(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075301
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】車輪保持機能を高めたホイールドーリー
(51)【国際特許分類】
B62B 3/10 20060101AFI20220511BHJP
B60S 5/00 20060101ALI20220511BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20220511BHJP
B62B 3/065 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B62B3/10 D
B60S5/00
B62B3/02 D
B62B3/065
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186002
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】511094336
【氏名又は名称】株式会社テクネット
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】片井 修
【テーマコード(参考)】
3D026
3D050
【Fターム(参考)】
3D026BA04
3D026BA24
3D026BA27
3D050AA36
3D050BB22
3D050BB30
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050HH04
3D050KK11
(57)【要約】
【課題】大型車のダブルタイヤを単輪ごと分離して支承しても、また大型4軸車トラックの前輪二本を支承しても確実に保持し、車輪の転倒等を回避することができる、新規な車輪保持機能を高めたホイールドーリーの開発を課題とした。
【解決手段】本発明の車輪保持機能を高めたホイールドーリーCは、移動可能に構成された基台1と、この基台1に昇降自在に支持される昇降支持台2とを具え、昇降支持台2は、基台1に対し平面視で回転自在に設けられ、更に昇降支持台2には、車輪支承用のラックアーム25が一対平行に設けられるとともに、この一対のラックアーム25により形成される支承空間S2に支承される車輪Wの両側部を挟むタイヤホルダ3を具えていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に構成された基台と、
この基台に昇降自在に支持される昇降支持台とを具え、
この昇降支持台は、基台に対し平面視で回転自在に設けられ、
更に昇降支持台には、車輪支承用のラックアームが一対平行に設けられるとともに、
この一対のラックアームにより形成される支承空間に支承される車輪の両側部を挟むタイヤホルダを具えていることを特徴とする、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【請求項2】
前記一対のラックアームは、対向する内側に、車輪を転動支承する支承ローラを具えていることを特徴とする請求項1記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【請求項3】
前記タイヤホルダは、一対で車輪側部を挟持する外ホルダープレートと内ホルダープレートとを具えて成り、両者の間隙は支承する車輪の幅寸法に応じて調整自在であることを特徴とする請求項1または2記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【請求項4】
前記外ホルダープレートと内ホルダープレートとの間隙調整は、外ホルダープレートを定位置として、内ホルダープレートを外ホルダープレートに対し接近離反自在とする構成であることを特徴とする請求項3記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【請求項5】
前記一対の外ホルダープレートと内ホルダープレートとは、少なくとも外ホルダープレートが、支承空間に突出して車輪を保持する作用位置と、支承空間に突出せず車輪を保持しない退去位置とに移動する構成であることを特徴とする請求項3または4記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【請求項6】
前記一対の外ホルダープレートと内ホルダープレートとは、退去位置と作用位置との間を、各ホルダープレートの基部を回動軸として一体となって回動移動する構成であることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【請求項7】
前記一対の外ホルダープレートと内ホルダープレートとが一体となって回動する機構は、各ホルダープレートの回動軸芯を共通させながら、相対的な接近・離反を可能とするスライド嵌め合い同位相回転構造であることを特徴とする請求項6記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【請求項8】
前記タイヤホルダは、作用位置に設定された際、作用位置を維持するための保持構造を具えることを特徴とする請求項5から6のいずれか1項記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【請求項9】
前記保持構造は、外ホルダープレートと内ホルダープレートとのいずれか一方または双方に回動自在に保持フックを設け、この保持フックをラックアーム内側の支承ローラに係止させる構造であることを特徴とする請求項8記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型トラックをはじめとする自動車等を整備するにあたり、例えば車輪周りを点検する際に、取り外した車輪を支承するホイールドーリーに関するものであって、特に作業者の負担軽減のみならず、支承した車輪の保持を確実にした、新規な車輪保持機能を高めたホイールドーリーに係るものである。
【背景技術】
【0002】
トラックをはじめとして一般の乗用車等を含む車輌の整備にあたっては、作業者の負担を軽減したり、正確な作業ができるようにしたりするため、車輌の要整備個所が作業者の手元近くあるいは目視しやすい位置にあることが好ましい。このため従来から車輪や車軸等の低位置にある部材を整備対象とするにあたっては、車輌をリフトアップし、点検や部品交換等を行い易くして作業が進められている。その際、例えば車輪等を取り外すにあたっては、それらを支承するためホイールドーリーが用意され、作業者の負担を軽減することが行われている。
【0003】
ところで更に現実の車輌の整備環境を見ると、車輌を受け入れるストールは、例えばトラック等の車輌幅の2倍程度のストール幅を取っているが、このスペース取りはあくまで作業者が手工具あるいは電動工具、エア工具等を取り扱って整備できることを前提とした広さとなっており、ホイールドーリー等の比較的スペースを取りがちな整備支援機材をここに持ち込むと、実際には有効利用できる作業スペースは限られてしまう。
【0004】
このようなことから本発明者は、実際の車輌の保守整備を行っている作業環境を考慮し、整備支援機材の持ち込み等から狭くなりがちな作業スペースを有効に利用できるよう改良したホイールドーリーを開発し、既に特許取得に至っている(特許第6088854号:特許文献1)。
このものは、移動自在の基台と、これをほぼ平面投影状で覆うような状態で基台に対し、昇降自在で且つ回動自在に設けられる昇降支持台とを有し、この昇降支持台に車輪を支持する一対の並行配置されたラックアームを設け、ラックアームの作業者側寄りにシングルタイヤをもたれ掛けさせるためのガード部を固定的に設けているものである。
このような支承用架台装置は、車輌整備作業の現場では、使い易さが優れていることから、好評裏に使用されている。
【0005】
その一方で、ブレーキ装置との関係で車輪、特に後輪の取り外し形態が従来と異なる場合も生じてきており、これに対応するとなると従来の構成のままでは充分ではなく、更に改善の余地が生じ、それに対応した新規なホイールドーリーについても提案し、既に特許取得に至っている(特許第6109386号:特許文献2)。
即ち前記特許文献1の装置は、ダブルタイヤタイプの車輪の場合、ハブ付き一体取り外しを前提にこれを一組支承搭載し、一方、シングルタイヤタイプの車輪の場合は傾倒支持を前提に一輪のみ支承する構成となっていた。
【0006】
ところで近時、トラックであっても小型から中型サイズのものでは、後輪にもブレーキ装置としてディスクブレーキを用いたものも出現しており、このようなディスクブレーキを採用し、且つ後輪がダブルタイヤタイプの場合、構造上、ダブルタイヤは二輪をハブに組み付け状態のまま取り外されるのではなく、一輪ごとに分かれた状態で取り外される。
このような作業手法では、現行のホイールドーリーを用いると、従来はハブに組んだままの後輪ダブルタイヤが一基のホイールドーリーで支承できたものが、ホイール付きタイヤ二本に分かれることによって二台必要となってしまう。このようなことから、たとえダブルタイヤが一本毎に分かれた状態で取り外された場合であっても、一基のホイールドーリーでこれらを受け取ることができるようなホイールドーリーが求められ、これに対応して前記特許第6109386号「作用形態を多様化できるホイールドーリー」を市場に提供したものである。
【0007】
しかしながら、このような整備作業については、更に走行安全を担保すべく入念な作業が法制上でも求められ、従来装置では、使い勝手の点で満足できない面も顕れてきた。
即ち前記安全担保のため、ないしは法制上の要求される整備内容とは、大型トラック、バス等の大型車輌にあっては、一般的に後輪は、いわゆるダブルタイヤであるが、これらを整備するにあたってはダブルタイヤの組み付け状態での点検は不充分とされ、必ず単輪ごとに分解して点検整備することが求められてきた。このような大型車輌にあっては、単輪であっても重量は約100kgとなり、このような単輪状態での車輪を転倒させることなく安定的に支持するには、従来装置では必ずしも万全なものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6088854号公報
【特許文献2】特許第6109386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、大型車のダブルタイヤを単輪ごと分離して支承しても、また大型4軸車トラックの前輪二本を支承しても、これを確実に保持し、車輪の転倒等を回避することができる、新規な車輪保持機能を高めたホイールドーリーの開発を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず請求項1記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、
移動可能に構成された基台と、
この基台に昇降自在に支持される昇降支持台とを具え、
この昇降支持台は、基台に対し平面視で回転自在に設けられ、
更に昇降支持台には、車輪支承用のラックアームが一対平行に設けられるとともに、
この一対のラックアームにより形成される支承空間に支承される車輪の両側部を挟むタイヤホルダを具えていることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項2記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、請求項1記載の要件に加え、
前記一対のラックアームは、対向する内側に、車輪を転動支承する支承ローラを具えていることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項3記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、請求項1または2記載の要件に加え、
前記タイヤホルダは、一対で車輪側部を挟持する外ホルダープレートと内ホルダープレートとを具えて成り、両者の間隙は支承する車輪の幅寸法に応じて調整自在であることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項4記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、請求項3記載の要件に加え、
前記外ホルダープレートと内ホルダープレートとの間隙調整は、外ホルダープレートを定位置として、内ホルダープレートを外ホルダープレートに対し接近離反自在とする構成であることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項5記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、請求項3または4記載の要件に加え、
前記一対の外ホルダープレートと内ホルダープレートとは、少なくとも外ホルダープレートが、支承空間に突出して車輪を保持する作用位置と、支承空間に突出せず車輪を保持しない退去位置とに移動する構成であることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項6記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、請求項3から4のいずれか1項記載の要件に加え、
前記一対の外ホルダープレートと内ホルダープレートとは、退去位置と作用位置との間を、各ホルダープレートの基部を回動軸として一体となって回動移動する構成であることを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項7記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、請求項6記載の要件に加え、
前記一対の外ホルダープレートと内ホルダープレートとが一体となって回動する機構は、各ホルダープレートの回動軸芯を共通させながら、相対的な接近・離反を可能とするスライド嵌め合い同位相回転構造であることを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項8記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、請求項5から6のいずれか1項記載の要件に加え、
前記タイヤホルダは、作用位置に設定された際、作用位置を維持するための保持構造を具えることを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項9記載の、車輪保持機能を高めたホイールドーリーは、請求項8記載の要件に加え、
前記保持構造は、外ホルダープレートと内ホルダープレートとのいずれか一方または双方に回動自在に保持フックを設け、この保持フックをラックアーム内側の支承ローラに係止させる構造であることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0019】
まず請求項1記載の発明によれば、ホイールドーリーが、車輪の両側部を挟むタイヤホルダを具えるため、ダブルタイヤを一本ずつ車輌から取り外してラックアーム上に載置する場合に、タイヤを転倒させてしまうことがないものである。即ち大型トラックのタイヤは一本約100kgになるものがあり、このようなタイヤを確実に直立状態でラックアーム上に載置することができる。
また、そのままでは自立し難いシングルタイヤであっても、これをタイヤホルダで確実に挟持することができ、更には分離状態のシングルタイヤを二本、直立状態で載置することもできる。
【0020】
また請求項2記載の発明によれば、車輪を転動させる支承ローラを具えるため、一本約100kgになるタイヤでも容易に且つ確実に回転させることができる。このため例えば車輪を車軸側に取り付ける場合、車輪側のボルト孔位置が、車軸側のボルト位置に対し幾らかずれていても、車輪を支承ローラ上で回転させることで、これらの位置合わせが容易に行え、スムーズに作業が行える。
【0021】
また請求項3記載の発明によれば、車輪を挟むホルダープレートの間隙が調整自在であるため、小型トラック、中型トラック、大型トラックなど、車輌によってタイヤの幅寸法が異なる場合でも、異なる幅寸法のタイヤに応じて、ホルダープレートを適切な間隔寸法に設定することができる。従って、タイヤの幅寸法が異なっても、安定した直立状態でタイヤを保持することができる。
また、ホルダープレートの間隙調整ができるため、一本ずつ取り外したタイヤを計二本、ラックアームに載せる場合、ラックアームの先端部分と後端部分に二つのタイヤを載せ、ラックアームの中央部に非載置空間を形成することができる。この非載置空間は、例えば作業者のアクセス空間となり、車輪の着脱作業が行い易くなる。
【0022】
また請求項4記載の発明によれば、ホルダープレートの間隙調整にあたり外ホルダープレートを定位置として内ホルダープレートを移動させる、つまり一方だけ移動させる構成であるから、ホルダープレートの移動機構(間隙調整機構)を比較的シンプルに構成することができる。
また、車輌から車輪を取り外す際には、タイヤを挟持する一対のホルダープレートはタイヤの前後位置で幅方向位置を合わせる必要があるが、外ホルダープレートが定位置であるため、この調整も極めて行い易く、確実に作業が行える。
【0023】
また請求項5記載の発明によれば、少なくとも外ホルダープレートが、作用位置から退去位置まで移動する構成であるから、リフトアップした車輌において、車輪の下方にホイールドーリーを差し込む際には、外ホルダープレートを退去位置としてタイヤとの干渉を回避することができる。またラックアームを上昇させ、ホイールドーリーでタイヤを受ける際には、外ホルダープレートを作用位置としてタイヤを取り外すことができ、このような使い方が容易に行える。
なお、ホルダープレートとしては、例えばラックアームと全く別体で形成しておき、作用位置とする場合に、当該ホルダープレートをラックアームに差し込んで所望の幅寸法に設定することも考えられるが、本発明のように外ホルダープレートが作用位置から退去位置まで移動自在であれば、その都度、着脱する必要はないし、ホルダープレートを紛失してしまう心配もない。
【0024】
また請求項6記載の発明によれば、外ホルダープレートと内ホルダープレートとが共に回動するため、内外一対のホルダープレートを支承空間に突出させる作業や、支承空間から退去させる作業が極めて効率的に行え、作業者は片手だけでもホルダープレートを作用位置または退去位置に設定することができる。
【0025】
また請求項7記載の発明によれば、ラックアームの長手方向、つまりフォークの差し込み方向から視て、外ホルダープレートと内ホルダープレートとが同じ回転位置となるため、タイヤを挟持する場合、内側と外側とで確実にタイヤを挟持することができる。即ちタイヤの内側と外側とにおいては保持位置にズレが生じないので、例えば外方に居る作業者から視て、外ホルダープレートがタイヤと重なっていれば、内外のホルダープレートで確実にタイヤを挟んでいることになり、確実に挟持状態を把握することができる。
【0026】
また請求項8または9記載の発明によれば、タイヤホルダは、支承空間に突出する作用位置を維持するための保持構造を具えるため、例えば車輪を車軸側に取り付ける場合、ボルト位置と、タイヤのボルト取付孔とを合わせるために車輪を支承ローラ上で回転させるが、この際、回転中のタイヤがタイヤホルダに接触しても、一旦、作用位置にセットしたタイヤホルダは、不用意に退去位置に戻ってしまうことがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のホイールドーリー(車輪保持機能を高めたホイールドーリー)を示す斜視図、並びにこのホイールドーリーの使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明のホイールドーリーにおいてタイヤホルダを具えた昇降支持台部分を拡大して示す斜視図である。
【
図3】昇降支持台を平面視で水平方向に回転させる様子と、その操作手法を併せ示す斜視図である。
【
図7】ダブルタイヤを単輪ずつ取り外す様子を段階的に示す説明図である。
【
図8】タイヤホルダのホルダープレートを退去位置から作用位置に移動させ、またこの作用位置を維持すべく、保持フックを支承ローラに係止させる様子を段階的に説明する説明図である。
【
図9】ホイールドーリーの移動をレール式とした改変例(基台部分)を示す平面図(a)、並びに側面図(b)である。
【
図10】タイヤホルダを羽子板状のホルダープレートで構成し、且つ作用位置に設定する際には、ラックアームの保持用孔に当該ホルダープレートを差し込むようにした改変例を示す斜視図である。
【
図11】3軸車及び4軸車の大型トラックにおけるタイヤの設置状況と、本発明のホイールドーリーを適用して、これらのタイヤを分離脱着搭載する場合のホイールドーリーの必要数とを併せ示す説明図(a)・(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を実施するための形態は、以下に述べる実施例をその好適な一例とするものであり、更にこの技術思想に基づき改変される種々の形態をも含むものである。
【実施例0029】
以下、本発明たる車輪保持機能を高めたホイールドーリーC(以下、単にホイールドーリーCとする)について、図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
まずホイールドーリーCの使用状態の概要を説明する。
ホイールドーリーCは、例えば
図1に示すように、車輌整備工場に入庫した車輌Vの車輪周りの整備を行う際に用いられるものであり、整備にあたって脱着される車輪Wを支承し、更には車軸周りやブレーキ周辺あるいはハブ周りを整備する際に、取り外した車輪Wが作業の支障にならないようにこれを移動させるものである。
ここで本明細書に記載する車輪Wとは、一般的には中央部に設けられたハブ取り付け用のホイールと、ホイールの外周側に設けられるゴム製のタイヤ部との組み合わせを指す。ただしダブルタイヤ・シングルタイヤ・後輪タイヤ等の名称は、日常的に使用されている用語であるため、そのままこの名称を用いる。
【0030】
次に、車輪Wについての整備に関して、最近の傾向を併せて概説する。従来、後輪タイヤについては、中・大型トラックの場合、ほぼダブルタイヤを装着しており、このダブルタイヤは、車軸側への取付態様によって、ダブルタイヤを組付状態で外すタイプと、各別に分離して外すタイプとがある。このうち大型トラックにあっては、ダブルタイヤのまま外すタイプがほとんどであり、その状態で車軸周りの点検・補修等が行われていた。
しかしながら、点検整備をより確実なものとするため、ダブルタイヤであっても単輪ずつ別々に分離して点検整備を行うことが推奨され、更には法制上もその要請が発出されている。
このようなことからホイールドーリーCについても大型車用の単輪で約100kgとなる極めて重い車輪Wを各別に安定的に支承できるものが要請されてきている。ここでダブルタイヤの車輪Wを単輪ごとに区別する場合には、車輌外側に設けられているものを外車輪W1とし、車輌内側に設けられているものを内車輪W2とする。
【0031】
以下、ホイールドーリーCについて説明する。このものは一例として
図1・
図4~
図6に示すように、基台1に対し、昇降自在の昇降支持台2を設けて成り、この昇降支持台2を回転操作部材4によって、基台1に対して平面視で回転自在に設けるとともに、基台1との固定関係を図るように構成されている。
以下、基台1について説明する。
基台1は、一例として下方において放射状に伸びた車輪支持フレーム11を具えるものであり、この車輪支持フレーム11の中心に一例として円筒状のシリンダ外筒を利用したポストフレーム12が設けられる。具体的には車輪支持フレーム11とこのポストフレーム12の取り付け関係は、シリンダ外筒であるポストフレーム12のベースブロック12aに対し、車輪支持フレーム11の基部をボルト締めする等して取り付けられている。また車輪支持フレーム11は、ポストフレーム12をできるだけ下方で支持できるように、その先端で支持する自在キャスタを一例として転動輪13の支持位置を上方に引き上げたような形態を採っている。この車輪支持フレーム11に支持される転動輪13は一例として四輪すべてに自在キャスタが適用され、基台1を移動自在に構成している。この自在キャスタを適用した転動輪13は、その一部またはすべてをブレーキ付きとすることも好ましい。また転動輪13は、四輪のうち二輪を自在キャスタとして、他の二輪を固定キャスタとしてももとより差し支えない。
【0032】
またシリンダ外筒を利用した前記ポストフレーム12は、作動油のポンピングのためのフットペダル14を具えるとともに、その側傍に油圧回路を開放するリリースペダル15を具える。このフットペダル14とリリースペダル15の位置は、一般的な油圧シリンダでは昇降操作ペダルが当該油圧シリンダに近接した位置(一般的にはポストフレーム12の根本に近い位置)に設けられるが、本実施例ではポストフレーム12から径方向に幾らか離れた外側位置に設けている。具体的には、ベースブロック12aを外側に延長させ、その外端部上面にフットペダル14とリリースペダル15を設けるように構成した。
このような構成としたのは、フットペダル14等をポストフレーム12の根本付近に設けた場合には、ラックアーム25の直ぐ後方に立つ作業者Mからは、ラックアーム25に載置したタイヤ下辺が、作業者Mの視界を妨げてペダルが見えにくく、ペダルを踏む操作がやりづらいことがあったためである。また、フットペダル14等をポストフレーム12の根本付近に設けた場合には、作業者Mからペダルまでが遠くなり、作業者Mとしては無理に足を伸ばす姿勢(いわゆる、のけぞる姿勢)になりがちであり、自由に操作し難いものであった。当然、このような姿勢で上昇時にペダルを煽れば、屈伸する膝が搭載タイヤの下辺に当たることもあり、ペダルを煽る操作が一層行いづらいものであった。
このようなことから、本実施例ではフットペダル14とリリースペダル15とをポストフレーム12の根本から幾らか離して設けたものであり、これにより大径のタイヤを支承しても、作業者Mが上記フットペダル14とリリースペダル15の足動操作が容易に行えるように考慮したものである。
【0033】
なお、フットペダル14とリリースペダル15との機構自体は、油圧シリンダにおいて通常適用される構成であるので、更に詳細な説明は省略する。
一方、このシリンダ外筒を適用したポストフレーム12の上端部にはフランジ状のロック片16が固定されるものであり、このロック片16には一例として前方と左右方向との計三カ所に90°ずつ隔ててロック凹部16aを具える。即ち本実施例では、手前側の後方部分のみロック凹部16aが形成されない構成となっている。なお、前方や左右の方向については、後で詳細に説明する。
【0034】
次に、このような基台1に対して昇降自在に支持される昇降支持台2について説明する。昇降支持台2は、ポストフレーム12に支持された昇降ロッド21の上端にベース板22を設けて、このベース板22に対しテーブル基板23を支持させた構成を採る(
図3~
図5参照)。
昇降ロッド21は、先に述べたようにポストフレーム12自体がシリンダ外筒を適用していることから、実質的にはシリンダ装置の摺動ロッドが利用される。即ち昇降支持台2を昇降自在に支持するための部材として、シリンダ装置が適用される。このようなシリンダ装置を用いるときは、昇降ロッド21自体が、昇降方向へ移動するほか、ポストフレーム12即ちシリンダ外筒に対して、平面視で回転自在の構成となっている。そして前記ベース板22は、この昇降ロッド21の上端に固定された一例として矩形状の強度部材であり、これに対し側枠板24が設けられることにより全体としてトレー形状となったテーブル基板23が構成されている。
【0035】
更にこの側枠板24を利用してラックアーム25が左右一対、フォーク状に設けられる。なお、ここで本装置の説明上、前後方向や幅方向あるいは左右方向について説明する。本装置にあっては、基台1に対し、平面視で昇降支持台2が回転するものであるから、少なくとも共通した前後方向は、観念し難いので、各部材ごとに定義する。まず基台1については、頻繁に操作する前記フットペダル14やリリースペダル15の近傍に作業者Mが対向的に立つものであり、この立ち姿勢となった作業者Mの正面方向を前後方向とし、フットペダル14やリリースペダル15の反対側を前方、作業者側を手前側ないしは後方側とする。
一方、昇降支持台2については、ラックアーム25の長手方向を前後方向と言い、一対のラックアーム25が対向する方向を左右方向または幅方向とする。なお、昇降支持台2は、前後・左右にほぼ対称形状としていることから、いずれが前後であるとは定義しないが、ラックアーム25の前後の自由端側を外側とし、それより中央側を内側として説明する。
そして、これら一対のラックアーム25により構成される面を、
図5に示すように車輪Wの支承作用面S1とする。しかしながら、搭載対象が円形の車輪Wであることを考慮すると、支承作用面S1より下方の空間にも車輪Wの下部が潜り込み状態に支持されるものであり、この空間を含んで実質的に車輪Wを搭載する空間を支承空間S2とする。
【0036】
またラックアーム25は、一例として断面がほぼ正方形を呈する角パイプが適用され、更にその角パイプは対向する稜角部、即ちコーナー部が上下に配置された形態を採る。従って例えば車輌Vの車輪Wを支持するときには車輪Wの外円弧に、ほぼ沿うような状態でラックアーム25の内上面25aが配置されることとなる。ここでラックアーム25の内上面25a以外の面、すなわち外上面、外下面、内下面に各々「25b」、「25c」、「25d」の符号を付す。また本実施例では、ラックアーム25の内上面25aに、直接、車輪Wを支承する支承ローラ26を設けるものであり、ラックアーム25の前後方向に二分して、支承ローラ26が独立配置される。また支承ローラ26は、左右にも一対設けられており、前後・左右一対の計四基が、それぞれ独立して回転するように、前記内上面25aに設けたローラブラケット261に支持されている。
【0037】
また、上記角パイプが適用されて成るラックアーム25は、中空状であることから、一例として
図1に示すように、その内部をシャフト収め部251とすることが好ましく、これにより車輌Vの整備のときに取り外すことになるドライブシャフトDを一時的に保持しておくことができる。
ここでドライブシャフトDは、車輌取付時にはオイルバス状のハウジングH内に設けられる。そのため車輌Vから抜き取ったドライブシャフトDには、オイルが付着することは免れない。このようなことから、抜き取ったドライブシャフトDをラックアーム25内部のシャフト収め部251に収めてしまうと、ドライブシャフトDに付着していたオイルが、シャフト収め部251内に滴下して溜まり、その端部から整備工場の床面に落下させてしまう。
そのため、本実施例では、一例として
図4に示すように、シャフト収め部251(ラックアーム25)の前後両端にオイルの落下を防止する部材を設けるものであり、例えば後端つまり作業者M側には、シャフト収め部251から落下するオイルを受けるオイル容器27を具えるものである。なお、オイル容器27は、昇降支持台2に対して例えばマグネットを利用して脱着自在とすることが好ましい。また、シャフト収め部251の前端側には、下端部をわずかに塞ぐ堰状のオイル留め28(いわゆるダムゴム)を設け、シャフト収め部251の前後両端からオイルが床に落ちるのを防止している。因みに、後端側たる作業者M側に、オイル容器27を具えるのは、こちら側から抜き取ったドライブシャフトDを出し入れするためである。
【0038】
次にラックアーム25の外上面25bに設けられるタイヤホルダ3について説明する。
このタイヤホルダ3は、ラックアーム25、より詳細には支承ローラ26上に支承した車輪Wが転倒しないように、支承した車輪Wを確実に直立状態に支持するための部材である。
タイヤホルダ3は、一例として前後方向(ラックアーム25の長手方向)において対向する二片のホルダープレート30を具えるものであって、両者を区別する場合には、外ホルダープレート30A、内ホルダープレート30Bとし、これら一対のホルダープレート30の間に車輪Wを挟むように保持する。この前後一対のホルダープレート30の組は、左右方向においても対向状態に設けられ、これらのホルダープレート30つまり前後・左右の計四枚のホルダープレート30により一輪の車輪Wが直立状態に保持される。
以下、このホルダープレート30の支持構造等について更に詳細に説明する。
【0039】
まず左右一対のラックアーム25のそれぞれ外上面25bに、前後二対のホルダーブラケット31を設け、この間に内軸32を回転自在に支持させる。
一方、この内軸32に対しては、非回転スライド嵌め合い構造とした外軸33が組み合わせられる。この外軸33の長さ、即ち幅方向寸法は、内軸32の長さの約40%~60%程度に形成される。そして、この内軸32に対しては、外側端部近くに前記外ホルダープレート30Aの回動基端301を、一例として溶接等の手段で固定する。
また、外軸33に対しては、その内側端部近くに内ホルダープレート30Bを外ホルダープレート30Aと同様に固定する。
これらホルダープレート30の投影形状、つまりプレート部分の正面視形状が、「く」の字状ないしはブーメラン形と表現できるような形態を具えており(
図1・
図2・
図5参照)、その自由端側が外曲がり状に形成されている。具体的には、前記内軸32または外軸33に固定された回動基端301に対し、車輪Wを支持するための保持部302が屈曲状に延長形成されている。
【0040】
このような構成からホルダープレート30は、スライドのみ、つまり相対的な接近・離反のみが許容されながら、内軸32・外軸33とともに、その軸芯を中心に一緒に回動するものであり、これをタイヤホルダ3のスライド嵌め合い同位相回転構造とする。このスライド嵌め合い同位相回転構造は、前記外軸33を内軸32に対して非回転スライド嵌め合い構造としたことが大きく起因するものであり、本実施例では、このような回動構造によって、ホルダープレート30は、保持部302が支承空間S2に突出して車輪Wを保持する作用位置と、保持部302が支承空間S2から退去して車輪Wを保持しない退去位置とに移動する構成となっている。
【0041】
またホルダープレート30は、上記
図5に示すように、作用位置では、回動基端301の外側端縁(「く」の字の外側)をラックアーム25の外上面25b(またはホルダーブラケット31)に当接させて、保持部302を支承空間S2に突出させた起立姿勢となり、この姿勢で「く」の字を成すホルダープレート30の重心が安定し、作用位置たる起立姿勢を安定的に維持するように構成されている。
一方、退去位置では、回動基端301の内側端縁(「く」の字の内側端縁)をラックアーム25の外上面25b(またはホルダーブラケット31)に当接させて、保持部302が支承空間S2から退去した下向き姿勢となり、「く」の字を成すホルダープレート30の重心が安定し、退去位置を維持する構成となっている。
このように本実施例では、ホルダープレート30は、「く」の字状ないしはブーメラン形という自身の屈曲形状を生かして、作用位置及び退去位置を安定的に維持する構成となっている。
【0042】
更に外ホルダープレート30Aと内ホルダープレート30Bとは、上述したように間隔寸法を調整自在とするものであって、その操作はアジャストボルト35によって成される。まずアジャストボルト35は、メネジブロック351とネジ嵌合するように設けられ、このメネジブロック351が前後方向一対で設けられているホルダーブラケット31における内側のホルダーブラケット31に対し、その内側面に溶接等で設けられる(
図6の拡大図参照)。
そしてメネジブロック351にネジ嵌合したアジャストボルト35は、内側端部に握り部材となる操作ノブ352を具えるとともに、他端となるボルト先端側が押圧端353となって、内ホルダープレート30Bの側面(内側)に当接するように構成されている。従ってアジャストボルト35を締め込むと、その押圧端353が内ホルダープレート30Bを外ホルダープレート30A側に押し込み、両者の間隔を調整する(縮める)構成となっている。なお、アジャストボルト35による押し込みを受けて移動する内ホルダープレート30Bの位置が、明確に目視確認できるよう、例えば上記
図6の拡大図に示すように、至近のラックアーム25の外上面25bに幅確認ゲージ36を設けることが好ましい。因みに、この幅確認ゲージ36は、内ホルダープレート30Bの位置確認をするためであるから、移動しない部材、例えば内軸32に形成することも可能である。
また、本実施例では外ホルダープレート30Aは、上述したように内軸32の端部に固定されており、移動しない構成となっているが、外ホルダープレート30Aと内ホルダープレート30Bとを共に接近・離反できるように構成することも可能である。
【0043】
次に、タイヤホルダ3によって車輪保持状態を確実にするための保持フック37について説明する。
保持フック37は、一例として
図5に示すように、内ホルダープレート30Bの側面に回動自在に取り付けられる板状のフック部材であって、回動支点371をほぼ中間部位として、係止部372と握り部373とが、その投影形状、つまりプレート部分の正面視形状が、ほぼL形に屈曲したような形状を採る。そして、係止部372の先端部が鉤状に形成されて、フック作用部372Hを構成している。
この保持フック37は、タイヤホルダ3が、支承空間S2に突出して車輪Wを保持する作用位置になった際に、前記フック作用部372Hが、ラックアーム25の内上面25aに設けられている支承ローラ26に係止するように回動自在に構成され、これにより保持フック37による支承ローラ26への係止が維持される。このためフック作用部372Hを支承ローラ26に係止させた状態では、保持フック37を具えたタイヤホルダ3が、支承ローラ26から離反してしまうことが防止され、タイヤホルダ3が作用位置から退去位置に不用意に戻ることがないものである。
なお、保持フック37を支承ローラ26に係止させる回動操作は、作業者Mの手作業によって行われるものであり、ホルダープレート30を起立姿勢つまり作用位置に移動させた直後に行われる(
図8参照)。
【0044】
次に、昇降支持台2を平面視で回転させるとともに、基台1との間で相対的な位置決め、即ち非回転状態に設定するための回転操作部材4について説明する。このものは一例として
図3に示すように、昇降支持台2の下面に設けられたピボットブラケット40におけるピボット軸41に、角パイプ状の操作ロッド42の一端部を回動自在に接続した構成を採る。この回転操作部材4たる操作ロッド42は、ピボット軸41において自由状態に垂下しているものであり、その状態では操作ロッド42の下部、つまり上記ロック片16に当接する部位がロック凹部16aに嵌まり込むように係合した状態を出現させ、昇降支持台2を非回転状態に設定している。この構成において、操作ロッド42は充分に長い棹状を呈しているから、たとえ昇降支持台2が上死点近くにあったとしても、操作ロッド42は相対的に間隔が隔たったロック片16の位置に操作ロッド42の一部(この場合は自由端側)が必ず当接係合し、非回転状態を維持することができる。
【0045】
ここで本実施例では、ピボット軸41の両端、より詳細には昇降支持台2から突出する両端位置に補助操作杆42Aを設ける。この補助操作杆42Aは、操作ロッド42がロック作用状態の姿勢をとっている状態においてやや先上がり状態に設けられている。
そして昇降支持台2を基台1に対し相対的に回転させる場合には、補助操作杆42Aを反時計周り(作業者Mから視て反時計周り)に回動させることで、操作ロッド42を上方に持ち上げるようにする。これにより操作ロッド42とロック片16との噛み合いが外れ、この外れた状態で操作ロッド42を旋回させれば昇降支持台2を適宜回転させることができる。
なお、垂下状態から持ち上げられ、ほぼ水平状態を呈した操作ロッド42、すなわちロック片16との噛み合いが外れた操作ロッド42は、テーブル基板23の下部に設けられたマグネット43に吸着・保持させることができ、これにより水平状態を呈した操作ロッド42が維持され、昇降支持台2の回転が円滑に且つ確実に行える。
【0046】
このようにして昇降支持台2を適宜の角度、回転させたら、すなわち昇降支持台2を平面視で左右に90度または180度回転させたら、昇降支持台2を再度、固定状態とする。この操作は、上記と逆であり、補助操作杆42Aを逆方向(時計周り)に回動させることで、マグネット43による吸着・保持を解除するとともに、操作ロッド42を略水平状態から垂下状態にして、最終的に操作ロッド42の下部をロック凹部16aに嵌め込むようにすることでロック完了となる。
因みに、本実施例では、上述したように操作ロッド42を回動させるための補助操作杆42Aを、ピボット軸41の両端に設けたが、これは昇降支持台2を180度水平回転させた場合も作業者Mが元の位置から操作ロッド42の操作が容易に行えるように考慮したためである。
【0047】
また本実施例では、作業者Mから視て、右側のラックアーム25の下方手前側(後方側)に、ハンドツールや部品(車輌Vから取り外した後のボルト・ナット等)を一時置きするためのサイドトレーSTが設けられ、また当該ラックアーム25の下方前方側には、インパクトレンチホルダーIHが設けられている。
ここで本実施例では、作業者Mから視て、左側のラックアーム25の下方には、これらサイドトレーSTとインパクトレンチホルダーIHが対称位置になるように設けられている。すなわち左側のラックアーム25の下方手前側(後方側)にインパクトレンチホルダーIHが設けられ、また下方前方側にサイドトレーSTが設けられている。これは上記補助操作杆42Aと同様に、昇降支持台2(ラックアーム25)を180度水平回転しても、作業者Mの作業性が変わらず、高効率で作業が行い得るように考慮したためである。
【0048】
本発明のホイールドーリーCは、以上のような基本構造を有するものであり、以下、このホイールドーリーCを用いて、車輌Vから車輪Wを取り外す態様と、取り外した車輪Wを車輌Vに取り付ける態様、とりわけISO方式について説明する。
なお、以下の説明にあたっては大型トラック後輪のダブルタイヤを単輪ずつ取り外す態様について主に説明する。もちろん、このような作業においては、当然ながらダブルタイヤの外車輪W1を取り外してから、内車輪W2を取り外す態様となる。
因みに、車輪Wの取り外し作業としては、ハブやドラム付きで車輪W(ホイール)を車輌V(車体)から取り外すこともあれば、ハブやドラムを車輌側に取り付けたまま、ホイール付きの車輪Wのみを取り外すこともあり、以下の説明では後者について説明する。また車検整備時、特に大型トラックの場合には、後輪のダブルタイヤを単輪ずつハブから取り外して点検整備する作業が法制上、義務づけられている。
またダブルタイヤを単輪ずつ取り外すにあたっては、まず外車輪W1をラックアーム25の先端側に載置してから、ラックアーム25(ホイールドーリーC)を180度水平回転させた後、内車輪W2をラックアーム25の反対側の端部(当初位置の後端側)に載置するものとする。すなわち最初に載せた外車輪W1と、後から載せた内車輪W2との間に空間を開けて、これらをラックアーム25上に載置するものである。
【0049】
(1)車輌の状態
車輪Wが取り外される車輌Vは、一例として
図1に示すように、事前にリフトLで適宜の高さにリフトアップされる。なお、この高さは、作業者Mが立ち姿勢で作業が行える高さに設定される。
また、実質的な取り外し作業の前に、取り外し対象となる車輪Wの車軸に固定してあるナットを、インパクトレンチ等を使って弛めておき、手で取り外せる状態にしておく。ただしナットは完全には取り外さないものであり、これは車輪Wの落下防止のためである。
【0050】
(2)ホイールドーリーの始発状態
一方、ホイールドーリーCは、通常、昇降支持台2(ラックアーム25)を、車輌Vのリフトアップ状態を考慮して、車輪Wを下支えできる低い位置に設定される。これはホイールドーリーCを車輪Wの真下にスムーズに差し込むことができるようにするためである。またタイヤホルダ3についても、同様の理由から、支承空間S2に突出しない退去位置に設定される。
【0051】
(3)外車輪の取り外し
(i) タイヤホルダの設定
まずホイールドーリーCでは、一例として
図7(a)に示すように、タイヤホルダ3を退去位置にしたまま、取り外す車輪Wのタイヤ幅よりわずかに広い幅位置にスライド移動させる。この移動は、四カ所全てのホルダープレート30において行われるが、本実施例では外ホルダープレート30Aが内軸32に固定され、前後方向に移動しないため、内ホルダープレート30Bのみを前後方向に移動させるものである。ここで内ホルダープレート30Bの移動は、ラックアーム25の外上面25bに設けられた左右の幅確認ゲージ36を利用すると、左右のプレート位置をほぼ同じ位置(初期設定位置とする)に合わせることができる。
このようにして内ホルダープレート30Bを初期設定位置にセットしたら、操作ノブ352を回転させてアジャストボルト35の先端を、内ホルダープレート30Bの側面(内側)に当接させ、内ホルダープレート30Bが初期設定位置よりも広がらないようにする。
【0052】
(ii)ホイールドーリーの車輪下方への移動(差し込み移動)
その後、作業者Mが、ホイールドーリーCの回転操作グリップ29等をホールドして、ホイールドーリーC全体を移動させ、ラックアーム25を外車輪W1のほぼ真下位置に移動させる。
この際、車輪W(外車輪W1)のタイヤセンターと、左右二本のラックアーム25の中心とをほぼ合致させるように(
図7(b)中のCL参照)、また上記
図7(a)に示すように、外ホルダープレート30Aが外車輪W1のタイヤ幅裏面の直近位置に達するように、ホイールドーリーCを車輪Wの下方に差し込むように移動させる。
【0053】
(iii) ホルダープレートの起立
その後、
図7(b)・
図8に示すように、前後・左右のホルダープレート30を全て、退去姿勢から起立させ作用位置に姿勢変更する。この際、本実施例では外ホルダープレート30Aと内ホルダープレート30Bとが、一体で回動するため、作業者Mは、いずれか一方、例えば手前側に位置する内ホルダープレート30Bのみを回動させればよい。また内ホルダープレート30Bを回動させる際には、保持部302を把持して、これを起こすように回動させてもよいが、内ホルダープレート30Bに取り付けられた保持フック37を把持部として操作してもよい。そして、ホルダープレート30を作用姿勢に起立させることにより外車輪W1は、下辺の前後左右が四枚のホルダープレート30に挟まれる状態となる。
また、
図8に示すように、ホルダープレート30を起立させた後に、保持フック37を回動させて、このもののフック作用部372Hを支承ローラ26に係止させ、ホルダープレート30の起立状態を維持するようにするものである。
なお、この段階では、まだラックアーム25(支承ローラ26)が外車輪W1に接触していないため、厳密にはラックアーム25は外車輪W1を支持していないが、後述するようにラックアーム25を上昇させた際には、四枚のホルダープレート30がタイヤ下辺の前後左右を確実に挟むようになり、単輪ずつ取り外す場合であっても、車輪Wをラックアーム25上で転倒させてしまうことがなく、直立状態で安定して載置することができる。
【0054】
(iv)内ホルダープレート位置の微調整(プレート幅の微調整)
その後、外車輪W1と内ホルダープレート30Bとのクリアランスを、アジャストボルト35を回転させて1cm~3cmに微調整する。なお、この内ホルダープレート30Bの微調整は、必要に応じて行われるものであり、取り外す車輪Wの幅が、毎回ほぼ同じであるような場合には、省略することができる。
【0055】
(v) ラックアームによる車輪の支持(ナットの取り外し)
その後、作業者Mがフットペダル14を煽るように足動操作して昇降支持台2(ラックアーム25)を上昇させ、ラックアーム25で外車輪W1を支持する。このようなラックアーム25の支持により外車輪W1はラックアーム25、より詳細には支承ローラ26によって支承され、支承空間S2に収容された状態となる。またラックアーム25を上昇させて外車輪W1を支持することにより、車軸の負荷が極小になり、この状態で実質的な車輪Wの取り外し作業が行われる。
具体的には、弛めてあったナットを作業者Mの手作業によって、車体側、すなわちブレーキドラム一体のハブアッシーから取り外すものであり、取り外したナットは、作業者Mの手元付近もしくは腰高近くに位置するサイドトレーSTに一時的に収容しておくことができる。
【0056】
(vi)ホイールドーリーの引き抜き移動
その後、作業者MがホイールドーリーC全体を外車輪W1の下から車輌側部に引き抜くように移動させる。これによりホイールを伴った外車輪W1をラックアーム25上に載置した状態で、車輌Vから取り外すことができる。
この際、外車輪W1が内車輪W2と強固に固着している場合には、作業者Mが単にホイールドーリーCを引っ張っても、外車輪W1が内車輪W2から容易に分離しないこともあり得るが、このような場合でも支承空間S2に突出した外ホルダープレート30Aが、外車輪W1のタイヤ幅裏面に係止状態で当接するため、ホイールドーリーCの引き抜き動作を数回、繰り返すことにより、外車輪W1を内車輪W2から引き離して、このものを車輌Vから取り外すことができる。
【0057】
(vii) ラックアーム(昇降支持台)の180度水平回転
その後、ラックアーム25(昇降支持台2)を180度水平回転させるものであり、この操作は、本実施例では、まず補助操作杆42Aを反時計周り(作業者Mから視て反時計周り)に回動させることで、垂下状態の操作ロッド42を水平状態に回動させるようにするものである。これにより操作ロッド42とロック片16との噛み合いが外れ、昇降支持台2を回転自在とすることができる。因みに、ほぼ水平状態とした操作ロッド42は、テーブル基板23の下部に設けられたマグネット43によって吸着・保持され、水平状態すなわち昇降支持台2の回転可能状態が維持される。
このような状態で昇降支持台2を水平に180度回転させるものであり、その後、上記とは逆の操作、すなわち補助操作杆42Aをロック側に回動させ、マグネット43による吸着・保持を解除するとともに、操作ロッド42を略水平状態から垂下状態に戻すようにする。これにより操作ロッド42の下部を最終的にロック凹部16aに嵌め込み、昇降支持台2すなわちラックアーム25を回転しないように固定する。
【0058】
(4)内車輪の取り外し
その後、上述したように再度、ホイールドーリーCを内車輪W2の真下に差し込むようにして、今度は内車輪W2を取り外す。そのためラックアーム25(昇降支持台2)の180度水平回転が終了したら、例えば作業者Mがリリースペダル15を踏んで、ラックアーム25を下降させておき、ホイールドーリーC(ラックアーム25)が内車輪W2の真下位置に円滑に差し込めるようにしておく。
また、
図7(c)に示すように、ラックアーム25の端部(初期設定位置の先端側)には既に外車輪W1が載置されているため、ホイールドーリーCを差し込む際には、外車輪W1が載置されていない方(初期設定位置の後端側)からラックアーム25を内車輪W2の真下位置に差し込むものである。
なお、その他の取り外し態様は、基本的に外車輪W1を取り外すときと同じ操作・手順であるため、詳細な説明は省略する。
【0059】
(5)点検(車輪、締め付け状態)
以上のようにして外車輪W1と内車輪W2とを取り外した後、取り外した車輪Wやこれを締め付けているホイールナット・ホイールボルトの点検が作業者Mによって行われる。
この際、特に車輌側の点検を行うにあたっては、外車輪W1と内車輪W2とを載せたホイールドーリーCを、車輌Vから幾らか離れるように側方に移動させ、車輌Vとの間に作業者Mが入り込むスペースを確保することによって、そこでの点検整備作業を行い易くする。
このようにして作業者Mは、車輪W全体、ホイール、タイヤ、車輪締め付け用のホイールナット・ホイールボルト等の点検整備を実施する。なお車輪Wは、ラックアーム25上において外車輪W1と内車輪W2とが、互いにホイールの接合面を外方に向けるように載置されるため、ホイールの点検が行い易い。また外車輪W1と内車輪W2との接合面を点検した結果、サビなどがあれば極力除去される。
【0060】
(6)従来整備手順に向けた車輪の組み付け
(i) ホイールドーリーの準備
以上のようにして、点検整備作業が終わったら、ホイールドーリーCに載置していた車輪Wを車輌V(車軸)に組み付ける。車輪Wの組み付け順は、当然ながら内車輪W2、外車輪W1の順となる。
また、車輪Wの取り付けにあたり、ホイールドーリーCでは、車輪Wが載置された昇降支持台2(ラックアーム25)を適宜、回転させて、車輪Wの取付面を、車輌Vの側面(車輪取付部)に対向した状態とし、ホイールドーリーCを車軸部に移動させる。
なお、取り付け時には、ホイールドーリーCに載置した車輪Wの中心高さと、車輪取付部(車軸)の中心高さとを合致させるように、昇降支持台2の高さを調整しておく。
また本実施例では、ラックアーム25上の車輪Wは、直接的には支承ローラ26で支承されているため、取り付け時には、車輪Wを自在に回転させることができる。このため車輪側のボルト孔位置と、車軸側のボルトとを容易に合わせることができ、約100kgとなる大型トラックの車輪Wであっても容易に取り付け位置を合わせることができる。
因みに、支承ローラ26上で車輪Wを回転させると、回転する車輪Wが起立状態のホルダープレート30に接触することがあるが、本実施例では保持フック37を支承ローラ26に係止させているため、このような接触が生じてもホルダープレート30が退去位置に戻ってしまうことがなく、車輪Wを挟む作用位置を確実に維持することができ、車輪Wの自立状態を確実に維持することができる。
【0061】
(7)ホイールドーリーの押し込み移動
そして、このような状態でホイールドーリーCを車輌側へ押し込むように移動させるものであり、これによりラックアーム25上に載置された内車輪W2は、車輪側のボルト孔位置に、車軸側のボルトが差し込まれる。
【0062】
(8)ナットの仮付け(仮締め付け)
その後、内車輪W2のボルト孔に貫通させた車軸側ボルト(ホイールボルト)にナットを仮付けして、内車輪W2の落下防止を確実に行う。これはあくまでも仮付けであるから、仮付けするナットの数は一個~数個で充分であり、また仮付け作業は作業者による手作業、いわゆるハンドで行うものである。また、この作業を行う際、作業者Mの手前側には、直立状態の外車輪W1が位置するが、仮付け対象の内車輪W2と外車輪W1との間には間隔があり、これが作業スペースとなるため、作業者Mは確実に奥の内車輪W2に手(腕)を差し込むことができ、ナットを円滑に仮締めすることができる。
【0063】
このようにして内車輪W2の仮付けが終了したら、ホイールドーリーCを車輌Vから引き抜き(スムーズに引き抜きできるように適宜、昇降支持台2の高さを下げる)、次いで昇降支持台2を180度水平回転させて、今度は外車輪W1を取り付ける。
この際、外車輪W1を所望の取り付け高さや位置に設定したら、まず内車輪W2を仮止めしたナットを外す。ここでも作業者Mの手前側には、直立状態の外車輪W1が位置するが、内車輪W2と外車輪W1との間には間隔があり、これが作業スペースとなるため、作業者Mは確実に奥の内車輪W2に手(腕)を差し込むことができ、ナットを円滑に取り外すことができる。
また、この状態で内車輪W2のボルト孔に差し込んだホイールボルトは、外端側がスタッドボルトのように突出しているから、ここに外車輪W1のボルト孔を差し込むように取り付け、その後、ホイールボルトにホイールナットを全数、ネジ込んで外車輪W1を固定する。
【0064】
(9)車輪を取り付けた状態(従来点検に備えた復元状態)
この状態は、あたかもダブルタイヤ状の後車輪を、点検前の状態に戻した状態であり、この後、従来、ダブルタイヤ状のまま行われていたアスクルハウジング、ブレーキ周りの点検が行われる。
この点検にあたっては、既に述べた車輪Wの点検時に取り外された車輪Wを、そのまま外した状態として、ブレーキドラムを外してブレーキ周りの点検を行うことも不可能ではない。しかしながら、実際にはブレーキドラムの重量も数十kgの重さに達するため、これを単独で取り外すには、支承ドーリー等を別途、用意しなければならず、実作業として合理的でない。
このため一旦、ダブルタイヤ状の車輪Wをブレーキドラム一体のハブアッシーに取り付けた上で、改めてこれを車体から取り外し、アスクルハウジング、ハブグリス交換、ブレーキドラム、ブレーキシュー等の、従来から行われていた手順での整備が行われる。
なお、車体から取り外されてホイールドーリーCに搭載された車輪Wのハブに対して行うハブグリス交換などの作業は、車軸線方向からハブに向き合って行う作業であり、ホイールドーリーCを車輌Vの側方(車輌Vの幅方向)に真っ直ぐ後退させた位置であっても、限られた作業ストール幅の範囲内であり、車輌Vと車輪Wの間に作業者が立って、車輪Wのハブに対面して作業するには、余裕のある作業スペースが確保できない。
そこで、昇降支持台2(ラックアーム25)を基台1に対して左右いずれかに90度水平回転してロックすることが望ましく、このようにすることでホイールドーリーCに搭載された車輪Wの車軸線が作業ストールの長手方向を向くことになり、車輪Wのハブに向き合っても充分な作業スペースを確保することができる。
また、このような作業に伴い、ドライブシャフトDを車輌Vから抜き取るが、抜き取ったドライブシャフトDは、ラックアーム25内部のシャフト収め部251に収容するものである。ここで本実施例では、ドライブシャフトDの差し込み側となる、シャフト収め部251の後端側にオイル容器27が設けられ、またシャフト収め部251の前端側にオイル留め28が設けられているため、ドライブシャフトDに付着したオイルが整備工場の床面に落下して、作業環境を悪化させてしまうことがないものである。
そして、上記点検整備作業後は、もちろん昇降支持台2(ラックアーム25)を水平方向に90°戻して、ダブルタイヤ状の車輪Wを車輌Vに取り付けるものである。
【0065】
(10)その他の取り外し態様(取り付け態様)
ダブルタイヤを単輪ずつ取り外す態様(取り付ける態様)は、以上述べた態様となり、以下、他の取り外し態様について概説する。
例えば中型トラックでは、後輪のダブルタイヤを、この連接状態のまま取り外すことがある。これは上述したように、車検時にホイールをハブから一旦取り外して点検することが法的に義務づけられているのは、大型トラックのみであるからである。
また例えば小型トラックでは、後輪のダブルタイヤと前輪のシングルタイヤとを同一のホイールドーリーC上に載置して取り外すこともあり、左右のラックアーム25上には、計三本の車輪Wが載置されることになる。因みに、この場合には、前輪シングルタイヤを一対の外ホルダープレート30Aと内ホルダープレート30Bとで挟むように保持した後、ラックアーム25を180度回転させて、後輪ダブルタイヤをハブ付き状態で載置することができる。また、後輪ダブルタイヤは、ラックアーム25上で自立できるため、載置にあたっては、必ずしもタイヤホルダ3を起立させた状態、つまり作用位置にする必要はない。もちろんタイヤホルダ3を作用位置として、ダブルタイヤを挟むように保持しても構わない。
更に、他の取り外し態様としては、例えば中小型トラックや乗用車の場合、片側の全輪をホイールドーリーC(ラックアーム25)上に載置することも可能である。
【0066】
そして、このような種々の載置形態が採り得ることから、本発明ではホイールドーリーCの必要数を大幅に削減することができたものである。
すなわち大型トラックは、トレーラを牽引するトラクター以外、一例として
図11に示すように、いわゆる3軸車(ハブドラム付き6輪)と4軸車(ハブドラム付き8輪)とが主流であり、4軸車の市場保有台数は約30%にもなる。
ここで一般的な3軸車は、例えば
図11(a)に示すように、前軸が1軸でシングルタイヤ(左右で2本)、後軸が2軸でそれぞれダブルタイヤ(左右で8本)であり、合計10本のホイール付きシングルタイヤを装備している(ただし3軸車でも前輪二軸がシングルタイヤ、後輪一軸がダブルタイヤという車種も一部ある)。このため従来のホイールドーリーC′で、ホイール付きシングルタイヤ(車輪W)を1本ずつ分離脱着搭載しようとすると、計10基のホイールドーリーC′が必要となる。
しかしながら、一般的な3軸車であれば、本発明のホイールドーリーCを使えば、計6基で済む。
以下、この削減効果について詳細に説明する。
まずホイールドーリーCは、点検整備作業時、車輌V(車軸)の左右に配置して使用するものであり、左側と右側を混用することはない。これは左右混用すると、却って作業が不効率となるためである。このため例えば前軸輪のシングルタイヤは、1基のホイールドーリーCで1本のホイール(車輪W)を脱着搭載するとしても、後軸ダブルタイヤから分離する左右の8本のシングルタイヤ(車輪W)は、4基のホイールドーリーCで着脱搭載することができるため、計6基のホイールドーリーCで済むことになる。
【0067】
また4軸車は、
図11(b)に示すように、前輪二軸がシングルタイヤで、後輪二軸がダブルタイヤであるため、ホイール付きシングルタイヤが合計12本装着されている。ここで後輪二軸の8本のシングルタイヤについては、前述の3軸車の後輪二軸と同じ対応を採ることができる。また前輪二軸のシングルタイヤ4本(左右各2本)については、1基のホイールドーリーCを前輪の二軸間で移動させる必要はあるものの、車輌片側のシングルタイヤ2本を1基のホイールドーリーC(左右で計2基)によって、分離脱着搭載することができる(ハブドラム付きでも)。従って4軸車の場合も、本発明では6基のホイールドーリーCで済むことになる。この点、従来のように全輪で合計12本装着されているホイール付きシングルタイヤを、1基のホイールドーリーC′につき1本ずつ分離脱着搭載した場合には、計12基のホイールドーリーC′が必要になるものであり、本発明ではホイールドーリーCの必要数を大幅に削減することができた。
このため整備工場としては、どの様な車種(軸数)の大型トラックが入庫しても、本発明のホイールドーリーCを1ストールに6基、配備しておけば効率的な車検整備作業が行えるものである。従って自動車整備業者にとっては、高い作業効率を維持したまま車検整備ストール内で使用するホイールドーリーCが大幅に削減でき、結果として作業スペースにも余裕ができ、点検整備作業が確実に行え、且つ設備コストも低減できるという効果を奏する。
【0068】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、ホイールドーリーCは、基台1に具えた転動輪13を利用して作業者Mが整備工場内を自在に移動させ得る構造であった。しかしながら、ホイールドーリーCの移動は、必ずしも転動輪13に限定されるものではなく、レール式も採ることもできる。
すなわちレール式のホイールドーリーCは、一例として
図9に示すように、整備対象車輌の側部に沿って車輌Vの前後方向に敷設される縦レールR1と、この縦レールR1に沿って走る横行台車18と、この横行台車18に対してラックアーム25(昇降支持台2)を車輌側方から接近・離反させるように設けられた横レールR2とを具えて成り、これらが上記基本の実施例で述べた転動輪13に代えて設けられる。ここで
図9に示す構成例では、横レールR2が、横行台車18のフレーム内に設けられており、昇降支持台2を上昇させるホイールドーリーCの全高を少しでも低く抑えるように考慮している。
また、
図9に示す構成例では、縦レールR1を整備工場の床面とほぼ同じ高さに設け、床面に凹凸がほぼ形成されないようにしており、これにより作業者Mは、縦レールR1を気にすることなく、車輪Wの脱着作業や整備作業に専念することができる。
【0069】
また先に述べた基本の実施例では、タイヤホルダ3として「く」の字状またはブーメラン状を呈する複数のホルダープレート30を、ラックアーム25に対し回動自在に設けるようにして構成したが、タイヤホルダ3は、必ずしもこのような形態に限定されるものではない。具体的には、例えば
図10に示すように、ホルダープレート30をラックアーム25とは別体で形成し、作用位置に設定する場合、このホルダープレート30をラックアーム25に差し込んで、車輪Wの下辺を挟むようにすることが可能である。
なお、
図10に示す構成例では、ホルダープレート30は、全体として羽子板状に形成され、プレート状の保持部302の下方に、固定用の軸部304を連続して設けるように構成し、またラックアーム25には、これに対応してホルダープレート30の軸部304を受け入れる固定用孔255を複数開口形成したものである。
因みに、上記
図10の構成例では、ラックアーム25の固定用孔255が、外側よりも内側に多く形成されている。具体的には一本のラックアーム25に対し、その外側に二カ所、内側に三カ所の固定用孔255が形成されているが、外側は一カ所でも構わない。