(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075432
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ジャンボなめこ生育用のキャップ
(51)【国際特許分類】
A01G 18/65 20180101AFI20220511BHJP
【FI】
A01G18/65
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020194731
(22)【出願日】2020-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】520397541
【氏名又は名称】農事組合法人なめこファーム飛騨
(74)【代理人】
【識別番号】100094868
【弁理士】
【氏名又は名称】打保 敏典
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸博
【テーマコード(参考)】
2B011
【Fターム(参考)】
2B011AA01
2B011FA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】傘、柄共に大きくて品質の良いなめこを1株単位で生育、収穫することを可能とするなめこ瓶詰栽培用のジャンボなめこ生育用のキャップを提供する。
【解決手段】なめこびん詰栽培に際し、菌床形成後、瓶上部口部に嵌着すべく嵌脱自在の育成用のキャップに関して、円形状のキャップ上面はキャップ側面から約1度の仰角を有するドーム型の膨らみを有し、キャップ上面の中心部を起点とする直径約20mmの円周部から外側に直径約10mmの開口部4を設けたジャンボなめこ生育用のキャップ。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
なめこびん詰栽培に際し、菌床形成後、瓶上部口部(1)に嵌着すべく嵌脱自在の育成用のキャップ(2)に関して、円形状のキャップ上面(3)はキャップ側面から約1度の仰角を有するドーム型の膨らみを有し、キャップ上面(3)の中心部を起点とする直径約20mmの円周部から外側に直径約10mmの開口部(4)を設けたジャンボなめこ生育用のキャップ
【請求項2】
瓶上部口部(1)外側面と外嵌着するキャップ側面内側の接触開閉部(5)を十字方向4か所に設け、接触開閉部(5)と接触開閉部(5)の間4か所に瓶上部口部(1)外側面と非接触を確保する横幅約25mmの通気壁(6)を形成し、接触開閉部(5)の面に、キャップ上面(3)とほぼ平行になるよう接触開閉部(5)の面から約1mm程度突出すべく長さ約10mm程度のキャップストッパー(7)を形成する第1項記載のジャンボなめこ生育用のキャップ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はなめこを瓶詰で栽培する際、おがくずを主とする培地詰から殺菌、接種、培養等の工程を経て芽出し段階でキャップを装着させてなめこを効率的に大きく生育させることを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
瓶詰でなめこを栽培する生育方法では、密集してほぼ一定数のなめこを栽培することが可能であり、ほぼ同じ大きさのなめこを収穫することができる効率の良い栽培方法であり、大量生産を目的とする栽培に用いられることが多い。
【0003】
ところが、なめこを栽培する瓶の開口部にキャップで蓋する理由としては、飛来する雑菌や塵埃の瓶内部への侵入防止の為であるが、なめこの芽出し期から成長期にかけてキャップで全面的に蓋をすれば、なめこが伸びてキャップの内側に当たってしまいなめこの成長を阻害することにもなる。
【0004】
しかも、瓶の開口部にキャップで全面的に蓋してしまうと、なめこ生育時に必要な酸素量を十分に供給できなくなり、やはりなめこの成長を阻害する原因になる可能性が生じる。
【0005】
そこで、キャップの機能を保ちつつ、なめこの上部方向に伸びる性質を阻害せず、十分な酸素量を供給すべく改良されたキャップが公知技術として開示されている。
【0006】
まず、なめこの伸びる成長を阻害させないキャップとしては、特開平06―38628号において、対象はきのこと広範囲に指定しているが、キャップ上面中心に瓶開口部より小径の開口部を同心円状に設け、きのこの伸長を妨げない思考が公開されている。
【0007】
又、キャップ上面開口部からきのこが解放されて伸長する際、きのこの良好な広がり、かつ収穫作業の容易化を図ることを目的とする特開2007-215417号が公開されている。
【0008】
次に、なめこの芽出し、生育期に必要とする酸素量を十分供給可能及び塵埃、雑菌に侵入をも防ぎ、上蓋、下蓋に分けて瓶開口部に緩着させることを目的とする特開2003―339233号が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06―038628号
【特許文献2】特開2007-215417号
【特許文献3】特開2003-339233号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
なめこを商品として生産するには、瓶詰方式が採用される場合が多いが、その長所は品質を落とさず一定の量を天候等に左右されず計画的に生産可能であり、温度、湿度管理まで含めると1年中と生産可能ということになる。
【0011】
そこで課題となるのは、おがくずと養分を混合させた培地の形成、瓶詰にした培地になめこ菌の接種、一定期間培養した後、芽出した段階で瓶口部にキャップを嵌着させ、キャップ上面に瓶口部より小径の開口部を設け、開口部よりなめこが伸長し生育し突出する傘・柄部を一体化した食部を切り取る等の収穫までのそれぞれの工程への品質管理、そしてすべての工程に対する殺菌等の衛生管理が挙げられる。
【0012】
本発明はなめこ生育用キャップに関するものであるが、キャップには2点の効果が求められ、1点には塵埃、雑菌の侵入を防ぐためであり、他の1点には瓶口部内の培地一面に接種されたなめこ菌の増殖を一定の数に絞り、限定された芽出しで少数の大きななめこを生育する効果を求めるものである。
【0013】
特開平06―038628号では、芽出し期に瓶口部より小径の開口部をキャップ中心同心円状に形成し、その開口部から伸長する少数本のきのこのみを生育させ、他箇所の培地から芽出しするきのこの伸長をキャップ上面に当接させることで生育を阻み、瓶中心部から生育したきのこのみを収穫することを目的としているが、きのこ育成に絶対不可欠な酸素供給の提供については開示されていない。
【0014】
なめこ菌を培地に接種し順調に生育させるためには十分な酸素供給が必要であり、瓶詰状態の培地内部に酸素を行き渡らせる必要があるが、瓶内壁には培地が密に充填しており、瓶内壁から生育に十分な酸素を供給することは困難である。
【0015】
従って酸素通気口として培地中心に約直径10mm程度の円筒上の空間を確保し、培地中心以外の表面適所に数か所通気孔を設け、自動的に酸素が流入する形状を形成することが培地充填の公知技術となっている。
【0016】
ところが、特開平06―038628号によるキャップ上面には、直径の大きさが規定されていない開口部が瓶中心部同心円状に形成されているため、培地中心にある酸素供給のための円筒状の空間部が形成されている開口部直下にはなめこの芽出しもなく、従って約直径10mmの開口部直下位置からほぼ垂直に伸長するなめこは存在しない。
【0017】
仮に開口部の直径が約10mm程度であれば、円筒状の空間部以外の培地表面からのなめこの芽出しは開口部に向かって斜めに伸長するしかなく、キャップ天井部に当接して折れ曲がったりするなめこも生じる可能性があり、たとえ折れ曲がりを免れたなめこでも柄の部分が屈折し、十分な生育が妨げられることになってしまう。
【0018】
又、開口部の直径が円筒状の空白部の直径よりかなり大きいのであれば、リンク状の周辺から株を異する数多くのなめこの伸長、生育が生じてしまい、その結果大きさもバラバラで通常の大きさと変わらないなめこも生育されることになり、生産目的である傘、柄部も大きく生育状態の良い小数本の大きななめこ生育を実現することはできない。
【0019】
又、キャップの開口部周囲に伸縮性部材を形成し、斜め方向に伸長するなめこの傘をキャップ天井部に当接した際、なめこ自体が折れ曲がることを和らげたり、かつ収穫時、瓶外方に引き抜く段階で開口部縁が伸縮性部材で形成されているため傷めたりすること無く収穫することができると説明するが、開口部直下から芽出ししたなめこであれば、キャップ開口部縁付近に強いるほどの当接力が加わることなく伸長、生育するのであり、実際に収穫する際、自動的に差切断する装置が広範に使われており、なめこを傷める可能性は殆どないのが実情である。
【0020】
即ち、開口部直下からの芽出し、伸長するなめこの本数のみで大きななめこを生育し、収穫することができるのであり、開口部直下以外の培地から芽出ししたなめこを生育させる必要はなく、敢えて開口部縁に伸縮性部材を用いる必要はない。
【0021】
又、開口部縁キャップに一部伸縮性を持たせる部材を形成することは、キャップの製造において、他の箇所と同一の材質に製造することは不可能であり、同一材質、同一工程で生産するキャップよりキャップ製造のコストが高くなることは必然となる。
【0022】
次に、特開2007-215417号では、特開平06―038628号で開示したキャップの思考を基軸としており、栽培瓶本体の上部縁側より口径より小さい円筒状の頸部を形成している瓶を前提条件とし、その頸部に外嵌着すべくキャップを提供するものである。
【0023】
キャップの形状は上部に広がるべくすり鉢状で、上面開口部縁が栽培瓶頸部上端に外嵌着するよう形成され、下面には開口部を有し、下面開口部は栽培瓶上部口より小径であり、キャップ上面開口部縁が栽培瓶に外嵌着した段階で下面開口部縁が栽培瓶に充填した培地に当接するよう形成されている。
【0024】
キャップ外嵌着時は芽出し後であり、きのこの伸長はキャップ内側面に支えられて上部方向に開くよう生育すると開示されている。
【0025】
しかしながら、このキャップ下面開口部は、特開平06―038628号と同様に下面開口部直下の培地から芽出しが始まることを前提として、栽培瓶の中心の同心円状に位置されているが、瓶詰栽培を目指すなめこ、エノキ等繊細なきのこ類に関しては、培地全体に一定の酸素を供給しなければ十分な生育は認められず、培地の中心に円筒状の通気口が必須であるのにもかかわらず、両特開号共に通気口を形成せず表面をただ単に平らにした状態での培地を使用しているのであり、従って通気口を形成しない培地はなめこ生育には不適格であるといえる。
【0026】
その証左として、特開2007-215417号の明細書の実施例1の最後に、このキャップをきのこ栽培に適用したところ、エノキ、なめこ等には顕著な効果が認められないとの記載がある。
【0027】
なめこ瓶詰栽培では、培地に通気口を通して全般に行き渡る酸素が必要であり、より効果が生じるのは培地中心部に通気口を形成することが必須条件であるといえる。
【0028】
即ち、キャップの開口部の位置を培地のない中心部の鉛直方向に設けてしまうと、芽出しのない直下円形状付近は全くのなめこのない空白部が生じ、従って中心部以外の斜め方向のリンク縁からなめこがばらばらに伸長するため、一株状態で生育せず、どうしても培地付きのなめこを収穫しなければならず、その収穫方法も慎重に実施しなければならなくなる。
【0029】
収穫方法として両特開号では、へらを用いてなめこに付着している培地ごと持ち上げたり、嵌着していたキャップを外すことで下面開口部と共に培地付きのなめこを持ち上げて収穫するのだが、この収穫方法では手作業を導入しなければならず、更に瓶詰めから離脱させたなめこ群の下部に有る培地を取り除く余分な工程も必要となり、生産性の低さ、コスト高等に繋がる重要な課題となっている。
【0030】
又、特開2003-339233号では、空気の流通を確保しつつ雑菌や塵埃の侵入を防ぐことのみを目的としたキャップの形状を提供するものであり、なめこを大きく生育する手段としては一切思考されておらず、本発明の趣旨とは異なるものである。
【0031】
ところで、キャップの構造としては上蓋と下蓋の2層で構成されており、複雑な通気経路を有することで雑菌や塵埃は周壁に衝突、沈降させながら栽培瓶内部までの侵入を防ぎつつ、かつキャップ内部周壁には一定の切欠部を形成して十分な空気の流通を確保することを目的とするものである。
【0032】
しかしながら、上蓋と下蓋それぞれ製造しなければならず、使用する際にも、先ず栽培瓶に下蓋を嵌着させその後上蓋を下蓋に嵌着させる工程が必要であり、一個のキャップの嵌着より時間的にも作業的にも余分な工程が生じてしまうことになる。
【0033】
上記の如く、3つの先行技術には、なめこを一定の数で傘も柄も大きく生育すべくキャップとしては、十分な効果を得られない可能性があり、本発明はいずれの課題も克服し、培地の瓶詰工程から一定の殺菌効果をもたらし、本発明のキャップを用いることで安定して効率よく大きななめこを1株単位で生産を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明では、最終目的として殺菌された状態で傘が大きく柄も太い充実したなめこを1株単位で生育し、1株単位で切り取り収穫することにある。
【0035】
また、本発明はなめこ生育に特化しており、なめこはきのこの中でより繊細な管理、育成が必須であり、おがくず、肥料含めた培地つくりから始まり、培地の瓶詰作業その過程での瓶中心部に円筒状の通気口の形成、中心部以外適箇所に通気孔を形成することが必須である。
【0036】
そこでまず、雑菌、塵埃の侵入を防ぐため、公知である上面が全て被覆しているキャップを嵌着し、キャップした培地詰め瓶を殺菌室で大量に殺菌させる。
【0037】
殺菌後、なめこ菌を培地に接種し、その後培養、熟成工程を経て芽出し前段階において本発明であるなめこびん詰栽培用キャップを緩着させるが、このキャップの特徴は、上部開口部は中心より約15mmほどずらし、直径約10mmの円状開口部となっている。
【0038】
この開口部をキャップ中心、栽培瓶中心からずらして形成する理由は、充実した大きななめこ生育するために上記した如く培地中心に通気口を設けているので、培地中心部からは芽出しすることはなく、なめこを延直上方に伸長させるためには中心以外の培地の上に開口部を設けることが必要条件となるからである。
【0039】
この思考は上記3件特許文献も含め公知技術には見られず、本発明の請求の範囲をなす重要要件といえるのであり、大きななめこが芽出しから1株単位で上部方向にまっすぐ生育させることに貢献するものである。
【0040】
しかも、なめこが伸長生育すべく上部開口部の直径は約10mm程度であるため、開口部から伸長するなめこの数は適度な小数本であり、従って1株単位に限られ、その後収穫期には1株単位で切り取ることができる。
【0041】
又、なめこが順調に生育させるために接種以降一定の高い湿度が接種以降の各工程室に確保されており、本件キャップ嵌着以降もまた加湿状態が継続されており、キャップ上面には露点による水滴が生じると、キャップ上面の開口部から水滴が培地内に流れ込むことで芽出ししたなめこ自体を痛めてしまうことになる。
【0042】
そこで本発明のキャップ上面をドーム状にすべく上面中央部の高さをキャップ側壁上端より1度程度の膨らみを有するよう形成することで、上面に発生した水滴はキャップ上面を伝い、瓶外側面へと流れ出すことができ、なめこが伸長生育すべく上部開口部に水滴が流れ込まない構造を確保することができる。
【0043】
次に、なめこ生育の為には十分な酸素供給が必要であるが、空中に浮遊する雑菌、塵埃の侵入を防ぐことも実施しなければならず、この2つの相反する事態を克服することで、食品としての安全性を確保する同時に大きななめこを生育させることを実現しなければならない。
【0044】
本発明では、栽培瓶に培地を充填した段階で殺菌室において殺菌し、接種した後、公知である上面が完全に閉塞しているキャップを嵌着させ、その後培養、熟成と一定の時間を空調管理室で費やし、芽出し段階で本発明のキャップをあらためて嵌着させておきななめこを生育させるが、培地を瓶詰する工程で既に殺菌し、その後も公知のキャップ、本発明のキャップで連続的に雑菌、塵埃の侵入を防ぐことができる。
【0045】
又、開口部を有する本発明のキャップの内面端部には十字方向4か所にキャップを開閉すべく接触開閉部と、各接触開閉部の間にと溝と十字方向4か所を一緒に形成しているため、特開2003-339233号の如く上層、下層の2重蓋と複雑化するまでもなく、キャップを生育用の瓶に外嵌着させた段階で、成句用ので、キャップ内面端部を簡単な構造で形成することでなめこ生育に必要な酸素を取り込むことができる。
【0046】
更に、なめこが伸長する際、キャップの上面内部に当接し、キャップを持ち揚げる可能性があるが、その状態を防ぐため、公知技術の如くなめこが当接するキャップ上面に材質の異なる弾力性のある材料を用いることは、最低でも他の硬質部と合わせて2種類の材料を用いなければならず、キャップ製造において余分な工程が必要でありコスト高になる。
【0047】
本発明ではキャップ持ち上がり防止のため、キャップ内端の開閉部内に幅約10mm、厚み約1mmのキャップストッパーを設けることで、なめこ伸長によるキャップ持ち上げを十分に防ぐことができかつキャップの嵌着開閉にも支障をきたさない効力を有するジャンボなめこ生育用のキャップを提供するものである。
【発明の効果】
【0048】
本発明の目的は、衛生管理された大きななめこを株単位で効率よく確実に収穫を可能とする構造を有するキャップの形成にある。
【0049】
従来のきのこ瓶詰栽培の公知技術では、小数本のきのこを大きく生育させるためキャップ上面中央部に開口部を設けること、きのこ生育に必要な酸素を供給するため、キャップ自体を複雑な構造の下、酸素を十分に供給させることの思考が開示されているが、第一に培地全体に酸素を供給しなければならず、ただ単に培地を瓶に充填しただけでは、その後酸素を多く供給しても培地に深く全体に行き渡らせることは困難である。
【0050】
従って、瓶詰された培地中心部に円筒状の空白部つまり通気口を形成することは必須であり、加えて中心部以外にも適箇所通気孔を設けなければならないが、重要なことは培地中心部に接種することはできないため、キャップ上面中央に開口部を設けたとしても、開口部直下の芽出しは有り得ず、通気口以外の箇所から芽出ししたなめこは開口部を目指し斜め方向に伸長せざるを得ず、伸長すべくなめこは上部閉部に当接して折れ曲がってしまうか、当接を免れたとしても柄への負担も大きく、順調に生育するなめこはかなり限定され、商品価値に値する大きななめこを安定して一定の本数を確保することは困難である。
【0051】
本発明では、キャップ上面の開口部を中央に位置する通気口の真上ではなく、通気口の真上から完全に外れた位置に設けたため、芽出ししたなめこは鉛直方向に開口部を通過して順調に伸長生育することになる。
【0052】
又、従来の開口部を利用したなめこの収穫では、ヘリを用いて培地ごと持ち上げたり、キャップを外すことで培地ごと持ち上げて培地を落としつつ収穫しなければならず、しかも開口部の直径も特化されていないため、収穫本数も確定しないのであり、その結果、なめこ1本ずつ手作業で切り取らなければならず、収穫作業に手間がかかり、効率の良くない工程に陥ってしまう。
【0053】
本発明では、キャップの開口部の直径を約10mmとすることで、一定の小数本が開口部から伸長生育することになるが、開口部真下のみの芽出しが伸長し株単位で生育するため、株単位で切り取ることで収穫工程が簡単に終了させることができる。
【0054】
次に、酸素を受け入れるための培地形成では、中心部に円筒状の空白部とする通気口及び周辺適箇所に通気孔を設けることが前提である。
【0055】
そこで、キャップを通じて外部から栽培瓶内に酸素を供給する構造として、栽培瓶に嵌着するキャップリンク端には十字方向に4か所開閉部を有し、開閉部と開閉部の間4か所に開閉部より厚みのない横幅約25mmの通気壁を設けているため、通気壁を通じて充分の酸素量栽培瓶内に侵入することができる。
【0056】
しかも、なめこ伸長の際、キャップ上面に当接しキャップ自体を持ち上げてしまうことに対し、キャップの開閉部内に幅約10mm、厚み約1mmのキャップストッパーを設けてあり、キャップが持ち上がることを防止することができる。
【0057】
以上の如く本発明の目的は、培地製造から大きなナメコ収穫まで、殺菌、生育を含む全工程を管理した上で、大きななめこを一定の量、品質良く安定して収穫するための優れたジャンボなめこ生育用のキャップを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図3】 本発明の上部面の膨らみを示す斜め正面図代用写真
【
図6】 本発明の接触開閉部、通気壁及びキャップストパーを示す一部斜め背面図代用写真
【発明を実施するための形態】
【実施例0059】
本発明は、大きななめこを生育し収穫するまでの工程で、芽出し段階で本発明のキャップを瓶外嵌着させ、大きななめこを実際に伸長、生育させる器具としてのキャップに関するものであるが、全ての工程が目的達成のための前提条件となるため、
図1記載の全工程を時系列で示すこととする。
【0060】
1培地の瓶詰工程―ブナやならの樹のおがくずと肥料等を混合した培地(8)を作成し、その培地を栽培用瓶に詰め込むが、詰め込まれた培地(8)には、参考資料1のように中央部に円筒状の空白部を有する通気口(9)及び周辺に適箇所通気孔(10)を設けている。
【0061】
更に、上面が全面的に閉じている公知の通常型キャップ(11)を瓶上部開口部(1)に外嵌着させた後、参考資料2の殺菌室へ誘導する。
【0062】
2殺菌工程―瓶詰培地(8)を殺菌室で殺菌処理をする。
【0063】
3接種工程―培地(8)表面全域になめこ菌を接種する。
【0064】
4培養工程及び熟成工程―芽出しに向けて一定の日数をかけて培養室その後熟成室にて各室ごとに温度、湿度、風量調節の下、雑菌、塵埃の侵入を防ぎつつ管理しており、この段階での菌床の様子は参考資料3である。
【0065】
ところで、公知の技術ではこの段階で菌掻きを実施するが、本発明の前提である一連の工程では菌掻きは実施しない。
【0066】
5芽出し工程及び本発明のキャップ装着工程―芽出しする前に栽培用瓶から通常型キャップ(11)を外し、改めて本発明の生育用のキャップ(2)を栽培用瓶に外嵌着させた後、参考資料4の如く芽出し室で芽出しが始まるが、
図2の如く開口部(4)はキャップ上面(3)の中心円周部から外側に設けてあり、一定の日数で本件発明のキャップの開口部(4)直下付近からなめこ先端部が伸長、育成し、参考資料5、参考資料6の如く傘や柄が通常のなめこと比較してかなり大きく成長することになる。
【0067】
尚、本発明の生育用のキャップ(2)は
図5、
図6の如く、瓶上部口部(1)外側面と外嵌着するキャップ側面内側の接触開閉部(5)を十字方向4か所に設け、接触開閉部(5)と接触開閉部(5)の間4か所に瓶上部口部(1)外側面と非接触を確保する横幅約25mmの通気壁(6)を形成しているため、外気が十分に通気壁(6)から栽培用瓶内部に挿入することが可能としている。
【0068】
又、
図5、
図6の如く接触開閉部(5)の面に、キャップ上面(3)とほぼ平行になるよう接触開閉部(5)の面から約1mm程度突出し長さ約10mm程度のキャップストッパー(7)を形成しているため、なめこが芽出し後伸長した際、キャップ上面(3)内に当接しキャップ自体持ち上げることを防ぐことができる。
【0069】
その上、キャップ上面(3)は
図3の如く仰角1度程度のドーム状の膨らみを有しているため、湿度の高い芽出し室に漂う水蒸気がキャップ上面(3)と接する際露点状態となり水滴が生じたとしても、その水滴はキャップ上面(3)のドーム状の傾斜を利用してキャップ端、瓶外面に流すことで、水滴が開口部(4)からなめこに直接落下することを防ぐことができる。
【0070】
更に、本発明の生育用のキャップ(2)全体は黒等の不透光色であり、開口部(4)に達しない他のなめこには光が届かない為十分な光合成が出来ず、参考資料7の如く途中で未成長のまま小さく白色状態で残存しまうことで、参考資料8の如く開口部(4)直下のなめこ小数本のみ伸長し、大きく生育することになる。
【0071】
6収穫工程―参考資料8の如く出荷できるまで生育した大きななめこはへらを使うこともなく、かつ本発明の生育用のキャップ(2)を外すことなく、そのままカットして1株単位で収穫し、そのままパッケージすることで効率よく安定的に大量の大きななめこを出荷することができる。
上記の如く本発明は、大きななめこを栽培瓶で生育する際、芽出し以降効率よく順調に大きななめこを一株単位で生育させ簡単に収穫できることを目的としているが、そのためには、本発明の生育用のキャップを使用することが必須であり、しかもその使用方法は簡単でありかつコストも低減されるべく優れて効率の良いジャンボなめこ生育キャップを提供するものである。