(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075219
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】コネクタ付きマルチコアファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20220511BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220511BHJP
G02B 6/255 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/02 461
G02B6/02 411
G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185875
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】イラリオノフ ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢一
【テーマコード(参考)】
2H036
2H250
【Fターム(参考)】
2H036JA01
2H036MA11
2H036PA02
2H036QA02
2H036QA03
2H036QA12
2H036QA14
2H036QA23
2H036QA29
2H036QA32
2H036QA42
2H250AB05
2H250AC03
2H250AC34
2H250AC37
2H250AC64
2H250AC83
2H250AC93
2H250AC96
(57)【要約】
【課題】複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバを端面研磨した場合に生ずるコアの端面における位置ずれを防止又は緩和することができるコネクタ付きマルチコアファイバを提供する。
【解決手段】コネクタ付きマルチコアファイバ1は、複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバ10と、マルチコアファイバ10の端部に設けられたコネクタ20と、を備え、マルチコアファイバ10の端部は、コアが直線状にされた非螺旋部SP1(又は、コアの単位長さ当たりの螺旋回数がマルチコアファイバの端部以外の部分よりも少なくされた緩螺旋部)とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバと、
前記マルチコアファイバの端部に設けられたコネクタと、
を備え、
前記マルチコアファイバの前記端部は、前記コアが直線状にされた非螺旋部、又は前記コアの単位長さ当たりの螺旋回数が前記マルチコアファイバの前記端部以外の部分よりも少なくされた緩螺旋部とされている、
コネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項2】
前記マルチコアファイバは、複数の第1コアのうちの少なくとも1つの第1コアが螺旋状に形成されている第1マルチコアファイバと、
前記複数の第1コアとそれぞれ光学的に結合される複数の第2コアを有し、螺旋状に形成されている前記第1コアと光学的に結合される前記第2コアが、直線状にされ、又は単位長さ当たりの螺旋回数が螺旋状に形成されている前記第1コアよりも少なくされており、前記非螺旋部又は前記緩螺旋部とされる第2マルチコアファイバと、
備える請求項1記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項3】
前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとは融着されており、
前記コネクタは、前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとの融着点を内部に収容するように、前記マルチコアファイバの前記端部に設けられている、請求項2記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項4】
前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとは、光学的に結合される前記複数の第1コアと前記複数の第2コアとがそれぞれ当接した状態で前記コネクタに固定されている、請求項2記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項5】
前記複数の第1コアと前記複数の第2コアとは径が異なる、請求項2から請求項4の何れか一項に記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項6】
前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとは、クラッドの径が異なる、請求項2から請求項5の何れか一項に記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項7】
前記コネクタの前記第1マルチコアファイバを収容する第1収容部と前記第2マルチコアファイバを収容する第2収容部とは内径が異なる、請求項2から請求項6の何れか一項に記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項8】
前記第1収容部と前記第2収容部との内径は、前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとのクラッドの径の大きさに応じて異なる、請求項7記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項9】
前記コネクタは、前記非螺旋部又は前記緩螺旋部の少なくとも一部又は全部を内部に収容するように前記マルチコアファイバの前記端部に設けられている、請求項1から請求項8の何れか一項に記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項10】
前記コネクタは、フェルールである、請求項1から請求項9の何れか一項に記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項11】
前記フェルールは、接続される他のマルチコアファイバに対する位置合わせのための位置合わせ部を備える、請求項10記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項12】
前記コネクタは、フェルールと、
前記フェルールを収容するハウジングと、
を備える、請求項1から請求項9の何れか一項に記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【請求項13】
前記フェルール又は前記ハウジングは、接続される他のマルチコアファイバに対する位置合わせのための位置合わせ部を備える、請求項12記載のコネクタ付きマルチコアファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ付きマルチコアファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバの開発が行われている。このマルチコアファイバは、スパン・マルチコアファイバ(spun multicore fiber)とも呼ばれる。このようなスパン・マルチコアファイバは、例えば接触センサ、形状センサ、医療用途に用いられる。以下の特許文献1,2及び以下の非特許文献1には、従来のスパン・マルチコアファイバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-132421号公報
【特許文献2】米国特許第8773650号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】P. S. Westbrook et al.,“Integrated optical fiber shape senor modules based on twisted multicore fiber grating arrays”,Proc. SPIE 8938,Optical Fibers and Sensors for Medical Diagnostics and Treatment Applications XIV,89380H (February 20 2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したスパン・マルチコアファイバは、端面研磨を行うと、螺旋状に形成されているコアの端面における位置(周方向の位置)が変化する。このコアの端面における位置の変化量は、スパン・マルチコアファイバの端面研磨量と、単位長さ当たりのコアの螺旋回数とに依存する。接続される2つのスパン・マルチコアファイバのコアの間に位置ずれが生じていると、これらスパン・マルチコアファイバを接続した場合に、接続点(接続位置)における光損失が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバを端面研磨した場合に生ずるコアの端面における位置ずれを防止又は緩和することができるコネクタ付きマルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、複数のコア(12)のうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバ(10,10A)と、前記マルチコアファイバの端部に設けられたコネクタ(20、20A、21)と、を備え、前記マルチコアファイバの前記端部が、前記コアが直線状にされた非螺旋部(SP1)、又は前記コアの単位長さ当たりの螺旋回数が前記マルチコアファイバの前記端部以外の部分よりも少なくされた緩螺旋部(SP2)とされている。
【0008】
本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバを端面研磨する場合には、マルチコアファイバの非螺旋部(コアが直線状にされた部分)又は緩螺旋部(単位長さ当たりの螺旋回数が少なくされた部分)が研磨されることになる。これにより、端面研磨した場合に生ずるコアの端面における位置ずれを防止又は緩和することができる。
【0009】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記マルチコアファイバが、複数の第1コア(12)のうちの少なくとも1つの第1コアが螺旋状に形成されている第1マルチコアファイバ(FB1)と、前記複数の第1コアとそれぞれ光学的に結合される複数の第2コア(C12)を有し、螺旋状に形成されている前記第1コアと光学的に結合される前記第2コアが、直線状にされ、又は単位長さ当たりの螺旋回数が螺旋状に形成されている前記第1コアよりも少なくされており、前記非螺旋部又は前記緩螺旋部とされる第2マルチコアファイバ(FB2)と、備えても良い。
【0010】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとは融着されており、前記コネクタが、前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとの融着点(X)を内部に収容するように、前記マルチコアファイバの前記端部に設けられていても良い。
【0011】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとは、光学的に結合される前記複数の第1コアと前記複数の第2コアとがそれぞれ当接した状態で前記コネクタに固定されていても良い。
【0012】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記複数の第1コアと前記複数の第2コアとは径が異なっていても良い。
【0013】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとが、クラッドの径が異なっていても良い。
【0014】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記コネクタの前記第1マルチコアファイバを収容する第1収容部(H2)と前記第2マルチコアファイバを収容する第2収容部(H1)とは内径が異なっていても良い。
【0015】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記第1収容部と前記第2収容部との内径が、前記第1マルチコアファイバと前記第2マルチコアファイバとのクラッドの径の大きさに応じて異なっていても良い。
【0016】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記コネクタが、前記非螺旋部又は前記緩螺旋部の少なくとも一部又は全部を内部に収容するように前記マルチコアファイバの前記端部に設けられていても良い。
【0017】
また、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記コネクタが、フェルール(21)であっても良い。
【0018】
ここで、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記フェルールが、接続される他のマルチコアファイバに対する位置合わせのための位置合わせ部(21a~21c)を備えても良い。
【0019】
或いは、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記コネクタが、フェルール(21)と、前記フェルールを収容するハウジング(22~25)と、を備えても良い。
【0020】
ここで、本発明の一態様によるコネクタ付きマルチコアファイバは、前記フェルール又は前記ハウジングが、接続される他のマルチコアファイバに対する位置合わせのための位置合わせ部(21c、22a、24a)を備えても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバを端面研磨した場合に生ずるコアの端面における位置ずれを防止又は緩和することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの構成を示す斜視図である。
【
図2】マルチコアファイバを端面研磨した場合に生ずる外周コアの端面における位置ずれを説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態におけるマルチコアファイバの構成例を示す斜視透視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第1製造方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の第1実施形態におけるキーを基準とした調心方法の例を示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第2製造方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の第1実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第3製造方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の第2実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの構成を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第3実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの構成を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第3実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの製造方法を説明するための図である。
【
図11】本発明の第4実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの構成を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第4実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第1製造方法を説明するための図である。
【
図13】本発明の第4実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第2製造方法を説明するための図である。
【
図14】本発明の第4実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第2製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図15】本発明の第5実施形態におけるマルチコアファイバを示す斜視透視図である。
【
図16】本発明の第6実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバを示す断面図である。
【
図17】本発明の第7実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバを示す断面図である。
【
図18】本発明の第8実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバを示す断面図である。
【
図19】本発明の第9実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバ及びその製造方法を示す断面図である。
【
図20】本発明の第9実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図21】本発明の第10実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバについて詳細に説明する。尚、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法の縮尺を適宜変えて図示することがある。
【0024】
〔第1実施形態〕
〈コネクタ付きマルチコアファイバの構成〉
図1は、本発明の第1実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの構成を示す斜視図である。
図1に示す通り、本実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバ1は、マルチコアファイバ10とコネクタ20とを備える。尚、
図1では、理解を容易にするために、マルチコアファイバ10については、斜視透視図で図示している。
【0025】
マルチコアファイバ10は、中心コア11、外周コア12(外周コア12a~12c)、及びクラッド13を備える。尚、クラッド13の外周面は、被覆(図示省略)に覆われていても良い。中心コア11は、マルチコアファイバ10の中心に、マルチコアファイバ10の軸に対して平行に形成されたコアである。この中心コア11によって、マルチコアファイバ10の中心には、マルチコアファイバ10の長手方向に対して直線的な光路が形成される。
【0026】
中心コア11は、例えばゲルマニウム(Ge)を含む石英ガラスによって形成されていても良い。また、中心コア11には、その全長に亘ってFBG(Fiber Bragg Grating:ファイバブラッググレーティング)が形成されていても良い。尚、中心コア11の径は、例えば5~7[μm]程度の範囲に設定される。
【0027】
外周コア12は、中心コア11の周囲を螺旋状に取り巻くように形成されたコアである。具体的に、外周コア12は、中心コア11に対して所定の距離d(
図2参照)だけ離間し、長手方向に直交する断面において互いに角度θ(例えば、120°)の間隔をもって配置された3つの外周コア12a~12cからなる。これら外周コア12a~12cは、互いに角度θの間隔を維持しながら、中心コア11の周囲を螺旋状に取り巻くようにマルチコアファイバ10の長手方向に延びている。これら外周コア12a~12cによって、マルチコアファイバ10内には、中心コア11を取り巻く螺旋状の3つの光路が形成される。
【0028】
外周コア12a~12cは、中心コア11と同様に、例えばゲルマニウム(Ge)を含む石英ガラスによって形成されていても良い。また、外周コア12a~12cには、その全長に亘ってFBGが形成されていても良い。外周コア12a~12cは、中心コア11と同径(或いは、ほぼ同じ径)であり、例えば5~7[μm]程度の範囲に設定される。尚、外周コア12a~12cは、中心コア11と異径であっても良い。
【0029】
中心コア11と外周コア12a~12cとの距離dは、コア間のクロストーク、中心コア11と外周コア12a~12cとの光路長差、マルチコアファイバ10が屈曲したときの中心コア11と外周コア12a~12cとの歪量の差等を考慮して設定される。中心コア11と外周コア12a~12cとの距離dは、例えば35[μm]程度に設定される。単位長さ当たりの外周コア12a~12cの螺旋回数は、例えば50[ターン/m]程度に設定される。言い換えると、外周コア12a~12cの1周期の長さ(正確には、外周コア12a~12cの1ターン当たりのマルチコアファイバ10の長手方向における長さ)は、20[mm]程度に設定される。
【0030】
クラッド13は、中心コア11及び外周コア12a~12cの周囲を覆い、外径形状が円柱形状である共通のクラッドである。中心コア11及び外周コア12a~12cは、共通のクラッド13に覆われていることから、中心コア11及び外周コア12a~12cは、クラッド13の内部に形成されている、と言うこともできる。このクラッド13は、例えば石英ガラスによって形成されていても良い。
【0031】
マルチコアファイバ10の端部は、外周コア12a~12cが直線状にされた非螺旋部SP1とされている。このような非螺旋部SP1を設けるのは、マルチコアファイバ10を端面研磨した場合の外周コア12a~12cの端面における位置ずれ(端面における周方向の位置ずれ)が生ずるのを防止するためである。
【0032】
図2は、マルチコアファイバを端面研磨した場合に生ずる外周コアの端面における位置ずれを説明するための図である。
図2に示す通り、端部が非螺旋部SP1とされていないマルチコアファイバを考える。このマルチコアファイバに形成された中心コア11と外周コア12a~12cとの距離はdであり、外周コア12a~12cの1周期の長さはL
spunであるとする。
【0033】
図2に示すマルチコアファイバをL
polshだけ研磨したときの、外周コア12a~12cの端面における周方向の回転角αは、以下の(1)式で表される。また、外周コア12a~12cの端面における位置ずれ量DPは、以下の(2)式で表される。
α=360×L
polsh/L
spun …(1)
DP=2×d×sin(α/2) …(2)
【0034】
ここで、中心コア11と外周コア12a~12cとの距離dが35[μm]であり、外周コア12a~12cの1周期の長さLspunが20[mm]であるとする。すると、端面研磨量Lpolshが10[μm]である場合には、位置ずれ量DPは0.11[μm]になり、端面研磨量Lpolshが30[μm]である場合には、位置ずれ量DPは0.55[μm]になる。例えば、端面研磨による位置ずれ量DPを、例えば0.2[μm]以内に抑える必要がある場合には、マルチコアファイバの端面研磨を行う工程では、10[μm]オーダーの研磨精度が要求される。
【0035】
このように、螺旋状の外周コア12a~12cを有するマルチコアファイバの端部が非螺旋部SP1とされていない場合には、高い研磨精度が要求される。本実施形態のマルチコアファイバ10は、端部が非螺旋部SP1とされており、非螺旋部SP1において外周コア12a~12cが中心コア11とともに直線状にされている。このため、非螺旋部SP1を研磨している限りにおいては、
図2を用いて説明した外周コア12a~12cの端面における位置ずれは基本的には生じないから、研磨工程において高い研磨精度は必要ない。
【0036】
図3は、本発明の第1実施形態におけるマルチコアファイバの構成例を示す斜視透視図である。
図3に例示するマルチコアファイバ10は、マルチコアファイバFB1(第1マルチコアファイバ)と、マルチコアファイバFB2(第2マルチコアファイバ)とが融着されたものである。マルチコアファイバFB1は、マルチコアファイバFB1の軸に対して平行に形成された中心コア11、中心コア11の周囲を螺旋状に取り巻くように形成された外周コア12(外周コア12a~12c)、及びクラッド13を備える。マルチコアファイバFB1は、マルチコアファイバ10の主たる部分を占めるものである。
【0037】
マルチコアファイバFB2は、マルチコアファイバFB2の軸に対して平行に形成された中心コアC11、中心コアC11の周囲に中心コアC11と平行に形成された外周コアC12(外周コアC12a~C12c)、及びクラッドC13を備える。中心コアC11は、マルチコアファイバFB1の中心コア11に対応しており、外周コアC12a~C12cは、マルチコアファイバFB1の外周コア12a~12cにそれぞれ対応している。
【0038】
マルチコアファイバFB1とマルチコアファイバFB2とは、マルチコアファイバFB1の中心コア11及び外周コア12a~12cと、マルチコアファイバFB2の中心コアC11及び外周コアC12a~C12cとがそれぞれ光学的に結合するように融着される。このようにして、端部において外周コア12a~12cが直線状にされた非螺旋部SP1を有するマルチコアファイバ10が得られる。
【0039】
コネクタ20は、フェルール21及びハウジング22を備えており、マルチコアファイバ10の端部に設けられる。フェルール21は、マルチコアファイバ10が内挿されるファイバ孔が形成された円環柱形状の部材である。ハウジング22は、フェルール21を収容する略直方体形状の部材である。ハウジング22には、接続される他のマルチコアファイバに対する誤接続を防止しつつ、他のマルチコアファイバに対する位置合わせのためのキー22a(位置合わせ部)が形成されている。マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置は、ハウジング22に形成されたキー22aを基準に調心される。
【0040】
ここで、フェルール21は、一端側がマルチコアファイバ10の端面と面一(又は、略面一)となり、且つマルチコアファイバ10と一体となるように、マルチコアファイバ10の端部に固定される。フェルール21は、軸方向には移動可能であるが、軸の周りに回転しないようにハウジング22に収容される。フェルール21が軸の周りに回転しないようにハウジング22に収容されているため、フェルール21と一体となるように固定されるマルチコアファイバ10も軸の周りで回転しない。
【0041】
マルチコアファイバ10の非螺旋部SP1の長さは、
図1(a)に示す通り、非螺旋部SP1の全てがコネクタ20内に収容される長さであっても良く、
図1(b)に示す通り、非螺旋部SP1の一部のみがコネクタ20内に収容される長さであっても良い。マルチコアファイバ10の非螺旋部SP1の長さが、
図1(a)に示す長さに設定されている場合には、マルチコアファイバ10の融着点(
図3に示すマルチコアファイバFB1,FB2の融着点)がコネクタ20内に収容されるため、強度の面からは有利である。
【0042】
〈コネクタ付きマルチコアファイバの製造方法〉
《第1製造方法》
図4は、本発明の第1実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第1製造方法を説明するための図である。まず、
図4(a)に示す通り、マルチコアファイバ10、フェルール21、及びハウジング22を用意し、コネクタ付きマルチコアファイバを仮組みする工程が行われる。具体的には、マルチコアファイバ10の端部をフェルール21に形成されたファイバ孔に内挿し、マルチコアファイバ10が内挿されたフェルール21をハウジング22に収容する工程が行われる。
【0043】
ここで、マルチコアファイバ10は、軸の周りで回転可能にされる。例えば、マルチコアファイバ10がフェルール21に固定されず、マルチコアファイバ10のみが軸の周りに回転可能にされる。或いは、マルチコアファイバ10がフェルール21に固定され、マルチコアファイバ10及びフェルール21が一体として軸の周りに回転可能にされる。前者の場合には、フェルール21は、軸の周りに回転しないようにハウジング22に収容される。後者の場合には、フェルール21は、軸の周りに回転可能なようにハウジング22に収容される。
【0044】
次に、
図4(b)に示す通り、マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。具体的には、マルチコアファイバ10のみを軸の周りで回転させ、或いは、マルチコアファイバ10及びフェルール21を一体として軸の周りで回転させ、ハウジング22に形成されたキー22aを基準に、マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。
【0045】
図5は、本発明の第1実施形態におけるキーを基準とした調心方法の例を示す図である。
図5(a)に示す調心方法は、カメラCMや顕微鏡(図示省略)を用い、カメラCM等で撮影されるマルチコアファイバ10の端面及びハウジング22のキー22aの画像を見ながらマルチコアファイバ10を回転させることで調心する方法である。
【0046】
図5(b)に示す調心方法は、マスターとなるコネクタ付きマルチコアファイバMSと光パワーメータPMとを用いて調心する方法である。具体的には、マスターとなるコネクタ付きマルチコアファイバMSと仮組みされたコネクタ付きマルチコアファイバとを接続し、マスターとなるコネクタ付きマルチコアファイバMSから仮組みされたコネクタ付きマルチコアファイバに伝播する光のパワーを、マルチコアファイバ10を回転させながらモニタすることで調心する方法である。尚、この方法では、マスターとなるコネクタ付きマルチコアファイバMSのキー22aと、仮組みされたコネクタ付きマルチコアファイバのキー22aとがアダプタ等を用いて精確に位置合わせされる。
【0047】
図5(b)に示す調心方法では、1つの光パワーメータPMを用いて各コアを伝播する光のパワーの合計をモニタしても良く、複数の光パワーメータPMを用いて各コアを伝播する光のパワーを個別にモニタしても良い。或いは、光スイッチを用いて光を伝播させるコアを切り替え、各コアを伝播する光のパワーを順次モニタしても良い。尚、光を伝播させるコアを特定の1つ又は2つのコアに限定し、これら限定されたコアを伝播する光のパワーのみをモニタしても良い。
【0048】
続いて、
図4(c)に示す通り、マルチコアファイバ10を固定する工程が行われる。例えば、
図4(a)に示す工程で、マルチコアファイバ10のみが軸の周りに回転可能にされた場合には、例えば、接着剤を用いてマルチコアファイバ10をフェルール21に固定する工程が行われる。或いは、
図4(a)に示す工程で、マルチコアファイバ10及びフェルール21が一体として軸の周りに回転可能にされた場合には、軸の周りに回転しないようにフェルール21をハウジング22に収容する工程が行われる。この工程が行われると、ハウジング22に形成されたキー22aを基準としてマルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置が固定される。
【0049】
続いて、
図4(d)に示す通り、マルチコアファイバ10の端面を研磨する工程が行われる。具体的には、マルチコアファイバ10の軸が研磨装置PDの研磨面に対して垂直になるように、マルチコアファイバ10の端面(フェルール21の一端側)を研磨面に当接させてマルチコアファイバ10の端面を研磨する工程が行われる。この工程における研磨は、例えばPC(Physical Contact)研磨、SPC(Super Physical Contact)、UPC(Ultra Physical Contact)研磨を用いることができる。
【0050】
尚、マルチコアファイバ10の端面研磨は1つずつ行っても良いが、複数同時に行っても良い。マルチコアファイバ10の端面研磨を複数同時に行うことで、時間の短縮が図れるため効率的である。以上の工程を経ることで、コネクタ付きマルチコアファイバ1が製造される。最後に、製造されたコネクタ付きマルチコアファイバ1を検査する工程が行われる。
【0051】
《第2製造方法》
図6は、本発明の第1実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第2製造方法を説明するための図である。まず、
図6(a)に示す通り、マルチコアファイバ10及びフェルール21を用意し、マルチコアファイバ10の端部にフェルール21を固定する工程が行われる。マルチコアファイバ10に対するフェルール21の固定には、例えば接着剤が用いられる。
【0052】
次に、
図6(b)に示す通り、フェルール21及びマルチコアファイバ10の端面を研磨する工程が行われる。具体的には、
図4(d)に示された工程と同様に、マルチコアファイバ10の軸が研磨装置PDの研磨面に対して垂直になるように、マルチコアファイバ10の端面(フェルール21の一端側)を研磨面に当接させてマルチコアファイバ10の端面を研磨する工程が行われる。尚、
図4(d)に示された工程と同様に、マルチコアファイバ10の端面研磨は1つずつ行っても良いが、複数同時に行っても良い。
【0053】
続いて、軸の周りに回転可能なようにフェルール21をハウジング22に収容し、
図6(c)に示す通り、マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。具体的には、マルチコアファイバ10及びフェルール21を一体として軸の周りで回転させ、ハウジング22に形成されたキー22aを基準に、マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。尚、本工程における具体的な調心方法は、
図5を用いて説明したものを用いることができる。
【0054】
続いて、軸の周りに回転しないようにフェルール21をハウジング22に収容する工程が行われる。この工程が行われると、ハウジング22に形成されたキー22aを基準としてマルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置が固定される。以上の工程を経ることで、コネクタ付きマルチコアファイバ1が製造される。最後に、製造されたコネクタ付きマルチコアファイバ1を検査する工程が行われる。
【0055】
《第3製造方法》
図7は、本発明の第1実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第3製造方法を説明するための図である。
図7に示す製造方法は、ハウジング22が、内部ハウジング23と外部ハウジング24とから構成される場合のものである。
図7に示す製造方法は、基本的には、
図4に示す製造方法と同様である。
【0056】
まず、
図7(a)に示す通り、マルチコアファイバ10、フェルール21、及び内部ハウジング23を用意し、これらを仮組みする工程が行われる。ここで、マルチコアファイバ10は、第1製造方法と同様に、軸の周りで回転可能にされる。例えば、マルチコアファイバ10がフェルール21に固定されず、マルチコアファイバ10のみが軸の周りに回転可能にされる。或いは、マルチコアファイバ10がフェルール21に固定され、マルチコアファイバ10及びフェルール21が一体として軸の周りに回転可能にされる。前者の場合には、フェルール21は、軸の周りに回転しないように内部ハウジング23に収容される。後者の場合には、フェルール21は、軸の周りに回転可能なように内部ハウジング23に収容される。
【0057】
次に、
図7(b)に示す通り、マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。この工程は、
図4(b)に示す構成と同様である。但し、外周コア12a~12cの位置の調心は、一時的なキーを基準として行われる。一時的なキーとしては、例えば内部ハウジング23の角部Kを用いることができる。尚、本工程における具体的な調心方法は、
図5を用いて説明したものを用いることができる。
【0058】
次いで、マルチコアファイバ10を固定する工程が行われる。尚、この工程は、
図4(c)に示す工程と同様である。この工程が行われることで、内部ハウジング23の角部K(一時的なキー)を基準としてマルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置が固定される。続いて、マルチコアファイバ10の端面を研磨する工程(
図4(d)に示す工程と同様の工程)が行われ、その後に、
図7(b)に示す通り、内部ハウジング23を外部ハウジング24に収容する工程が行われる。或いは、
図7(b)に示す通り、内部ハウジング23を外部ハウジング24に収容する工程が行われ、その後に、マルチコアファイバ10の端面を研磨する工程(
図4(d)に示す工程と同様の工程)が行われる。
【0059】
ここで、内部ハウジング23が外部ハウジング24に収容された状態では、一時的なキーとして用いられた内部ハウジング23の角部Kと外部ハウジング24に形成されたキー24aとの位置関係は変わらない。このため、外周コア12a~12cの位置の基準となるキーとして、内部ハウジング23の角部K(一時的なキー)に代えて外部ハウジング24に形成されたキー24aを用いることができる。
【0060】
以上の通り、本実施形態では、中心コア11の周囲を螺旋状に取り巻くように形成された外周コア12を有するマルチコアファイバ10の端部が非螺旋部SP1とされており、非螺旋部SP1において、外周コア12が中心コア11と同様に直線状にされている。そして、非螺旋部SP1とされたマルチコアファイバ10の端部にコネクタ20が設けられている。このため、コネクタ20が取り付けられたマルチコアファイバ10を端面研磨しても、外周コア12a~12cの端面における位置ずれを生じなくする(殆ど生じなくする)ことができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
〈コネクタ付きマルチコアファイバの構成〉
図8は、本発明の第2実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの構成を示す斜視図である。尚、
図8においては、
図1に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図8に示す通り、本実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバ2は、
図1に示すマルチコアファイバ10に代えてマルチコアファイバ10Aを備える。尚、
図8では、
図1と同様に、理解を容易にするために、マルチコアファイバ10Aについては、斜視透視図で図示している。
【0062】
マルチコアファイバ10Aは、
図1に示すマルチコアファイバ10と同様に、中心コア11、外周コア12(外周コア12a~12c)、及びクラッド13を備える。但し、マルチコアファイバ10Aの端部は、
図1に示すマルチコアファイバ10とは異なり、外周コア12a~12cが緩やかな螺旋状にされた緩螺旋部SP2とされている。このような緩螺旋部SP2を設けるのは、マルチコアファイバ10Aを端面研磨した場合の外周コア12a~12cの端面における位置ずれ(端面における周方向の位置ずれ)が生ずるのを緩和するためである。
【0063】
ここで、緩螺旋部SP2における外周コア12a~12cの単位長さ当たりの螺旋回数は、緩螺旋部SP2以外の部分における外周コア12a~12cの単位長さ当たりの螺旋回数よりも少なくされている。例えば、緩螺旋部SP2における外周コア12a~12cの単位長さ当たりの螺旋回数は、緩螺旋部SP2以外の部分における外周コア12a~12cの単位長さ当たりの螺旋回数の半分以下にされている。
【0064】
マルチコアファイバ10Aは、
図3に示すマルチコアファイバ10と同様に、2種類のマルチコアファイバを融着して形成される。具体的には、
図3に示すマルチコアファイバFB1と、外周コアC12(外周コアC12a~C12c)が緩やかな螺旋状にされたマルチコアファイバFB2とを融着して形成される。尚、本実施形態においては、マルチコアファイバFB1の中心コア11及び外周コア12a~12cと、マルチコアファイバFB2の中心コアC11及び緩やかな螺旋状にされた外周コアC12a~C12cとがそれぞれ光学的に結合するようにされる。このようにして、端部において外周コア12a~12cが緩やかな螺旋状にされた緩螺旋部SP2を有するマルチコアファイバ10Aが得られる。
【0065】
〈コネクタ付きマルチコアファイバの製造方法〉
本実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバ2は、
図1に示すマルチコアファイバ10に代えてマルチコアファイバ10Aを備える点が相違するのみで、製造方法は第1実施形態と同様である。このため、コネクタ付きマルチコアファイバ2の製造方法の説明は省略する。
【0066】
以上の通り、本実施形態では、中心コア11の周囲を螺旋状に取り巻くように形成された外周コア12を有するマルチコアファイバ10Aの端部が緩螺旋部SP2とされており、緩螺旋部SP2における外周コア12の単位長さ当たりの螺旋回数は、緩螺旋部SP2以外の部分における外周コア12の単位長さ当たりの螺旋回数よりも少なくされている。そして、緩螺旋部SP2とされたマルチコアファイバ10Aの端部にコネクタ20が設けられている。このため、コネクタ20が取り付けられたマルチコアファイバ10Aを端面研磨しても、外周コア12a~12cの端面における位置ずれを少なくする(緩和する)ことができる。
【0067】
〔第3実施形態〕
〈コネクタ付きマルチコアファイバの構成〉
図9は、本発明の第3実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの構成を示す斜視図である。尚、
図9においては、
図1,
図8に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図9に示す通り、本実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバ3は、マルチコアファイバ10,10Aの端面が、APC(Angled Physical Contact)研磨されている(所定の角度(例えば、8度)だけ斜め研磨されている)点が、
図1,
図8に示すコネクタ付きマルチコアファイバ1,2とは異なる。本実施形態においては、APC研磨されたフェルール21の端面21cが、いわばキー(位置合わせ部)として用いられる。
【0068】
図9(a)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ3は、
図1,
図8に示すものと同じコネクタ20(フェルール21とキー22aが形成されたハウジング22とを備えるコネクタ20)がマルチコアファイバ10,10Aの端部に設けられている。
図9(b)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ3は、フェルール21とキーが形成されていない円環柱形状のハウジング25とを備えるコネクタ20Aがマルチコアファイバ10,10Aの端部に設けられている。
【0069】
〈コネクタ付きマルチコアファイバの製造方法〉
図10は、本発明の第3実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの製造方法を説明するための図である。尚、ここでは、
図9(a)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ3の製造方法を例に挙げて説明する。
図10(a)に示す仮組み工程、
図10(b)に示す調心工程、
図10(c)に示す固定工程は、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)に示すものとそれぞれ同様であるが、
図10(d)に示す研磨工程が、
図4(e)に示すものとは異なる。
【0070】
本実施形態では、
図10(d)に示す通り、マルチコアファイバ10,10Aの軸が研磨装置PDの研磨面の垂線に対して所定の角度φ(例えば、8度)をなすように、マルチコアファイバ10,10Aの端面(フェルール21の一端側)を研磨面に当接させてマルチコアファイバ10,10Aの端面を研磨する工程が行われる。コネクタ20の向きは、ハウジング22に形成されたキー22aを基準に設定される。例えば、キー22aが形成されているハウジング22の一面SFが、マルチコアファイバ10,10Aの軸と研磨装置PDの研磨面の垂線とが含まれる面に対して平行となるように設定される。
【0071】
尚、マルチコアファイバ10,10Aの端面研磨を容易にするために、一端側が、斜めに形成された(例えば、上記の角度φと同じ角度をもって形成された)フェルールを用いても良い。このようなフェルールを用いる場合には、
図10(a)に示す仮組み工程において、フェルールの向き(軸の周りの向き)を、ハウジング22のキー22aにある程度合わせる必要がある。
【0072】
以上の通り、本実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバ3は、第1,第2実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバ1,2とは、マルチコアファイバ10.10Aの端面がAPC研磨されている点が相違するだけであり、非螺旋部SP1又は緩螺旋部SP2とされたマルチコアファイバ10,10Aの端部にコネクタ20(20A)が設けられている。このため、コネクタ20(20A)が取り付けられたマルチコアファイバ10,10Aを端面研磨しても、外周コア12a~12cの端面における位置ずれを生じなくする(殆ど生じなくする)、又は少なくする(緩和する)ことができる。
【0073】
〔第4実施形態〕
〈コネクタ付きマルチコアファイバの構成〉
図11は、本発明の第4実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの構成を示す斜視図である。尚、
図11においては、
図1,
図8,
図9に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図11に示す通り、本実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバ4は、コネクタ20がフェルール21のみによって構成されており、ハウジング22が省略されている点が、
図1,
図8,
図9に示すコネクタ付きマルチコアファイバ1~3とは異なる。
【0074】
図11(a)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4は、側面の一部に形成された凸形状のキー21aを有するフェルール21をコネクタ20として備える。
図11(b)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4は、側面の一部に切り欠きが形成されており、この切り欠きがキー21bとされているフェルール21をコネクタ20として備える。
【0075】
図11(c)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4は、端面がAPC研磨されたフェルール21をコネクタ20として備える。
図11(c)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4は、APC研磨された端面21cが、いわばキー(位置合わせ部)として用いられる。
図11(d)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4は、
図11(c)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4のフェルール21にキー21aが追加されたものである。
【0076】
本実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバ4は、フェルール21がコネクタとされたものであるが、他のマルチコアファイバとの接続には、SUSチューブ又はジルコニアチューブが用いられる。つまり、本実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバ4は、他のマルチコアファイバとコアの位置合わせがされた状態でフェルール21がSUSチューブ又はジルコニアチューブ内に内挿されることによって、他のコネクタ付きマルチコアファイバと接続される。
【0077】
〈コネクタ付きマルチコアファイバの製造方法〉
《第1製造方法》
図12は、本発明の第4実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第1製造方法を説明するための図である。
図12に示す製造方法は、
図11(a),(b),(d)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4(つまり、フェルール21にキー21a,21bが形成されているコネクタ付きマルチコアファイバ4)の製造方法である。尚、以下では、
図11(a),(c)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0078】
まず、
図12(a)に示す通り、マルチコアファイバ10又はマルチコアファイバ10Aとフェルール21とを用意し、コネクタ付きマルチコアファイバを仮組みする工程が行われる。ここで、マルチコアファイバ10,10Aは、フェルール21に固定されず、軸の周りに回転可能にされる。次に、
図12(b)に示す通り、マルチコアファイバ10,10Aを軸の周りで回転させ、フェルール21に形成されたキー21aを基準に、マルチコアファイバ10,10Aの端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。尚、本工程における具体的な調心方法は、
図5を用いて説明したものを用いることができる。
【0079】
続いて、
図12(c)に示す通り、例えば、接着剤を用いてマルチコアファイバ10,10Aをフェルール21に固定する工程が行われる。これにより、フェルール21に形成されたキー21aを基準としてマルチコアファイバ10,10Aの端面における外周コア12a~12cの位置が固定される。続いて、マルチコアファイバ10,10Aの端面を研磨する工程が行われる。
【0080】
ここで、
図11(a)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4を製造する場合には、マルチコアファイバ10,10Aの軸が研磨装置PDの研磨面に対して垂直になるようにして、マルチコアファイバ10,10Aの端面を研磨する工程が行われる。つまり、
図4(d)に示されている工程と同様の工程が行われる。
【0081】
これに対し、
図11(d)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4を製造する場合には、
図12(d)に示す通り、マルチコアファイバ10,10Aの軸が研磨装置PDの研磨面の垂線に対して所定の角度φ(例えば、8度)をなすようにして、マルチコアファイバ10,10Aの端面を研磨する工程が行われる。このとき、
図10(d)に示す工程と同様に、フェルール21の向きは、キー21aを基準に設定される。尚、第3実施形態と同様に、マルチコアファイバ10,10Aの端面研磨を容易にするために、一端側が、斜めに形成されたフェルールを用いても良い。
【0082】
《第2製造方法》
図13は、本発明の第4実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第2製造方法を説明するための図である。
図13に示す製造方法は、
図11(c)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4(つまり、フェルール21にキー21a,21bが形成されておらず、端面がAPC研磨されたものコネクタ付きマルチコアファイバ4)の製造方法である。
【0083】
まず、
図13(a)に示す通り、マルチコアファイバ10又はマルチコアファイバ10A、フェルール21、及び固定治具FJを用意し、コネクタ付きマルチコアファイバを仮組みする工程が行われる。固定治具FJは、第1,第2実施形態におけるハウジング22と同様のものであり、ハウジング22に形成されたキー22aと同様のキーKYが形成されている。ここで、マルチコアファイバ10,10Aは、フェルール21に固定されず、軸の周りに回転可能にされる。但し、フェルール21と固定治具FJとは一時的に固定される。
【0084】
次に、
図13(b)に示す通り、マルチコアファイバ10,10Aを軸の周りで回転させ、固定治具FJに形成されたキーKYを基準に、マルチコアファイバ10,10Aの端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。尚、本工程における具体的な調心方法は、
図5を用いて説明したものを用いることができる。
【0085】
続いて、
図13(c)に示す通り、例えば、接着剤を用いてマルチコアファイバ10,10Aをフェルール21に固定する工程が行われる。これにより、固定治具FJに形成されたキーKYを基準としてマルチコアファイバ10,10Aの端面における外周コア12a~12cの位置が固定される。
【0086】
続いて、
図13(d)に示す通り、マルチコアファイバ10,10Aの端面を研磨する工程が行われる。具体的には、マルチコアファイバ10,10Aの軸が研磨装置PDの研磨面の垂線に対して所定の角度φ(例えば、8度)をなすようにして、マルチコアファイバ10,10Aの端面を研磨する工程が行われる。このとき、
図10(d)に示す工程と同様に、固定治具FJの向きは、固定治具FJに形成されたキーKYを基準に設定される。尚、第3実施形態と同様に、マルチコアファイバ10,10Aの端面研磨を容易にするために、一端側が、斜めに形成されたフェルールを用いても良い。
【0087】
以上の工程が終了すると、固定治具FJが取り付けられた状態で、コネクタ付きマルチコアファイバ4を検査する工程が行われる。最後に、フェルール21に対して一時的に固定されていた固定治具FJを取り外す工程が行われる。以上の工程を経ることで、
図11(c)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4が製造される。
【0088】
図14は、本発明の第4実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの第2製造方法の変形例を説明するための図である。
図13に示す製造方法は、
図13(a)に示す工程において、マルチコアファイバ10,10Aをフェルール21に固定せず、フェルール21を固定治具FJに一時的に固定するものであった。これに対し、本変形例は、マルチコアファイバ10,10Aをフェルール21に固定し、フェルール21を固定治具FJに固定しないものである。
【0089】
まず、
図14(a)に示す通り、例えば、接着剤を用いてマルチコアファイバ10,10Aをフェルール21に固定する工程が行われる。次に、
図14(b)に示す通り、マルチコアファイバ10,10Aが固定されたフェルール21を固定治具FJに介挿させる工程が行われる。尚、ここでは、フェルール21は固定治具FJに固定されない。このため、マルチコアファイバ10,10A及びフェルール21が一体として軸の周りに回転可能である。
【0090】
続いて、
図14(c)に示す通り、マルチコアファイバ10,10Aを軸の周りで回転させ、固定治具FJに形成されたキーKYを基準に、マルチコアファイバ10,10Aの端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。調心が完了すると、フェルール21と固定治具FJとを一時的に固定する工程が行われる。これにより、固定治具FJに形成されたキーKYを基準としてマルチコアファイバ10,10Aの端面における外周コア12a~12cの位置が固定される。
【0091】
続いて、
図14(d)に示す通り、マルチコアファイバ10,10Aの端面を研磨する工程が行われる。この工程は、
図13(d)に示す工程と同様である。以上の工程が終了すると、固定治具FJが取り付けられた状態で、コネクタ付きマルチコアファイバ4を検査する工程が行われる。最後に、フェルール21に対して一時的に固定されていた固定治具FJを取り外す工程が行われる。以上の工程を経ることで、
図11(c)に示すコネクタ付きマルチコアファイバ4が製造される。
【0092】
以上の通り、本実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバ4は、第1~第3実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバ1~3とは、フェルール21がコネクタ20がとされている点が相違するものの、非螺旋部SP1又は緩螺旋部SP2とされたマルチコアファイバ10,10Aの端部にコネクタ20が設けられている。このため、コネクタ20が取り付けられたマルチコアファイバ10,10Aを端面研磨しても、外周コア12a~12cの端面における位置ずれを生じなくする(殆ど生じなくする)、又は少なくする(緩和する)ことができる。また、本実施形態では、フェルール21がコネクタ20とされており、ハウジング(例えば、ハウジング22)が省略されていることから、コネクタ20を小型化することができる。
【0093】
〔第5実施形態〕
図15は、本発明の第5実施形態におけるマルチコアファイバを示す斜視透視図である。尚、
図15に示す通り、本実施形態におけるマルチコアファイバ10は、非螺旋部SP1におけるコアの寸法(MFD:Mode Field Diameter)が、非螺旋部SP1以外の部分におけるコアの寸法よりも大とされている。このようなマルチコアファイバ10は、例えば
図3に示すマルチコアファイバFB1と、マルチコアファイバFB2(中心コアC11及び外周コアC12a~C12cが大径とされたもの)とを融着することによって得られる。
【0094】
このように、非螺旋部SP1におけるコアの寸法を、非螺旋部SP1以外の部分におけるコアの寸法よりも大とすることで、マルチコアファイバFB1,FB2のコアの寸法誤差及び位置誤差が多少あったとしても、融着点Xにおける光損失を少なくすることができる。尚、本実施形態におけるマルチコアファイバ10をOFDR(Optical Frequency Domain Reflectometry:光周波数領域反射測定法)で用いた場合には、融着点Xの前後でレイリー散乱光のレベルが変わるため、センシング領域の開始位置を検知しやすく、センサの長手方向における測定位置精度の低下を防止することができるという利点がある。
【0095】
尚、本実施形態では、マルチコアファイバ10の非螺旋部SP1におけるコアの寸法が、非螺旋部SP1以外の部分におけるコアの寸法よりも大とされている場合を例に挙げた。しかしながら、マルチコアファイバ10Aの緩螺旋部SP2におけるコアの寸法が、緩螺旋部SP2以外の部分におけるコアの寸法よりも大とされていても良い。また、非螺旋部SP1又は緩螺旋部SP2におけるコアの寸法は、非螺旋部SP1又は緩螺旋部SP2におけるコアの寸法よりも小に形成されていても良い。
【0096】
〔第6実施形態〕
図16は、本発明の第6実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバを示す断面図である。
図16に示す通り、本実施形態において、フェルール21は、マルチコアファイバ10を収容する収容部の内径が二段にされている。具体的に、フェルール21は、内径がマルチコアファイバ10の外径と同程度に形成された収容部H1(第2収容部)と、内径が収容部H1よりも大に形成された収容部H2(第1収容部)とを有する。
【0097】
収容部H1と収容部H2との間は、
図16(a)に示す通り、内径が徐々に(テーパー状に)変化していても良く、
図16(b)に示す通り、内径が急峻に(ステップ状に)変化していても良い。このように、フェルール21に径の異なる収容部H1,H2を形成するのは、マルチコアファイバ10の融着点X(径が大きくなっている部分)をフェルール21の内部に収容させるためである。
【0098】
尚、フェルール21には、径の異なる収容部H1,H2を形成されているため、マルチコアファイバ10をフェルール21に内挿すると、融着点Xが収容部H1と収容部H2との間に係止される。
図16(a)に示す例では、テーパー状に形成された部分に融着点Xが係止され、
図16(b)に示す例では、ステップ状に形成された部分に融着点Xが係止される。これにより、フェルール21内における融着点Xの位置決めをすることが可能であるという利点がある。また、OFDRを用いたセンサに用いられる場合には、長手方向における測定位置精度の低下を防止することができるという利点がある。尚、本実施形態は、前述した第1~第5実施形態の何れにも適用可能である。
【0099】
〔第7実施形態〕
図17は、本発明の第7実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバを示す断面図である。
図17に示す通り、本実施形態におけるマルチコアファイバ10は、非螺旋部SP1におけるクラッド径が、非螺旋部SP1以外の部分におけるクラッド径よりも大とされている。このように、非螺旋部SP1におけるクラッド径を、非螺旋部SP1以外の部分におけるクラッド径よりも大にするのは、第6実施形態のフェルール21のように、収容部の内径を二段にすることなく、マルチコアファイバ10の融着点Xをフェルール21の内部に収容させるためである。
【0100】
図17に示す通り、クラッド径が異なるマルチコアファイバFB1,FB2を融着しても、融着して得られたマルチコアファイバ10の融着点Xにおけるクラッド径は、マルチコアファイバFB1のクラッド径よりも大きくはならない。このため、マルチコアファイバFB1のクラッド径と同程度の内径を有するフェルール21を用いれば、収容部の内径を二段にしなくとも、マルチコアファイバ10の融着点Xをフェルール21の内部に収容することができる。
【0101】
尚、本実施形態では、マルチコアファイバ10の非螺旋部SP1におけるクラッド径が、非螺旋部SP1以外の部分におけるクラッド径よりも大とされている場合を例に挙げた。しかしながら、マルチコアファイバ10Aの緩螺旋部SP2におけるクラッド径が、緩螺旋部SP2以外の部分におけるクラッド径よりも大とされていても良い。
【0102】
〔第8実施形態〕
図18は、本発明の第8実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバを示す断面図である。
図18に示す通り、本実施形態におけるコネクタ付きマルチコアファイバは、クラッド径が異なる部分を有するマルチコアファイバ10と、収容部の内径が二段にされているフェルール21とを備える。
【0103】
本実施形態におけるマルチコアファイバ10は、前述した第7実施形態のマルチコアファイバ10(
図17参照)とは異なり、非螺旋部SP1におけるクラッド径が、非螺旋部SP1以外の部分におけるクラッド径よりも小とされている。本実施形態におけるフェルール21は、前述した第6実施形態と同様のものである。つまり、内径がマルチコアファイバ10の非螺旋部SP1の外径と同程度に形成された収容部H1と、内径が収容部H1よりも大に形成された収容部H2とを有する。つまり、本実施形態においては、収容部H1,H2の内径が、内挿されるマルチコアファイバ10のクラッド径(マルチコアファイバFB1,FB2のクラッド径)に応じて異なる。
【0104】
このようなマルチコアファイバ10をフェルール21に内挿すると、マルチコアファイバ10の融着点Xが、フェルール21の収容部H1と収容部H2との間に係止される。これにより、フェルール21内における融着点Xの位置決めをすることが可能であるという利点がある。また、OFDRを用いたセンサに用いられる場合には、長手方向における測定位置精度の低下を防止することができるという利点がある。尚、本実施形態は、前述した第1~第5実施形態の何れにも適用可能である。
【0105】
〔第9実施形態〕
図19は、本発明の第9実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバ及びその製造方法を示す断面図である。
図19(d)に示す通り、本実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバは、クラッド径が異なるマルチコアファイバFB1,FB2からなるマルチコアファイバ10と、内径が異なる収容部H1,H2が形成されたフェルール21とを備える。マルチコアファイバ10をなすマルチコアファイバFB1,FB2は融着されておらず、端面が当接した状態で(マルチコアファイバFB1の各コアと、マルチコアファイバFB2の各コアとがそれぞれ当接した状態で)フェルール21に固定されている。
【0106】
本実施形態では、マルチコアファイバ10の非螺旋部SP1とされるマルチコアファイバFB2のクラッド径が、マルチコアファイバ10の非螺旋部SP1以外の部分とされるマルチコアファイバFB1のクラッド径よりも大とされている。また、フェルール21の収容部H1の内径は、マルチコアファイバFB2のクラッド径と同程度に形成され、収容部H2の内径は、マルチコアファイバFB1のクラッド径と同程度に形成されている。つまり、収容部H1,H2の内径は、内挿されるマルチコアファイバ10のクラッド径(マルチコアファイバFB1,FB2のクラッド径)に応じて異なる。
【0107】
本実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバを製造する場合には、まず、
図19(a)に示すフェルール21を用意し、
図19(b)に示す通り、マルチコアファイバFB2をフェルール21の収容部H1に内挿する工程が行われる。ここで、フェルール21の収容部H2の内径は、収容部H1の内径よりも小に形成されているため、収容部H1に内挿されたマルチコアファイバFB2の端面は、収容部H1,H2の境界で係止される。次に、例えば、接着剤を用いて収容部H1に内挿されたマルチコアファイバFB2をフェルール21に固定する工程が行われる。
【0108】
続いて、
図19(c)に示す通り、マルチコアファイバFB1をフェルール21の収容部H2に内挿する工程が行われる。ここで、フェルール21の収容部H1に内挿されたマルチコアファイバFB1の端面は、フェルール21に固定されたマルチコアファイバFB2の端面に当接した状態となる。続いて、マルチコアファイバFB1を軸の周りで回転させ、マルチコアファイバFB1の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。調心が完了すると、例えば、接着剤を用いて収容部H2に内挿されたマルチコアファイバFB1をフェルール21に固定する工程が行われる。以上の工程が終了すると、
図19(d)に示す通り、フェルール21及びマルチコアファイバFB2の端面を研磨する工程が行われる。
【0109】
尚、本実施形態では、マルチコアファイバ10をなすマルチコアファイバFB1,FB2のクラッド径が異なっており、フェルール21における収容部H1,H2の内径が異なっている例について説明した。しかしながら、マルチコアファイバ10をなすマルチコアファイバFB1,FB2のクラッド径が同じであり、フェルール21における収容部H1,H2の内径が同じ(つまり、フェルール21の収容部の内径が二段にされていない)であっても良い。
【0110】
図20は、本発明の第9実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの製造方法の変形例を説明するための図である。まず、
図20(a)に示す通り、マルチコアファイバFB2をフェルール21に内挿して固定する工程が行われる。ここで、フェルール21における収容部H1,H2の内径が異なっている場合には、
図19(b)に示す工程と同様に、マルチコアファイバFB2は、端面が収容部H1,H2の境界で係止されるまでフェルール21に挿入される。これに対し、フェルール21の収容部の内径が二段にされていない場合には、フェルール21の収容部に対するマルチコアファイバFB2の挿入量を調整する必要がある。
【0111】
次に、
図20(b)に示す通り、フェルール21及びマルチコアファイバFB2の端面を研磨する工程が行われる。続いて、
図20(c)に示す通り、マルチコアファイバFB1をフェルール21に内挿する工程が行われる。ここで、マルチコアファイバFB1は、端面がマルチコアファイバFB2の端面に当接するまでフェルール21に挿入される。
【0112】
続いて、
図20(d)に示す通り、マルチコアファイバFB1を軸の周りで回転させ、マルチコアファイバFB1の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。この工程では、例えば、マルチコアファイバFB1からマルチコアファイバFB2に向けて光が射出されている状態で、マルチコアファイバFB1を軸の周りで回転させながら、マルチコアファイバFB2の他端から射出される光を光パワーメータPMでモニタする調心方法が用いられる。調心が完了すると、例えば、接着剤を用いてフェルール21に内挿されたマルチコアファイバFB1をフェルール21に固定する工程が行われる。尚、本実施形態は、前述した第1~第5実施形態の何れにも適用可能である。
【0113】
〔第10実施形態〕
図21は、本発明の第10実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバの製造方法を示す断面図である。本実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバは、マルチコアファイバFB2及びフェルール21の端部がAPC研磨されている点が、第9実施形態によるコネクタ付きマルチコアファイバとは異なる。
【0114】
本実施形態のコネクタ付きマルチコアファイバを製造する場合には、まず、
図21(a)に示す通り、マルチコアファイバFB2をフェルール21に内挿して固定する工程が行われる。尚、
図21(a)に示す工程は、
図20(a)に示す工程と同様の工程である。次に、
図21(b)に示す通り、フェルール21及びマルチコアファイバFB2の端面を研磨する工程が行われる。尚、
図21(b)に示す工程は、
図20(b)に示す工程と同様の工程である。
【0115】
次いで、
図21(c)に示す通り、マルチコアファイバFB2が固定されて端面研磨されたフェルール21を固定治具FJに介挿させる工程が行われる。尚、ここでは、フェルール21は固定治具FJに固定されない。このため、マルチコアファイバFB2及びフェルール21が一体として軸の周りに回転可能である。
【0116】
続いて、
図21(d)に示す通り、マルチコアファイバFB2及びフェルール21を軸の周りで回転させ、固定治具FJに形成されたキーKYを基準に、マルチコアファイバFB2の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。調心が完了すると、フェルール21と固定治具FJとを一時的に固定する工程が行われる。これにより、固定治具FJに形成されたキーKYを基準としてマルチコアファイバFB2の端面における外周コア12a~12cの位置が固定される。
【0117】
続いて、
図21(e)に示す通り、マルチコアファイバFB2及びフェルール21の端面を研磨(APC研磨)する工程が行われる。端面研磨が完了すると、固定治具FJを取り外す工程が行われる。続いて、
図21(f)に示す通り、マルチコアファイバFB1をフェルール21に内挿する工程が行われる。ここで、マルチコアファイバFB1は、端面がマルチコアファイバFB2の端面に当接するまでフェルール21に挿入される。
【0118】
続いて、
図21(g)に示す通り、マルチコアファイバFB1を軸の周りで回転させ、マルチコアファイバFB1の端面における外周コア12a~12cの位置を調心する工程が行われる。この工程は、
図20(d)に示す工程と同様の工程である。調心が完了すると、例えば、接着剤を用いてフェルール21に内挿されたマルチコアファイバFB1をフェルール21に固定する工程が行われる。尚、本実施形態は、前述した第1~第5実施形態の何れにも適用可能である。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態で説明したマルチコアファイバ10,10Aは、直線状の中心コア11と螺旋状の3つの外周コア12a~12cとを備えるものであったが、マルチコアファイバは、複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているものであれば良い。また、マルチコアファイバは、中心コア11が省略されているものであっても良い。
【0120】
また、マルチコアファイバ10,10Aの中心コア11及び外周コア12a~12cにFBGが形成される場合には、マルチコアファイバ10,10Aの長手方向の全長に亘って形成されていても良く、長手方向の一部の領域にのみ形成されていても良い。また、マルチコアファイバ10,10Aの中心コア11及び外周コア12a~12cに形成されるFBGは、一定周期のものであっても良く、周期が連続的に変化するもの(チャープグレーティング)であっても良い。
【符号の説明】
【0121】
1~4…コネクタ付きマルチコアファイバ、10,10A…マルチコアファイバ、12…外周コア、20,20A…コネクタ、21…フェルール、21a,21b…キー、21c…端面、22…ハウジング、22a…キー、23…内部ハウジング、24…外部ハウジング、24a…キー、25…ハウジング、C12…外周コア、FB1,FB2…マルチコアファイバ、H1,H2…収容部、SP1…非螺旋部、SP2…緩螺旋部、X…融着点