(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075132
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】医療用椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 15/12 20060101AFI20220511BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20220511BHJP
A61G 15/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61G15/12 520
A47C7/54 F
A61G15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185720
(22)【出願日】2020-11-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年11月4日に、兵庫県立がんセンターにおけるモニター実施により公開
(71)【出願人】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】駒井 健人
(72)【発明者】
【氏名】西木 友浩
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341MN13
4C341MP03
4C341MQ03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】間隔を空けずに横並びに配置された場合であっても、片手で容易に穿刺に適した高さ位置までの調整を行うことができると共に、施術者が迅速に穿刺行為を行うことができるアームレスト部を備えた医療用椅子を提供する。
【解決手段】椅子1は、被施術者が着座する座部3と、被施術者の上半身を支える背凭れ部4と、被施術者の腕が載置されるアームレスト部6と、を備えており、このアームレスト部6は、略水平状態の通常位置から、先端部7が持ち上げられて、回転軸を支点として所定の角度で傾斜させた穿刺位置にあるときに、略水平となる平面の穿刺用載置面8Aが上面前側に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者が着座する座部と、前記被施術者の上半身を支える背凭れ部と、前記被施術者の腕が載置されるアームレスト部と、を備え、
前記アームレスト部は、略水平状態の通常位置から、前記アームレスト部の先端である先端部が持ち上げられ、回転軸を支点として所定の角度で傾斜させた穿刺位置にあるときに、上面前側の少なくとも一部において、前記腕を載置することができる穿刺用載置面が形成された、
ことを特徴とする医療用椅子。
【請求項2】
前記通常位置における前記アームレスト部の上面に、前記腕を載置することができる通常載置面が形成され、この通常載置面と前記穿刺用載置面とが連接された、
ことを特徴とする請求項1に記載された医療用椅子。
【請求項3】
前記アームレスト部の上面後側に前記通常載置面が形成された、
ことを特徴とする請求項2に記載された医療用椅子。
【請求項4】
前記穿刺用載置面が、前記アームレスト部の長手方向に沿って窪んでいる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された医療用椅子。
【請求項5】
前記アームレスト部は、前記穿刺位置で係止が可能であり、
前記先端部近傍に、前記アームレスト部の係止状態を解除する係止解除部が設けられた、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された医療用椅子。
【請求項6】
前記係止解除部が、前記アームレスト部の下面に設けられた、
ことを特徴とする請求項5に記載された医療用椅子。
【請求項7】
前記アームレスト部は、少なくとも前記穿刺位置から前記通常位置に戻される際に、前記係止解除部が操作されて係止状態が解除される、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載された医療用椅子。
【請求項8】
前記アームレスト部は、前記通常位置から前記穿刺位置を超えて前記背凭れ部に向けて傾斜可能であり、前記通常位置から前記穿刺位置を通過する際には、係止されることなく傾斜する、
ことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載された医療用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院には、人工透析、点滴、採血若しくはこれらに類する治療または処置(以下「人工透析等」という。)を行うため、医療用椅子が配置されている。例えば、特許文献1には、脚体と座部と背凭れとから構成される椅子本体に、被施術者の腕を載置することができる採血テーブルが設けられた採血用の椅子が提案されている。
【0003】
この特許文献1の採血用の椅子は、複数の調整ネジを緊結または緩めたりすることによって、採血テーブルの昇降や傾斜角度の変更ができるように構成されている。これは、注射器等の採血器具で穿刺をする際に、採血テーブル自体の位置を高く、傾斜角度を略水平に調整することで、施術者が穿刺しやすい高さに被施術者の腕を配置するためである。また、被施術者に、地面に対してなるべく平行に、肘を軽く伸ばした状態で採血テーブルの上に腕を載置してもらうことで、施術者が安全に穿刺をできるようにするためである。
【0004】
また、一方で、採血の最中には、採血器具側からの逆流による細菌感染への対応策として、被施術者の腕を下向きにして配置されることが推奨されている(日本臨床検査標準協議会および標準採血法検討委員会「標準採血法ガイドライン(GP4-A3)」による推奨)。そこで、特許文献1の採血用の椅子では、穿刺後に、施術者が、採血テーブル自体の位置を下降させ、再度高さの調整ができるように、さらに、採血テーブルを前方に向けて下方に傾けることができるように、構成されている。この構成により、被施術者が、腕を下向きにした状態でも、採血テーブルの上に腕を載置することができる。
【0005】
ところで、近年では、人工透析等を行うための医療用椅子には、背凭れにリクライニング機能が備わっているものが多い。また、それらの中には、背凭れを略水平になるまで倒すことで、ベッドとして使用することができるものが存在する。特に、人工透析の治療では、症状によって30分から6時間にわたって椅子の上で過ごさなければならないため、多くの被施術者は背凭れを傾斜させた状態で、また、重篤な場合にはベッド状態で、治療を受けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらのリクライニング機能が備わった医療用椅子は、ベッド状態のままでは病院内のスペースを多く必要とする。そのため、病院内では、スペースをなるべく有効に活用できるように、背凭れを起こした状態で、間隔を空けずに横並びに配置されることが多い。
【0008】
ここで、施術者は、穿刺の前後において、被施術者の腕の位置を調整するため、特許文献1の採血用の椅子における採血テーブルまたはその他の医療用椅子における肘掛け若しくはアームレスト(以下「アームレスト等」という。)の高さ位置等の調整を行う必要があることは、上記した通りである。
【0009】
しかし、実際の医療現場では、アームレスト等の高さ位置等の調整が可能な医療用椅子が用いられている場合であっても、穿刺の前後において、それらの医療用椅子に備わるアームレスト等の高さ位置等の調整機構が使用されることが少ないことがわかっている。また、調整機構が使用されず、穿刺の前後においてアームレスト等の高さ位置等の調整がなされないケースでは、医療用椅子とは別に、注射台または処置台等の載置台(被施術者の腕が載置される台)が用いられ、この載置台に被施術者の腕を載置して穿刺が行われるケースも存在している。そのような運用がなされる理由は、以下によるものである。
【0010】
例えば、特許文献1では、採血テーブルの高さ位置等の変更をするための調整機構が、採血テーブルを支える支柱の側面から外側(座部に着座した被施術者における左右方向の外側)に向かって配置された調整ネジ等により構成されている。このような医療用椅子では、椅子が間隔を空けずに横並びに配置されていると、椅子と椅子との間に十分なスペースが確保されておらず、調整ネジ等の調整機構が操作しにくいといった問題があった。
【0011】
また、市販品の中には、アームレスト等の高さ位置等の調整をするための調整機構において、特許文献1における調整ネジと同様の役割を担うノブまたはレバー等が、アームレスト等の後側、すなわち、椅子の背凭れ側に配置されているものが存在する。このような医療用椅子では、椅子が間隔を空けずに横並びに配置されていると、椅子の前方からでは背凭れ側のノブまたはレバー等まで施術者の手が届きにくく、アームレスト等の高さ位置等の調整自体が困難であった。
【0012】
さらに、例えば、特許文献1の採血用の椅子および多くの市販品では、穿刺の前後において、施術者が手に抱えた穿刺用の器具を一旦置かなければ、アームレスト等の高さ位置等の調整をすることができない。すなわち、施術者は、穿刺の前後において、穿刺用の器具を一旦置き、一方の手で調整ネジ、ノブまたはレバー等の操作を行いながら、もう一方の手でアームレスト等自体の調整を行わなければならず、高さ位置等の調整を両手で行わなければならなかった。そのため、迅速に穿刺行為を行いたい施術者とって、アームレスト等の高さ位置等の調整が、迅速な穿刺行為の妨げとなっていた。
【0013】
また、市販品の中には、特許文献1のようにアームレスト等の高さ位置等の調整を手動で行うのではなく、電動でアームレスト等自体を昇降させることができる医療用椅子が存在する。しかし、このような電動でアームレスト等自体の昇降を行う医療用椅子では、片手で操作ができるものの、アームレスト等自体の昇降に時間がかかり、迅速に穿刺行為を行いたい施術者にとって、必ずしも使い勝手が良いものとはいえなかった。
【0014】
そこで、医療現場において、迅速な穿刺行為を妨げることがなく、間隔を空けずに横並びに配置された場合であっても、片手で容易に穿刺に適した高さ位置までの調整を行うことができるアームレストを備えた医療用椅子が求められている。
【0015】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決すべくなされたものであって、間隔を空けずに横並びに配置された場合であっても、片手で容易に穿刺に適した高さ位置までの調整を行うことができると共に、施術者が迅速に穿刺行為を行うことができるアームレスト部を備えた医療用椅子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る医療用椅子は、被施術者が着座する座部と、前記被施術者の上半身を支える背凭れ部と、前記被施術者の腕が載置されるアームレスト部と、を備え、前記アームレスト部は、略水平状態の通常位置から、前記アームレスト部の先端である先端部が持ち上げられ、回転軸を支点として所定の角度で傾斜させた穿刺位置にあるときに、上面前側の少なくとも一部において、前記腕を載置することができる穿刺用載置面が形成された、ことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る医療用椅子は、前記通常位置における前記アームレスト部の上面に、前記腕を載置することができる通常載置面が形成され、この通常載置面と前記穿刺用載置面とが連接された、ことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る医療用椅子は、前記アームレスト部の上面後側に前記通常載置面が形成された、ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る医療用椅子は、前記穿刺用載置面が、前記アームレスト部の長手方向に沿って窪んでいる、ことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る医療用椅子は、前記アームレスト部が前記穿刺位置で係止が可能であり、前記先端部近傍に、前記アームレスト部の係止状態を解除する係止解除部が設けられた、ことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る医療用椅子は、前記係止解除部が、前記アームレスト部の下面に設けられた、ことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る医療用椅子は、前記アームレスト部が少なくとも前記穿刺位置から前記通常位置に戻される際に、前記係止解除部が操作されて係止状態が解除される、ことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る医療用椅子は、前記アームレスト部は、前記通常位置から前記穿刺位置を超えて前記背凭れ部に向けて傾斜可能であり、前記通常位置から前記穿刺位置を通過する際には、係止されることなく傾斜する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る医療用椅子は、被施術者が着座する座部と、被施術者の上半身を支える背凭れ部と、被施術者の腕が載置されるアームレスト部と、を備え、アームレスト部は、略水平状態の通常位置から、アームレスト部の先端である先端部が持ち上げられ、回転軸を支点として所定の角度で傾斜させた穿刺位置にあるときに、上面前側の少なくとも一部において、腕を載置することができる穿刺用載置面が形成されている。すなわち、通常の椅子では、アームレストを傾斜させると上面まで傾斜してしまい、被施術者が腕を載置することは困難である。これに対し、本発明に係る医療用椅子では、アームレスト部を穿刺位置まで傾斜させ、上面前側に形成された穿刺用載置面に腕を載置させるだけで、被施術者の肘が伸びた状態となり、施術者が迅速に穿刺行為を行うことができる。また、アームレスト部が穿刺位置で傾斜した状態であっても、穿刺用載置面に被施術者が安定して腕を載置することができる。さらに、医療用椅子が、間隔を空けずに横並びに配置されている場合であっても、施術者が、椅子の前方から片手で先端部を持ち上げるだけで、アームレスト部の傾斜角度を容易に調整することができる。
【0025】
また、本発明に係る医療用椅子では、穿刺に適した高さ位置までの調整を、アームレスト部自体を昇降させるのではなく、先端部を持ち上げてアームレスト部を傾斜させるだけで行うことができる。したがって、施術者が、穿刺に適した高さ位置までの調整を片手で容易に行うことができる。また、施術者が、手に抱えた穿刺用の器具を一旦置く必要がなく、迅速に穿刺行為を行うことができる。
【0026】
本発明に係る医療用椅子では、通常位置におけるアームレスト部の上面に、腕を載置することができる通常載置面が形成され、この通常載置面と穿刺用載置面とが連接されている。すなわち、本発明に係る医療用椅子では、アームレスト部が略水平状態の通常位置にある場合であっても、通常載置面に被施術者が安定して腕を載置することができる。また、通常載置面と穿刺用載置面とが連接されているため、アームレスト部が通常位置から穿刺位置に、または、穿刺位置から通常位置に調整される際に、通常載置面と穿刺用載置面との間において、被施術者が腕を滑らかに移動させることができる。したがって、アームレスト部の上面に腕が載置された状態であっても、穿刺の前後において、被施術者に負担をかけることなく、施術者がアームレスト部の傾斜角度の調整をすることができる。
【0027】
本発明に係る医療用椅子では、アームレスト部の上面後側に通常載置面が形成されている。すなわち、本発明に係る医療用椅子では、通常位置にあるアームレスト部において、通常載置面に被施術者が肘を曲げた状態で腕を載置することができる。一方で、穿刺位置にあるアームレスト部においては、穿刺用載置面が通常載置面よりも高い位置となるため、穿刺用載置面に載置される被施術者の腕は、通常載置面に載置されるよりも高い位置に載置されることとなる。したがって、被施術者の肘が自然に伸びた状態になると共に、腕が穿刺に適した位置に配置されるため、施術者が、穿刺行為を行いやすく、迅速に穿刺行為を行うことができる。
【0028】
本発明に係る医療用椅子は、穿刺用載置面が、アームレスト部の長手方向に沿って窪んでいる。すなわち、本発明に係る医療用椅子では、穿刺位置にあるアームレスト部の上面において、穿刺用載置面の略軒樋状の窪みに腕を載置することができるため、被施術者がより安定して腕を載置することができる。
【0029】
本発明に係る医療用椅子は、アームレスト部が穿刺位置で係止可能であり、先端部近傍に、アームレスト部の係止状態を解除する係止解除部が設けられている。すなわち、本発明に係る医療用椅子では、間隔を空けずに横並びに配置されている場合であっても、椅子の前方から片手で容易に、アームレスト部を穿刺位置で係止することができる。また、施術者が、椅子の前方から片手で先端部を支えながら、先端部近傍に設けられた係止解除部の操作をすることができる。したがって、本発明に係る医療用椅子では、穿刺位置において、施術者が、片手で容易に、アームレスト部の係止および係止状態の解除を行うことができる。
【0030】
本発明に係る医療用椅子は、係止解除部が、アームレスト部の下面に設けられている。すなわち、本発明に係る医療用椅子では、不意に被施術者が係止解除部に触れる等して、誤ってアームレスト部の係止状態が解除されることが防止されている。さらに、施術者が、先端部を片手で支えた状態であっても、係止解除部の操作がしやすい。
【0031】
本発明に係る医療用椅子は、アームレスト部が少なくとも穿刺位置から通常位置に戻される際に、係止解除部が操作されて係止状態が解除される。すなわち、本発明に係る医療用椅子では、不用意に穿刺位置にあるアームレスト部の係止状態が解除されることがなく、穿刺用載置面に被施術者が安定して腕を載置することができる。
【0032】
本発明に係る医療用椅子は、アームレスト部は、通常位置から穿刺位置を超えて背凭れ部に向けて傾斜可能であり、通常位置から穿刺位置を通過する際には、係止されることなく傾斜する。すなわち、本発明に係る医療用椅子では、アームレスト部を通常位置から穿刺位置を超えて背凭れ部に向けて傾斜させる際に、滑らかに傾斜させることができる。したがって、例えば、車椅子などから横滑りに着座する必要がある被施術者が着座しやすいように、アームレスト部を背凭れ部に沿う位置まで容易に傾斜させることができる。また、背凭れ部が倒されてベッド状態にされた医療用椅子であっても、アームレスト部を背凭れ部に沿う位置まで傾斜させて、アームレスト部と背凭れ部とを同一平面上にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る医療用椅子において、アームレスト部が通常位置にある状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る医療用椅子において、左アームレスト部を穿刺位置で係止した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る医療用椅子において、左アームレスト部を背凭れ部に沿う位置まで傾斜させた状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る医療用椅子において、背凭れ部を倒してレッグレスト部を跳ね上げたベッド状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る医療用椅子において、背凭れ部を倒してレッグレスト部を跳ね上げたベッド状態を左側方から見た図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る医療用椅子において、穿刺位置にある左アームレスト部を右側方から見た図である。
【
図7】本発明の第一の実施形態に係る医療用椅子において、左アームレスト部の軌道、並びに、通常位置、穿刺位置および背凭れ部に沿う位置のそれぞれの位置関係を示す図である。
【
図8】本発明の第一の実施形態に係る医療用椅子において、穿刺位置にある左アームレスト部を左側方から見た図である。
【
図9】本発明の第二の実施形態に係る医療用椅子において、左アームレスト部を穿刺位置で係止した状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第二の実施形態に係る医療用椅子において、左アームレスト部を穿刺位置で係止した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本実施形態に係る医療用椅子を、図面に基づいて説明する。
なお、
図1に示すように、第一の実施形態に係る医療用椅子(以下「第一の実施形態に係る医療用椅子」を「椅子」という。)1に対して、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向として、説明する。
【0035】
椅子1は、
図1に示すように、被施術者に人工透析等を行うために用いられるものである。椅子1は、脚体2Aを有する基台2と、基台2の上部に配置され、被施術者の臀部および大腿部を支える座部3と、座部3の後方に配置され、被施術者の上半身を支える背凭れ部4と、背凭れ部4に連結され、上方に向けて傾斜させることができる左右一対のアームレスト部6と、座部3の前方に垂下して配置され、被施術者の脚部が載置されるレッグレスト部9と、を備えている。
【0036】
基台2は、
図1から
図4に示すように、略四角錘台形に形成された筐体であり、下部の四隅において、下方に向かって突設された脚体2Aを有している。また、基台2は、上部における後端を除く全面において、平面視で略矩形の座部3が固定され、上部の後端において、背凭れ部4が連結されている。すなわち、基台2は、座部3および背凭れ部4を下方から支持し、椅子1の重量および椅子1に着座する被施術者の体重を支える部位として構成されている。
【0037】
座部3は、
図1から
図4に示すように、基台2の上部に固定されており、上下方向を厚み方向として、上部の全面が厚みのある弾性素材で覆われた、平面視で略矩形の部位である。座部3は、その上から被施術者が着座する部位であって、被施術者の臀部および太腿部を支える部位として構成されている。
【0038】
背凭れ部4は、
図1から
図4に示すように、座部3の後方に配置されると共に、下端が基台2に連結され、前後方向を厚み方向として、正面視で縦長の略長方形の板状に形成された部位である。背凭れ部4は、座部3に着座する被施術者の腰部から頭部までの上半身を支える部位であり、その表面は、座部3と同様に、厚みのある弾性素材で覆われて形成されている。
【0039】
また、背凭れ部4は、
図4に示すように、基台2に連結された下端を支点として、後方に傾斜させることができるように構成されている。すなわち、椅子1は、基台2と背凭れ部4とがリクライニング機構(図示せず)を備えて連結されており、
図4および
図5に示すように、背凭れ部4を座部3と同一平面上になるまで倒すことができる。したがって、椅子1は、被施術者が、背凭れ部4を傾斜させた状態で上半身を凭せかけることができると共に、背凭れ部4を座部3と同一平面上になるまで倒して、ベッドとして使用することもできる。
【0040】
さらに、背凭れ部4は、
図1から
図4に示すように、被施術者が上半身を凭せかけた際に、被施術者の首部および頭部を支えるヘッドレスト部4Aが設けられている。ヘッドレスト部4Aは、背凭れ部4の背受け面4Bの表面から張り出して形成されている。ヘッドレスト部4Aは、左右方向の両端が盛り上がると共に、中央部分が窪んで形成されており、
図4および
図5に示すように、ベッド状態の椅子1において枕として機能する。
【0041】
アームレスト部6は、
図1に示すように、背凭れ部4の左右方向の側面である背凭れ部側面4Cの下部に連結され、前方に向かって略水平に形成された部位である。アームレスト部6は、左右対称に、一対の左アームレスト部6Aと右アームレスト部6Bとから構成される。アームレスト部6の上面は、座部3および背凭れ部4と同様に、厚みのある弾性素材で覆われて形成されており、この弾性素材に覆われた上面の上に被施術者の腕が載置される。
【0042】
また、アームレスト部6は、
図1に示すように、略水平状態にあるときを通常位置としている。そして、この通常位置から、アームレスト部6の先端である先端部7を持ち上げることで、背凭れ部4とアームレスト部6とが連結されたアームレスト部6の後側を支点として、背凭れ部4に沿う位置まで傾斜(回転)させることができる(
図3が、左アームレスト部6Aを背凭れ部4に沿う位置まで傾斜させた状態を示す斜視図である)。具体的には、アームレスト部6は、
図6に示す左アームレスト部6Aを例に説明すると、その筐体の内部に回転軸5が設けられており、この回転軸5を介して背凭れ部4に連結されている。そして、この回転軸5を支点として、背凭れ部4に沿う位置まで傾斜(回転)させることができる。
【0043】
さらに、アームレスト部6は、
図2に示すように、通常位置から背凭れ部4に沿う位置までの間において、所定の角度で傾斜させた位置である穿刺位置で係止することができる(
図7が、左アームレスト部6Aにおける傾斜(回転)の軌道、並びに、通常位置、穿刺位置および背凭れ部4に沿う位置のそれぞれの位置関係を示す図である)。具体的には、アームレスト部6は、その筐体の内部において、回転軸5に形成された係止片(図示せず)と、この係止片に係止される揺動片(図示せず)とを備える係止機構(図示せず)、すなわち、所謂ラチェット機構が設けられている。そして、この係止機構により、アームレスト部6を所定の角度で傾斜させた穿刺位置で係止することできる。なお、係止機構は、所謂ラチェット機構であるから、アームレスト部6を通常位置から背凭れ部4に沿う位置まで傾斜(回転)させる際には、穿刺位置で係止されることなく、滑らかに傾斜(回転)させることもできる。
【0044】
また、アームレスト部6は、その筐体の内部において、回転軸5に形成された傾斜角度制御棒(図示せず)と、この傾斜角度制御棒の傾斜軌道上に設けられ、アームレスト部6が通常位置または背凭れ部4に沿う位置にあるときに、傾斜角度制御棒に当たる突起部(図示せず)とを備えている。そのため、アームレスト部6は、傾斜角度制御棒と突起部とを互いに係止させることで、通常位置および背凭れ部4に沿う位置のそれぞれにおいても係止(静止)することができる。
【0045】
さらに、アームレスト部6は、
図1に示すように、通常位置にあるときを基準として、上面の前側が、前方に向けて下方に傾斜した平面として形成されている。一方で、上面の後側は、略水平の平面として形成されている。この上面前側の傾斜する平面が、穿刺用載置面8Aであり、上面後側の略水平の平面が、通常載置面8Bである。これらの穿刺用載置面8Aと通常載置面8Bとは、アームレスト部6の上面の前後方向の中央付近において、滑らかに連接されている。すなわち、アームレスト部6の上面は、
図6および
図8で示す左アームレスト部6Aのように、互いに角度が異なって形成された穿刺用載置面8Aと通常載置面8Bとによって、側面視で略ヘ字形に形成されている。
【0046】
また、穿刺用載置面8Aと通常載置面8Bとは、
図1から
図3に示すように、穿刺用載置面8Aの後端が、平面視において中央が後方に向かって伸びる略V字形に形成され、通常載置面8Bの前端が、平面視において左右両端が前方に向かって伸びる略V字形に切り欠かれて形成されている。すなわち、穿刺用載置面8Aの後端と通常載置面8Bの前端とは、平面視において互いの略V字形を噛み合わせて連接されている。
【0047】
また、穿刺用載置面8Aは、
図2に示すように、アームレスト部6が所定の角度で傾斜した穿刺位置にあるときに、略水平となる平面として構成されている(
図6および
図8では、穿刺位置にある左アームレスト部6Aにおいて、穿刺用載置面8Aが略水平になっている状態が示されている)。すなわち、椅子1では、アームレスト部6が通常位置にあるときには通常載置面8Bに、そして、アームレスト部6が穿刺位置にあるときは穿刺用載置面8Aに、被施術者が腕を載置することができる。
【0048】
なお、アームレスト部6における穿刺用載置面8Aが形成される位置、穿刺用載置面8Aの傾斜角度および穿刺位置としての所定の角度は、それぞれ互いに調整されて、穿刺用載置面8Aに腕を載置する被施術者への負担および施術者が穿刺行為を行いやすい高さ位置等を考慮して定められる。
【0049】
さらに、アームレスト部6は、
図3および
図8の左アームレスト部6Aを例として示すように、先端部7の下面において、穿刺位置で係止されるアームレスト部6の係止状態を解除するための係止解除部10が設けられている。具体的には、係止解除部10は、アームレスト部6の先端部7の下面において、アームレスト部6の内部から外部に向けて突出すると共に、アームレスト部6の内部方向に押し込み可能な部位として形成されている。この係止解除部10が、穿刺位置で係止されたアームレスト部6において、アームレスト部6の内部方向に押し込まれることで、アームレスト部6の係止状態が解除される。
【0050】
アームレスト部6の係止状態が解除される仕組みとしては、アームレスト部6は、その筐体の内部において、一端が係止解除部10に連結されたリンク機構(図示せず)が設けられており、このリンク機構の他端が、上記した回転軸5周りに設けられた係止機構の揺動片に連結されている。そして、係止解除部10がアームレスト部6の内部に押し上げられることで、リンク機構が押し動かされ、リンク機構の押動に連動して揺動片が揺動し、係止片から外れることにより、アームレスト部6の係止状態が解除される。
【0051】
レッグレスト部9は、
図1から
図3に示すように、座部3の前方に垂下して配置され、前後方向を厚み方向とする正面視で略逆台形の板状の脹脛載置部9Aと、
図4および
図5に示すように、脹脛載置部9Aの裏側に折り畳まれた略矩形の板状の踵載置部9Bと、から構成されている。この脹脛載置部9Aと踵載置部9Bとは、
図4および
図5に示すように、基台2から伸びる跳ね上げ機構2Bに支持されている。そのため、レッグレスト部9は、例えば、跳ね上げ機構2Bを稼働させ、脹脛載置部9Aの上端を支点として、その下部を前方に向けて傾斜させることで、脹脛載置部9Aの前面である脹脛載置面9Cに、座部3に着座する被施術者の脹脛部を載置することができる。
【0052】
また、例えば、
図4および
図5に示すように、跳ね上げ機構2Bを稼働させ、脹脛載置部9Aを跳ね上げると共に、脹脛載置部9Aの裏側から踵載置部9Bを張り出させることで、座部3と脹脛載置部9Aと踵載置部9Bとを同一平面上にすることができる。そのため、さらに背凭れ部4を座部3と同一平面上まで倒すことで、椅子1をベッド状態にすることができる。これにより、脹脛載置面9Cと踵載置部9Bの上面とに、被施術者が脹脛部および踵部を載置することができる。
【0053】
なお、脹脛載置部9Aにおける脹脛載置面9Cは、座部3および背凭れ部4と同様に、厚みのある弾性素材で覆われて形成されている。また、座部3の前端と脹脛載置面9Cの上端とは、この弾性素材で覆われて連接されている。したがって、座部3に着座する被施術者が、違和感を覚えることなく、大腿部から脹脛部にかけての部位を、座部3と脹脛載置面9Cとに載置することができる。
【0054】
以上のとおり、椅子1が構成されている。
【0055】
次に、椅子1の効果を説明する。
【0056】
椅子1では、上記したとおり、被施術者が着座する座部3と、被施術者の上半身を支える背凭れ部4と、被施術者の腕が載置されるアームレスト部6と、を備えており、このアームレスト部6は、略水平状態の通常位置から、先端部7が持ち上げられて、回転軸5を支点として所定の角度で傾斜させた穿刺位置にあるときに、略水平となる平面の穿刺用載置面8Aが上面前側に形成されている。すなわち、アームレスト部6を穿刺位置まで傾斜させ、穿刺用載置面8Aに腕を載置させるだけで、被施術者の肘が伸びた状態となり、施術者が迅速に穿刺行為を行うことができる。また、アームレスト部6が穿刺位置で傾斜した状態であっても、穿刺用載置面8Aに被施術者が安定して腕を載置することができる。さらに、椅子1が、間隔を空けずに横並びに配置されている場合であっても、施術者が、椅子1の前方から片手で先端部7を持ち上げるだけで、アームレスト部6の傾斜角度を容易に調整することができる。
【0057】
さらに、椅子1では、アームレスト部6自体を昇降させるのではなく、先端部7を持ち上げてアームレスト部6を傾斜させるだけで、穿刺に適した高さ位置までの調整を行うことができる。したがって、施術者が、穿刺に適した高さ位置までの調整を片手で容易に行うことができる。また、施術者が、手に抱えた穿刺用の器具を置く必要がなく、迅速に穿刺行為を行うことができる。
【0058】
また、椅子1では、アームレスト部6の上面後側に、腕を載置することができる通常載置面8Bが形成されており、通常載置面8Bと穿刺用載置面8Aとが連接されている。すなわち、椅子1では、アームレスト部6が通常位置にあるときには、通常載置面8Bに被施術者が肘を曲げた状態で安定して腕を載置することができる。また、通常載置面8Bと穿刺用載置面8Aとが連接されているため、アームレスト部6が、通常位置から穿刺位置に、また、穿刺位置から通常位置に調整される際に、通常載置面8Bと穿刺用載置面8Aとの間において、被施術者が腕を滑らかに移動させることができる。したがって、アームレスト部6の上面に腕が載置された状態であっても、穿刺の前後において、被施術者に負担をかけることなく、施術者がアームレスト部6の傾斜角度の調整をすることができる。
【0059】
さらに、椅子1は、アームレスト部6の上面前側に穿刺用載置面8Aが形成され、アームレスト部6の上面後側に通常載置面8Bが形成されている。すなわち、椅子1では、アームレスト部6が穿刺位置にあるときは、穿刺用載置面8Aが、通常載置面8Bよりも高い位置となるため、穿刺用載置面8Aに載置される被施術者の腕は、通常載置面8Bに載置されるよりも高い位置に載置されることとなる。したがって、被施術者の肘が自然に伸びた状態になると共に、腕が穿刺に適した位置に配置されるため、施術者が、穿刺行為を行いやすく、迅速に穿刺行為を行うことができる。
【0060】
また、椅子1では、アームレスト部6が、穿刺位置で係止可能であり、アームレスト部6の下面、すなわち、先端部7の下面に、係止解除部10が設けられている。したがって、椅子1では、間隔を空けずに横並びに配置されている場合であっても、椅子1の前方から片手で容易に、アームレスト部6を穿刺位置で係止することができる。また、施術者が、椅子1の前方から片手で先端部7を支えながら、先端部7の下面に設けられた係止解除部10の操作をすることができる。したがって、椅子1では、穿刺位置において、施術者が、片手で容易に、アームレスト部6の係止および係止状態の解除を行うことができる。
【0061】
さらに、椅子1では、係止解除部10が、先端部7の下面に設けられているため、不意に被施術者が係止解除部10に触れる等して、誤ってアームレスト部6の係止状態が解除されることが防止されている。また、施術者が、先端部7を片手で支えた状態であっても、係止解除部10の操作がしやすい構成となっている。
【0062】
また、椅子1では、アームレスト部6が、穿刺位置から通常位置に戻される際に、係止解除部10が操作されて係止状態が解除される。すなわち、椅子1では、不用意に穿刺位置にあるアームレスト部6の係止状態が解除されることがなく、穿刺用載置面8Aに被施術者が安定して腕を載置することができる。
【0063】
さらに、椅子1では、アームレスト部6が、通常位置から穿刺位置を超えて背凭れ部4に向けて傾斜可能であり、通常位置から穿刺位置を通過する際には、係止されることなく傾斜する。すなわち、椅子1では、アームレスト部6を通常位置から穿刺位置を超えて背凭れ部4に向けて傾斜させる際には、滑らかに傾斜させることができる。したがって、例えば、車椅子などから横滑りに着座する必要がある被施術者が着座しやすいように、アームレスト部6を背凭れ部4に沿う位置まで容易に傾斜させることできる。また、背凭れ部4が倒されてベッド状態にされた椅子1であっても、アームレスト部6を背凭れ部4に沿う位置まで傾斜させて、アームレスト部6と背凭れ部4とを同一平面上にすることができる。これにより、座部3、背凭れ部4、レッグレスト部9およびアームレスト部6を全て同一平面上にすることができる。これにより、緊急時などに被施術者をストレッチャー等の担送用ベッドに容易に移動させることができる。
【0064】
なお、椅子1では、
図4および
図5で示すように、アームレスト部6を通常位置に静止させたままであっても、ベッド状態(背凭れ部4を座部3と同一平面上まで倒し、レッグレスト部9を座部3と同一平面上まで跳ね上げた状態)にすることで、座部3、背凭れ部4、レッグレスト部9およびアームレスト部6を全て同一平面上にすることができる。この状態においても、緊急時などに被施術者をストレッチャー等の担送用ベッドに容易に移動させることができる。
【0065】
以上、椅子1の効果について説明した。
【0066】
次に、
図9および
図10に示すように、第二の実施形態に係る医療用椅子(以下「第二の実施形態に係る医療用椅子」を「椅子」という。)20について説明する。なお、
図9に示すように、椅子20に対して、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向として、説明する。また、椅子20では、
図9および
図10に示すように、椅子1の構成と同様の構成に相当するものに対して、同じ符号を付すと共に、その詳細な説明を省略し、主として椅子1と異なる構成について説明する。
【0067】
椅子20は、
図9に示すように、基台2、座部3、背凭れ部4、アームレスト部6およびレッグレスト部9を備えている。これらの椅子20における各構成は、主として椅子1における各構成と同等の機能を備えている。
【0068】
一方で、椅子20のアームレスト部6の上面には、
図9に示すように、椅子1とは異なる穿刺用載置面21Aが形成されている。具体的には、穿刺用載置面21Aは、アームレスト部6の前後方向の中央付近から前方にかけて形成されており、アームレスト部6が穿刺位置にあるときに略水平となる平面である点は、椅子1の穿刺用載置面8Aと同様である。しかし、穿刺用載置面21Aでは、穿刺用載置面8Aと異なり、左右両端が上方に向けて張り出すと共に、左右方向の中央が下方に向けて窪んで形成されている。すなわち、穿刺用載置面21Aは、アームレスト部6の長手方向に沿って左右方向の中央が下方に向けて窪んでいる。したがって、穿刺用載置面21Aは、
図10に示すように、穿刺位置で係止された左アームレスト部6Aにおいて、正面視で、中央が下方に向けて窪んだ略軒樋状に形成されている。これにより、椅子20では、穿刺用載置面21Aの窪みに腕を載置することで、被施術者がより安定して穿刺用載置面21Aに腕を載置することができる。
【0069】
また、椅子20のアームレスト部6の上面には、椅子1と同様に、アームレスト部6が通常位置にあるときに略水平となる平面の通常載置面21Bが形成されている。この通常載置面21Bと穿刺用載置面21Aとは連接されており、通常載置面21Bの前端と穿刺用載置面21Aの後端とが、平面視において略V字形をなして連接されている点は、椅子1と同様である。
【0070】
さらに、椅子20では、アームレスト部6の上面を覆う弾性素材の厚みが、椅子1と比較して、薄く形成されている。すなわち、椅子20では、穿刺用載置面21Aおよび通常載置面21Bが形成されるアームレスト部6の上面が、椅子1と比較して薄く形成されている。
【0071】
以上のとおり、椅子20が構成されている。
【0072】
次に、椅子20の効果を説明する。なお、椅子20が備える椅子1と同様の効果については説明を省略する。
【0073】
椅子20では、上記したとおり、穿刺用載置面21Aが、アームレスト部6の長手方向に沿って窪んでいる。すなわち、椅子20では、穿刺位置で係止されたアームレスト部6の上面において、穿刺用載置面21Aの略軒樋状の窪みに腕を載置することができるため、被施術者がより安定して腕を載置することができる。
【0074】
また、椅子20では、穿刺用載置面21Aおよび通常載置面21Bが形成されるアームレスト部6の上面が、椅子1と比較して薄く形成されている。すなわち、椅子20では、アームレスト部6の上面を覆う弾性素材の厚みが薄く形成されたことで、アームレスト部6自体の重量が、椅子1と比較して軽くなり、施術者がアームレスト部6の先端部7を持ち上げやすい。したがって、施術者が迅速に穿刺行為を行うことができる。
【0075】
以上、椅子20の効果について説明した。
【0076】
以上、椅子1および椅子20を本実施形態として詳述したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0077】
例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、アームレスト部6の上面前側に穿刺用載置面8Aまたは穿刺用載置面21Aが形成され、上面後側に通常載置面8Bまたは通常載置面21Bが形成された実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、穿刺用載置面と通常載置面とが左右横並びに形成されていてもよい。また、左右方向の中央に穿刺用載置面が形成され、その左右両端に通常載置面が形成されていてもよい。
【0078】
また、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、アームレスト部6の上面に通常載置面8Bまたは通常載置面21Bが形成された実施形態を示したが、アームレスト部の上面に通常載置面が形成されていなくてもよい。また、通常載置面が形成されている場合であっても、穿刺用載置面と通常載置面とが連接されていなくてもよい。
【0079】
また、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、アームレスト部6が、背凭れ部4に連結された実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、アームレスト部が、背凭れ部以外の基台または座部等に連結されたものであってもよい。
【0080】
さらに、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、アームレスト部6の筐体の内部において係止機構およびリンク機構を備え、これらの構成によって、アームレスト部6の係止と係止状態の解除とを可能にする実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、アームレスト部の係止と係止状態の解除とを可能にする構成であれば、エアー式または油圧式のシリンダー等を備えて制御された構成等であってもよい。
【0081】
また、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、アームレスト部6の筐体の内部において傾斜角度制御棒および突起部を備えた実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、アームレスト部の傾斜角度を制限し、アームレスト部を係止することができる構成であれば、他の構成であってもよい。
【0082】
さらに、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、アームレスト部6の傾斜角度が、通常位置と背凭れ部4に沿う位置との間で制限された実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、制限される傾斜角度は任意である。
【0083】
また、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、先端部7に、アームレスト部6の係止状態を解除する係止解除部10が設けられた実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、係止解除部を有さないもの、または、係止解除部がアームレスト部以外の基台または座部等に設けられたものであってもよい。
【0084】
さらに、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、係止解除部10が、先端部7の下面に設けられた実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、係止解除部が、先端部の左右側面または上面に設けられたものであってもよい。
【0085】
また、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、少なくとも穿刺位置で係止されたアームレスト部6の係止状態の解除をするために係止解除部10が操作される実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、穿刺位置における係止状態の解除に加えて、通常位置および背凭れ部に沿う位置のそれぞれにおける係止状態の解除の際に係止解除部が操作される構成であってもよい。
【0086】
さらに、例えば、本実施形態に係る椅子1および椅子20では、背凭れ部4のリクライニング機構およびレッグレスト部9の跳ね上げ機構2Bを備えた実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、リクライニング機構および跳ね上げ機構を備えない医療用椅子でもよく、また、レッグレスト部自体の有無も任意である。
【符号の説明】
【0087】
1 椅子(第一の実施形態に係る医療用椅子)
2 基台
2A 脚体
2B 跳ね上げ機構
3 座部
4 背凭れ部
4A ヘッドレスト部
4B 背受け面
4C 背凭れ部側面
5 回転軸
6 アームレスト部
6A 左アームレスト部
6B 右アームレスト部
7 先端部
8A 穿刺用載置面(第一の実施形態)
8B 通常載置面(第一の実施形態)
9 レッグレスト部
9A 脹脛載置部
9B 踵載置部
9C 脹脛載置面
10 係止解除部
20 椅子(第二の実施形態に係る医療用椅子)
21A 穿刺用載置面(第二の実施形態)
21B 通常載置面(第二の実施形態)