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特開2022-75452室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法
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  • 特開-室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075452
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20220511BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G01N31/00 V
G01N33/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021018073
(22)【出願日】2021-02-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】202011209504.6
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519434949
【氏名又は名称】北京▲師▼范大学
【氏名又は名称原語表記】Beijing Normal University
【住所又は居所原語表記】No.19, Xinjiekouwai Street, HaiDian District, Beijing ,100875 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 賀
(72)【発明者】
【氏名】張 岩
(72)【発明者】
【氏名】王 淑娟
【テーマコード(参考)】
2G042
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA03
2G042BA04
2G042BA07
2G042BD08
2G042CA01
2G042CB01
2G042DA08
2G042FA11
2G042FB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法を開示する。
【解決手段】室内ホルムアルデヒド濃度への室外汚染の影響を考慮し、ストリートキャニオンモデルを導入し、室内ホルムアルデヒド濃度を長期に予測できるモデルを作成し、室内装飾プランまたは室内通気ポリシーにより、室内ホルムアルデヒド濃度を低下させる。また、室内ホルムアルデヒド濃度予測の結果に基づいて、室内ホルムアルデヒド濃度の発がんリスクを評価し、長期の室内ホルムアルデヒド濃度の変化状况を予測し、異なる状況での室内ホルムアルデヒドの健康リスクを分析する。部屋を装飾する前、装飾プラン及び室外ストリートでのホルムアルデヒド汚染状况に基づいて、装飾後の室内空気品質状况を正確に予測し、さらに人類の健康への影響を評価することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法であって、
従来の装飾材料の汚染物放出量の研究の発展成果に従って、1m3気候チャンバー法に基づいて、実験のプロセスを改良することにより、実験周期を短縮させ、検出コストを低下させ、さまざまな室内装飾材料のホルムアルデヒド放出速度をアセチルアセトン法により測定するステップS1と、
ステップS1に基づいて、文献を収集することにより、未測定の室内装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を収集してスクリーニングするステップS2と、
固体板材及び液体ラテックス塗料の異なるホルムアルデヒド放出速度特性に応じて、冪関数モデル及び有理数減衰モデルのそれぞれを用いて、さまざまな装飾板材及びラテックス塗料のホルムアルデヒド放出速度モデルを作成し、得たホルムアルデヒド放出速度モデルを用いて装飾材料のホルムアルデヒド長期放出速度をフィッティングするステップS3と、
室内ホルムアルデヒド濃度に対する複数の影響要素を総合的に考慮して、室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルを作成し、室内ホルムアルデヒド濃度に対する室内汚染源、室外汚染源、及び通気量の影響を考慮して、室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルを、ホルムアルデヒド放出速度モデル、ストリートキャニオンモデル、及び通気モデルに分けるステップS4と、
モデルシミュレーションの正確性及びモデルパラメータ取得の利便性から、SRIモデルを、ストリート内の汚染物拡散を記述する数学モデルとして決定し、自動車のホルムアルデヒド放出強度を主な研究対象として、実際計測実験を通じてSRIモデルの正確性を検証し、ストリート両側のホルムアルデヒド濃度を正確に予測し、室内ホルムアルデヒド濃度を予測するために確実な基礎データを提供するステップS5と、
経験モデルを室内通気率の予測方法とし、風圧及び温度差圧による自然通気と室内通気システムによる機械的通気との両方を考慮し、両方を組み合わせて室内総通気量を得るステップS6と、
室内汚染物の質量保存の法則に従って、良好な混合反応器モデルに基づいて、室内汚染物放出速度モデルと組み合わせて、室内ホルムアルデヒド濃度を予測する数学モデルを導出し、実験を通じて室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルの正確性を検証するステップS7と、
ステップS1~S7に記載の内容を整理してまとめ、室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法を得るステップS8とを含む、ことを特徴とする室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法。
【請求項2】
装飾材料のホルムアルデヒド放出速度は、実験室によって直接測定することができず、一定の計算が必要とされており、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度の計算方式は、
【数56】
式中、
t1、t2は時間(h)であり、Eはホルムアルデヒド放出速度(mg/(m・h))であり、Sは装飾材料の面積(m)であり、Cは空気中のホルムアルデヒド濃度(mg/m)であり、Qは1時間当たり室内に入る空気の量(m/h)であり、Mは担持率(m/m)であり、つまり、装飾材料の面積と室内体積との比であり、Nは空気交換率であり、つまり、1時間あたり室内空気の置換回数であり、
式(6)より、空気交換率と担持率との比が1である場合、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度と室内空気中のホルムアルデヒド濃度の値が同じであることが分かり、実験には、空気交換率及び担持率はともに1に設定されるので、本発明の実験において、測定した空気中ホルムアルデヒド濃度が、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度となる、ことを特徴とする請求項1に記載の室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法。
【請求項3】
前記S3では、装飾板材のホルムアルデヒド放出効率の冪関数モデルの具体的な形態は、
【数57】
式中、Eはホルムアルデヒド放出速度であり、a及びbは定数であり、tはホルムアルデヒド放出時間(h)であり、
前記液体装飾材料のホルムアルデヒド放出効率の有理数減衰モデルの具体的な形態は、
【数58】
式(8)中、Eは、ホルムアルデヒド放出速度(mg/(m・h))を表し、Eは最大放出速度(mg/(m・h))を表し、dは定数であり、tは時間(h)である、ことを特徴とする請求項1に記載の室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法。
【請求項4】
前記ステップS5に記載の自動車のホルムアルデヒド放出強度の計算方程式は、
【数59】
式中、Qは自動車のホルムアルデヒド放出強度(mg/(m・s))であり、EFは自動車のホルムアルデヒド放出因子(mg/(Km・台))であり、NUMは1時間のトラフィック量である、ことを特徴とする請求項1に記載の室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法。
【請求項5】
前記ステップS7では、室内ホルムアルデヒド濃度の数学モデルの予測方法において、
室内気体汚染物が瞬間的によく混ぜるとすれば、室内気体汚染物の質量保存は、
【数60】
式(10)中、Cは室内気体汚染物の濃度を表し、tは時間を表し、qは濾過装置を通過して室内に入った通気量を表し、Vは室内空気の体積である室内空間の体積を表し、Cは室外大気中の汚染物の濃度を表し、Fはある汚染物に対する濾過装置の浄化効率を表し、qは室内空気循環通気量を表し、Fは室内空気循環システムにおける濾過装置の、ある汚染物に対する浄化効率を表し、qは自然通気を通じて室内に入った通気量を表し、Sは、ある汚染物の室内放出速度を表し、Rは、吸着、分解や他の物質との化学反応などによる室内のある汚染物の解消速度を表し、ここで、F=(C~C)/Cであり、同様にFが得られ、一般的な建物の場合、循環システムと通気システムが同一の濾過装置を使用しているので、F=Fとなり、
式(10)の右側では、第1項は、通気装置を通過して室内に入ったこの汚染物の空気中の濃度を表し、第2項は、室内空気循環システムを介して室内に戻った汚染物の空気中の濃度を表し、第3項は、自然通気により室内に入ったこの汚染物の空気中の濃度を表し、第4項は、室内から室外に排出されるこの汚染物の濃度を表し、第5項は、室内汚染源から室内空気中に入った汚染物の放出濃度を表し、第6項は、汚染物の分解、化学反応や他の材料の表面への吸着等による、この汚染物の室内での解消濃度を表し、
式(10)中、汚染物が室内空気に入るときに、室内の空気と瞬間的によく混ぜるとすれば、室内にわたって汚染物の濃度が同じレベルになり、ただし、実際には汚染物が室内の空気と完全に混ぜることができないため、式(10)を基に、混合因子kを導入して、
【数61】
本発明では、通気システム及び室内空気循環システムの濾過装置を考慮しないため、式(11)は、
【数62】
式(12)中、q+qは、機械的通気量と自然通気量との代数和ではなく、室内通気総量を表し、このため、式(12)は、
【数63】
式(13)中、qは室内通気総量を表し、本発明では、室内汚染源の放出速度Sの計算式は、
【数64】
式(14)中、nは室内装飾に使用される装飾材料の種類を表し、Eは第j種の装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を表し、Aは第j種の装飾材料の使用面積を表し、Sは室内汚染物放出速度を表し、
本発明では、ホルムアルデヒドが室内で減衰しないとすれば、ホルムアルデヒドの室内での吸着、化学反応や分解などの要素を無視し、式(14)を式(13)に代入すると、式は
【数65】
初期時刻に室内の気体汚染物の濃度を
【数66】
として、室内気体汚染物の初期濃度Cを代入して、式(15)の解として、
【数67】
が得られる、ことを特徴とする請求項1に記載の室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内大気汚染研究の技術分野に関し、特に室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生態環境の保護は、新世紀から、中国の社会的および経済的発展において重要な課題になっている。人々や社会は、水環境や大気環境などの課題にますます注目しているが、これらの問題に注目するとともに、人の生活に最も密接に関連している、人体に害を及ぼす可能性が高い環境問題-室内大気汚染を無視することがよくある。室内の空気質状况は、人類の健康に影響を与える重要な要素の1つであり、人々の注目を集めており、社会及び経済の発展に伴って、現代建築の密封性及び室内装飾程度がますます高くなり、室内大気汚染もますます深刻になる。ホルムアルデヒドは、室内の空気質及び人類の健康に影響を与える重要な汚染物であり、2017年に一級発がん性物質としてリストされており、室内ホルムアルデヒド濃度は、室内空気質状况を反映する指標の1つとすることができる。
【0003】
現在、室内ホルムアルデヒド濃度に対する研究は、主に室内ホルムアルデヒドの浄化、放出速度及び人体健康への影響に焦点を当てており、室内ホルムアルデヒド濃度の予測及び評価の研究は、主に室内ホルムアルデヒド濃度への室内建築及び装飾材料の影響を考慮しており、ストリートにおいて自動車から排出されるホルムアルデヒドによる室内ホルムアルデヒド濃度への影響を無視している。従って、部屋を装飾する前、装飾プラン及び室外ストリートでのホルムアルデヒド汚染状况に基づいて、装飾後の室内空気品質状况を如何に正確に予測するかは、室内の空気質を高める最適な方法の1つであり、このために、室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、人々が部屋を装飾する前、装飾プラン及び室外ストリートでのホルムアルデヒド汚染状况に基づいて、装飾後の室内空気品質状况を正確に予測するために、室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現するために、本発明は、以下の技術案を用いる。
室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法であって、
従来の装飾材料の汚染物放出量の研究の発展成果に従って、1m3気候チャンバー法に基づいて、実験のプロセスを改良することにより、実験周期を短縮させ、検出コストを低下させ、さまざまな室内装飾材料のホルムアルデヒド放出速度をアセチルアセトン法により測定するステップS1と、
ステップS1に基づいて、文献を収集することにより、未測定の室内装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を収集してスクリーニングするステップS2と、
固体板材及び液体ラテックス塗料の異なるホルムアルデヒド放出速度特性に応じて、冪関数モデル及び有理数減衰モデルのそれぞれを用いて、さまざまな装飾板材及びラテックス塗料のホルムアルデヒド放出速度モデルを作成し、得たホルムアルデヒド放出速度モデルを用いて装飾材料のホルムアルデヒド長期放出速度をフィッティングするステップS3と、
室内ホルムアルデヒド濃度に対する複数の影響要素を総合的に考慮して、室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルを作成し、室内ホルムアルデヒド濃度に対する室内汚染源、室外汚染源、及び通気量の影響を考慮して、室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルを、ホルムアルデヒド放出速度モデル、ストリートキャニオンモデル、及び通気モデルに分けるステップS4と、
モデルシミュレーションの正確性及びモデルパラメータ取得の利便性から、SRIモデルを、ストリート内の汚染物拡散を記述する数学モデルとして決定し、自動車のホルムアルデヒド放出強度を主な研究対象として、実際計測実験を通じてSRIモデルの正確性を検証し、ストリート両側のホルムアルデヒド濃度を正確に予測し、室内ホルムアルデヒド濃度を予測するために確実な基礎データを提供するステップS5と、
経験モデルを室内通気率の予測方法とし、風圧及び温度差圧による自然通気と室内通気システムによる機械的通気との両方を考慮し、両方を組み合わせて室内総通気量を得るステップS6と、
室内汚染物の質量保存の法則に従って、良好な混合反応器モデルに基づいて、室内汚染物放出速度モデルと組み合わせて、室内ホルムアルデヒド濃度を予測する数学モデルを導出し、実験を通じて室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルの正確性を検証するステップS7と、
ステップS1~S7に記載の内容を整理してまとめ、室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法を得るステップS8とを含む。
好ましくは、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度は、実験室によって直接測定することができず、一定の計算が必要とされており、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度の計算方式は、
【数1】
式中、
t1、t2は時間(h)であり、Eはホルムアルデヒド放出速度(mg/(m・h))であり、Sは装飾材料の面積(m)であり、Cは空気中のホルムアルデヒド濃度(mg/m)であり、Qは1時間当たり室内に入る空気の量(m/h)であり、Mは担持率(m/m)であり、つまり、装飾材料の面積と室内体積との比であり、Nは空気交換率であり、つまり、1時間あたり室内空気の置換回数であり、
式(6)より、空気交換率と担持率との比が1である場合、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度と室内空気中のホルムアルデヒド濃度の値が同じであることが分かり、実験には、空気交換率及び担持率はともに1に設定されるので、本発明の実験において、測定した空気中ホルムアルデヒド濃度が、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度となる。
【0006】
好ましくは、前記S3では、装飾板材のホルムアルデヒド放出効率の冪関数モデルの具体的な形態は、
【数2】
式中、Eはホルムアルデヒド放出速度であり、a及びbは定数であり、tはホルムアルデヒド放出時間(h)であり、
前記液体装飾材料のホルムアルデヒド放出効率の有理数減衰モデルの具体的な形態は、
【数3】
式(8)中、Eは、ホルムアルデヒド放出速度(mg/(m・h))を表し、Eは最大放出速度(mg/(m・h))を表し、dは定数であり、tは時間(h)である。
【0007】
好ましくは、前記ステップS5に記載の自動車のホルムアルデヒド放出強度の計算方程式は、
【数4】
式中、Qは自動車のホルムアルデヒド放出強度(mg/(m・s))であり、EFは自動車のホルムアルデヒド放出因子(mg/(Km・台))であり、NUMは1時間のトラフィック量である。
【0008】
好ましくは、前記ステップS7では、室内ホルムアルデヒド濃度の数学モデルの予測方法において、
室内気体汚染物が瞬間的によく混ぜるとすれば、室内気体汚染物の質量保存は、
【数5】
式(10)中、Cは室内気体汚染物の濃度を表し、tは時間を表し、qは濾過装置を通過して室内に入った通気量を表し、Vは室内空気の体積である室内空間の体積を表し、Cは室外大気中の汚染物の濃度を表し、Fはある汚染物に対する濾過装置の浄化効率を表し、qは室内空気循環通気量を表し、Fは室内空気循環システムにおける濾過装置の、ある汚染物に対する浄化効率を表し、qは自然通気を通じて室内に入った通気量を表し、Sは、ある汚染物の室内放出速度を表し、Rは、吸着、分解や他の物質との化学反応などによる室内のある汚染物の解消速度を表し、ここで、F=(C~C)/Cであり、同様にFが得られ、一般的な建物の場合、循環システムと通気システムが同一の濾過装置を使用しているので、F=Fとなり、
式(10)の右側では、第1項は、通気装置を通過して室内に入ったこの汚染物の空気中の濃度を表し、第2項は、室内空気循環システムを介して室内に戻った汚染物の空気中の濃度を表し、第3項は、自然通気により室内に入ったこの汚染物の空気中の濃度を表し、第4項は、室内から室外に排出されるこの汚染物の濃度を表し、第5項は、室内汚染源から室内空気中に入った汚染物の放出濃度を表し、第6項は、汚染物の分解、化学反応や他の材料の表面への吸着等による、この汚染物の室内での解消濃度を表し、
式(10)中、汚染物が室内空気に入るときに、室内の空気と瞬間的によく混ぜるとすれば、室内にわたって汚染物の濃度が同じレベルになり、ただし、実際には汚染物が室内の空気と完全に混ぜることができないため、式(10)を基に、混合因子kを導入して、
【数6】
本発明では、通気システム及び室内空気循環システムの濾過装置を考慮しないため、式(11)は、
【数7】
式(12)中、q+qは、機械的通気量と自然通気量との代数和ではなく、室内通気総量を表し、このため、式(12)は、
【数8】
式(13)中、qは室内通気総量を表し、本発明では、室内汚染源の放出速度Sの計算式は、
【数9】
式(14)中、nは室内装飾に使用される装飾材料の種類を表し、Eは第j種の装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を表し、Aは第j種の装飾材料の使用面積を表し、Sは室内汚染物放出速度を表し、
本発明では、ホルムアルデヒドが室内で減衰しないとすれば、ホルムアルデヒドの室内での吸着、化学反応や分解などの要素を無視し、式(14)を式(13)に代入すると、式は
【数10】
初期時刻に室内の気体汚染物の濃度を
【数11】
として、室内気体汚染物の初期濃度Cを代入して、式(15)の解として、
【数12】
【発明の効果】
【0009】
従来技術1に比べて、本発明は、室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法を提供し、以下の有益な効果を有する。
(1)実験を設計することで、アセチルアセトン法を用いて、一部の室内装飾材料のホルムアルデヒド放出速度をテストし、文献を収集すること、未測定の装飾材料のホルムアルデヒド放出速度をスクリーニングし、それぞれ
【数13】
の形態で異なる装飾板材及びエマルション塗料のホルムアルデヒド放出速度モデルを作成し、装飾材料のホルムアルデヒド長期放出速度をよくフィッティングすることができる。
【0010】
(2)以前の研究を基に、ストリート内のホルムアルデヒド濃度予測モデルを決定し、自動車のホルムアルデヒド排出強度を決定する。検証結果によれば、該モデルの予測結果の正則化された基準偏差が5.9%であり、ストリートの両側のホルムアルデヒドの濃度を正確に予測でき、室内ホルムアルデヒド濃度の予測に確実な室外ホルムアルデヒド濃度を提供することが示される。
【0011】
(3)室内汚染物の質量保存の法則に従って、良好な混合反応器モデルに基づいて、室内汚染物放出速度モデル、ストリートキャニオンモデル及び通気モデルと組み合わせて、室内ホルムアルデヒド濃度を予測する数学モデルを導出する。
【数14】
(4)異なる部屋のホルムアルデヒド濃度の予測値と実測値を比較し、異なるタイプの装飾材料を選択して予測するとき、予測値と実測値の偏差が異なり、最大の正則化された基準偏差が18.01%であり、最小の正則化された基準偏差が5.35%であり、これは、主に室内で実際に使用される装飾材料と実験室で監視される装飾材料のタイプにより引き起こされるが、室内ホルムアルデヒド濃度の予測値と実測値の正則化された基準偏差が平均で9.88%であり、該モデルは、室内ホルムアルデヒド濃度を正確に予測することができる。
【0012】
本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法では、最も進歩的な点は、以下のとおりである。
1)、室内ホルムアルデヒド濃度への室外汚染の影響を考慮し、ストリートキャニオンモデルを導入し、室内ホルムアルデヒド濃度を長期に予測できるモデルを作成し、室内装飾プランまたは室内通気ポリシーにより、室内ホルムアルデヒド濃度を低下させることができる。この前のほとんどの研究は、室内ホルムアルデヒド濃度への室内汚染及び室外汚染の影響のそれぞれについての研究であり、この2つの要素の影響を同時に考慮していない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法の技術経路の概略図である。
図2】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法で、北三環路に対してシミュレート実測を行うホルムアルデヒド平均濃度の比較概略図である。
図3】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法で、学院南路に対してシミュレート実測を行うホルムアルデヒド平均濃度の比較概略図である。
図4】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法における、ストリートのホルムアルデヒド濃度のシミュレート値と実測値との相関性の分析概略図である。
図5】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法における単一通気口モードの簡略化モデルの概略図である。
図6】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法における両面二重通気口モードの簡略化モデルの概略図である。
図7】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法における一面二重通気口モードの簡略化モデルの概略図である。
図8】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法における両面四通気口モードの簡略化モデルの概略図である。
図9】本発明に係る室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法における、室内ホルムアルデヒド濃度の予測値と実測値との相関性の分析概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例の技術案について明瞭、かつ完全に説明し、当然ながら、説明される実施例は、本発明の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではない。
【0015】
なお、本発明の説明において、理解されるべきこととして、用語「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「頂」、「底」、「内」、「外」などで指示される方位または位置関係は図面に示される方位または位置関係を参照するものであり、本発明を説明する及び簡単に説明するために使用されるものにすぎず、示した装置又は部材が必ず特定な方位を有し、特定な方位で構成又は操作することを指示又は暗示
することではないので、本発明に対する限定と理解してはいけない。
【0016】
実施例1
図1に示すように、室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下での室内ホルムアルデヒド濃度の予測方法は、以下のステップを含む。
従来の装飾材料の汚染物放出量の研究の発展成果に従って、1m3気候チャンバー法に基づいて、実験のプロセスを改良することにより、実験周期を短縮させ、検出コストを低下させ、さまざまな室内装飾材料のホルムアルデヒド放出速度をアセチルアセトン法により測定するステップS1と、
ステップS1に基づいて、文献を収集することにより、未測定の室内装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を収集してスクリーニングするステップS2と、
固体板材及び液体ラテックス塗料の異なるホルムアルデヒド放出速度特性に応じて、冪関数モデル及び有理数減衰モデルのそれぞれを用いて、さまざまな装飾板材及びラテックス塗料のホルムアルデヒド放出速度モデルを作成し、得たホルムアルデヒド放出速度モデルを用いて装飾材料のホルムアルデヒド長期放出速度をフィッティングするステップS3と、
室内ホルムアルデヒド濃度に対する複数の影響要素を総合的に考慮して、室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルを作成し、室内ホルムアルデヒド濃度に対する室内汚染源、室外汚染源、及び通気量の影響を考慮して、室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルを、ホルムアルデヒド放出速度モデル、ストリートキャニオンモデル、及び通気モデルに分けるステップS4と、
モデルシミュレーションの正確性及びモデルパラメータ取得の利便性から、SRIモデルを、ストリート内の汚染物拡散を記述する数学モデルとして決定し、自動車のホルムアルデヒド放出強度を主な研究対象として、実際計測実験を通じてSRIモデルの正確性を検証し、ストリート両側のホルムアルデヒド濃度を正確に予測し、室内ホルムアルデヒド濃度を予測するために確実な基礎データを提供するステップS5と、
経験モデルを室内通気率の予測方法とし、風圧及び温度差圧による自然通気と室内通気システムによる機械的通気との両方を考慮し、両方を組み合わせて室内総通気量を得るステップS6と、
室内汚染物の質量保存の法則に従って、良好な混合反応器モデルに基づいて、室内汚染物放出速度モデルと組み合わせて、室内ホルムアルデヒド濃度を予測する数学モデルを導出し、実験を通じて室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルの正確性を検証するステップS7と、
ステップS1~S7に記載の内容を整理してまとめ、室内汚染と室外汚染を組み合わせた条件下における室内ホルムアルデヒド濃度予測方法を得るステップS8とを含む。
装飾材料のホルムアルデヒド放出速度は、実験室によって直接測定することができず、一定の計算が必要とされており、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度の計算方式は、
【数15】
式中、
t1、t2は時間(h)であり、Eはホルムアルデヒド放出速度(mg/(m・h))であり、Sは装飾材料の面積(m)であり、Cは空気中のホルムアルデヒド濃度(mg/m)であり、Qは1時間当たり室内に入る空気の量(m/h)であり、Mは担持率(m/m)であり、つまり、装飾材料の面積と室内体積との比であり、Nは空気交換率であり、つまり、1時間あたり室内空気の置換回数であり、
式(6)より、空気交換率と担持率との比が1である場合、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度と室内空気中のホルムアルデヒド濃度の値が同じであることが分かり、実験には、空気交換率及び担持率はともに1に設定されるので、本発明の実験において、測定した空気中ホルムアルデヒド濃度が、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度となる。
【0017】
S3では、装飾板材のホルムアルデヒド放出効率の冪関数モデルの具体的な形態は、
【数16】
式中、Eはホルムアルデヒド放出速度であり、a及びbは定数であり、tはホルムアルデヒド放出時間(h)であり、
液体装飾材料のホルムアルデヒド放出効率の有理数減衰モデルの具体的な形態は、
【数17】
式(8)中、Eは、ホルムアルデヒド放出速度(mg/(m・h))を表し、Eは最大放出速度(mg/(m・h))を表し、dは定数であり、tは時間(h)である。
【0018】
ステップS5に記載の自動車のホルムアルデヒド放出強度の計算方程式は、
【数18】
式中、Qは自動車のホルムアルデヒド放出強度(mg/(m・s))であり、EFは自動車のホルムアルデヒド放出因子(mg/(Km・台))であり、NUMは1時間のトラフィック量である。
【0019】
ステップS7では、室内ホルムアルデヒド濃度の数学モデルの予測方法において、
室内気体汚染物が瞬間的によく混ぜるとすれば、室内気体汚染物の質量保存は、
【数19】
式(10)中、Cは室内気体汚染物の濃度を表し、tは時間を表し、qは濾過装置を通過して室内に入った通気量を表し、Vは室内空気の体積である室内空間の体積を表し、Cは室外大気中の汚染物の濃度を表し、Fはある汚染物に対する濾過装置の浄化効率を表し、qは室内空気循環通気量を表し、Fは室内空気循環システムにおける濾過装置の、ある汚染物に対する浄化効率を表し、qは自然通気を通じて室内に入った通気量を表し、Sは、ある汚染物の室内放出速度を表し、Rは、吸着、分解や他の物質との化学反応などによる室内のある汚染物の解消速度を表し、ここで、F=(C~C)/Cであり、同様にFが得られ、一般的な建物の場合、循環システムと通気システムが同一の濾過装置を使用しているので、F=Fとなり、
式(10)の右側では、第1項は、通気装置を通過して室内に入ったこの汚染物の空気中の濃度を表し、第2項は、室内空気循環システムを介して室内に戻った汚染物の空気中の濃度を表し、第3項は、自然通気により室内に入ったこの汚染物の空気中の濃度を表し、第4項は、室内から室外に排出されるこの汚染物の濃度を表し、第5項は、室内汚染源から室内空気中に入った汚染物の放出濃度を表し、第6項は、汚染物の分解、化学反応や他の材料の表面への吸着等による、この汚染物の室内での解消濃度を表し、
式(10)中、汚染物が室内空気に入るときに、室内の空気と瞬間的によく混ぜるとすれば、室内にわたって汚染物の濃度が同じレベルになり、ただし、実際には汚染物が室内の空気と完全に混ぜることができないため、式(10)を基に、混合因子kを導入して、
(11)が得られ、
本発明では、通気システム及び室内空気循環システム
【数20】
式(12)中、q+qは、機械的通気量と自然通気量との代数和ではなく、室内通気総量を表し、このため、式(12)は、
【数21】
式(13)中、qは室内通気総量を表し、本発明では、室内汚染源の放出速度Sの計算式は、
【数22】
式(14)中、nは室内装飾に使用される装飾材料の種類を表し、Eは第j種の装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を表し、Aは第j種の装飾材料の使用面積を表し、Sは室内汚染物放出速度を表し、
本発明では、ホルムアルデヒドが室内で減衰しないとすれば、ホルムアルデヒドの室内での吸着、化学反応や分解などの要素を無視し、式(14)を式(13)に代入すると、式は
【数23】
初期時刻に室内の気体汚染物の濃度を
【数24】
として、室内気体汚染物の初期濃度Cを代入して、式(15)の解として、
【数25】
【0020】
本発明は、室内ホルムアルデヒド濃度への室外汚染の影響を考慮し、ストリートキャニオンモデルを導入し、室内ホルムアルデヒド濃度を長期に予測できるモデルを作成し、室内装飾プランまたは室内通気ポリシーにより、室内ホルムアルデヒド濃度を低下させることができる。この前のほとんどの研究は、室内ホルムアルデヒド濃度への室内汚染及び室外汚染の影響のそれぞれについての研究であり、この2つの要素の影響を同時に考慮していない。
【0021】
実施例2
実施例1に基づくものであるが、以下の相違点を有する。
装飾材料のホルムアルデヒド放出速度データを収集し、木製の床のホルムアルデヒド放出速度データは以下のとおりである。
木製の床の生産過程において、大量の粘着剤を使用する必要があるため、木製の床の使用では、揮発性有機物を放出し、ホルムアルデヒドは、重要な汚染物の1つである。東北林業大学の潘燕偉らがチャンバー法を用い、黒竜江、吉林及び四川などの異なる産地の木製の床の室内環境でのホルムアルデヒド放出量を検出した。ホルムアルデヒド放出量を測定したとき、担持率及び空気交換率がいずれも1であった。従って、測定される放出チャンバー内の室内ホルムアルデヒド濃度は、建築板材のホルムアルデヒド放出速度である。監視結果によれば、時間が長くなるにつれて、木製の床のホルムアルデヒド放出速度が徐々に下がることが分かる。具体的なデータは、表1に示される。
【0022】
【表1】
【0023】
木製の床のホルムアルデヒド放出速度のデータは、以下のとおりである。
合板は、単層の木板又は薄い木板を粘着剤で粘着してホットプレスして製造された板材であり、通常、合板層の数が奇数であり、隣接する2層の木板の繊維が互いに垂直である。合板の製造過程において使用される粘着剤は、ホルムアルデヒド及びその他の揮発性有機物を絶えず放出する。合板の製造過程において使用される粘着剤の量が大きいため、合板の使用過程でのホルムアルデヒド放出量が大きくなってしまう。この前に、チャンバー法により合板のホルムアルデヒド放出速度を測定した結果は、表2に示される。
【0024】
【表2】
【0025】
チップボードのホルムアルデヒド放出速度のデータは、以下のとおりである。
チップボードは、木のスラットで結合されてなるか、または中空の板を芯板として、両面に薄い木板又は合板を被覆し、粘着剤を加えてプレスされる人工木板である。チップボードは、家具製造及び室内装飾に広く使用されている。しかし、チップボードの使用過程において、ホルムアルデヒド及びその他の揮発性有機物を放出し、人類の身体健康に影響を与える。この前に、学者がチャンバー法により、室温条件においてチップボードのホルムアルデヒド放出量を測定し、チップボードのホルムアルデヒド放出量を測定したとき、担持率が1m/mであり、通気率も1であった。従って、測定したチップボードのホルムアルデヒド放出量及びホルムアルデヒド放出速度の具体的なデータは、表3に示される。
【0026】
【表3】
【0027】
内壁のエマルション塗料のホルムアルデヒド放出速度のデータは、以下のとおりである。
現在の部屋では、内壁の塗装は不可欠な装飾プロセスである。内壁のエマルション塗料は、内壁の装飾材料の1つである。エマルション塗料は、揮発性有機物の放出量が少ないなどの利点を有する。しかし、室内装飾過程において、エマルション塗料の使用量が非常に大きいため、室内ホルムアルデヒドの重要汚染源の1つである。南昌大学の于韵は、内壁のエマルション塗料のホルムアルデヒド放出速度の特徴を研究し、チャンバー法を用い、担持率及び空気交換率がいずれも1である場合、内壁のエマルション塗料であるアクリル樹脂エマルション塗料のホルムアルデヒド放出速度を測定した。該研究によれば、内壁のエマルション塗料のホルムアルデヒド放出速度が増大してから減少し、安定になる傾向を呈することが発見される。内壁のエマルション塗料のホルムアルデヒド放出速度の具体的なデータは、表4に示される。
【0028】
【表4】
【0029】
その他の装飾材料のホルムアルデヒド放出速度は、以下のとおりである。
カナダの研究委員会は、粘着剤を含有するカーペット、ナイロンカーペット(ラテックスパッドを含む)、メラミンボード、リネン床などの装飾材料を含む大量の室内装飾材料に対して揮発性有機物の放出量を測定した。温度が23℃であり、相対湿度が50%であると、粘着剤を含有するカーペットのホルムアルデヒド放出速度は0.02137 mg/(m・h)であり、ナイロンカーペット(ラテックスパッドを含む)のホルムアルデヒド放出速度は0.01391 mg/(m・h)であり、メラミン板のホルムアルデヒド放出速度は0.0046 mg/(m・h)であり、ビニール壁紙のホルムアルデヒド放出速度は0.0013 mg/(m・h)である。該研究委員会は、ホルムアルデヒド放出量の検出データに基づいて、さまざまな材料のホルムアルデヒド放出率モデルを作成する。
【0030】
実施例3
実施例1~2のうちのいずれかまたは複数に基づくものであるが、以下の相違点を有する。
【0031】
装飾板材のホルムアルデヒド放出速度モデル:
ベキ関数モデルは、単純なフィッティングモデルであり、モデルパラメータが物理的意味を有さないが、短期の放出速度を介して長期放出速度をよく予測でき、導出しやすい及び計算しやすいなどの利点を有する。
【0032】
ベキ関数モデルは、式で示されるように、固体材料気体の放出をシミュレートし、パラメータa及びbは、最小二乗法により同時にフィッティングされて決定される。
【0033】
E=at-b (17)
式中、Eはホルムアルデヒド放出速度であり、a及びbは定数であり、tはホルムアルデヒド放出時間(h)である。
【0034】
質量-伝導フーリエ数Fo(t)=Dt/L=2.0の場合、装飾材料中のホルムアルデヒドが完全に放出されているとすれば、装飾材料の放出ホルムアルデヒドの全期間内に、ホルムアルデヒド平均放出速度の式は、
【数26】
C0は装飾材料中の初期ホルムアルデヒド濃度であり、Dは拡散係数であり、Lは装飾材料の厚みである。
【0035】
装飾材料のホルムアルデヒド放出の全期間において、ベキ関数モデルのホルムアルデヒド平均放出速度は、
【数27】
【0036】
式中の符号は、前の式の符号の意味と同じである。
【数28】
ベキ関数モデルとホワイトボックスモデルのホルムアルデヒド放出速度の違いを比較する。
【0037】
【数29】
【0038】
Yeらは、D(10-13-10-9/s)及びK(10-10)を桁に従って16種の異なる組合せに分け、各種の組合せにおいては、モンテカルロ法を利用してR値を計算し、各種の組合せにおいて計算が1000回を超える。Rを計算することから、R値がほとんど1ほどに維持されることが分かる。ベキ関数モデルとホワイトボックスモデルは、装飾材料のホルムアルデヒドの放出の全期間に、ホルムアルデヒドの放出総量の予測において高い一致性を有することが示される。
【0039】
ベキ関数モデルのホルムアルデヒド放出速度の予測精度に対して、それぞれ28日目、7日目及び3日目の実験データを使用してホルムアルデヒド放出速度をフィッティングし、カナダ研究委員会のデータベースにおけるデータを利用して、ベキ関数モデルの予測精度を検証する。
【0040】
カナダ研究委員会のデータベースにおけるパーティクルボードの実測値を選択し、ベキ関数モデルを開発してフィッティングし、該ベキ関数モデルを利用して一年のホルムアルデヒド放出速度を予測する。正規化された平均二乗誤差でベキ関数モデルの予測能力を表す。28日目のデータでベキ関数モデルをフィッティングして開発するとき、ほとんどの正規化された平均二乗誤差(88.9%)が8より低く、実験データと実測値が1つの桁にあることが説明され、ベキ関数モデルが装飾材料のホルムアルデヒド放出速度に対して長期予測を行うに十分な予測能力を持っていると考えることができる。3日目、7日目、14日目のデータでベキ関数モデルをフィッティングして開発し、8%より低い正規化された平均二乗誤差値の割合が74.4%、83.8%及び88.9%である。この結果によれば、14日目の実測値でフィッティングして開発されるベキ関数モデルと、28日目の実測値でフィッティングして開発されるベキ関数モデルの予測能力とはほとんど一致し、3日目及び7日目の実測値でフィッティングして開発されるベキ関数モデルで得られた予測精度と、28日目の実測値で得られたベキ関数モデルで予測される精度とは、有意差がない。従って、3日目の実験データでフィッティングして開発されるベキ関数モデルがホルムアルデヒド放出速度を予測する要求を満たすことができることが説明される。
【0041】
しかし、ベキ関数モデルの制限は、ホルムアルデヒド放出速度の初期に、ベキ関数モデルの計算結果が無限大であり、実際の場合と一致しないことである。本発明は、実際の状況に基づいて、ベキ関数モデルに対して多段階化を行う。ホルムアルデヒド放出速度の初期に、ホルムアルデヒド放出速度が変わらないとすれば、ある時点の前のホルムアルデヒド放出速度を定値とし、該時点の後のホルムアルデヒド放出速度がベキ関数モデルで表され、具体的な形態は、式(7)で示される。
【数30】
【0042】
式中、E、a、bの意味は、前の式と同じであり、cは定数であり、実験データに基づいて決定される。
【0043】
液体装飾材料のホルムアルデヒド放出速度モデル:
液体装飾材料のホルムアルデヒド放出速度の特徴と固体板材装飾材料のホルムアルデヒド放出速度の特徴とは、かなり異なっている。固体装飾板材のホルムアルデヒド放出速度の下がりがゆっくりであり、ベキ関数モデルを用いることで、板材のホルムアルデヒド放出速度をよくシミュレートすることができる。しかし、内壁のエマルション塗料、ペイントなどの液体装飾材料は、ホルムアルデヒド放出速度が短く増加するが、急激に下がる傾向を呈し、従って、ベキ関数モデルは、液体装飾材料のホルムアルデヒド放出速度のシミュレートに適されない。液体装飾材料のホルムアルデヒド放出の初期段階に、ホルムアルデヒド放出速度の増加段階が短く、一般的に4~6時間であり、従って、本発明は、液体装飾材料のホルムアルデヒド放出速度の下がり段階に対して予測シミュレートを行う。液体装飾材料のホルムアルデヒド放出速度が速く下がるため、有理数減衰モデルを用いることで、液体装飾材料のホルムアルデヒド放出速度状况をシミュレートすることができる。
【数31】
【0044】
式(8)中、Eはホルムアルデヒド放出速度(mg/(m・h))を表し、Eは最大放出速度(mg/(m・h))を表し、dは定数であり、tは時間(h)である。
【0045】
実施例4
実施例1~3のうちのいずれかまたは複数に基づくものであるが、以下の相違点を有する。
SRIストリートキャニオンモデルは、ストリートをチャンバーとし、該チャンバー内の汚染物が垂直方向に均一に分布すると仮定する。
【0046】
SRIモデルは、ストリートでの汚染物を2つの部分で構成されていると見なし、第1に、大気中の元の汚染物濃度であり、第2に、自動車により引き起こされる汚染物の増加量であり、すなわち、
【数32】
【0047】
式中、Cは室外空気中のホルムアルデヒド濃度(mg/m)を表し、Cは大気中のホルムアルデヒド背景濃度(mg/m)を表し、Cは自動車の生じたホルムアルデヒドの濃度(mg/m)を表す。
【0048】
屋根風速の風下側では、自動車の生じたホルムアルデヒド濃度の計算式は、
【数33】
【0049】
式中、CiLは室外空気中の風下側のホルムアルデヒド濃度であり、Qは自動車のホルムアルデヒド排出強度(mg/(m・s))であり、uはストリートキャニオンの底部の風速(m/s)であり、yはストリートキャニオンでのホルムアルデヒド混合体積の深さ(m)である。Q自動車のホルムアルデヒド排出強度とトラフィック量とは、密接に関連している。
【0050】
【数34】
【0051】
ストリートキャニオン内において、ホルムアルデヒド混合体積深さyと、汚染源の監視地点間の距離l(m)とは、比例関係を呈し、kは定数である。
【0052】
自動車が走行した後、ホルムアルデヒドは、空気中において初期混合長さが生成され、該長さが自動車のサイズに相当し、これまでの研究によると、それを2mとし、式(23)は、
【数35】
屋根風速uとストリートキャニオンの底部の風速uとは、線形関係を呈する。
【0053】
【数36】
式中、0.5は自動車の走行過程において、引き起こされるストリートキャニオンの底部の風速増加量である。
【0054】
lはホルムアルデヒド濃度測定点と自動車放出点との間の実際の距離である。本発明では、自動車放出点の位置がいずれもストリートの中央線にあると仮定すると、ホルムアルデヒドの濃度測定点と自動車放出点との間の実際の距離がホルムアルデヒド濃度測定点とストリート中央線との間の実際の距離になる。ピタゴラスの定理に基づいて、
【数37】
式中、xは測定点とストリート中央線との間の水平距離(m)であり、zは測定点とストリートとの間の垂直高さ(m)である。
【0055】
方程式24~26を方程式22に代入し、
【数38】
【0056】
式中、Kは経験値であり、JohnsonがSRIモデルを作成したとき、K値を7にした。この後の学者が使用するとき、K値が実際の場合に伴って変化することを発見する。該モデルが東京都のストリート内の汚染物濃度のシミュレートに応用されるとき、Kの値が1.6~39である。本発明は、回帰の方法でK値を決定し、中国のK値が16~25であると決定し、最終的にK値を22として決定する。
【0057】
該モデルでは垂直方向でのホルムアルデヒド濃度が一致すると仮定されるので、屋根の風向の追い風側の場合、ストリートキャニオン内の追い風側の気流が上から下へ移動する。追い風側のホルムアルデヒド濃度シミュレート方程式は、引き続きチャンバーモードで計算されるが、ホルムアルデヒド混合濃度深さは、測定点とストリート中央線との間の実際の距離を用いらず、ストリート幅w(m)を用い、
【数39】
【0058】
式中、ciwは室外空気中の風上側のホルムアルデヒド濃度であり、K、Q及びuの意味は、全て上記と同じであり、方程式(29)から分かるように、該方程式でシミュレートされる風上側のホルムアルデヒド濃度は、垂直方向に一致し、勾配が存在しない。後続の研究によると、実際の場合で風上側の垂直方向でのホルムアルデヒド濃度には、所定の勾配が存在する。従って、方程式(29)を最適化し続け、垂直方向でホルムアルデヒド濃度に勾配が存在する計算方程式
【数40】
【0059】
式中、Hは建物高さ(m)を表し、zは測定点とストリート中央線との間の垂直高さ(m)を表し、ciw、K、Q及びuで表される意味は、すべて上記と同じである。
【0060】
風向とストリートとが垂直ではない場合、つまり、測定点が風下側にも位置せず、風上側にも位置しない場合、室外空気中のホルムアルデヒド濃度を風下側と風上側のホルムアルデヒド濃度の平均値にて計算する。
【数41】
【0061】
方程式(28)及び方程式(30)を方程式(31)に代入し、
【数42】
【0062】
実施例5
図2~4に示すように、実施例1~4のうちのいずれかまたは複数に基づくものであるが、以下の相違点を有する。
中国の学者の研究に基づいて、SRIモデルのパラメータを補正する。補正されたSRIモデルに基づいて、北京市の午前7時から午後21時までの一部のストリートのホルムアルデヒド濃度をシミュレートし、実測値結果と比較する。
【0063】
本発明では、ホルムアルデヒド検出に用いられる器具は、解像度が0.001mg/m3のポータブルホルムアルデヒド検出器PPM-400STと、解像度が0.001m/sのスプリット風速計AS8836と、レーザ距離計とを含む。
【0064】
モデルをシミュレートして得られる結果の精度は、正則化された基準偏差e
(方程式(34))で表され、正則化された基準偏差は、10%以内で許可される。
【数43】
【0065】
式中、qciはi番目の予測値を表し、qmiは対応するi番目の測定値を表し、nは測定値の個数を表す。
【0066】
正則化された基準偏差を計算することで、48組のデータをまとめた正則化された基準偏差が5.9%であり、シミュレート精度が許可される範囲内にある。しかし、学院南路のシミュレート精度を独立して計算するとき、正則化された基準偏差が17.6%である。シミュレート結果が悪い。
【0067】
モデルシミュレート結果の精度をさらに検証するために、全ての実測値とシミュレート値との比較の散布図を作成し、相関性分析を行い、結果は、図2~4及び表5に示される。
【0068】
【表5】
【0069】
SRIモデルでシミュレートして得られたデータ結果は、全体的に実測値と差が大きくないが、所定の偏差が存在し、特に学院南路のシミュレート値と実測値との差が非常に大きく、シミュレート正確性が北三環のシミュレート正確性より小さい。該シミュレートの偏差を引き起こす原因は、以下の数点ある可能性がある。第1には、SRIモデル自体の誤差であり、該モデルにおけるパラメータがすべて経験定数であり、自動車のホルムアルデヒド排出強度の計算過程において、車両タイプなどの要素を無視し、ホルムアルデヒドが自動車の排気ガスに占める比重がすべてモデルにより計算され、実際の状況と所定の偏差が存在し、これは、偏差を引き起こす原因の1つである可能性がある。第2には、実測値の誤差であり、学院南路の測定点が低い箇所に位置し、自動車と近く、自動車から排出される汚染物が完全に混合されていない可能性があり、測定される濃度がある期間内の平均濃度ではない可能性があるため、シミュレート値と実測値との偏差が大きくなってしまう。このほか、温度、湿度、分解、樹木など、モデルにおいて考慮されていないいくつかの要素によるホルムアルデヒド濃度への影響は、すべてシミュレート結果に影響を与える要素である。
【0070】
実施例6
図5~8に示すように、実施例1~5のうちのいずれかまたは複数に基づくものであるが、以下の相違点を有する。
本発明では、戸及び窓が開けられているとき、戸及び窓を通過する自然通気のみあり、侵入通気がなく、戸及び窓が閉じられているとき、自然通気は侵入通気のみある。
【0071】
戸及び窓が開けられているとき、戸及び窓の分布形態に基づいて、戸及び窓の自然通気量の計算モデルを4つに分け、この4つのモードは、それぞれ以下のとおりである。1、室内には、室外と連通する通気口が1つだけあり(単一通気口モード)、2、室内の平行な2つの壁にそれぞれ室外と連通する通気口が1つあり(両面二重通気口モード)、3、室内の1つの壁に室外と連通する通気口が2つあり(一面二重通気口モード)、4、室内の平行な2つの壁にそれぞれ室外と連通する通気口が2つあり(両面四通気口モード)である。この4つのモード通気量の計算モデルは、イギリスの基準方法から得られ、具体的には、以下のとおりである。
1、単一通気口モード:(図5を参照)
【数44】
【0072】
2、両面二重通気口モード(図6を参照)
【数45】
【0073】
3、一面二重通気口モード(図7を参照)
【数46】
【0074】
4、両面四通気口モード(図8を参照)
【数47】
【0075】
以上は4つの異なる通気モードで、戸及び窓を通過する、自然圧力差による通気量である。本発明では、全ての戸及び窓を基準通気口とし、以前の研究結果によると、Cを0.78とする。
【0076】
4つの異なるモードで、風圧による自然通気量の計算方法及び温度差圧による自然通気量の計算方法について説明する。実際の場合、室内の自然通気量は、風圧及び温度差圧の複合作用の下で生成される。しかし、総自然通気量は、風圧による自然通気量と温度差圧による自然通気量との単純な加算ではなく、所定の関係が存在する。前の学者の研究結果によると、風圧による通気及び温度差圧による通気が存在する場合、大きい値を総自然通気量とし、すなわち、
【数48】
【0077】
戸及び窓が閉じられているとき、自然通気は侵入通気である。侵入通気量の計算方法は、複数種あり、さまざまな方法の長所と短所、及び本発明の需要に基づいて、本発明は、計算が簡単な通気回数法を用いる。通気回数法の侵入通気量の計算は、
【数49】
nは部屋の1時間あたりの通気回数(回/h)を表し、Vは室内空間体積(m)を表す。
【0078】
室内空間体積は、測定により取得されてもよく、通気回数は、風速、戸と窓の材質、戸と窓の位置などの要素に密接に関連している経験係数である。本発明は、アメリカのASHRAEハンドブック及び中国のHVAC設計ハンドブックのデータ(表6で示される)を用いて、侵入通気量を計算する。
【0079】
【表6】
【0080】
通気回数法は、侵入通気量の概算であり、風速、戸及び窓の材質、タイプ、大きさなどの要素の影響を考慮せず、通気量への実際の場合での外窓の数量の影響のみを考慮する。通気回数法を用いて正確な結果を得るには、室内の通気回数を正確に予測する必要がある。通気回数の決定には、豊かな建築設計経験及び専門の判断能力が必要とされている。本発明では、該モデルに普遍的な適用性を与えるために、室内通気回数の選択原則は、以下のとおりである。1、中国のHVAC設計ハンドブックの新版基準を優先にし、2、中国のHVAC設計ハンドブックに対応する値がないと、アメリカのASHRAEハンドブックより提供される値を用い、3、通気回数基準値がある範囲にあるとき、該範囲の中央値を室内の通気回数として用いる。この原則により、モデルが中国の建築の通気量に一致し、一般的な人がモデルを用いるとき、モデルのパラメータ値に起因する誤差を減少させ、モデルの精度を高めることができる。
【0081】
自然通気量及び機械的通気量の2つの通気量を合わせて、室内通気総量を構成する。しかし、この2つの通気メカニズムは、完全に独立しているわけではなく、相互に影響を及ぼしあう。従って、室内通気総量は、両者の単純な加算ではなく、この場合は、送風扇の送風量と換気扇の排気量が等しいときのみ、発生する。送風量と排気量が等しくないとき、室内通気総量は均衡風量と不均衡風量の加算である。均衡風量とは、送風量及び排気量のうちの小さい値である。本発明では、室内通気総量は、参照文献で提供される方法に基づいて計算され、計算過程は、
【数50】
【0082】
戸及び窓が開けられているとき、室内通気総量は、
【数51】
【0083】
戸及び窓が全て閉じられているとき、室内通気総量は、
【数52】
【0084】
式(57)~(60)中、
【数53】
【0085】
実施例7
図9に示すように、実施例1~6のうちのいずれかまたは複数に基づくものであるが、以下の相違点を有する。
本発明では、ホルムアルデヒド検出に用いられる器具は、解像度が0.001mg/m3であり、室内ホルムアルデヒド濃度を検出するためのポータブルホルムアルデヒド検出器PPM-400STと、測定精度が±2mmであり、部屋の面積と体積、及びさまざまな装飾材料の使用面積を測定するためのレーザ距離計とを含む。
【0086】
室内ホルムアルデヒド濃度の実測値と予測値の結果及び関連データは、以下の表に示される。
【0087】
【表7】
【0088】
従来の装飾材料のホルムアルデヒド放出速度データベースを基に、本発明で作成される室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルに基づいて、北京市内の異なる建物タイプを選択し、室内ホルムアルデヒド濃度に対して予測シミュレート及び検証を行う。選択される建物タイプは、オフィス、ベッドルーム及び学生の寮などある。選択される部屋は、装飾完了期間が5ヶ月以内の部屋を含むし、装飾完了時間が3年以上の部屋も含み、それにより、室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルの精度を検証する。
【0089】
今回の検証では、使用された室内エマルション塗料のタイプ及び床のタイプが未知状態であるため、室内ホルムアルデヒド濃度を予測するとき、異なるエマルション塗料のタイプ及び床のタイプを用いて室内ホルムアルデヒド濃度を予測し、従って、得られる室内ホルムアルデヒド濃度がある範囲に属し、異なる室内エマルション塗料及び床のタイプでシミュレートされた予測値と実際値とを比較し、モデルの精度を検証する。
【0090】
モデルで予測された結果精度は、正則化された基準偏差e(方程式61)で示され、正則化された基準偏差は、10%以内で許容される。
【数54】
【0091】
式中、
【数55】
【0092】
正則化された基準偏差を計算することで、室内ホルムアルデヒド予測モデルで得られた予測結果の平均値と実際値との正則化された基準偏差eは9.88%であり、該モデルの予測結果が許可される誤差範囲内にあることが説明される。しかし、異なるタイプのエマルション塗料及び床のホルムアルデヒド放出速度モデルを用いて室内ホルムアルデヒド濃度を予測するとき、得られた予測結果には、大きい差がある。エマルション塗料1及びエマルション塗料2のホルムアルデヒド放出速度を用いて室内ホルムアルデヒド濃度を予測するとき、予測結果と実測値との差が大きく、正則化された基準偏差eが10%より大きい。エマルション塗料3のホルムアルデヒド放出速度モデルを用いて室内ホルムアルデヒド濃度を予測するとき、予測値と実測値との偏差が小さく、正則化された基準偏差eが10%より小さく、許可される範囲内にある。
【0093】
従って、室内ホルムアルデヒド濃度を正確に予測するために、室内装飾プランに基づいて室内装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を測定し、さまざまな装飾材料のホルムアルデヒド放出速度予測モデルを作成し、室内ホルムアルデヒド濃度予測モデルに代入する必要がある。
【0094】
室内ホルムアルデヒド濃度の精度をさらに検出するために、実測値を横座標とし、シミュレート値を縦座標とし、室内ホルムアルデヒド濃度の実測値と予測値に対して散布図を作成し、相関性分析を行う。結果は、表8及び図9で示される。
【0095】
【表8】
【0096】
実測及び実測値の相関性分析により、室内ホルムアルデヒド濃度の予測結果は、全体的に、実測値との差が大きくないが、ある程度の偏差がある。しかし、エマルション塗料1及びエマルション塗料2を使用して得られた予測値と実測値との差が大きく、これは、室内エマルション塗料の使用タイプ、及びエマルション塗料1とエマルション塗料2とのホルムアルデヒド放出速度の大きな差により引き起こされる可能性がある。室内ホルムアルデヒド濃度の予測値と実測値に対して相関性分析を行うことで、室内ホルムアルデヒド濃度の予測値が全体的に室内ホルムアルデヒド濃度の実測値より小さいことを発見し、該結果を引き起こす原因は、以下の2点にある可能性がある。第1には、ホルムアルデヒドポータブル検出器の検出結果に所定の偏差があり、室内フェノールなどの物質の存在により、実測される室内ホルムアルデヒド濃度が高くなる可能性があり、第2には、室内の相対湿度が低い。室内ホルムアルデヒド濃度を測定するとき、室内の相対湿度が25%ほどであるが、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度モデルは、相対湿度が50%ほどの場合のホルムアルデヒド放出速度をシミュレートし、他の学者の研究によると、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度と相対湿度とは、反比例関係を呈し、相対湿度が下がり続けると、装飾材料のホルムアルデヒド放出速度が高くなる。そのため、相対湿度が25%の場合、装飾材料の実際のホルムアルデヒド放出速度は、ホルムアルデヒド放出速度モデルで計算される結果より高く、さらに室内ホルムアルデヒド濃度の予測値が実測値より低くなってしまう。
【0097】
予測結果に基づいて分かるように、該モデルは、適切な装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を選択するとき、正確な予測結果を得ることができる。該モデルの実際の使用過程において、室内装飾プランに基づいて装飾材料のホルムアルデヒド放出速度を測定し、さらに装飾材料のホルムアルデヒド放出速度モデルを得、それにより、装飾後の室内ホルムアルデヒド濃度を予測する。
【0098】
以上は、本発明の好適な具体的実施形態にすぎないが、本発明の請求範囲がこれに限られず、いかなる当業者が本発明で開示される技術範囲に、本発明の技術案及びその発明発想に基づいて行った等価置換や変更は、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9