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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075229
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】机
(51)【国際特許分類】
   A47B 91/06 20060101AFI20220511BHJP
   A47B 3/08 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A47B91/06
A47B3/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185889
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116596
【氏名又は名称】愛知株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 尚幸
【テーマコード(参考)】
3B053
3B069
【Fターム(参考)】
3B053GA00
3B069CA03
3B069CA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定してキャスタのロック制御の機能を発揮することができる移動可能な机を提供する。
【解決手段】脚部と天板とを備える机である。脚部は、キャスタによる移動が可能である非ロック状態、及び、移動が不能であるロック状態に遷移可能である。この机は、第1変位部50と、第2変位部51と、連結ロッドと、切替部と、を備える。第1変位部は、天板の回転に連動して変位する。第2変位部は、操作部32が操作されたときに変位する。連結ロッドは、第1変位部及び第2変位部の少なくともいずれか一方が変位したときに、当該変位に連動して動作する。切替部は、連結ロッドの動作と連動して、脚部の非ロック状態及びロック状態を切り換える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタによる移動が可能である非ロック状態、及び、前記移動が不能であるロック状態に遷移可能な脚部と、該脚部により支持され、使用位置から跳ね上げ位置までの間で回転可能に支持される天板と、を備える机であって、
前記天板の回転に連動して変位する第1変位部と、
当該机の使用者によって操作可能な操作部が操作されたときに変位する第2変位部と、
前記脚部の有する上下に長さを有する筒状の縦柱の内部に配置され、前記第1変位部及び前記第2変位部の少なくともいずれか一方が変位したときに、当該変位に連動して動作する連結ロッドと、
前記連結ロッドの動作と連動して、前記脚部の前記非ロック状態及び前記ロック状態を切り換える切替部と、を備える、机。
【請求項2】
請求項1に記載の机であって、
前記第1変位部は前記天板に対する変位が不能となるように前記天板に固定されている、机。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の机であって、
前記第1変位部及び前記第2変位部は、前記天板の回転軸の長さ方向に並べて配置されている、机。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の机であって、
前記脚部に支持され、前記天板の回転中心となる横柱を備え、
前記第1変位部及び前記第2変位部は、回転変位するように構成されており、
前記第1変位部及び前記第2変位部の回転軸は、前記天板の回転軸と同軸上に位置する、机。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の机であって、
前記第1変位部及び前記第2変位部のうちのいずれかである第1部品は器状であり、
前記第1変位部及び前記第2変位部のうちの前記第1部品とは異なる第2部品は、前記第1部品の内部に配置されている、机。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の机であって、
前記第1変位部は、板状であって前記第2変位部に隣接して配置される隣接部を有し
前記隣接部には長孔が形成され、前記連結ロッドは前記長孔を通過して前記第2変位部と連結しており、
前記長孔は、前記第2変位部が変位することで前記連結ロッドを変位させたときに、前記連結ロッドが前記長孔の端部を押圧せず、かつ、前記第1変位部が変位したときには、前記長孔の端部に前記連結ロッドが当接することによって前記連結ロッドを変位させる、机。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転する天板を有する机に関する。
【背景技術】
【0002】
回転する天板と、キャスタと、を備える机であって、天板の回転に応じてキャスタのロックとロック解除とを切り替える机がある。特許文献1では、天板を回転させる方法以外に、天板の裏面に配置された操作ボタンを操作することで一時的にキャスタのロックを解除することができる机が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-63231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の机は、1つの連動カムによってキャスタのロック状態を制御している。言い換えると、連動カムは、天板の回転と、操作ボタンの操作と、の両方をキャスタのロック制御を実行する装置に連動させている。そのため、連動カムの使用頻度が高くなり破損が生じやすい。また連動カムは、天板及び操作ボタンの両方に連動させる必要があるため、構造が複雑かつ繊細であり、小さな破損や変形によって機能が発揮できなくなる可能性が高い。
【0005】
本開示の目的は、安定してキャスタのロック制御の機能を発揮することができる技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、脚部と、脚部により支持され、使用位置から跳ね上げ位置までの間で回転可能に支持される天板と、を備える机である。脚部は、キャスタによる移動が可能である非ロック状態、及び、移動が不能であるロック状態に遷移可能である。この机は、第1変位部と、第2変位部と、連結ロッドと、切替部と、を備える。第1変位部は、天板の回転に連動して変位する。第2変位部は、当該机の使用者によって操作可能な操作部が操作されたときに変位する。連結ロッドは、脚部の有する上下に長さを有する筒状の縦柱の内部に配置され、第1変位部及び第2変位部の少なくともいずれか一方が変位したときに、当該変位に連動して動作する。切替部は、連結ロッドの動作と連動して、脚部の非ロック状態及びロック状態を切り換える。
【0007】
このような構成であれば、天板が回転したときには第1変位部が連動して切替部を作動させる一方、操作部が操作されたときは第2変位部が連動して切替部を作動させる。したがって、非ロック状態とロック状態とを切り替えるために第1変位部と第2変位部のいずれか一方の部品が使用されるため、1つの部品が使用される場合と比較して、各変位部の使用回数が低減され、それらが壊れにくくなる。また、仮に破損等により第1変位部と第2変位部のいずれか一方を用いた切替部24の切り替え機能が使用できなくなったとしても、他方の機能が使用可能である状態が維持される可能性があり、ロック制御が完全に使用不能となるリスクを低減できる。以上の理由により、安定してキャスタのロック制御の機能を発揮することができる。
【0008】
本開示の一態様では、第1変位部は天板に対する変位が不能となるように天板に固定されていてもよい。このような構成であれば、天板の動きを良好に第1変位部に伝えることができる。
【0009】
本開示の一態様では、第1変位部及び第2変位部は、天板の回転軸の長さ方向に並べて配置されていてもよい。このような構成であれば、第1変位部及び第2変位部を小さくまとまった状態で配置することができる。
【0010】
本開示の一態様では、脚部に支持され、天板の回転中心となる横柱を備えてもよい。第1変位部及び第2変位部は、回転変位するように構成されていてもよい。第1変位部及び第2変位部の回転軸は、天板の回転軸と同軸上に位置してもよい。このような構成であれば、机の機構をシンプルにすることができる。
【0011】
本開示の一態様では、第1変位部及び第2変位部のうちのいずれかである第1部品は器状であってもよい。第1変位部及び第2変位部のうちの第1部品とは異なる第2部品は、第1部品の内部に配置されていてもよい。このような構成であれば、第1変位部と第2変位部を小さくまとまった状態で配置することができる。
【0012】
本開示の一態様では、第1変位部は、板状であって第2変位部に隣接して配置される隣接部を有してもよい。隣接部には長孔が形成され、連結ロッドは長孔を通過して第2変位部と連結していてもよい。長孔は、第2変位部が変位することで連結ロッドを変位させたときに、連結ロッドが長孔の端部を押圧せず、かつ、第1変位部が変位したときには、長孔の端部に連結ロッドが当接することによって連結ロッドを変位させてもよい。
【0013】
このような構成であれば、第1変位部と第2変位部とが隣接しているにもかかわらず、操作部の操作によって第2変位部が変位したときに、天板を変位させることを抑制しつつ、連結ロッドを変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の机1を示す斜視図である。
図2】実施形態の机1を示す側面図である。
図3】実施形態の机1における天板の裏側の機構を示す斜視図である。
図4】実施形態の机1における天板の裏側の機構を示す斜視図であって、構成の一部を分解した状態の斜視図である。
図5図5Aが、第1変位部と第2変位部の組み合わせの斜視図であり、図5Bが、第1変位部と第2変位部の組み合わせであって図5Aとは異なる視点の斜視図である。
図6図6Aが第2変位部の斜視図であり、図6Bが第2変位部の図6Aとは異なる視点の斜視図であり、図6Cが第2変位部の断面図である。
図7】第1ロッドと第1変位部を説明するための、一部の構成要素のみを示す斜視図である。
図8】第1ロッドと第2変位部を説明するための、一部の構成要素のみを示す斜視図である。
図9】天板を回転させることによる第1ロッドの動作について説明する図であって、図9Aは天板が使用位置にある状態を示す側面図であり、図9Bは天板が使用位置と跳ね上げ位置の間にある状態を示す側面図であり、図9Cは天板が跳ね上げ位置にある状態を示す側面図である。
図10】操作部を操作することによる第1ロッドの動作について説明する図であって、図10Aは操作部が操作されていない状態を示す側面図であり、図10Bは操作部が一定量操作された状態を示す側面図であり、図10Cは操作部が最後まで操作された状態を示す側面図である。
図11】天板を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.実施形態]
[1-1.全体構成]
図1に示される机1は、一対の脚部11と、天板12とを備える。以下の説明において、前後、左右、上下などの方向を用いて各部の構成を説明する場合があるが、それらの方向は説明の便宜上用いているに過ぎず、本開示の実施の態様について何ら限定するものではない。上述した方向は、使用者が机1に向かったときの使用者を基準とした方向である。また、天板12は後述するように回転するが、説明に用いる方向は、図1のような使用位置における方向である。
【0016】
一対の脚部11は、左右方向に間隔を開けて配置され、天板12を支持する。一対の脚部11は、それぞれ、キャスタ23による移動が可能である非ロック状態、及び、キャスタ23による移動が不能であるロック状態に遷移可能に構成されている。
【0017】
一対の脚部11は、それぞれ、上下に長さを有する筒状の縦柱21と、縦柱21の下端に配置され、前後に長さを有し下方に開口した箱状の床側部材22と、を有する。床側部材22における前後方向の両端それぞれの下方に、キャスタ23が設けられている。つまり、一対の脚部11にはそれぞれ2つのキャスタ23が設けられている。
【0018】
図2に示されるように、床側部材22の内部には切替部24が設けられている。切替部24は、上述した非ロック状態、及び、ロック状態を切り換える。切替部24は、キャスタ23の回転を物理的に制限することでロック状態としてもよい。また切替部24は、キャスタ23が床面から離れた位置となるようにキャスタ23又は床面と当接する部材を駆動することでロック状態としてもよい。切替部24には、上述した非ロック状態とロック状態とを切り換えることができる周知の構成を採用することができる。
【0019】
天板12は、該脚部11により回転可能に支持される。天板12は、図1に示される使用位置から、後述する図9Cに示される天板12の位置である、跳ね上げ位置までの間で回転可能である。脚部11のロック状態及び非ロック状態は、天板12の位置に連動して遷移する。天板12が使用位置のときは、脚部11はロック状態となる。天板12が跳ね上げ位置のときは、脚部11は非ロック状態となる。
【0020】
天板12の裏側における左右両側の端部近傍には、それぞれ、回転レバー31と操作部32とが配置されている。これらはいずれも机1の使用者によって操作可能である。使用位置にある天板12は回転しないように制限されている。回転レバー31が操作されると、その制限が解除され、跳ね上げ位置への回転が可能となる。操作部32は、天板12の回転を行わずに脚部11を非ロック状態にするためのレバーである。天板12が使用位置にあり、かつ、操作部32が操作されているときには、脚部11が非ロック状態となる。それにより、天板12を回転させることなく、机1の移動が可能となる。
【0021】
図3図4を用いて、天板12の裏側の構成を説明する。図3図4では、天板12の左側を示しているが、天板12の右側にも左右反転した同様の構成が備えられる。
天板12の回転を実現するための構成として、机1は、横柱41、横柱固定部42、天板固定部43、環状支持部44、固定片45、解除軸46、接続棒47、及び回転制御板48を有する。
【0022】
横柱41は、左右方向に長さを有する筒状形状である。横柱41は、一対の脚部11を連結する。横柱固定部42は、横柱41に対して固定され、また、縦柱21に対して固定される。言い換えると、横柱41は横柱固定部42を介して一対の脚部11に固定されており、横柱41は一対の脚部11に支持されている。
【0023】
天板固定部43は天板12に対してネジ留め等により固定される部品である。環状支持部44は、横柱41の下方及び前後を覆う部分と、横柱41の上側を覆う部分と、に分かれている。そして、それらが組み合わさることにより、横柱41の所定の位置において横柱41の周方向全体を囲う環状体を構成する(図7参照)。環状支持部44は、天板固定部43に固定される。一方で、環状支持部44に対して横柱41は固定されない。このような構成により、天板12は、横柱41を回転の軸部材として回転可能となる。言い換えると、横柱41は天板12の回転中心である。
【0024】
次に、天板12の回転を制限する機構について説明する。回転レバー31、固定片45、及び解除軸46は、天板12側に固定された部品である。言い換えると、天板12が回転しても天板12との相対的な位置が変化しない部品である。一方、回転制御板48は横柱41に固定された部品である。回転レバー31は、解除軸46に連結されている。回転レバー31が操作されると、解除軸46が回転し、解除軸46に固定された固定片45が変位する。回転制御板48には固定片45が係合可能な複数の溝が形成されている。
【0025】
天板12が使用位置にあるとき、回転制御板48の上端部分が天板固定部43の下側面に当接しており、それによって、天板12の後方端部が下がるように天板12が回転することが抑制される。回転レバー31が操作されないときは、固定片45が回転制御板48の所定の溝に嵌っており、それによって天板12の後方端部が上がるように天板12が回転することが制限される。回転レバー31が操作され、固定片45が回転制御板48の所定の溝から抜けると、天板12の回転の制限が解除され、天板12の跳ね上げ位置に向かう回転が可能となる。なお、天板12が跳ね上げ位置にあるときも同様に、回転レバー31が操作されないときには固定片45が回転制御板48の別の溝に嵌っており、天板12の回転が制限される。そして、回転レバー31を操作することで、天板12の回転の制限が解除される。接続棒47は、机1の左右に設けられる一対の解除軸46を連結している。そのため一方の解除軸46が回転すれば、他方の解除軸46も回転し、左右一対の固定片45も変位する。このような構成であるから、左右のいずれか一方の回転レバー31を操作することで、机1の左右両側における、固定片45と回転制御板48による天板12の回転の制限が解除される。
【0026】
次に、キャスタ23のロックを制御する部品について説明する。キャスタのロック制御を実現するための構成として、机1は、第1ロッド49、第1変位部50、第2変位部51、連結部52、第2ロッド53、コイルバネ54、及びケース55を有する。
【0027】
第1ロッド49は、縦柱21の内部に配置される。また第1ロッド49は、第1変位部50及び第2変位部51の少なくともいずれか一方が変位したときに、当該変位に連動して動作する。切替部24は、第1ロッド49の動作と連動して、脚部11の非ロック状態及びロック状態を切り換える。
【0028】
第1変位部50は、天板12に対して固定されており、天板12の回転に連動して回転変位する。第2変位部51は、操作部32が操作されたときに、操作部32に連動する第2ロッド53を介して押圧され、回転変位する。第1変位部50及び第2変位部51は、天板12の回転の軸部材である横柱41の長さ方向、即ち左右方向に並べて配置されている。第1変位部50は器状である。第2変位部51は、第1変位部50の内部に配置されている。
【0029】
図5A-5Bに示されるように、第1変位部50は、平板状の隣接部71と、隣接部71から隣接部71と交差する方向に延び出す周壁部72と、長孔73とを有する。隣接部71は、天板12の回転軸と直交する方向に広がり、第2変位部51に隣接して配置される。周壁部72は、第2変位部51の側面を囲うように配置される。長孔73は、隣接部71に形成される。長孔73は、天板12の回転軸、すなわち横柱41の仮想的な中心軸を中心とした円周方向に延びる孔である。
【0030】
図6A-6Cに示されるように、第2変位部51は、略円板状の部材である。第2変位部51は、円板の側面に形成されて周方向に延びる溝81と、円板の軸と中心軸が一致する筒状であって、円板から一方に突出する筒部82と、を有する。溝81を構成する壁面であって、円板の軸と直交する方向に広がる2つの壁面のうち、筒部82の突出する側と反対の側の壁面には、第1長孔部83が形成される。また上述した2つの壁面のうち、筒部82側の壁面には、第2長孔部84が形成される。第1長孔部83及び第2長孔部84は、横柱41の仮想的な中心軸を中心とした円周方向に延びる。また、第1長孔部83と第2長孔部84とは対向する位置に設けられる。
【0031】
溝81の深さは一定ではなく、周方向の位置によって変化する。溝81の内部には、深さが大きく変化することによって段差が形成されている。その段差が形成された部分における、溝の深さが小さい側の位置を当接部85とする。また、上記円板の側面であって溝81が形成されていない部分に、ねじを挿入するための穴86が形成されている。上述した筒部82には連結部52が挿入される。そして、穴86から挿入されたねじによりねじ止めすることで、第2変位部51と連結部52とが固定される。第2変位部51は、連結部52を中心として回転変位可能に構成されている。
【0032】
第1変位部50及び第2変位部51の回転軸は、天板12の回転軸と同軸上に位置する。そのため、第1変位部50及び第2変位部51は、天板12の回転軸と直交する仮想的な平面に沿って変位する。ここでいう天板12の回転軸とは、横柱41における天板12を支持する部分の仮想的な軸線を指す。また第1変位部50及び第2変位部51の回転軸とは、これらの回転の中心となる仮想的な軸線を指す。
【0033】
図7に示されるように、第1ロッド49は、その先端が長孔73に挿入されている。これにより、天板12が回転して第1変位部50が回転変位すると、長孔73の下側の端部に当接した第1ロッド49が引き上げられる。なお図7は、第1ロッド49と第1変位部50の理解を容易にするために、一部の構成要素のみを図示している。
【0034】
一方で、図8に示されるように、長孔73を通過した第1ロッド49の先端は、第2変位部51の第1長孔部83に挿入されている。つまり、第1ロッド49は長孔73を通過して第2変位部51と連結している。操作部32が操作されて第2変位部51が回転変位すると、第1長孔部83の下側の端部に当接した第1ロッド49が引き上げられる。第2変位部51は、横柱41に対して、該横柱41の長さ方向に並べて配置されている。なお図8は、第1ロッド49と第2変位部51の理解を容易にするために、一部の構成要素のみを図示している。第2長孔部84は、横柱固定部42に設けられた図示しない突起が挿入されることにより、第2変位部51の回転可能な範囲を画定する。
【0035】
説明を図3図4に戻る。連結部52は、横柱41の内部を通過するように配置されている。連結部52は左右に長さを有する棒状の部材である。連結部52は、上述したように、両端部が一対の第2変位部51それぞれの筒部82に挿入されている。そして連結部52は、机1の左右に間隔を開けて配置される一対の第2変位部51を連結して連動させる。連結部52は、一対の第2変位部51が同期して変位するように一対の第2変位部51を連動させる。そのため、左右いずれかの操作部32が操作されることで一方の第2変位部51が変位すれば、他方の第2変位部51も連動して変位する。一対の第2変位部51の回転軸(すなわち連結部52の中心軸)及び横柱41を、第2変位部51の回転軸と直交する平面に投影したときに、第2変位部51の回転軸は横柱41の断面内に位置している。
【0036】
第2ロッド53は、操作部32に操作に伴って天板12の裏面に沿ってスライドし、第2変位部51を押圧して第2変位部51を回転変位させる。第2ロッド53は、コイルバネ54によって、第2ロッド53が第2変位部51から離れる方向に付勢されている。ケース55は、操作部32を変位可能に支持するともに、第2ロッド53を支持し、またコイルバネ54を保護する。
【0037】
また机1は、上述した各構成要素を保護するとともに、使用者の手指や衣服などが挟み込まれることを防止するカバーとして、天板裏カバー56、縦柱カバー57、及び側面カバー58などを有する。
【0038】
[1-2.ロッドの作動機構]
図9A-9Cを用いて、天板12を回転させることによる第1ロッド49の動作について説明する。図9A-9Cは、一部の構成要素のみを示す模式的な図面である。第1ロッド49は、図示しない付勢部材によって下側(床側部材22側)に付勢されている。よって49は、変位のための荷重が加えられないときには、所定の可動範囲において最も下方に位置する。このとき、脚部11はロック状態となっている。
【0039】
図9Aは、天板12が使用位置である状態を示す。第1ロッド49の先端は第1変位部50の長孔73の下端に近接した位置にある。天板12を回転させると、図9Bに示されるように、天板12に固定された第1変位部50は天板12とともに回転する。長孔73は第1変位部50の回転中心から離れた位置にあるため、第1変位部50の回転に伴って移動する。それにより、第1ロッド49の先端は長孔73の端部に当接して引き上げられる。図9Cは天板12が跳ね上げ位置である状態を示す。このとき、第1ロッド49は最も高い位置まで引き上げられる。このような第1ロッド49の変位により切替部24が駆動することで、脚部11は非ロック状態に遷移する。
【0040】
なお、第2変位部51は天板12に対して固定されていないため、天板12の回転に伴って変位しない。第1ロッド49の先端は第2変位部51の第1長孔部83に挿入されているが、その先端は天板12の回転に伴って第1長孔部83の内部を移動する。そのため、第1ロッド49は第2変位部51を変位させない。なお、操作部32に連結される第2ロッド53は、天板12に取り付けられているため、天板12の回転に伴って変位する。しかしながら、第2ロッド53の先端部53aは、溝81の当接部85には当接せずに溝81の内部を移動するだけであるため、第2変位部51を変位させることはない。
【0041】
図10A-10Cを用いて、操作部32を操作することによる第1ロッド49の動作について説明する。図10-10Cは、一部の構成要素のみを示す模式的な図面である。図10Aは、操作部32が操作されていない状態を示す。第1ロッド49の先端は第2変位部51の第1長孔部83の下端に近接した位置にある。操作部32を一定量操作すると、図10Bに示されるように、第2ロッド53がスライドして第2ロッド53の先端部53aが当接部85に当接して押圧することにより、第2変位部51が回転変位する。第1長孔部83は第2変位部51の回転中心から離れた位置にあるため、第2変位部51の回転に伴って移動する。それにより、第1ロッド49の先端は第1長孔部83の端部に当接して引き上げられる。図10Cは、操作部32を操作可能な範囲における最後まで操作した状態を示す。このとき、第1ロッド49は最も高い位置まで引き上げられる。このような第1ロッド49の変位により切替部24が駆動することで、脚部11が非ロック状態に遷移する。
【0042】
なお、第1ロッド49の先端は第1変位部50の長孔73を通過しているが、操作部32に連動して第1ロッド49の先端が変位したときに、その先端は長孔73の内部を移動する。そのため、第1変位部50が第1ロッド49の変位の妨げになることはない。つまり、第2変位部51の変位にともなって第1ロッド49が変位したときに、第1ロッド49は長孔73の端部を押圧しない。一方、上述したように、第1変位部50が変位したときには、長孔73の端部に第1ロッド49が当接することによって第1ロッド49は変位する。
【0043】
以上説明したように、第1ロッド49は、天板12の回転と、操作部32の操作と、のいずれかによって上方に変位する。それにより、切替部24が作動し、脚部11は非ロック状態となる。すなわち、切替部24は、一対の第1変位部50の変位、又は、一対の第2変位部51の変位と連動して、上述した非ロック状態、及び、ロック状態を切り換える。
【0044】
[1-3.天板裏カバーによる保護]
図11は、天板12の下方から見た図であり、天板12及び一部の構成を省略している。天板裏カバー56は、横柱41の一部、天板固定部43、環状支持部44、固定片45、及び解除軸46など、天板12の回転と天板12の回転抑制に係る部品の多くを覆って保護する。またこれらの部品は、天板12が回転したときに天板12に対する相対的な位置が変位しない。そのため、その変位を可能とするために必要な大きな開口などを形成する必要がない。このことは、連結部52が横柱41の内部に配置されていることによって好適に実現できる。その理由を以下に説明する。
【0045】
連結部52が横柱41の外部に配置されている仮想的な構成を想定する。第2変位部51は脚部11に対して固定されており、上述したように、天板12に対して固定されておらず、天板12が回転すると、天板12に対する位置が変化する。第2変位部51に連結された連結部52も天板12に対して固定されず、天板12が回転すると天板12に対して位置が変化する。したがって、天板12を回転させると、天板裏カバー56は天板12とともに回転するが、連結部52は変位しないため、天板裏カバー56と連結部52の相対的な位置が変化する。その場合、天板裏カバー56には連結部52の相対的な変位を受け入れるための大きな開口や長孔を形成する必要が生じてしまう。一方、本実施形態の机1では、連結部52が横柱41の内部に配置されているため、上記の開口や長孔が必要ではない。
【0046】
[1-4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)上述した机1では、天板12が跳ね上げ位置に回転するときに第1変位部50が回転変位し、第1ロッド49を上方に引き上げる。また、机1では、操作部32が操作されたときに第2変位部51が回転変位し、第1ロッド49を上方に引き上げる。つまり、天板12が回転したときと、操作部32が操作されたときと、ではそれぞれ別の部品が第1ロッド49を上方に移動させる。したがって、単独の部品で第1ロッド49を移動させる場合と比較して第1変位部50と第2変位部51の使用回数が少なくなるため、それらが壊れにくくなる。また、第1変位部50と第2変位部51との機能を一つの部品に集約する場合に比べて複雑かつ精密な機構が不要となり、ロバスト性が高くなる。また、仮に破損等により第1変位部50と第2変位部51のいずれか一方を用いた切替部24の制御機能が使用できなくなったとしても、他方の機能が使用可能のまま残る可能性があり、ロック制御が完全に使用不能となるリスクを低減できる。以上の理由により、机1では、安定してキャスタ23のロック制御の機能を発揮することができる。
【0047】
(1b)上述した机1では、第1変位部50が天板12に直接固定されているため、天板に伴って確実に第1変位部50が変位する。なお第1変位部50は、天板12に対する変位が不能となるように天板12に固定されているならば、別の部品を間に介して間接的に天板12に固定されていてもよい。その場合も、上述した効果を奏することができる。
【0048】
(1c)上述した机1では、第1変位部50及び第2変位部51は、天板12の回転軸の長さ方向に並べて配置されている。そのため、上述した第1変位部50及び第2変位部51を小さくまとまった状態で配置することができる。
【0049】
(1d)上述した机1では、第1変位部50及び第2変位部51の回転軸は、天板12の回転軸と同軸上に位置する。そのため、机1の機構をシンプルにすることができる。例えば、天板12の回転位置に関わらず、第1変位部50と第2変位部51の軸位置が変化することはないので、それらの軸位置がずれることに起因する他の部品の位置の変化を考慮した構成とする必要がない。また、位置が変化する部品を覆うためにカバーを大きくする必要がなくなる。
【0050】
(1e)上述した机1では、第1変位部50が器状であり、第2変位部51が第1変位部50の内部に配置される。そのため、第1変位部50と第2変位部51を小さくまとまった状態で配置することができる。
【0051】
(1f)上述した机1では、第1変位部50の隣接部71に第2変位部51が隣接している。また隣接部71には長孔73が形成され、第1ロッド49は長孔73を通過して第2変位部51と連結している。第2変位部51が変位することで第1ロッド49を変位させたときに、第1ロッド49は長孔73の端部を押圧しないので、第1変位部50は変位しない。
【0052】
したがって、上述した机1では、第1変位部50と第2変位部51とが隣接しているにもかかわらず、操作部32の操作によって第2変位部51が変位したときに、天板12を変位させることを抑制しつつ、第1ロッド49を変位させることができる。
【0053】
[1-5.対応関係]
上記実施形態において、一対の脚部11が、脚部に相当する。第1ロッド49が、連結ロッドに相当する。第1変位部50が、第1部品に相当し、第2変位部51が、第2部品に相当する。
【0054】
[2.その他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0055】
(2a)上記実施形態で示した机1は、以下のように構成されていてもよい。例えば、第1変位部50は天板12に対して相対的な位置が変化するように固定されていてもよい。また、横柱41は左右方向全体が円筒状である構成を例示した。しかしながら、横柱41の少なくとも一部が円柱形状の円柱部として形成されており、天板12は、円柱部を回転中心として回転するように構成されていてもよい。また、天板12を回転させるための機構は特に限定されない。例えば、一対の脚部11は左右に延びる框によって連結されており、天板12は一対の脚部11それぞれに対して回転可能に軸支されていてもよい。
【0056】
(2b)第1変位部50及び第2変位部51の態様は、上記実施形態の構成に限定されない。例えば、実施形態とは反対に、第2変位部51が器状であって、第2変位部51の内部に第1変位部50が配置される構成であってもよい。また、第1変位部50は器状に形成されていなくてもよいし、第2変位部51は第1変位部50の内部に配置されていなくてもよい。すなわち、第1変位部50及び第2変位部51は、それぞれ天板12と操作部32とに連動して第1ロッド49を変位させる機能を奏する範囲で、様々な形態を採用しうる。また、第1変位部50及び第2変位部51は、互いに、天板12の回転軸の長さ方向と交差する方向に離れた位置に配置されていてもよい。また、第1変位部50及び前記第2変位部51のいずれか一方又は両方は、その回転軸が天板12の回転軸からずれた位置に配置されていてもよい。
【0057】
また上記実施形態において、第1変位部50と第2変位部51はいずれも回転変位する構成を例示した。しかしながら、第1変位部50及び第2変位部51のいずれか一方及び両方は、例えば所定の範囲を直線的に移動するような、回転以外の変位をする構成であってもよい。
【0058】
また上記実施形態では、長孔73を貫通することで第1変位部50及び第2変位部51の両方に連結する構成を例示したが、それ以外の方法で第1変位部50及び第2変位部51に連結してもよい。例えば、第1ロッド49は、第1変位部50及び第2変位部51のそれぞれ別個に係合する2つの係合片を有していてもよい。
【0059】
また例えば、第1変位部50と第2変位部51とは、それぞれ別の連結ロッドを上下に変位させるように構成されていてもよい。この場合、切替部24は、2つの連結ロッドのいずれか一方が変位したときに、脚部の非ロック状態及びロック状態を切り替えるように構成されていてもよい。
【0060】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…机、11…脚部、12…天板、21…縦柱、22…床側部材、23…キャスタ、24…切替部、31…回転レバー、32…操作部、41…横柱、42…横柱固定部、43…天板固定部、44…環状支持部、45…固定片、46…解除軸、47…接続棒、48…回転制御板、49…第1ロッド、50…第1変位部、51…第2変位部、52…連結部、53…第2ロッド、53a…先端部、54…コイルバネ、55…ケース、56…天板裏カバー、57…縦柱カバー、58…側面カバー、71…隣接部、72…周壁部、73…長孔、81…溝、82…筒部、83…第1長孔部、84…第2長孔部、85…当接部、86…穴。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11