(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075284
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20220511BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H01L23/40 A
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185974
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉川 薫
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA30
5F136DA13
5F136DA27
5F136EA23
5F136EA41
5F136EA56
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】ヒートシンクに対する基板の回転を抑制できる半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置10は、半導体素子24が実装される基板20と、ヒートシンク40と、を備えている。ヒートシンク40は、基板20の厚さ方向の第1面21を載置するための端壁41と、端壁41と一体的に設けられ、且つ基板20の側面23に沿って設けられる周壁42と、を有している。端壁41と周壁42とにより基板20を収容する収容部43が形成されている。端壁41と基板20の第1面21との間、及び周壁42と基板20の側面23との間を接着する接着剤Adにより構成される第1接着層61及び第2接着層62が設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が実装される基板と、
ヒートシンクと、を備え、
前記ヒートシンクは、
前記基板の厚さ方向の第1面を載置するための端壁と、
前記端壁と一体的に設けられ、且つ前記基板の前記第1面に交わる側面に沿って設けられる周壁と、を有し、
前記端壁と前記周壁とにより前記基板を収容する収容部が形成され、
前記端壁と前記第1面との間、及び前記周壁と前記側面との間を接着する接着剤により構成される接着層が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記端壁は、前記第1面と対向する載置面を有し、
前記載置面から前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面までの高さは、前記載置面から前記周壁の開口端までの高さよりも低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記端壁は、前記第1面と対向する載置面を有し、
前記載置面から前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面までの高さは、前記載置面から前記周壁の開口端までの高さよりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記接着層は、前記周壁と前記側面の間から前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面にまで延びていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記周壁の開口端に載置されることにより前記周壁の開口を閉塞するカバーを更に備えることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板は、前記厚さ方向から見たときに矩形状をなし、
前記周壁は、前記厚さ方向から見たときに矩形環状をなしていることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される半導体装置が知られている。
上記の半導体装置は、スイッチング素子等の半導体素子が実装される基板と、基板を冷却するヒートシンクと、を備えている。基板には、基板の上面から上方に向けて延びる端子電極が設けられている。基板は、ヒートシンクの上面に載置されている。基板とヒートシンクとは、ネジにより互いに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、例えば、基板をヒートシンクにネジで固定するとき、又は端子電極に外部装置を電気的に接続するときに基板がヒートシンクに対して回転する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する半導体装置は、半導体素子が実装される基板と、ヒートシンクと、を備え、前記ヒートシンクは、前記基板の厚さ方向の第1面を載置するための端壁と、前記端壁と一体的に設けられ、且つ前記基板の前記第1面に交わる側面に沿って設けられる周壁と、を有し、前記端壁と前記周壁とにより前記基板を収容する収容部が形成され、前記端壁と前記第1面との間、及び前記周壁と前記側面との間を接着する接着剤により構成される接着層が設けられている。
【0006】
これによれば、ヒートシンクの端壁と基板の第1面との間、及びヒートシンクの周壁と基板の側面との間に接着層が設けられる。そのため、基板及びヒートシンクの接合の強度が向上する。また、周壁と基板の側面との間を接着層が埋める様態となるため、基板が周壁に対して回転し難くなる。したがって、ヒートシンクに対する基板の回転を抑制できる。
【0007】
上記の半導体装置において、前記端壁は、前記第1面と対向する載置面を有し、前記載置面から前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面までの高さは、前記載置面から前記周壁の開口端までの高さよりも低いとよい。
【0008】
これによれば、基板をヒートシンクの収容部に収容したとき、接着剤が基板の側面から基板の第2面に移動し易くなり、周壁の開口端に移動し難くなる。よって、半導体装置の外部への接着剤の漏洩を抑制できる。
【0009】
上記の半導体装置において、前記端壁は、前記第1面と対向する載置面を有し、前記載置面から前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面までの高さは、前記載置面から前記周壁の開口端までの高さよりも高いとよい。
【0010】
これによれば、基板を収容部に収容したとき、第2面を含む基板の一部分がヒートシンクの外部に位置する。すなわち、作業者が基板を収容部に収容するとき、収容部に対して基板の収容が完了するまで基板を保持し易くなる。よって、半導体装置の製造時における品質を保つことができる。
【0011】
上記の半導体装置において、前記接着層は、前記周壁と前記側面との間から前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面にまで延びているとよい。
これによれば、接着層における基板の第2面に延びている部分により、基板が厚さ方向に振動したときに基板が端壁から剥離し難くなる。よって、端壁に対する基板の接合の強度が向上する。
【0012】
上記の半導体装置において、前記周壁の開口端に載置されることにより前記周壁の開口を閉塞するカバーを更に備えるとよい。
これによれば、周壁の開口をカバーで覆うことにより半導体装置の外部から基板に異物が付着し難くすることができる。
【0013】
上記の半導体装置において、前記基板は、前記厚さ方向から見たときに矩形状をなし、前記周壁は、前記厚さ方向から見たときに矩形環状をなしているとよい。
これによれば、基板がヒートシンクに対して回転しようとしても、接着層を介して周壁が基板の回転を規制する。周壁が基板の回転する力を受けても、周壁は端壁と一体的に設けられているため、基板の回転する力を周壁だけでなく端壁にも分散させることができる。よって、ヒートシンクに対する基板の回転をより抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ヒートシンクに対する基板の回転を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】ヒートシンクの周壁の開口を正面から見た概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、半導体装置を具体化した一実施形態を
図1~
図3にしたがって説明する。なお、本実施形態の半導体装置は、フォークリフト等の産業車両を走行させる三相交流モータを駆動させるためのインバータである。
【0017】
図1に示すように、半導体装置10は、基板20と、複数の端子30と、ヒートシンク40と、カバー50とを備えている。なお、半導体装置10は、図示しない制御基板を備えている。
【0018】
基板20は、厚さ方向で見た平面視において、矩形状をなしている。基板20は、厚さ方向に位置する矩形状の第1面21と、第1面21とは反対側に位置する矩形状の第2面22と、第1面21及び第2面22と交わる側面23とを有している。第1面21及び第2面22は、短辺と長辺を有する長方形状をなしている。側面23は、第1面21及び第2面22と連続している。基板20は、導電性を有する金属部材が樹脂内に内蔵された樹脂基板である。基板20の第2面22には、当該金属部材が露出することにより形成されるパターンが設けられている。第1面21及び第2面22の短辺が延びる方向を短辺方向とし、長辺が延びる方向を長辺方向とする。
【0019】
基板20の第2面22には、複数の半導体素子24が実装されている。全ての半導体素子24は、基板20の第2面22に設けられたパターンに電気的に接続されている。半導体素子24は、例えば、MOSFETである。複数の半導体素子24は、6つの半導体素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6に分かれて配置されている。各半導体素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6において、各半導体素子24は、基板20の短辺方向に一列に並んでいる。各半導体素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6は、基板20の長手方向に間隔を隔てて配置されている。各半導体素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6は、インバータにおける三相の上下アームを構成している。なお、本実施形態の全ての半導体素子24は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ等のスイッチング素子であってもよい。なお、各半導体素子24は、基板20の長辺方向に一列に並んでいてもよいし、基板20の第2面22上に配置されるのであればどのように配置してもよい。
【0020】
基板20の第2面22には、複数の端子30が実装されている。全ての端子30は、基板20の第2面22に設けられたパターンに電気的に接続されている。全ての端子30は、第2面22から突出している。全ての端子30のそれぞれは、柱状をなしている。全ての端子30の基端は、基板20の第2面22に電気的に接続されている。全ての端子30のそれぞれの先端には、端子30の軸線方向に凹設されたねじ穴30aが設けられている。ねじ穴30aの内周面には、雌ねじ溝が形成されている。
【0021】
図2に示すように、端子30は、基板20の第1面21から第2面22に向けて挿通されるボルトBにより基板20に固定される。ボルトBは、端子30の基端を軸線方向に貫通して端子30に螺着される。
【0022】
図1に示すように、本実施形態において、端子30は、5つ採用されている。5つの端子30は、正極入力端子31、負極入力端子32、及び3つの出力端子33である。正極入力端子31、負極入力端子32、及び出力端子33は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。
【0023】
正極入力端子31、負極入力端子32、及び3つの出力端子33は、基板20の長手方向に間隔を隔てて配置されている。正極入力端子31、負極入力端子32、及び3つの出力端子33は、基板20の長手方向に一列をなすように配置されている。基板20の厚さ方向から見た平面視において、正極入力端子31、負極入力端子32、及び3つの出力端子33は、基板20の一対の短縁の一方の中央から基板20の一対の短縁の他方の中央に向けて延びる仮想直線に沿って一列に配置されている。正極入力端子31と、負極入力端子32とは、基板20の長手方向において、各半導体素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6を挟んで配置されている。正極入力端子31及び負極入力端子32は、基板20の一対の短縁寄りに配置されている。なお、正極入力端子31、負極入力端子32、及び3つの出力端子33は、基板20の長手方向に一例をなすように配置されていたが、基板20の第2面22上に配置されるのであればどのように配置してもよい。
【0024】
図1、
図2、及び
図3に示すように、ヒートシンク40は、アルミニウム系金属や銅等の金属製である。ヒートシンク40は、端壁41と、周壁42とを有している。端壁41は、板状をなしている。端壁41は、厚さ方向で見た平面視において、矩形状をなしている。端壁41は、厚さ方向において、基板20の第1面21と対向する矩形状の載置面41aを有している。載置面41aは、基板20の第1面21よりも若干大きい。
【0025】
周壁42は、端壁41の厚さ方向で載置面41aから離間するように端壁41から突出している。周壁42は、端壁41と一体的に設けられている。端壁41の厚さ方向で見た平面視において、周壁42は、矩形環状をなしている。ヒートシンク40には、端壁41と周壁42とにより囲まれる収容部43が形成されている。
【0026】
周壁42の開口端は、矩形環状をなす環状面421aをなしている。周壁42は、外縁及び内縁が短辺と長辺とを有する長方形をなしている。周壁42の外縁及び内縁のうち短辺が延びる方向は、基板20の短辺方向と同じである。周壁42の外縁及び内縁のうち長辺が延びる方向は、基板20の長辺方向と同じである。周壁42は、長辺方向に延びる一対の長壁部42a,42aと、短辺方向に延びる一対の短壁部42b,42bを有している。端壁41の載置面41aから周壁42の環状面421aまでの高さは、基板20の厚さよりも大きい。
【0027】
端壁41には、載置面41aから端壁41の厚さ方向に凹む長溝44が設けられている。端壁41を厚さ方向で見た平面視において、長溝44は、一対の短壁部42b,42bの一方の中央から一対の短壁部42b,42bの他方の中央に向けて延びる仮想直線に沿って直線状に延びている。
【0028】
端壁41に長溝44が設けられることにより、載置面41aは、端壁41を厚さ方向で見た平面視において、周壁42の短辺方向に2分割されている。載置面41aにおける2分割された各面を第1載置面411a及び第2載置面412aとする。第1載置面411a及び第2載置面412aは、端壁41を厚さ方向で見た平面視において、一対の短壁部42b,42bが延びる短辺方向に短辺が存在し、一対の長壁部42a,42aが延びる長辺方向に長辺が存在する矩形状の平面である。
【0029】
基板20と、ヒートシンク40と、カバー50とが組み付けられる前の状態において、第1載置面411a及び第2載置面412aには、接着剤Adが塗布されている。第1載置面411a及び第2載置面412aには、例えば、ディスペンサノズルにより接着剤Adを一対の短壁部42b,42bの間に延びる突条部をなすように塗布している。なお、接着剤Adは、例えば、第1載置面411a及び第2載置面412aに沿って、長辺方向に面状に塗布されていてもよい。
【0030】
カバー50は、第1壁51と、第2壁52とを有している。第1壁51は、板状をなしている。第1壁51は、厚さ方向で見た平面視において、矩形状をなしている。第1壁51は、厚さ方向で見た平面視において、短辺と長辺とを有する長方形状をなしている。第1壁51の長辺が延びる方向は、基板20の長辺方向と同じである。第1壁51の短辺が延びる方向は、基板20の短辺方向と同じである。
【0031】
第1壁51には、5つの貫通孔51aが設けられている。5つの貫通孔51aは、第1壁51を厚さ方向に貫通している。5つの貫通孔51aは、第1壁51の長辺方向に間隔を隔てて一列をなすように配置されている。第1壁51を厚さ方向で見た平面視において、5つの貫通孔51aは、第1壁51の一対の短辺の一方の中央から第1壁51の一対の短辺の他方の中央に向けて延びる仮想直線に沿って一列をなすように設けられている。第2壁52は、第1壁51から第1壁51の厚さ方向に突出している。第2壁52は、第1壁51と一体的に設けられている。第2壁52は、第1壁51を厚さ方向に見た平面視において、矩形環状をなしている。第2壁52の開口端は、矩形環状をなす環状面521aをなしている。第2壁52は、外縁及び内縁が短辺と長辺とを有する長方形をなしている。第2壁52の外縁及び内縁のうち短辺が延びる方向は、基板20の短辺方向と同じである。第2壁52の外縁及び内縁のうち長辺が延びる方向は、基板20の長辺方向と同じである。カバー50には、第1壁51と第2壁52とにより囲まれる収容空間Sが形成されている。
【0032】
第2壁52の開口端がなす開口52aは、第1壁51を厚さ方向で見た平面視において、矩形状をなしている。開口52aは、基板20の第2面22よりも若干大きい。開口52aは、基板20の外周縁よりも大きい。開口52aは、ヒートシンク40の周壁42の開口端がなす開口と同じ大きさである。
【0033】
基板20と、ヒートシンク40と、カバー50とを組み付けるとき、基板20の第1面21と、端壁41の載置面41aとを対向させる。このとき、基板20及び端壁41の厚さ方向において、基板20に実装された5つの端子30の並ぶ方向が端壁41の長溝44の延びる方向に一致する。基板20を載置面41aに向けて近接させ、基板20をヒートシンク40の収容部43に収容する。収容部43に基板20を収容したとき、基板20の側面23は、周壁42の内面の全周に対向する。すなわち、周壁42は、基板20の側面23の全周に沿って設けられる。収容部43に基板20を収容したとき、全ての端子30のそれぞれを基板20に固定するボルトBは、長溝44に収容される。収容部43に基板20を収容したとき、基板20の第1面21が接着剤Adを第1載置面411a及び第2載置面412aに押し広げる。そして、基板20の第1面21が接着剤Adを介して載置面41aに載置される。すなわち、端壁41は、基板20の第1面21を載置するために設けられている。
【0034】
基板20が収容部43に収容された状態において、基板20は、図示しないボルトやネジ等の締結部材によりヒートシンク40の載置面41aに固定される。なお、上述した制御基板は、基板20の第2面22と離間した状態で配置されつつ図示しない固定部材によりヒートシンク40に対して固定される。
【0035】
次に、カバー50の第2壁52の開口端を、周壁42の開口端に突き合わせるようにカバー50を配置する。このとき、5つの端子30のそれぞれの先端が、第1壁51に設けられた5つの貫通孔51aのそれぞれに対応する位置に配置される。カバー50の第2壁52の開口端がヒートシンク40の周壁42の開口端に載置される。第2壁52の環状面521aと、周壁42の環状面421aとが面接触する。すなわち、環状面421a,521aは、ヒートシンク40とカバー50とのシール面をなしている。
【0036】
第2壁52を周壁42に当接させたとき、カバー50は、周壁42の開口を閉塞する。第2壁52を周壁42に当接させたとき、カバー50の収容空間Sの内部に、基板20の第2面22に実装された複数の端子30及び上述した制御基板が収容される。また、5つの端子30のそれぞれの先端が、5つの貫通孔51aのそれぞれに嵌め込まれる。すなわち、5つの端子30それぞれのねじ穴30aは、第1壁51から半導体装置10の外部に露出した状態となる。ヒートシンク40とカバー50とは、例えば、ボルトにより互いに締結される。
【0037】
基板20と、ヒートシンク40と、カバー50とを組み付け、且つ接着剤Adの乾燥が完了した時点で、半導体装置10が完成する。
このように構成された半導体装置10において、正極入力端子31の先端には、外部ケーブルを介してバッテリの正極が電気的に接続される。負極入力端子32の先端には、外部ケーブルを介してバッテリの負極が電気的に接続される。3つの出力端子33の先端には、外部ケーブルを介して三相交流モータが電気的に接続される。本実施形態では、バッテリの正極及び負極に電気的に接続される外部ケーブルに設けられた端子に雄ねじ溝が形成されており、当該端子が正極入力端子31及び負極入力端子32のそれぞれのねじ穴30aに螺着される。また、本実施形態では、三相交流モータの各相に電気的に接続される外部ケーブルに設けられた端子に雄ねじ溝が形成されており、当該端子が3つの出力端子33のそれぞれのねじ穴30aに螺着される。これにより、外部ケーブルと全ての端子30のそれぞれとが強固に結合される。
【0038】
そして、上述した制御基板は、各半導体素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6を制御する制御回路を有している。制御回路により各半導体素子群G1,G2,G3,G4,G5,G6が制御されることで、正極入力端子31及び負極入力端子32を介してバッテリから基板20に供給される直流電力が交流電力に変換されて、3つの出力端子33から三相交流モータに供給される。
【0039】
上記の半導体装置10を使用すると、基板20に実装される複数の半導体素子24の発熱量が多くなり、基板20が加熱されるが、基板20は接着剤Adを介してヒートシンク40に熱的に接続されている。そのため、基板20で発生する熱は、ヒートシンク40を介して半導体装置10の外部に放熱される。すなわち、ヒートシンク40は、基板20を冷却する機能を有している。
【0040】
半導体装置10は、ヒートシンク40に対する基板20の回転を抑制する構成を採用している。以下、
図2及び
図3にしたがって説明する。
図2及び
図3に示すように、基板20の第1載置面411a上に位置する側面23を第1側面231とし、基板20の第2載置面412a上に位置する側面23を第2側面232とする。
【0041】
図4に示すように、ヒートシンク40の周壁42の開口端の平面視において、第1側面231及び第2側面232のそれぞれは、鏡面対称なU字形状をなしている。なお、ヒートシンク40の周壁42の開口端の平面視とは、端壁41及び基板20を厚さ方向で見た平面視と同義である。
【0042】
図2及び
図3に示すように、半導体装置10は、第1接着層61を備えている。第1接着層61は、接着剤Adにより構成されている。第1接着層61は、接着剤Adが乾燥して凝固することにより構成されている。第1接着層61は、第1層611と、第2層612と、第3層613とを有している。第1層611は、第1載置面411aと第1面21との間の全域に設けられている。第1層611は、第1載置面411aと第1面21との間を接着している。第1層611の一部は、長溝44の内側面の一部に張り出している。第2層612は、第1層611と一体的に設けられている。第2層612は、周壁42における第1側面231と対向する内側面と、基板20の第1側面231との間に設けられている。第2層612は、周壁42と第1側面231との間を接着している。第3層613は、第2層612と一体的に設けられている。第3層613は、基板20の第2面22における第1側面231と連続する外周縁部に設けられている。すなわち、第1接着層61は、端壁41と基板20の第1面21との間、及び周壁42と基板20の側面23との間を接着する接着剤Adにより構成される接着層である。また、第1接着層61は、周壁42と側面23との間から基板20の第2面22にまで延びている。
【0043】
図4に示すように、第3層613は、ヒートシンク40の周壁42の開口端を平面視したとき、U字形状をなしている。すなわち、第2層612も同様に、ヒートシンク40の周壁42の開口端を平面視したとき、第1側面231に沿ったU字形状をなしている。
【0044】
図2に示すように、半導体装置10は、第2接着層62を備えている。第2接着層62は、接着剤Adにより構成されている。第2接着層62は、接着剤Adが乾燥して凝固することにより構成されている。第2接着層62は、第1層621と、第2層622と、第3層623とを有している。第1層621は、第2載置面412aと第1面21との間の全域に設けられている。第1層621は、第2載置面412aと第1面21との間を接着している。第1層621の一部は、長溝44の内側面の一部に張り出している。第2層622は、第1層621と一体的に設けられている。なお、第2層622は、第1接着層61の第2層612と同じ形状を有している。
図2には、第2層622の一部分のみが図示されているが、第2層622は、周壁42における第2側面232と対向する内側面と、基板20の第2側面232との間に設けられている。すなわち、第2層622は、周壁42と第2側面232との間を接着している。
【0045】
第3層623は、第2層622と一体的に設けられている。第3層623は、基板20の第2面22における第2側面232と連続する外周縁部に設けられている。すなわち、第2接着層62は、端壁41と基板20の第1面21との間、及び周壁42と基板20の側面23との間を接着する接着剤Adにより構成される接着層である。また、第2接着層62は、周壁42と側面23との間から基板20の第2面22にまで延びている。
【0046】
図4に示すように、第3層623は、ヒートシンク40の周壁42の開口端を平面視したとき、U字形状をなしている。すなわち、第2層622も同様に、ヒートシンク40の周壁42の開口端を平面視したとき、第2側面232に沿ったU字形状をなしている。
【0047】
図2及び
図3に示すように、基板20の全体が収容部43に収容されている。載置面41aから基板20の第2面22までの高さは、載置面41aから周壁42の環状面421aまでの高さよりも低い。基板20が収容部43に収容されている状態において、第1接着層61の第3層613及び第2接着層62の第3層623の載置面41aからの高さは、載置面41aから周壁42の環状面421aまでの高さよりも低い。すなわち、第3層613,623は、周壁42の環状面421aにまで至らない。なお、第3層613,623の載置面41aからの高さは、載置面41aへの接着剤Adの塗布量、及び基板20の載置面41aへの加圧条件により決まる。載置面41aからの周壁42の高さは、少なくとも接着剤Adが環状面421aに到達しないように設定され、且つ半導体装置10の体格を必要以上に大型化しないように設定されている。
【0048】
本実施形態の作用を説明する。
半導体装置10において、例えば、基板20を締結部材によりヒートシンク40の載置面41aに固定するとき、又は複数の端子30にバッテリや三相交流モータのような外部装置を電気的に接続するためにねじ穴30aに外部ケーブルの端子を螺着するとき、ヒートシンク40に対して基板20が回転する虞がある。
【0049】
本実施形態では、ヒートシンク40の端壁41と基板20の第1面21との間、及びヒートシンク40の周壁42と基板20の側面23との間に第1接着層61及び第2接着層62が設けられる。そのため、基板20及びヒートシンク40の接合の強度が向上する。また、周壁42と基板20の側面23との間を第1接着層61及び第2接着層62が埋める様態となるため、基板20が周壁42に対して回転し難くなる。
【0050】
本実施形態の効果を説明する。
(1)ヒートシンク40の端壁41と基板20の第1面21との間、及びヒートシンク40の周壁42と基板20の側面23との間に第1接着層61及び第2接着層62が設けられるため、ヒートシンク40に対する基板20の回転を抑制できる。
【0051】
(2)基板20の第2面22は、周壁42の環状面421aよりも端壁41寄りに位置している。そのため、基板20をヒートシンク40の収容部43に収容したとき、接着剤Adが基板20の側面23から基板20の第2面22に移動し易くなり、周壁42の環状面421aに移動し難くなる。よって、半導体装置10の外部への接着剤Adの漏洩を抑制できる。
【0052】
(3)第1接着層61及び第2接着層62が基板20の第2面22にまで延びている。そのため、第3層613,623により、基板20が厚さ方向に振動したときに基板20が端壁41から剥離し難くなる。よって、端壁41に対する基板20の接合の強度が向上する。
【0053】
(4)周壁42の開口をカバー50で覆うことにより半導体装置10の外部から基板20に異物が付着し難くすることができる。
(5)基板20及び端壁41を厚さ方向から見た平面視において、基板20は矩形状をなし、周壁42も矩形状をなしている。そのため、基板20がヒートシンク40に対して回転しようとしても、第1接着層61及び第2接着層62を介して周壁42が基板20の回転を規制する。周壁42が基板20の回転する力を受けても、周壁42は端壁41と一体的に設けられているため、基板20の回転する力を周壁42だけでなく端壁41にも分散させることができる。よって、ヒートシンクに対する基板20の回転をより抑制できる。
【0054】
(6)全ての端子30のそれぞれのねじ穴30aに外部ケーブルの端子が螺着されるとき、複数の端子30それぞれを介して基板20には、締結トルクが作用する。第1接着層61及び第2接着層62には、基板20に作用する締結トルクを分散させることができる。よって、本実施形態では、基板20に作用する締結トルクに対して基板20のヒートシンク40への接合の強度が向上する。
【0055】
(7)基板20の第2面22が、周壁42の環状面421aよりも端壁41寄りに位置しているため、接着剤Adがヒートシンク40とカバー50とのシール面に付着することを抑制できる。
【0056】
(8)接着剤Adが第1載置面411a及び第2載置面412aが延びる方向に面状に塗布されていれば、基板20の第1面21により接着剤Adを押し広げるときに基板20の変形量を抑制できる。ひいては、基板20に実装された半導体素子24や端子30等の部品への負荷を軽減できる。
【0057】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 基板20及び端壁41の厚さ方向から見た平面視において、基板20は矩形状を除く多角形状をなし、周壁42は基板20の側面23に沿った形状を有していればよい。このように変更しても、第1接着層61及び第2接着層62を介して周壁42が基板20の回転を規制する。そして、周壁42が基板20の回転する力を受けても、周壁42は端壁41と一体的に設けられているため、基板20の回転する力を周壁42だけでなく端壁41にも分散させることができる。なお、基板20及び端壁41の厚さ方向から見た平面視において、基板20が円形状をなし、周壁42が環状をなしていてもよい。
【0058】
○ 基板20の形状は、
図7に示すように変更してもよい。
図7には、説明の便宜上、第1接着層61及び第2接着層62を記載していない。
図7に示すように、厚さ方向で基板20を見た平面視において、基板20の側面23は、4つの湾曲面23aと、周壁42に沿って延びる4つの縁部23bとを有していてもよい。厚さ方向で基板20を見た平面視において、4つの湾曲面23aは、隣り合う縁部23b同士を接続している。4つの湾曲面23aは、隣り合う縁部23b同士を接続する平面であってもよい。本変更例のように、周壁42は、側面23に沿って設けられていればよく、例えば、周壁42は、4つの湾曲面23aに沿わず、且つ少なくとも4つの縁部23bに沿って設けられていればよい。このとき、第2層612,622は、周壁42と4つの縁部23bとの間に設けられていることが好ましい。また、周壁42と4つの湾曲面23aとの間に第2層612,622が設けられていてもよい。なお、本実施形態、上記変更例、及び本変更例に記載された基板20を使用する場合、平面視において基板20の側面23のうち少なくとも直線状に延びる2つの縁部に沿って周壁42が設けられることが好ましい。これにより、周壁42が基板20の回転する力を受けても、周壁42は端壁41と一体的に設けられているため、基板20の回転する力を周壁42だけでなく端壁41にも分散させることができる。
【0059】
○ 周壁42の環状面421aに接着剤Adが到達していてもよい。この場合、環状面421aに到達する接着剤Adの量を予め確認し、カバー50の環状面521aが周壁42の環状面421aに載置できる程度に、環状面421aを大きくすることが好ましい。
【0060】
○ 載置面41aからの周壁42の高さは、適宜変更してもよい。例えば、周壁42を全ての端子30のそれぞれの先端と同じ位置まで延ばしてもよい。この場合、カバー50を周壁42の開口を閉塞する板状をなすように変更してもよい。
【0061】
○ 半導体装置10は、基板20、複数の端子30、及びヒートシンク40により構成され、カバー50を割愛してもよい。
○ 第1接着層61は、第1層611と、第2層612とにより構成され、第3層613を割愛してもよい。第2接着層62は、第1層621と、第2層622とにより構成され、第3層623を割愛してもよい。すなわち、第1接着層61及び第2接着層62は、基板20の第2面22にまで延びていなくてもよい。
【0062】
○ 第1接着層61において、第1接着層61の第1層611は、基板20の第1面21と端壁41の第1載置面411aとの間の全域に設けられていたが、全域に設けられていなくてもよい。第1層611と第2層612とは、一体的に設けられていたが、第1層611と第2層612とを分割して配置してもよい。すなわち、基板20を収容部43に収容するとき、周壁42の内側面と第1側面231との間にも接着剤Adを予め塗布しておいてもよい。
【0063】
○ 第2接着層62において、第2接着層62の第1層621は、基板20の第1面21と端壁41の第2載置面412aとの間の全域に設けられていたが、全域に設けられていなくてもよい。第1層621と第2層622とは、一体的に設けられていたが、第1層621と第2層622とを分割して配置してもよい。すなわち、基板20を収容部43に収容するとき、周壁42の内側面と第2側面232との間にも接着剤Adを予め塗布しておいてもよい。
【0064】
○ 第1接着層61及び第2接着層62は、基板20及び端壁41の厚さ方向から見た平面視において、鏡面対称なU字形状をなしていたが、例えば、第1接着層61と第2接着層62を連続させることにより、矩形環状をなす接着層を形成してもよい。このように変更する場合、第1載置面411aと第2載置面412aとを周壁42に沿って連続させるとよい。そして、基板20を収容部43に収容したときの接着剤Adが基板20の側面23と周壁42の内側面との間の全域に配置されるように変更するとよい。
【0065】
○ 第1接着層61及び第2接着層62のうちいずれか一方を割愛してもよい。
○ 基板20の第2面22は、周壁42の環状面421aよりも端壁41寄りに位置していたが、これに限らない。例えば、以下のように変更してもよい。
【0066】
図5及び
図6に示すように、載置面41aから基板20の第2面22までの高さを、載置面41aから周壁42の環状面421aまでの高さよりも高くしてもよい。
このように変更することにより、基板20を収容部43に収容したとき、第2面22を含む基板20の一部分がヒートシンク40の外部に位置する。すなわち、作業者が基板20を収容部43に収容するとき、収容部43に対して基板20の収容が完了するまで基板20を保持し易くなる。よって、半導体装置10の製造時における品質を保つことができる。
【0067】
○ 基板20の第2面22に実装される端子30の数は、5つ採用されていたが、端子30の数は、適宜変更してもよい。
○ ヒートシンク40の周壁42の開口端は、環状面421aであったが、カバー50を載置できれば形状は適宜変更してもよい。
【0068】
○ 全ての端子30のそれぞれは、ボルトBにより基板20に固定されていたが、例えば、全ての端子30のそれぞれの基端を基板20の第2面22に半田付けしてもよい。なお、全ての端子30のうち複数の端子30をボルトBにより基板20に固定し、残りの端子30を基板20の第2面22に半田付けしてもよい。
【0069】
○ 全ての半導体素子24が、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ等のスイッチング素子であったが、これに限らない。全ての半導体素子24のうち複数の半導体素子24をスイッチング素子とし、残りの半導体素子24をダイオード等のスイッチング素子以外の部品としてもよい。
【0070】
○ 基板20は、樹脂基板に限らず、プリント基板や金属基板であってもよい。
○ 端壁41には、全ての端子30のそれぞれを基板20に固定するボルトBが収容される長溝44が設けられていたが、これに限らない。例えば、端壁41には、全ての端子30のそれぞれを基板20に固定するボルトBそれぞれを収容する複数の丸溝が設けられていてもよい。丸溝は、載置面41aから端壁41の厚さ方向に凹むように設けられているとよい。
【0071】
○ ヒートシンク40の端壁41には、複数のフィンを設けてもよい。複数のフィンが設けられることにより、ヒートシンク40が外気に触れる表面積が増加することによりヒートシンク40の冷却機能が向上する。
【0072】
○ 半導体装置10は、インバータ以外であってもよい。例えば、半導体装置10は、コンバータなど、インバータ以外の電力変換装置であってもよい。
○ 半導体装置10は、産業車両に搭載されるものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…半導体装置、20…基板、21…第1面、22…第2面、23…側面、24…半導体素子、30…端子、30a…ねじ穴、40…ヒートシンク、41…端壁、41a…載置面、411a…第1載置面、412a…第2載置面、42…周壁、43…収容部、50…カバー、61…第1接着層、62…第2接着層、Ad…接着剤。