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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075231
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】キャスタ装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20220511BHJP
   A47B 91/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B60B33/00 U
A47B91/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185891
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116596
【氏名又は名称】愛知株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 尚幸
【テーマコード(参考)】
3B069
【Fターム(参考)】
3B069CA03
3B069CA04
3B069GA01
(57)【要約】
【課題】少なくとも1つのキャスタを有するキャスタ装置において、ロック機構の構成を簡素化できるようにする。
【解決手段】本開示の一態様は、少なくとも1つのキャスタを有するキャスタ装置である。キャスタ装置は、複数の溝部と、ピンと、連動部と、を備える。溝部は、キャスタの駆動軸に沿う回転に連動して回転するように構成される。ピンは、棒状に形成される。ピンは、当該ピンの端部が複数の溝部のうちの何れかに噛み合うロック状態と当該ピンの端部が溝部から離れる解除状態との間で変位可能に構成される。連動部は、キャスタをロック状態又は解除状態とするための外力に応じて変位し、ピンと連動することによって、ピンをロック状態及び解除状態との間で変位させるように構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのキャスタを有するキャスタ装置であって、
前記キャスタの駆動軸に沿う回転に連動して回転するように構成された複数の溝部と、
棒状に形成されたピンであって当該ピンの端部が前記複数の溝部のうちの何れかに噛み合うロック状態と当該ピンの端部が前記溝部から離れる解除状態との間で変位可能に構成されたピンと、
前記キャスタを前記ロック状態又は前記解除状態とするための外力に応じて変位し、前記ピンと連動することによって、前記ピンを前記ロック状態及び前記解除状態との間で変位させるように構成された連動部と、
を備えるキャスタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキャスタ装置であって、
前記ピンを一方向に付勢するように構成された付勢部材をさらに備え、
前記連動部は、前記ピンとは離間可能に構成され、前記付勢部材による付勢力に抗するように前記ピンを押圧することで前記ピンを変位させる
ように構成されたキャスタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャスタ装置であって、
前記キャスタは、前記複数の溝部が内周面に形成された1組の車輪部が、前記ピンを挟んで対向して配置されており、
前記ピンは、前記ロック状態の際に、当該ピンの長手方向の両端部が前記1組の車輪部における溝部にそれぞれ係合されうる
ように構成されたキャスタ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のキャスタ装置であって、
前記キャスタを前記駆動軸に沿って回転可能に保持するように構成された少なくとも1つの駆動保持部と、
前記駆動保持部を前記駆動軸と直交する旋回軸に沿って回転可能に保持するように構成された旋回保持部と、
前記駆動保持部の回転を抑止する抑止状態と前記駆動保持部の回転を許容する許容状態との間で遷移可能に構成された旋回抑止部と、
をさらに備えるキャスタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のキャスタ装置であって、
前記旋回抑止部は、
前記旋回保持部に配置された突起部と、
前記突起部と噛み合うことで前記抑止状態となり、前記突起部から離れることで前記許容状態となるように構成された可動部と、
を備えるキャスタ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のキャスタ装置であって、
前記可動部は、前記連動部と一体に構成される
キャスタ装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載のキャスタ装置であって、
それぞれ前記キャスタを備える複数の前記駆動保持部を備え、
前記旋回保持部は、前記複数の駆動保持部を回転可能に保持する
ように構成されたキャスタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つのキャスタを有するキャスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロック機構を備えるキャスタ装置が広く知られている。下記特許文献1には、キャスタに設けられた内歯車と噛み合う走行阻止歯を有するロック片を、キャスタ内で変位させる構成が開示されている。この構成では、ロック片を変位させることで、キャスタが駆動回転しないロック状態とキャスタが駆動回転できる解除状態とを遷移させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-153684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、キャスタ付近に、比較的大型のロック部材とロック部材を動かすための機構とを備えるため、ロック機構の構成が複雑であり、各部材の配置に余裕を持たせることが難しいという問題点があった。
【0005】
本開示の1つの局面は、少なくとも1つのキャスタを有するキャスタ装置において、ロック機構の構成を簡素化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、少なくとも1つのキャスタを有するキャスタ装置である。キャスタ装置は、複数の溝部と、ピンと、連動部と、を備える。溝部は、キャスタの駆動軸に沿う回転に連動して回転するように構成される。ピンは、棒状に形成される。ピンは、当該ピンの端部が複数の溝部のうちの何れかに噛み合うロック状態と当該ピンの端部が溝部から離れる解除状態との間で変位可能に構成される。連動部は、キャスタをロック状態又は解除状態とするための外力に応じて変位し、ピンと連動することによって、ピンをロック状態及び解除状態との間で変位させるように構成される。
【0007】
このような構成によれば、連動部を駆動することでピンが駆動し、キャスタをロック状態と解除状態との間で遷移させることができる。この際、キャスタ付近では、ピンを駆動させる構成を備えればよいので、従来構成よりも、キャスタをロック及び解除するための構成を簡素化することができる。
【0008】
本開示の一態様では、ピンを一方向に付勢するように構成された付勢部材をさらに備えてもよい。連動部は、ピンとは離間可能に構成され、付勢部材による付勢力に抗するようにピンを押圧することでピンを変位させてもよい。
【0009】
このような構成によれば、ピンと連動部とを離間可能とするため、一方の部材に加わる外力が他方の部材に伝わりにくくすることができる。よって、ピン、連動部等の各部材への振動の伝達を軽減でき、各部材への衝撃による負担を軽減することができる。
【0010】
本開示の一態様では、キャスタは、複数の溝部が内周面に形成された1組の車輪部が、ピンを挟んで対向して配置されていてもよい。ピンは、ロック状態の際に、当該ピンの長手方向の両端部が1組の車輪部における溝部にそれぞれ係合されうる。
【0011】
このような構成によれば、ピンの両端部のうちの少なくともいずれかが、溝部に噛み合う可能性を高めることができる。
【0012】
本開示の一態様では、少なくとも1つの駆動保持部と、旋回保持部と、旋回抑止部と、をさらに備えてもよい。駆動保持部は、キャスタを駆動軸に沿って回転可能に保持するように構成される。旋回保持部は、駆動保持部を駆動軸と直交する旋回軸に沿って回転可能に保持するように構成される。旋回抑止部は、駆動保持部の回転を抑止する抑止状態と駆動保持部の回転を許容する許容状態との間で遷移可能に構成される。
このような構成によれば、キャスタが駆動軸に沿った回転だけでなく、旋回方向にも回転できる場合に、旋回方向の回転も抑止することができる。
【0013】
本開示の一態様では、旋回抑止部は、突起部と、可動部と、を備えてもよい。突起部は、旋回保持部に配置される。可動部は、突起部と噛み合うことで抑止状態となり、突起部から離れることで許容状態となるように構成される。
【0014】
このような構成によれば、旋回方向の回転を、突起部と可動部とが噛み合うことで抑止することができる。
【0015】
本開示の一態様では、可動部は、連動部と一体に構成されてもよい。
このような構成によれば、可動部を連動部と一体に構成するので、部品点数を削減できる。また、このような構成によれば、駆動軸に沿った回転と旋回軸に沿った回転とを、同時にロック又は解除できる。
【0016】
本開示の一態様では、それぞれキャスタを備える複数の駆動保持部を備えてもよい。旋回保持部は、複数の駆動保持部を回転可能に保持してもよい。
ここで、旋回保持部は、複数の駆動保持部を保持するため、比較的重量が大きな部材となる可能性が高い。当該構成が上述した突起部及び可動部を備える場合、この旋回保持部に突起部が配置され、旋回軸に沿った回転を抑止するため、キャスタのガタつきを抑制でき、強固に抑止状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】移動机の斜視図である。
図2】キャスタ装置の側方端面図である。
図3】キャスタの分解斜視図である。
図4】ロック機構の分解斜視図である。
図5】キャスタ装置のロック状態を示す端面図である。
図6】キャスタ装置の解除状態を示す端面図である。
図7】キャスタの断面図である。
図8】別形態のピンを示す斜視図である。
図9】さらに別形態のピンを示す斜視図である。
図10】さらに別形態のピンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示の一局面の実施形態を説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本開示の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採り得る。
【0019】
[1.実施形態]
[1-1.実施形態の構成と本開示の構成との対応関係]
本実施形態での第1コイルバネ36は、本開示での付勢部材に相当する。本実施形態での駆動軸部31及びハウジング41(特に、旋回軸部41A)は、本開示での駆動保持部に相当する。本実施形態での筐体20(特に、筒部20A)は、本開示での旋回保持部に相当する。本実施形態での筐体20(特に、突起部20B)及び連動部50(特に凹部50E)は、本開示での旋回抑止部に相当する。本実施形態での連動部50は、本開示での可動部に相当する。
【0020】
[1-2.全体構成]
本実施形態における移動机1は、図1に示すように、天板5と、複数のキャスタ装置10とを備える。複数のキャスタ装置10は、天板5の左右のそれぞれに1つずつの合計2つ設けられており、それぞれに複数のキャスタ30を備える。
【0021】
なお、キャスタ装置10は、少なくとも1つのキャスタ30を備えていればよい。また、図1における左手前方向が移動机1の前方であり、右奥方向が移動机1の後方である。
複数のキャスタ装置10は、それぞれ脚部11を介して天板5に接続される。天板5は、それぞれの脚部11の上端部に設けられた図示しない保持軸を中心に、回転できるように構成されている。保持軸は、軸カバー7に内部にて、天板5及び軸カバー7に隠れるように移動机1の左右方向に沿って配置される。天板5は、保持軸を中心に回転することによって、天板5の上面が水平面と平行な使用状態と、脚部11の長手方向と略平行な収納状態との間で変位可能である。天板5は、移動机1が使用される際には使用状態とされ、移動机1が使用されない際には収納状態とされる。このような天板5の動きに連動して、後述するロッド12が上下に変位する。
【0022】
また、移動机1を前方から見て、天板5の下方左右の端部には、折り畳みレバー9A及び微調整レバー9Bが設けられている。天板5は、使用者によって折り畳みレバー9Aが操作されることで、使用状態と収納状態との間で変位可能となる。微調整レバー9Bは使用者によって操作可能であり、この操作によっても、ロッド12が上下に変位する。ロッド12が上下に変位すると、キャスタ30の回転が抑制されるロック状態と、キャスタ30の回転を許容する解除状態とが切り替えられる。
【0023】
キャスタ装置10は、図2に示すように、リンク機構13と、複数のスライド部14,15と、筐体20と、複数のキャスタ30と、複数の連動部50と、複数のピン35と、複数の鍬形部55と、を備える。なお、図2及び後述する図5,6は、筐体20等の一部の部材を透視した状態での端面図である。リンク機構13、複数のスライド部14,15、複数の連動部50、及び複数の鍬形部55は、キャスタ装置10の外殻を構成する筐体20の内部に配置される。
【0024】
[1-3.リンク機構の構成]
ロッド12は、脚部11の内部に配置される。リンク機構13は、ロッド12による略鉛直方向の作動を、複数のスライド部14,15による略水平方向への作動に変換するための機構である。リンク機構13及び複数のスライド部14,15は、図4図6に示すように、収納部17の内部に収納されている。収納部17は、図2図5図6での紙面の手前側及び奥側から当該スライド部14,15を挟み込むように配置されている。
【0025】
リンク機構13は、図5及び図6に示すように、第1リンク部13Aと、複数の第2リンク部13Bとを備える。図5及び図6に示す視線方向において、第1リンク部13Aは、角を丸めた三角形に形成されている。この角を丸めた三角形は、鉛直方向上側に1つの頂点を有し、かつ鉛直方向下側の水平面に沿って2つの頂点を有するように配置される。
【0026】
第1リンク部13Aは、第1リンク部13Aの鉛直方向上側、詳細には、鉛直方向上側の頂点付近には、第1回転保持部13Cを備える。第1回転保持部13Cは、当該第1リンク部13Aをロッド12に対して回転可能に保持する。第1回転保持部13Cは、第1リンク部13Aが回転する際の回転の中心軸として機能する。
【0027】
第1リンク部13Aは、第1リンク部13Aの鉛直方向下側の2箇所、詳細には、鉛直方向下側の2つの頂点付近には、それぞれ第2回転保持部13Dを備える。これらの第2回転保持部13Dは、当該第2リンク部13Bを第1リンク部13Aに対して回転可能に保持する。第2回転保持部13Dは、第2リンク部13Bが回転する際の回転の中心軸として機能する。
【0028】
なお、それぞれの第2回転保持部13Dは、第1回転保持部13Cまでの距離が等しく設定される。換言すれば、第1回転保持部13C及び2つの第2回転保持部13Dを結ぶ三角形は、第1回転保持部13Cを頂角とする二等辺三角形になるように構成される。
【0029】
ここで、図4及び図6に示すように、収納部17における第1リンク部13A付近の部位には、鉛直方向に延びる溝であるリンク溝17Cを備える。また、第1リンク部13Aは、リンクリブ部13Fを備える。リンクリブ部13Fは、2つの第2回転保持部13Dの間に紙面の手前側及び奥側に突出し、鉛直方向に延びるリブである。リンクリブ部13Fは、リンク溝17Cに挿入された状態で配置され、リンク溝17Cに沿って鉛直方向にのみ移動可能に構成される。
【0030】
第2リンク部13Bは、一端側に第2回転保持部13Dが備えられ、他端側に第3回転保持部13Eが備えられた板状の部材である。第3回転保持部13Eは、当該第2リンク部13Bをスライド部14,15に対して回転可能に保持する。
【0031】
なお、第2リンク部13Bにおいて、第2回転保持部13Dから第3回転保持部13Eまでの長さは、第1回転保持部13Cから第2回転保持部13Dまでの長さよりも長くなるように設定される。この構成により、ロッド12の移動量に対するスライド部14,15の移動量がより大きくなるように設定している。
【0032】
スライド部14,15は、略水平方向にのみ移動可能に設定された部材である。図2に示す例では、スライド部14,15は、紙面の左右方向のみに移動可能に構成される。
具体的には、スライド部14,15は、図4図6に示すように、それぞれ、長手方向の上端及び下端に沿って、移動方向の左右(図5図6では紙面手前側及び奥側)に突出するリブ部14A,15Aを備える。また、収納部17は、内面に水平方向に沿った複数の溝部17A,17Bを備える。溝部17A,17Bは、スライド部14,15の移動可能な位置に沿って、それぞれ複数備えられる。スライド部14,15は、リブ部14A,15Aが溝部17A,17Bに挿入された状態で、溝部17A,17Bに沿って摺動可能に構成される。
【0033】
リンク機構13は、ロッド12が引き下げられた状態では、図5に示すように、第3回転保持部13Eがロッド12に近づいた状態、つまり、スライド部14,15がロッド12側に引き付けられた状態となる。一方で、リンク機構13は、ロッド12が引き上げられた状態では、図6に示すように、第3回転保持部13Eがロッド12から離れた状態、つまり、スライド部14,15がロッド12から離れるように押し広げられた状態となる。
【0034】
[1-4.キャスタ装置の構成]
それぞれのキャスタ30は、図2及び図3に示すように、ハウジング41に設けられた駆動軸部31に保持され、駆動軸L1を中心に回転可能な1組の車輪部32を備える。1組の車輪部32は、ピン35を挟んで対向して配置されており、駆動軸部31を介してハウジング41に装着される。
【0035】
車輪部32は、図3に示すように、内周側に位置する内周車輪部33と、外周側に位置する外周車輪部34とを備える。外周車輪部34は、外周が床面に接する。外周車輪部34は、内周側に内周車輪部33が隙間なく配置され、内周車輪部33と一体に回転するよう構成される。外周車輪部34は、内周車輪部33よりも柔らかい素材で形成される。
【0036】
内周車輪部33は、内周面に複数の溝部33Aを備える。内周車輪部33は、内歯車を模した形状になるように複数の溝部33Aが配置される。複数の溝部33Aは、車輪部32の駆動軸L1に沿う回転とともに連動して回転するように構成される。なお、溝部33Aは、車輪部32の回転と連動していれば、別の部材に設けられていてもよい。例えば、溝部33Aは、車輪部32の回転と連動する別の回転体に設けられていてもよい。また、車輪部32は、外周車輪部34及び内周車輪部33に相当する部位が一体に構成されていてもよい。この場合、車輪部32は、外周部分が内周部分よりも柔らかい素材で形成されていることが好ましい。
【0037】
ハウジング41は、図3に示すように、旋回軸部41Aと、車輪保持部41Bと、台座部41Cと、押下孔41Dと、ガイド孔41Eとを備える。押下孔41D及びガイド孔41Eについては後述する。また、ハウジング41には、ピン35及び第1コイルバネ36が配置される。
【0038】
旋回軸部41Aは、円柱状に形成された部位であり、鉛直方向に沿う中心が旋回軸L2となる。つまり、ハウジング41は、キャスタ30とともに旋回軸L2に沿って回転し、移動机1を任意の位置に移動させることを容易にする。
【0039】
車輪保持部41Bは、駆動軸部31、ピン35、及び第1コイルバネ36を保持し、これらの外側を覆う部位である。詳細には、車輪保持部41Bは、ピン保持部41F、中心保持部41G、他端保持部41Hを備える。
【0040】
ピン保持部41Fは、ピン35を上下にスライド可能に保持するための溝として構成される。中心保持部41Gは、第1コイルバネ36の中心部、つまり、第1コイルバネ36のうちの巻回された部位を保持するように構成される。他端保持部41Hは、第1コイルバネ36のうちピン35と当接しない側の端部を保持するように構成される。
【0041】
ピン35は、棒状に形成される。ピン35は、当該ピン35の端部が複数の溝部33Aのうちの何れかに噛み合うロック状態と当該ピン35の端部が溝部33Aから離れる解除状態との間で変位可能に構成される。
【0042】
第1コイルバネ36は、巻回された部位から直線的に延びる部位であって、他端保持部41Hに保持されていない側の端部が、ピン35を一方向に付勢するように構成される。ここでは、第1コイルバネ36は、ピン35を鉛直方向上側に付勢する。なお、当該移動机1は、第1コイルバネ36に換えて、ピン35を一方向に付勢するように構成された部材、例えば、板バネ、ゴム部材等を備えてもよい。
【0043】
[1-5.キャスタロック機構の構成]
キャスタ装置10は、キャスタロック機構40を備える。キャスタロック機構40は、キャスタ30の駆動軸L1に沿った回転、及び旋回軸L2に沿った回転を、ロック又は解除するための機構である。
【0044】
キャスタロック機構40は、図4に示すように、筐体20内部に配置され、内周側から順に、第2コイルバネ43、連動部50、カム部53、ガイド部57、を備える。
また、キャスタ装置10は筐体20の内部に、筒部20A及び複数の突起部20Bを備える。筒部20Aは、筐体20の天井側の内壁面から鉛直方向下向きに突出する円筒状の部位である。複数の突起部20Bは、それぞれ筒部20Aの外周面からさらに外側に向けて突出する部位であり、それぞれ異なる方向に突出する。複数の突起部20Bは、筐体20の内壁面において鉛直方向下向きに突出する部位でもある。
【0045】
第2コイルバネ43は、旋回軸部41Aの外径よりもやや大きな内径を有するコイルバネとして構成され、旋回軸部41Aが挿通された状態で台座部41Cに載置される。第2コイルバネ43は、下端が台座部41Cに当接し、上端が連動部50の土台部50Aに当接し、押し縮められた状態で配置される。第2コイルバネ43は、連動部50を鉛直方向上側に付勢する。
【0046】
連動部50は、土台部50A、押下片50B、ガイド片50C、凸部50D、凹部50Eが一体に構成されている。なお、連動部50は、一体となって移動する複数の部材の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0047】
土台部50Aは、連動部50の鉛直方向における略中心に位置する円環状の部位である。土台部50Aには、旋回軸部41Aが挿通され、かつ、第2コイルバネ43が当接するように円環の中心の孔の大きさが設定される。
【0048】
押下片50B及びガイド片50Cは、土台部50Aから鉛直方向下側に突出する棒状の部位である。ハウジング41の台座部41Cには、押下片50B及びガイド片50Cの大きさに略一致する押下孔41D及びガイド孔41Eが形成されており、押下片50B及びガイド片50Cは、押下孔41D及びガイド孔41Eにそれぞれ挿入される。この構成により、連動部50は、旋回軸L2に沿って、ハウジング41とともに回転するように構成される。
【0049】
押下片50Bは、押下孔41Dよりも鉛直方向下側で、ピン35に当接し、連動部50全体の上下動に連動してピン35を上下に変位させる。
凸部50D及び凹部50Eは、土台部50Aから鉛直方向上側に突出する円筒状の部位である。連動部50は、円筒状の部位の上端の複数個所が削られた形状に形成されることで、削られた部位のそれぞれが凹部50Eとなり、残された部位が凸部50Dとなる。
【0050】
凹部50Eは、連動部50が上下動することで、筐体20内の突起部20Bと噛み合う状態と、突起部20Bから離れる状態との間で遷移できるように構成される。
カム部53は、連動部50の土台部50Aの上側に接するように配置される部材である。カム部53は、上段面53Aと、円筒部53Bと、テーパ部53Cと、下段面53Dとを備える。円筒部53Bは、連動部50の凸部50D及び凹部50Eが挿入可能な内径を有するとともに、所定の厚みを有する円筒として構成される。円筒部53Bの厚みは、連動部50の上下動に必要とされる移動量に応じて設定される。
【0051】
上段面53Aは、水平面と略平行な面であって、円筒部53Bの上端と概ね一致するように構成された面である。上段面53Aは、鍬形部55から遠い側に配置される。
下段面53Dは、水平面と略平行な面であって、円筒部53Bの下端と概ね一致するように構成された面である。下段面53Dは、鍬形部55から近い側に配置される。
【0052】
テーパ部53Cは、上段面53Aと下段面53Dとを傾斜面で接続する部位である。
ここで、スライド部14,15におけるリンク機構13とは反対側の端部には、鍬形部55が接続されている。鍬形部55はスライド部14,15と連動して水平方向に変位する。鍬形部55は、図4に示すように、スライド部14,15の反対側に、枝分かれすることで形成された複数の枝部55Aを有する。
【0053】
複数の枝部55Aは、移動方向の左右に分岐した形状に形成されており、それぞれの枝部55Aは、下面がカム部53の上面と当接するように配置される。枝部55Aは、鍬形部55の水平方向の位置に応じて、上段面53A、テーパ部53C、下段面53Dの何れかの部位に当接する。
【0054】
この際、枝部55Aが接するカム部53の部位に応じて、カム部53を鉛直方向に変位させる。詳細には、枝部55Aが下段面53Dに当接しているときに、カム部53は最も上方に位置し、枝部55Aが上段面53Aに当接しているときに、カム部53は最も下方に位置する。
【0055】
ガイド部57は、筒部20A及び突起部20Bの周囲において、筐体20の内壁面に接するように配置される略円筒状の部材である。ガイド部57は、本体部57Aと、開口部57Bとを備える。
【0056】
本体部57Aは、旋回軸L2に沿う方向に中心軸を有する略円筒状の部位であり、内周面がカム部53の外周面と略一致するように構成される。つまり、本体部57Aは、カム部53が本体部57Aの内周面に沿って上下に摺動可能に構成される。
【0057】
開口部57Bは、鍬形部55の枝部55Aが挿入される部位である。開口部57Bは、鍬形部55が開口部57Bを通過するための必要最低限の大きさだけ開口する形状を備える。開口部57Bは、鍬形部55が挿入方向にのみ移動でき、鍬形部55が挿入方向に対して上下左右に移動することを抑制できるように構成される。
【0058】
[1-6.キャスタロック機構の作動]
図5に示す状態は、駆動軸L1に対する車輪部32の回転が抑制され、かつ、旋回軸L2に対するハウジング41の回転が抑制された状態を示す。この状態は、本開示でのロック状態、及び抑止状態に相当する。
【0059】
ここで、図2及び図4に示すように、スライド部材15の下部には、引掛部15Bが設けられており、引掛部15Bよりもリンク機構13側には、スプリング16が配置されている。スプリング16は、伸ばされたときに縮もうとする力を発生するように構成され、スプリング16の一端は引掛部15Bに接続され、スプリング16の他端は収納部17に接続される。
【0060】
移動机1は、このスプリング16による力により、ロッド12に外力が作用しない場合に、スライド部材15がロッド12側に引き付けられた状態、すなわち図5に示す状態になるように設定される。スプリング16が配置されたスライド部材15の動きは、リンク機構13を介してスプリング16が配置されていないスライド部材14にも伝達され、スライド部材14もロッド12側に引き付けられた状態になる。
【0061】
図5に示す状態では、ピン35が、車輪部32に設けられた複数の溝部33Aのうちの1つに入り込む状態となり、ピン35が車輪部32の回転方向には移動できないため、車輪部32は駆動軸L1に沿った回転ができない状態となる。また、図5に示す状態では、筐体20の突起部20Bが連動部50の凹部50Eの一部と噛み合い、連動部50及びハウジング41が旋回軸L2に沿って回転できない状態となる。
【0062】
つまり、図5に示す状態では、車輪部32の駆動軸L1に沿った回転と、ハウジング41の旋回軸L2に沿った回転との両方が同時に抑止されている。
一方で、図6に示す状態は、駆動軸L1に対する車輪部32の回転が許容され、かつ、旋回軸L2に対するハウジング41の回転が許容された状態を示す。この状態は、本開示での解除状態、及び許容状態に相当する。
【0063】
図6に示す状態では、図5に示す状態に対して、ロッド12及び第1リンク部13Aが上方に引き上げられている。そして、第2リンク部13Bは、スライド部14,15をロッド12から離れる方向にスライドさせている。
【0064】
スライド部14,15の移動に伴って、鍬形部55も水平方向に移動し、鍬形部55の枝部55Aは、カム部53を押し下げている。このカム部53の移動に伴って、連動部50も押し下げられる。この結果、連動部50の押下片50Bは、ピン35を押し下げ、ピン35は溝部33Aから離れた状態となる。このため、車輪部32は駆動軸L1に沿って回転可能な状態となる。
【0065】
また、この際、連動部50の凹部50Eは、筐体20の突起部20Bから離れた状態となる。このため、ハウジング41は、旋回軸L2に沿って回転可能な状態となる。つまり、本実施形態の移動机1では、ロッド12を上下に移動させるだけで、キャスタ30の駆動軸L1及び旋回軸L2に沿った回転を許容するか抑制するかを設定できる。
【0066】
また、ピン35は、図7に示すように、両端部が車輪部32の溝部33Aに係合可能に構成される。このような構成では、図7の破線で示すピン35Aに示すように、仮にピン35Aの一方側の端部が溝部33Aと他の溝部33Aとの間の山の部分に引っ掛かったとしても、他方側の端部は溝部33Aに収まる可能性を向上させることができる。
【0067】
[1-7.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本開示の一態様は、少なくとも1つのキャスタ30を有するキャスタ装置10である。キャスタ装置10は、複数の溝部33Aと、ピン35と、連動部50と、を備える。溝部33Aは、キャスタ30の駆動軸に沿う回転に連動して回転するように構成される。ピン35は、棒状に形成される。ピン35は、当該ピン35の端部が複数の溝部33Aのうちの何れかに噛み合うロック状態と当該ピン35の端部が溝部33Aから離れる解除状態との間で変位可能に構成される。連動部50は、キャスタ30をロック状態又は解除状態とするための外力に応じて変位し、ピン35と連動することによって、ピン35をロック状態及び解除状態との間で変位させるように構成される。
【0068】
このような構成によれば、連動部50を駆動することでピン35が駆動し、キャスタ30をロック状態と解除状態との間で遷移させることができる。この際、キャスタ30付近では、ピン35を駆動させればよいので、従来構成よりも、キャスタ30をロック及び解除するための構成を簡素化することができる。また、このような構成によれば、キャスタロック機構40のうちの車輪部32付近に配置すべき構成を小型化できるので、車輪部32を小径化することができる。
【0069】
(1b)本開示の一態様では、ピン35を一方向に付勢するように構成された第1コイルバネ36をさらに備える。連動部50は、ピン35とは離間可能に構成され、第1コイルバネ36による付勢力に抗するようにピン35を押圧することでピン35を変位させるように構成される。
【0070】
このような構成によれば、ピン35と連動部50とを離間可能とするため、一方の部材に加わる外力が他方の部材に伝わりにくくすることができる。よって、ピン35、連動部50等の各部材への振動の伝達を軽減でき、各部材への衝撃による負担を軽減することができる。
【0071】
(1c)本開示の一態様では、キャスタ30は、複数の溝部33Aが内周面に形成された1組の車輪部32が、ピン35を挟んで対向して配置される。ピン35は、ロック状態の際に、当該ピン35の長手方向の両端部が1組の車輪部32における溝部33Aにそれぞれ係合されうる。
【0072】
このような構成によれば、ピン35の両端部のうちの少なくともいずれかが、溝部33Aに噛み合う可能性を高めることができる。つまり、車輪32の駆動軸L1に沿った位置、換言すれば溝部33の位置によらず、車輪32がロックされやすく構成することができる。
【0073】
(1d)本開示の一態様では、少なくとも1つの駆動軸部31及びハウジング41と、筐体20と、連動部50と、をさらに備える。
駆動軸部31及びハウジング41は、キャスタ30を駆動軸に沿って回転可能に保持するように構成される。筐体20の筒部20Aは、駆動軸部31及びハウジング41を駆動軸と直交する旋回軸に沿って回転可能に保持するように構成される。連動部50及び突起部20Bは、駆動軸部31及びハウジング41の回転を抑止する抑止状態と駆動軸部31及びハウジング41の回転を許容する許容状態との間で遷移可能に構成される。
【0074】
このような構成によれば、キャスタ30が駆動軸に沿った回転だけでなく、旋回方向にも回転できる場合に、旋回方向の回転も抑止することができる。
【0075】
(1e)本開示の一態様では、連動部50及び突起部20Bは、突起部20Bと、連動部50の凹部50Eと、を備える。突起部20Bは、筐体20(特に筒部20A)に配置される。連動部50の凹部50Eは、突起部20Bと噛み合うことで抑止状態となり、突起部20Bから離れることで許容状態となるように構成される。
このような構成によれば、旋回方向の回転を、突起部20Bと連動部50の凹部50Eとが噛み合うことで抑止することができる。
【0076】
(1f)本開示の一態様では、連動部50の凹部50Eは、連動部50と一体に構成さる。
このような構成によれば、連動部50の凹部50Eを連動部50と一体に構成するので、部品点数を削減できる。また、このような構成によれば、駆動軸に沿った回転と旋回軸に沿った回転とを、同時にロック又は解除できる。
【0077】
(1g)本開示の一態様では、それぞれキャスタ30を備える複数の駆動軸部31及びハウジング41を備えてもよい。筐体20は、複数の駆動軸部31及びハウジング41を回転可能に保持してもよい。
【0078】
このような構成によれば、この筐体20に突起部20Bが配置され、旋回軸に沿った回転を抑止するので、キャスタ30のガタつきを抑制でき、強固に抑止状態を維持することができる。
【0079】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0080】
(2a)上記実施形態では、本開示のキャスタ装置10を、移動机1に採用したが、これに限定されるものではない。本開示のキャスタ装置10は、例えば、移動可能に構成したい家具や什器等の移動物、換言すればキャスタ30を備える任意の構成に採用することができる。家具としては、移動机1の他、椅子、タンス、本棚、ワードローブ等が挙げられる。また、什器としては、キャビネット、陳列棚、冷蔵庫、冷凍庫、受付台等が挙げられる。
【0081】
(2b)上記実施形態では、天板5の動き、或いはレバー9の操作による外力によってロッド12が作動するように構成したが、ロッド12を直接変位させる人の操作、或いはアクチュエータによる作動によってロッド12が作動するように構成してもよい。
【0082】
(2c)上記実施形態では、全体が均一の太さの丸棒状に形成されたピン35を採用したが、これに限定されるものではない。すなわち、本開示のピン35は、図8図10に示すピン35B,35C,35Dのように、少なくとも溝部33Aと噛み合う部分が棒状に形成されていてもよい。なお、図8図10では、ハッチング部分が溝部33Aと当接しうる部位である。
【0083】
例えば、図8に示すピン35Bでは、角棒状、換言すれば直方体に形成されている。ピン35Bは、ピン35Bの長手方向が駆動軸L1に沿うように配置され、かつ、鉛直方向での投影面積が最小になるように配置される。
また例えば、図9に示すピン35Cでは、溝部33Aと噛み合う部分のみが細い棒状であり、溝部33Aと噛み合わない部分が、上記の細い棒状よりも太い棒状に形成される。
また例えば、図10に示すピン35Dでは、鉛直方向下部が太い棒状に構成され、溝部33Aと噛み合う部分である鉛直方向上部が細い棒状に構成され、これらの組み合わせが一体に構成される。
【0084】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0085】
(2e)上述したキャスタ装置10の他、当該キャスタ装置10を構成要素とする家具、什器、移動物など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0086】
1…移動机、10…キャスタ装置、11…脚部、12…ロッド、13…リンク機構、13A…第1リンク部、13B…第2リンク部、13C…第1回転保持部、13D…第2回転保持部、13E…第3回転保持部、14,15…スライド部、20…筐体、20A…筒部、20B…突起部、30…キャスタ、31…駆動軸部、32…車輪部、33…内周車輪部、33A…溝部、34…外周車輪部、35,35A,35B,35C,35D…ピン、36…第1コイルバネ、40…キャスタロック機構、41…ハウジング、41A…旋回軸部、41B…車輪保持部、41C…台座部、41D…押下孔、41E…ガイド孔、41F…ピン保持部、41G…中心保持部、41H…他端保持部、43…第2コイルバネ、50…連動部、50A…土台部、50B…押下片、50C…ガイド片、50D…凸部、50E…凹部、53…カム部、55…鍬形部材、57…ガイド部、L1…駆動軸、L2…旋回軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10