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  • 特開-医療用上衣 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075383
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】医療用上衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
A41D13/12 145
A41D13/12 190
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186129
(22)【出願日】2020-11-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 株式会社YAS パンフレット 暫定版 2020_09_23.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】520434617
【氏名又は名称】株式会社YAS
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 泰
(72)【発明者】
【氏名】大村 泉
(72)【発明者】
【氏名】大村 陽子
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB08
3B011AB09
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】点滴治療を要する入院中の患者のストレスを低減し、拘縮症状がある患者の更衣の痛みを低減する。
【解決手段】医療用上衣1は、左右のいずれか一方の肩から袖の上部と、該袖の下部から脇とが連続して開放可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のいずれか一方の肩から袖の上部と、該袖の下部から脇とが連続して開放可能に構成されることを特徴とする医療用上衣。
【請求項2】
開放された前記肩から袖の上部と、前記袖の下部から脇とは、プラスチック製のスナップボタンで閉止可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の医療用上衣。
【請求項3】
前記スナップボタンは、袖および身頃の前後の接合部に隣接した接合面上の、閉止された場合に該接合部の内部になる位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の医療用上衣。
【請求項4】
身頃の前後が反転可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の医療用上衣。
【請求項5】
身頃の前後にポケットを有することを特徴とする請求項4に記載の医療用上衣。
【請求項6】
着用時に開放口が斜め上向きになるポケットを有することを特徴とする請求項1に記載の医療用上衣。
【請求項7】
100%コットンの布地を用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載の医療用上衣。
【請求項8】
任意の彩色または模様を施すことが可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の医療用上衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用上衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入院中の患者は、検温、腹部や胸部の診察、処置、レントゲン検査および点滴治療等の都合から、紐で閉じる前開きの医療用上衣の着用を求められる。一方、長時間に及ぶ点滴治療では、腕に点滴装置を装着した場合に更衣が必要になると、点滴を一時停止してカテーテルと輸液ラインとの接合部分を切り離さなければならないため、時間も複数の看護師の手も余計に必要になる。加えて、この医療用上衣では、入院が長期にわたり肩に拘縮症状が出ていて、着衣時に2度目に腕を通す際に痛みを訴える患者が多い。
【0003】
そこで、紐で閉じる前開きの医療用衣料であって、左右の両脇や両袖が開くようにして、点滴を一時停止せずに、また拘縮患者が容易に更衣を可能とする医療用衣料が開発されている(非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ナガイレーベン、「男女兼用術前術後衣[ナガイレーベン製品]」、[2020年10月9日検索]、インターネット<URL:https://ths-net.jp/i/EG-315>
【非特許文献2】ナガイレーベン、「部分開閉タイプの術前術後衣」、[online]、[2020年10月9日検索]、インターネット<URL:https://medicollection.com/products/detail/226703/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の医療用衣料は、点滴治療を要する多くの入院中の患者にストレスを与えていた。例えば、紐で閉じる前開きの医療用衣料では、患者が少し体位を変えただけで前がはだけたり、頸から胸が露出したりする等、患者に羞恥心やストレスを感じさせていた。また、拘縮症状が出ている患者には、着衣時に2度目に腕を通す際に痛みを感じさせていた。また、左右の両脇や両袖が開く医療用衣料(非特許文献1,2参照)は、一人では更衣できない術前術後の重症患者や拘縮症状が出ている患者を想定したものであった。点滴の一時停止や腕を袖に通すときの痛みを回避できるものの、依然として更衣には複数の看護師の手を必要とする。そのため、通常の更衣であれば一人でできる患者であっても看護師に裸体を晒さざるを得ない等のストレスを与えていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、点滴治療を要する入院中の患者のストレスを低減し、拘縮症状がある患者の更衣の痛みを低減することが可能な医療用上衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る医療用上衣は、左右のいずれか一方の肩から袖の上部と、該袖の下部から脇とが連続して開放可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、点滴治療を要する入院中の患者のストレスを低減し、拘縮症状がある患者の更衣の痛みを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る医療用上衣の正面図である。
図2図2は、医療用上衣を説明するための図である。
図3図3は、医療用上衣を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0011】
まず、本発明の一実施の形態の説明に先立ち、従来の医療用衣類とその課題について詳細に説明する。従来の医療用衣類は、例えば、腹部や胸部の診察や術後の処置等を考慮して、左右の前見頃を紐で閉じる前開きの構造になった上衣である。
【0012】
しかしながら、発明者である大村泰は、白血病患者として闘病生活を行っていたところ、上述したような従来の医療用衣類についての問題点を痛感していた。特に患者が罹患する疾患の種別によっては、点滴が数時間、数日、時には数か月や1年を超える長時間となる場合もあるが、点滴を行っている間は、患者の腕に翼状針、留置針(末梢静脈カテーテル)、または頸部に中心静脈カテーテル等、薬剤を投与するための各種点滴装置が装着され、点滴装置と薬液が入るバッグとがチューブで接続されることとなる。
【0013】
一方で、従来の医療用衣類を更衣するには、前身頃を開くとともに、筒状の腕部分に腕を入れる必要がある。換言すると、従来の医療用上衣は、腕を通すための2つの穴を有する2つ穴トーラスの位相を有しているといえる。しかしながら、点滴をしながらこのような2つ穴トーラスの位相を有する医療用上衣を更衣しようとすると、患者の腕に翼状針、留置針(末梢静脈カテーテル)がある場合、点滴装置が腕につながっているため、患者の腕のみならず点滴装置を医療用衣料の筒部分に通す必要が生じる。さらに、肩関節に拘縮症状がある患者は、2度目に腕を袖に通す際、自由に曲げることができないので、痛みを感じることが多い。
【0014】
また、前開きの構造を有する上衣では、着用者が体位を変えた際に前がはだけたり、裾が乱れやすい。手術後においては、着用者の麻酔が覚めてくる間に脚等が動き始めるため、前がはだけたり裾の乱れが生じる。しかしながら、このような状況において、着用者は、麻酔から完全に覚めていないため、はだけや裾の乱れを元に戻すことができない。このため、医師の回診時等に不格好な姿をさらけだしてしまい、着用者本人のみならず、家族等に心労をかける恐れがある。また、紐がほどけた場合、上衣が患者に絡まってしまい、安全性を担保できるとは言えない。
【0015】
また、従来の医療用衣類には、拘縮症状があって肩や腕の関節が自由に動かない患者を対象にした術前術後衣として、腕を通しやすいように、左右の袖の上部と肩の一部とがスナップボタンで開閉可能に構成され、前開きで紐で綴じられているものが知られている。しかしながら、このような医療用衣類では、拘縮患者に更衣の際痛みを与えないが、複数の看護師の補助が更衣に必要であり長時間患者が裸体を家族以外の第三者に晒すことから来る羞恥心やストレスが不可避である。また患者が体位を少し動かすだけで前がはだけたり、裾が乱れたりするなど、このことからも患者に羞恥心やストレスをもたらす。なお、従来の前開き紐綴じの医療用衣類もこの種のストレスは不可避である。
【0016】
また、例えば、肩から袖にかけてスナップボタンにより解放可能な接合部分を有する医療用衣類も考えられる。しかしながら、このような構造では、点滴の一時停止を避けるには、肩から袖を開放することで首から袖にかけて大きな開放部分を作った状態で、このような開放部分から体を入れる、もしくはシャツのように前部分に設けられたボタンを開閉することで衣類を開き、さらに各袖の上部の開閉部分を開き、点滴をつないだまま腕を入れるといったことをしなければならず、非現実的かつ手間がかかり、患者単独での着替えが困難である。また、このような接合部分を断続的に設けた場合、製造コストが上昇する。
【0017】
なお、着用者が体を動かし辛い拘縮患者である場合、腕に痛みが生じるのは、2回目に袖に腕を通すときとなる。例えば、拘縮患者が最初に通す手(腕)は、重力でだらりと下がることとなるので、痛みはあまり生じない。しかしながら、2回目に腕を袖に通す際に、痛みが生じてしまう。例えば、上述した医療用衣類では、ボタンで前部分を開放したまま、片方の袖の上のボタンをとめておいて、まずこの袖に腕を通すこととなる。次に片側の袖の上部を開き、脇の下から前身ごろの片方を持って既に腕が通っている前身ごろとあわせ、ボタンをとめ、最後に袖の上のボタンをとめる、と言う着方となる。しかしながら、このような着方は、着用者本人が一人でやるのは困難であり、まして拘縮症状があると、片手で(最初に袖を通した腕で)あとから袖を通す腕の上のボタンをとめるのは、至難の業となる。
【0018】
そこで、大村泰は、闘病とともに体位が変化してもはだけづらく、点滴装置を装着したままでも更衣を容易に行うことができる医療用上衣の構造に想到した。なお、感染症対策として、長時間カテーテル留置がなされる場合、留置先が左腕から右腕に、あるいはその逆に、また左頸部から右頸部に、あるいはその逆に変更される場合がある。そのような場合にも、大村泰が想到した医療用上衣は、前後リバーシブル更衣が可能であるため、カテーテルの留置先の変更によってその機能が阻害されることがない。
【0019】
以下、図面を参照して、大村泰により発明された医療用上衣の形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態の医療用上衣の正面図である。図1に示すように、本実施形態の医療用上衣1は、例えば、袖の付け根や袖口がゆったりしたドルマンスリーブのTシャツタイプの上衣である。なお、医療用上衣1は、ドルマンスリーブのTシャツに限定されるものではなく、一般的な形状を有するTシャツであってもよい。この医療用上衣1は、左右のいずれか一方の肩2から袖の上部3aと、該袖の下部3bから脇4とが連続して開放可能に構成される。すなわち、図1に太線で示す袖および身頃の前後の接合部5は、斜線で示す接合部5に隣接する接合面6で閉止されている。したがって、接合部5は、接合面6を分離することにより、開放可能に構成されている。
【0020】
また、図2は、医療用上衣を説明するための図である。図2に示すように、開放された肩から袖の上部(2~3a,2’~3a’)と、袖の下部から脇(3b~4,3b’~4’)とは、プラスチック製のスナップボタン7で閉止可能に構成される。すなわち、図2に示すように分離された接合面6は、プラスチック製のスナップボタン7で閉止可能に構成される。
【0021】
これにより、点滴治療中に更衣が必要となった場合に、患者が接合部5を開放して、腕や頸部に点滴を装着したまま医療用上衣1を脱着することが可能となる。付言すると、頸部に中心静脈カテーテルを留置した患者が、左右の前見頃を紐で閉じる従来の前開き医療用衣料を着用している場合と同様に、点滴の一時中断は不要である。
【0022】
換言すると、図1に示す医療用上衣1は、スナップボタン7等の閉止用具により接合部5を接合した場合、裾部分を外延とし、両腕および首を通すための3つの穴を有する3つ穴トーラスの位相構造を有する。また、医療用上衣1は、例えば、右腕を通す第1の穴(図1において左側に配置された袖口)の外延から首を通すための穴の外延まで延びる第1の接合部5(すなわち、右腕の袖口から肩部分に延びる接合部5)、第1の穴の外延から裾部分まで延びる第2の接合部5(すなわち、右腕の袖口から脇の下部分を通り、裾まで延びる第2の接合部5)を有する。
【0023】
このような第1の接合部5および第2の接合部5に配置されたスナップボタン7を開放した場合、医療用上衣1の位相は、接合部5が配置されていない左腕を通す第2の穴(図1において右側に配置された袖口)のみを有する1つ穴トーラスの位相へと変化する。
【0024】
その結果、医療用上衣1の接合部5を開放した場合、2(b)に示すように、医療用上衣1の左右のいずれか一方だけが開放される。したがって、点滴が装着されていない方の腕を開放されていない袖に通した場合、医療用上衣1の接合部5を開放することで、点滴が装着されている側の穴がなくなる。その結果、点滴装置を穴に通さずとも医療用上衣1を着用もしくは脱ぐことが可能となり、患者が自身で容易に更衣することが可能となる。したがって、看護師に頼らなければならないという羞恥心やストレスを低減し、点滴の一時中断から生じる感染リスクも低減され、安心して長時間に及ぶ点滴治療に臨むことも可能となる。
【0025】
さらに、片方のみに接合部5を構成すればよいので、製造工程を低減でき、生産コストを抑えることが可能となる。
【0026】
また、紐で閉じる前開きではなく、脇部分がスナップボタン7で固定されるので、少し体位を変えただけで前がはだけたり、頸から胸が露出したりすることがない。そのため、患者が羞恥心やストレスを感じることなく、安心して車椅子を乗り換えたりリハビリに臨んだりできる。
【0027】
なお、医療用上衣1の着用は、入院患者に限らず、40肩や50肩等で肩甲骨周辺の筋肉が拘縮して肩が上がらなくなったり、加齢で着替えが困難になったりした人にも有用であり、同様に更衣が容易に可能となる。更衣の際、肩甲骨付近の拘縮症状から生じる痛みは、主として2度目に腕を袖に通す際に生じるが、医療用上衣1では、腕を袖に通すかわりに袖の開放部分をスナップボタンで閉止するため、このような痛みを回避できる。
【0028】
また、スナップボタン7で接合面6を分離したり接合したりすることが可能であるので、患者がさらに容易に自身で更衣が可能となる。また、スナップボタン7がプラスチック製であるので、レントゲン検査やCT、MRI等の金属を持ち込めない検査のための更衣が不要となる。また、スナップボタン7は、結び目のある閉じ紐とは異なり、結び目が体に当たって痛くなることを防止できる。
【0029】
なお、接合部5の閉止用具は、スナップボタン7に限定されず、例えば、ボタンやファスナー、マジックテープ(登録商標)でもよい。すなわち、医療用上衣1の接合部5は、袖や脇部分の開放および接合を行うことができる閉止用具であれば、任意の構造を有する閉止用具が採用可能である。一方で、例えば、閉止用具がボタンで構成される場合、片手でボタンをボタンホールに通すこととなるため、解放や接合を容易にすることが難しい。また、閉止用具がファスナーで構成される場合、ファスナーをはめて袖口から襟首まで(もしくはその逆)移動させたり、裾から袖口まで(もしくはその逆)移動させたりする必要があるが、このような動作を片手で行うのは、困難である。
【0030】
また、閉止用具がマジックテープで構成される場合、ボタンやファスナーと比較して容易に接合部5の開放および接合を行うことができると考えられる。しかしながら、マジックテープには、洗濯時に衣類の繊維が付着しやすい。このように、繊維が付着した場合、マジックテープの接合力が弱まってしまい、このような繊維を取り除くのも困難であるため、医療用上衣1の寿命を短縮させてしまう。また、閉止用具に繊維が付着したまであると、通常の病室や集中治療室等、清潔さが要求される場所での利用が困難となる。
【0031】
そこで、発明者である大村泰は、片手で取り付けやすく、かつ、繊維等が付着しづらいスナップボタンを閉止用具に採用することに想到した。このようなスナップボタンを閉止用具とすることで、医療用上衣1は、利用者が容易に接合部5の開放および接合を行うことを実現することができる。
【0032】
さらに、医療用上衣1は、袖から襟首および脇にかけて徐々に幅が広がるドルマンスリーブの袖を有する。このようなドルマンスリーブの袖を採用した場合、脇の下から接合部5まで幅が広がる(遊びがある)結果、裾からわきの下を介して袖口へと至る接合部5を着用者自らが開放および接合する際の困難性を低下させることができる。
【0033】
また、医療用上衣1は、前身頃、後身頃の端を内側に折り曲げるように伸ばすことで、端部分の布が2重になっており、内側の布部分にスナップボタンが配置されている。すなわち、スナップボタン7は、袖および身頃の前後の接合部5に隣接する接合面6上の、接合部5が閉止された場合に該接合部5の内部になる位置に配置される。つまり、着用時には接合面6が隠れて、一見、普通のドルマンスリーブ型Tシャツのように見える。そのため、患者は医療用であることを意識することなく、普段着のように見舞い客との面会に応じたり院内を散歩したりできるので、患者のストレスを抑止することが可能である。
【0034】
また、図3は、医療用上衣を説明するための図である。図3(a)には、医療用上衣の正面図が例示され、図3(b)には、この医療用上衣の背面図が例示されている。図3に示すように、医療用上衣1は、身頃の前後が反転可能に構成され、リバーシブルに着用可能である。つまり、前見頃と後見頃とは同一の形状であり、接合部5を体の右側にして着用することも左側にして着用することもできる。したがって点滴装置が右腕に装着されていても左腕に装着されていても、同様に、医療用上衣1の更衣が容易に可能である。
【0035】
また、医療用上衣1は、身頃の前後にポケット8を有する。これにより、例えば、左右のいずれの腕に点滴を装着するかに関わらず、点滴治療中の更衣が可能となる。また、常にポケット8が体の前面にあるので、例えば心電図モニター等の医療器具を収納することが可能である。
【0036】
また、医療用上衣1は、着用時に開放口が斜め上向きになるポケット8を有してもよい。これにより、さらに医療器具等を収容しやすくなり、利便性が向上する。
【0037】
また、医療用上衣1は、接合部5を有しない側の前後の見頃にまたがる大きなポケット8を有し、前見頃と後見頃の縫製部分に重畳して中心部分が縫製されていてもよい。これにより、ポケット8を有する医療用上衣1をさらに容易に作成することが可能となる。
【0038】
また、医療用上衣1は、100%コットンの布地を用いて構成される。これにより、肌に優しく、特に皮膚疾患のある患者でも安心して着用することが可能である。
【0039】
また、医療用上衣1は、任意の彩色または模様を施すことが可能に構成される。例えば、好きな模様をプリントすることも可能である。医療用上位1は、リバーシブルであるため、それぞれの面に異なる模様をプリントすることも可能である。これにより、患者は好みの色や柄のものを着用して、無機質な病室に彩りを添えることが可能となる。さらに、色柄が異なる複数の医療用上衣1を取り揃えれば、患者が更衣のたびにおしゃれを楽しむことが可能となる。
【0040】
また、医療用上衣1は、肌触りがよく、病院内の一定温度に適している。また、医療用上衣1は、袖の長さが点滴装置を装着する場合に適している。また、医療用上衣1は、売店に行くために財布をポケット8に入れることが可能である。また、高齢で関節拘縮がある患者も、着脱の際の骨折のリスクを回避することが可能である。
【0041】
このように、医療用上衣1は、シンプルな構造で更衣が楽で簡単であるうえに、さまざまな疾患を抱えた患者が着用可能な多機能性を有する。したがって、医療用上衣1によれば、ADL(Activities of Daily Life:日常生活動作)を活性化し、QoL(Quality of Life:入院生活の質)を向上し、患者の自律心を蘇生し、社会復帰に向けた希望を与えることができる。また、入院患者だけでなく医療従事者のさまざまなストレスをも軽減することが可能である。
【0042】
なお、実施の形態に係る医療用上衣1は、袖の付け根や袖口のゆったりしたいわゆるドルマンスリーブ型Tシャツタイプを例に説明したが、これに限定されない。例えば、単純なTシャツタイプでもよい。首回りの形が、Vネック、ラウンドネック、クルーネック、ボートネック、キーネック、あるいはヘンリーネックであってもよい。また、ハイネックや襟のあるポロシャツであってもよい。この場合には、肩2に連続して、ネックあるいは襟にも、開放可能に接合部5が形成されればよい。
【0043】
また、接合部5は、医療用上衣1の右側および左側の両方にあってよい。この場合には、医療用上衣1は、2つの布に分離されるが、従来の医療用衣料のように、前開き紐閉じタイプではないので、患者が体位を変えても前がはだけたり裾が乱れたりことを回避できる。また、医療用上衣1は、例えば、女性用にはフリルを施す等、女性用と男性用とで形状が異なってもよい。
【0044】
なお、上述した例では、利用者が上半身に着用する医療用上衣1について説明したが、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、医療用上衣1は、利用者の過半員まで覆うワンピースタイプのものであってもよい。また、医療用上衣1は、利用者の腕を手首迄おおうような、いわゆる長袖の衣類であってもよく、七分袖等、任意の長さの袖を有する衣類であってもよい。
【0045】
また、上述した医療用上衣1の特徴は、利用者が上半身に着用する衣類のみならず、例えば、下半身に着用するズボンタイプの衣類(以下、「医療用下衣」と記載する)であってもよい。例えば、このような医療用下衣は、片足部分が解放されるように、ウエスト部分から片方の裾口までに接合部5と同様の構成を有していてもよい。また、医療用下衣は、両足部分が解放されるように、ウエスト部分から各裾口まで、それぞれ個別に接合部5と同様の構成を有していてもよい。さらに、医療用下衣は、一方の裾口から股下を通り、他方の裾口まで接合部5と同様の構成を有していてもよい。このような構成を有することで、医療用下衣は、例えば、利用者がカテーテルを下半身に装着している場合等でも、着替えを容易にすることができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施の形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 医療用上衣
2,2’ 肩
3a,3a’ 袖の上部
3b,3b’ 袖の下部
4,4’ 脇
5,5’ 接合部
6 接合面
7 スナップボタン
8 ポケット
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のいずれか一方の袖口から肩側を介して襟ぐりに至る迄連続して開放可能に構成され、かつ、当該袖口から脇の下を介して裾に至る迄連続して開放可能に構成されるとともに、袖が袖口から袖ぐりにかけて徐々に幅が太くなるドルマンスリーブの七分袖で構成されていることを特徴とする医療用上衣。
【請求項2】
身頃の前後両面であって開放可能な側とは逆の端部に、当該開放可能な側とは逆の方向に開放口が斜め上向きに設けられたポケットを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用上衣。
【請求項3】
袖口から肩側を介して襟ぐりに至る迄連続して開放可能に構成される領域、および、当該袖口から脇の下を介して裾に至る迄連続して開放可能に構成される領域とには、プラスチック製のスナップボタンが配置されており、閉止可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用上衣。
【請求項4】
袖口から肩側を介して襟ぐりに至る迄連続して開放可能に構成される領域、および、当該袖口から脇の下を介して裾に至る迄連続して開放可能に構成される領域とは、端部が内側に折り曲げられることで構成され、各領域の内側の層の表面には、前記スナップボタンが配置されることを特徴とする請求項に記載の医療用上衣。
【請求項5】
身頃の前後が反転可能に構成されることを特徴とする請求項1~4のうちいずれか1つに記載の医療用上衣。
【請求項6】
100%コットンの布地を用いて構成されることを特徴とする請求項1~5のうちいずれか1つに記載の医療用上衣。
【請求項7】
任意の彩色または模様を施すことが可能に構成されることを特徴とする請求項1~6のうちいずれか1つに記載の医療用上衣。