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特開2022-75469インクジェット記録媒体および転写画像形成方法
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  • 特開-インクジェット記録媒体および転写画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075469
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】インクジェット記録媒体および転写画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20220511BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220511BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B41M5/52 110
B41M5/00 100
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068597
(22)【出願日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020184280
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 本和
(72)【発明者】
【氏名】小谷 佳範
(72)【発明者】
【氏名】大橋 良太
(72)【発明者】
【氏名】山火 智
【テーマコード(参考)】
2H186
4F100
【Fターム(参考)】
2H186AB16
2H186BA09
2H186BA11
2H186BB14X
2H186BB52X
2H186BC28X
2H186BC34X
2H186BC52X
2H186DA09
4F100AA20B
4F100AK21B
4F100AK42A
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA41B
4F100CA18B
4F100CB00C
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100DJ00B
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100JD14B
4F100JL14A
4F100JN01B
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】透明性が高く、インク吸収性を向上させたインクジェット記録媒体の提供。
【解決手段】粒径が異なるシリカ粒子を2種用い、インクジェットの記録面側と裏面側の空隙率を変えることで、インク受容層の透明性が高くインクの吸収速度が速いインクジェット記録媒体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体上に設けられたインク受容層と、前記インク受容層上に設けられた接着部と、を有するインクジェット記録媒体において、
前記インク受容層は、細孔分布曲線において細孔直径が5~20nmの範囲に最大ピークを有し、
前記インク受容層の接着部を設けた側の表面から、前記インク受容層の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率が、
前記インク受容層の支持体と接する側の界面から、前記インク受容層の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率よりも高い
ことを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記支持体と前記インク受容層との間に保護層を有する請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記支持体が透明である請求項1または2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記支持体が剥離可能である請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記インク受容層の前記接着部を設けた側の表面から、前記インク受容層の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率が50%以上であり、
前記インク受容層の前記支持体と接する側の界面から、前記インク受容層の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率が50%未満である
請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
前記インク受容層は、動的光散乱法による粒度分布のピーク位置が1nm~10nmのコロイダルシリカ(A)と、動的光散乱法による粒度分布のピーク位置が20nm~50nmのコロイダルシリカ(B)と、を含有し、
前記コロイダルシリカ(A)と前記コロイダルシリカ(B)の混合比(A/B)が9/1~6/4である
請求項1~5のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項7】
前記コロイダルシリカ(A)は、シリカの一次粒子が細長く連結した鎖状粒子であり、
前記コロイダルシリカ(B)は、球状のシリカの一次粒子が複数個連結したパールネックレス状粒子である
請求項6に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項8】
前記インク受容層は、界面活性剤を含有する請求項1~7のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項9】
前記インク受容層は、分散剤を含有する請求項1~7のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項10】
前記インク受容層のヘイズは3.0%以下である請求項1~9のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項11】
前記接着部は、平均粒子径が10nm~5μmの接着剤で形成されており、
前記インクジェット記録媒体を前記接着部側から見た場合の前記接着部の面積が、前記インク受容層の表面積に対して50%以下である請求項1~10のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体に、前記接着部を設けた側からインクジェット記録装置によりインクを吐出して画像を記録する工程と、
前記画像が記録されたインクジェット記録媒体を、前記接着部を設けた側から画像支持体に当接し、前記記録媒体と前記画像支持体とを重ねた状態で加熱および/または加圧して接着する工程と、を有することを特徴とする転写画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式による画像記録に用いる被記録材料としてのインクジェット記録媒体に関するものであり、特に転写画像を形成するためのインクジェット記録媒体および転写画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ニーズの多様化に伴って、インクジェット記録方式で印字されたインクジェット記録媒体が、IDカード、クレジットカード、バーコード、広告等のラベルとして利用されている。
【0003】
インクジェット記録媒体をラベルとして用いる場合、インク受容層が形成される支持体のインク受容層とは反対の面に粘着剤を設け、インク受容層へ印字した後に、水性のインクジェット記録方式で直接印字することが困難な対象物(例えば、プラスチック、金属、ガラスなど)の表面に接着する方法が取られている。
【0004】
しかし、この方法では印字面が露出してしまい、印字部が擦れたり、印字部に水が付着してインクが流れたりする場合がある。印字面に透明なカバーフィルムを貼り付けて印字部をガードすることも可能であるが、位置合わせが困難で、印字面にカバーフィルムを正確に貼り付けられないことが多かった。
【0005】
かかる課題を解決するため、カード等の対象物に印字面を転写する方法が開示されている(特許文献1)。この方法では、支持体に相当する基材と、カバーフィルムに相当する保護層と、インク受容層と、接着部がこの順に積層されたインクジェット記録媒体が使用されている。インク受容層に接着部側から印字を行い、その後対象物へ接着して、最後に基材を剥離することで、対象物と同サイズのインク受容層および保護層を対象物へ転写することが可能なことから、保護層の位置合わせが不要である。
【0006】
また、特許文献1に記載された方法では、ライン方式のプリンターが使用されている。これは、記録媒体の搬送方向と直交する方向に長尺の記録ヘッド(いわゆるラインヘッド)が固定配置されたプリンターであり、ヘッドの下を通過するインクジェット記録媒体に対して高速で印字することが可能である。
【0007】
さらに特許文献1は、インクジェット記録媒体のインク受容層に、インク吸収性に優れた空隙型を採用しており、上記プリンターの印字速度に対応できる仕様としている。空隙型のインク受容層は、粒子間に形成された空隙でインクを吸収することが可能であり、主に吸水性樹脂で形成された膨潤型のインク受容層よりも多量のインクを素早く吸収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6374418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の空隙型のインク受容層において、インクの吸収量を増やしかつインクの吸収速度を上げる方法として、インク受容層内の空隙量を増やしたり、細孔径を大きくすることが知られている。例えば、粒径の大きなシリカ粒子やアルミナ粒子などの無機顔料をインク受容層に用いることで、空隙量や細孔径を増大することが可能である。
【0010】
しかし、無機顔料の粒径を大きくすると、インク受容層が白濁し、ヘイズ(曇り度)が上がり、透明性が損なわれてしまう。この現象は、インク受容層への入射光がインク受容層中の無機顔料や無機顔料間に形成された細孔で散乱されることに起因しており、無機顔料の粒子径が200nmよりも大きいときには、幾何学散乱またはミー散乱により400nm~780nmの可視光線領域の光を散乱して曇りガラスのようになることが知られている。
【0011】
ヘイズは、全光線透過率における拡散透過率の割合という指標で評価される。白濁した材料ほどヘイズは大きく、逆に透明な材料ほどヘイズが小さい。例えば、市販のPETフィルムはヘイズが4%程度であり、ガラスはヘイズが0%である。
【0012】
インク受容層のヘイズを下げるためには、無機顔料の粒子径を小さくして充填性を上げ、無機顔料間に形成される細孔を小さくすることが有効である。一般的には、無機顔料間に形成される細孔径を100nmよりも小さくし、空隙率を下げることで透明性が向上する。
【0013】
しかし、細孔径を小さくし空隙率を下げると、インク吸収量が下がり、インク吸収速度も低下する。インク吸収量が下がると濃度の高い画像が得られない。また、インク吸収速度が低下すると印字後の乾燥に時間がかかり、その後の加工工程(転写工程)にすぐに移行できないことから、印字物の生産性が低下するという問題があった。
【0014】
そのため、低ヘイズで透明性が高く、インク吸収性を向上させたインクジェット記録媒体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、次のような構成のインクジェット記録媒体を用いる。
【0016】
支持体と、前記支持体上に設けられたインク受容層と、前記インク受容層上に設けられた接着部と、を有するインクジェット記録媒体において、
前記インク受容層は、細孔分布曲線において細孔直径が5~20nmの範囲に最大ピークを有し、
前記インク受容層の接着部を設けた側の表面から、前記インク受容層の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率が、
前記インク受容層の支持体と接する側の界面から、前記インク受容層の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率よりも高い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特に転写画像を形成するためのインクジェット記録媒体において、ヘイズが低くかつインク吸収速度が速いインク受容層を有するインクジェット記録媒体、および転写画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態のインクジェット記録媒体の断面図である。
図2】本発明の別の実施形態であるインクジェット記録媒体の断面図である。
図3】(a)本発明の実施例1で作製したインク受容層の表面側(接着部側)のSEM画像であり、(b)本発明の実施例1で作製したインク受容層の裏面側(支持体側)のSEM画像である。
図4】インクが着弾したインクジェット記録媒体を接着部側から見たイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらに限られない。
【0020】
本発明の一実施形態では、支持体1上にインク受容層2を設け、そのインク受容層2の表面に接着部3を設けたインクジェット記録媒体において、インク受容層2を空隙型とし、そのインク受容層2の表面に接着部3を離散的に設けて、インク受容層2の表面が直接露出した露出部5を残すように構成する(図1)。このような構成とすることで、接着部3側からインクジェット記録を行うことが可能で、インクはインク受容層2に速やかに吸収される。
【0021】
次いで、インクジェット記録で画像を形成したインクジェット記録媒体の接着部3を他の画像支持体、例えばプラスチック板、ガラス板、金属板等に当接し、記録媒体と画像支持体とを重ねた状態で加熱および/または加圧して接着する(図示せず)。
【0022】
接着後、支持体1は剥離することができるが、支持体1を剥離せずに、部分的あるいはすべてを残してもよい。この場合、支持体1は透明であることが好ましい。
【0023】
また、上述のように、画像を形成したインクジェット記録媒体を他の画像支持体に接着させず、接着部3を溶融膜化させて保護膜として利用してもよい。
【0024】
支持体1、インク受容層2、および接着部3の透明度を制御して、転写後の記録物に透明性、不透明、あるいは半透明性をもたせることもできる。
【0025】
さらに別の実施形態では、インクジェット記録媒体の支持体1とインク受容層2の間に、支持体1と分離可能な保護層6を設けてもよい(図2)。このような保護層6を有するインクジェット記録媒体を用いることで、接着部3側から画像を記録して他の画像支持体(図示せず)へ接着し、その後、支持体1を保護層6から剥離することが可能となり、他の画像支持体上にインク受容層2と保護層6が形成された記録物が得られる。
【0026】
この場合、保護層6には十分な透明性が要求され、インク受容層2にもある程度の透明性が要求される。
【0027】
以下、上記実施形態の各々の構成要素について説明する。
【0028】
(支持体)
本発明の一実施形態において、支持体1は、その表面にインク受容層2を担持するシート状の基材である。本発明で用いる支持体1は、インク受容層2の材質、用途に応じて選択することができ、特に限定されない。
【0029】
例えば、支持体1として樹脂フィルムを用いることができ、支持体1を構成する樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン-4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等の脂肪族ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体樹脂;三酢酸セルロース、セロハン等のセルロース系樹脂;ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の、その他の合成樹脂;等が挙げられる。樹脂フィルムは、1種を単独で用いること、または2種以上を複合あるいは積層して用いてもよい。また、剥離紙、金属板、木材なども支持体1を構成する材料として利用できる。
【0030】
支持体1のインク受容層2と接する表面(または、後述する保護層6と接する表面)には、離型剤を含有する組成物からなる離型層を設けても良い。離型剤の種類は特に限定されないが、離型性に優れ、ヒートローラの熱およびインクジェット記録ヘッド(特に、吐出エネルギー発生素子として電気熱変換素子(ヒータ)を用いたサーマル式のインクジェット記録ヘッド)が発生する熱によって容易に溶融しない材料が好ましい。
【0031】
例えば、シリコーンワックス、シリコーン樹脂などのシリコーン系材料;フッ素樹脂などのフッ素系材料は耐熱性があり、離型性にも優れているので好ましい。
【0032】
(インク受容層)
本発明の一実施形態において、インク受容層2は、インクジェット記録ヘッドから吐出されたインクを吸収し、画像を形成する層である。本発明におけるインク受容層2は、細孔分布曲線において細孔直径が5~20nmの範囲に最大ピークを有し、インク受容層2の接着部3を設けた側の表面からインク受容層2の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率が、インク受容層2の支持体1と接する側の界面からインク受容層2の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率よりも高いことが好ましい。より好ましくは、インク受容層2の接着部3を設けた側の表面からインク受容層2の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率が50%以上であり、インク受容層2の支持体1と接する側の界面からインク受容層2の全体の厚さを基準として厚さが10%の領域における空隙率が50%未満である。
【0033】
このような構造を有するインク受容層2は、例えば、少なくとも2種の非球状コロイダルシリカ粒子、および水溶性樹脂より形成することができる。
【0034】
一般的なコロイダルシリカは、一次粒子の形状が球状または球状に近いシリカ粒子である。これに対して本発明では、微細なシリカの一次粒子が細長く連結した鎖状粒子、および球状のシリカの一次粒子が真珠のネックレスのように複数個連結したパールネックレス状粒子の2種類の非球状コロイダルシリカを用いる。鎖状粒子とパールネックレス状粒子はいずれも一次粒子が連結しているが、両者の違いは球状一次粒子の占める割合にある。
【0035】
鎖状シリカ粒子は、三次元方向に伸長せず、同一平面内に伸長しており、ほぼ真っ直ぐなもの、屈曲しているもの、分枝を有するもの、環を有するものが含まれる。また、鎖状シリカ粒子の動的光散乱法による粒度分布のピーク位置は、1nm~10nmの範囲にある。
【0036】
一方、パールネックレス状シリカ粒子は、電子顕微鏡による二次元像において、球状一次粒子に起因する円状図形が真円度70%以上を有し、各円状図形の内接円の合計面積がパールネックレス状粒子全投影面積の70%以上を占めており、かつ各円状図形の内接円が互いに重ならないという特徴を有する。ここで、真円度とは、対象とする図形輪郭の外接円の半径に対する内接円の半径の比率で表され、真円は100%となる。
【0037】
パールネックレス状シリカ粒子の動的光散乱法による粒度分布のピーク位置は、20nm~50nmの範囲にある。
【0038】
本発明で用いる非球状コロイダルシリカは、従来より公知の方法で製造することができ、本発明ではいかなる方法で得られたものも使用できる。例えば、鎖状シリカ粒子として、スノーテックスST-UP、スノーテックスST-OUP(いずれも日産化学株式会社製)等が、パールネックレス状シリカ粒子として、スノーテックスST-PS-S、スノーテックスST-PS-SO、スノーテックスST-PS-M、スノーテックスST-PS-MO(いずれも日産化学株式会社製)等が市販されており、本発明で好ましく使用することができる。
【0039】
本発明の一実施形態では、上述した2種類の非球状コロイダルシリカ、すなわち、鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子を併用することで、それぞれのシリカ粒子を単独で使用した場合や、球状のコロイダルシリカを使用した場合と比較して、ヘイズが低くインク吸収速度が速いインク受容層2が形成できる。
【0040】
鎖状シリカ粒子(A)とパールネックレス状シリカ粒子(B)の混合比(A/B)は、9/1~6/4の範囲とすることが好ましい。鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子の混合比が9/1より大きいと、ヘイズは下がるが、インク吸収性が低下し、十分な濃度を表現するインクが吸収できなくなる。また、インクの吸収速度も遅くなるため、乾くまでに時間を要する場合がある。一方、鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子の混合比が6/4より小さいと、インク受容層の白濁が顕著となり、インクジェットにより形成された画像は鮮明さに欠ける場合がある。
【0041】
また、本発明では、鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子、または同じ粒子同士を結着させてインク受容層の機械的強度を上げ、さらに、シリカ粒子を支持体1上に固定する目的で、インク受容層2中に水溶性樹脂が添加される。
【0042】
使用する水溶性樹脂は、様々な樹脂から選択することができる。例えば、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系バインダー、でんぷん及びその変性物、ゼラチン及びそれらの変性物、カゼイン、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、及びアルブミン等の天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、ポリビニルアルコール及びその変性物、SBR ラテックス、NBR ラテックス、メチルメタクリレート- ブタジエン共重合体、エチレン- 酢酸ビニル共重合体等のラテックスやエマルション類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及び無水マレイン酸またはその共重合体等を挙げることができ、単独または複数種組み合わせて使用することができる。中でもポリビニルアルコールは、重合度、けん化度、電荷などを調整したものが多数市販されており、塗工液の粘度調整や、インクの種類に合わせたインク受容層の親水性/疎水性のバランス制御を容易に行うことができるので好ましい。
【0043】
市販されているポリビニルアルコールとしては、例えば、3-98、28-98、60-98(いずれも株式会社クラレ製)、JC-25、JF-10、JF-20(いずれも日本酢ビ・ポバール株式会社製)等の完全けん化型、3-88、44-88、95-88(いずれも株式会社クラレ製)、JP-15、JP-20、JP-45(いずれも日本酢ビ・ポバール株式会社製)等の部分けん化型などがあり、本発明ではこれらを単独で、または複数種組み合わせて使用することができる。
【0044】
インク受容層2中の、鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子の合計含有量(C)と、水溶性樹脂の含有量(D)との比率(C/D)は、質量比で8/1~5/1の範囲とすることが好ましい。シリカ粒子と水溶性樹脂の質量比が5/1より小さいと、空隙が減少してインク吸収性が低下する場合がある。また、シリカ粒子と水溶性樹脂の質量比が8/1より大きいと、水溶性樹脂によるシリカ粒子の結着度が低下して粒子が脱落したり、支持体1からインク受容層2が剥離する場合がある。
【0045】
水溶性樹脂はそのまま使用しても構わないが、架橋剤を併用して水溶性樹脂を架橋することで、機械的強度がより高いインク受容層を形成できる。水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合、併用する架橋剤としては、ポリビニルアルコールの水酸基に結合して3次元架橋させるもの、例えば、有機チタン化合物、ホウ酸、ホウ砂、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸などの酸化合物が挙げられ、これらは単独で、または複数種組合せて使用することができる。
【0046】
インク受容層2は、鎖状シリカ粒子、パールネックレス状シリカ粒子、水溶性樹脂、架橋剤を混合して塗工液を作製し、その塗工液を支持体1上に成膜して乾燥することで形成される。塗工液は、鎖状シリカ粒子の分散液と、パールネックレス状シリカ粒子の分散液を混合したものに架橋剤を添加し、次いで水溶性樹脂を水に溶かした溶液を添加して、全体を均一に撹拌することで作製できる。
【0047】
塗工液の溶媒は、シリカ粒子が分散し、水溶性樹脂が溶解するものが好ましく、特に水が好ましい。メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2 - メトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの有機溶媒を水に混合して用いても良い。
【0048】
また、塗工液には、界面活性剤、消泡剤、分散剤などの添加剤を必要に応じて少量添加しても良い。特に、界面活性剤や分散剤は、塗工液の粘度上昇を抑える効果を有するので好ましい。本発明において、分散剤とは、界面活性剤の中で特に固体粒子への吸着性が高く、溶液中の固体粒子の分散を安定化させるものをいう。塗工液の粘度上昇を抑えることで、支持体1へのコーティングが容易となる。また、塗工液の粘度上昇を抑えることで、塗工液中の水溶性樹脂の分布状態が均一に保たれ、シリカ粒子同士の結着やインク受容層の支持体への接着に偏りが生じ難くなる。したがって、支持体1上に形成したインク受容層2からシリカ粒子が脱落したり、支持体1からインク受容層2が剥離することを抑制できる。さらに、界面活性剤または分散剤を含む塗工液で形成されたインク受容層は、細孔直径が増大する傾向があり、インク吸収性が向上できる。細孔直径が増大した理由は定かではないが、塗工液に界面活性剤または分散剤を添加したことでシリカ粒子同士の凝集力が弱まり、この影響で細孔が増加したのではないかと推測される。
【0049】
また、インク受容層2のインク吸収性の向上には、界面活性剤または分散剤そのものも関与している。例えば、インク受容層2が後述するカチオン性界面活性剤またはカチオン性分散剤を含み、これにアニオン性のインクを使用して印刷を行うと、インクは電気的な相互作用で受容層2内に引込まれ易くなり、結果としてインク吸収性が向上する。
【0050】
界面活性剤、分散剤の種類は、特に限定されず、アニオン系、カチオン系、ノニオン系またはベタイン系のいずれのタイプも使用できる。例えば、アクアロン、ハイテノール、プライサーフ、ネオコール、モノゲン、ネオゲン、ラベリン、ネオハイテノール(いずれも第一工業製薬株式会社製)等のアニオン系界面活性剤、カチオーゲン(第一工業製薬株式会社製)等のカチオン系界面活性剤、ノイゲン、エパン、ソルゲン、アンチフロス(いずれも第一工業製薬株式会社製)等のノニオン系界面活性剤、シャロール(第一工業製薬株式会社製)等のカチオン性分散剤などから選択することができるが、鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子の電荷を考慮して、ゲル化、凝集しないものを選択することが好ましい。
【0051】
また、使用する界面活性剤や分散剤は、低分子のものでも高分子のものでも良く、1種もしくは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0052】
界面活性剤または分散剤を含む塗工液は次のような工程で作製できる。まず、鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子を含む分散液に界面活性剤または分散剤を添加する。界面活性剤または分散剤を添加するタイミングとしては、鎖状シリカ粒子の分散液とパールネックレス状シリカ粒子の分散液を混合する前に、それぞれの分散液に個別に添加してもよいし、鎖状シリカ粒子の分散液とパールネックレス状シリカ粒子の分散液を混合した後に、一括して添加してもよい。次に、界面活性剤または分散剤が添加された鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子を含む分散液に架橋剤を添加し、次いで水溶性樹脂を水に溶かした溶液を添加して、全体を均一に撹拌することで塗工液を調製する。
【0053】
界面活性剤または分散剤の添加量は、シリカ粒子に対し、0.1~15wt%とすることが好ましい。また、塗工液中の固形分は、10~20wt%であることが好ましく、より好ましくは、12~18wt%である。塗工液中の固形分が10wt%以下だと所望の膜厚に成膜することが困難となり、20wt%以上だと塗工液の粘度が高くなり、成膜が難しくなる。
【0054】
上述した塗工液を支持体1上に塗工する塗工方法は特に限定されず、塗工液を支持体1上に滴下し、アプリケーター、ワイヤーバーなどで厚みを制御しながら支持体表面に均一に塗工すればよい。グラビア方式、カーテン方式、エアナイフ方式、バーコーティング方式、及びロールコーティング方式等の従来より公知の塗工方法も利用できる。
【0055】
塗工後の乾燥は、支持体1およびインク受容層2への加熱、送風によって行われる。加熱温度は室温(25℃)~170℃程度が好ましく、より好ましくは室温(25℃)~100℃の範囲、さらに好ましくは室温(25℃)~80℃の範囲で乾燥することが好ましい。室温(25℃)以下だと乾燥に時間がかかり、170℃以上だと支持体1、インク受容層2へのダメージが顕著となる。また、本発明においては、支持体1側から加熱、送風して比較的緩やかに乾燥することが好ましく、乾燥初期を25℃~40℃程度の低温で乾燥し、その後40℃~80℃の高温で乾燥することが特に好ましい。
【0056】
理由は定かではないが、支持体1側から加熱、送風して乾燥することで、インク受容層中の空隙率が裏面側(支持体側)より表面側(接着部側)で高くなり、インクの吸収速度が速くなる。また、裏面側の空隙率が低くなることで、インク受容層の支持体あるいは後述する保護層6への密着性が上がるため好ましい。また、乾燥初期を25℃程度の低温で乾燥することで、過乾燥によるクラックの発生が抑制できる。
【0057】
本発明の一実施形態において、インク受容層2の空隙率は、インク受容層2の全体の厚さを基準とし、インク受容層2の接着部3を設けた側の表面からインク受容層2の全体の厚さの10%の領域における空隙率を表側の空隙率、インク受容層2の支持体1に接する側の界面からインク受容層2の全体の厚さの10%の領域における空隙率を下層側の空隙率とすると、裏側よりも表側の空隙率が高いことが好ましい。さらには、表側の空隙率が50%以上、裏側の空隙率が50%未満であることが好ましい。
【0058】
また、作製したインク受容層2の細孔分布曲線は、細孔直径が、5~20nmの範囲に最大ピークを有することが好ましい。細孔直径のピークが5nm以下だと、インクの吸収速度が遅くなり、また、20nmを超えるとヘイズが高くなることがある。
【0059】
細孔直径の測定は、インク受容層のBET比表面積測定によって求めることができる。
【0060】
インク受容層2の厚みは特に限定されない。要求されるインク吸収性に合わせて、15μm~50μmの範囲で選択すればよい。インク受容層2の厚みが15μmよりも薄いと、インクが十分に吸収できずにあふれてしまうことがあり、インク受容層2の厚みが50μmよりも厚いと、ヘイズが高くなり白っぽさが目立つようになることがある。
【0061】
(接着部)
本発明の一実施形態において、接着部3は、インク受容層2に形成された画像を他の画像支持体に接着するものである。図1または図4に示すように、接着部3はインク受容層2上に離散的に設けられており、インク受容層2の表面が部分的に露出している。
【0062】
接着部側から見た場合の、インク受容層2の全表面積に対する接着部3の面積の比率(面積比率)は50%以下にすることが好ましく、この範囲であれば、多量のインクが素早く吸収できる。また、接着部3は、想定されるインクの粘度と表面張力を考慮して、着弾したインクの一部が必ず接着部からはみ出してインク受容層2の露出部5に垂れ込むように形成されていることが好ましい(図4)。これにより、着弾したインクは、インク吸収速度が速い空隙型のインク受容層2に引きずり込まれ、接着剤3の表面および内部にインクが残留しにくくなる。
【0063】
各接着部3は、接着剤4が単独あるいは複数個集まって形成されている。接着剤4は粒子状であることが好ましく、平均粒子径としては、10nmよりも大きく、5μmよりも小さいことが好ましい。接着剤4の平均粒子径を10nmよりも大きくすることで、接着剤4がインク受容層2の空隙の中に入り込みにくくなり、インク吸収性の低下が防止できる。また、接着剤4の平均粒子径を5μmよりも小さくすることで、接着部3の厚みが薄くなり、接着部3の上に着弾したインクがインク受容層2の露出部5から引きずり込まれ易くなる。その結果、接着部3の表面および内部にインクが残りにくくなり、接着性が向上する。
【0064】
接着剤4の材料は特に限定されず、公知のものが使用できる。具体的には、しょうふ、デキストリン、そくい等のでんぷん系、にかわ、カゼイン、大豆タンパク等のたんぱく系、天然ゴム系、漆、松やに、ろう、アスファルトなどの天然の接着剤;酢酸ビニル系、ポリオール系、ポリビニルアセタール系、酢酸ビニル共重合系、エチレン酢酸ビニル系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、セルロース系、オレフィン系、スチレン系、ユリア系、メラミン系、フェノール系、レゾルシノール系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系、ポリアミド系、ポリ弁図イミダゾール系、ポリイミド系、イソシアネート系、クロロプレンゴム系、二トリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコーンゴム系、アクリルゴム系、変性シリコーンゴム系、ウレタンゴム系、シリル化ウレタン系などの有樹脂系接着剤;ケイ酸ソーダ等の水ガラス系、ポルトランドセメント、しっくい、石膏、マグネシアセメント、リサージセメント等のセメント系、セラミックス系などの無機系接着剤が挙げられる。これらのうちの1種もしくは複数を併用しても良い。
【0065】
(保護層)
本発明の一実施形態において、保護層6は、支持体1とインク受容層2との間に形成され、記録媒体と他の画像支持体とを接着し、その後支持体1が剥離された際に、インク受容層2の外表面を保護するものである。
【0066】
保護層6は、無色透明である他、半透明でも、着色された透明の保護層であってもよい。
【0067】
保護層6の種類は特に限定されない。保護層6としては、耐候性、耐摩擦性、および耐薬品性などの耐久性に優れるフィルムであることが好ましい。UVカット剤を含有していてもよい。
【0068】
本発明の一実施形態において、保護層6は、支持体1の上に1種あるいは複数のエマルション粒子を用いて形成される。
【0069】
エマルジョンの材質としては、アクリル系樹脂、酢ビ樹脂、塩ビ樹脂、エチレン/酢ビ共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の樹脂、またはそれらの共重合体樹脂が好ましい。上記の中でもアクリル系樹脂は、比較的低温での造膜が可能であり、塗膜の透明性が高いことから、特に好ましく使用される。
【実施例0070】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
(インク受容層用塗工液1の作製)
鎖状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-OUP、固形分15wt%、日産化学株式会社製)96gと、パールネックレス状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-PS-MO、固形分15wt%、日産化学株式会社製)24gを混合し撹拌した。これに、ほう酸0.27g(キシダ化学株式会社製)を添加し、撹拌を続けてほう酸を溶かした。次いで、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分8%で水に溶解しておいた溶液を40g添加し、撹拌してインク受容層用塗工液1を作製した。
【0072】
(インク受容層用塗工液2の作製)
鎖状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-OUP、固形分15wt%、日産化学株式会社製)84gと、パールネックレス状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-PS-MO、固形分15wt%、日産化学株式会社製)36gを混合し撹拌した。これに、ほう酸0.27g(キシダ化学株式会社製)を添加し、撹拌を続けてほう酸を溶かした。次いで、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分8%で水に溶解しておいた溶液を40g添加し、撹拌してインク受容層用塗工液2を作製した。
【0073】
(インク受容層用塗工液3の作製)
鎖状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-OUP、固形分15wt%、日産化学株式会社製)72gと、パールネックレス状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-PS-MO、固形分15wt%、日産化学株式会社製)48gを混合し撹拌した。これに、ほう酸0.27g(キシダ化学株式会社製)を添加し、撹拌を続けてほう酸を溶かした。次いで、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分8%で水に溶解しておいた溶液を40g添加し、撹拌してインク受容層用塗工液3を作製した。
【0074】
(インク受容層用塗工液4の作製)
鎖状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-OUP、固形分15wt%、日産化学株式会社製)108gと、パールネックレス状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-PS-MO、固形分15wt%、日産化学株式会社製)12gを混合し撹拌した。これに、ほう酸0.27g(キシダ化学株式会社製)を添加し、撹拌を続けてほう酸を溶かした。次いで、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分8%で水に溶解しておいた溶液を40g添加し、撹拌してインク受容層用塗工液4を作製した。
【0075】
(インク受容層用塗工液5の作製)
鎖状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-OUP、固形分15wt%、日産化学株式会社製)96gと、パールネックレス状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-PS-MO、固形分15wt%、日産化学株式会社製)24gを混合し撹拌した。これに、ほう酸0.27g(キシダ化学株式会社製)を添加し、撹拌を続けてほう酸を溶かした。次いで、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分8%で水に溶解しておいた溶液を34g添加し、撹拌してインク受容層用塗工液5を作製した。
【0076】
(インク受容層用塗工液6の作製)
鎖状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-OUP、固形分15wt%、日産化学株式会社製)96gに分散剤(シャロールDC-902P、第一工業製薬株式会社製)0.72gを添加し混合した。次に、パールネックレス状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-PS-SO、固形分15wt%、日産化学株式会社製)24gに分散剤(シャロールDC-902P、第一工業製薬株式会社製)0.07gを添加し混合した。その後、分散剤を添加した鎖状シリカ粒子分散液と分散剤を添加したパールネックレス状シリカ粒子を含む分散液を混合し撹拌した。これに、ほう酸0.25g(キシダ化学株式会社製)を添加し、撹拌を続けてほう酸を溶かした。次いで、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分10%で水に溶解しておいた溶液を10g、およびポリビニルアルコール(JP-45、日本酢ビ・ポバール株式会社製)を固形分10%で水に溶解しておいた溶液を22g添加し、撹拌してインク受容層用塗工液6を作製した。
【0077】
(インク受容層用塗工液7の作製(比較用))
鎖状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-OUP、固形分15wt%、日産化学株式会社製)120gに、ほう酸0.27g(キシダ化学株式会社製)を添加し、撹拌してほう酸を溶かした。次いで、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分8%で水に溶解しておいた溶液を40g添加し、撹拌してインク受容層用塗工液7を作製した。
【0078】
(インク受容層用塗工液8の作製(比較用))
パールネックレス状シリカ粒子を含む分散液(スノーテックスST-PS-MO、固形分15wt%、日産化学株式会社製)120gに、ほう酸0.27g(キシダ化学株式会社製)を添加し、撹拌してほう酸を溶かした。次いで、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分8%で水に溶解しておいた溶液を40g添加し、撹拌してインク受容層用塗工液8を作製した。
【0079】
(実施例1)
A4サイズのPETフィルム(厚み100μm)の上に、インク受容層用塗工液1を、乾燥時の厚みが30μm、有効幅10cmとなるように、ベーカー式アプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて塗工した。
【0080】
次に、塗工したPETフィルムを、塗工面を上にして厚さ2mmのステンレス板にテープで固定し、80℃に加熱したホットプレート上に15分置いて乾燥し、PETフィルム上にインク受容層を形成した。
【0081】
さらに、接着剤(サイビノールRMA-63、平均粒子径1μm、サイデン化学株式会社製)5部に、イオン交換水45部を加えて接着剤水溶液を作製し、インク受容層上に接着剤の粒子が付着する面積がインク受容層全体の面積の45%となるように、ベーカー式アプリケーター(テスター産業株式会社製)のギャップを調整して塗工した。その後70℃に加熱したホットプレート上に20分置いて乾燥し、インク受容層上に接着部を設けたインクジェット記録媒体を得た。
【0082】
(実施例2)
実施例1において、インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液2に変更し、インク受容層のホットプレートによる乾燥条件を70℃20分とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0083】
(実施例3)
実施例1において、インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液3に変更し、インク受容層のホットプレートによる乾燥条件を60℃30分とした以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0084】
(実施例4)
PETフィルム上に、アクリルエマルジョン水溶液(ジョンクリル352D、固形分濃度45%、BASF社製)9部と、ウレタンエマルジョン水溶液(スーパーフレックス130、固形分濃度35%、第一工業製薬社製)1部と、ポリビニルアルコール(クラレポバール95-88、株式会社クラレ製)を固形分8%で水に溶解した溶液0.5部を攪拌混合した液を、乾燥時の膜厚が5μmとなるようにベーカー式アプリケーターで塗工し、60℃で30分乾燥させて保護層を形成した。
【0085】
形成した保護層の上に、実施例1と同様にしてインク受容層と接着部を設け、インクジェット記録媒体を得た。
【0086】
(実施例5)
実施例4において、インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液4に変更した以外は、実施例4と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0087】
(実施例6)
実施例4において、インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液5に変更した以外は、実施例4と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0088】
(実施例7)
実施例4において、形成した保護層の上にインク受容層用塗工液6を乾燥時の厚みが30μm、有効幅10cmとなるように、ベーカー式アプリケーター(テスター産業株式会社製)を用いて塗工した。次に、塗工面にヘアードライヤーで室温(25℃)を5分、その後40℃の温風を5分あてて受容層の乾燥を行ないインクジェット記録媒体を得た。
【0089】
(比較例1)
実施例1において、インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液7に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0090】
(比較例2)
実施例1において、インク受容層用塗工液1をインク受容層用塗工液8に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0091】
〈作製したインクジェット記録媒体の評価〉
(空隙率)
インク受容層の空隙率の算出は、まず、PETフィルム上に形成したインク受容層の表面(接着部側)にカーボン膜をコート後、収束イオンビーム加工装置(FIB-SEM、FEI製、Nova600)内で、表面保護膜としてPt膜を約1μmコートする。FIBによる断面出し加工(30kV-0.1nA)を行った後、断面出しを行った面に対して、Pt膜を約200nmコートし空隙をPtで埋める。続いて、再度FIBによる断面出し加工を約100nm行うことで、空隙にPtが充填された断面を得る。この断面に対して走査型電子顕微鏡(SEM)により加速電圧2kVでSEM画像を取得する。SEM画像の観察倍率は、少なくとも厚み方向には膜厚を基準とし、その厚みの表面または裏面から10%の厚み(膜厚が30μmの場合、表面から3μm、裏面から3μm)を含み、かつパールネックレス状シリカ粒子の一つ一つの形状が判別できる倍率とする。具体的には、5万倍から20万倍程度である。図3(a)に実施例1で作製したインク受容層の表面のSEM画像を、図3(b)には実施例1で作製したインク受容層の裏面のSEM画像示す。取得した断面SEM像における空隙率の算出には、グレースケール画像の二値化により、まずシリカ粒子部(パールネックレス状シリカ粒子、鎖状シリカ粒子)と空隙とを区分して、各領域の面積計算ができる画像解析ソフトウェアImage J(NIH Image)を用い、空隙率(%)を求める。次いで、空隙を除いた断面SEM像に対して再度二値化を行うことで、パールネックレス状シリカ粒子と鎖状シリカ粒子のそれぞれの充填率(%)を求めることができる。実施例1、2、3、比較例1、2の表面側、裏面側の空隙率を表1に示す。
【0092】
(粒度分布)
鎖状シリカ粒子(スノーテックスST-OUP、固形分15wt%、日産化学株式会社製)とパールネックレス状シリカ粒子(スノーテックスST-PS-MO、固形分15wt%、日産化学株式会社製)の粒度分布は、それぞれ固形分濃度を0.1wt%まで水で希釈し、動的光散乱法による粒径測定装置としてゼータサイザーNano-S(マルバーン社製)を用いて測定した。個数平均の粒度分布のピーク位置は、スノーテックスST-OUPが6nm、スノーテックスST-PS-MOが30nmであった。
【0093】
(細孔直径)
細孔直径の測定は、インク受容層のガス吸着法による測定で評価できる。本発明においては、TriStar(マイクロメトリックス社製)を用いて、吸着質(窒素)が脱離するときの相対圧と吸着量の関係である脱着等温線から細孔径を求めるBJH法の脱着曲線のピーク値を細孔直径とした。実施例1~6、および比較例1、2の細孔直径を表1に示す。
【0094】
(ヘイズ)
インク受容層のヘイズの測定は、ヘイズメーター(HZ-V3、スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。実施例1~3、および比較例1、2では、まずインクジェット記録媒体のヘイズを測定し、その後PETフィルムだけのヘイズを差し引くことで、インク受容層のヘイズとした。また、実施例4、5では、インクジェット記録媒体のヘイズを測定し、その値からPETフィルムに保護層を形成したもののヘイズを差し引くことで、インク受容層のヘイズとした。尚、本発明におけるインク受容層のヘイズは、PETよりも低いことが好ましく、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下であることが望ましい。結果を表1に示す。
【0095】
(インク吸収性)
実施例、比較例で作製したインクジェット記録媒体のインク受容層に、ラベルプリンターLX-P1500(キヤノンファインテックニスカ株式会社製)を用い、ブラックインクによって記録デューティー100%から10%のベタ画像を印字した。印字から10秒経過後の印字面にコピー用紙を密着させてすぐに剥がし、コピー用紙側に印字したインクが移っているかどうかを目視で確認して評価した。例えば、移ったインクの記録デューティーが、60%以上のベタ画像であった場合には60%と評価した。この値が高い程インク吸収性に優れることを意味するが、本発明においては60%以上であることが好ましい。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1から分かるように、鎖状シリカ粒子とパールネックレス状シリカ粒子を用いてインク受容層を作製すると、インクジェットにより印字を行う表面側の空隙率が裏面側より高くなり、インク吸収性が高くなる。またヘイズが低く透明性が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0098】
1 支持体
2 インク受容層
3 接着部
4 接着剤
5 露出部
6 保護層
7 インク
図1
図2
図3
図4