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特開2022-75420遠隔診療システムの被診療者側情報処理端末
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  • 特開-遠隔診療システムの被診療者側情報処理端末 図1
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  • 特開-遠隔診療システムの被診療者側情報処理端末 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075420
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】遠隔診療システムの被診療者側情報処理端末
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20220511BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20220511BHJP
【FI】
G16H50/20
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020192823
(22)【出願日】2020-11-03
(71)【出願人】
【識別番号】517267994
【氏名又は名称】桑井 太郎
(72)【発明者】
【氏名】桑井 太郎
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA23
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は遠隔診療システムの被診療者側情報処理端末を不特定多数の人の往来する公共空間に設置するにあたり、被診療者側情報処理端末を利用する患者の個人情報を保護することである。
【解決手段】遠隔診療システムの被診療者側情報処理端末1の情報処理機器1Aは内部空間7aを画成するブース7内に設置され、患者5がブース7内で遠隔地の医師6と会話しても、ブース7に設けられた音声防護装置10がブース7外に伝達された音声の音圧レベルを弁別閾近傍に低下させるので、ブース7近傍の公共空間9を通過する人8は患者5の声と医師6のブース7内で再生された声の意味を理解できない。
【効果】事業者は患者5の個人情報を維持したうえで被診療者情報端末7を公共空間9に設置でき、患者5の利便を図れる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、
内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、
前記情報通信経路に接続され、少なくとも前記医療従事者の声を表す医療従事者音声データと前記医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを前記医療者側端末から受信して前記医療従事者の声と前記医療従事者の外観を前記内部空間で再生するとともに、前記箱体内の前記被診療者の声を表す被診療者音声データと前記被診療者の外観を表す被診療者画像データを前記医療従事者側情報処理端末に送信する情報処理機器とを備えた被診療者側情報処理端末において、
前記箱体に関連して設置され、正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された前記声の音圧レベルで前記再生された医療従事者の声の意味と前記被診療者の声の意味を理解不能にならしめる音声防護手段を更に備え、
前記箱体を不特定多数の人が侵入可能な外部空間に設置せしめることを特徴とする被診療者側情報処理端末。
【請求項2】
前記音声防護手段は遮音材料で形成された防音層を含む請求項1に記載された被診療者側情報処理端末。
【請求項3】
前記音声防護手段は前記声の周波数帯域の少なくとも一部を含む所定の周波数帯域を有する抑制音を発生する音源である請求項1に記載された被診療者側情報処理端末。
【請求項4】
前記箱体は前記内部空間内の前記被診療者を前記外部空間で特定させない視覚防護手段を有する請求項1に記載された被診療者側情報処理端末。
【請求項5】
医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、
内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、
前記被診療者から該被診療者の生体情報を取得して被診療者生体データを生成する生体検査機器と、
前記情報通信経路に接続され、少なくとも前記医療従事者の声を表す医療従事者音声データと前記医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを前記医療者側端末から受信して前記医療従事者の声と前記医療従事者の外観を前記内部空間で再生するとともに、前記箱体内の前記被診療者の声を表す被診療者音声データと前記被診療者の外観を表す被診療者画像データと前記被診療者生体データを前記医療従事者側情報処理端末に送信する情報処理機器とを備えた被診療者側情報処理端末において、
前記箱体に関連して設置され、正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された前記声の音圧レベルで前記再生された医療従事者の声の意味と前記被診療者の声の意味を理解不能にならしめる音声防護手段を更に備え、
前記箱体は前記内部空間内の前記被診療者を前記外部空間で特定させない視覚防護手段を有することを特徴とする被診療者側情報処理端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠隔診療システムに係り、詳しくは遠隔診療システムを構成する被診療者側情報処理端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な遠隔診療システムが提案されている。したがって、遠隔診療システムはで公知である(特許文献1)。この従来の診療支援システムは利用者端末と該利用者端末に接続された医療機関端末の両者に接続されており、利用者端末から得られ情報に基づき診療方針提案書を利用者端末と医療機関端末に送信し、医師と患者の問診等の時間を短縮して診療を促進することに寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6764202号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の診療支援システムでは、情報処理のアーキテクチャーを開示しているものの、各構成要素、すなわち医療機関端末や利用者端末がどのような環境に設置され、記述されている機能を発揮するのかについて全く考慮されておらず、何の開示もない。医療機関端末は病院や診療所など医師の勤務施設内に設置されるものと想像できるが、遠隔診療システムを実社会で機能させるには利用者端末を設置する環境によってさまざまな問題を生じる。
【0005】
特に、遠隔診療システムの利用者は利用者端末が身近であることを望むので、利用者端末は誰でもよく知っている場所に設置したい。例えば、利用者端末が不特定多数の人々の往来する外部空間、例えば駅ビル、駅構内、デパートなど商業施設、公園などに設置できれば遠隔診療システムの利便性は向上する。以下、不特定多数の人々の往来する外部空間を公共空間という。
【0006】
とはいえ、遠隔診療システムでは利用者の様々な個人情報が利用者端末と医療機関端末の間でやり取りされるので、個人情報を保護しなければならないが、このような公共空間に設置される利用者端末を想定した個人情報の保護に関する従来技術はデータ送受信時の情報漏洩防止技術を除けば見当たらない。かかる状況下で、本発明は公共空間に設置する被診療者側情報処理端末を前提とし、医療従事者側情報処理端末との間でやり取りされる個人情報を保護することのできる被診療者側情報処理端末を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能な被診療者側情報処理端末であり、この被診療者側情報処理端末は、内部空間を画成しこの内部空間に被診療者を収容する箱体と、情報通信経路に接続され少なくとも医療従事者の声を表す医療従事者音声データと医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを医療者側端末から受信して医療従事者の声と医療従事者の外観を内部空間で再生するとともに箱体内の被診療者の声を表す被診療者音声データと被診療者の外観を表す被診療者画像データを医療従事者側情報処理端末に送信する情報処理機器とを備えており、箱体に関連して設置され正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された声の音圧レベルで再生された医療従事者の声の意味と被診療者の声の意味を理解不能にならしめる音声防護手段を更に備えている。
【0008】
音声防護手段は遮音材料で形成された防音層を含んで構成されてもよく、医療従事者の声の周波数帯域と被診療者の声周波数帯域の少なくとも一部を含む所定の周波数帯域を有する抑制音を発生する音源であってもよい。更に、箱体は内部空間内の被診療者を外部空間で特定させない視覚防護手段を有してもよい。また、本発明に係る被診療者側情報処理端末は、被診療者の生体情報を取得して該生体情報を表す被診療者生体データを情報処理機器に供給する生体検査機器を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、音声防護手段が内部空間で再生される医療従事者の声の意味と被診療者の声の意味を外部空間で理解できなくするので、遠隔診療における医療従事者と被診療者の間で交わされる個人情報を外部空間内の不特定多数の人から保護でき、被診療者側情報処理端末を外部空間に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】 本発明に係る被診療者側情報処理端末を含む遠隔診療システムの一実施形態を示すシステム構成図である。
図2】 本発明に係る被診療者側情報処理端末を含む遠隔診療システムの他の実施形態を示すシステム構成図である。
図3】 抑制音により音声を抑制できる周波数帯域を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本発明に係る被診療者側情報処理端末を含む遠隔診療システムの一実施形態を示す。図1において、1は被診療者側情報処理端末であり、被診療者側情報処理端末1は情報通信経路として機能するインターネット2に接続されている。医療従事者側情報処理端末3と遠隔診療支援システム4もインターネット2に接続されており、遠隔診療支援システム4は被診療者である患者5の過去に検査された生体データの履歴や過去の診断結果を示す診断データ、投薬の履歴を示す投薬データ等を医療従事者側情報処理端末3に供給し医療従事者としての医師6の選択と指示に応答して被診療者側情報処理端末1に送信する。情報通信システムはインターネット2に限定されず、他の通信経路、例えば、無線通信網、専用通信網などで構成してもよい。本実施形態では被診療者側情報処理端末1と医療従事者側情報処理端末3のハードウエアはパーソナルコンピュータ、タブレット端末あるいはスマートホーンで実現されているが、情報処理能力のある他の情報処理デバイスを使用してもよい。
【0012】
被診療者側情報処理端末1と医療従事者側情報処理端末3は情報処理機器1A,3Aを有しており、情報処理機器1A,3AのハードウエアはいずれもCPU1a,3aと、該CPU1a,3aにバス1b、3bを介してデータを送受信するプログラムメモリ1c、3cおよびワーキングメモリ1d、3dと、インターネット2に接続可能なデータ入出力回路1e、3eと、周辺プロセッサー1f、3fと、D/Aコンバーターを含む周辺回路1g、3gとを有している。データ入出力回路1e、3eは更にマイクロホン1h、3h、カメラ1i,3i、画像ディスプレイ1j、3jおよびスピーカー1k、3kに接続されている。これらハードウエアの構成回路の機能は既知であり、CPU1a,3aはプログラムメモリ1c、3c中のオペライティングシステムとその管理下のアプリケーションプログラムを実行して所定の機能を実現する。
【0013】
所定の機能の中には次の機能が含まれる。医師6の声と患者5の声をマイクロホン1h、3hで収音して医療従事者音声データおよび被診療者音声データとし、更に、医師6の表情等外観と患者5の顔色等外観をカメラ1i、3iで撮影し、医療従事者画像データおよび被診療者画像データとし、医療従事者音声データ、被診療者音声データ、医療従事者画像データおよび被診療者画像データをインテ―ネット2を介して被診療者側情報処理端末1と医療従事者側情報処理端末3の間で送受信する。被診療者情報処理端末1では、医療従事者画像データに基づき医師6の外観をディスプレイ1jに形成し、医療従事者音声データに基づき医師6の声をスピーカー1kで再生する。一方、医療従事者側情報処理端末3では、被診療者画像データに基づきディスプレイ3j上に患者5の画像を形成し、被診療者音声データに基づきスピーカー3kで患者5の音声を再生する。
【0014】
上記機能により、医師6は患者5の外観と音声による問診、遠隔診療支援システム4から得た過去の履歴を表す履歴情報およびその他の観察を実施して患者5の健康状態を把握し、患者5を診断する。このような遠隔診療に必要な機能を実現する各種アプリケーションプログラムは既に提案されているので、それら既知のアプリケーションプログラムから必要なアプリケーションプログラムを選択して採用すればよい。なお、プログラムメモリ1c、3c内のアプリケーションプログラムとしては上記機能を実現するものに限定されず、遠隔診療を実施する上で採用しうる既知の他の機能を実現する遠隔診療用プログラムを採用してもよい。したがって、情報処理機器1A,3Aのアーキテクチャーについてのこれ以上の説明は省略する。
【0015】
一実施形態に係る被診療者側情報処理端末1はパーソナルコンピュータ等とプログラムメモリ1c、3c内のアプリケーションプログラムで上記機能を実現する情報処理機器1Aに加えて、箱体として機能するブース7を有する。このブース7は不特定多数の人8が入退出する公共空間9に設置されている。公共空間9は不特定多数の人8が有料または無料で入退出でき、例えば駅ビル、駅構内、デパートなど商業施設、公園などであり、許可を受けて初めて入退出できる企業の事務所、工場、病院、学校等は本実施形態の公共空間に含まれない。不特定多数の人8には、世界保健機構WHOが規定する軽度あるいは重度の難聴者もいるが、大部分の人は世界保健機構WHOで規定する正常な聴力レベルを有する。
【0016】
ブース7は内部空間7aを画成しており、患者5が内部空間7aに入り、そこで患者5は情報処理機器1Aを操作したり、スピーカー1kから聞こえる医師6の問診に答えてマイク1hに収音させたり、自らの外観をカメラ1iに撮像させたりする。患者5のほか介助者用も内部空間7aに収容する。
【0017】
ブース7は化粧ボード7bで内部空間7aを画成しており、本実施形態では化粧ボード7bは不透明である。したがって、不特定多数の人8は外部空間から患者の容貌を見て、個人を特定できない。しかしながら、化粧ボード7bはガラス、透明合成樹脂のような透明材料あるいは半透明材料で形成されていてもよい。本実施形態の不透明な化粧ボード7bは視覚防護手段として機能する。
【0018】
本実施例係る被診療者側情報処理端末1は更に音声防護手段として機能する防音層10を備えている。防音層10は遮音材料で作られており、石膏ボード、合板、コンクリートブロック等既知の遮音材料を使うことができる。防音層10の構造は一重壁構造、二重壁構造、複合材料構造などを採用できるが、本実施形態ではボード系乾式壁で防音層10を構成している。なお、防音層10は遮音材料中に中空部を設けて声の透過損失を変化させてもよい。
【0019】
この防音層10はブース7の側壁、天井、床を覆っており、防音層10は内部空間7aで再生される医師6の声の音圧レベルや患者5の声の音圧レベル、更に介助者の声の音圧レベルを外部空間9と接する面において、正常な聴力を有する人8が声の意味を理解できない程度に音圧レベルを低下させるに足る透過率損失を実現する。したがって、被診療者側情報処理端末1を公共空間に設置しても患者5の個人情報が不特定多数の人8に伝わらない。
【0020】
実施においては、遮音材料の選択と共に防音層10の厚さ、質量等を調整して公共空間9と接する防護層10外面で内部空間7aにて発せられる声の音圧レベルが正常聴力を有する人の弁別閾近傍にまで低下せしめて、不特定多数の人8が声の意味を理解できないようにする。なお、弁別閾のほか、最小可聴閾という選択もあるが、最小可聴閾は無雑音で聴覚が検知できる純音の音圧レベルを意味しており、そこまで声の音圧レベルを下げなくても、声の意味が理解できなければよく、過度の防音は必要ない。
【0021】
一般に遮音においては、質量則とコインシデンス効果が考慮される。いずれも防音層10の透過損失に影響を与える現象であり、周波数に依存する特性を有している。質量則では、単位面積当たりの遮音材料の質量が大きければ、すなわち厚ければ透過損失が大きくなり、コインシデンス効果は特定周波数に対しては遮音材料の透過損失が大きく低下する現象である。人の会話の周波数帯域は、その主成分が200Hz乃至4kHzと言われているが、通常の会話では成人男性120Hz乃至200Hz、成人女性は200Hz乃至300Hzという実験データもある。但し、さ行の発音や女性の悲鳴は数千Hzに上昇する。本実施例では会話の周波数帯域を100Hz乃至4kHzと仮定するが、この周波数帯域に限定されず、内部空間7aで再生される医師6、患者5および介助者の声の音声周波数帯域で決まる。したがって、防音層10は会話の上記周波数帯域において内部空間の音圧レベルおよび質量則とコインシデンス効果を考慮して防音層10の寸法等を決定すればよい。
【0022】
図2に本発明に係る被診療者側情報処理端末を含む遠隔診療システムの他の実施形態を示す。図2において、21は被診療者側情報処理端末である。本実施形態のインターネット、医療従事者側情報処理端末および遠隔診療支援システムは図1に描かれた実施形態に含まれるものと類似なので、図2においては図1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
本実施形態の被診療者側情報処理端末21は声防護手段として機能する音響システム22を防音層10に変えて設置したものであり、更に、被診療者側情報処理端末21は生体検査機器23を備えている。
【0024】
この生体検査機器23は患者に接触して、あるいは非接触で患者5の生体情報を取得して情報処理機器1Aに供給する。情報処理機器1Aは生体情報から被診療者生体データを作成し、医療者側情報処理端末3の情報処理機器3Aに送信する。情報処理機器3Aはディスプレイ3jに生体情報を表示して医師6の診療に役立てると共に、遠隔診療支援システム4に転送して被診療者生体データを蓄積し、患者の検査履歴として保存する。生体検査機器23は体温測定器、血圧測定器、血中酸素濃度測定器、血液成分測定器等から構成されている。このような機能を実現するプログラムは既存のものを使うことができ、アプリケーションプログラムの一つとしてプログラムメモリ1c、3cに記憶されている。
【0025】
被診療者側情報処理端末21のその他の構成と環境は図1の実施形態と同じなので、被診療者側情報処理端末21の他の構成要素には図1の実施形態の対応する構成に付した符号を付けて説明を省略する。
【0026】
音響システム22は ブース7に取りつけられており、所定周波数帯域の自然界に存在する音、例えば波の音やせせらぎの音、あるいは聞きやすい音楽をブース7の近傍に抑制音22aとして流して、ブース7の化粧ボード7b外面に伝播した医師6の声の意味、患者5の声の意味および介助者の声の意味を不特定多数の人8に理解できないようにする。
【0027】
詳述すると、既に説明したように人間の会話における声22bの周波数帯域を100Hz乃至4kHzと仮定した。したがって、抑制音22aの周波数帯域は図3に示すように少なくとも一部が声22bの周波数帯と重なるように選択し調整する。図3は抑制音22aの抑制効果の概念を示すグラフであり、声22bを示す曲線と抑制音22aを示す曲線の重なる領域22cにおいて声22bが抑制される。したがって、所定周波数帯とは声22bの周波数帯域の少なくとも一部を含む周波数帯域である。
【0028】
このことから、声22bの周波数帯域と抑制音22aの所定周波数帯域の重なる領域22cにおいて、化粧ボード7bの公共空間9との境界で声22bの音圧レベルが抑制音22aと声22aの合計音圧レベルに対して弁別閾近傍まで下げられるよう図3で矢印22dに示すように抑制音22aの音圧レベルを上げれば、公共空間9にいる不特定多数の人8は会話の意味を把握できない。このように音響システム22をブース7近傍に設置することで不特定多数の人8は声22bの意味を理解できなくなるので、被診療者側情報処理端末21を公共空間9に設置できるようになり、遠隔診療システムの利用を希望する患者5の利便性を高めることができる。
【0029】
なお、音響システム22は音楽プレーヤー、アンプ、単独または複数のスピーカーで構成される。抑制音22aの周波数帯域と音圧レベルを適切に選択すれば、音響システム22は市売されているものでよい。音響システム22のハードウエア構成の詳細説明は省略する。なお、音響システム22では、自然界の音や音楽に変えてノイズ音を放音してもよい。
【0030】
更に他の実施形態では、被診療者側情報処理端末は音声防護手段として防音層と音響システムの両方を備えている。これら防音層と音響システムは防音層10と音響システム22と類似の構成なので、詳細説明を省略する。防音層と音響システムの両方を備える利点は防音層を防音層10より薄くできるうえ、音響システムから放音される抑制音を抑制音22bより音量を小さくできることである。ブースを設置する環境によっては両方を備えるほうが望ましい。
【0031】
更に図2に示した他の実施形態の変形例では、ブースは化粧ボード7bに代えて透明ボード、例えば強化ガラスや透明樹脂層と視覚防護手段としての印加電圧で透明と不透明に切り替わる電圧応答型フィルムで内部空間を画成し、患者がブースに入室前は電圧応答型フィルムを透明にし、入室後に電圧を印加して不透明にし、退室後に電圧を除去して透明にするようにしてもよい。この変形例の利点は患者不在の間、内部を不特定多数の人に公開し、被診療者側情報処理端末の設置をアピールすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1と21は被診療者側情報処理端末、
2はインターネット(情報通信経路)、
3は医療従事者側情報処理端末、
1Aと3Aは情報処理機器、
7bは化粧ボード(視覚防護手段)、
10は防音層(音声防護手段)
22は音響システム(音声防護手段)、
23は生体検査機器である。
図1
図2
図3