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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075058
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】固形粉体化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20220511BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220511BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220511BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/92
A61K8/25
A61Q1/00
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185599
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】山田 千晶
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB152
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB352
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC431
4C083AC432
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD511
4C083BB11
4C083BB23
4C083BB26
4C083CC11
4C083CC12
4C083DD21
4C083EE03
4C083EE05
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】
マイクロプラスチックフリーでありながら、成型性、使用感、落下強度が良好でかつ高い保湿効果を有する固形粉体化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】
成分(A)~(C)を含有する固形粉体化粧料。
(A)抱水性油剤
(B)ホスホリルコリン基含有重合体
(C)球状シリカ
成分(A)抱水性油剤としては、ステアリン酸水添ヒマシ油が好ましく、成分(B)ホスホリルコリン基含有重合体としては、ポリクオタニウム-61が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)~(C)を含有する固形粉体化粧料。
(A)抱水性油剤
(B)ホスホリルコリン基含有重合体
(C)球状シリカ
【請求項2】
成分(A)抱水性油剤が、ステアリン酸水添ヒマシ油である、請求項1に記載の固形粉体化粧料。
【請求項3】
成分(B)ホスホリルコリン基含有重合体が、ポリクオタニウム-61である、請求項1又は請求項2に記載の固形粉体化粧料。
【請求項4】
プラスチックフリーであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の固形粉体化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形粉体化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
パウダーファンデーションに代表される固形粉末化粧料には、なめらかな使用感や柔らかな感触を付与する目的で、マイクロプラスチックビーズが配合されていることが多い(特許文献1、2参照)。しかしながら、近年、マイクロプラスチックビーズが海洋環境において大きな問題になっており、マイクロプラスチックビーズを含有しない化粧料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-300410号公報
【特許文献2】特表平10-502389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、マイクロプラスチックフリーでありながら、成型性、使用感、落下強度が良好でかつ高い保湿効果を有する固形粉体化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、本発明を完成するにいたった。すなわち本発明は次のとおりである。
(1)
成分(A)~(C)を含有する固形粉体化粧料。
(A)抱水性油剤
(B)ホスホリルコリン基含有重合体
(C)球状シリカ
(2)
成分(A)抱水性油剤が、ステアリン酸水添ヒマシ油である、(1)に記載の固形粉体化粧料。
(3)
成分(B)ホスホリルコリン基含有重合体が、ポリクオタニウム-61である、(1)又は(2)に記載の固形粉体化粧料。
(4)
プラスチックフリーであることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか1に記載の固形粉体化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固形粉体化粧料は、マイクロプラスチックフリーでありながら、成型性、使用感、落下強度が良好でかつ高い保湿効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明の固形粉体化粧料に配合する成分(A)抱水性油剤は、下記の抱水性試験にて、自重と等量以上の抱水力のある油剤であればいずれのものも使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を併用して組み合わせて使用してもよい。抱水性試験とは、常温で評価油剤10gに精製水を徐々に滴下しながら練り込み、精製水が入らなくなった点を終点とし、加えた精製水量を求める。具体的には、例えば、ラノリン、還元ラノリン、ラノリン脂肪酸、ラノリンアルコール、酢酸ラノリン、ヒドロキシラノリン、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、アミノ酸フィトステロール、ヒマシ油、ステアリン酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸水添ヒマシ油、ヘキサグリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、(イソステアリン酸/ベヘン酸)(グリセリル/ポリグリセリル-6)エステルズ、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等を挙げることができる。本発明においては、その使用感及び保湿効果の観点から、ステアリン酸水添ヒマシ油を用いることが好ましい。
【0009】
成分(A)抱水性油剤は、本発明の固形粉体化粧料全量に対し、0.01~5質量%配合することが好ましく、0.1~1質量%配合することがさらに好ましい。0.01質量%未満の配合では、良好な使用感が得られない場合がある。5質量%を超えて配合すると、使用感にべたつきが認められ、ケーキングを生じる場合がある。
【0010】
本発明の固形粉体化粧料に配合する成分(B)ホスホリルコリン基含有重合体は、化粧料に配合し得るものであればいずれのものも使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を併用して組み合わせて使用してもよい。かかるホスホリルコリン基含有重合体としては、具体的には、化粧品成分表示名称として、ポリクオタニウム-51(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体)、ポリクオタニウム-65(2-メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ナトリウム共重合体)、ポリクオタニウム-64(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体)、ポリクオタニウム-61(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体)等が挙げられる。本発明においては、その保湿効果の点からポリクオタニウム-61を用いることが好ましい。
【0011】
成分(B)ホスホリルコリン基含有重合体は、本発明の固形粉体化粧料全量に対し、0.0001~0.5質量%配合する。0.0001質量%未満の配合では、良好な保湿効果が得られない場合がある。0.5質量%を超えて配合すると、使用感にべたつきが認められる場合がある。
【0012】
本発明の固形粉体化粧料に配合する成分(C)球状シリカは、無水ケイ酸、二酸化ケイ素とも呼ばれ、平均粒子径が1~50μmであることが好ましい。球状シリカは多孔質、中空、無孔質のいずれを用いてもよい。かかる球状シリカの市販品として、ゴッドボールE-6C、E-16C、D-11C、D-25C、D11-796C、E2-824C、ゴッドボールE-90C、STパウダーG-MG、STパウダーG-MY(以上、鈴木油脂工業社製)、サンスフェアNP-30、H-31、H-51、H-32、H-52、H-121、H-201(AGCエスアイテック社製)、シリカマイクロビードP-500、P-4000(以上、日揮触媒化成社製)、シリカビーズSB-150、SB-300、SB-700、SB-705、SBNP-810(以上、三好化成社製)等があげられる。
【0013】
また、本発明において成分(C)球状シリカは、疎水化処理剤を用いて表面処理したものであってもよい。疎水化処理の例としては以下の処理が挙げられ、1種を単独で、もしくは2種以上を併用して処理することができるが、これらに限られるわけではない。
(1)メチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業社製 商品名:シリコンKF99P)、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー(信越化学工業社製 商品名:シリコンKF-9901)、ジメチルポリシロキサン、特開2001-72891記載の分岐シリコーン系(エトキシ官能)処理剤(信越化学工業社製 商品名:KF9908,KF9909)、WO2004/091563記載のアクリルシリコーン処理剤(信越化学工業社製 商品名:KP574)等のシリコーン類を用いた処理。
(2)オクチルトリエトキシシラン(EVONIK DEGUSSA社製 商品名:DYNASILAN OCTEO)、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン化合物を用いた処理。
(3)パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を用いた処理。
(4)デキストリンの水酸基の一部をアルキルエステル化したデキストリンパルミテート等のアルキル化糖類処理;脂肪酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等を用いた金属セッケン処理。
(5)N-ラウロイル-L-リジン、グルタミン酸或いはそのアルカリ塩、アシル化アミノ酸等のアミノ酸類処理。
(6)パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルリン酸、パーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロアルキル鎖長がC4~C6の官能基を含んだコポリマー等を用いたフッ素処理。
(7)ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩処理
【0014】
成分(C)球状シリカは、本発明の固形粉体化粧料全量に対し、5~30質量%配合する。5質量%未満の配合では、良好な使用感が得られない場合がある。30質量%を超えて配合すると、成型性の低下が認められる場合がある。
【0015】
本発明の固形粉体化粧料は、プラスチックフリーであることが、世界環境保全の観点から好ましい。
【0016】
本発明の固形粉体化粧料には、成分(A)、成分(B)以外の油剤を配合することが好ましい。油剤を配合することにより、固形の形状を保つことが出来るためである。かかる油剤としては、動物油、植物油、合成油脂等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油などの性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、等の油剤が挙げられる。これらの油剤の中でも、シリコーン油類を必須成分とすることが使用感上好ましい。
【0017】
本発明の固形粉体化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で前記の球状シリカ以外の粉体を配合する。本発明に配合し得る粉体としては、酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、バーミキュライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、パール顔料、オキシ塩化ビスマスなどの無機顔料や、赤色3号、赤色10号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色205号、黄色401号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号などの有機色素や、クロロフィルやβ-カロチンなどの天然色素や、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなどの金属石鹸等が挙げられる。
【0018】
本発明の固形粉体化粧料には、紫外線吸収剤を配合することが出来る。紫外線吸収剤としては、通常、化粧料に用いられるものであれば何れでもよく、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリアニリノ-パラ-(カルボ-2'-エチルヘキシル-1'-オキシ)-1,3,5-トリアジン等のベンゾフェノン系、サリチル酸-2-エチルヘキシル等のサリチル酸系、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等のPABA系、パラメトキシ桂皮酸-2-エチルヘキシル等の桂皮酸系、4-tert-4'-メトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0019】
本発明の固形粉体化粧料には、前記以外の通常化粧料に配合し得る成分を配合することが出来る。かかる成分としては界面活性剤、高分子、水性成分、防腐剤、美容成分、香料等が挙げられる。
【0020】
本発明の固形粉体化粧料の製造方法は特に限定されない。たとえば、粉体と必要に応じたその他成分を混合した後、金皿にプレス成形する方法、溶剤と混合してスラリー状としたものを充填した後に溶剤除去、成形する湿式法が挙げられ、また紙などの支持体に担持させたものであってもよい。
【0021】
本発明の固形粉体化粧料は、日焼け止め、ファンデーション、コンシーラー、白粉、頬紅、アイシャドウ、アイブロウ、口紅等で実施することができ、特に紫外線遮断効果を発揮することが出来ることから、ファンデーション、白粉、頬紅であることが好ましい。
【実施例0022】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例の評価方法について述べる。
[使用感]
メイクアップ専門の官能評価員3名が合議により、固形粉体化粧料をスポンジパフで塗布した際の「伸びの良さ」、「柔らかさ」、「しっとり感」、「密着感(付着性)」、「ほぐれの良さ」、「ケーキングのなさ」、経時(5時間後)での「化粧持ち」、「保湿効果の持続性」」について下記の通り評価した。
「◎」:非常に良好である
「○」:良好である
「△」:あまり良好ではない
「×」:良好ではない
[落下強度]
固形粉体化粧料を所定の容器に装填し、50cmの高さから水平に落下させたときの、プレス表面の状態が変化するまでの回数を試験し、下記の通り評価した。
「○」:50cm10回以上
「△」:50cm5回以上
「×」:50cm2回以下
【0024】
表1に示した処方で定法により固形粉体ファンデーションを調合し長径5.35cm短径4.50cmの金皿にプレス圧25kgf/cmでプレス成型し、所定の容器に装填し、試験に供した。
【0025】
【表1】
【0026】
表1中の注については、下記の市販原料を使用した。
注1:S A - タ ル ク J A - 1 3 R(三好化成社製)
注2:S A - セ リ サ イ ト F S E(三好化成社製)
注3:L P - S - 1 5 0(三好化成社製)
注4:S A - 板 状 硫 酸 バ リ ウ ム H M(三好化成社製)
注5:窒 化 ホ ウ 素 S H P - 6(水島合金鉄社製)
注6:S A - チ タ ン C R - 5 0(三好化成社製)
注7:S A - イ エ ロ ー L L - 1 0 0 P(三好化成社製)
注8:S A - ベ ン ガ ラ 七 宝 三好化成社製)
注9:S A - ブ ラ ッ ク B L - 1 0 0(三好化成社製)
注10:サ ン ス フ ェ ア N P - 3 0(AGC社製)
注11:サ ン ス フ ェ ア L - 5 1(AGC社製)
注12:マ イ ク ロ ス フ ェ ア ー M - 1 0 0(松本油脂社製)
注13:東 レ ナ イ ロ ン パ ウ ダ ー S P - 5 0 0(東レ社製)
注14:T O S P E A R L 2 0 0 0 B *(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
注15:P L A S T I C P O W D E R D - 8 0 0(東色ピグメント社製)
注16:キ ャ ス ト ラ イ ド M S(ナショナル美松社製)
注17:L i p i d u r e - S(日油社製)
注18:シ リ コ ン S H 2 0 0 C - 1 0 0 c S t(DOW CHEMICAL社製)
注19:ユ ビ ナ ー ル M C 8 0(BASF社製)
【0027】
【表2】
【0028】
表2に示した通り、本発明の固形粉体化粧料は、成型性、使用感、保湿効果、落下強度のすべての面で優れていた。これに対し、球状シリカを有機球状粉体に代替した比較例1~4は、特に、密着感、落下強度に課題を有していた。また、抱水性油剤を配合していない比較例5は、使用感、落下強度ともに課題を有していた。さらに、ホスホリルコリン基含有重合体を配合していない比較例6は、保湿性(しっとり感、保湿効果の持続性)に課題を有していた。