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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075235
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】培養装置および培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/38 20060101AFI20220511BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20220511BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20220511BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C12M1/38 Z
C12M1/38
C12N1/14 B
C12N1/16 B
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185897
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田端 友紀
(72)【発明者】
【氏名】大坪 功
(72)【発明者】
【氏名】平野 明良
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA03
4B029AA07
4B029BB02
4B029BB06
4B029BB07
4B029CC02
4B029DF10
4B029EA12
4B029EA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AC20
4B065BC33
4B065BC39
4B065CA41
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】被培養物への水分供給をより適切に行って培養を促進させる。
【解決手段】培養空間51内に配置される被培養物に水分供給を行って培養する培養装置10は、培養空間51内に水分供給可能な空気通路21内に配置され、導電性高分子膜34bを有する基材34aを温度低下させることにより空気中の水分を導電性高分子膜34bに吸着する吸湿状態となり、基材34aを温度上昇させることにより導電性高分子膜34bに吸着した水分から粒径が50ナノメートル以下の微細水を放出する放湿状態となる微細水発生カートリッジ30と、微細水発生カートリッジ30を吸湿状態とする吸湿制御と、微細水発生カートリッジ30を放湿状態とし放出した微細水を培養空間51内に供給して被培養物に照射する放湿制御と、を行う制御部60と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養空間内に配置される被培養物に水分供給を行って培養する培養装置であって、
前記培養空間内に水分供給可能な通路内に配置され、導電性高分子膜を有する基材を温度低下させることにより空気中の水分を前記導電性高分子膜に吸着する吸湿状態となり、前記基材を温度上昇させることにより前記導電性高分子膜に吸着した水分から粒径が50ナノメートル以下の微細水を放出する放湿状態となる微細水発生部と、
前記微細水発生部を前記吸湿状態とする吸湿制御と、前記微細水発生部を前記放湿状態とし放出した前記微細水を前記培養空間内に供給して前記被培養物に照射する放湿制御と、を行う制御部と、
を備える培養装置。
【請求項2】
請求項1に記載の培養装置であって、
前記微細水発生部に通電可能な通電部と、
前記通路内に配置される送風部と、
を備え、
前記制御部は、前記放湿制御を行う場合、通電による前記基材の温度上昇により前記微細水発生部を前記放湿状態として前記微細水が送風により前記培養空間内に供給されるように前記通電部と前記送風部とを制御し、前記吸湿制御を行う場合、通電停止による前記基材の温度低下により前記微細水発生部を前記吸湿状態とするように前記通電部を制御する
培養装置。
【請求項3】
請求項2に記載の培養装置であって、
前記通路は、前記微細水発生部と前記送風部とが配置された主通路と、該主通路と前記培養空間とを連通する連通路と、前記連通路を介して前記主通路と前記培養空間とを空気が循環するように連通する循環状態と該連通路を介した連通を遮断する遮断状態とを切り替え可能な切替部と、前記主通路の一端側で貯水する貯水部と、が設けられ、
前記制御部は、前記吸湿制御を行う場合、前記切替部を前記遮断状態として前記主通路に前記貯水部側から空気が流入して前記微細水発生部に流れるように前記送風部を制御し、前記放湿制御を行う場合、前記切替部を前記循環状態として前記微細水を含む空気が循環するように前記送風部を制御する
培養装置。
【請求項4】
請求項3に記載の培養装置であって、
前記培養空間には、該培養空間の内外を連通する連通口を開閉する開閉部と、内部の湿度を検出する湿度センサと、が設けられており、
前記切替部は、前記主通路と前記培養空間との間を一方向に空気が流通するように前記連通路の一部を連通する連通状態に切り替え可能であり、
前記制御部は、前記吸湿制御と前記放湿制御を行う場合、前記開閉部に前記連通口を閉鎖させ、前記湿度センサの検出湿度が所定湿度を超えた場合、前記切替部を前記連通状態とし前記開閉部に前記連通口を開放させて前記主通路に流入した空気が前記連通路から前記培養空間内に流通して前記連通口から流出するように前記送風部を制御する
培養装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の培養装置であって、
前記通路は、前記培養空間内に空気を放出する出口側の内径が大きくなるように形成され、
前記制御部は、前記吸湿制御では、所定風量となるように前記送風部を制御し、前記放湿制御では、前記所定風量よりも小さな風量となるように前記送風部を制御する
培養装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の培養装置であって、
前記培養空間内に水分供給を行う場合の前記通路内の空気の流れにおいて前記微細水発生部よりも下流側に配置され、該通路を通過する空気を熱交換する熱交換部を備える
培養装置。
【請求項7】
培養空間内に配置される被培養物に水分供給を行って培養する培養方法であって、
導電性高分子膜を有する基材を温度低下させることにより空気中の水分を前記導電性高分子膜に吸着させる吸湿状態とする吸湿ステップと、
前記基材を温度上昇させることにより前記導電性高分子膜に吸着した水分から粒径が50ナノメートル以下の微細水を放出する放湿状態とし、放出した前記微細水を前記培養空間内に供給して前記被培養物に照射する放湿ステップと、
を行う培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養装置および培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カビや酵母、細菌などの微生物が、食用や薬用など様々な分野で広く利用されている。例えば、特許文献1には、シイタケ菌を培養するシステムとして、吸気された空気に加湿して栽培室内に送風する装置を備え、栽培室内の湿度を所定値以上に維持しながら、シイタケ菌を栽培(培養)するものが記載されている。また、特許文献2には、チーズに紅麹菌を接種し、所定湿度および所定温度で紅麹菌を培養させて、チーズ表面を紅麹菌で覆うものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-137273号公報
【特許文献2】特許第2871882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、被培養物を培養するには、湿度を適切に管理するなど環境を整えることが重要である。ただし、空気に含まれる水滴の粒径によっては、被培養物の水分吸収が進まず培養が促進されにくくなることが考えられる。このため、単に湿度を管理するだけでなく、培養を促進させるために、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、被培養物への水分供給をより適切に行って培養を促進させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の培養装置は、
培養空間内に配置される被培養物に水分供給を行って培養する培養装置であって、
前記培養空間内に水分供給可能な通路内に配置され、導電性高分子膜を有する基材を温度低下させることにより空気中の水分を前記導電性高分子膜に吸着する吸湿状態となり、前記基材を温度上昇させることにより前記導電性高分子膜に吸着した水分から粒径が50ナノメートル以下の微細水を放出する放湿状態となる微細水発生部と、
前記微細水発生部を前記吸湿状態とする吸湿制御と、前記微細水発生部を前記放湿状態とし放出した前記微細水を前記培養空間内に供給して前記被培養物に照射する放湿制御と、を行う制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の培養装置は、微細水発生部を吸湿状態とする吸湿制御と、微細水発生部を放湿状態とし放出した微細水を培養空間内に供給して被培養物に照射する放湿制御と、を行う。これにより、粒径が50ナノメートル以下の微細水を被培養物に照射して培養を行うことができる。このような粒径の微細水は、被培養物が水分を吸収し易いサイズと考えられるから、被培養物への水分供給をより適切に行って培養を促進させることができる。
【0009】
本発明の培養装置において、前記微細水発生部に通電可能な通電部と、前記通路内に配置される送風部と、を備え、前記制御部は、前記放湿制御を行う場合、通電による前記基材の温度上昇により前記微細水発生部を前記放湿状態として前記微細水が送風により前記培養空間内に供給されるように前記通電部と前記送風部とを制御し、前記吸湿制御を行う場合、通電停止による前記基材の温度低下により前記微細水発生部を前記吸湿状態とするように前記通電部を制御するものとしてもよい。こうすれば、通電の有無により微細水発生部の状態を容易に切り替えて、送風により培養空間内に微細水を十分に供給することができるから、被培養物の培養をより促進させることができる。
【0010】
本発明の培養装置において、前記通路は、前記微細水発生部と前記送風部とが配置された主通路と、該主通路と前記培養空間とを連通する連通路と、前記連通路を介して前記主通路と前記培養空間とを空気が循環するように連通する循環状態と該連通路を介した連通を遮断する遮断状態とを切り替え可能な切替部と、前記主通路の一端側で貯水する貯水部と、が設けられ、前記制御部は、前記吸湿制御を行う場合、前記切替部を前記遮断状態として前記主通路に前記貯水部側から空気が流入して前記微細水発生部に流れるように前記送風部を制御し、前記放湿制御を行う場合、前記切替部を前記循環状態として前記微細水を含む空気が循環するように前記送風部を制御するものとしてもよい。こうすれば、吸湿制御を行う場合、貯水部から蒸発した水分を利用して導電性高分子膜に十分に吸着させることができる。また、吸湿制御を遮断状態で行うから、送風部の風量を吸湿に適した風量とすることができる。また、放湿制御を循環状態で行うから、微細水発生部から放出した微細水が外部に放出されるのを抑制して被培養物に照射することができるから、培養をより促進することができる。
【0011】
本発明の培養装置において、前記培養空間には、該培養空間の内外を連通する連通口を開閉する開閉部と、内部の湿度を検出する湿度センサと、が設けられており、前記切替部は、前記主通路と前記培養空間との間を一方向に空気が流通するように前記連通路の一部を連通する連通状態に切り替え可能であり、前記制御部は、前記吸湿制御と前記放湿制御を行う場合、前記開閉部に前記連通口を閉鎖させ、前記湿度センサの検出湿度が所定湿度を超えた場合、前記切替部を前記連通状態とし前記開閉部に前記連通口を開放させて前記主通路に流入した空気が前記連通路から前記培養空間内に流通して前記連通口から流出するように前記送風部を制御するものとしてもよい。こうすれば、培養空間内の湿度が、培養に適した湿度を超えても、容易に湿度調整することができるから、培養の促進が阻害されるのを抑制することができる。
【0012】
本発明の培養装置において、前記通路は、前記培養空間内に空気を放出する出口側の内径が大きくなるように形成され、前記制御部は、前記吸湿制御では、所定風量となるように前記送風部を制御し、前記放湿制御では、前記所定風量よりも小さな風量となるように前記送風部を制御するものとしてもよい。こうすれば、被培養物に与える風圧を抑えて、適切に微細水を照射することができる。
【0013】
本発明の培養装置において、前記培養空間内に水分供給を行う場合の前記通路内の空気の流れにおいて前記微細水発生部よりも下流側に配置され、該通路を通過する空気を熱交換する熱交換部を備えるものとしてもよい。こうすれば、微細水を放出するために基材の温度を上昇させても、温度の高い空気が筐体の内部に流入するのを抑制することができる。このため、湿度だけでなく、培養に適した温度を保つことができる。
【0014】
本発明の培養方法は、
培養空間内に配置される被培養物に水分供給を行って培養する培養方法であって、
導電性高分子膜を有する基材を温度低下させることにより空気中の水分を前記導電性高分子膜に吸着させる吸湿ステップと、
前記基材を温度上昇させることにより前記導電性高分子膜に吸着した水分から粒径が50ナノメートル以下の微細水を放出する放湿状態とし、放出した前記微細水を前記培養空間内に供給して前記被培養物に照射する放湿ステップと、
を行うことを要旨とする。
【0015】
本発明の培養方法では、導電性高分子膜を有する基材を温度低下させることにより空気中の水分を導電性高分子膜に吸着させる吸湿ステップと、基材を温度上昇させることにより導電性高分子膜に吸着した水分から粒径が50ナノメートル以下の微細水を放出する放湿状態とし、放出した微細水を培養空間内に供給して被培養物に照射する放湿ステップと、を行う。これにより、上述した培養装置と同様に、粒径が50ナノメートル以下の微細水を被培養物に照射して培養を行うことができるから、被培養物への水分供給をより適切に行って培養を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】培養装置10の構成の概略を示す構成図である。
図2】微細水発生カートリッジ30の構成の概略を示す構成図である。
図3】微細水供給処理の一例を示すフローチャートである。
図4】吸湿制御を行う際の作動の様子を示す説明図である。
図5】放湿制御を行う際の作動の様子を示す説明図である。
図6】湿度調整制御を行う際の作動の様子を示す説明図である。
図7】実施例の培養結果を示す写真である。
図8】比較例1の培養結果を示す写真である。
図9】比較例2の培養結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について説明する。図1は、培養装置10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、微細水発生カートリッジ30の構成の概略を示す構成図である。培養装置10は、微細水を供給して培養を促進する装置として構成されており、微細水を供給する微細水供給ユニット20と、被培養物を収容するシャーレSなどの容器が培養空間51内に配置される培養ケース50と、装置全体を制御する制御部60とを備える。なお、被培養物は、カビや酵母、細菌などの微生物の他、生体細胞、組織片などが挙げられる。
【0018】
微細水供給ユニット20は、空気通路21と、微細水発生カートリッジ30と、通電回路35と、ファン40と、温調カートリッジ45とを備える。空気通路21は、主通路22と、第1連通路24と、第2連通路27とにより構成されており、第1切替部25と、第2切替部28と、貯水タンク47と、フィルタ49a,49bとが設けられている。主通路22は、両端が開口した筒状の通路である。主通路22には、一方側の第1開口22aから他方側の第2開口22bに向かって、貯水タンク47、フィルタ49a、温調カートリッジ45、微細水発生カートリッジ30、ファン40、フィルタ49bの順に設けられている。
【0019】
第1連通路24と第2連通路27は、主通路22と培養ケース50(培養空間51)とを連通する通路である。第1連通路24は、第1開口22a側のフィルタ49aと温調カートリッジ45との間で主通路22に接続されると共に、培養空間51内まで延在している。この第1連通路24は、培養空間51内の出口24a側が、主通路22との接続側よりも内径が大きくなるように形成されている。また、培養空間51内では、第1連通路24の出口24aの下方にシャーレSが配置される。出口24aは、シャーレSを覆うようにフード状に形成され、複数の貫通孔23aが形成されたパンチングプレート23が取り付けられている。第2連通路27は、第2開口22b側のフィルタ49bとファン40との間で主通路22に接続されると共に培養ケース50に接続されている。
【0020】
第1切替部25は、図示しないモータの駆動により作動する切替板26を有する。第1切替部25は、切替板26が主通路22の内壁の一部を構成する通常位置(初期位置)にある場合、第1連通路24を閉鎖(遮断)すると共に、第1開口22aを介した空気の流通を許容するように第1開口22a側を開放する(図1の実線参照)。また、第1切替部25は、モータの駆動により、切替板26が通常位置から90度回転した作動位置に作動した場合、第1連通路24を開放すると共に、第1開口22aを介した空気の流通を阻止するように第1開口22a側を閉鎖する(図1の点線参照)。
【0021】
第2切替部28は、図示しないモータの駆動により作動する切替板29を有する。第2切替部28は、切替板29が主通路22の内壁の一部を構成する通常位置(初期位置)にある場合、第2連通路27を閉鎖(遮断)すると共に、第2開口22bを介した空気の流通を許容するように第2開口22b側を開放する(図1の実線参照)。また、第2切替部28は、モータの駆動により切替板29が通常位置から90度回転した作動位置に作動した場合、第2連通路27を開放すると共に、第2開口22bを介した空気の流通を阻止するように第2開口22b側を閉鎖する(図1の点線参照)。
【0022】
微細水発生カートリッジ30は、図2に示すように、主通路22内に配置可能な外径の円筒状のケース32と、ケース32内に設けられた微細水発生素子34とを備える。微細水発生素子34は、基材34aと、基材34aの表面に形成された導電性高分子膜34bとを備える。
【0023】
基材34aは、ステンレス系金属や銅系金属などの金属材料、炭素材料、導電性セラミックス材料などの導電性を有する材料で形成されている。本実施形態では、アルミニウムが添加されたステンレス鋼の金属箔を用いる。なお、微細水発生素子34は、空気を流通可能であって基材34a(導電性高分子膜34b)の表面積ができるだけ大きくなるように、波板状やハニカム状、渦巻き状などに形成されている。基材34aには、電源とスイッチとを含む通電回路35が接続されている。通電回路35は、スイッチがオンされると、基材34aへ通電する通電状態となり、スイッチがオフされると、基材34aへの通電を遮断する非通電状態となる。通電回路35(スイッチ)は、制御部60によりオンオフされる。
【0024】
導電性高分子膜34bは、チオフェン系の導電性高分子などの導電性を有する高分子化合物で形成されている。本実施形態では、チオフェン系の導電性高分子のうち、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸) )により形成されている。PEDOT/PSSは、PEDOTのコアと、水素結合可能な酸性官能基であるスルホン酸基のシェルとを有するコアシェル構造である。また、導電性高分子膜34b中では、PEDOT/PSSのシェルが整列した積層構造をとり、各シェルの間に例えば2ナノメートルなどのナノメートルサイズの流路であるナノチャンネルを形成する。このナノチャンネル内には、スルホン酸基が多く存在するため、導電性高分子膜34bの表面に存在する水分は、表面の水分量が多く内部の水分量が少ない場合に、表面と内部の濃度差によってナノチャンネル内のスルホン酸基を伝って内部に移動する。これにより、導電性高分子膜34bが水分を吸着する。また、内部に水分が吸着された状態で、表面の水分量が少なく内部の水分量が多い場合に、水分は表面と内部の濃度差によってナノチャンネル内のスルホン酸基を伝って表面に移動する。これにより、導電性高分子膜34bから水分が微細水として放出される。また、導電性高分子膜34bの温度が上昇した状態では、濃度差のみで移動する場合に比して水分(微細水)の速やかな放出が促され、導電性高分子膜34bの温度が低下した状態では、濃度差のみで移動する場合に比して水分の速やかな吸着が促される。このように、微細水発生カートリッジ30(微細水発生素子34)は、温度低下により導電性高分子膜34bに空気中の水分を吸着する吸湿状態に変化し、吸着した水分を温度上昇により導電性高分子膜34bから放出する放湿状態に変化する。なお、導電性高分子膜34bの厚みは、必要な微細水の吸着量(放出量)に応じて適宜定めることができる。例えば、導電性高分子膜34bの厚みが1~30マイクロメートルなどとなるように形成される場合、数秒から数10秒程度の時間で、微細水を放出するのに十分な水分を吸着することができるものとなる。
【0025】
また、微細水発生カートリッジ30は、微細水発生素子34の導電性高分子膜34bから、水粒子の粒径が50ナノメートル以下、例えば粒径が2ナノメートル以下であって、無帯電の微細水を放出する。このような粒径となる理由は、ナノチャンネルのサイズが2ナノメートルまたはそれ以下のサイズであるため、導電性高分子膜の温度上昇によるナノチャンネル内の水の運動性向上、圧力上昇により、ナノチャンネルから水分が飛び出す現象のためと考えられる。また、飛び出した後に水粒子同士が凝集しても、その粒径は50ナノメートル以下の範囲に分布するものとなっている。このような微細水発生カートリッジ30(導電性高分子膜34b)の微細水発生の詳細な説明は、本願出願人の特願2018-172166号の明細書などに記載されているため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0026】
ファン40は、第1回転方向の回転駆動により、第1開口22aからフィルタ49aを通して主通路22内に吸入した空気を第2開口22b側に向けて送風する。また、ファン40は、第1回転方向とは逆の第2回転方向の回転駆動により、第2開口22bからフィルタ49bを通して主通路22内に吸入した空気を第1開口22a側に向けて送風する。ファン40は、図示しないモータにより回転駆動し、制御部60によりPWM(Pulse Width Modulation)制御によって制御される。なお、ファン40は、プロペラファンでもよいし、シロッコファンなどでもよい。
【0027】
温調カートリッジ45は、大きな熱容量を有すると共に高い熱交換効率を有するように、金属材料により例えば波板状やハニカム状、渦巻き状などに形成されている。上述したように、温調カートリッジ45は、微細水発生カートリッジ30よりも第1開口22a側(図1の右側)に配置されている。このため、ファン40の第2回転方向の回転駆動により、微細水発生カートリッジ30を通過して温調カートリッジ45へ流れた空気は、温調カートリッジ45を通過する際に冷却される。
【0028】
貯水タンク47は、第1開口22aとフィルタ49aとの間に水を貯留可能に形成されており、蒸発した水分が主通路22内に放出される。この水分は、ファン40の第1回転方向の回転駆動により、第1開口22aから吸入される空気と共にフィルタ49aを通り微細水発生カートリッジ30に向かって流れる。
【0029】
培養ケース50は、培養空間51内の湿度を検出する湿度センサ52a~52cと、培養ケース50の側壁(例えば左壁)の一部に形成され培養空間51の内外を連通する連通口50aと、連通口50aの開閉を切り替える切替部(開閉部)54と、連通口50aに取り付けられたフィルタ58とを備える。湿度センサ52aは、第1連通路24の出口24aの近傍即ちシャーレSに供給される空気の湿度を検出する。湿度センサ52bは、培養空間51内の上部の湿度を検出する。湿度センサ52cは、連通口50aの近傍の湿度を検出する。
【0030】
切替部54は、図示しないモータの駆動により作動する切替板55を有する。切替部54は、切替板55が培養ケース50の側壁の一部を構成する通常位置(初期位置)にある場合、連通口50aを閉鎖して培養空間51の内外の連通を遮断する(図1の実線参照)。また、切替部54は、モータの駆動により、切替板55が通常位置から90度外側に回転した作動位置に作動した場合、連通口50aを開放して、培養空間51の内外を連通する(図1の点線参照)。
【0031】
制御部60は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポートを備える。制御部60には、スタートスイッチ62からの操作信号や風量調節スイッチ64からの操作信号、湿度センサ52a~52cからの検出信号(湿度H)などが入力ポートを介して入力されている。ここで、スタートスイッチ62は、培養装置10の運転を開始するためのスイッチである。風量調節スイッチ64は、ファン40から培養ケース50に送風される風量を調節するためのスイッチである。また、制御部60からは、ファン40を回転駆動するモータへの駆動信号や通電回路35のスイッチへの駆動信号、第1切替部25や第2切替部28,切替部54の各モータへの駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0032】
次に、こうして構成された培養装置10の動作について説明する。図3は微細水供給処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、培養装置10の電源がオンの状態でスタートスイッチ62が操作された場合に、制御部60により実行される。微細水供給処理では、制御部60は、まず、空気通路21を吸湿用の連通状態とし、微細水発生カートリッジ30への通電をオフで、所定風量(第1風量)となるようにファン40を駆動させて導電性高分子膜34bに水分を吸着させる吸湿制御(通常吸湿制御)を行って(S100)、所定の吸湿時間Taが経過するのを待つ(S110)。
【0033】
図4は、吸湿制御を行う際の作動の様子を示す説明図である。図示するように、第1切替部25が第1連通路24を閉鎖して第1開口22a側を開放し、第2切替部28が第2連通路27を閉鎖して第2開口22b側を開放する。この状態で、制御部60は、ファン40を第1回転方向に回転駆動させる。このため、第1開口22aから主通路22内に吸入した空気が第2開口22bに向けて流通するから(図4の矢印参照)、貯水タンク47から蒸発した水分もフィルタ49aを通って微細水発生カートリッジ30に向かって流れる。また、制御部60は、通電回路35(スイッチ)をオフとする。このため、基材34aへの通電を遮断する非通電状態となり、導電性高分子膜34bの温度が低下して水分の吸着が促される。このように、吸湿制御では、空気通路21と培養ケース50(培養空間51)との連通を遮断した遮断状態で、微細水発生カートリッジ30への水分の吸着を促す。
【0034】
制御部60は、S110で吸湿時間Taが経過したと判定すると、空気通路21を放湿用の連通状態とし、微細水発生カートリッジ30への通電をオンで、所定風量よりも小さな風量(第2風量)となるようにファン40を駆動させて導電性高分子膜34bから放出させた微細水を培養空間51内に供給させる放湿制御(通常放湿制御)を行う(S120)。また、制御部60は、放湿制御を行うと、培養空間51内の湿度Hが所定湿度Hrefを超えたか否かを判定(監視)しながら(S130)、所定の放湿時間Tbが経過するのを待つ(S140)。なお、湿度Hは、3つの湿度センサ52a~52cの各検出値のうちいずれか1の検出値を用いてもよいし、各検出値から導出された値(例えば最高値や平均値など)を用いてもよい。本実施形態では、第1連通路24の出口24a近傍の湿度センサ52aの検出値を用いる。なお、被培養物の種類などにより培養に適した目標湿度を定めることができるから、所定湿度Hrefは目標湿度に基づいて適宜設定することができる。例えば、目標湿度に対し10~15%程度高い値が所定湿度Hrefに設定される。なお、S130の湿度Hの監視を吸湿制御中に行ってもよい。
【0035】
図5は、放湿制御を行う際の作動の様子を示す説明図である。図示するように、第1切替部25が第1連通路24を開放して第1開口22a側を閉鎖し、第2切替部28が第2連通路27を開放して第2開口22b側を閉鎖する。このため、主通路22は、第1開口22aや第2開口22bを介した空気が流通がなく、第1連通路24と第2連通路27との間で空気が流通可能となる。この状態で、制御部60は、ファン40を、第2回転方向に回転駆動させる。このため、ファン40から送風された空気が微細水発生カートリッジ30と温調カートリッジ45とを順に通って第1連通路24から培養空間51内に流れ、第2連通路27を通って主通路22に戻る。即ち、主通路22と第1連通路24と培養ケース50と第2連通路27とを循環するように空気が流れる(図5の矢印参照)。また、制御部60は、通電回路35(スイッチ)をオンとする。このため、基材34aへ通電する通電状態となり、導電性高分子膜34bの温度が上昇して微細水の放出が促される。放出された微細水は、送風される空気によって培養空間51内に供給され、シャーレS内の被培養物に照射される。このように、放湿制御では、空気通路21と培養空間51内とを空気が循環するように連通する循環状態として、微細水発生カートリッジ30から放出された微細水を被培養物に照射する。なお、吸湿制御や放湿制御では、培養ケース50の切替部54は、切替板55を通常位置として連通口50aを閉鎖している。
【0036】
制御部60は、S140で放湿時間Tbが経過したと判定すると、S100に戻り放湿制御を行う。このように、制御部60は、吸湿制御と放湿制御とを、交互に繰り返し行うのである。吸湿時間Taや放湿時間Tbは、微細水発生カートリッジ30の吸湿能力(放湿能力)や培養ケース50(培養空間51)のサイズ、被培養物の種類などに応じて適宜設定すればよい。特に限定するものではないが、例えば吸湿時間Taは、放湿時間Tbの2倍程度の時間に定められており、放湿時間Tbを30秒や1分とした場合に、吸湿時間Taが1分や2分などに定められている。また、制御部60は、S130で培養空間51内の湿度Hが所定湿度Hrefを超えたと判定すると、空気通路21を調整用の連通状態とし、微細水発生カートリッジ30への通電をオフで、所定風量よりも小さな風量(第2風量)でファン40を駆動させて培養空間51内に外気を循環させる湿度調整制御を行う(S150)。
【0037】
図6は、湿度調整制御を行う際の作動の様子を示す説明図である。図示するように、第1切替部25は、放湿制御と同様に第1連通路24を開放して第1開口22a側を閉鎖し、第2切替部28は、吸湿制御と同様に第2連通路27を閉鎖して第2開口22b側を開放する。また、培養ケース50の切替部54は、連通口50aを開放して培養空間51の内外を連通する。この状態で、制御部60は、ファン40を第2回転方向に回転駆動させる。このため、第2開口22bから流入した空気(外気)が第1連通路24から培養空間51内に流通して連通口50aから外部に流出する(図6の矢印参照)。また、制御部60は、通電回路35(スイッチ)をオフとする。このため、導電性高分子膜34bの温度が低下していくから、微細水の放出が抑制される。このように、湿度調整制御では、空気通路21と培養ケース50(培養空間51)とを一方向に空気が流通するように連通する連通状態(一部連通状態)とし、空気通路21から培養ケース50内に外気を導入して、培養空間51内の湿度が低くなるように調整する。なお、吸湿制御や放湿制御、湿度調整制御のファン40の風量を、風量調節スイッチ64でそれぞれ設定可能としてもよい。
【0038】
こうして湿度調整制御を行うと、制御部60は、湿度調整が完了するのを待ち(S160)、湿度調整が完了したと判定すると、S100に戻り処理を繰り返す。S160では、培養空間51内の湿度Hが所定湿度Hrefを下回った場合や、所定湿度Hrefよりも若干低い完了判定用の湿度を下回った場合に、湿度調整が完了したと判定する。あるいは、湿度調整制御を開始してからの経過時間が、所定の調整時間に到達した場合に、湿度調整が完了したと判定してもよい。
【0039】
以上説明した培養装置10では、微細水発生カートリッジ30を吸湿状態とする吸湿制御と、微細水発生カートリッジ30を放湿状態とし放出された微細水を培養空間51内に供給する放湿制御とを交互に行うから、微細水を被培養物に照射して培養を行うことができる。ここで、微細水は50ナノメートル以下の微小な粒径であるため、被培養物に吸収され易いものと考えられる。このため、被培養物の代謝効率を向上させて、培養速度を高めることができるから、培養を促進することができる。また、培養装置10は、微細水供給ユニット20と培養ケース50とを一体的に備えたコンパクトな構成とすることができる。
【0040】
また、吸湿制御を行う場合、第1連通路24と第2連通路27とを閉鎖して、主通路22を通過する空気により微細水発生カートリッジ30の温度を低下させて吸湿を促すことができる。また、各連通路を閉鎖することで、被培養物に影響を与えることなく吸湿に適した風量とすることができる。また、貯水タンク47から蒸発した水分を利用して吸湿をより促すことができる。また、放湿制御を行う場合、循環するように空気が流れるから、微細水が外部に流出するのを防止して被培養物に十分に照射することができる。
【0041】
また、培養空間51内の湿度Hが所定湿度Hrefを超えた場合には、湿度調整制御を行うから、培養に適した湿度に容易に調整することができる。
【0042】
また、第1連通路24は、出口24a側で内径が大きくなるようにフード状に形成されており、放湿制御では吸湿制御よりも風量を小さくするため、シャーレSに向かう空気の流速を小さくして被培養物に与える風圧を抑えることができる。また、出口24aには、複数の貫通孔23aが形成されたパンチングプレート23が取り付けられているから、第1連通路24を通った空気を複数の貫通孔23aを介して拡散させながらシャーレSに向かわせることができ、シャーレSの全体に均一に空気を流すことができる。これらのことから、シャーレSの全体に満遍なく微細水を照射することができる。
【0043】
また、放湿制御でファン40から送風された空気は、温調カートリッジ45を通るから、微細水発生カートリッジ30で温度上昇した後に温調カートリッジ45で室温近くまで冷却されることになる。このため、高温の空気が培養空間51内に流入して温度が上昇するのを抑制することができるから、培養に適した温度を維持し易くすることができる。
【0044】
実施形態では、第1連通路24の出口24a側の内径が大きくなるように形成して放湿制御では吸湿制御よりも風量を小さくしたが、これに限られるものではない。例えば、出口24a側の内径が大きくなるように形成して放湿制御と吸湿制御の風量を同じにしてもよいし、出口24a側まで一定の内径に形成して放湿制御では吸湿制御よりも風量を小さくしてもよい。あるいは、出口24aとシャーレSとが十分に離れているなど、被培養物に当たる風速を考慮しなくてよい場合、出口24a側まで一定の内径に形成して放湿制御と吸湿制御の風量を同じにしてもよい。また、出口24aにパンチングプレート23が取り付けられているものとしたが、パンチングプレートに限られず、不織布などのフィルタなどが取り付けられていてもよい。あるいは、出口24aに、パンチングプレートやフィルタなどが取り付けられず、単に開放されているものでもよい。
【0045】
実施形態では、培養ケース50内の湿度Hが所定湿度Hrefを超えた場合に、湿度調整制御を行ったが、これに限られず、湿度調整制御を行わなくてもよい。そのようにする場合、培養ケース50に連通口50aを形成せず、切替部54を備えなくてもよい。また、湿度Hが所定湿度Hrefを超えた場合に、放湿制御を中止して対応してもよい。なお、所定湿度Hrefを頻繁に超えるなど湿度Hが高くなり易い場合、放湿時間Tbを短くするなどの調整を行ってもよい。なお、培養ケース50内に3つの湿度センサ52a~52cを備えるものを例示したが、湿度センサを1以上備えるものであればよい。
【0046】
実施形態では、主通路22に貯水タンク47が設けられたが、これに限られず、貯水タンク47が設けられなくてもよい。このようにしても、微細水発生カートリッジ30は、空気中の水分を吸湿し微細水を放出することが可能である。また、主通路22と培養ケース50とが第1連通路24と第2連通路27とにより連通したが、この構成に限られるものではない。例えば、主通路22が、切替部を介して培養ケース50に直接連通する構成などとしてもよい。また、実施形態では、主通路22内に温調カートリッジ45を備えたが、これに限られず、第1連通路24に備えてもよい。あるいは、温調カートリッジ45を備えなくてもよい。また、培養装置10は、本実施形態の培養装置10の構成を全て備えるものに限られず、微細水発生カートリッジ30と、微細水発生カートリッジ30を吸湿状態とする吸湿制御と放湿状態とする放湿制御とを行う制御部60とを備えるものであればよい。微細水発生カートリッジ30と制御部60とを備える構成の培養装置を、市販の培養ケースや培養装置などに装着することにより、本実施形態の培養装置10即ち粒径が50ナノメートル以下の微細水を供給して被培養物を培養する装置として機能するようにしてもよい。
【0047】
実施形態では、培養期間中は吸湿制御と放湿制御とを交互に行って微細水を連続的に供給(常時供給)したが、これに限られるものではない。例えば、設定操作パネルなどを介して使用者が作動時間と休止時間とを設定可能としておき、休止時間中は吸湿制御と放湿制御と行わないものとして、微細水を間欠的に供給してもよい。
【0048】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、培養装置10が「培養装置」に相当し、培養空間51が「培養空間」に相当し、空気通路21が「通路」に相当し、微細水発生カートリッジ30が「微細水発生部」に相当し、制御部60が「制御部」に相当する。通電回路35が「通電部」に相当し、ファン40が「送風部」に相当する。第1連通路24と第2連通路27とが「連通路」に相当し、第1切替部25と第2切替部28とが「切替部」に相当し、貯水タンク47が「貯水部」に相当する。切替部54が「開閉部」に相当し、湿度センサ52a~52cが「湿度センサ」に相当する。出口24aが「出口」に相当する。温調カートリッジ45が「熱交換部」に相当する。なお、本実施形態では、培養装置10の動作を説明することにより本発明の培養方法の一例も明らかにしている。
【0049】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行われるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0050】
以下には、本発明の培養装置10を用いて培養を行った例を実施例として説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(培養)
培養容器としてシャーレを使用し、CP加ポテトデキストロース寒天培地に黒麹カビ(NBRC4066)の懸濁液を20μL滴下した。実施例では、そのシャーレの蓋を開けたまま、培養装置10の培養ケース50内に配置し、24時間にわたり微細水供給処理を実行し微細水を照射した。なお、上述した吸湿時間Taを2分、放湿時間Tbを1分として、吸湿制御と放湿制御とを交互に繰り返し実行した。
【0052】
比較例1,2では、実施例と同様に、シャーレを使用し、CP加ポテトデキストロース寒天培地に黒麹カビ(NBRC4066)の懸濁液を20μL滴下した。比較例1では、シャーレの蓋を閉じたまま24時間にわたり静置した。また、比較例2では、シャーレの蓋を開けたまま、24時間にわたり高湿度(95%RH)中に静置した。24時間経過後は、実施例および比較例1,2ともに、シャーレの蓋をして、30℃の恒温槽内に5日間静置した。
【0053】
(結果)
図7は、実施例の培養結果を示す写真である。図8は、比較例1の培養結果を示す写真である。図9は、比較例2の培養結果を示す写真である。これらの写真は、恒温槽内に静置してから5日間経過後に、シャーレを上方から撮像したものである。第1比較例および第2比較例では、図8図9に示すように、培養がシャーレの全面に広がらず一部に広がるだけであった。一方、実施例では、図7に示すように、培養がシャーレの全面に広がっており優位性が見られた。以上のように、本実施例では、黒麹カビに微細水を照射することにより、培養が促進されたことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、培養装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 培養装置、20 微細水供給ユニット、21 空気通路(通路)、22 主通路、22a 第1開口、22b 第2開口、23 パンチングプレート、23a 貫通孔、24 第1連通路、24a 出口、25 第1切替部、26,29 切替板、27 第2連通路、28 第2切替部、30 微細水発生カートリッジ(微細水発生部)、32 ケース、34 微細水発生素子、34a 基材、34b 導電性高分子膜、35 通電回路(通電部)、40 ファン(送風部)、45 温調カートリッジ(熱交換部)、47 貯水タンク(貯水部)、49a,49b フィルタ、50 培養ケース(筐体)、50a 連通口、51 培養空間、52a,52b,52c 湿度センサ、54 切替部(開閉部)、55 切替板、58 フィルタ、60 制御部、62 スタートスイッチ、64 風量調節スイッチ、S シャーレ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9