(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075324
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】有機カルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/10 20060101AFI20220511BHJP
C07C 69/76 20060101ALI20220511BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
C07C67/10
C07C69/76 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186042
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 崇
(72)【発明者】
【氏名】田村 奈生
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 亮太
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC48
4H006BA69
4H006BC34
4H006BJ20
4H006KA04
4H006KC30
4H039CA66
4H039CD10
4H039CD40
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】高温や加圧などの過酷な条件を必要とせず、触媒の量を低減できる経済的かつ安全性が高い有機カルボン酸のエステル化の方法を提供する。
【解決手段】有機アミン触媒又は有機アンモニウム塩触媒の存在下において、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを反応させて有機カルボン酸エステルを製造する方法であって、有機カルボン酸のカルボキシ基に対する有機アミン触媒または有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)を基準として、有機カルボン酸を連続的又は断続的にジアルキル炭酸と反応させることを特徴とする有機カルボン酸エステルの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機アミン触媒又は有機アンモニウム塩触媒の存在下において、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを反応させて有機カルボン酸エステルを製造する方法であって、
有機カルボン酸のカルボキシ基に対する有機アミン触媒または有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)を基準として、有機カルボン酸を連続的又は断続的にジアルキル炭酸と反応させることを特徴とする有機カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
有機アミン触媒を使用し、以下の(i)又は(ii)に基づいて反応を行うことを特徴とする請求項1に記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
(i)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アミン触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が1.0よりも大きい場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを連続的及び/又は断続的に反応させる。
(ii)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アミン触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が1.0以下の場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを断続的に反応させる。
【請求項3】
有機アンモニウム塩触媒を使用し、以下の(iii)又は(iv)に基づいて反応を行うことを特徴とする請求項1に記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
(iii)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が0.1よりも大きい場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを連続的及び/又は断続的に反応させる。
(iv)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が0.1以下の場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを断続的に反応させる。
【請求項4】
前記有機カルボン酸が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
【化1】
(式中R
1は、炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~24の芳香族基または置換基を有していてもよい炭素数6~24の芳香族基であり、nは2~6の整数を表す。)
【請求項5】
前記有機アミン触媒が、アルキル基と芳香族基とのいずれかあるいは両方を有する1級アミン、2級アミン、3級アミン及びアミジンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1、2又は4のいずれかに記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
前記有機アンモニウム塩触媒が、テトラアルキルアンモニウム塩から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1、3又は4のいずれかに記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
前記ジアルキル炭酸が一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
【化2】
(式中R
2、R
3は、同一又は異なってもよい炭素数1~18のアルキル基又は炭素数6~12のアラルキル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機アミン触媒又は有機アンモニウム塩触媒の存在下において、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを反応させて有機カルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル化合物の一般的な製法として酸ハライドとアルコールとの縮合反応が知られているが、含ハロゲン化合物を使用することから、生成物中の残存ハロゲンの影響により、ポリマー合成の原料や電子情報材料用途など、残存ハロゲンや金属分が大きく影響する種々用途には適さない場合がある。また、塩基存在下、カルボン酸とアルキルハライドからエステルを合成する手法は一般的に基質適用範囲が広く、非常に効率的であるが、酸ハライドを用いた反応と同様に残存ハロゲンの問題を抱えたままである。一方で、古典的なエステル化法として、酸触媒によるアルコールとカルボン酸の縮合反応はハロゲンを使用しない方法ではあるが、平衡反応であることから大量にアルコールが必要となる。しかも、原料となるカルボン酸の溶解度が低い場合では反応系に工夫が必要となり、例えば特許文献1に示された方法のように、高温高圧条件が必要となり、工業的に実用的とはいえない。
【0003】
ところで、ハロゲンおよび金属を使用しない有機カルボン酸のエステル化法として、ジメチル炭酸をエステル化剤とした反応が知られている。例えば、非特許文献1や特許文献2は、ジメチル炭酸をエステル化剤として、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)の存在下で安息香酸などの各種カルボン酸からメチルエステルを得る方法を開示している。ただ、これらの文献に記載の方法では、カルボン酸(カルボキシ基)に対してDBUを少なとも1当量用いており、DBUがそれよりも少ない場合には反応速度が著しく劣ってしまうことが示唆される。しかも、これら非特許文献1や特許文献2は、原料カルボン酸のモノメチルエステルを得ることを教えるに留まる。
【0004】
他方、同じようにジメチル炭酸のようなジアルキル炭酸を用いてカルボン酸をエステル化する技術を教える文献として、特許文献3及び4や非特許文献2~3も知られている。特許文献3は、上記非特許文献1や特許文献2の発明者らが開示するものであり、目的のカルボン酸エステルを短反応時間かつ高い収率で得ているが、フロー反応装置内で高温高圧下、短時間で反応を完結させるため、マイクロ波照射かつ高温条件を必須としており、実用的な製法であるとは言えない。また、特許文献4についても、脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を含む油脂類とジアルキル炭酸を反応させて対応する脂肪酸アルキルエステルをわずか20分以内で収率よく得る方法を開示しているが、この方法でも高温及び加圧条件を必要とすることから実用的とは言えない。
また、非特許文献2においては、ジベンジルカーボネートとDBUを用いてカルボン酸をエステル化して対応するベンジルエステルを収率よく得ているが、この方法も高温条件かつDBUを化学量論量必要としていることから実用的ではない。さらに、非特許文献3においても、ジアルキル炭酸類を用いて種々の対応するカルボン酸エステルを合成する方法を教えているが、この文献の方法も収率と選択性を上げるためにマイクロ波照射下で行う必要があり実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-198813号公報
【特許文献2】米国特許第6515167号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2003/0144543号明細書
【特許文献4】国際公開WO2010/016441号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Organic Chemistry(2002),67(7),2188-2191.
【非特許文献2】Tetrahedron Letters(2003),44,4563-4565.
【非特許文献3】Tetrahedron(2015),71,293-300.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、含ハロゲン化合物や大量のアルコールを使用せずにジアルキル炭酸を使用したエステル化を教える報告はいくつかあったものの、ジアルキル炭酸を使用したこれまでの方法は、いずれも高温・加圧条件や化学量論量の塩基(触媒)の添加が必要であり、必ずしも実用的な方法とはいえない。しかも、カルボン酸ユニットを複数持つ有機化合物は溶解性が低いものもあるが、そのような溶解性の低い場合のカルボン酸を対象としたエステル化を収率高く行う報告例は、本願の発明者らの知る限りでは無かった。
そのため、ジアルキル炭酸を使用したカルボン酸のエステル化において、高温や加圧などの過酷な条件を必要とせず、反応に必要とされる触媒の添加量も低減が可能(調整が可能)であり、しかも、溶解性が低いカルボン酸原料にも適用可能であるような、工業的に有用な有機カルボン酸エステルの製造方法が求められていた。
【0008】
そこで、このような従来技術の存在の下、本願の発明者らが鋭意検討した結果、アミン触媒やアンモニウム塩触媒の存在下において有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを反応させて有機カルボン酸のエステルを得るに際して、有機カルボン酸のカルボキシ基に対する触媒の量に応じて、有機カルボン酸とジアルキル炭酸との反応のさせ方を工夫することに着目して、本発明を完成するに至った。
【0009】
従って、本発明の目的は、高温や加圧などの過酷な条件を必要とせず、触媒の添加量も低減(調整)でき、しかも、溶解性が低いカルボン酸原料にも適用可能であって工業的に有用なカルボン酸のエステル化法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)有機アミン触媒又は有機アンモニウム塩触媒の存在下において、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを反応させて有機カルボン酸エステルを製造する方法であって、有機カルボン酸のカルボキシ基に対する有機アミン触媒または有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)を基準として、有機カルボン酸を連続的又は断続的にジアルキル炭酸と反応させることを特徴とする有機カルボン酸エステルの製造方法。
(2)有機アミン触媒を使用し、以下の(i)又は(ii)に基づいて反応を行うことを特徴とする(1)に記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
(i)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アミン触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が1.0よりも大きい場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを連続的及び/又は断続的に反応させる。
(ii)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アミン触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が1.0以下の場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを断続的に反応させる。
(3)有機アンモニウム塩触媒を使用し、以下の(iii)又は(iv)に基づいて反応を行うことを特徴とする(1)に記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
(iii)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が0.1よりも大きい場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを連続的及び/又は断続的に反応させる。
(iv)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が0.1以下の場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを断続的に反応させる。
(4)前記有機カルボン酸が下記一般式(I)で表される化合物であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
【化1】
(式中R
1は、炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~24の芳香族基または置換基を有していてもよい炭素数6~24の芳香族基であり、nは2~6の整数を表す。)
(5)前記有機アミン触媒が、アルキル基と芳香族基とのいずれかあるいは両方を有する1級アミン、2級アミン、3級アミン及びアミジンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする(1)、(2)又は(4)のいずれかに記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
(6)前記有機アンモニウム塩触媒が、テトラアルキルアンモニウム塩から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする(1)、(3)又は(4)のいずれかに記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
(7)前記ジアルキル炭酸が一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の有機カルボン酸エステルの製造方法。
【化2】
(式中R
2、R
3は、同一又は異なってもよい炭素数1~18のアルキル基又は炭素数6~12のアラルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、ハロゲンおよび金属を使用しない条件で実施でき、高温や加圧などの過酷な条件を必要とせず、しかも、比較的高価である触媒の量を低減(調整)できることから、従来方法に比べ経済的であって安全性も高い。また、本発明の製造方法によって得られる有機エステル化合物は本質的にハロゲンおよび金属不純物を含まないことから、それらが問題となるポリマーや電子情報材料の原料の製造方法として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳しく説明する。
上記のとおり、本発明は、有機アミン触媒又は有機アンモニウム塩触媒の存在下において、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを反応させて有機カルボン酸エステルを得る方法に関するものである。
【0013】
本発明において原料となる有機カルボン酸は、特に限定されるものではなく、脂肪族、芳香族、脂環式、複素環式などの構造を有したモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、その他ポリカルボン酸を用いることができるが、具体的には、以下の一般式(I)で表されるカルボン酸である。混合物として使用することもできる。そして、本発明の方法によれば、汎用のカルボン酸類だけでなく、とくに、複数のカルボキシ基を有してベンゼン環やナフタレン骨格、ヘテロ芳香環を有する一般的な汎用有機溶媒に対する溶解性が低いようなカルボン酸も対象として収率よくエステル化できる点を特徴とする。本発明に好適な有機カルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2'-ビフェニルジカルボン酸、3、3'-ビフェニルジカルボン酸、3,4'-ビフェニルジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-スルホニルビス安息香酸、3,4’-スルホニルビス安息香酸、3,3’-スルホニルビス安息香酸、4,4’-オキシビス安息香酸、3,4’-オキシビス安息香酸、3,3’-オキシビス安息香酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、3,4-チオフェンジカルボン酸を挙げることができる。なお、式(I)中のカルボキシル基の位置については特に制限はされない。
【化3】
(式中R
1は、炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~24の芳香族基または置換基を有していてもよい炭素数6~24の芳香族基のいずれかであり、nは2~6の整数を表す。)
なお、R
1の芳香族基にはヘテロ芳香環も含まれる。
【0014】
本発明におけるジアルキル炭酸としては、文字どおりのアルキル基のみならず、アラルキル基その他の炭化水素基を有するものも含むこととする。本発明において、当該ジアルキル炭酸はエステル化剤兼溶媒として用いられる。具体的には、以下の一般式(II)で表される化合物であり、その中でも、R
2、R
3が1~10のアルキル基であるか、炭素数6~12のアラルキル基であることが好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、ベンジル基、アリル基であることがよい。さらに好ましくは、メチル基、エチル基、ベンジル基である。そして、当該ジアルキル炭酸の使用量は、重量でカルボン酸に対して1倍量以上が好ましく、より好ましくは5倍量以上がよい。ジアルキル炭酸の使用量が少なすぎると撹拌効率が低下し、有機エステルの収率が著しく低下する。また使用量が過剰に多く使用してもエステル化の反応効率に大きな差はなく、使用量を必要以上に多くすることは経済的ではないため、好ましい上限としてはカルボン酸に対して重量で20倍量以下とすることがよい。
【化4】
(式中R
2、R
3は、同一又は異なってもよい炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~12のアラルキル基を表す。)
【0015】
また、本発明においては、反応触媒として有機アミン触媒及び/又はテトラアルキルアンモニウム塩を用いる。
ここで、有機アミン触媒としては、アルキル基、芳香族基のいずれかあるいは両方を有する1級アミン、2級アミン、3級アミン、アミジンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。1級アミンとしては、例えばモノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミンなどのアルキルアミンや、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどのアミノアルコールや、アニリン、トルイジンのような芳香族アミン等が挙げられ、2級アミンとしてはジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのジアルキルアミンや、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミンや、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンのような複素環式アミン類等が挙げられ、3級アミンとしてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-ジメチルアミノエタノール、N-ジエチルアミノエタノール、ピリジン、2,6-ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。また、アミジンとしては、例えば1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカン-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)等を例示することができる。そのほか、イミダゾール、ピリミジン、プリンなどを挙げることもできる。
【0016】
他方、テトラアルキルアンモニウム塩としては、文字どおりのアルキルのみならず、一部にアラルキル基その他の炭化水素基を有するものであってもよく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド等を、特に制限なく用いることができ、それらの1種または2種以上の混合物で用いることができる。水溶液やメタノール溶液として市販されているものをそのまま使用することができる。
【0017】
上記触媒の使用量は適宜調整することができるが、通常、有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対するモル比(触媒/カルボキシ基)が0.001~5となるように調整することが好ましく、より好ましくは0.05~3、さらに好ましくは0.09~2である。具体的には、各触媒に応じて、後述するように添加の仕方(連続的、断続的)と共に決めることができる。通常、触媒の量が少なすぎると反応速度が遅くなり生産性が著しく低下し、一方で、使用量が一定以上となる範囲では反応速度を向上させる効果が小さくなり、触媒の使用量を必要以上に多くすることは経済的ではない。触媒は有機アミン、有機アンモニウム塩のどちらかを単独で使用するだけでなく、両方を混合して使用しても、反応を行うことができる。
【0018】
そして本発明においては、触媒の使用量に応じて、原料である有機カルボン酸とジアルキル炭酸との反応を連続的及び/又は断続的とすることに特徴を有する。すなわち後述の実施例でも示すように、原料有機カルボン酸として4,4’-ビフェニルジカルボン酸類のエステル化を例として本願の発明者らが種々検討したところ、有機アミン触媒と有機アンモニウム塩触媒のいずれにおいても、触媒の添加量と添加の仕方(断続的又は連続的)とにおける関連性が確認された。
ここで、本発明において、有機カルボン酸とジアルキル炭酸との反応が「連続的」とは、具体的には、反応系内において有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを、意図した時間間隔を設けることなく当業者が通常可能なごく短時間の一度の添加などの操作によって接触させることを意味するものとする。
【0019】
一方で、有機カルボン酸とジアルキル炭酸との反応が「断続的」とは、上記の「連続的」の意味とは反対に、意図した時間間隔を設けることにより、反応に使用される量の有機カルボン酸とジアルキル炭酸との一方又は双方の添加を分割して反応させることを意味するものとし、とくに、有機カルボン酸を分割して添加するようにする。この場合に設ける時間間隔としては、反応条件にも因るが、好適にはエステル化反応に適する条件で反応させた場合において、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーのピークの経時変化により原料の有機カルボン酸が反応消費される時間を検証するような事前実験の結果を基準に決めることができ、これら有機カルボン酸及びジアルキル炭酸の特性も踏まえると、通常は、1度の有機カルボン酸の添加につき、次の添加まで少なくとも1時間以上を空けることが好ましい。なお、分割する有機カルボン酸の1回あたりの添加量については、上記の基準に従う範囲において、有機カルボン酸及びジアルキル炭酸の総量に応じて適宜調整することができるが、添加量との関係についても事前実験で検証してもよい。
ここで、当該「断続的」に関しては、上記の基準の時間間隔を使ってごく微量の有機カルボン酸を連続的に添加するような『略断続的』な添加も含むことができるものとする。例えば、1回あたりの有機カルボン酸の添加量が、反応に使用される有機カルボン酸全量の10分の1~4分の1(モル比)を、そのままあるいは溶媒などで希釈し、これを少しずつ滴下して反応させるなどして、上記の時間間隔内において見かけ上では連続的であるが、実質的には断続的な反応とするようにすることができる。このような『略断続的』な添加方法において、その添加量及び添加速度についても、例えば、有機カルボン酸とジアルキル炭酸との反応経過を液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーを用いて事前に検証することにより定めることができる。
【0020】
そして、本発明においては、触媒として有機アミン触媒を使用する場合には、次の(i)又は(ii)に基づいて反応を行うこととする。すなわち、(i)全量を基準として、有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アミン触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が1.0よりも大きい場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸との反応を連続的でも断続的でもよいが、好ましくは、連続的に反応させる(ジアルキル炭酸に対して全量の有機カルボン酸を1度の操作で添加して反応させる)ことが効率的である。モル比の上限値は、前述の範囲で適宜定めることができる。
一方で、(ii)全量を基準として、有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アミン触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が1.0以下の場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを断続的に反応させる必要がある。すなわち、ジアルキル炭酸に対して、使用量のうちの一部の有機カルボン酸を添加したのち、少なくとも事前実験などで定められた反応時間(例えば、8時間程度)を空けたのちに、次の添加を実施する。これを複数回行って有機カルボン酸の添加を完了させることが好ましい。断続的な反応の時間間隔については、例えば、有機カルボン酸の1回あたり添加量を少なくすることにより、短くすることは可能である。モル比の下限値は、前述の範囲で適宜定めることができるが、収率なども勘案して反応に必要とされる触媒量から定められる。
【0021】
他方、触媒として有機アンモニウム塩触媒を使用する場合には、次の(iii)又は(iv)に基づいて反応を行うこととする。すなわち、(iii)全量を基準として、有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が0.1よりも大きい場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸との反応を連続的でも断続的でもよいが、好ましくは、連続的に反応させる(ジアルキル炭酸に対して全量の有機カルボン酸を1度の操作で添加して反応させる)ことが効率的である。
一方で、(iv)有機カルボン酸の1つのカルボキシ基に対する有機アンモニウム塩触媒のモル比(触媒/カルボキシ基)が0.1以下の場合は、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とを断続的に反応させる必要がある。すなわち、ジアルキル炭酸に対して、使用量のうちの一部の有機カルボン酸を添加したのち、少なくとも事前実験などで定められた反応時間(例えば、8時間程度)を空けたのちに、次の添加を実施する。これを複数回行って有機カルボン酸の添加を完了させることが好ましい。
(iii)及び(iv)におけるモル比の上限又は下限については、上記の(i)及び(ii)と同様の観点で定めることができる。
【0022】
このように、触媒の添加量に応じて、有機カルボン酸とジアルキル炭酸との反応を連続的、断続的とを分けることにより、生成される有機カルボン酸エステルの収率を良好にできることについては、詳細な原理はつかみきれていないものの、反応機構から以下のように推測される。ここで、有機カルボン酸とジアルキル炭酸とのエステル化が進むためには、以下の(A)~(C)のような3つ反応から成ると考えられる。
(A)触媒と有機カルボン酸とからカルボン酸塩(以下、aとする)が生じる反応。
(B)触媒とジアルキル炭酸とが反応して活性中間体(以下、bとする)が生じる反応。
(C)aとbとが反応することにより、有機カルボン酸エステルを生じると同時に、触媒が再生する反応。
すなわち、目的とする有機カルボン酸エステルは、上記のa及びbからのみ生成されるため、a及びbの生成が必要となると考えられる。その際、(A)の反応と(B)の反応とでは、おそらく(A)の反応のほうが圧倒的に速いと推測され、仮に、反応系において有機カルボン酸に対する触媒の量が不足する場合には、触媒がすべて(A)の反応(aの生成)に消費されてしまい、(B)の反応が生じない(bが生じない)ことが推測される。そのため、有機カルボン酸(カルボキシ基)に対する触媒が一定量以下の場合には、有機カルボン酸を連続的に一括で添加すると、(B)の反応が生じない(bが生じない)ことに起因して生成物である有機カルボン酸エステルが生成されないと考えられる。
【0023】
一方で、有機カルボン酸を断続的に少量ずつ添加した場合には、その段階では比較的十分量の触媒が反応系に存在することができるため、上記の反応Aと反応Bとによってaとbとが両方生成し、それにより有機カルボン酸エステルを生成することができると推測される。つまり、反応全体でみれば触媒は少ない量(いわゆる、触媒量)であるものの、有機カルボン酸を添加した各段階の反応では、触媒が有機カルボン酸に対して常に過剰な状態となるゆえに、上記のような本発明の方法が有効となると推測される。
【0024】
他方、本発明においては、有機アミン触媒を用いる場合よりも有機アンモニウム塩触媒を用いた場合の方が、触媒の量を10分の1程度まで低減できることが判明したが、これについても詳細な原理は定かではないものの、塩基性の違いや窒素原子上の置換基のサイズが大きな要因であると推測している。
【0025】
なお、本発明の方法においては、溶媒を使用することもできる。溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,4―ジオキサンなどを用いることができる。
【0026】
上記した方法において、反応温度は好ましくは20℃~200℃、より好ましくは50℃~100℃とするのがよいが、使用するジアルキル炭酸の沸点を上限値とする。合計の反応時間は、通常、好ましくは1時間~48時間、さらに好ましくは5時間~24時間とするのがよく、使用する原料などに応じて適宜調整することもできる。なお、ジアルキル炭酸などへの溶解性が低い有機カルボン酸を使用した場合には、反応が不均一系となるが、本発明の方法ではエステル化が良好に進行することを確認している。
【0027】
反応の終了は、例えば、液体クロマトグラフィーによりカルボン酸の消失を確認することで判断することができる。反応終了後の生成物(有機カルボン酸エステル)の回収については、特に制限はなく、ろ過などの通常の回収、精製手段によって行われるが、生成物が低溶解性であれば反応懸濁液をろ過する方法を採用することができ、簡便に、生成物を高収率かつ高純度で得ることができる。その場合のろ過により得られたろ液は、特別な操作を必要とすることなく、次の反応の溶媒として使用(再利用)することが可能である。その際の再利用した溶媒には原料である有機カルボン酸を添加するだけでよく、新たに触媒である有機アミンあるいは有機アンモニウム塩を添加する必要はない。
他方、生成物が溶媒への溶解性が高いものであれば、分液やカラムや蒸留などの精製手段により生成物を分離できるが、その場合は触媒である有機アミンあるいは有機アンモニウム塩と溶媒とが分離されてしまうことから、上記したろ液の再利用をすることは難しい。
【実施例0028】
以下に試験例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の試験例により何ら限定されるものではない。
【0029】
<断続添加のための事前実験>
後述する試験例3などにおいて原料有機カルボン酸を分割添加(断続的添加)するための時間などを検証する事前実験を以下のとおり実施した。
先ず、還流管を備えたフラスコに4,4’-ビフェニルジカルボン酸10g(41.6mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU、18.8g、124mmol)、およびジメチル炭酸72.1g(800mmol)を仕込んだ。90℃にて加熱撹拌しながら、1時間毎に液体クロマトグラフィーにより原料カルボン酸のピークを追跡した。加熱開始から約8時間で4,4’-ビフェニルジカルボン酸のピークが0.5面積%未満となった。
したがってこの事前実験によれば、触媒/カルボキシ基が1.5の場合、カルボン酸が消費されるまでに必要な時間は少なくとも8時間であると見積もられることが分かった。
【0030】
<試験例1>
還流管を備えたフラスコに4,4’-ビフェニルジカルボン酸500mg(2.1mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU、639mg、4.2mmol)およびジメチル炭酸3.56g(39.5mmol)を仕込んだ。90℃にて15時間加熱還流した。その後、薄層クロマトグラフィーによる分析では4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチルが痕跡量確認できるのみで、ほとんど反応は進行していなかった。結果を以下の表1に示す。
【0031】
<試験例2>
還流管を備えたフラスコに4,4’-ビフェニルジカルボン酸700mg(2.9mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(662mg、4.4mmol)およびジメチル炭酸5.22g(58mmol)を仕込んだ。90℃にて15時間加熱還流した。その後、薄層クロマトグラフィーによる分析を行ったが、4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチルの生成がまったく確認できず、反応が進行していなかった。結果を以下の表1に示す。
【0032】
<試験例3>
還流管を備えたフラスコに1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(662mg、4.4mmol)、ジメチル炭酸5.22g(58mmol)を仕込んだ。撹拌しながら90℃にて4,4’-ビフェニルジカルボン酸175mgずつを13時間ごとに合計4回(計700mg、2.9mmol)添加した。全量添加完了後、さらに13時間加熱還流した。室温まで冷却後、得られたスラリーをろ過し、ろ滓をメタノールおよび蒸留水で洗浄した。ろ滓を減圧乾燥して4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチル183mg(収率90%)を白色固体として得た。HPLC分析で得られた白色固体の純度は99.7%であることを確認した。結果を以下の表1に示す。
なお、HPLC分析の条件は以下のとおりであり、純度は以下のようにして求めた。以降も同様である。
・使用装置:SHIMADZU LC2010
・使用カラム:Lichrosorb PR-18, 内径4.6mm,カラム長250mm,粒子径5.0μm
・カラム温度:40℃
・注入量:30μL
・溶離液:アセトニトリルおよび0.1%リン酸水溶液
・検出器:UV(検出波長254nm)
・分析条件:60分間分析(0~20分はアセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=40/60一定、20~35分でアセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=90/10となるように設定、35~50分はアセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=90/10一定、50~55分でアセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=40/60となるように設定、55~60分はアセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=40/60一定)
・純度計算方法:ピークの検出を5分以降に設定し、すべてのピークの総面積に対するエステルのピーク面積の割合として算出した。
【0033】
<試験例4>
還流管を備えたフラスコに4,4’-ビフェニルジカルボン酸700mg(2.9mmol)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN、1.11mg、9.0mmol)およびジメチル炭酸5.22g(58mmol)を仕込んだ。90℃にて16時間加熱還流した後、室温まで冷却した。得られたスラリーをろ過し、ろ滓をメタノールおよび蒸留水で洗浄した。ろ滓を減圧乾燥して4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチル459mg(収率59.2%)を白色固体として得た。HPLC分析で得られた白色固体の純度は99.4%であることを確認した。結果を以下の表1に示す。
【0034】
<試験例5>
還流管を備えたフラスコに4,4’-ビフェニルジカルボン酸239mg(0.99mmol)、ジメチル炭酸2.1g(23mmol)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド262mg(37%-MeOH溶液、1.0mmol)を仕込んだ。撹拌しながら90℃で15時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られたスラリーをろ過し、ろ滓をメタノールおよび蒸留水で洗浄した。ろ滓を減圧乾燥して4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチル225mg(収率84.4%)を白色固体として得た。HPLC分析で得られた白色固体の純度は99.8%であることを確認した。結果を以下の表1に示す。
【0035】
<試験例6>
還流管を備えたフラスコに4,4’-ビフェニルジカルボン酸223mg(0.92mmol)、ジメチル炭酸2.0g(22mmol)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド47mg(37%-MeOH溶液、0.18mmol)を仕込んだ。撹拌しながら90℃で15時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーによる分析では4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチルが痕跡量確認できるのみで、ほとんど反応が進行していなかった。結果を以下の表1に示す。
【0036】
<試験例7>
還流管を備えたフラスコにジメチル炭酸2.0g(22.6mmol)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド49.6mg(37%-MeOH溶液、0.19mmol)を仕込んだ。撹拌しながら90℃にて4,4’-ビフェニルジカルボン酸57.8mgずつを8時間ごとに合計4回(計231mg、0.95mmol)添加した。全量添加完了後、さらに23時間撹拌した。室温まで冷却し、得られたスラリーをろ過し、ろ滓をメタノールおよび蒸留水で洗浄した。ろ滓を減圧乾燥して4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチル183mg(収率71.0%)を白色固体として得た。HPLC分析で得られた白色固体の純度は99.5%であることを確認した。結果を以下の表1に示す。
【0037】
<試験例8>
還流管を備えたフラスコに4,4’-オキシビス安息香酸208mg(0.81mmol)、ジメチル炭酸1.8g(20mmol)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド210mg(37%-MeOH溶液、0.81mmol)を仕込んだ。90℃にて15時間撹拌下した後室温まで冷却した。得られたスラリーをろ過し、ろ滓をメタノールおよび蒸留水で洗浄した。ろ滓を減圧乾燥して4,4’-オキシビス安息香酸ジメチル205mg(収率88.9%)を白色固体として得た。HPLC分析で得られた白色固体の純度は99.9%であることを確認した。結果を以下の表1に示す。
【0038】
<試験例9>
還流管を備えたフラスコに4,4’-ビフェニルジカルボン酸700mg(2.9mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1.3g、8.7mmol)およびジメチル炭酸5.22g(58mmol)を仕込んだ。90℃にて16時間加熱還流した後、室温まで冷却した。得られたスラリーをろ過し、ろ滓をメタノールおよび蒸留水で洗浄した。ろ滓を減圧乾燥して4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチル205mg(収率91%)を白色固体として得た。
この時得られたろ液に再度4,4’-ビフェニルジカルボン酸700mg(2.9mmol)を加え、同様の操作を行い、4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジメチル645mg(収率82.3%)を得たことを確認し、ろ液を再利用できることも確認した。
なお、いずれの生成物もHPLC分析で純度が99.5%であることを確認した。結果を以下の表1に示す。
【0039】
使用した化合物の略称は以下のとおりである。
DPDCA:4,4’-ビフェニルジカルボン酸
OBBAA:4,4’-オキシビス安息香酸
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DBN:1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン
TBAOH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
【表1】