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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075438
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】排水パイプ及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20220511BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
E02D3/10 101
E02D17/20 106
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020195540
(22)【出願日】2020-11-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】505113849
【氏名又は名称】株式会社 ライジングサン
(72)【発明者】
【氏名】小泉 里美
【テーマコード(参考)】
2D043
2D044
【Fターム(参考)】
2D043DA04
2D043DD15
2D044EA03
(57)【要約】
【課題】土砂部に排水能力以上に溜まる水分を安定して持続的に斜面外に排出することが出来る排水パイプとその施工方法を提供する。
【解決手段】法面(14)などの傾斜面(11)に打ち込み土砂部(12)の水分を外部に排出する排水パイプ(1)において、先端部(7)が錐体状のカバーパイプ(2)の内側にポーラス状の透水体(3)を収納した排水パイプ(1)を土砂部(12)に水平より少し上向きに打ち込み、打ち込み完了後、蓋部(4)のみを傾斜面(11)から引き抜き、カバーパイプ(2)の受部(5)と透水体(3)を土砂部(12)に残置することで、土砂内の水分を透水体(3)と受部(5)により、斜面外に排出する排水パイプとその施工方法を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面(14)等の傾斜面に打ち込み、土砂部(12)の水分を外部に排出する排水パイプ(1)において、該排水パイプ(1)はカバーパイプ(2)と透水体(3)で構成されており、該カバーパイプ(2)は一端を錐体状に成型するとともに、蓋部(4)と受部(5)で構成したことを特徴とする排水パイプ。
【請求項2】
前記カバーパイプ(2)は円筒状をしており、蓋部(4)は受部(5)から脱着可能とし、該蓋部(4)の後端に押圧部(8)を固着し、該受部(5)の先端部(7)を円錐状に成型したことを特徴とする請求項1に記載の排水パイプ。
【請求項3】
前記カバーパイプ(2)は多角柱状をしており、蓋部(4)は受部(5)から脱着可能とし、該蓋部(4)の後端に押圧部(8)を固着し、該受部(5)の先端部(7)を多角錐状に成型したことを特徴とする請求項1に記載の排水パイプ。
【請求項4】
前記カバーパイプ(2)の蓋部(4)の表面に剥離剤を塗布したことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の排水パイプ。
【請求項5】
前記カバーパイプ(2)の内部に収納する透水体(3)は、ポーラス状の円柱状又は多角柱状に成型したことを特徴とする請求項1に記載の排水パイプ。
【請求項6】
前記カバーパイプ(2)の内部に収納する透水体(3)は、ポーラス状の中空円柱状又は中空多角柱状に成型したことを特徴とする請求項1に記載の排水パイプ。
【請求項7】
前記透水体(3)は自然石などの粒状物を骨材とし、数種類の繊維を混合したエポキシ系樹脂の主剤と硬化剤とで混錬することで、骨材と骨材の間に空隙部(3-1)を形成して、ポーラス状に成型結合したことを特徴とする請求項1又は5~6のいずれか1項に記載の排水パイプ。
【請求項8】
前記、透水体(3)の空隙部(3-1)を通って土砂部(12)の水分は中空部(6)へと流れ込むとともに、カバーパイプ(2)の受部(5)が樋部(10)となり排水口(13)から流出することを特徴とする請求項1又は5~7のいずれか1項に記載の排水パイプ。
【請求項9】
法面(14)など傾斜面(11)に打ち込み、土砂部(12)の水分を外部に排出する排水パイプ(1)において、先端部(7)が錐体状のカバーパイプ(2)の内側に円柱形状又は多角柱形状をした、ポーラス状の透水体(3)を収納した排水パイプ(1)を土砂部(12)に打ち込み、打ち込み完了後、カバーパイプ(2)の表面に剥離剤を塗布した蓋部(4)のみを傾斜面(11)から引き抜き、カバーパイプ(2)の受部(5)と透水体(3)を土砂部(12)に残置することを特徴とする排水パイプの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法面など傾斜面に打ち込み、土砂中の水分や上昇した地下水、浸透水等を外部に移動排出させる排水パイプ及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年大雨による山崩れ、河川の氾濫と水被害が跡を絶たない。土砂部の斜面は降水量が浸透能力の限界を超えてしまうと崩壊してしまう。このため、土砂部内の水分を排水して、土砂の含水比率を低減させ、斜面の崩落を防止する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、周壁に適宜間隔で水抜き孔を形成した管体を3本接続し、円錐状をした先端部から根本部まで、その外径を漸増させた排水パイプ及びその排水パイプの打ち込み方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、導水経路と透水経路を備えた棒状体において、この棒状体は粒状物を接着し、粒状物間の隙間が透水可能なように形成された通水体を、傾斜地の土壌中に埋設して土壌内の水分を排出することが開示されている。
【0005】
上述の通り、特許文献1及び2のいずれも管状あるいは棒状の排水パイプを土砂内に埋設し、該排水パイプの内部に土砂内の水分を取り込んで外部に排水する先行技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-166519
【特許文献2】実用新案登録第3190429号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の排水パイプは、周壁に多数形成させた水抜き孔から、管体内に土砂内の水分を取り込み、外部に排水するものであるが、土砂内の水分と一緒に土砂も管体内に流入する。該排水パイプを土砂内に設置直後は、土砂内の水分をスムーズに外部に排水可能であるが、時間の経過とともに、管体内に流入する土砂が徐々に堆積して排水能力が低下し、最後には、管体内が土砂で閉塞し、排水が出来なくなるという課題がある。
【0008】
一方、特許文献2の土砂内の水分を排水するための通水体は、小石等の粒状物を接着結合させて棒状体に形成しているだけのため、この通水体を土砂内に打ち込む際の衝撃や、固い地層を通過する際、通水体が破損したり、破断する恐れがある。また、通水体自体を直接土砂内に打ち込むため、通水体表面の凹凸部に土砂が入り込み、目詰まりを生じ、透水能力が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前述した従来技術の課題を解決するために、排水パイプ及びその施工方法の改良を行い、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の排水パイプは法面等の傾斜面に打ち込み、土砂部の水分を外部に排出する排水パイプにおいて、該排水パイプはカバーパイプと透水体で構成されており、該カバーパイプは一端を錐体状に成型するとともに、蓋部と受部で構成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の排水パイプにおいて、前記カバーパイプは円筒状をしており、蓋部は受部から脱着可能とし、該蓋部の後端に押圧部を固着し、該受部の先端部を円錐状に成型したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の排水パイプにおいて、前記カバーパイプは多角柱状をしており、蓋部は受部から脱着可能とし、該蓋部の後端に押圧部を固着し、該受部の先端部を多角錐状に成型したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の排水パイプにおいて、前記カバーパイプの蓋部の表面に剥離剤を塗布したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の排水パイプにおいて、前記カバーパイプの内部に収納する透水体はポーラス状の円柱状又は多角柱状に成型したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の排水パイプにおいて、前記カバーパイプの内部に収納する透水体はポーラス状の中空円柱状又は中空多角柱状に成型したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の排水パイプにおいて、前記透水体は自然石などの粒状物を骨材とし、数種類の繊維を混合したエポキシ系樹脂の主剤と硬化剤とで混錬することで、骨材と骨材の間に空隙部を形成して、ポーラス状に成型結合したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の排水パイプは、前記透水体の空隙部を通って土砂部の水分は中空部へと流れ込むとともに、カバーパイプの受部が樋部となり排水口から流出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の排水パイプの施工方法は、法面など傾斜面に打ち込み、土砂部の水分を外部に排出する排水パイプにおいて、先端部が錐体状のカバーパイプの内側に円柱形状又は多角柱形状をした、ポーラス状の透水体を収納した排水パイプを土砂部に打ち込み、打ち込み完了後、カバーパイプの表面に剥離剤を塗布した蓋部のみを傾斜面から引き抜き、カバーパイプの受部と透水体を土砂部に残置することを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するために上述のように、本発明の排水パイプとその施工方法は、土砂内の水分を常に斜面外に排出し、豪雨時の多量の雨水や上昇してきた地下水にも対応できるように優れた排水力を持つ透水体と、打ち込みの際、その透水体にダメージを与えないようにカバーパイプを用意し、透水体をその中に収納して土砂内に設置し、施工後カバーパイプの蓋部分だけを外部へ引き抜き、透水体を露出させ、その表面から多量の水分を捕え、排水経路へ送り出す長期持続性のある排水パイプとその施工方法を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の排水パイプは、蓋部と受部からなるカバーパイプと透水体で構成されており、該カバーパイプの先端部は錐体状に形成し、後端部には押圧部を固着している。該透水体を該カバーパイプに収納した状態で、該排水パイプを土砂内に打ち込むので、透水体は衝撃を受けることなく土砂内に設置できる。設置完了後、該蓋部を土砂外に引き抜くことで、該透水体表面の目詰まりを防ぎ、該透水体と該受部により、土砂内の多量の水分を外部に排水でき、該透水体内部及び該受部に土砂が堆積することが無いので、長期間安定した排水能力を発揮することができる排水パイプ及びその施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の排水パイプを土砂内に設置した概略断面図
図2図1のX部拡大図
図3】本発明の排水パイプの正面図
図4】(a)中空多角柱状透水体を収納した図3のA-A’線断面矢視図 (b)中空円柱状透水体を収納した図3のA-A’線断面矢視図
図5】本発明の排水パイプの蓋部を取り外した状態の正面図
図6】(a)中空多角柱状透水体を用いた図5のB-B’線断面矢視図 (b)中空円柱状透水体を用いた図5のB-B’線断面矢視図
図7】本発明の中空多角柱状透水体の正面斜視図
図8図7のC-C’線断面矢視図
図9】本発明の排水パイプの受部と蓋部の接合部詳細図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る排水パイプ及びその施工方法について、図面に基づき詳述する。
図1は本発明の排水パイプを土砂内に設置した概略断面図であり、図2図1のX部拡大図である。法面14の土砂部12内に該排水パイプ1を適宜間隔で必要数量を設置する。該排水パイプ1を錐体状をした先端部7から打ち込み、後端部が法面14より少し突出するまで打ち込む。打ち込み方法は、図3に示す押圧部8を打撃する機械的な方法で打ち込んでもよく、あるいは、振動力による方法でも良い。また、油圧力等を用いた押圧力による圧入でも良いものである。該排水パイプ1を土砂部12に打ち込む際は、先端部7を水平より角度α上向きに打ち込む。角度αは1~10°が好適であり、角度αは土砂部12の土質等から適宜設定するものである。
【0022】
図3は排水パイプ1の図面であり、符号2は円筒状又は多角柱状をしているカバーパイプ、符号4は蓋部、符号5は受部、符号7は先端部であり該受部5の一端に固着している。該先端部7は該カバーパイプ2が円筒状の場合は円錐状、多角柱状の場合は多角錐状をしている。符号8は該蓋部4の後端に固着されている押圧部である。該カバーパイプ2は鉄等の金属製で製作しており、外径は3~30cm程度、全長は1~10m程度とし、外径及び全長は法面14の形状や土砂部の土質や厚み等から適宜設定する。該カバーパイプ2は該蓋部4と該受部5で構成されており、該蓋部4は該受部5から分離できる構造をしている。
【0023】
図4図3のA-A’線で切断した断面矢視図であり、該蓋部4と該受部5で構成されたカバーパイプ2の内部に透水体3を収納している。図4(a)は、中空の六角柱状透水体3を収納しており、図4(b)は、中空の円柱状透水体3を収納している。符号6は該透水体3の中央部に設けている中空部であり、該透水体3から流入した水を集水し、外部に排出するものである。図4の該カバーパイプ2は円筒形状をしているが、多角柱形状でも良いものである。又、該透水体3は、中実の多角柱状あるいは中実の円柱状でも良く、機能面や性能面で特に問題なく使用可能である。中空のものは製造的に手間がかかるが、水を多量に捕えることが出来、中空部分の材料費が省ける。
【0024】
図5は排水パイプ1の蓋部4を取り外した状態の図面であり、この状態で土砂部12内に設置される。図6図5のB-B’線で切断した断面矢視図であり、図6(a)は、該受部5内に中空六角柱形状の透水体3を設置しており、符号10は該受部5と該透水体3で生じた樋部である。該透水体3や該中空部6から浸出した水分を集水して、外部に排水するものである。該透水体3は本図では六角柱をしているが、三角柱以上の多角柱であれば該透水体3としての機能を備えるものである。図6(b)は、該受部5内に中空円柱形状の透水体3を設置しており、符号5-3は該透水体3を支持するためのリブであり、該リブ5-3により、該受部5と該透水体3との間に樋部10を確保するようにしている。尚、該透水体3は、中実の六角柱形状あるいは、中実の円柱形状のものを使用しても良いことは勿論である。
【0025】
図7は六角柱形状をした、該透水体3の斜視図である。該透水体3は本発明の排水パイプにおいて、最も重要な部材である。土砂内の水分を捉え、すばやく排水路や中空部へと送水する役目を担う。該透水体3は複数の骨材をポーラス状に接着してその隙間から水分が通り抜ける構造をしている。骨材は自然石や人工石の粒状物などを使用し、エポキシ系樹脂の主剤と硬化剤を一緒に混錬する。主剤には予め高捲縮糸とアラミド系糸又パルプ系繊維を加えて混合しておく。それぞれの糸は互いに逆方向に撚糸するため、強く絡み合うことなく主剤・樹脂剤の中で糸独自の特性を発揮し、骨材と骨材の間に隙間を作り、硬化剤によって固められる。該透水体3の骨材は自然石が好ましいが、人工石・ガラスビーズ・スラグ・貝殻・プラスチックチップ等の破砕物でも良い。又、接着剤においてはウレタン系・アクリル系等、粒状物の接着剤ならエポキシ系樹脂には限らない。
【0026】
図8図7のC-C’線で切断した断面矢視図であり、該透水体3の中芯部は空洞になった中空部6で、該透水体3の周部から入ってきた水分は空隙部3-1を通り抜けて、該中空部6に集まる。該透水体3や該中空部6から溢れた水分は該受部5が樋部10になって、前記樋部10に沿って前記排水口13へと流れ出る。該中空部6の開口比率は該透水体3の断面積の略10~30%とし、前記土砂部12の土質等により、適宜開口比率を設定する。図8は、中空六角柱形状をした該透水体3であるが、中空円柱形状の該透水体3(図示せず)においても、該中空部6の開口比率は同様である。又、該透水体3を中実の多角柱形状あるいは、中実の円柱形状(図示せず)のものを使用する場合、該空隙部3-1の断面積は、該透水体3の断面積の略3~10%とするものである。
【0027】
図9は該カバーパイプ2の該蓋部4と該受部5の接合部を表す断面詳細図である。該蓋部4と該受部5の接合は、該蓋部4に該受部5の凹部5-1を係合して固定するものである。該蓋部4の内外面には、剥離剤を塗布して剥離面9を形成している。該排水パイプ1を土砂部12内に設置完了後、該蓋部4だけをスライドさせながら引き抜くことができる。引き抜いた該蓋部4は他の受部5の蓋部4として再利用可能なため、施工費用が安価となる。尚、符号5-2は土砂流入防止板であり、該受部5と該透水体3との間に生じる隙間を塞ぎ、該受部5内に土砂が流入するのを防止するものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
近年、温暖化の影響により各地で豪雨が多発しており、山崩れや斜面の崩落が頻繁に発生している。これらの山崩れや斜面の崩落の原因は、土砂内に浸み込んだ雨水量が大量のため、外部への排水能力が限界を超えるために発生するものである。本発明の排水パイプは、排水能力が高く、長期間安定した排水性能を維持できるので、本排水パイプを斜面内に設置することで、山崩れや斜面の崩落の防止を図れるもので、法面工事等に利用できるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 排水パイプ
2 カバーパイプ
3 透水体
3-1 空隙部
4 蓋部
5 受部
5-1 凹部
5-2 土砂流入防止板
5-3 リブ
6 中空部
7 先端部
8 押圧部
9 剥離面
10 樋部
11 傾斜面
12 土砂部
13 排水口
14 法面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9