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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075331
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】血圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20220511BHJP
   A61B 5/1171 20160101ALI20220511BHJP
【FI】
A61B5/022 300F
A61B5/1171 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186052
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】小林 達矢
(72)【発明者】
【氏名】山下 英之
(72)【発明者】
【氏名】巻田 茉耶
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB02
4C017AC04
4C017AD01
4C017FF08
4C038VA07
4C038VB11
4C038VB40
4C038VC05
(57)【要約】
【課題】静脈認証を行えるとともに、血圧を精度良く測定できる血圧計を提供すること。
【解決手段】本発明では、血圧測定用カフ20は、被験者の棒状の被測定部位90を周方向に取り巻いて装着される。投光部34E,34Fは、幅方向Yに関して、カフ20の片側または両側の縁部20e,20fに沿ってのみ配置され、被測定部位90のターゲット領域92の周辺92e,92fへ光Le,Lfを照射する。受光部35は、カフ20の内面20bのうちターゲット領域92に対向する特定部分20b1に沿ってシート状に設けられ、ターゲット領域92によって散乱または反射された光Le′,Lf′を受けて、ターゲット領域92の静脈パターンPxを含む像を得る。認証部は、静脈パターンPxを、予め登録されている基準静脈パターンPrと比較して、被験者について静脈認証を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者について静脈認証を行う機能を有する血圧計であって、
帯状に長手方向に延在し、被験者の棒状の被測定部位を周方向に取り巻いて、上記被測定部位のうち静脈が存するターゲット領域を覆う態様で装着される血圧測定用カフと、
上記カフが広がる面内で上記長手方向に対して垂直な幅方向に関して、上記カフの片側または両側の縁部に沿って配置され、上記被測定部位の上記ターゲット領域の周辺へ光を照射する投光部と、
上記カフの内面のうち上記ターゲット領域に対向する特定部分に沿ってシート状に設けられ、上記ターゲット領域によって散乱または反射された光を受けて、上記ターゲット領域の静脈パターンを含む像を得る受光部と、
上記像に含まれた上記静脈パターンを、予め登録されている基準静脈パターンと比較して、上記被験者について静脈認証を行う認証部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧計において、
上記受光部は、
上記カフの上記内面のうち上記特定部分に沿って配置されたシート状の撮像素子と、
上記撮像素子の上記ターゲット領域に対向する側の面に沿って配置されたシート状の結像素子とを含み、
上記結像素子は、この結像素子が延在する面に対して垂直な一方向の光を透過させる一方、上記一方向以外の方向の光を遮断し、
上記撮像素子は、上記結像素子を透過した光を受けて、上記ターゲット領域の上記静脈パターンを含む像を表す電気信号を出力する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血圧計において、
上記カフの外面に沿って配置された取付部材を備え、
上記取付部材の上記幅方向に関して両側の端辺領域は、上記カフの上記両側の縁部からそれぞれ上記幅方向に関して外向きに突出し、
上記投光部は、上記取付部材の上記端辺領域に搭載されることによって、上記カフの上記縁部に沿って配置されている
ことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項3に記載の血圧計において、
上記取付部材は、中央開口を取り囲む矩形枠状のフレキシブル基板であり、
上記フレキシブル基板の上記端辺領域は、上記中央開口に対向する辺から、上記長手方向に沿った方向に関して部分的に上記中央開口へ向かって突出した係合領域を有し、
上記係合領域は、撓んで上記カフの内面に沿って配置され、上記フレキシブル基板と上記カフとを係合している
ことを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項1または2に記載の血圧計において、
上記カフの内面に沿って配置された矩形状のフレキシブル基板を備え、
上記フレキシブル基板の上記幅方向に関して両側の端辺領域は、上記カフの上記両側の縁部からそれぞれ上記幅方向に関して外向きに突出し、
上記投光部は、上記フレキシブル基板の上記端辺領域に搭載されることによって、上記カフの上記縁部に沿って配置され、
上記受光部は、上記フレキシブル基板の上記端辺領域に挟まれた内部領域に搭載されることによって、上記ターゲット領域に対向する上記特定部分に沿って配置されている
ことを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項5に記載の血圧計において、
上記フレキシブル基板は、上記カフの上記長手方向に沿った方向に関して上記投光部と上記受光部とを搭載した搭載領域の両側に相当する部位に、上記カフを通すための一対のスリットを有し、
上記カフは、上記特定部分が上記フレキシブル基板の上記搭載領域の背面側に重なり、上記背面側から上記一対のスリットをそれぞれ通して上記被測定部位に対向する側へ延在する態様で、上記被測定部位を周方向に取り巻くようになっている
ことを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記カフの外面側に一体に取り付けられた本体を備え、
上記本体は、
上記認証部と、
上記カフに流体を供給して加圧し、または、上記カフから流体を排出して減圧する制御を行う圧力制御部と、
上記カフの圧力を検出する圧力検出部と、
上記圧力検出部の出力に基づいて血圧を算出する血圧算出部と
を搭載していることを特徴とする血圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、静脈認証機能を有する血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静脈認証機能と血圧測定機能を有する機器として、例えば特許文献1(特許第6027716号公報)に開示されているように、ユーザ(被験者)の手首を取り巻いて装着されるベルト部と、このベルト部と一体に形成された筐体部とを備えた、腕時計型の形状を有するものが知られている。筐体部には、ユーザの皮膚に接触する接触面に、投光用開口と受光用開口とが形成されている。また、筐体部には、投光用開口を通して皮膚の方向に光を投光する投光部と、受光用開口を通して投光した光の反射光を受光する受光部と、反射光の受光量から現在の静脈パターンを生成し、その静脈パターンと予め登録されている基準静脈パターン(本来の静脈パターン)とを比較して静脈認証を行う認証部と、上記反射光の情報を用いて脈波伝播時間を算出し、その脈波伝播時間を用いて相対血圧変動(血圧の変化量)を算出する相対血圧変動計測部とが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6027716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、静脈認証を行うとともに、血圧値を精度良く測定したいとのニーズがある。しかしながら、特許文献1に開示された機器では、血圧測定機能は、脈波伝播時間を用いて相対血圧変動を算出できるに止まっている。
【0005】
ここで、例えば、特許文献1に開示された機器において、ベルト部に手首を圧迫するための空気袋を内包して、オシロメトリック法により血圧値を測定することが考えられる。しかしながら、特許文献1に開示された機器では、筐体部のユーザの皮膚に接触する接触面に、投光用開口と受光用開口とが形成されている。このため、単にベルト部に空気袋を内包したとしても、動脈をうまく圧迫することができず、したがって、血圧値を精度良く測定することができない、という問題が生ずる。
【0006】
そこで、この発明の課題は、静脈認証を行えるとともに、血圧を精度良く測定できる血圧計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この開示の血圧計は、
被験者について静脈認証を行う機能を有する血圧計であって、
帯状に長手方向に延在し、被験者の棒状の被測定部位を周方向に取り巻いて、上記被測定部位のうち静脈が存するターゲット領域を覆う態様で装着される血圧測定用カフと、
上記カフが広がる面内で上記長手方向に対して垂直な幅方向に関して、上記カフの片側または両側の縁部に沿って配置され、上記被測定部位の上記ターゲット領域の周辺へ光を照射する投光部と、
上記カフの内面のうち上記ターゲット領域に対向する特定部分に沿ってシート状に設けられ、上記ターゲット領域によって散乱または反射された光を受けて、上記ターゲット領域の静脈パターンを含む像を得る受光部と、
上記像に含まれた上記静脈パターンを、予め登録されている基準静脈パターンと比較して、上記被験者について静脈認証を行う認証部と
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本明細書で、「被測定部位」は、被験者の上腕、手首などの上肢、または、足首などの下肢を含み、血圧測定の対象となる動脈が通っている部位を指す。「ターゲット領域」は、被測定部位のうち静脈パターンが取得されるべき領域を指す。
【0009】
「血圧測定用カフ」は、典型的には、被測定部位を圧迫するための流体袋を含む。
【0010】
血圧測定用カフについて、「長手方向」は、このカフが帯状に延在する方向を意味し、装着状態では被測定部位を取り巻く周方向に相当する。「幅方向」は、上記カフが広がる面内で上記長手方向に対して垂直な方向を意味し、装着状態では上記被測定部位が棒状に延在する方向に相当する。また、後述の「厚さ方向」は、長手方向と幅方向との両方(つまり、カフが広がる面)に対して垂直な方向を意味し、装着状態では上記被測定部位の外周面に対して垂直な方向に相当する。
【0011】
上記カフの「内面」とは、上記被測定部位を周方向に取り巻いた状態で、内周側となる面を指す。上記カフの後述の「外面」とは、上記被測定部位を周方向に取り巻いた状態で、外周側となる面を指す。
【0012】
「投光部」は、典型的には、発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)の列を含む。
【0013】
上記投光部が、上記カフの「幅方向に関して、上記カフの片側または両側の縁部に沿って」配置されているとは、例えば、上記カフに沿って取り付けられた取付部材において、上記カフの上記縁部に沿って配置されていてもよいし、または、上記カフの上記被測定部位とは反対の外面側に一体に取り付けられた本体において、上記カフの上記縁部に沿って配置されていてもよいことを意味する。
【0014】
「静脈認証」とは、人体の皮膚下にある静脈パターンの画像に対してパターン認識技術を使った生体認証の一つであり、現在測定中の被験者が、予め登録されている基準静脈パターンをもつユーザと同一人であるか否かを識別することを意味する。
【0015】
この開示の血圧計では、上記血圧測定用カフは、被験者の棒状の被測定部位を周方向に帯状に取り巻いて、上記被測定部位のうち静脈が存するターゲット領域を覆う態様で装着される(この状態を「装着状態」と呼ぶ。)。投光部は、上記カフが広がる面内で上記長手方向に対して垂直な幅方向に関して、上記カフの片側または両側の縁部に沿って配置されている。この配置に応じて、上記投光部は、上記被測定部位の上記ターゲット領域の周辺(すなわち、上記幅方向に関して上記ターゲット領域の片側または両側の周辺)へ光を照射する。受光部は、上記カフの内面のうち上記ターゲット領域に対向する特定部分に沿ってシート状に設けられ、上記ターゲット領域によって散乱または反射された光を受けて、上記ターゲット領域の静脈パターンを含む像を得る。認証部は、上記像に含まれた上記静脈パターンを、予め登録されている基準静脈パターンと比較して、上記被験者についての静脈認証を行う。これにより、現在測定中の被験者が、予め登録されている基準静脈パターンをもつユーザと同一人であるか否かを識別することができる。このように、この血圧計によれば、静脈認証を行うことができる。
【0016】
また、この血圧計では、上記装着状態で、血圧測定用カフに空気を供給して上記カフを加圧することによって、上記被測定部位が圧迫されて阻血される(加圧過程)。この加圧過程で、または、上記血圧測定用カフから空気を排出して上記カフを減圧する減圧過程で、例えばオシロメトリック法により血圧が測定される。このとき、上記投光部は、上記幅方向に関して、上記カフの中央領域(両側の縁部の間の領域)ではなく、片側または両側の縁部に沿って配置されている。したがって、例えば、上記投光部が厚さ1mm~2mm程度の発光ダイオード(LED)の列を含む場合であっても、上記投光部の存在が上記カフの圧迫性能を損なうことはない。また、上記受光部は、上記カフの内面のうち上記ターゲット領域に対向する特定部分に沿ってシート状に設けられている。したがって、上記受光部の存在が上記カフの圧迫性能を損なうことはない。したがって、この血圧計によれば、血圧を精度良く測定できる。
【0017】
一実施形態の血圧計では、
上記受光部は、
上記カフの上記内面のうち上記特定部分に沿って配置されたシート状の撮像素子と、
上記撮像素子の上記ターゲット領域に対向する側の面に沿って配置されたシート状の結像素子とを含み、
上記結像素子は、この結像素子が延在する面に対して垂直な一方向の光を透過させる一方、上記一方向以外の方向の光を遮断し、
上記撮像素子は、上記結像素子を透過した光を受けて、上記ターゲット領域の上記静脈パターンを含む像を表す電気信号を出力する
ことを特徴とする。
【0018】
この一実施形態の血圧計では、上記受光部に含まれた上記シート状の結像素子が、上記ターゲット領域によって散乱または反射された光を受けて、上記結像素子が延在する面に対して垂直な一方向(上記カフの厚さ方向、すなわち、上記被測定部位の外周面に対して垂直な方向に相当する)の光を通過させる一方、上記一方向以外の方向の光を遮断する。上記結像素子を透過した光は、上記ターゲット領域の静脈パターンを表すものとなって、上記シート状の撮像素子に入射する。上記撮像素子は、上記結像素子を透過した光を受けて、上記ターゲット領域の上記静脈パターンを含む像を表す電気信号を出力する。これにより、上記ターゲット領域の静脈パターンを含む像が得られる。
【0019】
一実施形態の血圧計では、
上記カフの外面に沿って配置された取付部材を備え、
上記取付部材の上記幅方向に関して両側の端辺領域は、上記カフの上記両側の縁部からそれぞれ上記幅方向に関して外向きに突出し、
上記投光部は、上記取付部材の上記端辺領域に搭載されることによって、上記カフの上記縁部に沿って配置されている
ことを特徴とする。
【0020】
ここで、上記取付部材の「端辺領域」とは、上記幅方向に関して真の端辺に連なる或る範囲の領域を意味する。
【0021】
この一実施形態の血圧計では、簡単な構成で、上記投光部が上記カフの上記縁部に沿って配置され得る。
【0022】
一実施形態の血圧計では、
上記取付部材は、中央開口を取り囲む矩形枠状のフレキシブル基板であり、
上記フレキシブル基板の上記端辺領域は、上記中央開口に対向する辺から、上記長手方向に沿った方向に関して部分的に上記中央開口へ向かって突出した係合領域を有し、
上記係合領域は、撓んで上記カフの内面に沿って配置され、上記フレキシブル基板と上記カフとを係合している
ことを特徴とする。
【0023】
「フレキシブル基板」とは、可撓性を有する基板を意味する。
【0024】
この一実施形態の血圧計では、簡単な構成で、上記投光部が上記カフの上記縁部に沿って配置され得る。しかも、この血圧計の組立工程で、上記フレキシブル基板の上記係合領域によって、上記フレキシブル基板と上記カフとが係合された係合状態にされ得る。これにより、上記血圧測定用カフに対して上記フレキシブル基板の位置決めが容易に行われる。したがって、組み立てが容易になる。
【0025】
一実施形態の血圧計では、
上記カフの内面に沿って配置された矩形状のフレキシブル基板を備え、
上記フレキシブル基板の上記幅方向に関して両側の端辺領域は、上記カフの上記両側の縁部からそれぞれ上記幅方向に関して外向きに突出し、
上記投光部は、上記フレキシブル基板の上記端辺領域に搭載されることによって、上記カフの上記縁部に沿って配置され、
上記受光部は、上記フレキシブル基板の上記端辺領域に挟まれた内部領域に搭載されることによって、上記ターゲット領域に対向する上記特定部分に沿って配置されている
ことを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の血圧計では、上記投光部と上記受光部とは1枚(共通)のフレキシブル基板に搭載されているので、簡単な構成で、上記投光部が上記カフの上記縁部に沿って配置され得、また、上記受光部が上記ターゲット領域に対向する上記特定部分に沿って配置され得る。しかも、この血圧計の組立工程で、上記血圧測定用カフに対して上記フレキシブル基板を取り付ければ、上記投光部と上記受光部とが同時に取り付けられる。したがって、組み立てが容易になる。
【0027】
一実施形態の血圧計では、
上記フレキシブル基板は、上記カフの上記長手方向に沿った方向に関して上記投光部と上記受光部とを搭載した搭載領域の両側に相当する部位に、上記カフを通すための一対のスリットを有し、
上記カフは、上記特定部分が上記フレキシブル基板の上記搭載領域の背面側に重なり、上記背面側から上記一対のスリットをそれぞれ通して上記被測定部位に対向する側へ延在する態様で、上記被測定部位を周方向に取り巻くようになっている
ことを特徴とする。
【0028】
典型的には、上記カフの上記幅方向に沿った方向に関して、上記「スリット」の寸法は、上記カフの上記幅方向の寸法よりも若干大きい程度に設定される。
【0029】
上記フレキシブル基板の「背面側」とは、上記被測定部位に対向する側と反対の側を意味する。
【0030】
この一実施形態の血圧計では、上記フレキシブル基板は、上記カフの上記長手方向に沿った方向に関して上記投光部と上記受光部とを搭載した搭載領域の両側に相当する部位に、それぞれ上記カフを通すための一対のスリットを有する。この血圧計の組立工程では、上記カフは、上記特定部分が上記フレキシブル基板の上記搭載領域の上記背面側に重なり、上記背面側から上記一対のスリットをそれぞれ通して上記被測定部位に対向する側へ延在する状態にされる。これにより、上記フレキシブル基板と上記カフとが係合した係合状態となる。これにより、上記血圧測定用カフに対して上記フレキシブル基板の位置決めが容易に行われる。したがって、組み立てが容易になる。
【0031】
一実施形態の血圧計では、
上記カフの外面側に一体に取り付けられた本体を備え、
上記本体は、
上記認証部と、
上記カフに流体を供給して加圧し、または、上記カフから流体を排出して減圧する制御を行う圧力制御部と、
上記カフの圧力を検出する圧力検出部と、
上記圧力検出部の出力に基づいて血圧を算出する血圧算出部と
を搭載していることを特徴とする。
【0032】
この一実施形態の血圧計では、上記装着状態で、上記本体に搭載された圧力制御部は、上記カフに流体を供給して加圧し、または、上記カフから流体を排出して減圧する制御を行う。上記カフに対する加圧過程または減圧過程で、圧力検出部は、上記カフの圧力を検出する。血圧算出部は、上記圧力検出部の出力に基づいて血圧を算出する。これにより、血圧を精度良く算出できる。また、この血圧計では、上記本体は、上記カフの上記被測定部位とは反対の側に一体に取り付けられている。したがって、この血圧計は、例えば卓上型血圧計(本体が、血圧測定用カフから離間して設けられ、上記カフの流体袋に対して可撓性チューブを介して流体流通可能に接続されているタイプの血圧計)に比して、コンパクトに構成される。また、この血圧計では、上記投光部および上記受光部と上記本体との間を接続する配線の長さが比較的短くて済み、配線についての信頼性が高まる。
【発明の効果】
【0033】
以上より明らかなように、この開示の血圧計によれば、静脈認証を行えるとともに、血圧を精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】この発明の一実施形態の血圧計の外観を、被測定部位としての左手首に装着された状態で示す斜視図である。
図2】上記血圧計のブロック構成を示す図である。
図3】上記血圧計が被測定部位に装着された状態で、血圧測定用カフの幅方向(被測定部位が延在する方向)に沿った断面を示す図である。
図4】上記血圧計による血圧測定のフローを示す図である。
図5図5(A)は、静脈認証処理のフローを示す図である。図5(B)は、被験者について得られた静脈パターンを模式的に例示する図である。図5(C)は、予め登録されている基準静脈パターンを模式的に例示する図である。
図6図1の血圧計を変形した変形例1の血圧計の本体を含む部分を、裏側(被測定部位に接する側)から見たところを示す図である。
図7A】上記変形例1の血圧計が備えるフレキシブル基板の平面レイアウトを示す図である。
図7B図7AにおけるVIIB-VIIB線矢視断面(端面)を示す図である。
図8図1の血圧計を変形した変形例2の血圧計の本体を含む部分を、裏側(被測定部位に接する側)から見たところを示す図である。
図9A】上記変形例2の血圧計が備えるフレキシブル基板の平面レイアウトを示す図である。
図9B図9AにおけるIXB-IXB線矢視断面(端面)を示す図である。
図10図1の血圧計を変形した変形例3の血圧計を、図3に対応して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
(血圧計の概略構成)
図1は、この発明の一実施形態の血圧計100の外観を示している。この血圧計100は、大別して、被験者の棒状の被測定部位90(この例では、左手首)を取り巻いて装着される血圧測定用カフ20と、このカフ20の外面20a側(特に、手のひら側の掌側面90aに対応する部分)に一体に取り付けられ、血圧測定のための要素を搭載した本体10と、カフ20と本体10との間に介挿して配置された取付部材40とを備えている。
【0037】
(血圧測定用カフの構成)
図1によって分かるように、上記カフ20は、外観上、長手方向Xに細長い帯状(この例では、丸角の長方形)の形状を有している。この例では、カフ20は、一般的なものであり、細長い帯状の外布(外面20aをなす)と、この外布に対応する形状をもつ内布(内面20bをなす)とを、流体袋23(図2参照)を挟んで対向させ、それらの外布、内布の周縁部(幅方向Yに関して両側の縁部20e,20fを含む)を縫製または溶着して構成されている。
【0038】
ここで、カフ20の「内面20b」とは、被測定部位90を周方向に取り巻いた状態で、内周側となる面を指す。カフ20の後述の「外面20a」とは、被測定部位90を周方向に取り巻いた状態で、外周側となる面を指す。また、カフ20について、「長手方向X」は、このカフ20が帯状に延在する方向を意味し、装着状態では被測定部位90を取り巻く周方向に相当する。「幅方向Y」は、カフ20が広がるXY面内で長手方向Xに対して垂直な方向を意味し、装着状態では被測定部位90が棒状に延在する方向に相当する。また、後述の図3中に示す「厚さ方向Z」は、長手方向Xと幅方向Yとの両方(つまり、カフ20が広がるXY面)に対して垂直な方向を意味し、装着状態では被測定部位90の外周面に対して垂直な方向に相当する。なお、図3中にはXYZ直交座標系が併せて示されている(後述の図6図10でも同様。)。
【0039】
(本体の構成)
図2に示すように、本体10は、制御部110と、表示器50と、操作部52と、記憶部としてのメモリ51と、電源部53と、圧力センサ31と、発振回路310と、ポンプ32と、ポンプ駆動回路320と、弁33と、弁駆動回路330と、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)駆動回路340と、AD(アナログ・ツゥ・デジタル)変換回路350とを搭載している。この例では、圧力センサ31が、1本のエア配管37を介して、カフ20に内包された流体袋23に流体流通可能に接続されている。また、ポンプ32に接続されたエア配管38aと、弁33に接続されたエア配管38bとが合流して、1本のエア配管38になって、流体袋23に流体流通可能に接続されている。エア配管38は、これらのエア配管38a,38bを含む総称である。
【0040】
図1中に示すように、表示器50と操作部52は、本体10の頂面(カフ20から遠い側の面)10aに配置されている。表示器50は、この例では、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)からなり、制御部110からの制御信号に従って所定の情報を表示する。この例では、表示器50は、収縮期血圧SBP(Systolic Blood Pressure、単位;mmHg)、拡張期血圧DBP(Diastolic Blood Pressure、単位;mmHg)、脈拍数(単位;拍/min)、また、被験者についての静脈認証の結果を表示するようになっている。なお、表示器50は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなっていてもよいし、LEDを含んでいてもよい。
【0041】
操作部52は、この例では、血圧の測定開始/停止の指示を受け付けるための測定スイッチ52Aと、記録呼出スイッチ52Bとを含み、ユーザの指示に応じた操作信号を制御部110に入力する。具体的には、測定スイッチ52Aが押されると、血圧測定を開始すべき旨の操作信号が制御部110に入力されて、制御部110は後述の血圧測定を開始する(血圧測定が完了すると、自動的に停止する。)。血圧測定の実行中に測定スイッチ52Aが押されると、制御部110は、血圧測定を緊急停止する。また、記録呼出スイッチ52Bが押されると、メモリ51に記録されている過去の血圧測定結果が呼び出されて表示器50に表示される。
【0042】
図2中に示すメモリ51は、血圧計100を制御するためのプログラムのデータ、血圧計100の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0043】
制御部110は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)を含み、この血圧計100全体の動作を制御する。具体的には、制御部110は、メモリ51に記憶された血圧計100を制御するためのプログラムに従って圧力制御部として働いて、操作部52からの操作信号に応じて、圧力デバイスとしてのポンプ32や弁33を駆動する制御を行う。また、制御部110は、血圧算出部として働いて、圧力センサ31の出力に基づいて血圧値を算出し、表示器50およびメモリ51を制御する。具体的な血圧測定の仕方については後述する。
【0044】
圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管37を通して、カフ20に内包された流体袋23の圧力(これを「カフ圧Pc」と呼ぶ。)をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として出力する。発振回路310は、圧力センサ31からの電気抵抗に応じた発振周波数で発振する。制御部110は、その発振周波数に応じて、カフ圧Pcを求める。
【0045】
ポンプ32は、制御部110から与えられる制御信号に基づいてポンプ駆動回路320によって駆動され、エア配管38を通して、カフ20に内包された流体袋23へ空気を供給する。これにより、流体袋23の圧力(カフ圧Pc)が加圧される。
【0046】
弁33は、常開タイプの電磁弁からなり、制御部110から与えられる制御信号に基づいて弁駆動回路330によって駆動され、エア配管38を通して流体袋23内の空気を排出し、または封入してカフ圧を制御するために開閉される。
【0047】
LED駆動回路340は、制御部110から与えられる制御信号に基づいて、配線71を介して、投光部34を駆動する。また、AD変換回路350は、受光部35からの静脈パターンを含む像を表す電気信号をAD変換して、制御部110に入力する。投光部34と受光部35の構成については、後述する。
【0048】
電源部53は、制御部110、表示器50、メモリ51、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、その他の本体10内の各部に電力を供給する。
【0049】
(取付部材の構成)
図3は、血圧計100が被測定部位90に装着された状態で、カフ20の幅方向(被測定部位90が延在する方向)に沿った断面を示す模式図である。なお、図3において、本体10やカフ20の内部の断面は図示が省略されている。図3中に示すように、取付部材40は、カフ20の外面20aに沿って配置された板部41を備えている。この例では、板部41は、カフ20の外面20aに対して接着剤(図示せず)によって貼り付けられている。取付部材40(板部41)の幅方向Yに関して両側の端辺領域40e,40fは、カフ20の両側の縁部20e,20fからそれぞれ幅方向Yに関して外向きに突出している。片側の端辺領域40eには、被測定部位90へ向かって突出した外側壁40e1と、その外側壁40e1と平行に突出した内側壁40e2とが設けられている。端辺領域40eのうち、外側壁40e1と内側壁40e2との間の領域に、投光部34をなすLEDの列34Eが搭載されている。これにより、LEDの列34Eは、外側壁40e1と内側壁40e2とによって保護された状態で、カフ20の片側の縁部20eに沿って配置されている。同様に、他側の端辺領域40fには、被測定部位90へ向かって突出した外側壁40f1と、その外側壁40f1と平行に突出した内側壁40f2とが設けられている。端辺領域40fのうち、外側壁40f1と内側壁40f2との間の領域に、投光部34をなすLEDの列34Fが搭載されている。これにより、LEDの列34Fは、外側壁40f1と内側壁40f2とによって保護された状態で、カフ20の他側の縁部20fに沿って配置されている。LEDの列34E,34Fには、それぞれ本体10へ延びる図示しないフレキシブル基板(配線71を含む)が接続されている。
【0050】
この例では、板部41と、外側壁40e1、内側壁40e2、外側壁40f1、内側壁40f2とは、一体成形された合成樹脂(例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン))からなっている。したがって、この取付部材40を用いる例では、簡単な構成で、投光部34(LEDの列34E,34F)をカフ20の縁部20e,20fに沿って配置することができる。
【0051】
外側壁40e1、内側壁40e2、外側壁40f1、内側壁40f2の先端(被測定部位90側の端)は、板部41、本体10の底面10bと同様に、被測定部位90(この例では、掌側面90a)に沿って周方向に湾曲している。なお、図3では、取付部材40の外側壁40e1、内側壁40e2、外側壁40f1、内側壁40f2の先端が、便宜上、被測定部位90(この例では、掌側面90a)から離間して描かれているが、実際の装着状態では掌側面90aに密接する。
【0052】
エア配管37,38は、板部41に設けられた図示しない貫通孔を通して、本体10とカフ20とを接続している。
【0053】
(投光部と受光部の構成)
この例では、投光部34は、図1中に示すように、幅方向Yに関して、カフ20の両側の縁部20e,20fに沿ってそれぞれ配置されたLEDの列34E,34Fからなっている。片側のLEDの列34Eは、5個のLED34E1,34E2,…,34E5を含んでいる。同様に、他側のLEDの列34Fも、5個のLED34F1,34F2,…,34F5を含んでいる。図1によって分かるように、投光部34は、幅方向Yに関して、カフ20の中央領域(両側の縁部20e,20fの間の領域)には配置されていない。この配置に応じて、投光部34(LEDの列34E,34F)は、図3中に示す被測定部位90のターゲット領域92の周辺92e,92fへ光Le,Lfを照射することができる。この例では、照射する光Le,Lfとしては、近赤外光(約700nm~約2500nm)で、特に波長850nmの光を用いるものとする。
【0054】
また、受光部35は、図1中に示すように、カフ20の内面20bのうちターゲット領域92に対向する特定部分20b1に沿ってシート状に設けられている。ターゲット領域92とは、被測定部位90のうち静脈パターンが取得されるべき領域を指している。具体的には、受光部35は、図3中に示すように、カフ20の内面20bのうち特定部分20b1に沿って配置されたシート状の撮像素子35Bと、この撮像素子35Bのターゲット領域92に対向する側の面に沿って配置されたシート状の結像素子35Aとを含んでいる。この例では、撮像素子35Bは、カフ20の特定部分20b1に対して、接着剤(図示せず)によって貼り付けられている。また、この例では、結像素子35Aは、撮像素子35Bおよび撮像素子35Bの周りのカフ20の特定部分20b1に対して、接着剤(図示せず)によって貼り付けられている。結像素子35Aは、この結像素子35Aが延在する面に対して垂直な一方向Z(カフ20の厚さ方向Zに相当する)の光を透過させる一方、その一方向Z以外の方向の光を遮断する。このような結像素子35Aとしては、例えば株式会社アスデック製のオールラウンドプライバシーフィルタを用いることができる。撮像素子35Bは、結像素子35Aを透過した光を受けて、受けた光を表す電気信号を出力する。このような撮像素子35Bとしては、株式会社ジャパンディスプレイ製の薄型イメージセンサを用いることができる。この例では、撮像素子35Bは、ターゲット領域92の静脈パターンを含む像を表す電気信号を出力する。撮像素子35Bには、本体10へ延びる図示しないフレキシブル基板(配線72を含む)が接続されている。
【0055】
(血圧測定用カフの装着態様)
上記カフ20は、図3に示すように、カフ20の長手方向Xが被測定部位(この例では、左手首)90の外周面を取り巻いて、静脈93が存するターゲット領域92を覆う態様で装着される。装着のとき、図示しない面ファスナによって、カフ20が緩まないように固定される。ここで、被測定部位90とは、血圧測定の対象となる動脈91が通っている部位を指す。また、既述のように、ターゲット領域92とは、被測定部位90のうち静脈パターンが取得されるべき領域を指している。この装着状態では、被測定部位90の掌側面90aに対して、厚さ方向Zに、結像素子35Aと、撮像素子35Bと、流体袋23を内包したカフ20と、本体10とが、この順に並ぶ。
【0056】
(血圧測定)
図4は、被験者が血圧計100によって、静脈認証を含む血圧測定を行う際の動作フローを示している。なお、ユーザの左手首について予め得られた静脈パターンが、基準静脈パターンPr(図5(C)に模式的に示す)としてメモリ51に登録(記憶)されているものとする。
【0057】
カフ20が被測定部位90に装着された装着状態で、ユーザが本体10に設けられた測定スイッチ52Aによって測定開始を指示すると(図4のステップS1)、制御部110は、まず、現在の被験者について静脈認証処理を行う(図4のステップS2)。
【0058】
具体的には、図5(A)のステップS51に示すように、制御部110は、LED駆動回路340によって投光部34(LEDの列34E,34F)を駆動して、図3中に示す被測定部位90のターゲット領域92の周辺92e,92fへ光Le,Lfを照射する。すると、受光部35(結像素子35A,撮像素子35B)は、ターゲット領域92によって散乱または反射された光Le′,Lf′を受けて、現在測定中の被験者についてターゲット領域92の静脈パターンPx(図5(B)に模式的に示す)を含む像を得る。次に、図5(A)のステップS52で、制御部110は認証部として働いて、その像に含まれた静脈パターンPxを、予め登録されている基準静脈パターンPrと比較して、被験者についての静脈認証を行う。これにより、現在測定中の被験者が、予め登録されている基準静脈パターンPrをもつユーザと同一人であるか否かを識別する。なお、パターン認識技術を使った静脈認証自体については、公知の技術であるから、詳細な説明を省略する。
【0059】
ここで、現在測定中の被験者の静脈パターンPxが予め登録されている基準静脈パターンPrと不一致であれば(図5(A)のステップS53でNo)、制御部110は、被験者が登録されたユーザではない旨を表示器50に表示して、処理を終了する(図5(A)のステップS54)。すなわち、血圧測定は行われない。一方、現在測定中の被験者の静脈パターンPxが予め登録されている基準静脈パターンPrと一致していれば(図5(A)のステップS53でYes)、制御部110は、図4の血圧測定フローに戻って、次のように血圧測定の処理を進める。
【0060】
すなわち、制御部110は、まず初期化を行う(図4のステップS3)。具体的には、制御部110は、処理用メモリ領域を初期化するとともに、ポンプ32を停止し、弁33を開いた状態で、圧力センサ31の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0061】
続いて、制御部110は圧力制御部として働いて、弁33を閉じ(ステップS4)、ポンプ32を駆動して、カフ20の加圧を開始する(ステップS5)。すなわち、制御部110は、ポンプ32からエア配管38を通してカフ20(に内包された流体袋23)に空気を供給する。これとともに、圧力センサ31は圧力検出部として働いて、流体袋23の圧力を、エア配管37を通して検出する。制御部110は、圧力センサ31の出力に基づいて、ポンプ32による加圧速度を制御する。この加圧により、被測定部位90を通る動脈91が圧迫されて、阻血される。
【0062】
次に、制御部110は、圧力センサ31の出力に基づいて、カフ20(流体袋23)の圧力(カフ圧Pc)が予め定められた値(被験者の想定される血圧値を十分上回る値。この例では、前回測定された被験者の血圧値プラス40mmHgというように定められている。)に達すると、ポンプ32を停止する(ステップS6)。
【0063】
続いて、制御部110は、弁33を徐々に開く(図4のステップS7)。これにより、カフ圧Pcを略一定速度で減圧してゆく。ここで、圧力センサ31によってエア配管37を通して検出されるカフ圧Pcには、脈波による脈波情報としての脈波信号(変動成分)が重畳されている。
【0064】
この減圧過程で、制御部110は血圧算出部として働いて、カフ圧Pcに重畳されている脈波信号(変動成分)を抽出し、この時点で取得されている脈波信号に基づいて、例えば公知のオシロメトリック法により血圧値(収縮期血圧SBP(Systolic Blood Pressure)と拡張期血圧DBP(Diastolic Blood Pressure))の算出を試みる(図4のステップS8)。また、この例では、制御部110は、上記脈波信号に基づいて、脈拍数(拍/min)を算出する。
【0065】
制御部110は、データ不足のために未だ血圧値と脈拍数を算出できない場合は(図4のステップS9でNO)、算出できるまでステップS7~S9の処理を繰り返す。
【0066】
このようにして血圧値と脈拍数の算出ができたら(ステップS9でYes)、制御部110は圧力制御部として働いて、弁33を開いて、カフ20(流体袋23)内の空気を急速排気する制御を行う(ステップS10)。
【0067】
この後、制御部110は、算出した血圧値と脈拍数を表示器50に表示し(ステップS11)、血圧値と脈拍数をメモリ51に保存する制御を行う。
【0068】
なお、上の例では、カフ20(流体袋23)の減圧過程で血圧値と脈拍数を算出したが、これに限られるものではなく、カフ20(流体袋23)の加圧過程で血圧値と脈拍数を算出してもよい。
【0069】
この血圧計100では、装着状態で、投光部34(LEDの列34E,34F)は、幅方向Yに関して、カフ20の片側または両側の縁部20e,20fに沿ってのみ配置されている。つまり、投光部34は、幅方向Yに関して、カフ20の中央領域(両側の縁部20e,20fの間の領域)には配置されていない。したがって、例えば、投光部34が厚さ1mm~2mm程度の発光ダイオード(LED)の列を含む場合であっても、投光部34(LEDの列34E,34F)の存在がカフ20の圧迫性能を損なうことはない。また、受光部35(結像素子35A、撮像素子35B)は、カフ20の内面20bのうちターゲット領域92に対向する特定部分20b1に沿ってシート状に設けられている。したがって、受光部35の存在がカフ20の圧迫性能を損なうことはない。したがって、この血圧計100によれば、血圧を精度良く測定できる。
【0070】
このように、この血圧計100によれば、静脈認証を行えるとともに、血圧を精度良く測定できる。
【0071】
また、この血圧計100では、本体10は、カフ20の被測定部位90とは反対の側に一体に取り付けられている。したがって、この血圧計100は、例えば卓上型血圧計(本体が、血圧測定用カフから離間して設けられ、カフの流体袋に対して可撓性チューブを介して流体流通可能に接続されているタイプの血圧計)に比して、コンパクトに構成される。また、この血圧計100では、投光部34、受光部35と本体10との間を接続する配線71,72の長さが比較的短くて済み、配線71,72についての信頼性が高まる。
【0072】
(変形例1)
図6は、上記血圧計100を変形した変形例1の血圧計(符号100Aで示す)の本体10を含む部分を、裏側(被測定部位90に接する側)から見たところを示している。この血圧計100Aでは、取付部材として、既述の取付部材40に代えて、矩形枠状のフレキシブル基板44を備えた点が異なっている。本体10、カフ20については、上記血圧計100におけるのと同じである。図6および次に述べる図7A図7Bにおいて、上記血圧計100におけるのと同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0073】
図7Aは、カフ20が広がるXY面に沿ったフレキシブル基板44の平面レイアウトを示している。図7Bは、図7AにおけるVIIB-VIIB線矢視断面(端面)を模式的に示している。フレキシブル基板44は、配線71(図7A図7Bでは図示が省略されている)が設けられたポリイミド樹脂層44Bと、このポリイミド樹脂層44B上に重ねて貼り付けられた遮光用のエラストマ層44Aとを含んでいる。なお、図7Bにおける各層の厚さは、理解の容易のために誇張して描かれている。このフレキシブル基板44では、ポリイミド樹脂層44Bとエラストマ層44Aとが重なった領域に、略矩形状の中央開口44wが形成されている。この結果、フレキシブル基板44は、全体として、中央開口44wを取り囲む矩形枠状の形状を有している。
【0074】
この例では、図7Aによって分かるように、フレキシブル基板44の端辺領域44e,44fは、中央開口44wに対向する辺から、長手方向Xに沿った方向に関して部分的に中央開口44wへ向かって突出した係合領域44e1,44f1を有している。
【0075】
血圧計100Aの組立工程では、図6中に示すように、まず、係合領域44e1,44f1が、撓んでカフ20の内面20bに沿って配置される。これにより、フレキシブル基板44とカフ20とが係合された係合状態になり、カフ20に対してフレキシブル基板44の位置決めが容易に行われる。この係合状態で、カフ20の内面20bの特定部分20b1に、受光部35をなす撮像素子35B、結像素子35Aがこの順に取り付けられる。また、カフ20の外面20aに、本体10が一体に取り付けられる。これにより、組み立てが容易になる。なお、フレキシブル基板44とカフ20とを係合状態にする前に、カフ20の内面20bの特定部分20b1に、受光部35をなす撮像素子35B、結像素子35Aを予め取り付けておいてもよい。
【0076】
図6によって分かるように、フレキシブル基板44の幅方向Yに関して両側の端辺領域44e,44fは、取付部材40におけるのと同様に、カフ20の両側の縁部20e,20fからそれぞれ幅方向Yに関して外向きに突出している。端辺領域44e,44fには、それぞれ投光部34をなすLEDの列34E,34Fが搭載されている。すなわち、上記血圧計100におけるのと同様に、LEDの列34E,34Fは、幅方向Yに関して、カフ20の片側または両側の縁部20e,20fに沿ってのみ配置されている。これにより、この血圧計100Aでも、簡単な構成で、投光部34(LEDの列34E,34F)をカフ20の縁部20e,20fに沿って配置することができる。
【0077】
この血圧計100Aでは、上記血圧計100と同様に、カフ20が被験者の被測定部位90を周方向に取り巻いて、ターゲット領域92を覆う態様で装着される。この装着状態では、端辺領域44e,44fは掌側面90aに押し付けられ、係合領域44e1,44f1の撓みは略解消される。したがって、投光部34(LEDの列34E,34F)は、上記血圧計100と同様に、被測定部位90のターゲット領域92の周辺92e,92fへ光Le,Lfを照射することができる。また、受光部35(結像素子35A、撮像素子35B)は、ターゲット領域92の静脈パターンPxを含む像を得ることができる。また、投光部34、受光部35の存在がカフ20の圧迫性能を損なうことはない。したがって、この血圧計100Aによれば、上記血圧計100と同様に、静脈認証を行えるとともに、血圧を精度良く測定できる。
【0078】
(変形例2)
図8は、上記血圧計100を変形した変形例2の血圧計(符号100Bで示す)の本体10を含む部分を、裏側(被測定部位90に接する側)から見たところを示している。この血圧計100Bでは、取付部材として、既述の取付部材40に代えて、矩形板状のフレキシブル基板44′を備えた点が異なっている。本体10、カフ20については、上記血圧計100におけるのと同じである。図8および次に述べる図9A図9Bにおいて、上記血圧計100におけるのと同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0079】
図9Aは、カフ20が広がるXY面に沿ったフレキシブル基板44′の平面レイアウトを示している。図9Bは、図9AにおけるIXB-IXB線矢視断面(端面)を示している。フレキシブル基板44′は、配線71(図9A図9Bでは図示が省略されている)が設けられたポリイミド樹脂層44B′と、このポリイミド樹脂層44B′上に重ねて貼り付けられた遮光用のエラストマ層44A′とを含んでいる。ポリイミド樹脂層44B′は、矩形の略全域(後述のスリット44s,44s′を除く)を占める形状に形成されている。一方、エラストマ層44A′は、矩形の枠状に形成されている。このフレキシブル基板44′では、ポリイミド樹脂層44B′の中央を占める搭載領域44m(特に、端辺領域44e′,44f′の間の領域)に、受光部35をなす撮像素子35B、結像素子35Aがこの順に積層して取り付けられている。なお、図9Bにおける各層の厚さは、理解の容易のために誇張して描かれている。
【0080】
この例では、図9Aによって分かるように、フレキシブル基板44′のうち、カフ20の長手方向Xに沿った方向に関して投光部34(LEDの列34E,34F)と受光部35(結像素子35A、撮像素子35B)とを搭載した搭載領域44mの両側に相当する部位に、カフ20を通すための一対のスリット44s,44s′が形成されている。カフ20の幅方向Yに沿った方向に関して、スリット44s,44s′の寸法は、カフ20の幅方向Yの寸法よりも若干大きい程度に設定されている。
【0081】
この血圧計100Bの組立工程では、図8中に示すように、まず、カフ20の特定部分20b1がフレキシブル基板44′の搭載領域44mの背面側(被測定部位90に対向する側と反対の側)に重なり、背面側から一対のスリット44s,44s′をそれぞれ通して被測定部位90に対向する側へ延在する状態にされる。これにより、フレキシブル基板44′とカフ20とが係合した係合状態になり、カフ20に対してフレキシブル基板44′の位置決めが容易に行われる。また、カフ20に対してフレキシブル基板44′を取り付ければ、投光部34(LEDの列34E,34F)と受光部35(結像素子35A、撮像素子35B)とが同時に取り付けられる。これにより、組み立てが容易になる。この係合状態で、カフ20の外面20aに、本体10が一体に取り付けられる。
【0082】
図8によって分かるように、フレキシブル基板44′の幅方向Yに関して両側の端辺領域44e′,44f′は、取付部材40におけるのと同様に、カフ20の両側の縁部20e,20fからそれぞれ幅方向Yに関して外向きに突出している。端辺領域44e′,44f′には、それぞれ投光部34をなすLEDの列34E,34Fが搭載されている。すなわち、上記血圧計100におけるのと同様に、LEDの列34E,34Fは、幅方向Yに関して、カフ20の片側または両側の縁部20e,20fに沿ってのみ配置されている。これにより、この血圧計100Bでも、簡単な構成で、投光部34(LEDの列34E,34F)をカフ20の縁部20e,20fに沿って配置することができる。また、受光部35(結像素子35A、撮像素子35B)をターゲット領域92に対向する特定部分20b1に沿って配置することができる。
【0083】
この血圧計100Bでは、上記血圧計100と同様に、カフ20が被験者の被測定部位90を周方向に取り巻いて、ターゲット領域92を覆う態様で装着される。この装着状態で、投光部34(LEDの列34E,34F)は、上記血圧計100と同様に、被測定部位90のターゲット領域92の周辺92e,92fへ光Le,Lfを照射することができる。また、受光部35(結像素子35A、撮像素子35B)は、ターゲット領域92の静脈パターンPxを含む像を得ることができる。また、投光部34、受光部35の存在がカフ20の圧迫性能を損なうことはない。したがって、この血圧計100Bによれば、上記血圧計100と同様に、静脈認証を行えるとともに、血圧を精度良く測定できる。
【0084】
(変形例3)
上述の各例では、本体10とは別に構成された取付部材(取付部材40、フレキシブル基板44または44′)を備えたが、これに限られるものではない。図10は、上記血圧計100を変形した変形例3の血圧計100Cを、図3に対応して示している。この血圧計100Cでは、本体(符号10′で示す)の底面10bのうち、カフ20の両側の縁部20e,20fからそれぞれ幅方向Yに関して外向きに突出した端辺領域10e,10fに、それぞれ投光部34をなすLEDの列34E,34Fが配置されている。
【0085】
具体的には、片側の端辺領域10eには、被測定部位90へ向かって突出した外側壁10e1と、その外側壁10e1と平行に突出した内側壁10e2とが設けられている。端辺領域10eのうち、外側壁10e1と内側壁10e2との間の領域に、投光部34をなすLEDの列34Eが搭載されている。これにより、LEDの列34Eは、外側壁10e1と内側壁10e2とによって保護された状態で、カフ20の片側の縁部20eに沿って配置されている。同様に、他側の端辺領域10fには、被測定部位90へ向かって突出した外側壁10f1と、その外側壁10f1と平行に突出した内側壁10f2とが設けられている。端辺領域10fのうち、外側壁10f1と内側壁10f2との間の領域に、投光部34をなすLEDの列34Fが搭載されている。これにより、LEDの列34Fは、外側壁10f1と内側壁10f2とによって保護された状態で、カフ20の他側の縁部20fに沿って配置されている。LEDの列34E,34Fには、それぞれ本体10へ延びる図示しないフレキシブル基板(配線71を含む)が接続されている。
【0086】
外側壁10e1、内側壁10e2、外側壁10f1、内側壁10f2の先端(被測定部位90側の端)は、本体10の底面10bと同様に、被測定部位90(この例では、掌側面90a)に沿って周方向に湾曲している。
【0087】
この血圧計100Cにおけるその他の点は、上記血圧計100におけるのと同様に構成されている。
【0088】
この血圧計100Cでも、上記血圧計100と同様に、静脈認証を行えるとともに、血圧を精度良く測定できる。しかも、この血圧計100Cでは、取付部材を省略できるので、構成を簡素化できる。
【0089】
(検証実験)
本発明者は、市販の手首式血圧計(オムロンヘルスケア株式会社製、品番HEM-6220)と、本発明(特に、上述の変形例1)の血圧計100Aと、比較例の血圧計(これを符号100Xで表す)とについて、血圧測定精度を比較する検証実験を行った。
【0090】
本発明の血圧計100Aについては、本体10、カフ20として手首式血圧計(品番HEM-6220)の本体、カフを流用した。さらに、フレキシブル基板44を用意して、血圧計100Aを図6に示した通りに構成した。
【0091】
比較例の血圧計100Xについては、本体10、カフ20として手首式血圧計(品番HEM-6220)の本体、カフを流用した(なお、便宜上、血圧計100Aにおけるのと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。)。さらに、この血圧計100Xのためのフレキシブル基板(これを符号44Xで表す)として、図6中のフレキシブル基板44において、投光部34をなすLEDの列を、結像素子35Aの全周(4辺)に沿って配置したのに相当するものを用意した。このフレキシブル基板44Xを、カフ20の内面20bのうちターゲット領域92に対向する特定部分20b1に沿って配置して、比較例の血圧計100Xを構成した。この結果、比較例の血圧計100Xでは、投光部34をなすLEDの列が、幅方向Yに関して、端辺領域44e,44fだけでなく、カフ20の中央領域(両側の縁部20e,20fの間の領域)にも配置されている。
【0092】
市販の手首式血圧計(オムロンヘルスケア株式会社製、品番HEM-6220)と、本発明の血圧計100Aと、比較例の血圧計100Xとを用いて、或る被験者について繰り返し3回ずつ血圧測定を行った。下の表1は、収縮期血圧SBP、拡張期血圧DBPについて、3回の測定値の平均値を示している。
(表1)


【0093】
表1から分かるように、比較例の血圧計100Xの測定値は、市販の手首式血圧計の測定値に比して、10mmHg程度高い結果になっている。この理由は、比較例の血圧計100Xでは、投光部34をなすLEDの列が、幅方向Yに関して、端辺領域44e,44fだけでなく、カフ20の中央領域(両側の縁部20e,20fの間の領域)にも配置されているため、カフ20の圧迫性能を損なっているからである、と考えられる。
【0094】
これに対して、本発明の血圧計100Aでは、市販の手首式血圧計の測定値に比して、略同じ測定値が得られている。この理由は、幅方向Yに関して、カフ20の両側の縁部20e,20fは、そもそも中央領域に比して圧迫性能に対する寄与が少ないからである、と考えられる。このため、カフ20の両側の縁部20e,20fに沿って、投光部34をなすLEDの列34E,34Fを配置しても、測定値に対する影響が殆ど無い、と考えられる。
【0095】
このように、この検証実験によって、本発明の血圧計100Aによれば、血圧を精度良く測定できる、ということを検証できた。
【0096】
なお、上述の実施形態では、投光部34(LEDの列34E,34F)を、カフ20の両側の縁部20e,20fに沿って配置したが、これに限られるものではない。ターゲット領域92の静脈パターンPxを含む像を鮮明に得られれば、片側の縁部20eまたは20fに沿ってのみ配置してもよい。
【0097】
また、上述の実施形態では、被測定部位90は左手首であるものとしたが、これに限られるものではない。被測定部位90は、右手首であってもよいし、上腕などの上肢、または、足首などの下肢であってもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、本体10,10′は、カフ20(の被測定部位90とは反対の側)に一体に取り付けられているものとしたが、これに限られるものではない。本発明の血圧計は、卓上型血圧計、すなわち、本体が、カフから離間して設けられ、カフの流体袋に対して可撓性チューブを介して流体流通可能に接続されているタイプのものとしても、構成され得る。
【0099】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0100】
10,10′ 本体
20 血圧測定用カフ
23 流体袋
31 圧力センサ
32 ポンプ
33 弁
34 投光部
34E,34F LEDの列
35 受光部
35A 結像素子
35B 撮像素子
40 取付部材
44,44′ フレキシブル基板
100,100A,100B,100C 血圧計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10