(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075136
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20220511BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E05B85/16 C
E05B49/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185724
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴明
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250DD06
2E250FF23
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
2E250JJ42
2E250JJ44
2E250LL01
2E250PP12
(57)【要約】
【課題】低消費電力、且つ、低コストで、簡素な構成のドアハンドル装置を提供する。
【解決手段】センサ電極10の検出結果に応じてロック6の施錠状態及び解錠状態を切り替えさせるドアハンドル装置1は、ユーザが有する端末から伝搬する、ロック6の施錠及び解錠を行う認証キーを含む電波を受信し、周囲に向けて伝搬させる電波を送信するアンテナ20と、アンテナ20と誘導結合を行い、アンテナ20を介して送受信した電波に応じて誘導起電力を生じる電圧誘起用コイル16と、電圧誘起用コイル16に生じた誘導起電力を検知する検知部18と、検知部18により検知された誘導起電力に基づいて、アンテナ20を介して端末と電波を送受信したか否かを判定するアンテナ駆動判定部19と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアハンドルに設けられ、ユーザの近接に応じて前記車両のドアのロックを施錠する施錠操作及び前記ロックを解錠する解錠操作の検出を行うセンサ電極と、前記センサ電極による前記検出を制御するセンサICとを備え、前記センサ電極の検出結果に応じて前記ロックの施錠状態及び解錠状態を切り替えさせるドアハンドル装置であって、
前記ユーザが有する端末から伝搬する、前記ロックの施錠及び解錠を行う認証キーを含む電波を受信し、周囲に向けて伝搬させる電波を送信するアンテナと、
前記アンテナと誘導結合を行い、前記アンテナを介して送受信した前記電波に応じて誘導起電力を生じる電圧誘起用コイルと、
前記電圧誘起用コイルに生じた前記誘導起電力を検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記誘導起電力に基づいて、前記アンテナを介して前記端末と前記電波を送受信したか否かを判定するアンテナ駆動判定部と、
を備えるドアハンドル装置。
【請求項2】
前記アンテナは、近距離無線通信用アンテナである請求項1に記載のドアハンドル装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記センサICに内蔵されている請求項1又は2に記載のドアハンドル装置。
【請求項4】
前記アンテナは、複数備えられ、当該複数のアンテナのうち少なくとも1つが前記電圧誘起用コイルと前記誘導結合を行う請求項1から3のいずれか一項に記載のドアハンドル装置。
【請求項5】
前記複数のアンテナのうち、少なくとも2つ以上のアンテナの夫々が前記電圧誘起用コイルと前記誘導結合を行い、前記検知部は、前記2つ以上のアンテナの夫々で送受信された前記電波に応じた前記誘導起電力を検知する請求項4に記載のドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアハンドルに設けられ、ユーザの近接に応じて車両のドアのロックを施錠する施錠操作及びロックを解錠する解錠操作の検出を行うセンサ電極と、当該センサ電極による検出を制御するセンサICとを備え、センサ電極の検出結果に応じてロックの施錠状態及び解錠状態を切り替えさせるドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置に対するユーザによる操作をセンサ電極で検出し、センサ電極の検出結果に応じて装置の動作を制御する技術が利用されている。このような技術として、例えば以下に出典を示す特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には車両用ドアハンドル装置が開示されている。この車両用ドアハンドル装置は、ドアハンドルに静電容量センサとLFアンテナとが備えられ、LFアンテナはセンサ基板に接続されている。LFアンテナが駆動されると、センサ駆動用ICがLFアンテナの駆動を検知し、LFアンテナの駆動中は静電容量センサの動作を停止するように構成されている。
【0004】
特許文献2には画像処理装置が開示されている。この画像処理装置は、静電容量センサと近距離無線通信機能とが備えられており、近距離無線通信用のアンテナの近傍に、ユーザの操作等を検知する静電容量センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-154118号公報
【特許文献2】特開2019-177630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、LFアンテナと静電容量センサとが電気的に有線接続されているため、LFアンテナと静電容量センサとを別体で構成することができない。また、センサ基板にLFアンテナを接続するための端子等が必要となることから基板サイズが増大し、ドアハンドルを小型化することが容易ではない。更に、センサ基板にLFアンテナを接続するため構造が複雑になり、コストアップの要因となる。このように特許文献1に記載の技術は改良の余地がある。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、近距離無線通信用のアンテナが静電容量センサの近傍に配置され、更には近距離無線通信用のアンテナによる通信時に静電容量センサも動作するため、静電容量センサが誤動作する可能性がある。また、近距離無線通信用のアンテナにより、静電容量センサが誤動作した場合に、近距離無線通信用のアンテナと静電容量センサとが常時、動作することになり、消費電力が大きくなってしまう。
【0008】
そこで、低消費電力、且つ、低コストであって、簡素な構成で実現できるドアハンドル装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るドアハンドル装置の特徴構成は、車両のドアハンドルに設けられ、ユーザの近接に応じて前記車両のドアのロックを施錠する施錠操作及び前記ロックを解錠する解錠操作の検出を行うセンサ電極と、前記センサ電極による前記検出を制御するセンサICとを備え、前記センサ電極の検出結果に応じて前記ロックの施錠状態及び解錠状態を切り替えさせるドアハンドル装置であって、前記ユーザが有する端末から伝搬する、前記ロックの施錠及び解錠を行う認証キーを含む電波を受信し、周囲に向けて伝搬させる電波を送信するアンテナと、前記アンテナと誘導結合を行い、前記アンテナを介して送受信した前記電波に応じて誘導起電力を生じる電圧誘起用コイルと、前記電圧誘起用コイルに生じた前記誘導起電力を検知する検知部と、前記検知部により検知された前記誘導起電力に基づいて、前記アンテナを介して前記端末と前記電波を送受信したか否かを判定するアンテナ駆動判定部と、を備えている点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、アンテナによる電波の送受信に応じて電圧誘起用コイルに誘導起電力を生じさせ、この誘導起電力に応じて、アンテナが電波を送受信したか否かを判定するので、電圧誘起用コイルへの電力供給を低消費化することができる。また、電圧誘起用コイルへ通電するための通電ユニットを別途、備える必要がないので、ドアハンドル装置を低コスト化、且つ、簡素化することが可能となる。更に、アンテナと電圧誘起用コイルとを接続するケーブルを用いることがないため、アンテナと電圧誘起用コイルとを別々の基板で構成することができる。したがって、アンテナと電圧誘起用コイルとの配置自由度を高めることができるので、ハンドルの意匠性を高めることが可能となる。
【0011】
また、前記アンテナは、近距離無線通信用アンテナであると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、アンテナの消費電力を低減することができる。
【0013】
また、前記検知部は、前記センサICに内蔵されていると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、構造をより簡素化することができるので、低コスト、且つ、コンパクトに構成することが可能となる。
【0015】
また、アンテナは、複数備えられ、当該複数のアンテナのうち少なくとも1つが前記電圧誘起用コイルと前記誘導結合を行うと好適である。
【0016】
このような構成とすれば、少なくとも1つのアンテナの電波の送受信により、電圧誘起用コイルに誘導起電力を生じさせることか可能である。したがって、少なくとも1つのアンテナによる電波の送受信を検知することが可能となる。
【0017】
また、前記複数のアンテナのうち、少なくとも2つ以上のアンテナの夫々が前記電圧誘起用コイルと前記誘導結合を行い、前記検知部は、前記2つ以上のアンテナの夫々で送受信された前記電波に応じた前記誘導起電力を検知すると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、電圧誘起用コイルを2つ以上のアンテナで共用できるので、構造を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ドアハンドル装置が搭載されるドアハンドルの断面図である。
【
図2】ドアハンドル装置の構成を示す模式図である。
【
図3】ドアハンドル装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】ドアハンドル装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図5】その他の実施形態に係るドアハンドル装置の構成を示す模式図である。
【
図6】その他の実施形態に係るドアハンドル装置の構成を示す模式図である。
【
図7】その他の実施形態に係るドアハンドル装置の構成を示す模式図である。
【
図8】その他の実施形態に係るドアハンドル装置の構成を示す模式図である。
【
図9】その他の実施形態に係るドアハンドル装置の構成を示す模式図である。
【
図10】その他の実施形態に係るドアハンドル装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るドアハンドル装置は、車両のドアハンドルに設けられ、車両のドアのロックの施錠操作及び解錠操作をできるように構成されている。以下、本実施形態のドアハンドル装置1について説明する。
【0021】
図1は、ドアハンドル装置1が搭載される車両のドアハンドル3の断面図である。また、
図2は、ドアハンドル装置1の構成を示す模式図である。
図1に示されるように、ドアハンドル3は車両のドア2に取り付けられ、ドアハンドル装置1はドアハンドル3に設けられる。
【0022】
ドアハンドル装置1は、
図2に示されるように、センサ電極10、センサIC12、電圧誘起用コイル16、センサ検知判定部17、検知部18、アンテナ駆動判定部19、アンテナ20の各機能部を備えて構成され、各機能部は、ドア2のロック6の施錠及び解錠に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0023】
本ドアハンドル装置1は、ユーザが近接して行う操作によってドア2のロック6の施錠及び解錠ができるように構成されている。センサ電極10は、このようなユーザの近接に応じて車両のドア2のロック6を施錠する施錠操作及びロック6を解錠する解錠操作の検出を行う。本実施形態では、施錠操作と解錠操作とを行うセンサ電極10が別体で設けられている。そこで、理解を容易にするために、これらのセンサ電極10を区別する場合には、施錠操作を検出するセンサ電極10をロックセンサ電極10Aとし、解錠操作を検出するセンサ電極10をアンロックセンサ電極10Bとして説明する。これらのロックセンサ電極10A及びアンロックセンサ電極10Bは静電容量センサを構成し、静電容量の変化に応じてユーザの近接を検出する。このような静電容量センサは公知であるので、説明は省略する。
図1に示されるように、ロックセンサ電極10Aはドアハンドル3における、延出方向(X方向)の一端側(例えば車両の前後方向前側)であって、ドア2と反対側(Y方向外側)に設けられ、ユーザが施錠操作を行う検出領域が設けられる。この検出領域へのユーザの指の接触が施錠操作に相当する。アンロックセンサ電極10Bはドアハンドル3の延出方向の中央部に設けられる把持部4におけるドア2と対向する側に設けられ、その表面にユーザが解錠操作を行う検出領域が設けられる。この検出領域へのユーザの手による接触や近接が解錠操作に相当する。
【0024】
センサIC12は、センサ電極10による検出を制御する。センサ電極10による検出とは、センサ電極10によるユーザの施錠操作及び解錠操作の検出であって、センサ電極10が静電容量の変化を検出するための通電、及び、センサ電極10による静電容量の検出結果の取得が含まれる。したがって、センサIC12は、センサ電極10に対する通電、及び、センサ電極10から静電容量の検出結果を取得する。このため、センサIC12にはセンサ電極10が電気的に接続される。
【0025】
本実施形態では、センサIC12にセンサ検知判定部17が備えられ、センサ検知判定部17は、センサ電極10から取得した静電容量の検出結果に基づいて、センサ電極10がユーザの手を検出したか否かを判定し、この判定結果に基づきドア2のロック6を解錠又は施錠させるための信号をECU5に出力する。換言すれば、センサ検知判定部17は、ロックセンサ電極10Aから取得した情報をもとに(ロックセンサの検知に基づき)、ロック6を施錠状態から解錠状態に切り替えるための信号をECU5に出力する。また、センサ検知判定部17は、アンロックセンサ電極10Bから取得した情報をもとに(アンロック検知に基づき)、ロック6を解錠状態から施錠状態に切り替えるための信号をECU5に出力する。したがって、センサ検知判定部17は、係る構成においてロック状態切替信号送信部としても機能する。
【0026】
なお、センサ検知判定部17からECU5に出力するドア2のロック6を解錠又は施錠させるための信号は、センサIC12における検知出力端子から、ECU5とセンサ基板60とを接続する一対の電源線のうち、正電位が印加される電源線を介して行うことが可能である。
【0027】
ECU5は、センサ検知判定部17からドア2のロック6を解錠させるための信号を取得した場合に、ロック6を施錠状態から解錠状態に切り替える。一方、ECU5は、センサ検知判定部17からドア2のロック6を施錠させるための信号を取得した場合に、ロック6を解錠状態から施錠状態に切り替える。したがって、ECU5は、係る構成においてロック状態切替部として機能する。
【0028】
本実施形態では、上述したロックセンサ電極10A、アンロックセンサ電極10B、センサIC12はセンサ基板60に設けられる。
【0029】
本ドアハンドル装置1は、上記のようなユーザの近接操作(接触操作)に基づくセンサ電極の検出結果に応じてロック6の施錠状態及び解錠状態を切り替えさせるが、リモコン(携帯機)の操作によっても切り替え可能に構成される。このようなリモコンによる切り替えは、公知であるので詳細な説明は省略するが、リモコンとの情報の伝達にアンテナ(LFアンテナ)35が設けられる。更に、これらに加えて例えばスマートフォン等の端末を利用した通信によりロック6の施錠状態及び解錠状態を切り替えさせることができるように構成されている。ドアハンドル装置1は、このような端末と電波を利用して通信する。
【0030】
そこで、ドアハンドル装置1には、ユーザが有する端末から伝搬する、ロック6の施錠及び解錠を行う認証キーを含む電波を受信し、周囲に向けて伝搬させる電波を送信するアンテナ20が設けられる。ユーザが有する端末とは、例えば電波を介して情報の伝達が可能なデバイスであって、例えばスマートフォンが相当する。このため、ユーザはドア2のロック6を施錠或いは解錠したい場合には、スマートフォンを介して施錠や解錠の指示を行う。この施錠や解錠の指示は、スマートフォンが認証キーを重畳した電波を送信することにより行われ、アンテナ20は、この電波を受信する。周囲に向けて伝搬させる電波を送信するとは、アンテナ20から当該アンテナ20の指向特性に応じた方向に電波を送信することを意味する。この送信された電波を端末が受信することで、端末はアンテナ20を介して通信を行うことが可能となる。例えば、このような電波の送受信は近距離無線通信(以下「NFC通信」とする)により行うことが可能である。係る場合、アンテナ20はNFC通信用アンテナが利用される。
【0031】
アンテナ20は、センサ基板60とは異なるデジタルキー基板70に実装される。デジタルキー基板70も、ドアハンドル3に内装される(
図1では省略している)。なお、デジタルキー基板70には、アンテナ20の通電を行うNFC IC50、NFC IC50と上位システムとを仲介するマイコン52、マイコン52に供給される電力を定電圧に制御するレギュレータ54、逆接続防止用のダイオード56が設けられる。NFC IC50とマイコン52とは通信線53で接続され、マイコン52は上位システムと通信可能に更に別の通信線55が設けられる。
【0032】
電圧誘起用コイル16は、アンテナ20と誘導結合を行い、アンテナ20を介して送受信した電波に応じて誘導起電力を生じる。また、電圧誘起用コイル16は、アンテナ35とも誘導結合を行い、アンテナ35を介して送受信した電波に応じた誘導起電力を生じる。この電圧誘起用コイル16は、センサ基板60に設けられ、端末とのNFC通信によりアンテナ20に電流が流れた場合に、当該電流に応じて電圧誘起用コイル16に誘導起電力が生じるように設けられる。電圧誘起用コイル16に生じる誘導起電力はダイオード31を介して検知部18に入力される。
【0033】
上述したように、電圧誘起用コイル16はセンサ基板60に設けられるが、電圧誘起用コイル16として部品を用いて構成する場合にはセンサ基板60に例えば半田溶着により設けることが可能である。あるいは、電圧誘起用コイル16はセンサ基板60に導体を引き回した配線パターンで形成しても良い。係る場合、部品点数を削減することが可能となる。また、電圧誘起用コイル16には、当該電圧誘起用コイル16と並列に、共振用のコンデンサC及び抵抗器Rが設けられる。これにより、電圧誘起用コイル16と共振用コンデンサとで並列共振回路を構成し、誘導起電力を増大させることが可能となる。更には、誘導結合の強さやアンテナ20の駆動周波数のばらつきに合わせてインピーダンスとQ値とを抵抗器の抵抗値に応じて設定することが可能となる。
【0034】
検知部18は、電圧誘起用コイル16に生じた誘導起電力を検知する。本実施形態では検知部18は、センサIC12に内蔵される。電圧誘起用コイル16に生じる誘導起電力は脈動している。そこで、検知部18は、このような脈動する誘導起電力を検出した場合に、センサIC12に対して誘導起電力を検知したことを示す信号を出力する。このような信号は、直流信号であると良い。検知部18は、例えば電圧誘起用コイル16からの電圧を直流化して出力すると良い。
【0035】
アンテナ駆動判定部19は、検知部18により検知された誘導起電力に基づいて、アンテナ20を介して端末と電波を送受信したか否かを判定する。本実施形態では、アンテナ駆動判定部19はセンサIC12に組み込まれ、検知部18から検知結果が伝達される。アンテナ駆動判定部19は、検知部18からの信号のレベル(波高)が所定のしきい値以上であれば、アンテナ20を介して端末と電波を送受信したと判定し、検知部18からの信号のレベル(波高)が当該しきい値未満であれば、アンテナ20を介して端末と電波を送受信していないと判定する。アンテナ駆動判定部19は、アンテナ20を介して端末と電波を送受信したと判定すると、センサIC12はセンサ電極10への通電を所定時間に亘って一時停止する。
【0036】
マイコン52は、アンテナ20を介して端末と電波を送受信すると、通信線55を介してECU5にロック状態切り替え信号を伝達する。ECU5は、このロック状態切り替え信号を取得すると、ロック6の施錠状態及び解錠状態を切り替える。具体的には、ECU5は、ロック6が施錠状態である場合において、マイコン52からロック状態切り替え信号を取得すると、ロック6を解錠する。一方、ロック6が解錠状態である場合において、マイコン52からロック状態切り替え信号を取得すると、ロック6を施錠する。このように、ドアハンドル装置1は、端末による操作に応じても、ロック6の施錠状態及び解錠状態を切り替えさせるように構成されている。
【0037】
図1に戻り、本実施形態では電圧誘起用コイル16とセンサ電極10(本実施形態ではロックセンサ電極10A)とはセンサIC12が実装されたセンサ基板60を挟んで互いに反対側に設けられる。これにより、センサ電極10が電圧誘起用コイル16からの誘導起電力によって誤動作することを防止できる。
【0038】
次に、ドアハンドル装置1の処理について
図3のフローチャートを用いて説明する。まず、センサ電極10に通電が行われ、センサ動作を開始する(ステップ#1)。この状態で、電圧誘起用コイル16に生じた誘導起電力が検知されると(ステップ#2:Yes)、センサ電極10への通電が一時停止される。これにより、センサ動作が一時停止する(ステップ#3)。所定時間に亘って、センサ電極10への通電が停止され、そのまま処理を終了しない場合には(ステップ#4:No)、ステップ#1に戻り、処理が継続される。
【0039】
この状態が
図4に示される。すなわち、所定時間毎にセンサ電極10に通電されるが、電圧誘起用コイル16に生じた誘導起電力が検知されると、センサ電極10への通電が一時停止される。所定時間に亘って、センサ電極10への通電が停止されると、その後、センサ電極10への通電が再開される。これにより、アンテナ20が電波を送受信していないときには、センサを安定して動作させることができるので、センサの低消費電力化が可能となる。
【0040】
また、アンテナ20とセンサとが同時に動作しないため、誤動作を防止できる。具体的には、アンテナ20の駆動周波数に合わせて共振回路に電圧が誘起されるため、センサ動作の停止を、アンテナ20の発振時に限定することが可能となる。以上のように、ドアハンドル装置1の処理が行われる。
【0041】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、ドアハンドル装置1がリモコンと通信を行うアンテナ35を備えているとして説明したが、
図5に示されるように、アンテナ35及びアンテナ35の駆動に係る部品(例えばアンテナ35の一方の端子に接続されたコンデンサ)を備えずに構成することも可能である。
【0042】
上記実施形態では、
図2のセンサIC12に対して、アンテナ35及び電圧誘起用コイル16が単一の端子(駆動検知端子)に接続されているように図示した。しかしながら、
図6に示されるように、アンテナ35及び電圧誘起用コイル16をそれぞれ、別々にセンサIC12に接続(例えばLFアンテナ駆動検知端子、及び、NFCアンテナ駆動検知端子)して構成することも可能である。また、電圧誘起用コイル16と並列にコンデンサC及び抵抗器Rを設けずに構成することも可能であるし、検知部18をセンサIC12の外付けで構成することも可能である。
【0043】
もちろん、
図7に示されるように、アンテナ35及び電圧誘起用コイル16をそれぞれ、別々にセンサIC12に接続(例えばLFアンテナ駆動検知端子、及び、NFCアンテナ駆動検知端子)して構成する共に、電圧誘起用コイル16と並列にコンデンサC及び抵抗器Rを設けずに構成し、検知部18をセンサIC12に内蔵して構成することも可能である。
【0044】
また、
図8に示されるように、
図2の回路に対して電圧誘起用コイル16と並列にコンデンサC及び抵抗器Rを設けずに構成することも可能である。更には、
図9に示されるように、
図2の回路に対して電圧誘起用コイル16と並列にコンデンサCのみを設けて構成することも可能である。
【0045】
また、
図10に示されるように、センサIC12における電圧誘起用コイル16からの誘導起電力が入力される端子に電圧平滑用コンデンサC1を設けると好適である。これにより、検知部18が適切に誘導起電力を検知することが可能となる。
【0046】
また、アンテナ20は、例えばNFCアンテナやLFアンテナなど、複数、備えて構成することも可能である。この場合、当該複数のアンテナ20のうち少なくとも1つが電圧誘起用コイル16と誘導結合を行うように構成すると良い。このような場合であっても、ドアハンドル装置1の低消費電力化、及び、低コスト化が可能である。
【0047】
もちろん、複数のアンテナ20のうち、少なくとも2つ以上のアンテナ20の夫々が電圧誘起用コイル16と誘導結合を行うように構成することも可能である。この場合、検知部18は、2つ以上のアンテナ20の夫々で送受信された電波に応じた誘導起電力を検知すると良い。なお、検知部18は、2つ以上のアンテナ20のうち、どのアンテナ20で送受信された電波に応じた誘導起電力かを判別可能に構成すると好適である。
【0048】
上記実施形態では、アンテナ20はNFCアンテナが利用されるとして説明したが、例えば、Bluetooth(登録商標)のアンテナであっても良いし、UWB(Ultra-Wide-Band)通信のアンテナであっても良い。
【0049】
上記実施形態では、ロックセンサ電極10A及びアンロックセンサ電極10Bは静電容量センサを構成するとして説明したが、センサは超音波センサやIRセンサであっても良い。係る場合、ロックセンサ電極10A及びアンロックセンサ電極10Bは、超音波を検出する電極や、IRを検出する電極であると良い。
【0050】
上記実施形態では、ドアハンドル装置1が、センサ基板60とデジタルキー基板70とを備える、すなわちセンサ基板60に搭載されるスマートキー機能と、デジタルキー基板70に搭載されるデジタルキー機能とを有するとして説明したが、デジタルキー機能とスマートキー機能とは別体で設け、スマートキーにデジタルキーを追って拡張して構成する(アドオンする)ことも可能である。
【0051】
本発明は、車両のドアハンドルに設けられ、ユーザの近接に応じて車両のドアのロックを施錠する施錠操作及びロックを解錠する解錠操作の検出を行うセンサ電極と、当該センサ電極による検出を制御するセンサICとを備え、センサ電極の検出結果に応じてロックの施錠状態及び解錠状態を切り替えさせるドアハンドル装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:ドアハンドル装置
2:ドア
3:ドアハンドル
6:ロック
10:センサ電極
12:センサIC
16:電圧誘起用コイル
18:検知部
19:アンテナ駆動判定部
20:アンテナ