(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075377
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01S 17/89 20200101AFI20220511BHJP
【FI】
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186121
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】青木 岳
(72)【発明者】
【氏名】松本 令司
(72)【発明者】
【氏名】竹村 到
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AB01
5J084AC02
5J084BA03
5J084CA03
(57)【要約】
【課題】反射特性を好適に推定可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】反射特性推定装置4のコントローラ43は、照射した光の反射光を受光することで計測を行うライダ2により複数の照射位置において計測された点群データD1を取得する。そして、コントローラ43は、照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた積算点群データD3を生成する。そして、コントローラ43は、積算点群データD3が示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得する取得手段と、
前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成する積算処理手段と、
前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する反射特性推定手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記反射特性推定手段が推定した反射特性に基づき、前記クラスタの各々に対応する物性を推定する物性推定手段をさらに有する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記物性推定手段は、前記反射特性推定手段が推定した反射特性と、物性が異なるカテゴリ毎の反射特性を表す既知物性情報とに基づき、前記クラスタの各々が属する物性に関するカテゴリを推定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記積算点群データを構成する計測点間の距離に基づき、近傍の計測点同士を同一のクラスタとするクラスタリングを行うクラスタリング処理手段をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記クラスタリング処理手段は、前記距離と、前記反射強度とに基づき、前記クラスタリングを行う、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記反射特性推定手段が推定した反射特性に基づき、前記クラスタの各々に対応する物性を推定する物性推定手段を有し、
前記クラスタリング処理手段は、前記物性推定手段の推定結果と、前記反射強度とに基づき、前記クラスタの分割を行う、請求項4または5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記反射特性推定手段は、前記計測点の各々について、前記照射位置及び当該計測点が示す被計測位置に基づいて前記照射角度を算出し、算出された前記照射角度と前記反射強度とに基づき、前記反射特性を推定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記積算処理手段は、前記点群データの計測時における前記計測装置の移動情報に基づき、複数の照射位置で計測された前記点群データを共通の座標系に変換することで、前記積算点群データを生成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータが実行する制御方法であって、
照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得し、
前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成し、
前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する、
制御方法。
【請求項10】
照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得し、
前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成し、
前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射特性に関する推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路周辺に存在する地物等を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、カメラが撮影した画像とライダが出力する点群データに含まれる反射特性とに基づき、画像のセグメンテーションを、セマンティックセグメンテーションを用いて実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路周辺に存在する物体の反射特性は様々であり、照射角度によらずに略均一な反射強度となる再帰性反射部材、及び、特定方向に対する反射強度が小さくなる素材などが存在する。従って、物体の反射特性を的確に推定する場合には、照射方向を考慮する必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、反射特性を好適に推定することが可能な情報処理装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、
照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得する取得手段と、
前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成する積算処理手段と、
前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する反射特性推定手段と、
を有する情報処理装置である。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、
コンピュータが実行する制御方法であって、
照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得し、
前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成し、
前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する、
制御方法である。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、
照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得し、
前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成し、
前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】反射特性推定装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】反射特性推定装置のコントローラの機能ブロック図を示す。
【
図4】(A)ライダが位置P1に存在するときに計測された点群データの各計測点を表す図である。 (B)ライダが位置P2に存在するときに計測された点群データの各計測点を表す図である。 (C)積算点群データの各計測点を表す図である。
【
図5】(A)
図4(A)に示される各計測点のデータ構造を示す。 (B)
図4(B)に示される各計測点のデータ構造を示す。 (C)
図4(C)に示される各計測点のデータ構造を示す。
【
図6】(A)物体63に対して得られた計測点とライダの照射位置との関係を示す図である。 (B)物体64に対して得られた計測点とライダの照射位置との関係を示す図である。
【
図7】第1実施例においてコントローラが実行する処理手順を示すフローチャートの一例である。
【
図8】第2実施例におけるコントローラの機能ブロック図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得する取得手段と、前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成する積算処理手段と、前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する反射特性推定手段と、を有する。情報処理装置は、この態様により、計測装置により計測された点群データを積算したデータに基づき、計測点のクラスタが表す物体の反射特性を好適に推定することができる。
【0011】
上記情報処理装置の一態様では、情報処理装置は、前記反射特性推定手段が推定した反射特性に基づき、前記クラスタの各々に対応する物性を推定する物性推定手段をさらに有する。この態様により、情報処理装置は、クラスタ毎に対応する物性を好適に推定することができる。
【0012】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記物性推定手段は、前記反射特性推定手段が推定した反射特性と、物性が異なるカテゴリ毎の反射特性を表す既知物性情報とに基づき、前記クラスタの各々が属する物性に関するカテゴリを推定する。この態様により、情報処理装置は、クラスタ毎に対応する物性に関するカテゴリを好適に推定することができる。
【0013】
上記情報処理装置の他の一態様では、情報処理装置は、前記積算点群データを構成する計測点間の距離に基づき、近傍の計測点同士を同一のクラスタとするクラスタリングを行うクラスタリング処理手段をさらに有する。この態様により、情報処理装置は、物体毎にクラスタを好適に形成することができる。
【0014】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記クラスタリング処理手段は、前記距離と、前記反射強度とに基づき、前記クラスタリングを行う。この態様により、情報処理装置は、反射強度を考慮してより的確に物体毎のクラスタの生成を行うことができる。
【0015】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記反射特性推定手段が推定した反射特性に基づき、前記クラスタの各々に対応する物性を推定する物性推定手段を有し、前記クラスタリング処理手段は、前記物性推定手段の推定結果と、前記反射強度とに基づき、前記クラスタの分割を行う。この態様により、情報処理装置は、物性の異なる複数の物体が近接して存在することによりこれらの計測点が1つのクラスタとしてクラスタリングされた場合に、当該クラスタを物体毎に好適に分割することができる。
【0016】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記反射特性推定手段は、前記計測点の各々について、前記照射位置及び当該計測点が示す被計測位置に基づいて前記照射角度を算出し、算出された前記照射角度と前記反射強度とに基づき、前記反射特性を推定する。この態様により、情報処理装置は、情報処理装置は、照射角度を考慮した反射特性を好適に推定することができる。
【0017】
上記情報処理装置の他の一態様では、前記積算処理手段は、前記点群データの計測時における前記計測装置の移動情報に基づき、複数の照射位置で計測された前記点群データを共通の座標系に変換することで、前記積算点群データを生成する。この態様により、情報処理装置は、積算点群データを好適に生成することができる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行する制御方法であって、照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得し、前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成し、前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する。コンピュータは、この制御方法を実行することで、計測点のクラスタが表す物体の反射特性を好適に推定することができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態によれば、プログラムは、照射した光の反射光を受光することで計測を行う計測装置により複数の照射位置において計測された点群データを取得し、前記照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた、前記点群データを積算した積算点群データを生成し、前記積算点群データが示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する処理をコンピュータに実行させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、計測点のクラスタが表す物体の反射特性を好適に推定することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0021】
<第1実施例>
(1)
システム概要
図1は、第1実施例に係る反射特性推定システムの概略構成図である。
図1に示す反射特性推定システムは、道路を走行する計測車両が生成した計測データに基づき道路周辺に存在する地物の反射特性を推定するシステムであり、主に、計測車両と、反射特性推定装置4とを有する。
【0022】
計測車両は、主に、車載機1と、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)2と、センサユニット3とを有する。
【0023】
ライダ(測域センサ)2は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の3次元位置と反射強度とを表す計測点からなる点群情報を生成する。この場合、ライダ2は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光が物体で反射した反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。スキャンデータは、点群データであり、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される、その照射方向での物体までの距離とに基づき生成される。以後では、点群データを構成する各点を「計測点」とも呼ぶ。ライダ2は、計測車両の任意の位置に設けられてもよく、計測車両に複数設けられてもよい。点群データには、計測日時(生成日時)を示す日時データが付加される。
【0024】
センサユニット3は、ライダ2の時系列での位置及び向き(進行方向)を表す移動情報を生成するセンサ群である。センサユニット3は、例えば、GPS受信機、加速度センサ、ジャイロセンサ、IMU(Inertial Measurement Unit)などのセンサを含んでいる。上記のGPS受信機は、RTK測位方式(即ち干渉測位方式)に基づき計測車両の絶対的な位置(例えば緯度、経度、及び高度の3次元位置)を示す高精度な位置情報を生成するものであってもよい。なお、センサユニット3は、ライダ2の位置及び向きを直接検出するようにライダ2に設けられたセンサであってもよい。センサユニット3の出力データには、生成日時を示す日時データが付加される。
【0025】
車載機1は、ライダ2及びセンサユニット3と有線又は無線により電気的に接続し、ライダ2及びセンサユニット3が生成したデータを記憶する。また、車載機1は、反射特性推定装置4とデータ通信可能であって、ライダ2及びセンサユニット3の出力データに基づく計測データ「Im」を、所定のタイミングにおいて、反射特性推定装置4に送信する。具体的には、車載機1は、ライダ2が複数の照射位置において計測した点群データと、センサユニット3の出力に基づくライダ2の移動情報とを含む計測データImを、反射特性推定装置4に送信する。車載機1は、センサユニット3と共にドライブレコーダーとして構成されてもよい。
【0026】
なお、車載機1は、ライダ2及びセンサユニット3の出力するデータを適宜補正する処理を行ってもよい。例えば、車載機1は、ライダ2とセンサユニット3の各装置内で基準とする時刻の差を検出し、点群データと移動情報に夫々含まれる日時データが同期するようにこれら日時データの少なくとも一方を上記の時刻差に基づき補正してもよい。
【0027】
反射特性推定装置4は、点群データとライダ2の移動情報とを含む計測データImを車載機1から受信し、受信した計測データImに基づき、ライダ2により計測された地物の反射特性を推定する処理などを行う。
【0028】
なお、
図1に示す反射特性推定システムの構成は一例であり、
図1に示す構成に対して種々の変形を行ってもよい。例えば、反射特性推定装置4は、車載機1とのデータ通信により計測データImを取得する代わりに、車載機1が記憶媒体に記憶した計測データImを当該記憶媒体から読み出すことで計測データImを取得してもよい。この場合、上記の記憶媒体は、計測車両の計測時には車載機1に電気的に接続されることにより、車載機1による計測データImの書込みが行われる。また、計測車両での計測後、上記の記憶媒体は、反射特性推定装置4と電気的に接続されることにより、反射特性推定装置4による計測データImの読み出しが行われる。また、ライダ2及びセンサユニット3が夫々単独で記憶媒体に生成したログデータを保持し、その記憶媒体を反射特性推定装置4に読み込ませることで、反射特性推定装置4への計測データImの供給を行ってもよい。この場合、反射特性推定システムは、車載機1を有しなくともよい。また、反射特性推定装置4は、複数の装置から構成されてもよい。この場合、反射特性推定装置4は、複数の装置は、予め割り当てられた処理を実行し、かつ、互いに必要なデータの授受を装置間において行う。
【0029】
(2)
反射特性推定装置の構成
図2は、反射特性推定装置4の機能的構成を示すブロック図である。反射特性推定装置4は、インターフェース41と、メモリ42と、コントローラ43と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0030】
インターフェース41は、反射特性推定装置4と外部装置とのデータの授受に関するインターフェース動作を行う。本実施例では、インターフェース41は、車載機1が生成した計測データImを受信する。インターフェース41は、車載機1と無線通信を行うためのネットワークアダプタなどのワイヤレスインターフェースであってもよく、計測データImを記憶した記憶媒体等から計測データImを読み出すためのハードウェアインターフェースであってもよい。また、インターフェース41は、入力装置、表示装置、音出力装置等の種々の周辺装置とのインターフェース動作を行ってもよい。
【0031】
メモリ42は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種の揮発性メモリ及び不揮発性メモリにより構成される。メモリ42は、コントローラ43が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。なお、コントローラ43が実行するプログラムは、メモリ42以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0032】
また、メモリ42は、点群データD1と、移動情報D2と、積算点群データD3と、クラスタ情報D4と、反射特性情報D5と、既知物性情報D6と、物性推定情報D7とを記憶している。
【0033】
点群データD1は、車載機1が照射位置を変えながら逐次的に計測した点群データである。移動情報D2は、点群データD1の各計測時刻でのライダ2の位置を表す移動情報である。点群データD1及び移動情報D2は、車載機1から受信する計測データImに基づき蓄積される。
【0034】
積算点群データD3は、点群データD1を共通の座標系により積算(統合)した点群データである。後述するように、積算点群データD3の各計測点には、ライダ2の照射位置(即ち計測用の光を発した計測位置)に関する情報が付加されている。
【0035】
クラスタ情報D4は、積算点群データD3が表す積算点群データに対してクラスタリング処理することで得られた各クラスタ(グループ)を識別する情報である。なお、クラスタ情報D4は、積算点群データD3の各計測点に付加されるクラスタの識別ラベルであってもよい。この場合、クラスタ情報D4は、積算点群データD3に組み込まれる。
【0036】
反射特性情報D5は、反射特性推定装置4がクラスタ毎に推定した反射特性を表す情報である。反射特性情報D5は、後述するように、照射角度と反射強度との関係を表す情報となる。既知物性情報D6は、物体毎に予め計測された反射特性に関する情報である。物性推定情報D7は、反射特性推定装置4が既知物性情報D6に基づき推定したクラスタ毎の物性の推定結果に関する情報である。
【0037】
なお、点群データD1、移動情報D2、積算点群データD3、クラスタ情報D4、反射特性情報D5、既知物性情報D6、物性推定情報D7の少なくとも1つは、インターフェース41を介して反射特性推定装置4と接続されたハードディスクなどの反射特性推定装置4の外部の記憶装置に記憶されてもよい。上記の記憶装置は、反射特性推定装置4と通信を行うサーバ装置であってもよい。また、上記の記憶装置は、複数の装置から構成されてもよい。
【0038】
コントローラ43は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)などの1又は複数のプロセッサを含み、反射特性推定装置4の全体を制御する。この場合、コントローラ43は、メモリ42等に記憶されたプログラムを実行することで、反射特性の推定に関する処理を行う。例えば、コントローラ43は、車載機1からインターフェース41を介して受信した計測データImに含まれる点群データとライダ2の移動情報とを、夫々点群データD1と移動情報D2としてメモリ42に記憶する。また、コントローラ43は、点群データD1、移動情報D2及び既知物性情報D6等に基づき、積算点群データD3、クラスタ情報D4、反射特性情報D5、及び物性推定情報D7を夫々生成し、これらをメモリ42に記憶する。コントローラ43は、「取得手段」、「積算処理手段」、「クラスタリング処理手段」、「反射特性推定手段」、「物性推定手段」及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0039】
なお、コントローラ43が実行する処理は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、コントローラ43が実行する処理は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、コントローラ43が本実施例において実行するプログラムを実現してもよい。このように、コントローラ43は、種々のハードウェアにより実現されてもよい。さらに、コントローラ43が有する機能は,例えば,クラウドコンピューティング技術などを用いて、複数のコンピュータの協働によって実現されてもよい。
【0040】
(3)反射特性及び物性の推定
次に、反射特性推定装置4が実行する反射特性及び物性の推定処理について説明する。概略的には、反射特性推定装置4は、点群データD1及び移動情報D2に基づきライダ2の照射位置の情報を含む積算点群データD3を生成し、積算点群データD3が構成するクラスタ毎に、照射角度を考慮した反射特性及び該当する物性の推定を行う。これにより、反射特性推定装置4は、照射角度に応じた反射強度の違いを考慮した的確な反射特性及び物性の推定を行う。
【0041】
(3-1)機能ブロック
図3は、本実施例における反射特性推定装置4のコントローラ43の機能的な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、コントローラ43は、機能的には、積算処理部51と、クラスタリング処理部52と、反射特性推定部53と、物性推定部54とを有する。なお、
図3では、データの授受が行われるブロック同士を実線により結んでいるが、データの授受が行われるブロックの組合せは
図3に限定されない。後述する他の機能ブロックの図においても同様である。
【0042】
積算処理部51は、車載機1から供給される計測データImに基づきメモリ42に記憶された点群データD1及び移動情報D2に基づいて、計測点毎に照射位置の情報を含んだ積算点群データD3を生成する。クラスタリング処理部52は、積算点群データD3に対してクラスタリングを行い、積算点群データD3を構成する各計測点のクラスタ(グループ)を表すクラスタ情報D4を生成する。
【0043】
反射特性推定部53は、クラスタ情報D4に基づき特定される積算点群データD3の各クラスタについて、照射角度を考慮した反射特性を推定し、クラスタ毎の反射特性を表す反射特性情報D5を生成する。物性推定部54は、反射特性情報D5と、既知物性情報D6とに基づき、各クラスタに対応する物体の物性を推定し、物性の推定結果を物性推定情報D7として生成する。
【0044】
(3-2)積算処理部の詳細
積算処理部51は、点群データD1及び移動情報D2に基づいて、計測点毎に照射位置の情報を含んだ積算点群データD3を生成する。以後では、積算処理部51による積算点群データD3の生成方法及び積算点群データD3のデータ構造の詳細について、
図4(A)~(C)及び
図5(A)~(C)を参照して説明する。
【0045】
図4(A)は、ライダ2が位置「P1」に存在するときに計測された点群データの各計測点を、ライダ2の照射位置を原点(ここではO(0,0,0))とする座標系により表した図である。
図4(B)は、ライダ2が位置P1から遷移した位置「P2」に存在するときに計測された点群データの各計測点を、ライダ2の照射位置を原点(ここではO(0,0,0))とする座標系により表した図である。
図4(C)は、
図4(A)及び
図4(B)に示す各点群データを積算した積算点群データD3の各計測点を示す図である。ここで、
図4(A)~(C)に示される各計測点には計測された反射強度に基づく濃淡が付けられており、濃淡が濃いほど反射強度が低いことを表す。
【0046】
また、
図5(A)は、
図4(A)に示される各計測点のデータ構造を示し、
図5(B)は、
図4(B)に示される各計測点のデータ構造を示し、
図5(C)は、
図4(C)に示される各計測点のデータ構造を示す。
【0047】
図4(A)及び
図4(B)に示されるように、積算される前の各点群データは、照射位置を原点(ここではO(0,0,0))とする計測時のライダ2を基準とした座標系(「ライダ座標系」とも呼ぶ。)により表されている。また、
図5(A)及び
図5(B)に示されるように、積算される前の各点群データの計測点の各々は、照射位置を原点とする3次元座標値(X座標値、Y座標値、Z座標値)と、反射強度とを含んでいる。なお、
図4(A)に示される点群データは、計測点A~Cを含んでおり、
図4(B)に示される点群データは、計測点D~Fを含んでいる。
【0048】
また、
図4(C)に示されるように、積算点群データD3は、異なる照射位置で計測された計測点を共通の座標系(「積算座標系」とも呼ぶ。)において表したデータとなっている。例えば、積算点群データD3は、移動情報D2においてライダ2の位置を表した座標系(例えば、緯度、経度及び高度を基準とする座標系)を積算座標系とし、異なる照射位置で計測された計測点を統一的に表したデータとなる。この場合、積算処理部51は、積算される前の各点群データの計測点の各々のライダ座標系の座標値を、移動情報D2により示される計測時のライダ2の位置及び向きの情報を用いて、積算座標系の座標値に変換する。
【0049】
そして、
図5(C)に示されるように、積算処理部51は、各計測点に、積算座標系の3次元座標値と、反射強度と、照射位置とを紐付けた積算点群データD3を生成している。この場合、積算処理部51は、計測点毎に、ライダ座標系から変換した積算座標系の3次元座標値に、積算前の計測点に含まれる反射強度と、積算座標系への変換に使用したライダ2の照射位置とを関連付ける。これにより、積算処理部51は、照射位置の情報を含んだ積算点群データD3を生成し、積算点群データD3に基づく照射角度を考慮した反射特性の推定処理を、反射特性推定部53に好適に実行させる。
【0050】
(3-3)クラスタリング処理部の詳細
クラスタリング処理部52は、積算点群データD3を構成する計測点間の距離等に基づき、近傍の計測点同士を同一のクラスタとするクラスタリングを行い、各計測点のクラスタ(グループ)を識別するクラスタ情報D4を生成する。これにより、クラスタリング処理部52は、積算点群データD3に対し、物体毎にクラスタを好適に設定する。
【0051】
例えば、
図4(C)に示される積算点群データD3では、クラスタリング処理部52は、破線枠61内の計測点の塊を第1のクラスタとし、破線枠62内の計測点A~Fを含む計測点の塊を第2のクラスタとみなす。そして、クラスタリング処理部52は、各計測点が属するクラスタを示したクラスタ情報D4を生成する。
【0052】
ここで、クラスタリングの具体的態様について説明する。
【0053】
クラスタリングの第1態様では、クラスタリング処理部52は、積算点群データD3を構成する各計測点の3次元座標値に基づき、計測点間の距離(積算座標系における距離)が近い計測点同士を同一クラスタとするクラスタリングを行う。この場合、クラスタリング処理部52は、任意のクラスタリング手法(階層クラスタ分析、非階層クラスタ分析)を採用してクラスタリングを行ってもよい。
【0054】
クラスタリングの第2態様では、クラスタリング処理部52は、積算点群データD3を構成する各計測点の3次元座標値と反射強度との両方に基づき、クラスタリングを行う。この場合、クラスタリング処理部52は、例えば、3次元座標系である積算座標系に反射強度の座標軸を加えた4次元座標系における計測点間の距離に基づき、クラスタリングを行う。他の例では、クラスタリング処理部52は、第1態様に基づき暫定的なクラスタリングを行った後、暫定の各クラスタについて、反射強度に基づくグループ化をさらに行う。そして、クラスタリング処理部52は、設定した各グループを、最終的なクラスタとして設定する。
【0055】
なお、クラスタリング処理部52は、最初のクラスタリングの実行後、当該クラスタリングの実行結果に基づき物性推定部54が生成した物性推定情報D7を用いてクラスタリングの修正を行ってもよい。例えば、クラスタリング処理部52は、最初のクラスタリング結果に基づくクラスタ毎に、対象のクラスタに属する各計測点の反射強度と、対象のクラスタに対する物性推定部54の推定結果とを比較する。そして、クラスタリング処理部52は、物性推定部54が推定した物性(反射特性)と異なる計測点の塊が存在する場合、当該計測点の塊を別のクラスタとみなし、対象のクラスタを分割する。その後、分割されたクラスタについて、反射特性推定部53による反射特性の推定及び物性推定部54による物性推定が行われる。
【0056】
このように、クラスタリング処理部52は、近傍の計測点と明らかに反射特性が異なるものは別のクラスタとみなしてもよい。これにより、例えば、標識に覆い被さる木の枝などを、好適に標識のクラスタから分離し、反射特性の推定及び物性推定などを行うことができる。
【0057】
(3-4)反射特性推定部の詳細
反射特性推定部53は、クラスタ情報D4に基づき特定される積算点群データD3の各クラスタについて、反射特性を推定する。この場合、まず、反射特性推定部53は、積算点群データD3の全ての計測点に対し、照射位置と反射強度との組を算出する。そして、反射特性推定部53は、算出した照射位置と反射強度との組をクラスタ毎に集計し、クラスタ毎の集計結果に基づく反射特性情報D5を生成する。
【0058】
ここで、各計測点の照射角度の推定方法の具体例について説明する。例えば、反射特性推定部53は、対象の計測点が属するクラスタに対して3点以上の計測点による近似平面を算出する。そして、反射特性推定部53は、算出した近似平面と、対象の計測点が示す3次元座標値と照射位置とを結ぶベクトルとがなす角度を、照射角度として算出する。他の例では、反射特性推定部53は、対象の計測点に対して法線ベクトルを算出し、算出した法線ベクトルと、対象の計測点が示す3次元座標位置と照射位置とを結ぶベクトルとの角度を、照射角度として算出してもよい。
【0059】
なお、反射特性推定部53は、照射角度を所定の量子化数により量子化し、量子化した照射角度毎に反射強度を算出してもよい。この場合、反射特性推定部53は、同一の照射角度となる計測点が同一クラスタ内で複数存在する場合には、これらの複数の計測点の反射強度の代表値(平均値、中央値等)を算出する。反射特性推定部53は、クラスタ毎に、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性情報D5を好適に生成することができる。なお、反射特性情報D5は、クラスタ毎に照射角度と反射強度との関係を表すグラフ情報であってもよい。また、反射特性推定部53は、任意の補間処理によって照射角度が存在しない反射強度の値を補間した反射特性情報D5を生成してもよい。また、反射特性推定部53は、上記の量子化に限らず、照射角度と反射強度との関係を近似的に表す関数を、反射特性情報D5として算出してもよい。この場合、任意の関数近似の手法が用いられてもよい。
【0060】
(3-5)物性推定部の詳細
物性推定部54は、反射特性情報D5と、既知物性情報D6とに基づき、各クラスタに対応する物体の物性を推定し、物性の推定結果を物性推定情報D7として生成する。
【0061】
ここで、既知物性情報D6は、例えば、道路周辺に存在する物体のカテゴリ(看板、木、車両等)毎又は当該物体の素材のカテゴリ(例えば再帰性反射部材、木材、水、鉄、その他金属等)毎に照射角度と反射強度との関係を表す反射特性の情報である。他の例では、既知物性情報D6は、異なる物性のカテゴリ(例えば、第1物性、第2物性、…等)毎に照射角度と反射強度との関係を表す反射特性の情報であってもよい。このように、既知物性情報D6は、物体、素材又は物性等のカテゴリ(「既存物性カテゴリ」とも呼ぶ。)毎の反射特性に関する情報である。
【0062】
そして、物性推定部54は、例えば、既知物性情報D6に登録されている既存物性カテゴリ毎の反射特性と、反射特性情報D5が示すクラスタ毎の反射特性との比較に基づき、各クラスタに対応する既存物性カテゴリを推定する。そして、物性推定部54は、クラスタ毎に推定した既存物性カテゴリと、対応するクラスタとを対応付けた情報を、物性推定情報D7として生成する。
【0063】
ここで、既存物性カテゴリの推定方法の一例について説明する。物性推定部54は、例えば、クラスタごとに、既知物性情報D6に登録されている各既存物性カテゴリとの反射特性の類似度を算出する。この類似度の算出方法は、相互相関関数や特徴空間における距離等を用いた任意の類似度算出方法であってもよい。そして、物性推定部54は、クラスタ毎に、最も類似度が高い既存物性カテゴリを決定する。そして、物性推定部54は、決定した既存物性カテゴリを、対象のクラスタが表す物体の物性を表すとみなし、決定した既存物性カテゴリと対象のクラスタとを関連付けた物性推定情報D7を生成する。
【0064】
図6(A)は、物体63に対して得られた計測点とライダ2の照射位置との関係を示す図である。また、
図6(B)は、物体64に対して得られた計測点とライダ2の照射位置との関係を示す図である。
図6(A)、(B)では、反射強度が高いほど計測点が薄く表示されている。
【0065】
図6(A)に示すように、物体63の場合には、照射位置及び照射角度に依存せずに略均等な反射強度を表す計測点が生成されている。よって、この場合、例えば、物体63に対応するクラスタは、再帰性反射部材又は当該部材から作られる標識に対応する既存物性カテゴリと反射特性の類似度が最も高くなる。よって、この場合、物性推定部54は、物体63に対応するクラスタが、再帰性反射部材又は当該部材から作られる標識に対応する既存物性カテゴリに属することを表す物性推定情報D7を生成する。
【0066】
一方、
図6(B)に示すように、物体64の場合には、正面方向からの反射強度が最も高くなり、照射角度が物体64の正面方向からずれるほど反射強度が小さくなっている。よって、この場合、例えば、物体63に対応するクラスタは、側面方向への反射が弱い素材又は当該素材から作られる物体に対応する既存物性カテゴリと反射特性の類似度が最も高くなる。よって、この場合、物性推定部54は、物体64に対応するクラスタが、側面方向への反射が弱い素材又は当該素材から作られる物体に対応する既存物性カテゴリに属することを表す物性推定情報D7を生成する。
【0067】
このように、物性推定部54は、照射角度を考慮した反射特性をクラスタ毎に推定することで、高精度な物性推定を行うことができる。
【0068】
(4)
処理フロー
図7は、第1実施例において反射特性推定装置4が実行するフローチャートの一例である。反射特性推定装置4は、
図7に示すフローチャートの処理を、例えば所定の道路区間ごとに実行する。
【0069】
反射特性推定装置4は、点群データD1と移動情報D2とを取得する(ステップS11)。この場合、反射特性推定装置4は、例えば、車載機1から計測データImを受信し、受信した計測データImに基づき点群データD1と移動情報D2とを取得する。
【0070】
次に、反射特性推定装置4は、点群データD1と移動情報D2とに基づき、ライダ2の照射位置の情報を含む積算点群データD3を生成する(ステップS12)。この場合、反射特性推定装置4の積算処理部51は、ライダ座標系により表された点群データD1を、移動情報D2に基づき積算座標系に変換して積算した積算点群データD3を生成する。
【0071】
そして、反射特性推定装置4は、積算点群データD3の計測点のクラスタリングを行う(ステップS13)。この場合、反射特性推定装置4のクラスタリング処理部52は、例えば、積算座標系又は所定の特徴空間において近傍となる計測点同士を同一クラスタとするクラスタリングを実行する。
【0072】
次に、反射特性推定装置4は、ステップS13において特定されたクラスタ毎に、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する(ステップS14)。この場合、反射特性推定装置4の反射特性推定部53は、積算点群データD3の計測点の各々に対して算出した照射角度と反射強度の組をクラスタ毎に集計することで、クラスタ毎の反射特性を推定する。
【0073】
次に、反射特性推定装置4は、ステップS14において推定された反射特性に基づき、クラスタ毎の物性推定を行う(ステップS15)。この場合、反射特性推定装置4の物性推定部54は、既知物性情報D6と、ステップS14の推定されたクラスタ毎の反射特性との比較結果に基づき、クラスタ毎に最も当てはまる既存物性カテゴリを推定する。
【0074】
以上説明したように、第1実施例における反射特性推定装置4のコントローラ43は、照射した光の反射光を受光することで計測を行うライダ2により複数の照射位置において計測された点群データD1を取得する。そして、コントローラ43は、照射位置及び反射強度に関する情報を計測点毎に関連付けた積算点群データD3を生成する。そして、コントローラ43は、積算点群データD3が示す計測点のクラスタごとに、照射角度と反射強度との関係を表す反射特性を推定する。これにより、反射特性推定装置4は、ライダ2により計測した物体について、照射角度を考慮した反射特性を好適に推定することができる。
【0075】
<第2実施例>
第2実施例では、反射特性推定装置4は、第1実施例における処理に加えて、物性推定情報D7の算出後、照射位置を仮想的に変更した場合の積算点群データD3の各計測点での反射強度のシミュレーションを行う。
【0076】
図8は、第2実施例における反射特性推定装置4の機能ブロック図の一例である。第2実施例では、反射特性推定装置4のコントローラ43は、機能的には、積算処理部51と、クラスタリング処理部52と、反射特性推定部53と、物性推定部54と、反射特性再計算部55とを有する。以後では、第1実施例と同様の構成要素については適宜同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
反射特性再計算部55は、仮想的なライダ2の照射位置(ここでは「視点」とも呼ぶ。)を指定する情報である視点情報「D8」に基づき、当該視点を照射位置とした場合に得られる各計測点での反射強度を算出する。この場合、反射特性再計算部55は、ライダ2の最大測距距離及び視野角などに基づく測距可能範囲を設定し、測距可能範囲内に存在する各計測点について反射強度を算出してもよい。そして、反射特性再計算部55は、各計測点に対して算出した反射強度を示す情報を、反射特性出力情報「D9」として出力する。
【0078】
この場合、視点情報D8は、例えば、インターフェース41に接続されたマウス、キーボード、音声入力装置などの入力装置が生成する入力信号により指定された情報である。この場合、反射特性再計算部55は、視点を指定する対象となる空間等を表すGUI(Graphical User Interface)をインターフェース41により接続されたディスプレイ等に表示し、視点を指定する入力を受け付けてもよい。
【0079】
ここで、各計測点の反射強度の算出方法について説明する。まず、反射特性再計算部55は、指定された視点を照射位置とした場合の対象の計測点の照射角度を、幾何学的手法により算出する。また、反射特性再計算部55は、物性推定情報D7を参照することで、反射強度を再計算する計測点が属するクラスタの物性(即ち照射角度に応じた反射特性)を認識する。そして、反射特性再計算部55は、算出した照射角度に対応する反射強度を、対象のクラスタの物性推定情報D7が示す反射特性に基づき認識する。なお、反射特性再計算部55は、物性推定情報D7の既存物性カテゴリに紐づけられた既知物性情報D6をさらに参照することで、対象のクラスタの照射角度毎の反射特性を認識してもよい。
【0080】
その後、反射特性再計算部55は、例えば算出した反射特性出力情報D9を、インターフェース41に接続されたディスプレイ等に表示してもよく、反射特性出力情報D9に基づき所定の表示を行う端末装置に送信してもよい。
【0081】
このように、第2実施例によれば、指定された視点に対して得られる計測点の反射強度を好適にシミュレーションすることができる。
【0082】
なお、上述した各実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータであるコントローラ等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0083】
以上、実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。