(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075070
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】昇降装置及び昇降方法
(51)【国際特許分類】
E04H 12/34 20060101AFI20220511BHJP
E04H 12/00 20060101ALI20220511BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E04H12/34
E04H12/00 Z
E04G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185617
(22)【出願日】2020-11-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 試験日 令和2年7月12日 試験場所 東京システム特機株式会社工事本部(東京都小平市小川町1-423-9)
(71)【出願人】
【識別番号】303039567
【氏名又は名称】東京システム特機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光男
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174CA03
2E174CA16
2E174CA30
2E174CA38
2E174CA43
2E174DA12
2E174DA24
(57)【要約】
【課題】台棒を安全に昇降させることができる昇降装置及び昇降方法を提供する。
【解決手段】本技術に係る昇降装置は、部材を吊り上げ又は吊り下ろす台棒2を、柱状物3に沿って昇降させる昇降装置1において、台棒2と、上記柱状物3に沿って立設される支柱4を備え、上記支柱4には、上記台棒2を昇降する昇降機構6と、上記台棒2を所定の位置で固定する位置決め機構7が設けられる。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材を吊り上げ又は吊り下ろす台棒を、柱状物に沿って昇降させる昇降装置において、
台棒と、
上記柱状物に沿って立設される支柱を備え、
上記支柱には、上記台棒を昇降する昇降機構と、上記台棒を所定の位置で固定する位置決め機構が設けられた、
昇降装置。
【請求項2】
上記昇降機構は、上記台棒が取り付けられた台車と、上記支柱の長手方向にわたって連続するレール部とを有し、
上記台車が上記レール部に沿って走行することにより上記台棒を昇降移動可能とする請求項1記載の昇降装置。
【請求項3】
上記位置決め機構は、上記レール部の長手方向に沿って設けられた複数の挿通口と、上記挿通口に挿通される固定ピンとを有し、
上記固定ピンを上記台車に当接させることにより上記台棒の位置を固定する請求項1又は2に記載の昇降装置。
【請求項4】
上記支柱の上部には、滑車部材が着脱可能に取り付けられ、
上記台車は、ロープの一端が取り付けられ、上記滑車部材に掛装された上記ロープによって昇降される請求項2に記載の昇降装置。
【請求項5】
上記昇降機構は、上記台棒の中間部を支持する支持台車と、上記台棒の下端が載置される主動台車を有し、上記ロープは、上記主動台車に取り付けられる請求項4に記載の昇降装置。
【請求項6】
上記台車は、上記レール部を走行する複数のローラーが設けられた走行部を有し、
上記レール部は、上記ローラーが走行する溝部を有し、
上記走行部は、上記溝部の端部に設けられた開口部から上記溝部内に挿通される請求項2、4又は5のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項7】
上記支柱は、上記柱状物に連結固定される請求項1~6のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項8】
上記柱状物は、複数の柱状パーツが組み上げられて構成されている請求項1~7のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項9】
上記支柱は、複数の支柱パーツが組み上げられて構成されている請求項1~8のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項10】
部材を吊り上げ又は吊り下ろす台棒を、柱状物又は上記柱状物を構成する柱状パーツに沿って昇降させる昇降方法において、
台棒と、
台棒が取り付けられた台車と、
上記柱状物又は上記柱状パーツに沿って立設される支柱と、
上記支柱に連結され、上記支柱の長手方向にわたって連続するレール部とを有し、
上記台車が上記レール部に沿って走行することにより上記台棒を昇降移動させる昇降方法。
【請求項11】
上記台棒の中間部を支持する支持台車と、上記台棒の下端を支持する主動台車を有し、
上記主動台車に、上記支柱に設けられた滑車に掛け渡されたロープの一端が取り付けられ、
上記ロープによって上記台棒の昇降操作される請求項10に記載の昇降方法。
【請求項12】
柱状物を構成する柱状パーツを台棒によって吊り上げ、又は吊り下ろす柱状物の台棒工法において、
上記台棒と、
台棒が取り付けられた台車と、
上記柱状物又は上記柱状パーツに沿って立設される支柱と、
上記支柱に連結され、上記支柱の長手方向にわたって連続するレール部とを有し、
上記台車が上記レール部に沿って走行することにより上記台棒を昇降移動させる台棒工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、部材を吊り上げ又は吊り下ろす台棒を柱状物に沿って昇降させる昇降装置及び昇降方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送配電線柱やアンテナ柱、照明柱、無線柱等の各種用途において、組立式の鉄塔が用いられている。組立式の鉄塔は、管状の柱状パーツを継ぎ合わせて1本の柱にしたものであり、その建柱方法としては、柱状パーツを横倒し状態で継ぎ合わせて組み立てた鉄塔を引き起こす建て起こし方式と、柱状パーツを下部から組み上げていく積み上げ方式に大別される。
【0003】
積み上げ方式による工法は、鉄塔の柱状パーツをクレーンなどの大型重機で吊り上げるクレーン吊り上げ工法と、台棒と称される棒状の部材を既設の柱状パーツ等に固定し、台棒に設けられた滑車に掛装されたワイヤロープによって柱状パーツを吊り上げる台棒工法がある。台棒工法は、現場で鉄塔を横倒し状態で組み立てることや、大型重機を搬入することが困難な山間部や狭小地等においても、現場組み立てが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
台棒工法では、柱状パーツを組み上げていく毎に、既設の柱状パーツに固定されていた台棒を取り外し、最上部の柱状パーツまで引き上げて固定する。このような作業においては、誤って台棒を落下させる事故を防がなければならない(
図24参照)。例えば、山間部や狭小地等における比較的低い高さの鉄塔建柱工事においては、人力によって台棒の着脱や搬送が行われるため、特に落下防止対策が求められている。
【0006】
そこで、本技術は、台棒を安全に昇降させることができる昇降装置及び昇降方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本技術に係る昇降装置は、部材を吊り上げ又は吊り下ろす台棒を、柱状物に沿って昇降させる昇降装置において、台棒と、上記柱状物に沿って立設される支柱を備え、上記支柱には、上記台棒を昇降する昇降機構と、上記台棒を所定の位置で固定する位置決め機構が設けられたものである。
【0008】
また、本技術に係る昇降方法は、部材を吊り上げ又は吊り下ろす台棒を、柱状物又は上記柱状物を構成する柱状パーツに沿って昇降させる昇降方法において、台棒と、台棒が取り付けられた台車と、上記柱状物又は上記柱状パーツに沿って立設される支柱と、上記支柱に連結され、上記支柱の長手方向にわたって連続するレール部とを有し、上記台車が上記レール部に沿って走行することにより上記台棒を昇降移動させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、昇降機構及び位置決め機構により台棒を移動、固定させるため、人力によって台棒の着脱や搬送を行う場合と異なり、台棒の落下事故を防止でき、安全に工事を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、柱状パーツが組み上げられて構成される柱状物を示す図である。
【
図2】
図2は、支柱パーツが柱状パーツに固定されている状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、レール部の連結を説明する斜視図である。
【
図6】
図6は、位置決め機構によって主動台車を固定する状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、最下部の柱状パーツを掘削孔内に設置する工程を示す図である。
【
図8】
図8は、地上に突出している柱状パーツの上部に柱状パーツを組み付ける工程を示す図である。
【
図9】
図9は、最下部の支柱パーツを柱状パーツに隣接して設置する工程を示す図である。
【
図10】
図10は、昇降装置により柱状パーツを吊り上げる工程を示す図である。
【
図11】
図11は、昇降装置により支柱パーツを吊り上げる工程を示す図である。
【
図12】
図12は、昇降装置により支柱パーツを吊り上げる工程を示す図である。
【
図13】
図13は、昇降装置により台棒を上昇させる工程を示す図である。
【
図14】
図14は、昇降装置により台棒を上昇させる工程を示す図である。
【
図15】
図15は、昇降装置により台棒を上昇位置で固定する工程を示す図である。
【
図16】
図16は、昇降装置により柱状パーツを吊り上げる工程を示す図である。
【
図17】
図17は、昇降装置により柱状パーツを吊り上げる工程を示す図である。
【
図18】
図18は、昇降装置により支柱パーツを吊り上げる工程を示す図である。
【
図19】
図19は、昇降装置により台棒を上昇させる工程を示す図である。
【
図20】
図20は、昇降装置を使用した台棒工法により建柱された柱状物を示す図である。
【
図21】
図21は、昇降装置により支柱パーツを吊り上げる工程を示す図である。
【
図22】
図22は、地上に設置された支柱パーツを、台棒とともに、地上作業員によって撤去する工程を示す図である。
【
図23】
図23は、柱状物の建柱後、支柱が撤去された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術が適用された昇降装置及び昇降方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
本技術が適用された昇降装置1は、部材を吊り上げ又は吊り下ろす台棒を、柱状物に沿って昇降させる昇降装置であり、昇降装置1は、台棒2と、柱状物3に連結固定される支柱4を備え、支柱4には、台棒2を昇降する昇降機構6と、台棒2を所定の位置で固定する位置決め機構7を備える。
【0013】
[柱状物]
柱状物3は、送配電線柱やアンテナ柱、照明柱、無線柱等の各種用途において用いられる組立式の塔であり、複数の柱状パーツが組み上げられることにより構成される。各柱状パーツは、接地面から順に組み上げられ、上方の柱状パーツは、台棒工法によって吊り上げられる。
【0014】
例えば、
図1に示すように、柱状物3は、複数の柱状パーツ10が連結されることにより形成される。各柱状パーツ10は、円筒形且つ断面円錐形をなし、基部から先端部向かって漸次小径化されている。したがって、柱状物3は、上方に向かって先細となり、上方に向かうにつれて、吊り上げる柱状パーツ10も小径化され、軽量化が図られることとなる。なお、柱状物3の形状は、先細形状に限らず、太さが変わらない柱状物であってもよい。また、柱状物3の形状は特に制限はなく、円柱以外にも、四角柱その他の断面多角形状でもよい。
【0015】
また、各柱状パーツ10は、先端部に、上部に組付けられる他の柱状パーツ10の基部が嵌合することにより連結される。なお、各柱状パーツ10の連結方法は特に制限はなく、嵌合以外の連結方法であってもよい。
【0016】
また、柱状パーツ10には、作業員が上って作業が可能な足場を設けることが好ましい。これにより、後述する支柱パーツ5を上った作業員と柱状パーツ10を上った作業員の2名で建柱作業を行うことができる。
【0017】
柱状物3の柱状パーツ10は、柱を構成する部材以外にも、例えば照明やアンテナ等の機能部材が含まれる。本技術に係る昇降装置1は、これら柱状物3の用途に応じた機能を担う部材も昇降可能である。
【0018】
なお、柱状物3の材質は、特に制限はなく、用途や高さ等に応じて適宜設計することができる。例えば柱状物3は、鉄塔である。
【0019】
[台棒]
これら柱状パーツ10を吊り上げる台棒2は、例えば円柱状をなし、先端部に第1の滑車20が取り付けられている。第1の滑車20は、荷上げ用ロープ21が掛け渡され、柱状物3の柱状パーツ10や、支柱4の支柱パーツ5を吊り上げ、また吊り下ろすものである(
図11参照)。
【0020】
[支柱]
支柱4は、柱状物3と隣接して設けられ、後述する昇降機構6が設けられることにより、台棒を柱状物3に沿って昇降させるために用いられるものである(
図13参照)。支柱4は、四角柱等の多角形の柱、その他の形状をなす柱状体であり、複数の支柱パーツ5が長手方向に連結されて構成される。各支柱パーツ5は、例えば平面視で正方形状に直立配置された4本のパイプ11と、各パイプ11を連結する連結部12とが溶接等により一体化されて四角柱状に形成されている。また、各支柱パーツ5は、上下面に連結板13が設けられ、下部の支柱パーツ5の上面連結版13と上部支柱パーツ5の下面連結版13とがボルトとナット等の締結具により連結されることにより、組み上げられる。
【0021】
また、各支柱パーツ5は、柱状物3の柱状パーツ10に連結固定される。固定方法に制限はなく公知の方法を採用できる。例えば、
図2に示すように、支柱パーツ5に固定された金具15と、柱状パーツ10の周囲に掛け渡したバンド16を連結することにより、固定することができる。これにより、支柱4は、柱状パーツ10に支持された安定した状態で、台棒2を昇降させ、また、台棒2によって柱状パーツ10や支柱パーツ5の吊り上げや吊り下ろしを行うことができる。
【0022】
なお、各支柱パーツ5は、上下方向に延びるパイプ11間を連結する連結部12が作業者の足場としても機能し、支柱パーツ5上で台棒2の昇降作業や、支柱パーツ5及び柱状パーツ10の昇降作業や取り付け及び取り外し作業を行うことができる。
【0023】
[昇降機構]
台棒2は、昇降機構6によって支柱4に沿って昇降される。昇降機構6は、台棒2が取り付けられる支持台車22及び主動台車24と、支柱4の長手方向にわたって連続するレール部23とを有し、支持台車22及び主動台車24がレール部23に沿って走行することにより台棒2を昇降移動可能とする。
【0024】
[台車]
図3に示すように、支持台車22は台棒2を支持するものであり、台棒2の下端部を除く中間部が取り付けられる取付部25と、レール部23を走行する走行部26とを有する。取付部25は、取付板27と台棒を取付板27に固定する取付バンド28を有する。取付板27は、一面が台棒2の取付け面27aとされ、取付け面27aの反対側に走行部26が設けられる。取付バンド28は、例えばU字状のバンドであり、ボルト及びナット等の締結具によって取付け面27aに固定される。台棒2は、取付バンド28によって取付け面27aに固定されることにより取付板27に固定される。
【0025】
取付板27の取付け面27aの反対側には、走行部26が設けられている。走行部26は、レール部23を転動するローラー30と、ローラー30を回転可能に支持する支持板31を有する。支持板31は、取付板27の面方向と直交する方向に立設されている。また、支持板31は取付け面27aに取り付けられた台棒2の長手方向に転動するようにローラー30を支持する。なお、走行部26は、2つの支持板31を設け、各支持板31の外側にローラー30が設けられている。また、各支持板31には、走行方向に離間して複数のローラー30を設けることが好ましい。なお、支持台車22の支持板31の上面は、後述する位置決め機構7の固定ピン36が当接する当接面となる。
【0026】
また、昇降機構6は、台棒2の下端が載置され、昇降操作される主動台車24を有する。なお、主動台車24の支持台車22と同一の構成については同一の符号を付してその詳細を省略する。
図4に示すように、主動台車24は、取付板27が断面L字状に形成され、取付け面27a側に、台棒2の端部が載置される底板部27bが形成されている。なお、主動台車24は、底板部27bに台棒2の長手方向の端部を載置するとともに、取付バンド28によって台棒2を取付け面27aに固定してもよい。また、主動台車24は、底板部27bに、台棒2の昇降用ロープ29が取り付けられるアイナット等のロープ係止部32が設けられている。主動台車24の支持板31の下面は、後述する位置決め機構7の固定ピン36が当接する当接面となる。
【0027】
[レール部]
図5に示すように、ローラー30が転動するレール部23は、断面矩形状の筒状体をなし、一方の天面23aの幅方向の中心には長手方向わたって開口溝33が連続して形成されている。これにより、レール部23は、底面23b及び天面23aの開口溝33の両側が、ローラー30の転動する領域とされている。また、レール部23は、開口溝33が走行部26の支持板31が挿通する。
【0028】
レール部23は、支柱パーツ5の立設方向と長手方向を揃えて支柱パーツ5に取り付けられる。また、レール部23は、両端が開放され、支柱パーツ5が上下に連結されるとき、
図5に示すように、連結された支柱パーツ5のレール部23と連続され、この状態で接続金具34によって固定される。接続金具34は、レール部23の底面23b及び両側面23cに当接される当接面が略コ字状に設けられ、各当接面が、連続されるレール部23の上端部及び下端部にわたって当接する。接続金具34は、予めレール部23の下端部に当接面がレール部23の下端から張り出すように取り付けておき、既設の支柱パーツ5のレール部23と連結する際に、各当接面に下部のレール部23の上端部を嵌め込むように取り付けてもよい。
【0029】
なお、レール部23は、両側面23cに後述する位置決め機構7の固定ピン36が挿通される挿通口35が形成されている。挿通口35は、レール部23の長手方向にわたって複数形成されている。例えば、挿通口35は、レール23の両端部に形成されている。
【0030】
[位置決め機構]
台棒2は、位置決め機構7によって所定の位置に固定される。位置決め機構7は、レール部23の長手方向に沿って設けられた複数の挿通口35と、挿通口35に挿通される固定ピン36とを有し、固定ピン36を支持台車22及び主動台車24の各支持板31に当接させることにより台棒2の位置を固定する。
【0031】
挿通口35は、レール部23の両側面間をまっすぐに貫通する孔であり、レール部23の長手方向の上端部、下端部及び中間部等に設けられている。固定ピン36は、台棒2が取り付けられた支持台車22の重さを支える強度を有するピンであればよく、ボルトを代用してもよい。固定ピン36としてボルトを用いた場合、ボルトを挿通口35に挿通させ、ナットで固定することで挿通口35からの抜け止めを図ることもできる。
【0032】
図6は、挿通口35に挿通した固定ピン36によって主動台車24の支持板31の下面を支持している状態を示す斜視図である。
【0033】
[各機構の動作]
次いで、昇降機構6及び位置決め機構7の動作について説明する。
図3に示すように、支柱パーツ5に取り付けられたレール部23の開放端より、支持台車22の走行部26が導入される。支持台車22は、ローラー30が底面23b及び天面23aの開口溝33の両側を転動することによりレール部23を走行する。同様に、
図4に示すように、主動台車24の走行部26がレール部23に導入される。また、主動台車24の導入後、レール部23の挿通口35に固定ピン36を挿通することにより、走行部26のレール部23の開放端からの抜け止めが図られる。
【0034】
支持台車22には、取付板27の取付け面27aに、取付バンド28によって台棒2が取り付けられる。取付板27には、台棒2の長手方向に離間して2か所以上、取付バンド28で固定することが望ましい。また、主動台車24は、底板部27bに台棒2の長手方向の端部が載置される。なお、主動台車24にも取付バンド28によって取付け面27aに固定されることが好ましい。昇降機構6は、台棒2の下端部を主動台車24で支持し、長手方向に離間して支持台車22によって支持することにより、安定して台棒2を昇降させることができる。
【0035】
主動台車24の底板部27bに設けられたロープ係止部32には、昇降用ロープ29の一端が取り付けられる。昇降用ロープ29は、最上部の支柱パーツ5に着脱可能に取り付けられた第2の滑車38に掛け渡され、他端側を地上にいる作業員によって引っ張り又は繰り出される。第2の滑車38は、予め最上部の支柱パーツ5の上部に作業員によって取り付けられる。昇降用ロープ29を地上側から引っ張ることにより、主動台車24とともに台棒2をレール部23に沿って上昇させることができる。また、昇降用ロープ29を地上側から繰り出すことにより、主動台車24とともにレール部23に沿って降下させることができる。
【0036】
位置決め機構7は、台棒2の上昇操作に先立って、固定ピン36を支持台車22の上昇位置に応じた位置に設けられた挿通口35に挿通することにより、支持台車22の支持板31が突き当てられる。また、固定ピン36が挿通された位置で支持台車22の上昇が止まった状態で、主動台車24の下方に設けられた挿通口35に固定ピン36を挿通することにより、主動台車24の支持板31が係止される。これにより、台棒2の位置を固定することができる。
【0037】
このとき、台棒2の先端は最上部の支柱パーツ5よりも上方に位置されている。そして、昇降装置1は、台棒2の先端部に取り付けられた第1の滑車20を介して、荷上げ用ロープ21に取り付けられた柱状パーツ10や支柱パーツ5を吊り上げ、また吊り下ろすことができる。
【0038】
[建柱工程]
次いで、昇降装置1を用いた建柱工程について説明する。先ず、
図7に示すように、柱状物3を建柱する位置を掘削し、適宜コンクリートを打設した後、三脚等により最下部の柱状パーツ10aを掘削孔41内に設置する。最下部の柱状パーツ10aは、柱状パーツ10単体でもよく、予め複数の柱状パーツ10が接合されたものであってもよいが、上部が地面より上方に出るように設置する。
【0039】
次いで、掘削孔41を埋め戻した後、
図8に示すように、地上に突出している柱状パーツ10aの上部に柱状パーツ10bを組み付ける。このとき、地上の作業員で組付け作業ができる場合は、三脚等により柱状パーツ10bを吊り上げる。
【0040】
次いで、
図9に示すように、最下部の支柱パーツ5aを柱状パーツ10bに隣接して設置するとともに、支柱パーツ5aを柱状パーツ10a及び柱状パーツ10bに連結する。このとき、支柱パーツ5aには、レール部23が取り付けられている。また、レール部23には、台棒2が取り付けられた支持台車22及び主動台車24が導入され、位置決め機構7により台棒2が所定の位置に固定されている。なお、最下部の支柱パーツ5aは、1つの支柱パーツ5からなるものでもよいが、地上作業員により設置されるものであるため、2つ又はそれ以上の支柱パーツ5が予め連結されたものであってもよい。
【0041】
次いで、
図10に示すように、台棒2の先端部に設けられた第1の滑車20に荷上げ用ロープ21を掛け渡す。荷上げ用ロープ21は、第1の滑車20を介した一端に柱状パーツ10cが取り付けられ、他端は地上作業員によって支持される。なお、荷上げ用ロープ21の他端側は、支柱パーツ5aに設けた電動ウインチ42によって引っ張られるようにしてもよい。また、柱状パーツ10cは、地上作業員によって支持された介錯ロープ43が取り付けられている。そして、荷上げ用ロープ21の他端側が引っ張られることにより、柱状パーツ10cが吊り上げられ、支柱パーツ5a上に上った作業員及び既設の柱状パーツ10b上に上った作業員により柱状パーツ10bの上部に組み付けられる。その後、柱状パーツ10cに取り付けられた荷上げ用ロープ21及び介錯ロープ43は取り外される。
【0042】
次いで、
図11、
図12に示すように、レール部23が取り付けられている支柱パーツ5bに荷上げ用ロープ21及び介錯ロープが取り付けられ、荷上げ用ロープ21の他端側が引っ張られることにより、支柱パーツ5bが吊り上げられ、支柱パーツ5a上に上った作業員により支柱パーツ5aの上面連結板13と支柱パーツ5bの下面連結板13がボルトとナット等の締結具により連結される。また、支柱パーツ5a上の作業員により支柱パーツ5bが柱状パーツ10cに連結される。
【0043】
次いで、台棒2の引き上げ固定作業を行う。先ず、支持台車22の支持板31の上方に固定ピン36が挿通されている場合は、当該固定ピン36を取り外す。次いで、
図13、
図14に示すように、支柱パーツ5bの上部に第2の滑車38を取り付け、昇降用ロープ29を掛け渡す。昇降用ロープ29の第2の滑車38を介した一端は主動台車24の底板部27bに設けられたロープ係止部32に取り付けられ、他端側は地上作業員によって支持される。なお、昇降用ロープ29の他端側は、図示しない電動ウインチによって引っ張られるようにしてもよい。
【0044】
また、支柱パーツ5bのレール部23の上部に設けられた挿通口35に固定ピン36を挿通し、支持台車22の抜け止めを図る。その後、昇降用ロープ29の他端側が引っ張られることにより、主動台車24がレール部23を走行し、台棒2及び支持台車22が上昇される。支持台車22の支持板31が固定ピン36に当接すると上昇は停止する。その後、
図15に示すように、主動台車24の支持板31の直下に設けられた挿通口35に固定ピン36を挿通することにより、台棒2の位置決めが図られる。これにより、台棒2の先端部は、支柱パーツ5b及び柱状パーツ10cの上方に位置される。なお、引き上げ前の主動台車24の落下を防止していた固定ピン36が挿通されている場合は当該固定ピン36を取り外す。
【0045】
このように、昇降装置1によれば、昇降機構6及び位置決め機構7により台棒2を移動、固定させるため、人力によって台棒の着脱や搬送を行う場合と異なり、台棒の落下事故を防止でき、安全に工事を遂行することができる。
【0046】
次いで、
図16に示すように、台棒2の先端部に設けられた第1の滑車20に掛け渡された荷上げ用ロープ21の、第1の滑車20を介した一端に柱状パーツ10dが取り付けられる。荷上げ用ロープ21の他端は地上作業員によって支持されている。また、柱状パーツ10dは、地上作業員によって支持された介錯ロープ43が取り付けられている。そして、荷上げ用ロープ21の他端側が引っ張られることにより、柱状パーツ10dが吊り上げられ、支柱パーツ5b上に上った作業員及び既設の柱状パーツ10c上に上った作業員により柱状パーツ10cの上部に組み付けられる。その後、柱状パーツ10dに取り付けられた荷上げ用ロープ21及び介錯ロープ43は取り外される。また、支柱パーツ5bが、組み付けられた柱状パーツ10dと金具15及びバンド16等により連結される。図キに示すように、支柱パーツ5bが既設の柱状パーツ10cよりも上方に延びていることにより、支柱パーツ5bに上った作業員が既設の柱状パーツ10cよりも上方に居るため、吊り上げられた柱状パーツ10dをガイドすることができ、安全に柱状パーツ10dの吊り上げ作業を行うことができる。
【0047】
同様にして、
図17に示すように、柱状パーツ10eの吊り上げ及び組み付け作業を行う。このとき、支柱パーツ5bが既設の柱状パーツ10dに連結固定されているため、支柱パーツ5b上の作業員は安定した状態で作業を行うことができる。
【0048】
次いで、
図18に示すように、レール部23が取り付けられている支柱パーツ5cに荷上げ用ロープ21及び介錯ロープ43が取り付けられ、荷上げ用ロープ21の他端側が引っ張られることにより、支柱パーツ5cが吊り上げられ、支柱パーツ5b上に上った作業員既設の柱状パーツ10d上に上った作業員により支柱パーツ5bの上面連結板13と支柱パーツ5cの下面連結板13がボルトとナット等の締結具により連結される。また、支柱パーツ5cを柱状パーツ10eに連結する。
【0049】
次いで、台棒2の引き上げ固定作業を行う。先ず、支持台車22の支持板31の上方に挿通されている固定ピン36を取り外す。次いで、支柱パーツ5c上の作業員により、支柱パーツ5cの上部に昇降用ロープ29を掛け渡した第2の滑車38を取り付ける。また、支柱パーツ5cのレール部23の上部に設けられた挿通口35に固定ピン36を挿通し、支持台車22の抜け止めを図る。その後、
図19に示すように、昇降用ロープ29の他端側が引っ張られることにより、主動台車24がレール部23を走行し、台棒2が上昇される。支持台車22の支持板31が固定ピン36に当接すると上昇は停止し、主動台車24の支持板31の直下に設けられた挿通口35に固定ピン36を挿通することにより、台棒2の位置決めが図られる。これにより、台棒2の先端部は、支柱パーツ5c及び柱状パーツ10eの上方に位置される。
【0050】
以下、同様にして、柱状パーツ10の吊り上げ及び組付け、支柱パーツ5の吊り上げ及び連結、台棒の引き上げ及び固定作業を、この順で繰り返す。これにより
図20に示すように、柱状物3及びこれに隣接して支柱4が建柱される。
【0051】
上述した例では、台棒2の先端を2つの柱状パーツ10の高さ分だけ上昇させ、2つの柱状パーツ10の吊り上げ及び組付け作業を行った後、支柱パーツ5の吊り上げ及び連結及び台棒の引き上げ及び固定作業を行ったが、本技術では、柱状パーツ10を吊り上げ及び組付け作業と、支柱パーツ5の吊り上げ及び連結作業並びに台棒の引き上げ及び固定作業を、交互に行ってもよい。
【0052】
[支柱の撤去工程]
次いで、支柱4の撤去作業を行う。先ず、昇降用ロープ29を繰り出して、支持台車22及び主動台車24を、最上部に位置する支柱パーツ5fのレール部23から、支柱パーツ5fの直下に設けられた支柱パーツ5eのレール部23に降下させる。支柱パーツ5eのレール部23には、予め固定ピン36が挿通され、台車24が所定の位置まで降下する。これにより、台棒2の先端が、支柱パーツ5fの上部に位置される。
【0053】
次いで、最上部の支柱パーツ5fに荷上げ用ロープ21及び介錯ロープ43を縛り付ける。また、支柱パーツ5fに固定された金具15に連結されている柱状パーツ10の周囲に掛け渡したバンド外す等して、支柱パーツ5fと柱状パーツ10の連結を解く。さらに、支柱パーツ5fと、支柱パーツ5fの下部に設けられている支柱パーツ5eの各連結板13を連結している締結部を外すとともに、各支柱パーツ5e,5fのレール部23を接続する接続金具34を外し、連結を解く。
【0054】
次いで、荷上げ用ロープ21を繰り出して、支柱パーツ5fを地上まで吊り下ろす。
図21に示すように、同様にして、支持台車22及び主動台車24の降下、支柱パーツ5の連結解除、支柱パーツ5の吊り下ろしを順に行う。最後に、
図22に示すように、地上に設置された支柱パーツ5aを、台棒2とともに、地上作業員によって撤去し、建柱工程が終了する(
図23)。
【符号の説明】
【0055】
1 昇降装置、2 台棒、3 柱状物、5 支柱パーツ、6 昇降機構、7 位置決め機構、10 柱状パーツ、11 パイプ、12 連結部、13 連結板、15 金具、16 バンド、20 第1の滑車、21 荷上げ用ロープ、22 支持台車、23 レール部、23a 天面、23b 底面、23c 側面、24 主動台車、25 取付部、26 走行部、27 取付板、27a 取付け面、27b 底板部、28 取付バンド、29 昇降用ロープ、30 ローラー、31 支持板、32 ロープ係止部、33 開口溝、34 接続金具、35 挿通口、36 固定ピン、41 掘削孔、42 電動ウインチ、43 介錯ロープ