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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075468
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】超伝導ワイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20220511BHJP
   C01G 1/00 20060101ALI20220511BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H01B13/00 565D
C01G1/00 S
H01F6/06 140
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068452
(22)【出願日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0144923
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036349
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515034851
【氏名又は名称】スナム カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】501308812
【氏名又は名称】ケンブリッジ エンタープライズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ドリスコール ジューディス
(72)【発明者】
【氏名】クルスモビック アーメッド
(72)【発明者】
【氏名】フレイアン ジョン
【テーマコード(参考)】
4G047
5G321
【Fターム(参考)】
4G047JA04
4G047JA05
4G047JC02
4G047KA01
4G047KA17
4G047KE02
4G047KF04
4G047KG04
5G321AA04
5G321BA01
5G321CA13
5G321CA21
5G321CA24
5G321DB37
(57)【要約】
【課題】高磁気場で高い臨界電流が流れることができる超伝導ワイヤを提供する。
【解決手段】超伝導ワイヤは、基板、基板の上の超伝導薄膜、及び超伝導薄膜内のピーニングセンターを含む。超伝導薄膜は、Y1-xREBCOを含み、ピーニングセンターはBaYNbO添加物を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にバッファ層を形成し、
前記バッファ層上に超伝導前駆物質を提供して、前記基板上にY1-xREBCOを含む超伝導薄膜を形成することを含み、
前記超伝導前駆物質は、Y+RE、Ba、及びCuを含むソースを使用して提供され、
前記ソースは、化学量論的なYBCOに比べてY+RE及びCuを豊富に含有する超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項2】
0.5<x<0.95である請求項1に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項3】
前記REは、Yb、Sm、又はこれらの組み合わせである請求項1に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項4】
前記ソースは、BaYNbO添加物をさらに含む請求項1に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項5】
前記REは、Yより小さいイオン半径を有する第1元素及びYより大きいイオン半径を有する第2元素を含む請求項1に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項6】
前記第1元素は、Ybを含み、前記第2元素は、Smを含む請求項5に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項7】
前記超伝導前駆物質は、800~850℃の範囲で提供される請求項1に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項8】
前記超伝導薄膜は、Y及び液体をさらに含む請求項1に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項9】
基板上にバッファ層を形成し、
前記バッファ層上に超伝導前駆物質を提供して、前記基板上にY1-xREBCOを含む超伝導薄膜を形成することを含み、
前記超伝導前駆物質はY+RE、Ba、及びCuを含むソースを使用して提供され、
前記REは、Yより小さいイオン半径を有する第1元素及びYより大きいイオン半径を有する第2元素を含む超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項10】
前記第1元素は、Ybを含み、前記第2元素は、Smを含む請求項9に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項11】
前記ソースは、BaYNbO添加物をさらに含む請求項10に記載の超伝導ワイヤ形成方法。
【請求項12】
基板と、
前記基板の上の超伝導薄膜と、
前記超伝導薄膜内のピーニングセンターと、を含み、
前記超伝導薄膜は、Y1-xREBCO及び液体を含み、
前記ピーニングセンターは、BaYNbO添加物を有する超伝導ワイヤ。
【請求項13】
前記REは、Yより小さいイオン半径を有する第1元素及びYより大きいイオン半径を有する第2元素を含む請求項12に記載の超伝導ワイヤ。
【請求項14】
前記第1元素は、Ybを含み、前記第2元素は、Smを含む請求項13に記載の超伝導ワイヤ。
【請求項15】
前記BaYNbO添加物は、柱形状を有する請求項12に記載の超伝導ワイヤ。
【請求項16】
前記柱はc-軸方向を有する請求項15に記載の超伝導ワイヤ。
【請求項17】
前記柱は、3~10nmの直径を有し、互いに10~30nmの間隔に離隔された請求項15に記載の超伝導ワイヤ。
【請求項18】
基板と、
前記基板の上の超伝導薄膜と、
前記超伝導薄膜内のピーニングセンターと、を含み、
前記超伝導薄膜は、Y1-xREBCOを含み、前記ピーニングセンターは、BaYNbO添加物を有し、
前記REは、Yより小さいイオン半径を有する第1元素及びYより大きいイオン半径を有する第2元素を含む超伝導ワイヤ。
【請求項19】
前記第1元素は、Ybを含み、前記第2元素は、Smを含む請求項18に記載の超伝導ワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超伝導ワイヤに係る。
【背景技術】
【0002】
超伝導体は臨界温度の以下ではすべての電気抵抗が消えて損失なしで多い量の電流が超伝導体を通じて流れることができる。最近、二軸配向された集合組織を有する薄い緩衝層又は金属基板上の超伝導薄膜を含む2世代高温超伝導ワイヤ(Coated Conductor)に対する研究が進行されている。金属超伝導体に比べて、2世代高温超伝導体は著しく優れた単位面積当たり電流輸送能力を有することができる。2世代高温超伝導ワイヤは低電力損失の超伝導送電ケーブル、MRI、超伝導磁気浮上列車、超伝導推進船舶等のような分野で利用されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は高磁気場で高い臨界電流が流せることができる超伝導ワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は超伝導ワイヤ形成方法を提供する。超伝導ワイヤ形成方法は、基板上にバッファ層を形成し、そして前記バッファ層上に超伝導前駆体を提供して、前記基板上にY1-xREBCOを含む超伝導薄膜を形成することを含み、前記超伝導前駆体はY+RE、Ba、及びCuを含むソースを使用して提供され、前記ソースは化学量論的なYBCOに比べてY+RE及びCuを豊富に含有する。
【0005】
一実施形態で、0.5<x<0.95である。
【0006】
一実施形態で、REはYb、Sm、又はこれらの組み合わせである。
【0007】
一実施形態で、前記ソースはBaYNbO添加物をさらに含むことができる。
【0008】
一実施形態で、REはYより小さいイオン半径を有する第1元素及びYより大きいイオン半径を有する第2元素を含むことができる。
【0009】
一実施形態で、前記第1元素はYbを含み、前記第2元素はSmを含むことができる。
【0010】
一実施形態で、前記超伝導前駆体は800~850℃の範囲で提供されることができる。
【0011】
一実施形態で、前記超伝導薄膜はY及び液体をさらに含むことができる。
【0012】
超伝導ワイヤ形成方法は、基板上にバッファ層を形成し、そして前記バッファ層上に超伝導前駆体を提供して、前記基板上にY1-xREBCOを含む超伝導薄膜を形成することを含み、前記超伝導前駆体はY+RE、Ba、及びCuを含むソースを使用して提供され、そしてREはYより小さいイオン半径を有する第1元素及びYより大きいイオン半径を有する第2元素を含むことができる。
【0013】
一実施形態で、前記第1元素はYbを含み、前記第2元素はSmを含むことができる。
【0014】
一実施形態で、前記ソースはBaYNbO添加物をさらに含むことができる。
【0015】
本発明は超伝導ワイヤを提供する。超伝導ワイヤは、基板と、前記基板の上の超伝導薄膜と、前記超伝導薄膜内のピーニングセンターと、を含み、前記超伝導薄膜はY1-xREBCO及び液体を含み、そして前記ピーニングセンターはBaYNbO添加物を有する。
【0016】
一実施形態で、REはYより小さいイオン半径を有する第1元素及びYより大きいイオン半径を有する第2元素を含むことができる。
【0017】
一実施形態で、前記第1元素はYbを含み、前記第2元素はSmを含むことができる。
【0018】
一実施形態で、前記BaYNbO添加物は柱形状を有することができる。
【0019】
一実施形態で、前記柱はc-軸方向を有することができる。
【0020】
一実施形態で、前記柱は3~10nmの直径を有し、互いに10~30nmの間隔に離隔されることができる。
【0021】
本発明は超伝導ワイヤを提供する。超伝導ワイヤは、基板と、前記基板の上の超伝導薄膜と、前記超伝導薄膜内のピーニングセンターと、を含み、前記超伝導薄膜はY1-xREBCOを含み、前記ピーニングセンターはBaYNbO添加物を有し、REはYより小さいイオン半径を有する第1元素及びYより大きいイオン半径を有する第2元素を含む。
【0022】
一実施形態で、前記第1元素はYbを含み、前記第2元素はSmを含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高磁気場で高い臨界電流が流せることができる超伝導ワイヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付する図面は本発明の概念に対するさらに深い理解を提供し、本明細書の一部を構成する。図面は本発明の概念に係る例示的な実施形態を示し、詳細な説明と共に本発明の概念の原則を説明するために使用されることができる。
図1】本発明に係る超伝導ワイヤの断面図を示す。
図2】本発明に使用された試料の組成を示す。
図3】Y-Ba-Cuの3元係相平衡図(ternary phase diagram)を示す。
図4】本発明に使用される試料の組成を有する粉末に対する示差走査熱量法(Differential Scanning Calorimetry:DSC)スキャンを示す。
図5図4に使用された組成に対してN下でDSCによって測定された共晶温度(eutectic temperature)及び包晶温度(peritectic temperature)を示す。
図6図2に図示されたY123+liquid薄膜の成長温度Tc、cパラメータ、XRD θ-2θ曲線、及びω曲線での(005)ピークの半値幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)を示す。
図7】すべての組成と、それらの構造的特徴に対する情報、そして他のH及びTでの薄膜のTc及びJcを示す。
図8A】LAP方法で成長された薄膜のXRD θ-2θスキャンを示す。
図8B】LAP方法で成長された薄膜のXRD θ-2θスキャンを示す。
図9A図2に図示されたY123+liquid薄膜のSEM表面イメージを示す。
図9B図2に図示されたY123+liquid薄膜のSEM表面イメージを示す。
図10】丸いパーティクルを示すY123+liquid薄膜のEDXマッピングを示す。
図11】70Kから11Tまでの磁気場B∥cに対するJc図表を示す。
図12】50Kから11Tまでの磁気場B∥cに対するJc図表を示す。
図13】30Kから11Tまでの磁気場B∥cに対するJc図表を示す。
図14】10Kから11Tまでの磁気場B∥cに対するJc図表を示す。
図15A】Y123+liquid+BYNO薄膜の断面TEMイメージを示す。
図15B図15Aの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の概念に係る例示的に実施形態が添付する図面を参照してより詳細に説明される。しかし、発明の概念はここで説明される実施形態に限定されなく、他の形態に具体化されることもあり得る。むしろ、このような実施形態は開示された内容が徹底であり完全になるように、そして当業者に本発明の概念が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。また、例示的に実施形態が記述されるので、説明の順に応じて提示される参照符号はその順に必ず限定されることではない。
【0026】
本発明は高磁気場で高い臨界電流が流れることができるアプリケーションに対するものである。また、さらに低コストの伝導体を目標とする。これは磁気ボルテックス(magnetic vortex)の強いピーニング(pinning)を有し、速い成長速度に薄膜を形成することを要求する。
【0027】
速い成長速度を得るために、成長の間に液体の存在が非常に有益である。高磁気場での強いピーニングを得ることによって、混合ピーニングモルフォロージー(mixed pinning morphology)、即ち細長い1D(柱状型)人工ピーニングセンター(artificial pinning centers:APCs)及び0Dと類似な点型欠陥(point defects)を必要とする。
【0028】
速い成長速度に高性能の前述した目標を得るために、PLDでの液体補助工程(Liquid Assisted Processing LAP)が開発されて来た。LAPは、非化学量論的ターゲットを使用して少ない量の液体部分(例えば、~6vol.%)が成長する間に薄膜に結合される簡単なインシチュー工程である。この方法は広い範囲の物理的又は化学的蒸着工程に適用されることが期待される。
【0029】
本発明は柱状型のAPC及び等方性の低次元点型ピーニング欠陥(point pinning defects)の全てを有する混合ピーニング(mixed pinning)を生成する。薄膜内に柱状型のAPCを生成するために、液体の存在下で、あるAPCが形成されるかに対する選択が必要である。
【0030】
点型ピーニング欠陥は混合希土類(mixed rare-earths)のREBCO薄膜を使用して形成される。即ち、異なる原子サイズの少なくとも2つの希土類を使用してRE11-xRE2BCO薄膜が生成される。REイオンのサイズでの差(イオンサイズの分散)は格子内の限られた領域でのストレインを誘導する。前記ストレインは潜在的にピーニングサイトとして機能することができる。その上に、Ba2+イオンと類似なサイズを有する希土類イオンで、Ba-RE相互交換(cross substitution)は追加的な点型欠陥を生成する。成長温度がRE1に最適化されるように、RE11-xRE2BCOでのxは小さくする必要がある。仮にxが大きい場合、成長温度はRE1又はRE2の全てに最適化されず、これは全体的に悪い結晶性及びCuO平面の不規則なバックリング(buckling)を誘導する。これらのすべては超伝導性に重大である。xは0.5<x<0.95である。
【0031】
混合希土類を有する試料は77Kで穏やかに向上された性能を示している。しかし、そのような点型欠陥が最も有益であることはさらに低温であり、点型欠陥は低度でボルテックスピーニング力(vortex pinning force)に大きく寄与することである。
【0032】
図1は本発明に係る超伝導ワイヤの断面図を示す。図1を参照して、超伝導ワイヤ100は基板10、バッファ層20、シード層30、及び超伝導薄膜40を含むことができる。
【0033】
基板10は二軸配向された集合構造(biaxially aligned textured structure)を有することができる。基板10は金属基板である。金属基板10はニッケル(Ni)、ニッケル合金(Ni-W、Ni-Cr、Ni-Cr-W等)、ステンレス鋼、銀(Ag)、銀合金、ニッケル-銀複合物を含むことができる。これらは熱間圧延(hot rolled)される。基板10はCC(coated conductor)のためにテープ形状を有することができる。
【0034】
バッファ層20は順次的に積層された拡散防止層(例えば、Al)、Y、及びMgO層を含むことができる。バッファ層20はIBAD方法で形成されることができる。エピタキシャル成長されたホモエピ-MgO層がバッファ層20の上にさらに形成されることができる。追加層がバッファ層20の上にさらに形成されることができる。追加層はLaMnO、LaAlO又はSrTiOを含むことができる。追加層はスパッタリング方法で形成されることができる。バッファ層20及び追加層は金属基板と超伝導物質との間の反応を防止することができ、二軸配向された集合構造の結晶特性を伝達することができる。
【0035】
シード層30はバッファ層20の上に形成される。シード層30は、例えばジルコニウム酸化物、ジルコニウム、スズ酸化物、チタニウム酸化物、チタニウム、ハフニウム酸化物、ハフニウム、イットリウム酸化物、セシウム酸化物、又はセシウムを含むことができる。ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、チタニウム酸化物、ハフニウム酸化物、イットリウム酸化物、セシウム酸化物等のような金属酸化物はバリウムをさらに含むことができる。シード層30はスパッタリング方法又は電子ビーム方法で形成されることができる。
【0036】
超伝導薄膜40はシード層30の上に形成されることができる。超伝導薄膜40はLAP方法で形成される。
【0037】
(実験例)
図2は本発明に使用された試料の組成を示す。ソース(例えば、PLDターゲット)はY、Ba(NO、及びCuOの単一上粉末から形成されることができる。必要であれば、Sm、及びYbの粉末が追加されることができる。すべての粉末は適切な量が秤量され、混合、研磨、圧着され、最終的に酸素雰囲気で24時間の間に850℃に反応された。その次に、ソースは再研磨され、均質性を保障するために、再焼結され、完全な反応生じた。図2を参照して、(a)Y123、(b)Y123+liquid、(c)(Y、Yb)123+liquid、(d)(Y、Sm)123+liquid、(e)(Y、Yb、Sm)123+liquid、(f)Y123+liquid+BYNO、及び(g)(Y、Yb、Sm)123+BYNOのような7つの他の組成ソースが作られた。6つの組成((b)~(g))はLAP方法で作られた。組成(a)はLAP方法を使わなく、作られ、参照試料として使用される。
【0038】
4つの混合REソース(c)、(d)、(e)、及び(g)でYの原子比は80%であり、したがって成長温度はすべての薄膜で同様に維持される。80at.%Yの均衡を合わせるために、即ち化学量論を合わせるために、RE添加物が20%追加された。
【0039】
マトリックス希土類(Y3+)より小さい希土類(Yb3+)、より大きい希土類(Sm3+)又はこれらの混合(Yb3+、Sm3+)が使用された。
【0040】
2つのREソース(f)及び(g)は2~10mol.%(例えば、5mol.%)BaYNbO(BYNO)の添加物を有する。単一相のBYNO粉末に対して、Y、Ba(NO、及びNbの粉末が秤量され、混合、研磨、圧着され、最終的に酸素雰囲気で24時間の間に1450℃に反応された。その次に、BYNO粉末5mol.%(組成比に)はYBCO粉末と混合され、圧着、及び酸素雰囲気で12時間の間に950℃に焼結された。BYNO添加物は、相対的に高い成長速度(>1nm/s)でも、強いc-軸ピーニング(純粋なYBCO薄膜に比べてH∥cのJcは2倍まで)を生成する。したがって、BYNO APCは、他のAPCではできない、高い成長速度でナノ柱(nanocolumns)に自己組み立てられる(self-assemble)ことができる。LAPは速い成長方法であるので、速い成長速度でナノ柱(ナノ粒子よりは)に組み立てられるAPCを使用することが重要である。
【0041】
図3は低いpO(<0.1Torr)及び800℃でのY-Ba-Cuの3元係相平衡図(ternary phase diagram)を示す。平衡状態で期待される相(phase)は関心ある組成周囲のequilibrium tie triangle(a)に与えられるが、動力学的及びエピタキシャル成長効果はこれを変形してYBCO、液体及びYの形成(‘kinetic’ tie triangle(b)に示される)を誘導する。この場合、一部の組成は他の希土類を20%有するが、相平衡図は純粋なYと質的に同一であることと看做される。
【0042】
全てのソース(例えば、PLDターゲット)に使用される(Y+RE):Ba:Cu比率の位置は図3の相平衡図でtriangle(b)で表示される。簡易のために、Y+REではなく、単なるYのみが示される。図2に図示されたように、組成(b)~(g)は(Y+RE):Ba:Cuの比率=1:1.7:2.7を有する。即ち、ソースはYBCOに対比してY+RE及びCuが豊富である(仮にBa=2に正規化すれば、1.18:2.00:3.18になる)。したがって、前記ソースは化学量論的な組成(a)の1:2:3に比べて、Y+RE及びCuの全てが豊富である。
【0043】
図3を参照して、1:1.7:2.7組成は(Y+RE)BCO、液体及びYBaCuOの混合物を形成する(triangle(a)参照)。しかし、c-軸配向された(Y+RE)BCOを形成することに応じる動力学的な要因及びエピタキシーの安定化のため、LAP成長の間に(Y+RE)BaCuOの代わりに(Y+RE)が薄膜内に形成される。したがって、形成される相(phase)は‘kinetic’ tie triangle(b)の頂点での相、即ち1:2:3+liquid+Yである(ここで、簡易化のために、(Y+RE)混合組成は無視される)。液体境界の位置は成長中に発見される状態下で正確に分からず、図3のように予測される。しかし、‘kinetic’ tie triangle(b)で表示された位置を仮定して、相(phase)比率の近似によれば、成長中のYBCO、Y及び液体のmol.%又は大略的vol.%(原子当たり同一体積を仮定)は各々88mol.%、10mol.%、及び2mol.%、又は91vol.%、3vol.%、及び6vol.%である。
【0044】
図4は本明細書に論議される組成の粉末に対する示差走査熱量法(Differential Scanning Calorimetry:DSC)スキャンを示す。DSC測定は研磨され、焼結されたソース物質の約10mgに対してTA Instruments Q600 SDTを使用して遂行された。窒素雰囲気で、加熱速度は15℃/minであった。図5図4に使用された組成に対してN下でDSCによって測定された共晶温度(eutectic temperature:TE)及び包晶温度(peritectic temperature:TP)を示す。
【0045】
図4及び図5を参照して、他の組成に対して窒素雰囲気で液体形成の開始温度(TE及びTP)が得られた。窒素が豊富な雰囲気のため、TPは空気に比べて~50℃減少する。追加に、ドーピングされた試料の溶融ピークは組成(a)に比べてさらに低い温度にある。
【0046】
純粋なYBCO、即ちY123(組成(a))は単なるTPのみが示される。これはその組成が化学量論的であるためである。反面に、液体補助組成(liquid assisted composition)は、TP温度より低い、809.4~835.2℃のTE溶融ピークを示す。これは低いpOでのBaCu液体溶融温度と相応する。TPは、またY123+liquid(組成(b))の937.5℃に比べて、(Y、Sm)123+liquid(組成(d))は956.9℃で、さらに高い。これは、Y123が1005℃であることに比べて、Sm123が1060℃で、さらに高い溶融温度を有するためであることと予想される。類似に、(Y、Yb)123+liquid(組成(c))のTPは932.6℃で、Y123(組成(a))より低い。これはY123に比べてYb123のTPがさらに低いためであることと予想される。3つの希土類を有する(Y、Yb、Sm)123+liquid(組成(e))は2倍広いピークを示し、このようなピークから決定されたTE及びTPは各々811.1℃及び940.8℃であった。これらはYbを含有する組成にさらに類似であり、2つの相(phases)の形成及び相分離(phase separation)の存在を暗示する。その上に、BYNOでドーピングされた組成はBYNOがない組成と類似なTE及びTPを有する。BYNO追加による溶融温度のわずかに小さい変化はBYNOがY123システムと反応しないためであることと予想される。
【0047】
共晶温度及び包晶温度データは薄膜に使用される適正成長温度の理解をガイドする。LAP工程に必要である最小条件は液体の存在である。これはTEを少し上回って動作することを意味する。800~850℃(例えば、820℃)はすべての組成で適切な温度である。(基板及びバッファ層が安定的に残っているかぎり)さらに高い温度がよい。しかし、TE及びTP値は組成に応じて25℃より多く変わるため、各々の特定組成での個別的な最適の成長温度の範囲がある。
【0048】
すべての薄膜はソースからバッファ層上に超伝導前駆物質を提供して成長される。パルスレーザー蒸着(PLD)のために、Lamba Physik社のKrFエキシマレーザー(λ=248nm、フルエンス(fluence)~2J/cm2)が使用された。レーザーパルス反復率は50Hzであり、~250nm/minの速度に成長された。この成長速度は標準YBCOPLD薄膜の成長速度より大略4~60倍程度速い。このような高い成長速度は成長の間に薄膜に液体の存在によって可能である。すべての薄膜の成長pOは200mTorrであり、成長の後、薄膜は760Torr pO下の500℃で1時間の間に酸化された。すべての薄膜は350nm±20nmの厚さを有する。薄膜の蒸着温度は750℃~850℃範囲であり、ヒーターの温度は通常的な熱電対P.I.D.制御器によって調節された。
【0049】
このような温度範囲で成長された後、(005)X-rayピークの半値幅(FWHM)の最も低い値から、非常に高い完璧な結晶性及び最も高いTc及びJc(77K、self-field)を示す、最適成長温度が決定された。最適成長温度は以下のように800℃~850℃(好ましくは810℃~830℃、さらに好ましくは約820℃)であった。
【0050】
転移温度(Tc)及び臨界電流密度の磁気場依存性(Jc(B))は通常的な4-ポイントプローブ方法で測定された。臨界電流密度の測定は1μV/cm条件の最大ローレンツ力構成を使用し、25μm幅ブリッジを有するように試料が蝕刻された。ブリッジは標準フォトリソグラフィー方法を使用してパターニングされ、高品質の接触のために銀コンタクトが蒸着された。測定の後、Dektak stylus profilometerを使用して薄膜の厚さが測定された。
【0051】
CuKα放射線を利用するPhilips社のPW3020回折分析器が構造分析のために使用された。Bragg-Brentano幾何構造のX-線回折及び(005)YBCOピーク(最も高強度の(00I)ピーク)のロッキング曲線(rocking curve)が薄膜に存在する相(phases)及びそれらのエピタキシー品質を研究するために使用された。FEI Nova社のNanoSEMを使用した走査電子顕微鏡で薄膜表面を調査した。断面透過電子顕微鏡(TEM)が使用されて、YBCOマトリックス内に含有されたBYNOナノ物質をイメージングした。
【0052】
図6図2に図示されたY123+liquid(組成(b))薄膜の成長温度、Tc、cパラメータ、XRD θ-2θ曲線、及びω曲線での(005)ピークの半値幅(FWHM)を示す。
【0053】
Y123+liquid(組成(b))で、最も高いTc(91.2K)は820℃で成長された薄膜で測定された。図5に図示されたように、このような成長温度はこの組成でのTEより~15℃低い。しかし、成長雰囲気のpOはさらに低いので、ここでの溶融可能性は非常に高い。820℃の成長温度は最も高いTcのみならず、最小の(005)θ-2θピークFWHM、最小の(005)ω-スキャンピークFWHM、及び最も低いcパラメータ(820℃及びその以上で停滞される)を提供する。このようなすべてのパラメータは820℃付近で最適の完璧な結晶性を示す。820℃以上でのTcの低下は820℃に比べてさらに多い部分の液体が基板と微細に相互反応することに関連される可能性がある。
【0054】
図6を参照して、組成(b)に対して、最も高いTcは構造的無秩序の最も低いレベル((005)ピークFWHMから決定される)及び最も小さいcパラメータと一致する。これらは最適の結晶完璧度を示す。これは820℃で発生し、820℃は200mTorrのpO雰囲気での液体の存在下に薄膜が成長される温度である。この温度は、充分な液体の存在のために、REBCO PLD成長に典型的に使用されることより30℃さらに高い。
【0055】
図7はすべての組成、及びそれらの構造的特徴に対する情報、及び他のH及びTでの薄膜のTc、Jcを示す。Tc及びcパラメータは最適成長温度(例えば、820℃)でのことである。θ-2θ及びω-スキャンの(005)ピークの低いFWHMから決定されるように、薄膜は全て通常のYBCO(組成(a)のY123と称される)より良く配向され、優れた結晶性を有した。
【0056】
図7を再び参照して、LAP方法で成長されない化学量論的に純粋なYBCO(Y123、組成(a))薄膜は79.1Kの低いTcを有する。これは液体の存在無しで成長されたためである。このようなさらに低いTcはそのような速い成長速度で誘導される構造的無秩序に起因することができる。11.72Åのcパラメータは低い速度に成長されたYBCO薄膜で発見される11.69Åのバルク値に比べて大きく、僅かの陽イオン無秩序(cation disorder)を示す。
【0057】
混合RE薄膜で、cパラメータの傾向は希土類のサイズによって予測されるパターンに従う。(Y、Yb)123+liquid(組成(c))薄膜は最も小さいcパラメータ値(11.67Å)を有し、(Y、Sm)123+liquid(組成(d))薄膜は最も大きいcパラメータ値(11.74Å)を有し、そして(Y、Yb、Sm)123+liquid(組成(e))薄膜はそれらの間のcパラメータ値(11.71Å)を有する。LAPで形成された混合RE(組成(c)、(d)、及び(e))薄膜のTcはLAPで形成された純粋YBCO(組成(b))薄膜より低い。混合RE薄膜の中で、(Y、Yb、Sm)123+liquid(組成(e))薄膜は、(Y、Yb)123+liquid(組成(c))薄膜と(Y、Sm)123+liquid(組成(d))薄膜より3Kさらに高い、最も高いTc(88.4K)を有する。これはこのような薄膜の平均RE(即ち、大きいSm、中間Y及び小さいYbの平均)イオン半径1.03Åが純粋なYの半径1.02Åに近いためである。反面、これは他の組成では相当に大きいか、或いは小さい。
【0058】
BYNOを含有する薄膜(組成(f)及び(g))のTcはBYNOを含有しない薄膜(組成(b)及び(e))より少し低い(2Kくらい)。これはAPCによるREBCO格子の構造的混乱(perturbation)に起因する二次相(secondary phase)を含むREBCO薄膜で共通である。これは組成(f)薄膜でのθ-2θスキャン及びω-スキャンの(005)ピークでのさらに大きいFWHM値(即ち、各々~0.34°及び~0.53°)であるから明らかである。反面、cパラメータに対する限界効果(marginal effect)のみがあった。これは以前のBYNOドーピングされたYBCOで研究されたことと一致する。したがって、構造的崩壊(即ち、平面のバックリング及びグレインのティルティング)はあるが、REBCO格子に誘導された陽イオン無秩序は概ね又はまったくなかった。
【0059】
混合RE薄膜での構造的崩壊はθ-2θスキャン及びω-スキャンの(005)ピークでのさらに大きいFWHMを誘導することと期待される。これは混合RE薄膜の全てに該当される。最も大きい構造的無秩序及び最も低いTcを有する(Y、Sm)123+liquid(組成(d))薄膜は最も大きいθ-2θFWHM値を有する。(Y、Sm)123+liquid(組成(d))薄膜は~0.52°のθ-2θFWHMを有する。これに比べて、Y123+liquid(組成(b))薄膜は~0.32°を有する。(Y、Sm)123+liquid(組成(d))薄膜はすべての薄膜の中で最も大きいω-scanFWHM値(即ち、~0.59°)を有する。これに比べて、Y123+liquid(組成(b))薄膜は0.40°を有する。
【0060】
図8A及び8BはLAP方法で成長された薄膜のXRD θ-2θスキャンを示す。θ-2θラベルで、*=(00l)YBCOピーク、+=004REピーク、U=(200)CuOピーク、o=(400)BYNOピーク、^=(00l)(基板)STOピークである。
【0061】
図8Aは非ドーピングLAP方法によって作られた最適化されたYBCO薄膜(即ち、Y123+liquid(組成(b))のXRD θ-2θスキャンを示す。混合RE薄膜は鋭い(00l)ピーク及び類似な2次相のピークで非常に類似なパターンを示した。図8BはLAP方法によって作られ、BYNOでドーピングされた(即ち、Y123+liquid+BYNO(組成(f))薄膜を示す。c-軸配向されたBYNOナノ柱が形成されたことを示す綺麗な(400)BYNOピークが発見された。これは薄膜の断面のTEMイメージから確認された(以後の図13及び図14で論議される)。このような薄膜及びLAP方法で成長されたすべての他の薄膜でのX-線パターンで観察される他の上はY+CuOである。Y+CuOは液体加工による薄膜で共通的に観察される相である。蒸着の後、薄膜が冷却される間に液体からCuOが形成され、YBCOが結晶化される時、エピタキシー安定化され、超過されたYによってYが形成される。
【0062】
図9A及び図9BはY123+liquid(組成(b))薄膜のSEM表面イメージを示す。LAP薄膜での液体の存在がSEMに示される。図9Aを参照して、(矢印と拡大写真によって表示された)丸い2次相の粒子が示される。図9Bを参照して、(矢印と拡大写真によって表示された)非常に滑らかな領域によって囲まれた浅いホールが示される。
【0063】
図10は丸いパーティクルを示すY123+liquid(組成(b))薄膜のEDXマッピングを示す。丸い又は小さい多面(faceted surface)の粒子にはCuが豊富である。これは固形化されたCu豊富な液体の存在を暗示する。このような液体は図3の相平衡図で明らかである。浅いホールはこれが冷却されて固形化される時、液体の収縮によって生成されたことと見られ、結晶化された液体から形成された表面を示す。
【0064】
図11乃至図14は各々70K、50K、30K、及び10Kで11Tまでの磁気場(B∥c)に対するJc図表を示す。
【0065】
点間の線は単なる見安くするためのガイドである。図面は少なくとも2つの区別される領域が存在することを示す。高い温度(70K及び50K)で、3つの他の領域が見られる。第1番目の領域は磁気場が1Tから2Tに増加する区間であって、ナノ柱を含有する薄膜での特徴である。第2番目の領域ではJc~B-αで与えられるαの指数関数的に減少する。第3番目の領域では磁気場が増加することに応じてJcが急速に減少する。
【0066】
第1に、Y123+liquid(組成(b))薄膜は、LAP方法なしで、しかし、同一な速度に成長された、化学量論的な純粋なYBCO(Y123、組成(a))薄膜より相当にさらに大きい(多い磁気場及び温度で10倍以上)Tc及びJcを有する。LAP薄膜での速い拡散速度はさらに高品質結晶質のREBCO格子が形成されるようにし、したがって化学量論的な純粋なYBCO(Y123、組成(a))薄膜より構造的攪乱が非常に少ないので、非常に向上されたTc及びJcを有するようにする。点型無秩序(point-like disorder)が高成長速度によって誘導されても、これは非常に速く成長された化学量論的なYBCOでも期待されるので、これ自体のみではJc増加に効果的ではないことが明確であるので、重要な結果である。代わりに、REBCO格子自体は大きく攪乱されるか、或いは崩壊されないように、特に、CuO平面のバックリング又は分離の観点で、(速い成長又は希土類の混合によって)REBCOに誘導された無秩序は注意深く設計される必要がある。
【0067】
第2に、混合RE薄膜のJcは一般的に高く、温度が減少すれば、Y123+liquid(組成(b))薄膜に比べてさらに高くなる。混合RE薄膜での高いJc値は図7に図示された“50K、5T”及び“10K、10T”で示された。ここで、薄膜に液体を導入することは、速い成長速度が使用される場合でも、RE混合からの内在的無秩序がピーニングに効果的であることが可能である。高いJcを与えるRE混合を使用する長所は速い成長速度に成長された薄膜で以前に報告されなかった、液体無し状態での動力学(kinetics)は、RE11-xRE2BCOでのRE1とRE2イオンのサイズの差に関連された高濃度の原子無秩序から誘導された、長距離無秩序(long range disorder)を‘治癒’するのに不十分である。
【0068】
図11を参照して、70Kで、FWHM値が同一な薄膜で、肯定的APCピーニング効果のためBYNOが追加されたAPC薄膜は磁気場の下の(in-field)優れたJcを有することが期待される。このような理由で、最も優れた性能の薄膜はY123+liquid+BYNO(組成(f))である。(Y、Yb、Sm)123+liquid+BYNO(組成(g))薄膜はその次の順番になることと期待される。しかし、このような測定温度で、が薄膜のTcは重要である:91Kから多く減少すれば、これは全体的に性能を低下させることである。組成(g)のTcはRE混合によって86.6Kにわずかに減少するので、純粋なY123+liquid(組成(b))薄膜は2番目の位置を占め、(Y、Yb、Sm)123+liquid+BYNO(組成(g))が第3番目である。この後は、それ以上のAPCドーピング薄膜が無いので、Jcの傾向は単純にTcの傾向に従う:即ち、(Y、Yb、Sm)123+liquid(組成(e))薄膜、(Y、Yb)123+liquid(組成(c))薄膜、(Y、Sm)123+liquid(組成(d))薄膜、そしてY123(組成(a))薄膜の順に。RE混合による点型ピーニングセンター(point pinning center)はこのような温度で容易に熱的にディピニング(depinning)されて、有利な点が無くなる。
【0069】
図12を参照して、50Kで、(Y、Yb、Sm)123+liquid+BYNO(組成(g))薄膜は70Kでのデータと比較して相対的に向上された性能を示して、Y123+liquid+BYNO(組成(f))薄膜の89.3Kより低いTc(86.6K)を有するが、これに近接する。これはRE混合効果によってこのような薄膜での強いピーニング、継続してBYNOAPCピーニング、そしてTcの重要性の低さを示す。(Y、Yb、Sm)123+liquid(組成(e))薄膜は、X-線データによって示されるように低い結晶性にも拘らず、また70Kデータと比較して相対的に向上された性能を示す。次に、(Y、Sm)123+liquid(組成(d))薄膜は、組成(g)及び(e)程度ではないが、70Kに比べて上昇された位置に動く。これは図7に図示された他のLAP薄膜に比べて組成(d)薄膜のTc(86.9K)及び結晶性が全体的に悪いためである可能性が高い。この結果は希土類混合によって誘導された追加的な点型無秩序が効率的なピーニングセンターとして作用することを示す。このような欠陥は、混合希土類の異なるサイズによって発生される、結晶構造でのナノ-ストレイン場(nano-strain field)である。前述したように、LAP工程ではない方法で成長された混合RE薄膜は効率的な点型ピーニングを生成しない。これは、多い遠い長距離崩壊を‘治癒’する液体が無い場合、REBCO格子の遠い長距離崩壊のためである。
【0070】
図13を参照して、30Kで、Y123+liquid+BYNO(組成(f))薄膜は薄膜の中で最も優れた性能を示して、ナノ柱によるピーニングの強力な影響を示す。混合希土類を有する薄膜は50Kと比較して30Kで類似に優れた性能を示す。したがって、(Y、Yb、Sm)123+liquid+BYNO(組成(g))薄膜は概ねY123+liquid+BYNO(組成(f))薄膜ぐらいの優れる性能を有する。しかし、純粋なY123+liquid(組成(b))は50K及び70Kに比べて遅れて悪くなる。これはAPC又は点型ピーニングセンター(point like pinning center)が無いためである。(Y、Yb、Sm)123+liquid(組成(e))薄膜は50Kと類似にその次に優れる。その次に、興味深いことに、さらに高い温度に比べて、(Y、Sm)123+liquid(組成(d))薄膜が(Y、Yb)123+liquid(組成(c))薄膜と順序を変える。これは組成(d)薄膜のさらに低いTcの効果が減少するためである(組成(d)薄膜はすべての薄膜の中で最も低いTc(86.9K)及び最も悪い結晶性を有する)。代わりに、RE混合による点型ピーニングはさらに効果的に機能し始め、組成(c)に比べて組成(d)でこのような点型ピーニングがさらに多い。全体的に、30KデータはAPC及びRE混合に関連された点型ピーニング全てJc(B)を決定するのに重要な要因として作用し、このような低温での低下されたTcの効果は高温での測定に比べて減少することを示す。
【0071】
図14を参照して、10Kで、最適性能の薄膜は(Y、Yb、Sm)123+liquid+BYNO(組成(g))薄膜である。これは30Kで最適なY123+liquid+BYNO(組成(f))薄膜を上回る。このデータは低温でAPC及び混合REの点型ピーニングの全てが重要な役割をすることを追加的に証明する。希土類の混合によって発生する点型ピーニングの重要性は最も低い低温で相当に増加される。このような点型ピーニングはAPC柱で発生するさらに強いピーニング欠陥を効果的に補完する弱い0D類型のピーニングを提供し、4-60倍速い成長速度にも拘らず、これは10Kで非常に大きいピーニング力をもたらす。
【0072】
類似な速度に成長された他の液体プロセス薄膜(例えば、株式会社西南で作られたエクスシチュ薄膜)に比較してこのような薄膜の性能の観点で、本発明に係る薄膜のJcは3Tで3倍以上まで大きく、5Tで6以上さらに大きい。また、BaZrO及びBaY(Nb、Ta)Oピーニング添加物を有する標準化学量論的YBCO薄膜に比較して、前記のインシチューLAP薄膜は70Kで30Kの範囲で類似な性能を示し、4~60倍速い成長速度にも拘らず、10Kでこのような標準APC薄膜を(2倍まで)上回る。
【0073】
図15AはY123+liquid+BYNO(組成(f))薄膜の断面TEMイメージを示す。図15B図15Aの拡大図である。希土類混合による点型欠陥はTEMによってイメージング不可能であるが、薄膜に添加されたBYNO APC添加物の特性を確認することが相変わらず重要である。
【0074】
図15A及び図15Bを参照して、c-軸配向されたBYNOナノ柱が示される。ここで、BYNOナノ柱は非常に速い成長速度(これは一般的にAPCが良く形成された柱(well-formed columns)に組み立てられることを妨害する)にも拘らず、組み立てられる時間を有する。柱は約3~10nmの直径を有し(図15Bでは約5nm)、約10~30nm間隔を有し、互いの上に積層された約40nmの長い部分を有する。柱間のYBCO格子は稠密であり、微細な柱の間で非常に良く配列されている。前記柱はAPCの標準成長条件下で報告された柱の厚さよりさらに短く、これは動力学的な限界のためではなく、YBCOとの大きい格子不一致を有するBYNOに関連された熱力学的な要因及びストレインのためである考えられる。
【0075】
BYNO柱はB∥cで非常に強い拡張された1Dピーニングセンターとしての役割をすることと期待される。これはJc測定で観測された行動を説明する。また、柱と関連された点型欠陥がそれらの自分の周囲でREBCOマトリックスを崩壊する程度の‘二次効果’がある程度に、柱の密度は十分に大きい。これは15at.%BaZrO添加物を有するMOCVD超伝導体に効果的に見られる。
【0076】
最後に、PLD成長のためにここに説明されたLAP方法は、数十倍速い成長速度に、そしてさらに低コストで非常に高性能の超伝導体を得るのに、他の物理的又は化学的蒸気蒸着方法に容易に適用される。
【0077】
強いピーニングを有するREBCO CC(coated conductor)の速い成長は超伝導体アプリケーションのコストを低減するのに重要である。本発明はPLD蒸着を使用する新しいインシチュー液体補助工程(LAP)の結果を提示する。この方法は非常に速い成長速度(250nm/sまで)、即ち標準薄膜より10倍程度速い速度を許容する。この方法は薄膜内の混合希土類によって生成される点型欠陥ピーニングセンターのみならず、非常に速い成長速度にも拘らず、細長いBaYNbOナノ柱の人工ピーニングセンター(APCs)が形成されることを許容する。混合ピーニング、混合RE+BYNO LAP薄膜は10K、30K及び50Kでピーニングに非常に効率的であることと考えられる。他のAPCピーニング添加物を有し、PLDで成長された標準YBCO薄膜と比較して、非常に速い成長速度にも拘らず、LAP薄膜は70Kで30K及び様々な磁気場で類似なJcを示す。反面、10Kでは標準薄膜より2倍以上の優れた性能を示す。低温で薄膜のRE混合にしたがう点型ピーニングの向上された効果が証明される。LAP方法は、簡単にターゲット物質の組成を変更することに応じて、標準インシチュー気相蒸着法を使用した成長に比較してCC(coated conductor)形成費用を低減することができる。
【0078】
本発明は高磁気場(例えば、5T以上の磁気場以上)で高臨界電流(例えば、?1000A)を得ることができる。これは~30K以下にも動作可能であることを意味する。本発明にしたがって、超伝導ワイヤはさらに低いコストで形成されることができ、強い磁気場ボルテックスを有し、速い成長速度に提供されることができる。
【0079】
前述した本発明は例示的であり、限定的ではない。添付された請求項は本発明の概念の思想及び範囲を逸脱しない限り、すべての変形、向上、及び他の実施形態を含む。したがって、法によって許容される最大限度まで、本発明の範囲は次の請求項及びそれらの均等物の許容される最も広く解釈されることであり、前述した詳細な説明によって限定されないことである。
【符号の説明】
【0080】
10 基板
20 バッファ層
30 シード層
40 超伝導薄膜
100 超伝導ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B