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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075192
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】無人機
(51)【国際特許分類】
   B64C 25/62 20060101AFI20220511BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220511BHJP
   B64C 25/06 20060101ALI20220511BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B64C25/62
B64C39/02
B64C25/06
B64C27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185815
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】恒川 正善
(57)【要約】
【課題】従来の無人機では、伸縮可能な構造を有する支持機構と緩衝機構とを備えた降着装置を採用していたため、重量が大きいうえに機体下部のスペースが不充分であった。
【解決手段】垂直に離着陸可能な無人機Aであって、着陸時に用いる降着装置が、機体1の姿勢を維持する複数の支持脚6と、2本の支持脚6に渡って配置した板ばね7とを備え、板ばね7が、両端に、常態で下向きに傾斜した屈曲部7Aを有すると共に、両屈曲部7Aに、支持脚6の下端部に回動自在に連結するブラケット8を夫々有し、且つ中央部に、両ブラケット8の相反する方向への回動を許容する可変部7Cを有する構成とし、降着装置の充分な機能を維持しつつ構造を簡略化して軽量化を図ると共に、機体下部のスペースの確保を実現した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に離着陸可能な無人機であって、
着陸時に用いる降着装置を備え、
降着装置が、機体の姿勢を維持する複数の支持脚と、2本の支持脚に渡って配置した板ばねとを備え、
板ばねが、両端に、常態で下向きに傾斜した屈曲部を有すると共に、両屈曲部に、支持脚の下端部に回動自在に連結するブラケットを夫々有し、且つ中央部に、両ブラケットの相反する方向への回動を許容する可変部を有することを特徴とする無人機。
【請求項2】
平面視で四角形の角に配置した4本の支持脚を有すると共に、四角形の対辺上で夫々対を成す2本の支持脚に対して板ばねを配置したことを特徴とする請求項1に記載の無人機。
【請求項3】
板ばねが、両屈曲部の先端に、上方へ反り返る湾曲部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の無人機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直に離着陸可能な無人機に関し、とくに、降着装置を改良した無人機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における無人機としては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載の無人機は、機体の下側に、一対の支持機構と、両支持機構の下端部に連結した緩衝機構とで構成される降着装置を備えている。支持機構は、伸縮可能な構造であり、いわゆる支持脚である。緩衝機構は、接地する部分であり、ヘリコプターのスキッドに相当する。上記の無人機は、支持機構を伸縮駆動することで、機体と緩衝機構との間隔を変化させる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-24431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の無人機にあっては、降着装置として、伸縮可能な構造を有する支持機構(支持脚)と緩衝機構(スキッド)とを採用していたため、降着装置の重量が大きいうえに、支持機構が収縮動作をするので、機体下部にカメラ等を取り付けるためのスペースを充分に得ることが難しいという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、垂直に離着陸する無人機において、降着装置の充分な機能を維持しつつ構造を簡略化して軽量化を図ることができると共に、機体下部のスペースを充分に確保することができる無人機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる無人機は、垂直に離着陸可能であって、着陸時に用いる降着装置を備え、降着装置が、機体の姿勢を維持する複数の支持脚と、2本の支持脚に渡って配置した板ばねとを備えている。そして、無人機は、板ばねが、両端に、常態で下向きに傾斜した屈曲部を有すると共に、両屈曲部に、支持脚の下端部に回動自在に連結するブラケットを夫々有し、且つ中央部に、両ブラケットの相反する方向への回動を許容する可変部を有することを特徴としている。
【0007】
上記構成において、支持脚は、少なくとも3本であれば着陸時の機体の姿勢を維持することが可能であり、そのうちの2本に渡って板ばねを配置することができる。但し、支持脚は、板ばねとの組み合わせを考慮すると、より望ましい実施形態としては4本以上又は4本以上の偶数である。
【発明の効果】
【0008】
上記無人機は、一般的にドローンと呼ばれるものと同様に、複数の回転翼ユニットにより、垂直に離陸して飛行可能であると共に、垂直に着陸することが可能である。この無人機は、降着装置が、支持脚と板ばねとで構成された簡単な構造であって、比較的軽量である。また、無人機は、支持脚の長さを設定することで、機体下部にカメラ等を取り付ける充分なスペースを確保し得る。そして、無人機は、着陸時には、最初に、板ばねの両端において下向きに傾斜した屈曲部が接地し、機体の重量により、ブラケットが回動しつつ屈曲部全体が接地するのに伴って、可変部が変形することで、着陸時の衝撃を吸収する。
【0009】
このようにして、本発明に係わる無人機は、垂直に離着陸する無人機において、降着装置の充分な機能を維持しつつ構造を簡略化して軽量化を図ることができると共に、機体下部のスペースを充分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係わる無人機の第1実施形態を説明する平面図である。
図2図1に示す無人機の側面図(A)及び正面図(B)である。
図3】着陸時の無人機を説明する側面図である。
図4】支持脚とブラケットとの連結部分の他の形態を示す側面図(A)、同連結部分のさらに他の形態を示す正面図(B)及び側面図(C)である。
図5】本発明に係わる無人機の第2実施形態を説明する図であって、飛行時の状態を示す要部の正面図(A)、及び降着時の状態を示す要部の正面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1図3は、本発明に係わる無人機の第1実施形態を説明する図である。
図1及び図2に示す無人機Aは、機体1に、四方へ水平に延出する4本のアーム2を備えると共に、各アーム2の先端に、モータ3及び回転翼4等により構成した回転翼ユニット5を備えている。なお、図1に示す無人機Aは、便宜上、図1中で左方向を前方向として説明する。
【0012】
無人機Aは、無線により遠隔操縦される。この無人機Aは、4つの回転翼ユニット5により垂直に離陸し、各回転翼ユニット5の出力調整により、姿勢や飛行方向を制御することができると共に、垂直に着陸することが可能である。
【0013】
無人機Aは、機体1の下部に、着陸時に用いる降着装置を備えており、降着装置が、機体1の姿勢を維持する複数の支持脚6と、2本の支持脚6,6に渡って配置した板ばね7とを備えている。
【0014】
この実施形態の無人機Aは、平面視で四角形の角に配置した4本の支持脚6を有すると共に、四角形の対辺上で夫々対を成す2本の支持脚6,6に対して板ばね7を配置している。より具体的には、無人機Aは、機体1の下部に矩形の支持プレート1Aを有し、支持プレート1Aの四隅、すなわち前方側(図1中で左側)の左右、及び後方側の左右に支持脚6を備えている。そして、無人機Aは、前後方向で対を成す2本の支持脚6,6の夫々に対して板ばね7,7を配置している。両板ばね7,7は、互いに平行である。
【0015】
板ばね7は、長尺の板材であって、両端に、常態で下向きに傾斜した屈曲部7A,7Aを有すると共に、両屈曲部7A,7Aに、支持脚6,6の下端部に回動自在に連結するブラケット8,8を夫々有している。また。板ばね7は、中央部に、両ブラケット8,8の相反する方向への回動を許容する可変部7Bを有している。この実施形態の板ばね7は、両端の屈曲部7A,7Aに連続して上方へ湾曲した中央部分を可変部7Bとしている。
【0016】
上記の板ばね7は、前後の支持脚6,6の間隔よりも大きい長さを有する。この長さは、平面視上の前後方向の長さであり、湾曲に沿った板材自体の長さではない。よって、板ばね7は、直線状態に変形した際には、湾曲状態に比べて前後方向の長さが増大する。
【0017】
ブラケット8は、各屈曲部7Aにおける上位側の位置に設けてある。図示例のブラケット8は、板状の部材であって、図2(A)に示す側面において、互いに直交する長辺及び短辺と斜辺とから成る直角三角形状である。ブラケット8は、図示例以外に、三角形状、台形状及び四角形状などの様々な形状でも構わない。図示例の2つのブラケット8は、互いの斜辺を相反する向きにして、短辺を板ばね7の上面に固定しており、常態の板ばね7においては斜辺が鉛直方向に向いた姿勢である。
【0018】
そして、無人機Aの降着装置は、支持脚6の下端部に、軸部9を介して、ブラケット8の上端部を回動自在に連結している。これにより、降着装置は、板ばね7が湾曲状から直線状になるように変形するのに伴ってブラケット8が回動可能になる。また、板ばね7は、両端に、上方へ反り返る湾曲部7C,7Cを有している。
【0019】
上記構成を備えた無人機Aは、降着装置が、ダンパー類を含まない固定の支持脚6と単一部材である板ばね7とで構成してあるので、構造が簡単であるとともに軽量である。また、無人機Aは、支持脚6の長さを設定することで、機体1の下部にカメラ等を取り付ける充分なスペースを確保することができる。
【0020】
そして、無人機Aは、着陸時には、図3中に仮想線で示すように、最初に板ばね7の両端の屈曲部7Aが接地し、次いで、図3中に実線で示すように、機体1の重量により、両ブラケット8,8が相反する方向に回動しつつ両屈曲部7A,7Aの全体が接地するのに伴って、湾曲した可変部7Bが直線状になるように変形することで、着陸時の衝撃を吸収する。図3中の符号h1は、板ばね7が地面Gに接触したときの軸部9の高さ、h2は着陸完了後の軸部9の高さであり、双方の差Hは板ばね7の変形による沈み込み量である。
【0021】
この際、無人機Aは、板ばね7が変形するのに伴って、図3中の矢印aで示すように両ブラケット8,8が相反する方向に回動する。ブラケット8,8は、板ばね7の変形に追従して、長辺が鉛直方向に向いた姿勢になるように回動して、板ばね7と支持脚6,6との連結状態を維持する。
【0022】
このようにして、無人機Aは、降着装置の充分な機能を維持しつつ構造を簡略化して軽量化を図ることができると共に、機体下部のスペースを充分に確保することができる。
【0023】
また、無人機Aは、板ばね7の両端に湾曲部7Cを有するので、接地した後、図3中の矢印bで示すように、板ばね7が、地面に引っ掛かることなく円滑に直線状態に変形することとなり、転倒等を防ぐことができる。
【0024】
さらに、無人機Aは、直線状になるように変形した2枚の板ばね7により、広い接地面積を確保することができるので、砂地や湿地でも着陸時の姿勢を安定して保持し得る。
【0025】
図4は、支持脚とブラケットとの連結部分の他の形態を示す図である。
図4(A)に示す形態は、支持脚6の下端部と板ばね7のブラケット8とをボールジョイント11で回転自在に連結した構成である。ボールジョイント11は、支持脚6の下端部に固定したボール部11Aと、このボール部11Aと球面対偶を成すボール受け11Bとを備えている。
【0026】
図4(B)及び(C)に示す形態は、支持脚6の下端部に、リング部12Aが設けてあると共に、板ばね7の屈曲部7Aに、一対の突片8A,8Aから成るブラケット8が設けてある。そして、リング部12Aを両突片8A,8Aの間に入り込ませた状態にして、リング部12Aと両突片8A,8Aとを回転軸13で回動自在に連結した構成である。
【0027】
図4に示す各形態を備えた無人機においても、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、支持脚6の下端部と板ばね7のブラケット8との連結部分には、上記構成の他、スフェリカルベアリングなどを用いることもできる。
【0028】
図5は、本発明に係わる無人機の第2実施形態を説明する図である。なお、図5に示す無人機は、機体上部を省略しており、第1実施形態(図2参照)と同様の基本構成を有している。また、第1実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0029】
図5(A)に示す無人機Aは、板ばね17が、両端に、常態で下向きに傾斜した屈曲部17Aを有すると共に、両屈曲部17A,17Aに、支持脚6の下端部に回動自在に連結するブラケット8,8を夫々有している。また、板ばね17は、中央部に、両ブラケット8,8の相反する方向への回動を許容するジグザク状の可変部17Bを有すると共に、両屈曲部17A,17Aの先端に、上方へ反り返る湾曲部17C,17Cを有している。
【0030】
上記構成を備えた無人機Aは、着陸時には、最初に、板ばね17の両端の湾曲部17Cが接地する。次いで、無人機Aは、機体1の重量により、矢印a及びbで示すように、両ブラケット8,8が相反する方向に回動しつつ両屈曲部17A,17Aの全体が接地し、これに伴って、矢印cで示すように、ジグザク状の可変部17Bが延びるように変形することで、着陸時の衝撃を吸収する。
【0031】
上記の無人機Aにあっても、第1実施形態と同様に、降着装置の充分な機能を維持しつつ構造を簡略化して軽量化を図ることができると共に、機体下部のスペースを充分に確保することができる。また、無人機Aは、板ばね17の両端に湾曲部17Cを有するので、接地した後、図5(B)中の矢印bで示すように、板ばね17が、地面に引っ掛かることなく円滑に変形し、転倒等を防ぐことができる。
【0032】
本発明に係わる無人機は、その構成が上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上記実施形態では、前後で対を成す2本の支持脚に渡って板ばねを配置した構成を例示したが、左右で対を成す2本の支持脚に対して板ばねを配置しても良い。また、板ばねのブラケットは、常態での板ばねの形態等に応じて、形状や大きさを適宜変更することができ、回転中心から所定の回転半径分の距離を確保し得るものであれば良い。
【符号の説明】
【0033】
A 無人機
1 機体
6 支持脚
7,17 板ばね
7A,17A 屈曲部
7B,17B 可変部
7C,17C 湾曲部
8 ブラケット
図1
図2
図3
図4
図5