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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075043
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220511BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B66F9/24 S
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185574
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】町田 朝
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB01
3F333BD02
3F333BE01
3F333FA40
(57)【要約】
【課題】作業者が所有する資格や作業現場の状況に応じて作業車に搭載された作業装置の機能を適切に規制することが容易となる作業車を提供する。
【解決手段】作業車が搭載された作業装置を作動させるために作業者が操作する上部操作装置9及び下部操作装置10と、これらの操作装置の操作に応じて作業装置の作動を制御するコントロールユニット30とを備えた作業車であって、上部操作装置9及び下部操作装置10の操作に応じて作動する作業装置の特定の作動を規制する特定作動規制情報を入力するためのカードリーダ101を備え、コントロールユニット30はカードリーダ101から入力された特定作動規制情報に基づいて作業装置の特定の作動を規制する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、前記走行体上に設けられた作業装置と、前記作業装置の作動を行わせるために作業者が操作する操作装置と、前記操作装置の操作に応じて前記作業装置の作動を制御する作動制御装置と、を備えた作業車であって、
前記操作装置の操作に応じて作動する前記作業装置の特定の作動を規制する特定作動規制情報を入力するための特定作動規制情報入力装置と、
前記特定作動規制情報入力装置から入力された特定作動規制情報に基づいて前記作動制御装置による前記作業装置の前記特定の作動を規制する特定作動規制装置と、
を備えることを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記作業装置は、前記走行体上に設けられた昇降装置と、前記昇降装置により昇降移動可能であるとともに作業者が搭乗可能な作業台と、を有し、
前記特定作動規制情報は、前記走行体に対して前記作業台が特定の高さを越えて昇降移動する前記昇降装置の作動を前記特定の作動として規制する情報であり、
前記特定作動規制装置は、前記作業台が前記特定の高さを越えて昇降移動する前記昇降装置の作動を規制することを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記特定作業規制情報入力装置が、作業者の作業資格に関する情報などを入力する作業者情報入力装置を備えて構成され、
前記特定作動規制装置は、前記作業資格が許容する作業範囲を外れる作動を前記特定の作動として規制することを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記特定作動規制情報入力装置から入力された特定作動規制情報に関連づけて前記作業装置の作動状況を示す作動情報を時系列で記憶する作動状況記憶装置と、
前記作動状況記憶装置に記憶された作動情報を出力する作動情報出力装置と、
を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の作業車。
【請求項5】
前記特定作動規制情報入力装置に対する前記特定作動規制情報の入力を特定の者に制限し、前記特定の者以外による前記特定作動規制情報の入力および書き換えをできないようにする情報入力制限装置を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電設作業や建設作業等を行うための作業装置を備えた作動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電設作業や建設作業等を行う際に用いられる作業車の種類は、車両に搭載する様々な作業装置に応じて多岐に亘っている。例えば、高所での作業を行う際に用いられる高所作業車の場合は、作業装置として、作業者が搭乗する作業台と、この作業台を昇降させる昇降装置とを搭載している。また、作業車には、作業台や車両に設けられた操作装置から出力される各種操作信号に応じて、車両に搭載された作業装置の作動を制御する作動制御装置も備えられている。例えば、車両に対して回動自在な旋回台と、この旋回台に対して起伏動、伸縮動などが自在なブームとにより構成され、ブームの先端部に作業台が首振り自在に取り付けられた昇降装置を備える高所作業車においては、操作装置から出力される各種操作信号に応じて、作業制御装置が、旋回台やブームなどを作動させるための各種アクチュエータを作動させることにより、旋回台の旋回作動、ブームの起伏作動及び伸縮作動、作業台の首振り作動などを制御する。
【0003】
ところで、国内においては、高所作業車を用いて揚程が10mを超える高所で作業を行う場合、高所作業車を操作する作業者は所定の技能講習を修了している必要がある。したがって、所定の技能講習を修了していない作業者が使用する高所作業車は、機械構造的に作業台の揚程が10mを超えないブームを搭載するか、または特許文献1に記載されている高所作業車のように、作業台の高さが所定の規制高さを超えないようにブームの起伏角度及び伸長量を規制する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-020095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、作業者が所有する資格によって昇降装置の揚程が規制されるため、例えば1台の高所作業車を資格所有者と資格を持たない者とが使用することがある場合、その高所作業車を使用する作業者に応じて昇降装置の揚程を規制するか否かを容易に変更できることが望ましい。また、作業者の資格の有無に限らず、例えば、作業装置の操作に関する各作業者の技量や、作業現場の状況などに応じて作業装置の機能を制限することができれば、作業の安全性の向上にもつながる。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、作業者が所有する資格や作業現場の状況に応じて作業車に搭載された作業装置の機能を適切に規制することが容易となる作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る作業車は、走行可能な走行体と、前記走行体上に設けられた作業装置(例えば、実施形態における旋回台4、ブーム5及び作業台8)と、前記作業装置の作動を行わせるために作業者が操作する操作装置(例えば、実施形態における上部操作装置9及び下部操作装置10)と、前記操作装置の操作に応じて前記作業装置の作動を制御する作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントロールユニット30)と、を備えた作業車であって、前記操作装置の操作に応じて作動する前記作業装置
の特定の作動を規制する特定作動規制情報(例えば、実施形態における会員番号や資格情報)を入力するための特定作動規制情報入力装置(例えば、実施形態におけるカードリーダ101)と、前記特定作動規制情報入力装置から入力された特定作動規制情報に基づいて前記作動制御装置による前記作業装置の前記特定の作動を規制する特定作動規制装置(例えば、実施形態におけるコントロールユニット30及び規制情報メモリ31)と、を備える。
【0008】
上述の作業車において、前記作業装置は、前記走行体上に設けられた昇降装置(例えば、実施形態における旋回台4及びブーム5)と、前記昇降装置により昇降移動可能であるとともに作業者が搭乗可能な作業台と、を有し、前記特定作動規制情報は、前記走行体に対して前記作業台が特定の高さを越えて昇降移動する前記昇降装置の作動を前記特定の作動として規制する情報であり、前記特定作動規制装置は、前記作業台が前記特定の高さを越えて昇降移動する前記昇降装置の作動を規制することが好ましい。
【0009】
上述の作業車において、前記特定作業規制情報入力装置が、作業者の作業資格に関する情報などを入力する作業者情報入力装置(例えば、実施形態におけるカードリーダ101)を備えて構成され、前記特定作動規制装置は、前記作業資格が許容する作業範囲を外れる作動を前記特定の作動として規制することが好ましい。
【0010】
上述の作業車において、前記特定作動規制情報入力装置から入力された特定作動規制情報に関連づけて前記作業装置の作動状況を示す作動情報を時系列で記憶する作動状況記憶装置(例えば、実施形態における作動状況メモリ32)と、前記作動状況記憶装置に記憶された作動情報を出力する作動情報出力装置(例えば、実施形態におけるディスプレイ103)と、を備えることが好ましい。
【0011】
上述の作業車において、前記特定作動規制情報入力装置に対する前記特定作動規制情報の入力を特定の者に制限し、前記特定の者以外による前記特定作動規制情報の入力および書き換えをできないようにする情報入力制限装置(例えば、実施形態におけるキーボード102及びコントロールユニット30)を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る作業車によれば、作動制御装置は、操作装置の操作に応じて走行体上に設けられた作業装置の作動を制御し、特定作動規制装置が、特定作動規制情報入力装置から入力された特定作動規制情報に基づいて作業装置の特定の作動を規制する。これにより、作業者が所有する資格などに応じて作業装置の特定の作動を規制する特定作動規制情報を適宜設定することで、作業者が所有する資格や作業現場の状況に応じて作業車に搭載された作業装置の機能を適切に規制することが容易となる。
【0013】
なお、上述の作業車において、作業装置は、走行体上に設けられた昇降装置と、昇降装置により昇降移動可能であるとともに作業者が搭乗可能な作業台と、を有し、特定作動規制情報は、走行体に対して作業台が特定の高さを越えて昇降移動する昇降装置の作動を特定の作動として規制する情報であり、特定作動規制装置は、作業台が特定の高さを越えて昇降移動する昇降装置の作動を規制することが好ましい。このようにすることで、作業者が所有する資格に応じて昇降装置における特定の高さを超えた作業台の昇降移動の作動を規制することが容易となる。
【0014】
また、上述の作業車において、特定作業規制情報入力装置が、作業者の作業資格に関する情報などを入力する作業者情報入力装置を備えて構成され、特定作動規制装置は、作業資格が許容する作業範囲を外れる作動を特定の作動として規制することが好ましい。このようにすることで、作業装置が作業者の作業資格によって許容される作業範囲を外れて作
動をするのを規制することが容易となる。
【0015】
また、上述の作業車において、特定作動規制情報入力装置から入力された特定作動規制情報に関連づけて作業装置の作動状況を示す作動情報を時系列で記憶する作動状況記憶装置と、作動状況記憶装置に記憶された作動情報を出力する作動情報出力装置と、を備えることが好ましい。これにより、作動状況記憶装置に記憶された作動情報に基づいて作業現場における作業車の作動内容を把握し分析することで、作業車が不適切に使用されていないかのチェックや、同様の作業現場で同様の作業を行う場合に、その作業をより効率的に行うために有用な機能を備えた作業車の選定などが容易となる。
【0016】
さらに、上述の作業車において、特定作動規制情報入力装置に対する特定作動規制情報の入力を特定の者に制限し、特定の者以外による特定作動規制情報の入力および書き換えをできないようにする情報入力制限装置を有することが好ましい。このようにすることで、特定の者以外の者による作業車の使用や特定作動規制情報の変更が行われる虞を少なくすることができるので、作業車の不適切な使用を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る作業車の一実施形態である高所作業車の外観を示す上面図及び側面図である。
図2】同高所作業車の作業台に設けられた上部操作装置の外観を示す図である。
図3】同高所作業車の作動制御に関する機能ブロック図である。
図4】同高所作業車のコントロールユニットが有する規制情報メモリに記憶される情報の内容を説明するための説明図である。
図5】同高所作業車のコントロールユニットによって規制及び制限されるブームの揚程の一例を示す模式図である。
図6】同高所作業車のコントロールユニットが有する作業状況メモリに記憶される情報の内容を説明するための説明図である。
図7】同高所作業車のコントロールユニットが有する作業状況メモリに記憶された作動状況データの分析内容について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る作業車の一実施形態である高所作業車の全体構成について図1を参照して説明する。なお、以下の説明では、高所作業車の所有者がレンタル会社であり、高所作業車の使用者は当該レンタル会社に会員登録された者であって、高所作業車のレンタル契約を交わしている者(すなわち、レンタル会社が高所作業車の使用を許可した者)とした場合を例にして説明する。また、会員登録された者には、その者に付与された会員番号が記憶されたメモリを有する非接触式ICカードが会員カードとして渡されるものとする。図1(a)は高所作業車の上面図を示しており、図1(b)は高所作業車の左側面図を示している。高所作業車1は運転キャビン2を有し、走行自在に構成された車体3の車体上には、旋回モータ41の作動により車体3に対して水平旋回自在に構成された旋回台4が配設されている。この旋回台4の上部には、起伏シリンダ42の伸縮作動により車体3に対して垂直面内に起伏動自在にブーム5が枢着されている。
【0019】
ブーム5は、旋回台4の上端部に枢着された基端ブーム5aと、基端ブーム5a内に摺動自在に順次入れ子状に嵌挿された中間ブーム5b及び先端ブーム5cとからなり、ブーム5の内部に配設された伸縮シリンダ43を伸縮作動させることにより伸縮動自在に取り付けられている。先端ブーム5cの先端部には図示しないレベリングシリンダの作動によりブーム5の起伏角度によらず常時垂直を維持する垂直ポスト6が配設され、さらに、この垂直ポスト6に配設された首振りモータ44の作動により垂直ポスト6廻りに水平旋回
(首振りという)自在に作業台8(作業台は「バケット」とも称する)が取り付けられている。車体3の前後左右には、ブーム5を起伏、伸長等させたときに車体3に作用して車両を転倒させようとする転倒モーメントに抗して車体3を安定支持するため、ジャッキの張り出し操作に基づいて張り出され車体3を持ち上げ支持するジャッキ14,14,…が配設されている。
【0020】
作業台8には、ブーム5の作動操作を行うための上部操作装置9が配設されている。上部操作装置9には、図2に示すように、旋回台4を含むブーム5の作動操作を行うブーム操作レバー91と作業台8の首振り作動操作を行う首振り操作スイッチ92とが配設されている。これにより、作業台8に搭乗する作業者は、ブーム操作レバー91を操作することにより旋回台4を旋回作動させ、ブーム5を起伏作動及び伸縮作動させることができ、首振り操作スイッチ92を操作することにより作業台8を首振り作動させることができるように構成されている。また、上部操作装置9には、後述する制限揚程を超えた高さまで作業台8を上昇させることができる規制解除スイッチ93が設けられている。規制解除スイッチ93は、押しボタン式のスイッチであり、ボタンがスイッチ内に設けられたバネの力に抗して所定の位置まで押し込まれている間はオンになり、押し込んだボタンを離すとバネの力によってボタンが元の位置に戻ってオフになる。なお、規制解除スイッチ93として、押しボタン式のスイッチの代わりに、操作を止めると自動的に中立位置に戻るトグルスイッチを用いてもよい。
【0021】
規制解除スイッチ93は、作業者によってオン操作がされている間は、上部操作装置9のブーム操作レバー91の操作に応じてブーム5が作動し、制限揚程(後述する)を超える作業台8の移動が可能となる。規制解除スイッチ93をオンにした状態で制限揚程を超えて作業台8を上昇させているときに規制解除スイッチ93をオフにすると、作業台8の上昇が停止する。また、この状況において、規制解除スイッチ93をオフしたまま作業台8を上昇させることはできないが、規制解除スイッチ93をオンにすることなく作業台8を下降させることはできる。
【0022】
図1に戻り、車体3の後端部には、下部操作装置10が設けられている。下部操作装置10は、上部操作装置9と同様に、旋回台4を含むブーム5の作動操作を行うためのブーム操作レバーや、作業台8の首振り作動操作を行うための首振り操作スイッチが配設されている。これにより、地上にいる作業者がこれらのブーム操作レバーや首振り操作スイッチを操作することによって、地上からも旋回台4の旋回作動、ブーム5の起伏作動及び伸縮作動、作業台8の首振り作動等の制御が可能となる。また、下部操作装置10には後述するコントロールユニット30と情報のやり取りをするための各種データの入力装置及び出力装置(後述する)が設けられている。
【0023】
次に、図3に示す機能ブロック図を参照して本実施形態の作業車の作動制御を行う各部の概要構成について説明する。この図に示すコントロールユニット30は、上部操作装置9又は下部操作装置10に設けられた各種操作レバーや操作スイッチの操作に基づいて、前述した旋回モータ41、起伏シリンダ42、伸縮シリンダ43及び首振りモータ44などの各種アクチュエータの作動を制御する。したがって、図2に示した上部操作装置9のブーム操作レバー91、首振り操作スイッチ92及び規制解除スイッチ93などの操作信号は、コントロールユニット30へ出力されている。また、下部操作装置10についても同様の操作信号がコントロールユニット30へ出力されている。
【0024】
下部操作装置10においては、前述したようにトロールユニット30と情報のやり取りをするための各種データの入力装置としてカードリーダ101及びキーボード102を備え、出力装置としてディスプレイ103を備えている。カードリーダ101は、非接触式ICカードに内蔵されているメモリから所定の情報を読み取ってコントロールユニット3
0へ出力する。本実施形態では、非接触式ICカードは、例えば高所作業車1を貸し出すレンタル会社が発行する会員カードであって、カードリーダ101は、会員カード(非接触式ICカード)のメモリに記憶されている会員番号を読み取って、コントロールユニット30へ出力する。キーボード102は、後述するコントロールユニット30が備える規制情報メモリ31に記憶させる各種データを入力したり、規制情報メモリ31にデータを入力する際にコントロールユニット30から要求される暗証番号を入力したりするために使用される。ディスプレイ103は、キーボード102の操作に応じてコントロールユニット30が出力する規制情報メモリ31や後述する作動状況メモリ32に記憶されているデータを表示する。
【0025】
本実施形態では、前述した各種アクチュエータは油圧で作動しており、油圧ユニット40内に、上述した各種アクチュエータに対応して電磁比例制御弁を配設し、コントロールユニット30によって各種油圧アクチュエータに対応する電磁比例制御弁のバルブ開度を制御することで、各油圧アクチュエータ41~44の作動を制御している。
【0026】
上述した油圧ユニット40には、油圧ポンプPよって作動油タンクT内の作動油が供給されており、油圧ポンプPは、車体3を走行させるエンジンEの駆動力によって作動する。より詳細には、エンジンEのトランスミッションにはPTO(パワーテイクオフ機構)が組み込まれており、運転キャビン2内にあるPTO操作レバー15がオフからオンに操作されるとパワーテイクオフ機構PTOの機構部が作動し、エンジンEの駆動力が車体3の駆動輪から油圧ポンプPに伝達されるようになる。なお、PTO操作レバー15がオンからオフに操作されると、エンジンEの駆動力は油圧ポンプPから車体3の駆動輪に伝達されるようになる。PTO操作レバー15のオン/オフ信号は、運転キャビン2内に設けられ、エンジンキー(「イグニッションキー」とも称する)によってエンジンEを始動/停止させるためのエンジンキースイッチ11のオン/オフ信号とともにコントロールユニット30へ出力されている。
【0027】
コントロールユニット30には、ブーム5の姿勢や作業台8の荷重などを検出する検出装置20からの検出値も入力されている。検出装置20は、車体3に対する旋回台4の旋回角度位置を検出する旋回角度検出器21、ブーム5の起伏角度を検出する起伏角度検出器22、ブーム5の伸長量を検出する伸長量検出器23、作業台8の首振り角度を検出する首振角度検出器24、作業台8の荷重を検出する作業台荷重検出器25及び水平面に対する高所作業車1の前傾/後傾角度を検出する傾斜角度検出器26などを有して構成されている。そして、検出装置20の各検出器から出力される各検出データが、コントロールユニット30へ入力される。
【0028】
次に図4を参照してコントロールユニット30に内蔵された規制情報メモリ31に記憶されているデータの内容について説明する。規制情報メモリ31には、上述したレンタル会社の会員番号と、各会員番号に対応して作業台8の揚程を規制するための規制データとが記憶されている。例えば、図4(a)に示す例では、各会員番号に対応して作業台8の揚程について規制するか否かの情報が記憶されている。例えば、会員番号1及び2は作業台8の揚程を規制しない(すなわち、揚程の規制無し)ことが設定されており、この場合、ブーム5の最大揚程の範囲内で作業台8を昇降させることができる。また、会員番号3及び5は作業台8の揚程を規制する(すなわち、揚程の規制有り)ことが設定されており、この場合、作業台8の揚程は10m以下(すなわち、規制揚程以下)に制限させる。また、会員番号4は、揚程を規制するか否かの情報が記憶されていないことを示している。この場合は、その会員番号がカードリーダ101から入力されたとしても、コントロールユニット30は、各種操作レバー及び操作スイッチから出力された操作信号に応じて旋回台4、ブーム5及び作業台8などの作動制御を実施しない。
【0029】
このため、レンタル会社が高所作業車1を会員に貸し出す場合は、その会員の会員番号について揚程を規制するか否かの情報を、キーボード102及びディスプレイ103を用いて規制情報メモリ31に記憶させておく必要がある。なお、本実施形態では、例えばレンタル会社の管理者が、規制情報メモリ31に新たなデータを記憶させる場合や、規制情報メモリ31に記憶されていたデータを変更又は消去する場合は、キーボード102から予め定められた暗証番号を入力しなければ、それらの作業を行うことができないように構成している。ただし、このような構成は必須ではなく、暗証番号を入力しなくても規制情報メモリ31のデータの削除や変更を行えるように構成してもよい。
【0030】
また、各会員番号には揚程規定の有無に加えて、揚程の上限(制限揚程)を示す制限揚程データが対応付けられている。ここで、制限揚程データはメートルを示す数値で表され、例えば会員番号1に対する制限揚程データは「12」となっており、12mを超える範囲で作業台8を昇降させることができないように制限される。同様に会員番号3に対する制限揚程データは「8」となっており、8mを超える揚程の範囲で作業台8を昇降させることができないように制限される。また、制限揚程データが「0」の場合は、揚程に制限を設けないことを意味しており、この場合は、ブーム5の最大揚程の範囲内(又は規制がある場合はその規制の範囲内)で作業台8を昇降させることができる。
【0031】
なお、制限揚程は、ブーム5の最大揚程又は揚程が規制されている場合その規制範囲内でしか設定できないようにしてもよい。例えば、会員番号3について揚程に規制が設定されていた場合、制限揚程を12(すなわち、規制揚程である10mを超える値)に設定しようとしても、コントロールユニット30は、その制限揚程データを規制情報メモリ31に記憶しないようにする。
【0032】
コントロールユニット30は、検出装置20の起伏角度検出器22及び伸長量検出器23から出力されるブーム5の起伏角度及びブーム5の伸長量に基づいて算出される作業台8の揚程を、規制情報メモリ31に記憶されている揚程規制の有無及び制限揚程(これらの情報を「規制情報」とも称する)に基づいて制限する。ここで、図5に示す模式図を参照しつつ、規制情報メモリ31に記憶されている揚程規制の有無及び制限揚程に基づいてコントロールユニット30が作業台8の揚程を制限する方法について説明する。
【0033】
図5に示す高所作業車1は、ブーム5の最大伸長量がLMAX、最小伸長量がLMINであり、ブーム5の最大仰角がθMAX、最大俯角がθMINとなっている。最大仰角とはブーム5が水平になっている状態から最大限に起立した状態までの角度をいい、最大俯角とはブーム5が水平になっている状態から最大限に伏せた状態までの角度をいう。したがって、図5においてブーム5の最大揚程はHMAX(本実施形態では15mとする)となる。また、旋
回台4の旋回中心軸Cを基準とする最大作業半径はRMAXになっている。この最大作業半
径RMAXは、ブーム5の起伏角度が水平になっているときの最大伸長量LMAXと等しい長さとなる。なお、図5において、旋回中心軸Cは地面に対して垂直になっているものとする。
【0034】
例えば、カードリーダ101によって読み取られた会員番号が「3」だった場合、コントロールユニット30は、規制情報メモリ31から会員番号3に対応する揚程規制の有無及び制限揚程を読み取る。図4(a)に示すように、規制情報メモリ31には、会員番号3に対して揚程の規制が有り、かつ制限揚程HLIM3が8mであることが記憶されている。これにより、コントロールユニット30は、作業台8の揚程が8mを超えないようにブーム5の起伏作動及び伸縮作動を制御する。具体的には、検出装置20の起伏角度検出器22及び伸長量検出器23から出力されるブーム5の起伏角度及びブーム5の伸長量に基づいて作業台8の揚程を算出し、算出した揚程が8mに達すると、作業者がブーム5の仰角又は伸長量を増加させるようにブーム操作レバー91を操作しても、コントロールユニッ
ト30は、それ以上揚程を増加させないために、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43を作動させないようにする。
【0035】
ここで、作業台8を図5の実線で示す位置から、作業者がブーム5の仰角を増加させるように操作レバーを操作した場合、コントロールユニット30は、ブーム5の仰角が増加するように起伏シリンダ42を作動させつつ、ブーム5の伸長量が減少するように伸縮シリンダ43を作動させて、図5において破線の矢印で示すように、8mの揚程を維持した状態で、作業台8が旋回中心軸Cの方向へ水平移動するように制御する。
【0036】
このようにブーム5の作動が規制されている状態で、会員番号3の作業者がブーム5を作動させる場合、ブーム5の先端の許容移動範囲は図5のハッチングで示す範囲となる。ただし、コントロールユニット30は、作業台8の揚程が8mになった状態で、作業者が規制解除スイッチ93をオン操作したままブーム操作レバー91を操作した場合は、ブーム5の先端は許容移動範囲を超えて移動することが可能となる。例えば、ブーム5が図5の実線で示す位置にあるときに、作業者が規制解除スイッチ93をオン操作しながら、ブーム5の仰角又は伸長量を増加させるようにブーム操作レバー91を操作した場合、コントロールユニット30は、その操作に応じてブーム5の仰角又は伸長量が増加するように、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43を作動させる。
【0037】
ここで、コントロールユニット30は、ブーム5の先端が許容移動範囲内にある場合と、許容移動範囲外にある場合とでは、同じ操作量でブーム操作レバー93が操作されたとしても、作業台8の移動速度が異なるように起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43の作動を制御する。例えば、ブーム5の先端が許容移動範囲内を移動しているときよりも、許容移動範囲を超えて移動しているときの方が、作業台8の移動速度が遅くなるように起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43の作動を制御する。
【0038】
ブーム5の先端が許容移動範囲を超えて移動しているときに、作業者が規制解除スイッチ93をオフにした場合、コントロールユニット30は、ブーム操作レバー91が操作されている状態であっても、起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43の作動を停止して、ブーム5の作動を停止させる。このとき、作業者がブーム5の先端を許容移動範囲内に戻す方向にブーム操作レバー91を操作(例えば、ブーム5の仰角を減少させる操作や、ブーム5の伸長量を減少させる操作など)した場合は、規制解除スイッチ93がオフになっている状態でも、コントロールユニット30は、ブーム操作レバー91の操作に応じて起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43の作動を制御する。
【0039】
次に、規制解除スイッチ93がオン操作された状態で、ブーム5の先端が許容移動範囲を超えて移動したことにより、作業台8の揚程が規制揚程HREG(10m)に到達した場
合は、規制解除スイッチ93がオン操作された状態であっても、コントロールユニット30は、それ以上の揚程となる起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43の作動を制限する。ただし、作業者がブーム5の先端を許容移動範囲内に戻す方向にブーム操作レバー91を操作した場合は、ブーム操作レバー91の操作に応じて起伏シリンダ42又は伸縮シリンダ43を作動させる。なお、規制解除スイッチとしては、上述したような制限揚程を解除するものに限らず、例えば、高所作業車の転倒防止等の安全性を向上させるための制限機能を解除しなければ高所作業車を移動させることができない、といった異常が生じた場合のために、当該制限機能を解除できる規制解除スイッチを設けてもよい。上述したような制限機能を実現する装置としては、例えば、ジャッキを設置しないとブームの作動ができないように規制し、ブームが格納されないとジャッキの格納ができないように規制するジャッキブームのインターロック装置などがある。
【0040】
また、例えばカードリーダ101によって読み取られた会員番号が「1」だった場合、
コントロールユニット30は、規制情報メモリ31から会員番号1に対応する揚程規制の有無及び制限揚程を読み取る。図4(a)に示すように、規制情報メモリ31には、会員番号1に対して揚程の規制が無く、かつ制限揚程HLIM1が12mであることが記憶されている。これにより、コントロールユニット30は、作業台8の揚程が12mを超えないようにブーム5の起伏作動及び伸縮作動を制御する。ここで、作業台8の揚程が制限揚程を超えないようにする場合の制御内容や、制限揚程を超える(及び超えた)場合の制御内容については、前述した会員番号3の場合と同様であるため詳しい説明は省略する。
【0041】
なお、図4(a)に示した例では、会員番号と、揚程規制の有無及び制限揚程の値とを対応付けていたが、例えば図4(b)に示すように、規制情報メモリ31に記憶させる情報の構成をより簡易化してもよい。図4(b)に示す例では、規制情報メモリ31には、「0」(資格情報が入力されなかったことを表す)又は「1」(資格情報が入力されたことを表す)で表される資格情報に関して、「0」に対応して作業台8の揚程を規制する(揚程規制有り)ことを示す情報を記憶し、「1」に対応して作業台8の揚程を規制しない(揚程規制無し)ことを示す情報を記憶しておく。そして、カードリーダ101は、初期状態においては資格情報として「0」をコントロールユニット30へ出力するようにし、所定の技能講習を修了したことを示す情報を記憶した非接触式ICカードの技能講習修了証を検知した場合は、資格情報として「1」をコントロールユニット30へ出力するようにする。これにより、コントロールユニット30は、カードリーダ101から資格情報として「1」が出力されなかった場合は(すなわち、資格情報が「0」のままであれば)作業台8の揚程を10m以下に制限する。
【0042】
次に、コントロールユニット30は、規制情報メモリ31に記憶されている規制情報に基づいて作業台8の揚程を制限する一方で、高所作業車1の稼働中に旋回台4、ブーム5、作業台8、上部操作装置9及び下部操作装置10などの作動状況を、図3に示した作動状況メモリ32に記憶している。ここで、作動状況メモリ32に記憶される作動状況データの内容について図6を参照して説明する。まず、図6(a)に示すように、コントロールユニット30は、RTC(Real Time Clock)などの時計を内蔵しており、カードリー
ダ101から会員番号を受信すると、その会員番号と会員番号を受信した年月日及び時刻を作動状況メモリ32の所定の記憶領域に記憶する。ここで、会員番号を受信した年月日及び時刻は、高所作業車1が稼働を開始した時刻(稼働開始時刻)として記憶される。
【0043】
コントロールユニット30は、カードリーダ101から会員番号を受信した後は、所定時間ごと(本実施形態では5秒ごと)に、稼働を開始してからの経過時間とともに、作業状況を示す各種作動状況データを作動状況メモリ32に順次記憶していく。本実施形態では、各種作動状況データとして、図6(b)に示すように、A~Kの11種類の作動状況データを記憶している。まず、作動状況データAはPTO操作レバー15のオン/オフ状態を示すデータであり、「0」はPTO操作レバー15がオフになっていることを示し、「1」はPTO操作レバー15がオンになっていることを示している。作動状況データBは、荷重検出器25から出力される作業台8の荷重を示すデータである。作動状況データCは伸長量検出器24から出力されるブーム5の伸縮長を示すデータである。作動状況データDは起伏角度検出器22から出力されるブーム5の起伏角度を示すデータである。作動状況データEは旋回角度検出器21から出力される旋回台4の旋回角度を示すデータである。
【0044】
作動状況データFは、ブーム5の伸縮長及び起伏角度に基づいてコントロールユニット30が算出した作業台8の揚程を示すデータである。作動状況データGはブーム5の伸縮長及び起伏角度に基づいてコントロールユニット30が算出したブーム5の作業半径(旋回中心軸Cからブーム5の先端までの水平距離)を示すデータである。作動状況データHは傾斜角度検出器26から出力される高所作業車1の前傾/後傾角度を示すデータである
。作動状況データIは上部操作装置9から出力される信号の有無を示すデータであり、「0」は上部操作装置9からコントロールユニット30に対して操作信号が出力されていないことを示し、「1」は上部操作装置9からコントロールユニット30に対して何等かの操作信号が出力されていることを示している。作動状況データJは下部操作装置10から出力される信号の有無を示すデータであり、「0」は下部操作装置10からコントロールユニット30に対して操作信号が出力されていないことを示し、「1」は下部操作装置10からコントロールユニット30に対して何等かの操作信号が出力されていることを示している。作動状況データKは規制解除スイッチ93のオン/オフ状態を示すデータであり、「0」は規制解除スイッチ93がオフになっていることを示し、「1」は規制解除スイッチ93がオンになっていることを示している。
【0045】
前述したように、コントロールユニット30は、図6(b)に示すように、高所作業車1が稼働を開始してから5秒が経過するごとに作動状況データA~Kを時系列に作動状況メモリ32に記憶していく。そして、エンジンキースイッチ11がオフにされると、作動状況データA~Kの記憶を終了し、図6(a)に示すように、そのときの年月日及び時刻を稼働終了時刻として作動状況メモリ32の所定の記憶領域に記憶する。
【0046】
作動状況メモリ32に記憶されている各種作動状況データは、下部操作装置10のキーボード102からコントロールユニット30に対して所定のコマンドを入力することで、ディスプレイ103に表示させることができる。また、下部操作装置10に例えばUSB(Universal Serial Bus)コネクタを設けておき、作動状況メモリ32に記憶されている各種データをこのUSBコネクタに挿入したUSBメモリに保存できるようにしてもよい。この場合、各種作動状況データをモニタやプリンタへ出力することができるアプリケーションを予めパソコンにインストールしておき、当該パソコンからUSBメモリに保存された各種作動状況データをモニタやプリンタへ出力できるようにしてもよい。
【0047】
作動状況メモリ32に記憶されている各種作動状況データの内容を分析することで、今後、作動状況データが記憶された作業現場と同様の作業現場で、同様の作業を行う場合に、その作業をより効率的に行うために有用な機能を判断することができる。ここで、図7に作動状況データの分析例をまとめた表を示す。図7に示す表において、「作業車のタイプ」欄には、自走式の作業車、トラックの車両を使用した作業車(トラックマウントタイプ)などの種別が表記されている。ここで、「作業車のタイプ」欄に「共通」と記している場合は、すべての作業車の種別に共通することを意味している。「作動状況データ」欄には、図6に示した作動状況データA~Kのうち、分析対象となる作動状況データが表記されている。「傾向」欄には、分析対象となる作動状況データが示している傾向が表記されている。「分析結果」欄には、分析対象となる作動状況データが示している傾向から、作業中にどのような事象が起きていたかが表記されている。「望ましい機能」欄には、分析結果に基づいて作動状況データが取得された作業現場で作業を行う場合、作業車がどのような機能を備えているのが望ましいかが記載されている。
【0048】
図7の表のNo.1は、作動状況データF及びGが、作業半径の変化が顕著であるのに対して揚程の変化が乏しいことを示していたケースである。この場合、作業台は水平方向の移動が多かったことが推測されるので、ブーム式の昇降装置を備えた高所作業車を使用する場合、その高所作業車に作業台を水平面内で直線移動させる水平移動制御機能が備わっていることが望ましいといえる。図7の表のNo.2は、作動状況データF及びGが、揚程の変化が顕著であるのに対して作業半径の変化が乏しいことを示していたケースである。この場合、作業台は垂直方向の移動が多かったことが推測されるので、ブーム式の昇降装置を備えた高所作業車を使用する場合、その高所作業車作業台を垂直面内で直線移動させる垂直移動制御機能が備わっていることが望ましいといえる。
【0049】
図7の表のNo.3は、作動状況データC、D及びEの各数値の変化が反復的であることを示していたケースである。この場合、作業台は同じ場所の行き来が頻繁に行われていたことが推測されるので、使用する作業車にはティーチングプレイバック機能が備わっていることが望ましいといえる。図7の表のNo.4は、作動状況データAが、作業車の稼働中においてPTO操作レバー15がオンになっていることを示している期間中に、作動状況データI及びJが、上部操作装置及び下部操作装置からの操作信号の出力が少ないことを示していたケースである。この場合、作業現場での作業中にエンジンEが作動していても昇降装置などの作業装置はあまり作動していなかったことが推測されるので、使用する作業車にアイドリングストップ機能が備わっていることが望ましいといえる。
【0050】
図7の表のNo.5は、作動状況データFが、昇降装置の揚程が最大揚程又は規定揚程に到達することがほとんどなかったことを示していたケースである。この場合、作業中は昇降装置の揚程を上げ切る必要がなかったことが推測されるので、例えば同系列の高所作業車において、最大揚程が1ランク下の高所作業車が適していたといえる。図7の表のNo.6は、作動状況データFが、昇降装置の揚程が頻繁に最大揚程又は規定揚程に到達していたことを示していたケースである。この場合、作業中は昇降装置の揚程を上限まで使い切っていることが推測されるので、例えば同系列の高所作業車において、最大揚程が1ランク上の高所作業車が適していたといえる。
【0051】
図7の表のNo.7は、作動状況データBが、作業台の荷重が上限値に近い値を示していたケースである。この場合、作業床の積載量(負荷)が大きかったことが推測されるので、積載荷重が大きい大型の作業床を備えた、いわゆるプラットフォームタイプの高所作業車が適していたといえる。図7の表のNo.8は、作動状況データAが、日中よりも日没後(稼働開始時刻及び経過時間から判断可能)にオンにされている期間が長いことを示していたケースである。この場合、夜間作業が多いことが推測されるので、騒音対策として油圧ポンプP(図3参照)の駆動源をエンジンEから電気モータへ切り替えることができるバッテリユニット付きの高所作業車が適していたといえる。
【0052】
図7の表のNo.9は、作動状況データHが、高所作業車の前傾角度又は後傾角度が所定値(例えば5度)以上であったことを示していたケースである。この場合、作業が傾斜地で行われる頻度が高いことが推測されるので、高所作業車に備えられているリアジャッキのストロークよりもフロントジャッキのストロークの方が長い、いわゆるフロントロングジャッキを備えた高所作業車が適していたといえる。図7の表のNo.10は、作動状況データAが、頻繁にPTO操作レバー15がオン/オフされることを示していたケースである。この場合、高所作業車が短距離の移動を頻繁に行っていたことが推測されるので、いわゆるローラージャッキを備えた高所作業車が適していたといえる。
【0053】
図7の表のNo.11は、作動状況データKが、規制解除スイッチのオン操作が頻繁に行われていたことを示していたケースである。この場合、高所作業車の転倒防止等のために高所作業車に装備されている安全機能(例えば、ジャッキを設置しないとブームの作動ができないように規制し、ブームが格納されないとジャッキの格納ができないように規制するジャッキブームのインターロック装置や作業範囲規制装置など)が頻繁に解除されていたことが推測されるので、無資格者などの第三者が昇降装置を操作していた可能性があり、高所作業車を使用した者が資格を有していたか否かを確認する必要がある。図7の表のNo.12は、作動状況データBが、作業台の前方、側方、上方又は下方へ過剰な荷重が検出されたことを示していたケースである。この場合、作業台に異常な衝撃が加わった、又は、作業台が作業対象となる壁面などに押し付けられたなど、通常の操作では起こりにくい状況になったことが推測されるので無資格者などの第三者が昇降装置を操作していた可能性があり、高所作業車を使用した者が資格を有していたか否かを確認する必要がある。図7の表のNo.13は、作動状況データI及びKにより、上部操作装置よりも下部
操作装置から操作信号が出力される頻度が高かいことを示していたケースである。この場合、下部操作装置による昇降装置の操作が多かったことになるので、複数の作業者が作業を行っていたことが推測される。したがって、例えばレンタル会社が会員に貸し出した高所作業車が、そのような作動状況データを記憶していた場合、レンタル会社は、その会員が次に同様の作業を行う際に、人件費の削減を目的として、昇降装置のオペレータとともに高所作業車を貸し出すことを提案することができる。
【0054】
なお、作業車が搭載している作業装置は、昇降装置に限らず、例えば穴掘建駐車の穴掘り装置やクレーン車のクレーン装置であってもよい。この場合、作業装置を操作するために必要となる資格を所持していることを示す情報がコントロールユニットに入力されたかったときは、コントロールユニットは穴掘り装置やクレーン装置が作動しないように制御する。また、本実施形態における作業車は、ブーム式の昇降装置を備えた高所作業車であったが、昇降装置はブーム式に限らず、いわゆるシザーズ式やバーティカル式の昇降装置においても同様に構成し同様の効果を得ることができる。また、上記の実施形態では、高所作業車の所有者がレンタル会社であり、高所作業車の使用者は当該レンタル会社と高所作業車のレンタル契約を交わした者である場合を例にして説明したが、例えば高所作業車の所有者は、電設作業や建設作業を行う会社であり、高所作業車の使用者はその会社の社員であってもよい。そして、各社員の社員番号が記憶されたメモリを有する非接触式ICカードを社員カードとして用い、社員番号に基づいて作業装置の機能を制限するように構成してもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、会員カードに記憶されている会員番号をカードリーダ101によって読み取る場合を例にして説明したが、このような構成に限らず、イモビライザー機能を利用した会員番号の入力方法を採用してもよい。例えば、下部操作装置10にキースイッチを設け、このキースイッチをオンにしなければ下部操作装置10を操作することができないように構成しておく。そして、このキースイッチのキーには電子チップが埋め込まれており、レンタル会社が高所作業車を会員に貸し出す際に、その会員の会員番号をキーに埋め込まれた電子チップに記憶しておく。このような構成において、キースイッチがオンにされたときに、キーに埋め込まれた電子チップに記憶されている会員番号を読み取ってコントロールユニット30へ送信するように構成する。
【0056】
また、上記の実施形態では、コントロールユニット30において、カードリーダ101によって読み取られた会員番号の入力について特に制限を設けない場合を例にして説明したが、例えば、コントロールユニット30は、キーボード102から予め定められた暗証番号が入力された場合に限って、カードリーダ101などによって読み取られた会員番号を受け付けるように構成してもよい。また、キーボード102から会員番号(又は管理者ID)とパスワードとを入力するように構成し、キーボード102から入力された会員番号及びパスワードが、コントロールユニット30に予め記憶されていた会員番号(又は管理者ID)及びパスワードと一致したときに、キーボード102から入力された会員番号(又は管理者ID)を受け付けるように構成してもよい。このように構成することで、会員番号の入力を特定の権限を有する者に限定することができるので、例えば会員カードを所持していたとしても、レンタル会社がその者に高所作業車の使用を許可していなければ高所作業車が使用されないようにすることができる。
【0057】
さらに、本発明はトラックマウントタイプの作業車に限定されるものではなく、例えば、鉄輪を有して軌道上を走行自在な高所作業車や、クローラ装置を有して走行動自在に構成された高所作業車においても同様に構成し同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 高所作業車
2 運転キャビン
3 車体
4 旋回台
5 ブーム
6 垂直ポスト
8 作業台
9 上部操作装置
10 下部操作装置
11 エンジンキースイッチ
15 PTO操作レバー
20 検出装置
30 コントロールユニット
31 規制情報メモリ
32 作動状況メモリ
40 油圧ユニット
91a 規制高さ設定スイッチ
91b 規制作業半径設定スイッチ
92 規制解除スイッチ
93 警報装置
101 タッチパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7