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特開2022-75148導電性インク、その焼結体及び電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075148
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】導電性インク、その焼結体及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20220511BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C09D11/52
H01B1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185741
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】加納 椋平
(72)【発明者】
【氏名】中川 政俊
(72)【発明者】
【氏名】藤原 佳彦
【テーマコード(参考)】
4J039
5G301
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039BA06
4J039BA39
4J039BC01
4J039BC07
4J039BC13
4J039BC20
4J039BE01
4J039CA07
4J039EA24
4J039EA48
4J039FA02
4J039FA04
4J039GA10
5G301DA03
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】電子部品を製造する用途に用いられ、高精度の細線を描画でき、且つ表面平滑性の高い電子部品を実現する導電性インクを提供する。
【解決手段】表面修飾金属微粒子(A)と、少なくとも1つのアシルオキシ基又は少なくとも1つのヒドロキシル基を有するテルペン化合物、グリコールエーテル化合物及びグリコールエステル化合物から選択される少なくとも1種の溶剤(B)と、アルコール系溶剤(C)と、炭化水素系溶剤(D)とを含有し、前記表面修飾金属微粒子(A)の含有量が75.0重量%以下である導電性インク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面修飾金属微粒子(A)と、少なくとも1つのアシルオキシ基又は少なくとも1つのヒドロキシル基を有するテルペン化合物、グリコールエーテル化合物及びグリコールエステル化合物から選択される少なくとも1種の溶剤(B)と、アルコール系溶剤(C)と、炭化水素系溶剤(D)とを含有し、前記表面修飾金属微粒子(A)の含有量が75.0重量%以下である導電性インク。
【請求項2】
前記アルコール系溶剤(C)及び前記炭化水素系溶剤(D)の合計に対する前記表面修飾金属微粒子(A)の重量比(A/(C+D))が10.00以下である、請求項1に記載の導電性インク。
【請求項3】
前記アルコール系溶剤(C)及び前記炭化水素系溶剤(D)の合計に対する前記溶剤(B)の重量比(B/(C+D))が0.01~5.00である、請求項1又は2に記載の導電性インク。
【請求項4】
前記炭化水素系溶剤(D)に対する前記アルコール系溶剤(C)の重量比(C/D)が0.50~10.00である、請求項1~3の何れか1項に記載の導電性インク。
【請求項5】
前記表面修飾金属微粒子(A)の平均一次粒子径が300nm以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の導電性インク。
【請求項6】
更にバインダー樹脂(E)を含有し、前記バインダー樹脂(E)の含有量が0.1~5.0重量%である、請求項1~5の何れか1項に記載の導電性インク。
【請求項7】
粘度(25℃、せん断速度100s-1における)が1~1000Pa・sである、請求項1~6の何れか1項に記載の導電性インク。
【請求項8】
スクリーン印刷用導電性インクである、請求項1~7の何れか1項に記載の導電性インク。
【請求項9】
ディスペンサ印刷用導電性インクである、請求項1~7の何れか1項に記載の導電性インク。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の導電性インクの焼結体。
【請求項11】
基板上に、請求項10に記載の焼結体を備えた電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性インク、その焼結体及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック基板上に電極や配線等の電子部品を形成するのに有用な材料として、低温焼結可能な銀ナノ粒子が広く用いられている。しかし、銀ナノ粒子には凝集し易いという問題があった。銀ナノ粒子の凝集の問題を解消するために、特許文献1には、表面をアミンを含む保護剤で被覆した銀ナノ粒子と、テルペン系溶剤を少なくとも含み、且つ沸点が130℃未満の溶剤の含有量が溶剤全体の20重量%以下であり、スクリーン印刷用途に好適な導電性インクが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/175661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の導電性インクは、電子部品の形成に好適であるものの、なお銀ナノ粒子の凝集が生じる場合があり、そのため電子部品の表面平滑性を損なう可能性があった。
【0005】
従って、本開示の目的は、電子部品を製造する用途に用いられ、高精度の細線を描画でき、且つ表面平滑性の高い電子部品を実現する導電性インクを提供することにある。本開示の他の目的は、前記導電性インクの焼結体を提供することにある。本開示の他の目的は、前記導電性インクの焼結体を備えた電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、表面修飾金属微粒子を特定の溶剤、すなわち、少なくとも1つのアシルオキシ基又は少なくとも1つのヒドロキシル基を有するテルペン化合物、グリコールエーテル化合物及びグリコールエステル化合物から選択される少なくとも1種を含み、更にアルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤を含む溶剤に、表面修飾金属微粒子(A)を特定の含有量で分散させて得られる導電性インクは、細線を高精度に描画でき、描画、焼成された電極や配線等の電子部品の表面平滑性を優れたものにできることを見いだした。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0007】
すなわち、本開示は、表面修飾金属微粒子(A)と、少なくとも1つのアシルオキシ基又は少なくとも1つのヒドロキシル基を有するテルペン化合物、グリコールエーテル化合物及びグリコールエステル化合物から選択される少なくとも1種の溶剤(B)と、アルコール系溶剤(C)と、炭化水素系溶剤(D)とを含有する導電性インクであり、前記表面修飾金属微粒子(A)の含有量が75.0重量%以下である、導電性インクを提供する。
【0008】
前記導電性インクにおいて、前記アルコール系溶剤(C)及び前記炭化水素系溶剤(D)の合計に対する前記表面修飾金属微粒子(A)の重量比(A/(C+D))は、10.00以下であることが好ましい。
【0009】
前記導電性インクにおいて、前記アルコール系溶剤(C)及び前記炭化水素系溶剤(D)の合計に対する前記溶剤(B)の重量比(B/(C+D))は、0.01~5.00であることが好ましい。
【0010】
前記導電性インクにおいて、前記炭化水素系溶剤(D)に対する前記アルコール系溶剤(C)の重量比(C/D)は、0.50~10.00であることが好ましい。
【0011】
前記表面修飾金属微粒子(A)の平均一次粒子径は、300nm以下であることが好ましい。
【0012】
前記導電性インクにおいて、更にバインダー樹脂(E)を含有し、前記バインダー樹脂(E)の含有量が0.1~5.0重量%であることが好ましい。
【0013】
前記導電性インクの、25℃、せん断速度100s-1における粘度は、1~1000Pa・sであることが好ましい。
【0014】
前記導電性インクは、スクリーン印刷用導電性インクであってもよい。
【0015】
前記導電性インクは、ディスペンサ印刷用導電性インクであってもよい。
【0016】
本開示は、また、前記導電性インクの焼結体を提供する。
【0017】
本開示は、また、基板上に、前記焼結体を備えた電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本開示の導電性インクは上記構成を有するため、当該インクを使用すると、細線を高精度に描画でき、また、前記導電性インクを焼結して得られる焼結体は、表面平滑性に優れるため、基板上に電子部品(例えば、電極や配線等)を製造する用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[導電性インク]
本開示の導電性インクは、表面修飾金属微粒子(A)と、少なくとも1つのアシルオキシ基又は少なくとも1つのヒドロキシル基を有するテルペン化合物、グリコールエーテル化合物及びグリコールエステル化合物から選択される少なくとも1種の溶剤(B)と、アルコール系溶剤(C)と、炭化水素系溶剤(D)とを含有する導電性インクであり、前記表面修飾金属微粒子(A)の含有量が75.0重量%以下である。
【0020】
<表面修飾金属微粒子(A)>
本開示の表面修飾金属微粒子(A)は、表面を有機保護剤によって被覆された構成を有する金属微粒子である。
【0021】
上記表面修飾金属微粒子の体積基準の平均一次粒子径(メディアン径、D50)は、優れた表面平滑性が得られ易い点から、300nm以下が好ましく、より好ましくは1.0~100nm、更に好ましくは5.0~80nm、特に好ましくは10.0~70nmである。なお、表面修飾金属微粒子の平均一次粒子径は、例えば、市販の動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern Panalytical社製、Zetasizer Nano ZS等)を用いて動的光散乱法(ドップラー散乱光解析)により測定することができる。
【0022】
上記金属微粒子の材質としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、スズ、アルミニウム又はこれらの合金等が挙げられる。中でも、銅微粒子、銀微粒子が好ましく、銀微粒子がより好ましい。金属微粒子は、単一の金属により形成されていてもよく、例えばコアシェル構造のように2種以上の金属により形成されていてもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記金属微粒子は、球状、不定形状、フレーク状(扁平状)等、どのような形状であってもよく、中でも、球状又は不定形状が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記有機保護剤としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物が好ましく、特に、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する炭素数4~18の化合物が好ましく、最も好ましくはアミノ基を有する化合物であり、とりわけ好ましくはアミノ基を有する炭素数4~18の化合物(すなわち、炭素数4~18のアミン)である。
【0025】
上記アミンとしては、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基から選択される少なくとも1種のアミノ基を、1つ有するモノアミン化合物、又は2つ以上有する多価アミン化合物(ジアミン化合物等)が挙げられる。
【0026】
上記アミノ基を有する化合物は、総炭素数6以上のモノアミン(1)、総炭素数5以下のモノアミン(2)及び総炭素数が8以下のジアミン(3)から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0027】
上記モノアミン(1)としては、金属微粒子の凝集を抑制でき、焼結時における除去が容易である点から、総炭素数6~18(より好ましくは6~16、更に好ましくは6~12)の直鎖状アルキル基を有するアミン化合物が好ましく、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン等が挙げられる。
【0028】
また、上記モノアミン(1)としては、立体的因子により、一層少量であっても分散性を付与できる点から、総炭素数6~16(より好ましくは6~10)の分岐鎖状アルキル基を有するアミン化合物であってもよく、例えば、イソヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、tert-オクチルアミン等が挙げられる。
【0029】
上記モノアミン(1)は、また、例えば、シクロアルキル基を有する第一級アミン(シクロヘキシルアミン等)、アルケニル基を有する第一級アミン等(オレイルアミン等)、直鎖状アルキル基を有する第二級アミン(N,N-ジプロピルアミン、N,N-ジブチルアミン、N,N-ジペンチルアミン、N,N-ジヘキシルアミン、N,N-ジペプチルアミン、N,N-ジオクチルアミン、N,N-ジノニルアミン、N,N-ジデシルアミン、N,N-ジウンデシルアミン、N,N-ジドデシルアミン、N-プロピル-N-ブチルアミン等)、分岐鎖状アルキル基を有する第二級アミン(N,N-ジイソヘキシルアミン、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)アミン等)、分岐鎖状アルキル基を有する第三級アミン(直鎖状アルキル基を有する第三級アミン(トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等)、トリイソヘキシルアミン、トリ(2-エチルヘキシル)アミン等)などであってもよい。
【0030】
上記モノアミン(2)としては、高い配位能を有し、かつ低温焼結でも短時間で除去できる点から、総炭素数2~5(より好ましくは3~5、更に好ましくは4~5)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有するアミン化合物が好ましい。
【0031】
上記モノアミン(2)の具体例としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する第一級アミン(エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、tert-ペンチルアミン等)、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する第二級アミン(N,N-ジメチルアミン、N,N-ジエチルアミン、N-メチル-N-プロピルアミン、N-エチル-N-プロピルアミン等)等が挙げられる。
【0032】
上記ジアミン(3)としては、2つのアミノ基の配位能が異なる結果、配位の複雑化を抑制できる点で、第一級アミノ基と第三級アミノ基を有するジアミンが好ましく、例えば、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0033】
前記ジアミン(3)は、第一級アミノ基を2つ有するジアミン(エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン等)、第二級アミノ基を2つ有するジアミン(N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン等)であってもよい。
【0034】
上記モノアミン(1)、上記モノアミン(2)及び上記ジアミン(3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記アミノ基を有する化合物は、上記モノアミン(1)、上記モノアミン(2)及び上記ジアミン(3)以外に、他のアミン化合物を含有していてもよいが、上記アミン化合物中の、他のアミン化合物の含有量は、40.0重量%以下が好ましく、より好ましくは20.0重量%以下、更に好ましくは10.0重量%以下、特に好ましくは0重量%である。
【0036】
上記表面修飾金属微粒子(A)中の上記有機保護剤の含有量は、表面修飾金属微粒子の凝集を抑制しつつ焼結時における除去が容易である点から、0.5~10.0重量%が好ましく、より好ましくは1.0~7.0重量%、更に好ましくは1.5~5.0重量%である。
【0037】
上記導電性インク中の上記表面修飾金属微粒子(A)の含有量は、細線を高精度に描画し易い点から、75.0重量%が好ましく、より好ましくは20.0~75.0重量%、更に好ましくは30.0~73.0重量%、特に好ましくは40.0~70.0重量%である。
【0038】
<溶剤(B)>
本開示に係る溶剤(B)は、少なくとも1つのアシルオキシ基又は少なくとも1つのヒドロキシル基を有するテルペン化合物、グリコールエーテル化合物及びグリコールエステル化合物から選択される少なくとも1種を含む。
【0039】
上記テルペン化合物に係るアシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基が挙げられ、中でも、アセトキシ基が好ましい。
【0040】
上記少なくとも1つのアシルオキシ基を有するテルペン化合物の具体例としては、例えば、2-(4-アセトキシ-4-メチルシクロヘキサン-1-イル)プロパン-2-イル=アセタート、4-(アセチルオキシ)-α,α,4-トリメチルシクロヘキサンメタノール、2-(4-ヒドロキシ-4-メチルシクロヘキサン-1-イル)プロパン-2-イル=アセタート、1,2,5,6-テトラヒドロベンジルアセテート、3-アセチルオキシ-p-メンタン、8-アセチルオキシ-p-メンタン、ジヒドロターピニルアセテート、8-アセチルオキシ-p-メンタン-1,2-ジオール等が挙げられる。中でも2-(4-アセトキシ-4-メチルシクロヘキサン-1-イル)プロパン-2-イル=アセタートが好ましい。これらテルペン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記少なくとも1つのヒドロキシル基を有するテルペン化合物の具体例としては、例えば、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール、δ-テルピネオール、1-ヒドロキシ-p-メンタン、8-ヒドロキシ-p-メンタン、ボルネオール、p-メンタ-6,8-ジエン-2-オール、1-カルボンオキシド、シトロネロール、p-シメン-8-オール、d-ジヒドロカルベオール、オイゲノール、d-リモネン-10-オール、1,8-p-メンタジエン-4-オール、d-2,8-p-メンタジエン-1-オール、d-1,(7),8-メンタジエン-2-オール、6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト-2-エン-2-メタノール、1-ペリリルアルコール、ピノカルベオール、ソブレロール、テトラヒドロミルセノール、ベルベノール、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール(=メントール)、2-[1-メチル-1-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)エトキシ]エタノール等が挙げられる。これらテルペン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記テルペン化合物の沸点は、印刷時には蒸散しにくく焼結時には容易に揮発する点から、130℃以上が好ましく、より好ましくは130~300℃、更に好ましくは200~270℃である。
【0043】
上記テルペン系溶剤の商品例としては、例えば、「テルソルブDTO-210」、「テルソルブTHA-90」、「テルソルブTHA-70」(以上、日本テルペン化学(株)製)等が挙げられる。
【0044】
上記グリコールエーテル化合物、上記グリコールエステル化合物としては、グリコールジエーテル、グリコールエーテルエステル、グリコールジエステル、グリコールモノエーテル及びグリコールモノエステルが挙げられる。
【0045】
上記グリコールジエーテル、上記グリコールエーテルエステル及び上記グリコールジエステルは、下記式(1)で表される。
【化1】
【0046】
式(1)中、R1及びR3は、同一又は異なって、アルキル基を表し、R2はアルキレン基を表す。l及びnは、同一又は異なって、0又は1を示し、mは1~8の整数を示す。
【0047】
上記R1及びR3に係るアルキル基は、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5の、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、具体例としては、例えば、メチル基、メチルメチル基、ジメチルメチル基、エチル基、プロピル基、トリメチル基、テトラメチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンタメチル基、ヘキサメチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0048】
上記R2に係るアルキレン基は、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4、更に好ましくは炭素数2~3の、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であり、具体例としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1-メチルプロピレン基、ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0049】
上記mは、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~3、更に好ましくは2~3の整数である。
【0050】
上記グリコールジエーテルの具体例としては、例えば、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-イソペンチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルシクロペンチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記グリコールエーテルエステルの具体例としては、例えば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコール-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記グリコールジエステルの具体例としては、例えば、プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールジブチレート、エチレングリコールジイソブチレート、エチレングリコールジt-ブチレート、エチレングリコールジヘキシレート等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
上記グリコールジエーテル、上記グリコールエーテルエステル及び上記グリコールジエステルの沸点は、印刷時には蒸散しにくく焼結時には容易に揮発する点から、130℃以上が好ましく、より好ましくは130~300℃、更に好ましくは170~300℃、特に好ましくは200~300℃である。
【0054】
上記グリコールモノエーテル及び上記グリコールモノエステルは、下記式(2)で表される。
【化2】
【0055】
式(2)中、R4は、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R5はアルキレン基を表す。sは0又は1を示し、tは1~8の整数を示す。
【0056】
上記R4に係るアルキル基としては、上記R1及びR3と同じものが挙げられる。
【0057】
上記R4に係るアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0058】
上記R5に係るアルキレン基としては、上記R2と同じものが挙げられる。
【0059】
上記tは、1~8が好ましく、より好ましくは1~3、更に好ましくは2~3である。
【0060】
上記グリコールモノエーテルの具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノt-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(=ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(=ヘキシルカルビトール)、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
上記グリコールモノエステルの具体例としては、例えば、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノプロピオネート、エチレングリコールモノブチレート、エチレングリコールモノイソブチレート、エチレングリコールモノt-ブチレート、エチレングリコールモノヘキシレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
上記グリコールモノエーテル及びグリコールモノエステルの沸点は、印刷時には蒸散しにくく焼結時には容易に揮発する点から、130℃以上が好ましく、より好ましくは130~300℃、更に好ましくは150~270℃、特に好ましくは170~250℃である。
【0063】
上記導電性インク中の上記溶剤(B)の含有量は、細線を高精度に描画し易い点から、5.0~25.0重量%が好ましく、より好ましくは6.0~23.0重量%、更に好ましくは7.0~22.0重量%である。
【0064】
<アルコール系溶剤(C)>
上記アルコール系溶剤(C)としては、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~10のアルコールを用いることができる。上記アルコール系溶剤(C)の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール等の脂肪族アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール等の脂環式アルコール;ベンジルアルコール、2-フェネチルアルコール等の芳香族アルコールなどが挙げられる。これらの中でも、印刷時には蒸散しにくく焼結時には容易に揮発する点から、脂環式アルコールが好ましい。なお、本開示では、上記アルコール系溶剤(C)はテルペン系アルコールを含まないものとする。
【0065】
上記アルコール系溶剤(C)の沸点は、60℃以上が好ましく、より好ましくは60~310℃、更に好ましくは60~270℃、特に好ましくは60~230℃である。また、金属微粒子の凝集を一層抑制できる点から、沸点が60℃以上130℃未満のアルコール系溶剤(1)と、沸点が130~310℃のアルコール系溶剤(2)とを併用してもよい。上記アルコール系溶剤(1)とアルコール系溶剤(2)の合計中の上記アルコール系溶剤(1)の含有量は、0.1~30.0重量%が好ましく、より好ましくは0.2~25.0重量%、更に好ましくは0.3~20.0重量%である。
【0066】
上記導電性インク中の上記アルコール系溶剤(C)の含有量は、細線を高精度に描画し易い点から、10.0~37.0重量%が好ましく、より好ましくは12.0~36.0重量%、更に好ましくは13.0~35.0重量%である。
【0067】
<炭化水素系溶剤(D)>
上記炭化水素系溶剤(D)としては、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~10の炭化水素を用いることができる。上記炭化水素系溶剤(D)の具体例としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロドデセン、デカヒドロナフタレン(=デカリン)、リモネン、メンタン等の脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0068】
上記炭化水素系溶剤(D)の沸点は、印刷時には蒸散しにくく焼結時には容易に揮発する点から、130℃以上が好ましく、より好ましくは130~310℃、更に好ましくは140~300℃、特に好ましくは150~290℃である。
【0069】
上記導電性インク中の上記炭化水素系溶剤(D)の含有量は、細線を高精度に描画し易い点から、4.0~15.0重量%が好ましく、より好ましくは5.0~13.0重量%、更に好ましくは6.0~12.0重量%である。
【0070】
上記導電性インクにおいて、上記アルコール系溶剤(C)及び上記炭化水素系溶剤(D)の合計に対する上記表面修飾金属微粒子(A)の重量比(A/(C+D))は、表面修飾金属微粒子の凝集を抑制し易い点から、10.00以下が好ましく、より好ましくは5.00以下、更に好ましくは3.00以下、特に好ましくは2.50以下である。下限は0.50が好ましく、より好ましくは1.00、更に好ましくは1.10、更に好ましくは1.30である。
【0071】
上記導電性インクにおいて、上記アルコール系溶剤(C)及び上記炭化水素系溶剤(D)の合計に対する上記溶剤(B)の重量比(B/(C+D))は、表面修飾金属微粒子の凝集を抑制し易い点から、0.01~5.00が好ましく、より好ましくは0.05~2.00、更に好ましくは0.10~1.00、最も好ましくは0.20~0.65である。
【0072】
上記導電性インクにおいて、上記炭化水素系溶剤(D)に対する上記アルコール系溶剤(C)の重量比(C/D)は、表面修飾金属微粒子の凝集を抑制し易い点から、0.50~10.00が好ましく、より好ましくは1.00~5.00、更に好ましくは1.20~4.00、最も好ましくは1.40~3.70である。
【0073】
<バインダー樹脂(E)>
本開示の導電性インクは、導電性インクが適度な粘度を有し細線を一層高精度に描画し易くする点から、更に、バインダー樹脂を含有していてもよい。
【0074】
上記バインダー樹脂(E)としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース等、好ましくはエチルセルロース)等が挙げられ、中でも、セルロース系樹脂が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
上記バインダー樹脂(E)の重量平均分子量は、導電性インクに適度な粘度を付与する点から、40,000~1,000,000が好ましく、より好ましくは45,000~600,000、更に好ましくは50,000~400,000である。なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。
【0076】
上記導電性インク中の上記バインダー樹脂(E)の含有量は、細線を一層高精度に描画し易くする点から、0.1~5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.3~4.0重量%、更に好ましくは0.5~3.0重量%である。
【0077】
本開示の導電性インクは、上記成分以外にも、例えば、表面エネルギー調整剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、密着性付与剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0078】
本開示の導電性インクの粘度(25℃、せん断速度100s-1)は、1~1000Pa・sが好ましく、より好ましくは2~500Pa・s以上、更に好ましくは5~200Pa・sである。本開示の導電性インクは、上記範囲の粘度を有するため、スクリーン印刷用又はディスペンサ印刷用の導電性インクとして好適に用いることができる。なお、粘度は、レオメーター(Anton Paar社製、Physica MCR301等)を用いて測定することができる。
【0079】
本開示の導電性インクは、例えば、金属化合物と、上記有機保護剤とを混合して錯体を生成させ、生成した錯体を熱分解させて表面修飾金属微粒子(A)を得る工程と、得られた表面修飾金属微粒子(A)と、少なくとも、上記溶剤(B)、上記アルコール系溶剤(C)及び炭化水素系溶剤(D)とを混合する工程を経て製造することができる。
【0080】
上記金属化合物としては、例えば、金属カルボン酸塩(金属ギ酸塩、金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属マロン酸塩、金属安息香酸塩、金属フタル酸塩等)、金属ハロゲン化物(金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物等)、金属無機酸塩(金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属炭酸塩等)を用いることができる。中でも、分解により容易に金属を生成し且つ金属以外の不純物を生じにくいという点から、金属シュウ酸塩が好ましい。
【0081】
上記有機保護剤(特に好ましくは上記アミン)の使用量は、表面修飾金属微粒子(A)に十分な分散性を付与できる点から、上記金属化合物の金属原子1モルに対して、1~50モルが好ましく、より好ましくは10~40モル、更に好ましくは15~35モルである。
【0082】
上記錯体を生成するための、上記金属化合物と上記有機保護剤との反応は、反応溶剤の存在下で行ってもよいし、反応溶剤の不存在下で行ってもよい。上記反応溶剤としては、例えば、炭素数3以上のアルコール系溶剤(好ましくは脂肪族アルコール)を用いることができる。
【0083】
上記反応溶剤の使用量は、上記金属化合物100重量部に対して、120~1000重量部が好ましく、より好ましくは130~800重量部、更に好ましくは150~500重量部である。
【0084】
上記錯体を生成する反応は、例えば、反応温度5~40℃、反応時間30分~3時間で行うことができる。
【0085】
上記熱分解は、上記反応溶剤と同様の反応溶剤の存在下で行ってもよい。熱分解温度は、例えば、80~120℃が好ましく、より好ましくは100~110℃であり、熱分解時間は、例えば、10分~5時間である。また、上記錯体の熱分解は、空気雰囲気下や、不活性ガス(窒素、アルゴン等)雰囲気下で行うことができる。
【0086】
上記熱分解により得られた表面修飾金属微粒子(A)は、遠心分離やデカンテーションにより洗浄してもよい。
【0087】
上記熱分解により得られた表面修飾金属微粒子(A)と、上記溶剤(B)、上記アルコール系溶剤(C)及び上記炭化水素系溶剤(D)等との混合は、例えば、自公転式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の公知の混合用機器を用いて行うことができる。上記の各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよく、例えば、上記アルコール系溶剤(C)及び上記炭化水素系溶剤(D)に、上記表面修飾金属微粒子(A)を混合した後に、上記溶剤(B)を加えて混合するものであってもよい。
【0088】
[焼結体]
本開示の焼結体は、上記導電性インクを、基板上にスクリーン印刷法、ディスペンサ印刷等により塗布し、焼結する工程を経て製造することができる。本開示の焼結体により、高精度で、表面平滑性に優れる電子部品(例えば、電極や配線等)を形成できる。
【0089】
焼結温度は、60~130℃が好ましく、より好ましくは100~120℃であり、焼結時間は、0.5~3時間が好ましく、より好ましくは0.5~2時間、更に好ましくは0.5~1時間である。
【0090】
上記焼結体は、1cm2あたりの15μm以上の凝集物の数が、例えば100以下、好ましくは20以下という、優れた平滑性を示す。なお、焼結体の平滑性は実施例に記載の方法で評価することができる。
【0091】
上記焼結体は、また、例えば、体積抵抗率50μΩcm以下、より好ましくは40μΩcm以下、更に好ましくは35μΩcm以下という優れた導電性を示す。なお、焼結体の導電性(体積抵抗率)は実施例に記載の方法で測定できる。
【0092】
上記基板としては、ガラス基板、セラミック基板、耐熱性プラスチック基板(ポリイミド系フィルム、液晶ポリマー等)、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等)、汎用プラスチック基板(ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等)などが挙げられる。
【0093】
[電子デバイス]
本開示の電子デバイスは、上記焼結体により形成された電子部品を備える。本開示の電子デバイスとしては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、ICカード、ICタグ、太陽電池、LED素子、有機トランジスタ、コンデンサー(キャパシタ)、電子ペーパー、フレキシブル電池、フレキシブルセンサ、メンブレンスイッチ、タッチパネル、EMIシールド等が挙げられる。
【0094】
上記の各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0095】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0096】
実施例及び比較例に使用した表面修飾金属微粒子、溶剤及び添加剤は、以下の通りである。
【0097】
<表面修飾金属微粒子(A)>
【0098】
(調製例1)
【0099】
(錯体生成工程)
硝酸銀(和光純薬工業(株)製)とシュウ酸二水和物(和光純薬工業(株)製)からシュウ酸銀(分子量:303.78)を得た。500mLフラスコに前記シュウ酸銀20.0g(65.8mmol)を仕込み、これに、n-ブタノール30.0gを添加し、シュウ酸銀のn-ブタノールスラリーを調製した。このスラリーに、30℃で、n-ブチルアミン(分子量:73.14、(株)ダイセル製)57.8g(790.1mmol)、n-ヘキシルアミン(分子量:101.19、東京化成工業(株)製)40.0g(395.0mmol)、n-オクチルアミン(分子量:129.25、商品名「ファーミン08D」、花王(株)製)38.3g(296.3mmol)、n-ドデシルアミン(分子量:185.35、商品名「ファーミン20D」、花王(株)製)18.3g(98.8mmol)、及びN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(分子量:102.18、広栄化学工業(株)製)40.4g(395.0mmol)のアミン混合液を滴下した。滴下後、30℃で2時間撹拌して、シュウ酸銀とアミンの錯形成反応を進行させ、白色物質(シュウ酸銀-アミン錯体)を得た。
【0100】
(熱分解工程)
シュウ酸銀-アミン錯体の形成後に、反応液温度を30℃から105℃程度(103~108℃)まで昇温し、その後、前記温度を保持した状態で1時間加熱して、シュウ酸銀-アミン錯体を熱分解させて、濃青色の表面修飾銀ナノ粒子がアミン混合液中に懸濁した懸濁液を得た。
【0101】
(洗浄工程)
冷却後、得られた懸濁液にメタノール200gを加えて撹拌し、その後、遠心分離により表面修飾銀ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、再度、メタノール60gを加えて撹拌し、その後、遠心分離により表面修飾銀ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。このようにして、湿潤状態の表面修飾銀ナノ粒子1を得た。動的光散乱法にて、得られた表面修飾銀ナノ粒子1の平均一次粒子径を確認したところ、25nmであった。
【0102】
(調製例2)
【0103】
(錯体生成工程)
硝酸銀(和光純薬工業(株)製)とシュウ酸二水和物(和光純薬工業(株)製)から、シュウ酸銀(分子量:303.78)を得た。500mLフラスコに前記シュウ酸銀40.0g(0.1317mol)を仕込み、これに、n-ブタノール60.0gを添加し、シュウ酸銀のn-ブタノールスラリーを調製した。このスラリーに、30℃で、n-ブチルアミン(分子量:73.14、東京化成工業(株)製試薬)115.58g(1.5802mol)、2-エチルヘキシルアミン(分子量:129.25、和光純薬工業(株)製試薬)51.06g(0.3950mol)、及びn-オクチルアミン(分子量:129.25、東京化成工業(株)製試薬)17.02g(0.1317mol)のアミン混合液を滴下した。滴下後、30℃で1時間撹拌して、シュウ酸銀とアミンの錯形成反応を進行させ、白色物質(シュウ酸銀-アミン錯体)を得た。
【0104】
(熱分解工程)
シュウ酸銀-アミン錯体の形成後に、反応液温度を30℃から105℃程度(103~108℃)まで昇温し、その後、前記温度を保持した状態で1時間加熱して、シュウ酸銀-アミン錯体を熱分解させて、濃青色の表面修飾銀ナノ粒子がアミン混合液中に懸濁した懸濁液を得た。
【0105】
(洗浄工程)
冷却後、得られた懸濁液にメタノール120gを加えて撹拌し、その後、遠心分離により表面修飾銀ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、次に、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(東京化成工業(株)製試薬)120gを加えて攪拌し、その後、遠心分離により表面修飾銀ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。このようにして、湿潤状態の表面修飾銀ナノ粒子2を得た。走査型電子顕微鏡(日本電子社製JSM-6700F)を用いて任意に選択した10個の銀ナノ粒子について、平均一次粒子径は50nm程度であった。
【0106】
実施例及び比較例に使用した溶剤及び添加剤は、以下の通りである。
【0107】
<溶剤(B)>
・THA70:1,8-テルピン-1-アセテート、8-テルピン-8-アセテート及び1,8-テルピン-1,8-ジアセテートの混合物、沸点223℃、商品名「テルソルブTHA-70」、日本テルペン化学(株)製
・TPM:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、沸点241℃、(株)ダイセル製
・DPNB:ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、沸点230℃、(株)ダイセル製
【0108】
<アルコール系溶剤(C)>
・メタノール:沸点65℃、富士フィルム和光純薬(株)製
・メントール:2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール、沸点212℃、富士フィルム和光純薬(株)製
・シクロヘキサンメタノール:沸点181℃、富士フィルム和光純薬(株)製
【0109】
<炭化水素系系溶剤(D)>
・ヘキサデカン:沸点285℃、富士フィルム和光純薬(株)製
・テトラデカン:沸点253℃、富士フィルム和光純薬(株)製
・リモネン:沸点176℃、富士フィルム和光純薬(株)製
・デカリン:沸点190℃、富士フィルム和光純薬(株)製
【0110】
<バインダー樹脂(E)>
・EC300:エチルセルロース、商品名「エトセルSTD 300」、ダウケミカル社製
・EC200:エチルセルロース、重量平均分子量190,000、商品名「エトセルSTD 200」、ダウケミカル社製
・EC7:エチルセルロース、重量平均分子量55,000、商品名「エトセルSTD 7」、ダウケミカル社製
【0111】
実施例1(銀インクの調製)
THA-70、メタノール、メントール、ヘキサデカン、EC300、表面修飾銀ナノ粒子1を配合し、攪拌混練(2分間×3回)して、黒茶色の銀インクを調製した。尚、攪拌混練は、自転公転式混練機(倉敷紡績(株)製、マゼルスターKKK2508)を用いて行った。
【0112】
実施例2~10、比較例1~3
下記表1に記載の含有量(重量%)となるように配合した以外は実施例1と同様に行って銀インクを調製した。
【0113】
実施例1~10、及び比較例1~3で調製した銀インクについて、焼結体の平滑性、粘度及び焼結体の導電性を下記方法により評価した。
【0114】
(焼結体の平滑性)
実施例1~10、及び比較例1~3で調製した銀インクを、ガラス板上に塗布して塗膜を形成した。塗膜形成後、速やかに塗膜を120℃、30分間の条件で送風乾燥炉にて焼結し、およそ4μm厚みの焼結体を得た。得られた焼結体について、15μm以上の凝集物の数(1cm2あたり)を光学顕微鏡を用いた観察により評価した。
【0115】
平滑性の評価基準は以下の通りである。
〇(良好):20以下
△(やや良好):20超100以下
×(不良):100超
【0116】
(粘度)
実施例1~10、及び比較例1~3で調製した銀インクの粘度(25℃、せん断速度100s-1)は、レオメーター(Anton Paar社製、Physica MCR301)を用いて測定した。
【0117】
(焼結体の導電性評価)
実施例1~10、及び比較例1~3で調製した銀インクをガラス板上に塗布して塗膜を形成した。塗膜形成後、速やかに塗膜を120℃、30分間の条件で送風乾燥炉にて焼結し、およそ4μm厚みの焼結体を得た。得られた焼結体の導電性について、4端子法(ロレスタGP MCP-T610)を用いて体積抵抗率を測定して、焼結体の導電性を評価した。
【0118】
表1より、表面修飾金属微粒子(A)、溶剤(B)、アルコール系溶剤(C)及び炭化水素系溶剤(D)を含有する実施例1~10の銀インクから得られる焼結体は平滑性に優れることが分かった(〇、△)。これに対して、表面修飾金属微粒子(A)の含有量について本開示に特定する範囲を外れる比較例1、アルコール系溶剤(C)及び炭化水素系溶剤(D)を含有しない比較例2、あるいは溶剤(B)を含有しない比較例3の銀インクから得られる焼結体は、何れも、平滑性に劣ることが分かった(×)。
【0119】
【表1】
表1中、体積抵抗率及び粘度における「-」は測定していないことを表す。