の接合強度が不足してしまい、せき板パネルの品質が安定しなかった。
【0007】
金網と鉄筋の接合強度が不足したせき板パネルで構成した型枠にコンクリートを打設した場合には、打設圧により金網が撓もうとして鉄筋との接合が外れてしまう恐れがあった。鉄筋との接合が外れ、金網が撓んでしまうと、コンクリート構造物の躯体断面寸法の許容差を超える恐れがあった。
【0008】
また、特許文献1のせき板パネルでは、鉄筋の軸線方向に対して金網が平面状に設けられているため、金網と鉄筋の接合強度は金網の面内方向の力に弱かった。例えば、金網の面内方向と交差する方向から網体に力が作用した場合、金網は力が作用した部分へ向けて直線的にずれ、その部分に凹みが生じやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであって、この発明の一態様に係るコンクリート型枠用せき板は、所定間隔で複数配置された支柱部と、上記支柱部間に設けられ複数の網目が配置された網目部と、を備え、
上記網目部に、補強用鉄筋を溶接するための溶接しろが設けられていることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、溶接しろが設けられることにより、せき板と補強用鉄筋との接合面を大きくすることができ、適切な溶接条件を整えることができるようになりせき板と補強用鉄筋を良好に溶接することができる。ひいては、せき板と補強用鉄筋の接合強度を確保することができる。
【0011】
好ましくは、上記支柱部は、その断面形状が表裏のいずれか一方の側に突出する屈曲形状をなしており、上記溶接しろには、他方の側から補強用鉄筋が溶接により固定される。
上記構成によれば、剛性を高めるために屈曲させた支柱部が突出する側とは反対側に、補強用鉄筋が配置され溶接しろと溶接されるので、支柱部の屈曲形状により補強用鉄筋の配置が妨げられない。
【0012】
好ましくは、上記溶接しろは、上記網目部の網目を形成する条線を太くすることにより形成されている。
上記構成によれば、溶接しろの構成を簡単にして、製造を容易にしている。製造に使用する鋼材量は、溶接しろを有さないせき板の鋼材量と大差ないため、製造コストを抑制することができる。また、せき板を変形し難くしている。
【0013】
好ましくは、所定の溶接位置にある補強用鉄筋の軸線方向に対して、上記溶接しろは傾斜をなしている。
上記構成によれば、せき板の張設方向と補強用鉄筋の軸線方向が平行をなしていても、せき板の張設方向の力に対するせき板と補強用鉄筋との接合強度を高めることができる。
【0014】
好ましくは、上記支柱部を介して隣り合う2つの上記溶接しろは、互いに異なる傾斜をなしている。
上記構成によれば、せき板と補強用鉄筋との接合強度の異方性を小さくして、接合強度を向上させることができる。
【0015】
この発明の他の態様は、コンクリート型枠用せき板パネルであって、上記せき板の溶接しろに補強用鉄筋が溶接されている。
上記構成によれば、せき板と補強用鉄筋が良好に溶接され、それらの接合強度が確保された安定した品質のコンクリート型枠用せき板パネルが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、せき板と補強用鉄筋とを良好に溶接することができ、せき板と補強用鉄筋の接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施形態に係るせき板を示す図であって、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図2】同せき板と所定の溶接位置に配置した補強用鉄筋とを示す図であって、(A)は要部拡大正面図、(B)は要部拡大底面図である。
図3】同せき板を利用して形成したコンクリート型枠の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の一実施形態を図1図3を参照しながら説明する。
せき板パネル1は、コンクリート構造物を構築するためのコンクリート型枠2(図3参照)の側面部を構成し、せき板10と補強用鉄筋20とを有している。
【0019】
図1に示すせき板10は、隣り合うリブ11,11A(支柱部)と、リブ11,11Aの間に網目部12を有する鋼製のラスである。せき板10の製造は、原材料の鋼板(図示しない)に網目部12を形成するための切り目を付け、二次加工において、リブ11,11Aを形成するとともに、鋼板を引伸ばして網目部12を形成することによりなされる。
【0020】
リブ11,11Aは、図1(B)において鉛直方向に延びており、所定間隔で交互に配置され平行をなしている。リブ11,11Aの断面形状は略V字状をなしており、コンクリート型枠2を構成したときせき板10の内側(裏側)に頂部13が突出するように屈曲している。これにより、支柱としてのリブ11,11Aの剛性は高められている。
【0021】
リブ11,11Aの間の上記網目部12には、縦横の条線14によって形成された網目15が複数配置されている。本実施形態では、網目15は1つの網目部12に4列配置されている。図1(B)に示すように、正面視において各網目15は傾斜をなしている。
【0022】
網目部12には、溶接しろ16が設けられている。溶接しろ16は、補強用鉄筋20をせき板10に溶接するためのものであって、リブ11,11Aと同方向(図1(B)の縦方向)に延びる条線14のうち、リブ11,11Aの間の中央にある条線14を他の条線14より太くすることにより形成されている。
【0023】
この溶接しろ16には、図2に示すように、リブ11,11Aの頂部13とは反対側、つまりコンクリート型枠2構成時のせき板10の外側(表側)から、補強用鉄筋20が配置される。このとき、補強用鉄筋20は、その軸線方向をリブ11,11Aの延び方向と直交させている。
【0024】
図1(B)、図2(A)に示すように、正面視における各網目15の傾斜の向きは、リブ11,11Aを境に変化している。言い換えると、リブ11の両側の網目部12の網目15は、リブ11を中心に上方へ傾斜しており、リブ11Aの両側の網目部12の網目15は、リブ11Aを中心に下方に傾斜している。尚、網目15の傾斜の向きは一例であって、これらに限られない。
図1(A)の平面視、及び図2(B)の底面視における条線14の傾斜は、リブ11,11Aを境に対称になっている。
【0025】
図2(A)に示すように、補強用鉄筋20を所定の溶接位置に配置させたとき、図2(B)に示すように、補強用鉄筋20と対向する溶接しろ16は補強用鉄筋20の軸線方向と傾斜をなしている。また、リブ11(又はリブ11A)を介して隣り合う溶接しろ16,16は互いに異なる傾斜をなして補強用鉄筋20と対向している。
【0026】
図2(A)に示す、溶接しろ16と補強用鉄筋20の交差部分Cにおいて、せき板10と補強用鉄筋20は溶接される。これにより、せき板10に補強用鉄筋20が固定されたせき板パネル1が形成される。尚、コンクリート成形空間S(図3参照)に応じて、様々のサイズのせき板パネル1を調製することができる。
【0027】
次に、上記構成のせき板パネル1を用いたコンクリート型枠2の形成について説明する。
図3に示すように、複数枚のせき板パネル1を、リブ11,11Aの長さ方向を縦にし、リブ11,11Aの頂部13を内側に、補強用鉄筋20を外側にして、横方向に並べ、せき板パネル1の側縁部同士をワイヤーWで結束して、せき板パネル1のユニット1Uを形成する。2つのユニット1U,1Uを、コンクリート成形空間Sを囲むように所定距離を隔てて対向するように張設する。対向するせき板10,10の間に、セパレータ30を架け渡して、セパレータ30の先端を補強用鉄筋20に係止させる。これにより、コンクリート成形空間Sを囲むコンクリート型枠2が形成される。
【0028】
本実施形態のせき板10によれば、網目部12に溶接しろ16が設けられることにより、せき板10と補強用鉄筋20との接合面を大きくすることができ、溶接条件が改善され、せき板10と補強用鉄筋20の良好な溶接が可能となる。ひいては、せき板10と補強用鉄筋20の接合強度が確保され、安定した品質のコンクリート型枠用せき板パネル1が提供される。
【0029】
せき板10におけるリブ11,11Aの頂部13がある内側(裏側)とは反対側である外側(表側)に、せき板10と溶接される補強用鉄筋20が配置されるので、リブ11,11Aの頂部13が補強用鉄筋20の配置の妨げとならない。
【0030】
溶接しろ16は、網目部12の網目15を形成する条線14を太くすることにより形成されており、溶接しろ16の構成は簡単である。溶接しろ16を形成するためには、せき板10の原材料の鋼板に網目15となる切り目を付ける際、切り目と切り目の間の幅を若干広くするだけでよく、製造が容易であり、製造に使用する鋼材量は、溶接しろを有さないせき板の鋼材量と大差ないため、製造コストを抑制することができる。また、条線14が太くなることにより、せき板が変形し難くなっている。
【0031】
溶接位置にある補強用鉄筋20と対向する溶接しろ16は補強用鉄筋20の軸線方向とは傾斜をなしているため、せき板10の張設方向と補強用鉄筋20の軸線方向が平行をなしていても、せき板10の張設方向の力に対する溶接の接合強度を高めることができる。
【0032】
リブ11(又はリブ11A)を介して隣り合う2つの溶接しろ16,16は互いに異なる傾斜をなしているから、せき板10と補強用鉄筋20との接合強度の異方性、すなわち、ある方向の強度が強くある方向の強度が弱い性質、が小さくなるので、接合強度を向上させることができる。
【0033】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
上記実施形態では、リブ11,11A間の中央にある条線14を溶接しろ16としているが、中央から偏倚した位置にある条線14を溶接しろ16としてもよい。
張設するせき板10の向きは、リブ11,11Aの長さ方向を横にしてもよい。
上記実施形態では、コンクリート型枠2の形成のためせき板10のリブの頂部13側の面を内側にして対向させたが、反対側の面を対向させてもよい。
上記実施形態では、網目部12の網目15を4列形成したが、4列未満でもよく4列より多くてもよい。また、網目15を傾斜させなくてもよい。
上記実施形態では、溶接位置にある補強用鉄筋20と対向する溶接しろ16は、補強用鉄筋20の軸線方向に対し、傾斜をなしているが、平行に形成してもよい。
せき板10に用いる鋼製のラスとしては、メタルラスを用いてもよく、ワイヤーを金網状に編んだワイヤラス、パンチングメタル、亀甲金網、クリンプ金網、溶接金網等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、コンクリート型枠用せき板及びそれを用いたせき板パネルに適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 せき板パネル
1U せき板パネルユニット
2 コンクリート型枠
10 せき板
11,11A リブ(支柱部)
12 網目部
13 リブの頂部
14 条線
15 網目
16 溶接しろ
20 補強用鉄筋
30 セパレータ
C 交差部分
W ワイヤー
S コンクリート成形空間
図1
図2
図3