(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075515
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】毛髪用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20220511BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220511BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q5/02
A61K8/73
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157229
(22)【出願日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020185197
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595064854
【氏名又は名称】カネダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516033008
【氏名又は名称】DOC Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西田 勇一
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 昌希
(72)【発明者】
【氏名】大川 彰子
(72)【発明者】
【氏名】小沼 浩
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC561
4C083AC562
4C083AC642
4C083AC712
4C083AD131
4C083AD132
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB07
4C083BB34
4C083CC38
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】洗浄成分に占めるアミノ酸系成分の配合比率を下げることなく、すすぎ時の指の通りに優れ、かつ、べたつき感が低減された毛髪用洗浄剤を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)成分:アミノ酸系界面活性剤、及び(P)成分:カチオン性高分子化合物を含有する毛髪用洗浄剤を採用する。(P)成分が、(P1)成分:カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムからなる群より選択される少なくとも一種と、(P2)成分:カチオン化デンプンと、を含むことを特徴とする。(P1)成分と(P2)成分との比率は、(P2)成分/(P1)成分で表される質量比として、3/7~9/1であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アミノ酸系界面活性剤、及び(P)成分:カチオン性高分子化合物を含有し、前記(P)成分が、
(P1)成分:カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムからなる群より選択される少なくとも一種と、
(P2)成分:カチオン化デンプンと、
を含む、毛髪用洗浄剤。
【請求項2】
さらに、アミンオキシドを含有する、請求項1に記載の毛髪用洗浄剤。
【請求項3】
前記(P1)成分と前記(P2)成分との比率は、
(P2)成分/(P1)成分で表される質量比として、3/7~9/1である、請求項1又は2に記載の毛髪用洗浄剤。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量は、1.5~20質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪用洗浄剤。
【請求項5】
前記(P)成分の含有量は、0.2~1.5質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪用洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪用洗浄剤は、一般に、洗浄成分とコンディショニング成分とを含有している。
洗浄成分としては、従来、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)などのアニオン界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤が用いられている。コンディショニング成分としては、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガムなどのカチオン性高分子化合物が用いられている。
これらの洗浄成分とコンディショニング成分とを適宜組み合わせることにより、洗浄力、すすぎ性能、乾燥後の風合い等のバランスを取ることができる。
【0003】
毛髪用洗浄剤には、消費者の嗜好性に応じた性能が求められる。例えば、特に、髪の長い女性においては、すすぎの際に指の通りが良く毛髪が絡まりにくい感触が好まれる。
これに対して、すすぎ性能を高める点から、アミノ酸系界面活性剤を選択することが有効である。
特許文献1には、具体的な例として、N-アシルアミノ酸系界面活性剤を含むアニオン界面活性剤と、カチオン化セルロースと、を含有する洗浄剤組成物が開示されている。特許文献1に記載の洗浄剤組成物によれば、N-アシルアミノ酸系界面活性剤を含有することで、すすぎ時のなめらかさの向上が図られている。
【0004】
洗浄成分とコンディショニング成分とを含有する毛髪用洗浄剤は、水に濡れた頭髪上で泡立てることにより、水で希釈される。この後、流水ですすぐ過程で、洗浄成分とコンディショニング成分との複合体(コアセルベート)が生成する(コアセルベーション)。このコアセルベートがすすぎ性能に寄与する、と言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
主たる洗浄成分としてアミノ酸系界面活性剤と、コンディショニング成分としてカチオン化セルロース又はカチオン化グアーガムと、を含有する組成物を適用した毛髪用洗浄剤は、洗浄成分としてAESを用いた場合に比べてコアセルベートの生成量が多く、すすぎの際に指の通りが非常に良好に感じられる。加えて、かかる毛髪用洗浄剤は、アミノ酸系成分の配合比率が高い点で、商品の訴求効果が高い。
【0007】
その一方で、主たる洗浄成分としてアミノ酸系界面活性剤を含有する毛髪用洗浄剤は、多量のコアセルベートが生成しやすく、また、毛髪や頭皮に対する親和性の良さから、毛髪や頭皮に過剰に付着しやすい。このため、髪質又は肌質の違いなどによっては、すすぎ後にべたつく、さっぱり感が得られない、というように感じる使用者が存在する。
しかしながら、これに対して、AES等の他のアニオン界面活性剤を併用すると、組成に占めるアミノ酸系成分の配合比率が低くなってしまう。また、コンディショニング成分の配合量を低減すると、すすぎの際に感じられる指通りの良さが弱くなってしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、洗浄成分に占めるアミノ酸系成分の配合比率を下げることなく、すすぎ時の指の通りに優れ、かつ、べたつき感が低減された毛髪用洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、洗浄成分としてアミノ酸系のアニオン界面活性剤と、コンディショニング成分として従来汎用のカチオン化セルロース又はカチオン化グアーガムと、が配合されている組成について検討した。かかる検討により、前記の組成に、コンディショニング成分として、さらにカチオン化デンプンの併用によって、コアセルベートの生成量をコントロールできること、また、すすぎ時の感触が大きく変化して頭皮のさっぱり感を演出できるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、上記の課題を解決するため、以下の構成を採用した。
【0010】
[1] (A)成分:アミノ酸系界面活性剤、及び(P)成分:カチオン性高分子化合物を含有し、前記(P)成分が、(P1)成分:カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムからなる群より選択される少なくとも一種と、(P2)成分:カチオン化デンプンと、を含むことを特徴とする、毛髪用洗浄剤。
【0011】
[2] さらに、アミンオキシドを含有する、[1]に記載の毛髪用洗浄剤。
【0012】
[3] 前記(P1)成分と前記(P2)成分との比率は、(P2)成分/(P1)成分で表される質量比として、3/7~9/1である、[1]又は[2]に記載の毛髪用洗浄剤。
【0013】
[4] 前記(A)成分の含有量は、1.5~20質量%である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の毛髪用洗浄剤。
【0014】
[5] 前記(P)成分の含有量は、0.2~1.5質量%である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の毛髪用洗浄剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、洗浄成分に占めるアミノ酸系成分の配合比率を下げることなく、すすぎ時の指の通りに優れ、かつ、べたつき感が低減された毛髪用洗浄剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】比較例1、実施例3、比較例2の各毛髪用洗浄剤を用い、ノーマル毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Wet-Combability)、及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Dry-Combability)を示すグラフである。
【
図2】比較例1、実施例3、比較例2の各毛髪用洗浄剤を用い、ダメージ毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Wet-Combability)、及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Dry-Combability)を示すグラフである。
【
図3】比較例1、実施例3、比較例2の各毛髪用洗浄剤の希釈倍率に対するコアセルベート生成量の変化を示すグラフである。
【
図4】実施例及び比較例の各毛髪用洗浄剤を水で50倍希釈した際の、希釈液を写した写真である。左側から、比較例1、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例2の各毛髪用洗浄剤の希釈液を撮影したものである。
【
図5】実施例5~8及び比較例3~4の各毛髪用洗浄剤を用い、ダメージ毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Wet-Combability)、及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Dry-Combability)を示すグラフである。
【
図6】温度2℃の冷蔵庫内に45日間保管されていた、実施例9及び実施例10の各毛髪用洗浄剤の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(毛髪用洗浄剤)
本発明の一実施形態に係る毛髪用洗浄剤は、(A)成分:アミノ酸系界面活性剤と、(P)成分:カチオン性高分子化合物と、必要に応じてその他成分とを含有する。
【0018】
本発明において「毛髪用洗浄剤」とは、いわゆるシャンプーであり、頭髪及び頭皮を洗浄するためのものをいう。
【0019】
<(A)成分:アミノ酸系界面活性剤>
(A)成分としては、例えば、長鎖脂肪酸とアミノ酸とのアシル化により形成されるもの、すなわち、長鎖アシルアミノ酸に対イオンを有するものが挙げられる。
【0020】
前記長鎖脂肪酸における炭化水素基としては、例えば、炭素数8~22のものが好ましく、より好ましくは炭素数12~18のものである。また、前記長鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよいし、直鎖状のものでも分岐鎖状のものでもよい。
前記長鎖脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム脂肪酸等が挙げられる。これらのうちの一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、特に泡立ちが良い点から、ヤシ油脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸が好ましい。
【0021】
前記アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン又はこれらの異性体などが挙げられる。
【0022】
(A)成分は、塩の形態である。ここでの塩の形態としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等の有機塩が挙げられる。これらのうちの一種を用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、泡立ち、溶解性が良い点から、アルカリ金属塩、有機アミンが好ましく、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩がより好ましい。
【0023】
(A)成分として、具体的には、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム、アシル(炭素数12,14の混合)アスパラギン酸トリエタノールアミン、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイル-N-メチル-β-アラニントリエタノールアミン、N-ミリストイル-β-アラニン塩、N-ラウロイルザルコシン塩、N-ラウロイル-N-エチルグリシン塩、ヤシ油脂肪酸-L-アルギニン石鹸が挙げられる。
【0024】
本実施形態で用いることが可能な(A)成分の市販例としては、アミノサーファクト(登録商標)シリーズ、アミノフォーマー(登録商標)シリーズ(旭化成ファインケム株式会社製);アミソフト(登録商標)シリーズ、アミライト(登録商標)シリーズ、アミノソープ(登録商標)シリーズ(味の素ヘルシーサプライ株式会社製);エナジコールL-30AN、エナジコールL-30ANT(ライオン株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
(A)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(A)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して1.5~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
(A)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、泡立ちがより良好となり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、毛髪用洗浄剤の粘度が高くなりすぎるのを抑えやすくなる。
【0026】
<(P)成分:カチオン性高分子化合物>
本実施形態の毛髪用洗浄剤において、(P)成分は、(P1)成分:カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムからなる群より選択される少なくとも一種と、(P2)成分:カチオン化デンプンと、を含む。
【0027】
≪(P1)成分≫
(P1)成分は、カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムからなる群より選択される少なくとも一種である。
(P1)成分には、通常シャンプーに配合されているカチオン化セルロース、カチオン化グアーガムを用いることができ、それぞれの多糖類骨格にアミノ基又はアンモニウム基を導入したものが好適に挙げられる。
【0028】
カチオン化セルロースとして、具体的には、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。
本実施形態で用いることが可能なカチオン化セルロースの市販例としては、DOCQUAT(登録商標)10、DOCQUAT(登録商標)10V(DOC Japan株式会社製);レオガードシリーズ(ライオン株式会社製);Ucare polymerシリーズ(ダウ・ケミカル社製);カチナールHC-100(東邦化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
カチオン化セルロースの重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定)は、特に限定されないが、例えば10万以上500万以下が好ましく、60万以上150万以下がより好ましい。
【0030】
カチオン化グアーガムとして、具体的には、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガムが挙げられる。
本実施形態で用いることが可能なカチオン化グアーガムの市販例としては、DOCGUM(登録商標)CG-L、DOCGUM(登録商標)CG-M(DOC Japan株式会社製);ラボールガムCG-M8M(DSP五協フード&ケミカル株式会社製);JAGUAR C-13S、JAGUAR C-14S、JAGUAR EXCEL、JAGUAR C-162(Solvay S.A.社製)等が挙げられる。
【0031】
カチオン化グアーガムの重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定)は、特に限定されないが、例えば10万以上500万以下が好ましく、150万以上400万以下がより好ましい。
【0032】
(P1)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(P1)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して0.02~0.75質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。
(P1)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、すすぎ時の指の通りが向上しやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、(P2)成分との併用効果が得られやすくなる。
【0033】
≪(P2)成分≫
(P2)成分は、カチオン化デンプンである。
(P2)成分には、デンプンにアミノ基又はアンモニウム基を導入したものが好適に挙げられる。カチオン化デンプンを構成するデンプンとしては、例えば、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、小麦デンプン等が挙げられる。
【0034】
(P2)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定)は、特に限定されないが、例えば200万以上1000万以下が好ましく、300万以上900万以下がより好ましい。
【0035】
(P2)成分として、具体的には、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、ヒドロキシプロピル酸化デンプンPGトリモニウムクロリドが挙げられる。
本実施形態で用いることが可能なカチオン化デンプンの市販例としては、DOCSTARCH(登録商標)CP、DOCSTARCH(登録商標)CP PF、DOCSTARCH(登録商標)CP Plus、DOCSTARCH(登録商標)CP-75(DOC Japan株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
(P2)成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(P2)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して0.1~1.35質量%が好ましく、0.2~0.75質量%がより好ましい。
(P2)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、すすぎ時のべたつき感が低減されやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、(P1)成分との併用効果が得られやすくなる。
【0037】
本実施形態の毛髪用洗浄剤中、前記(P)成分は、(P1)成分及び(P2)成分以外のカチオン性高分子化合物(以下「(P3)成分」という。)を含んでもよい。
(P3)成分には、(P1)成分及び(P2)成分以外のものであって、通常シャンプーにコンディショニング成分として配合されているカチオン性高分子化合物を用いることができる。
(P3)成分としては、例えば、塩化ジメチルジアリルアンモニウムホモポリマー、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリルアミドとの共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリルアミドとアクリル酸との共重合体、塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウムとN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドとの共重合体などが挙げられる。
【0038】
本実施形態の毛髪用洗浄剤中の(P)成分の含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して0.2~1.5質量%が好ましく、0.2~1質量%がより好ましい。
(P)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、指の通り等のすすぎ性能が充分に発現するようになり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、泡立ちが良好に保たれ、また、毛髪用洗浄剤の粘度が高くなりすぎるのを抑えやすくなる。
【0039】
本実施形態の毛髪用洗浄剤中、前記(P)成分に占める、(P1)成分と(P2)成分との合計の割合は、(P)成分の総質量(100質量%)に対して、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%でもよい。
【0040】
本実施形態の毛髪用洗浄剤中、前記(P1)成分と前記(P2)成分との比率は、(P2)成分/(P1)成分で表される質量比として、5/5~9/1であることが好ましく、5/5~8/2であることがより好ましく、5/5を超え7/3以下であることがさらに好ましい。
(P2)成分/(P1)成分で表される質量比が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、(P1)成分及び(P2)成分の併用効果が得られやすく、すすぎ時の指の通り良さと、べたつき感の低減との両立がより図られる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、すすぎの際に指の通りが良く毛髪が絡まりにくい感触を高められる。
【0041】
あるいは、他の側面として、本実施形態の毛髪用洗浄剤中、前記(P1)成分と前記(P2)成分との比率は、(P2)成分/(P1)成分で表される質量比として、2/8~9/1であってもよいし、3/7~9/1であってもよい。
後述のように、(A)成分、(P1)成分及び(P2)成分に加えて、さらにアミンオキシドを併用する場合、本実施形態の毛髪用洗浄剤中、前記(P1)成分と前記(P2)成分との比率は、(P2)成分/(P1)成分で表される質量比として、3/7~9/1であることが好ましく、3/7~8/2であることがより好ましく、4/6~8/2であることがさらに好ましい。
(P2)成分/(P1)成分で表される質量比が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、(P1)成分及び(P2)成分の併用効果が得られやすく、すすぎ時の指の通り良さと、べたつき感の低減との両立がより図られる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、すすぎの際に指の通りが良く毛髪が絡まりにくい感触を高められる。
【0042】
<その他成分>
本実施形態の毛髪用洗浄剤は、(A)成分及び(P)成分に加えて、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
その他成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の毛髪洗浄剤に配合される成分を適宜用いることができる。かかるその他成分としては、例えば、溶剤、(A)成分以外のアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、(P)成分以外のポリマー、香料、保湿剤、湿潤剤、pH調整剤、可溶化剤、粘度調整剤、殺菌剤、防腐剤、キレート剤、色素、各種訴求成分などが挙げられる。
【0043】
(A)成分以外のアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、N-アシル-N-メチルタウリン塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、脂肪酸石ケン、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
塩としては、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0044】
両性界面活性剤としては、例えば、N-デシルベタイン、セチルベタイン、ステアリルベタイン、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン系界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドメチルベタイン、ミリスチン酸アミドメチルベタイン、パルミチン酸アミドメチルベタイン、ステアリン酸アミドメチルベタイン等のアミドベタイン系界面活性剤;ヤシ油アルキルジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ヤシ油アルキルアミノメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、ミリスチルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン等のスルホベタイン系界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウリルアミノメチル-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-スルホプロピルベタイン等のヒドロキシスルホベタイン系界面活性剤;2-ヤシ油アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2-ラウリル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン系界面活性剤;アミドスルホベタイン系界面活性剤;ホスホベタイン系界面活性剤などが挙げられる。
【0045】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、アミンオキシド、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アルキルアルカノールアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド、アルカノールグルカミド、アルキルポリグルコシド、アルキルグリセリルエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、すすぎ感触の向上、洗浄剤組成の可溶化能の向上、洗浄剤の増粘効果の観点から、アミンオキシドを用いることが好ましい。
【0046】
アミンオキシドとしては、例えば、炭素数12~18のアルキルアミンオキシドが挙げられる。アミンオキシドとして具体的には、ラウリルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、オレイルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ラウラミドプロピルアミンオキシド、ミリスタミドプロピルアミンオキシド等が挙げられる。
アミンオキシドは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
毛髪用洗浄剤がアミンオキシドを含有する場合、毛髪用洗浄剤中のアミンオキシドの含有量は、毛髪用洗浄剤の総質量(100質量%)に対して1~12質量%が好ましく、1.5~10質量%がより好ましく、2~7.5質量%がさらに好ましい。
アミンオキシドの含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、すすぎ感触、増粘効果、洗浄剤の可溶化能、泡立て時の性能がより良好となり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、毛髪用洗浄剤の粘度が高くなりすぎるのを抑えやすくなる。
【0047】
粘度調整剤としては、例えば、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンセトステアリルヒドロキシミリスチレンエーテル、ポリオキシエチレンセチルステアリルジエーテル等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の毛髪用洗浄剤は、例えば、(A)成分及び(P)成分と、その他成分と、残部の溶剤とを混合して、各成分を溶剤に溶解することにより製造することができる。
(A)成分の配合は、毛髪用洗浄剤を製造する際に、あらかじめアルカリで中和してあるものを用いてもよいし、酸形態の原料を用いて製造工程中にアルカリを加えることで、中和した塩の形態としてもよい。
【0049】
本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、(A)成分及び(P)成分を溶剤に溶解した溶液の25℃におけるpHが、例えば4.5~8.0の範囲であるものが好ましく、pHが5.0~7.0の範囲であるものがより好ましい。
なお、毛髪用洗浄剤のpHは、化粧品原料基準(第2版)の一般試験法に定められた方法を用い、毛髪用洗浄剤中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定することができる。
【0050】
本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、(A)成分及び(P)成分を溶剤に溶解した溶液の25℃における粘度が、例えば500~3000mPa・sの範囲であるものが好ましく、粘度が1000~2500mPa・sの範囲であるものがより好ましい。
毛髪用洗浄剤の粘度は、化粧品原料基準第2法に従い、BM型粘度計にてローターNo.4(粘度の低いものはNo.3)を用い、ローターを6rpmで1分間回転させた後の読み値から粘度を算出する。
なお、実使用上は、目的等に応じて、例えば粘度調整剤を適宜添加することによって、毛髪用洗浄剤の粘度を、より高粘度に設定することがある。
【0051】
あるいは、他の側面として、本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、(A)成分と(P)成分とアミンオキシドとを溶剤に溶解した溶液の25℃におけるpHが、例えば4.5~8.0の範囲であるものが好ましく、pHが5.0~7.0の範囲であるものがより好ましく、pHが5.5~7.0の範囲であるものがさらに好ましい。
また、本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、(A)成分と(P)成分とアミンオキシドとを溶剤に溶解した溶液の25℃における粘度が、例えば500~7000mPa・sの範囲であるものが好ましく、粘度が700~5000mPa・sの範囲であるものがより好ましい。
【0052】
以上説明した本実施形態の毛髪用洗浄剤は、洗浄成分として(A)成分:アミノ酸系界面活性剤を採用し、コンディショニング成分として(P1)成分:カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムからなる群より選択される少なくとも一種と、(P2)成分:カチオン化デンプンと、が組み合わせて用いられている。
本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、(A)成分と(P1)成分とを含有する組成に、コンディショニング成分として、さらに、(P2)成分:カチオン化デンプンを併用したことにより、すすぎ性能が改質している。すなわち、すすぎ時の指の通りに優れ、かつ、べたつき感が低減されている。
加えて、本実施形態の毛髪用洗浄剤においては、AES等の他のアニオン界面活性剤を併用すること無く、すすぎ性能を改質できるため、洗浄成分に占めるアミノ酸系成分の配合比率を下げることがない。
【0053】
さらに、かかる実施形態の毛髪用洗浄剤は、アミノ酸系のシャンプーを使用したいが、頭皮や皮膚がセンシティブであったり、髪が細毛であったり、髪の長さが短かったりする使用者の、洗髪後にさっぱり感を感じたいという要求に対して、有用な商品となり得る。
【0054】
かかる本実施形態の毛髪用洗浄剤による効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推測される。
アミノ酸系界面活性剤に対し、カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムの少なくとも一方をコンディショニング成分とした複合体(コアセルベート)の場合、水に濡れた頭髪上に塗布して泡立てた際のコアセルベートの生成量が多い。
これに対し、コンディショニング成分として、さらに、カチオン化デンプンを併用した本実施形態の場合には、(i)前記の泡立てた際のコアセルベートの生成量が少なく抑えられている、もしくは(ii)水に濡れた頭髪上で泡立てる操作から、流水ですすぐ過程で生成するコアセルベートの生成量が全体的に少なく抑えられている、又は(iii)流水ですすぐ過程におけるコアセルベートの生成挙動(コアセルベーションの起きやすい濃度範囲)が異なる(
図3参照)。
あるいは、(iv)カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムの少なくとも一方と、カチオン化デンプンと、アミノ酸系界面活性剤と、の新たな複合体が形成する(
図4参照)。
以上より、本実施形態の毛髪用洗浄剤によれば、すすぎ性能が改質し、すすぎ時の指の通りに優れ、かつ、べたつき感が低減される、と推測される。
【0055】
また、他の実施形態の毛髪用洗浄剤は、洗浄成分として(A)成分:アミノ酸系界面活性剤及びアミンオキシドを採用し、コンディショニング成分として(P1)成分:カチオン化セルロース及びカチオン化グアーガムからなる群より選択される少なくとも一種と、(P2)成分:カチオン化デンプンと、が組み合わせて用いられている。
さらにアミンオキシドを併用することにより、(P1)成分と(P2)成分とを広い混合比率で組み合わせて用いることが可能となり、複合体(コアセルベート)の生成挙動が変化し得る。これに伴い、すすぎ時の指の通り、及びすすぎ後のべたつき感の低減効果がより向上する。加えて、アミンオキシドを含有することで、毛髪用洗浄剤における可溶化能が高められ、透明な外観を保ちやすくなる。さらに、粘度調整剤として増粘剤を任意に含有する場合、アミンオキシドが増粘剤の働きを高めて、組成物の粘度増加に寄与する。
【実施例0056】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0057】
<使用した成分>
実施例及び比較例では、以下に示す成分を用いた。
【0058】
(A)成分:アミノ酸系界面活性剤
A-1:N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン液、商品名「アミノサーファクト(登録商標)ACMT-L」、旭化成ファインケム株式会社製;純分30質量%
【0059】
(P)成分:カチオン性高分子化合物
(P)成分には、(P1)成分としてカチオン化セルロースと、(P2)成分としてカチオン化デンプンとを用いた。
【0060】
P1-1:カチオン化セルロース
ポリクオタニウム-10(塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース)、商品名「DOCQUAT(登録商標)10」、DOC Japan株式会社製;重量平均分子量(Mw)80万、純分100質量%
【0061】
P2-1:カチオン化デンプン
塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、商品名「DOCSTARCH(登録商標)CP Plus」、DOC Japan株式会社製;じゃがいもでんぷん由来の水溶性カチオン性ポリマー、純分32質量%
【0062】
その他成分
両性界面活性剤(1):コカミドプロピルベタイン液、商品名「アンヒトール55AB」、花王株式会社製;純分30質量%
両性界面活性剤(2):ラウリルヒドロキシスルホベタイン液、商品名「アンヒトール20HD」、花王株式会社製;純分30質量%
ノニオン界面活性剤(1):コカミドMEA、商品名「アミゾールCME」、川研ファインケミカル株式会社製
ノニオン界面活性剤(2):コカミドMEA、商品名「トーホールN-120」、東邦化学工業株式会社製
ノニオン界面活性剤(3):ラウラミンオキシド、商品名「アンヒトール20N」、花王株式会社製;純分35質量%
粘度調整剤(増粘剤):トリイソステアリン酸PEG-160ソルビタン、商品名「レオドールTW-IS399C」、花王株式会社製
保湿剤:1,3-ブチレングリコール、商品名「1,3-BG」、株式会社ダイセル製
湿潤剤:ソルビトール、商品名「ソルビトール(70%)」、花王株式会社製;純分70質量%
防腐剤(1):メチルパラベン、商品名「パラオキシ安息香酸メチル」、上野製薬株式会社製
防腐剤(2):フェノキシエタノール、商品名「ネオロンPH100」、ダウ・ケミカル日本株式会社製
防腐剤(3):ペンチレングリコール、商品名「Activonol-5」、Activon社製
キレート剤:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、商品名「クレワット N」、ナガセケムテックス株式会社製
溶剤:プロピレングリコール、商品名「PG」、ダウ・ケミカル株式会社製
溶剤:水、商品名「精製水(局方)」、小堺製薬株式会社製
【0063】
<毛髪用洗浄剤の調製(1)>
(実施例1~4、比較例1~2)
下記の表1に示す組成及び含有量となるように、各例の毛髪用洗浄剤を以下のようにして調製した。
具体的には、溶剤である水に、(P1)成分を加温しながら分散し、80℃にて(A)成分、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤(1)を順次、添加しながら混合溶解した。次いで、冷却し、60℃以下で(P2)成分及び防腐剤を添加しながら混合溶解することにより、各例の毛髪用洗浄剤を得た。
【0064】
表1中、各成分の数値は、毛髪用洗浄剤中の各成分の含有量を示し、毛髪用洗浄剤の総質量に対する割合(質量%;純分換算)を意味する。
毛髪用洗浄剤のpHは、pHメーター(製品名HM-30G、東亜ディーケーケー株式会社製)を用い、25℃に調整した毛髪用洗浄剤中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定した。
毛髪用洗浄剤の粘度は、BM型粘度計にてローターNo.4を用い、25℃に調整した毛髪用洗浄剤に対し、ローターを6rpmで1分間回転させた後の読み値から粘度を算出した。
【0065】
【0066】
<評価(1)>
各例の毛髪用洗浄剤を用いて毛束を洗髪し、すすぎ後の湿潤状態及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)をそれぞれ測定することにより、すすぎ後の感触について評価した。具体的には以下のようにして評価を行った。
【0067】
[毛束の準備]
ノーダメージの毛束として購入した、長さ10cmの毛束1gを、ノーマル毛用の毛束として使用した。
また、ノーダメージの毛束として購入した、長さ10cmの毛束1gを、市販のブリーチ剤(株式会社マンダム製)で、その取り扱い説明書の処理時間の2倍の時間にて処理して水洗し、さらに乾燥してから、ダメージ毛用の毛束として使用した。
【0068】
[櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定;すすぎ後の湿潤状態の場合]
手順(1):ノーマル毛用の長さ10cmの毛束1gを、40℃の温水により濡らして軽く絞り、試料である毛髪用洗浄剤0.1gを、この濡れた毛束の全体に延ばすように塗布した。
【0069】
手順(2):試料を塗布した毛束を、40℃の温水200mLに浸漬してすすぐ操作を2回行い、この後、水がしたたり落ちないように軽く絞った(希釈率200倍;すすぎ後半を想定)。
【0070】
手順(3):軽く絞った後の毛束に、櫛入れを5回行ってから、櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定を開始した。
手順(4):少なくとも8回の櫛入れの際の引張強度を測定した。
【0071】
引張強度の測定機器には、イマダ製のフォースゲージZTA/ZTSシリーズ型式DST-2Nを使用した。
櫛入れの際の引張強度の測定は、前記フォースゲージを固定し、毛束を吊り下げて、櫛通しを行いながら行った。すなわち、櫛を、毛束の長さ方向に対して垂直に保ちつつ、重力方向の下方へまっすぐに通したときの最大荷重を測定した。
また、櫛入れの際の引張強度の測定は、櫛入れ最初の1~2回目の測定値、及び毛束にたまたま櫛が引っかかってしまったような場合の異常値をいずれも除外した後の、複数の測定値の平均値を採用した。
【0072】
[櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定;すすぎ後の乾燥状態の場合]
ノーマル毛用の長さ10cmの毛束1gに対し、上記の手順(1)及び手順(2)の操作を同様にして行った。
手順(2)の操作後、軽く絞った後の毛束を、室温(25℃)で24時間自然乾燥した。
この後、自然乾燥した毛束に、櫛入れを5回行ってから、櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定を開始した。そして、上記手順(4)の操作を同様にして行い、櫛入れの際の引張強度を測定した。
【0073】
各例の毛髪用洗浄剤について、すすぎ後の湿潤状態及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)をそれぞれ測定した結果を、
図1及び
図2に示した。
尚、縦軸は、櫛入れの際の引張強度(単位:N(ニュートン))を示している。
【0074】
図1は、比較例1、実施例3、比較例2の各毛髪用洗浄剤を用い、ノーマル毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Wet-Combability)、及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Dry-Combability)を示すグラフである。
【0075】
図2は、比較例1、実施例3、比較例2の各毛髪用洗浄剤を用い、ダメージ毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Wet-Combability)、及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Dry-Combability)を示すグラフである。
【0076】
図1に示す結果から、ノーマル毛用の毛束/希釈率200倍(すすぎ後半を想定)/すすぎ後の湿潤状態について、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合が、毛髪の櫛通り荷重が最も低い値であった。
本発明を適用した実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、毛髪の櫛通り荷重が少し高くなっていた。
比較例1、実施例3及び比較例2の中では、比較例2の毛髪用洗浄剤を用いた場合が、毛髪の櫛通り荷重が最も高い値であった。
【0077】
ノーマル毛用の毛束/希釈率200倍(すすぎ後半を想定)/すすぎ後の乾燥状態について、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合が、毛髪の櫛通り荷重が最も高い値であった。実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合、及び比較例2の毛髪用洗浄剤を用いた場合は、いずれも、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、毛髪の櫛通り荷重が低くなっており、実施例3と比較例2とは毛髪の櫛通り荷重が同程度であった。
【0078】
以上より、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合は、すすぎの際に指の通りが非常に良いことが考えられる。しかしながら、比較例1の毛髪用洗浄剤においては、多量のコアセルベートが生成して、毛髪に過剰に付着しているため、すすぎ後の乾燥状態では、毛髪の櫛通り荷重が最も高い値であった、と考えられる。このことが、髪質又は肌質の違いなどによっては、すすぎ後にべたつく、さっぱり感が得られない、というように感じることに繋がっている、と推測される。
本発明を適用した実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合は、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、すすぎの際の指通りの強さが適度に抑えられていること、すすぎ後のべたつき(ヌルつき)の無さが改善していること、が考えられる。また、すすぎ後の乾燥状態では、実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合は、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合より、指の通りが良好であること、が考えられる。
比較例2の毛髪用洗浄剤を用いた場合は、すすぎの際の指通りの良さは劣るものの、すすぎ後の乾燥状態における指の通りが良好であること、が考えられる。
上述した、ノーマル毛用の毛束での結果の相違は、比較例1、実施例3、比較例2の各毛髪用洗浄剤における複合体(コアセルベート)の生成量、複合体の質の違いが現れていると推測される。
【0079】
図2に示す結果から、ダメージ毛用の毛束/希釈率200倍(すすぎ後半を想定)/すすぎ後の湿潤状態について、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合、実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合、及び比較例2の毛髪用洗浄剤を用いた場合で、毛髪の櫛通り荷重はほぼ同程度であった。
【0080】
ダメージ毛用の毛束/希釈率200倍(すすぎ後半を想定)/すすぎ後の乾燥状態について、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合が、毛髪の櫛通り荷重が最も高い値であった。実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合は、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、毛髪の櫛通り荷重が低くなっていた。比較例1、実施例3及び比較例2の中では、比較例2の毛髪用洗浄剤を用いた場合が、毛髪の櫛通り荷重が最も低い値であった。
【0081】
以上より、ダメージ毛に対しては、比較例1、実施例3及び比較例2の間で、複合体(コアセルベート)の付着量がそれほど変わらず、乾燥状態で、毛髪に付着した複合体の質の違いが現れていると推測される。
【0082】
<評価(2)>
比較例1、実施例3の各毛髪用洗浄剤で実際に洗髪(実用試験)を行い、以下のようにして官能評価を行った。
具体的には、トレーニングされた専門パネル4名がそれぞれ、濡らした頭髪に、髪の長さに合わせて毛髪用洗浄剤4~10gを塗布して、洗浄操作、すすぎ操作を順に行った。
次いで、コンディショナーを塗布して、すすぎ操作、乾燥操作を順に行った。コンディショナーには、各自が普段使っているブランドのコンディショナー5~12gを用いた。
その際、洗浄操作後のすすぎ操作におけるすすぎ操作後半の頭皮のさっぱり感、乾燥操作後の髪のべたつきの無さ、乾燥操作後の頭皮のさっぱり感を、前記の専門パネル4名にて評価した。
かかる評価は、各項目について、0点から4.5点まで;0.5点間隔で採点を行い、平均化することにより行った。
【0083】
【0084】
表2に示す結果から、本発明を適用した実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、洗浄操作後のすすぎ操作におけるすすぎ操作後半の頭皮のさっぱり感、乾燥操作後の髪のべたつきの無さ、及び乾燥操作後の頭皮のさっぱり感の官能評価がいずれも高いことが分かる。
すなわち、実使用においても、すすぎ時の感触の違いを、使用者が充分に実感できることが確認できた。
【0085】
実施例1、2の毛髪用洗浄剤を用いた場合においても、実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合よりは評価が低めであったが、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、洗浄操作後のすすぎ操作におけるすすぎ操作後半の頭皮のさっぱり感、乾燥操作後の髪のべたつきの無さ、及び乾燥操作後の頭皮のさっぱり感の官能評価がいずれも高いものであった。
【0086】
実施例4の毛髪用洗浄剤を用いた場合においては、実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合と同程度の評価であり、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、洗浄操作後のすすぎ操作におけるすすぎ操作後半の頭皮のさっぱり感、乾燥操作後の髪のべたつきの無さ、及び乾燥操作後の頭皮のさっぱり感の官能評価がいずれも高いものであった。
【0087】
比較例2の毛髪用洗浄剤を用いた場合には、洗浄操作後のすすぎ操作におけるすすぎ操作後半の頭皮のさっぱり感、乾燥操作後の髪のべたつきの無さ、及び乾燥操作後の頭皮のさっぱり感の官能評価は高いものの、洗浄操作後のすすぎの際に感じられる指通りの良さが弱いものであった。
【0088】
<評価(3)>
各例の毛髪用洗浄剤を水で希釈した際に生成するコアセルベートの生成挙動について検討した。この結果を
図3に示した。
【0089】
図3は、比較例1、実施例3、比較例2の各毛髪用洗浄剤の希釈倍率に対するコアセルベート生成量の変化を示すグラフである。
図3において、横軸は、毛髪用洗浄剤の希釈倍率を示し、右から左へ向かって希釈倍率が大きくなっている。これは、毛髪用洗浄剤を、濡れた頭髪に塗布して洗浄操作、すすぎ操作(すすぎ途中、すすぎ後半)と行う一連の洗髪行動に相当する。
縦軸は、濁度を指標とした、コアセルベート生成量を示している。濁度は、波長420nmの吸光度を測定している。濁度の値が低いほど、コアセルベート生成量が少なく(毛髪用洗浄剤の希釈液の濁りが弱く)なっており、濁度の値が高いほど、コアセルベート生成量が多く(毛髪用洗浄剤の希釈液の濁りが強く)なっている。
【0090】
図3に示す結果から、コアセルベートの生成量について、本発明を適用した実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、全体的に、コアセルベートの生成量が少なく抑えられていることが確認できる。
特に、毛髪用洗浄剤の希釈倍率が低い範囲(洗浄操作)及び希釈倍率が20~50倍付近(すすぎ途中)で、実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合のコアセルベートの生成量と、比較例1の毛髪用洗浄剤を用いた場合のコアセルベートの生成量と、の差が大きいことが分かる。
また、毛髪用洗浄剤の希釈倍率が50~100倍付近(すすぎ後半)では、実施例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合のコアセルベートの生成量が著しく増加している。実施例3の毛髪用洗浄剤と、比較例1の毛髪用洗浄剤とでは、流水ですすぐ過程におけるコアセルベートの生成挙動(コアセルベーションの起きやすい濃度範囲)が異なることが分かる。
【0091】
<評価(4)>
各例の毛髪用洗浄剤を水で50倍希釈した際の、希釈液の外観を目視観察した。
図4は、前記希釈液を写した写真である。
各毛髪用洗浄剤を調製後、室温(25℃)で1日間保存したサンプル0.1~1.0gを水で50倍希釈し、60秒間振とうし30分間以上放置経過後に撮影した。
図4における写真は、左側から、比較例1、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例2の各毛髪用洗浄剤の希釈液を撮影したものである。
【0092】
図4に示される希釈液の外観から、比較例1の毛髪用洗浄剤の希釈液では、複合体(コアセルベート)がほぼ一様に分散していることが確認できる。
【0093】
実施例1、実施例2、実施例3の各毛髪用洗浄剤の希釈液では、いずれも、複合体(コアセルベート)層と水層とに分離し、複合体(コアセルベート)層が上層に来ていた。これらの中で、実施例3の毛髪用洗浄剤の希釈液が、最も顕著に分離していた。
【0094】
実施例4の毛髪用洗浄剤の希釈液では、複合体(コアセルベート)層と水層とに分離し、複合体(コアセルベート)層が下層に来ていた。
【0095】
比較例2の毛髪用洗浄剤の希釈液では、複合体(コアセルベート)層と水層とに分離し、複合体(コアセルベート)層が下層に来ていたことに加え、より凝集した(離水傾向の)複合体が形成していた。
【0096】
これら希釈液の外観の違いから、カチオン化セルロース及びカチオン化デンプンを併用しているコンディショニング成分と、アミノ酸系界面活性剤との複合体(コアセルベート)は、カチオン化セルロースとアミノ酸系界面活性剤との複合体、及びカチオン化デンプンとアミノ酸系界面活性剤との複合体の単なる混合物ではなく、カチオン化セルロースとカチオン化デンプンとアミノ酸系界面活性剤との3成分からなる新たな複合体であることが推測される。
加えて、この3成分からなる新たな複合体は、カチオン化セルロースとカチオン化デンプンとの混合比率によっても、その物性が異なることが推測される。
【0097】
<毛髪用洗浄剤の調製(2)>
(実施例5~8、比較例3~4)
下記の表3に示す組成及び含有量となるように、各例の毛髪用洗浄剤を以下のようにして調製した。
具体的には、溶剤である水に、(P1)成分を加温しながら分散し、80℃にて(A)成分、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤(2)、ノニオン界面活性剤(3)、粘度調整剤(増粘剤)を順次、添加しながら混合溶解した。次いで、冷却し、60℃以下で(P2)成分及び防腐剤を添加しながら混合溶解することにより、各例の毛髪用洗浄剤を得た。
【0098】
表3中、各成分の数値は、毛髪用洗浄剤中の各成分の含有量を示し、毛髪用洗浄剤の総質量に対する割合(質量%;純分換算)を意味する。
毛髪用洗浄剤のpHは、pHメーター(製品名HM-30G、東亜ディーケーケー株式会社製)を用い、25℃に調整した毛髪用洗浄剤中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定した。
毛髪用洗浄剤の粘度は、BM型粘度計にてローターNo.4を用い、25℃に調整した毛髪用洗浄剤に対し、ローターを6rpmで1分間回転させた後の読み値から粘度を算出した。
【0099】
【0100】
<評価(5)>
実施例5~8及び比較例3~4の各毛髪用洗浄剤を用いて毛束を洗髪し、すすぎ後の湿潤状態及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)をそれぞれ測定することにより、すすぎ後の感触について評価した。
具体的には、[毛束の準備]、[櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定;すすぎ後の湿潤状態の場合]及び[櫛通り荷重(コーミングフォース)の測定;すすぎ後の乾燥状態の場合]を、それぞれ上記<評価(1)>と同様にして行った。
【0101】
各例の毛髪用洗浄剤について、すすぎ後の湿潤状態、及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重(コーミングフォース)をそれぞれ測定した結果を、
図5に示した。
尚、縦軸は、櫛入れの際の引張強度(単位:N(ニュートン))を示している。
【0102】
図5は、実施例5~8及び比較例3~4の各毛髪用洗浄剤を用い、ダメージ毛用の毛束に対して行った、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Wet-Combability)、及びすすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重の測定結果(Dry-Combability)を示すグラフである。
【0103】
図5に示す結果から、ダメージ毛用の毛束/希釈率200倍(すすぎ後半を想定)/すすぎ後の湿潤状態について、本発明を適用した実施例5~8の各毛髪用洗浄剤を用いた場合、比較例3~4の各毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、毛髪の櫛通り荷重が低くなっていた。また、実施例5~8の中では、実施例6~8の各毛髪用洗浄剤を用いた場合に、毛髪の櫛通り荷重がより低い値であった。
【0104】
ダメージ毛用の毛束/希釈率200倍(すすぎ後半を想定)/すすぎ後の乾燥状態について、実施例5~8及び比較例3~4いずれの毛髪用洗浄剤を用いた場合も、櫛入れの際の引張強度が0.3N付近又はそれ以下の低い値であり、毛髪の櫛通り荷重が低く抑えられていた。また、実施例5~8の中でも、実施例5~6の各毛髪用洗浄剤を用いた場合に、毛髪の櫛通り荷重がより低くなっていた。
【0105】
図1に示す結果では、比較例1(P1-1単独)及び実施例3(P1-1とP2-1との組合せ)の各毛髪用洗浄剤を用いた場合、すすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重の方が、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重よりも、櫛入れの際の引張強度が高い値であった。
一方、
図5に示す結果では、比較例3(P1-1単独)及び実施例5~8(P1-1とP2-1との組合せ)の各毛髪用洗浄剤を用いた場合、
図1に示す結果と異なり、すすぎ後の乾燥状態における毛髪の櫛通り荷重の方が、すすぎ後の湿潤状態における毛髪の櫛通り荷重よりも、櫛入れの際の引張強度が低い値であった。
【0106】
以上より、(A)成分、(P1)成分及び(P2)成分に加え、さらにアミンオキシドを併用することにより、すすぎの際の指通りがより良く感じられ、かつ、すすぎ後のべたつき(ヌルつき)も充分に抑えられること、が確認できる。
加えて、さらにアミンオキシドを併用することにより、(P1)成分と(P2)成分とを広い混合比率で組み合わせて用いることが可能となる。例えば、(P2)成分を、(P1)成分よりも少ない質量比となるように混合してもよい。
上述した、ダメージ毛用の毛束での結果の相違は、比較例3、実施例5~8、比較例4の各毛髪用洗浄剤における複合体(コアセルベート)の生成量、複合体の質の違いがアミンオキシドの併用により現れるため、と推測される。
【0107】
<評価(6)>
比較例3、実施例6の各毛髪用洗浄剤で実際に洗髪(実用試験)を行い、以下のようにして官能評価を行った。
具体的には、トレーニングされた専門パネル2名がそれぞれ、濡らした頭髪に、髪の長さに合わせて毛髪用洗浄剤4~10gを塗布して、洗浄操作、すすぎ操作を順に行った。
次いで、コンディショナーを塗布して、すすぎ操作、乾燥操作を順に行った。コンディショナーには、各自が普段使っているブランドのコンディショナー5~12gを用いた。
その際、洗浄操作時の泡量、洗浄操作時の泡質(弾力)、洗浄操作時の毛髪表面のすべり(きしみの無さ)、洗浄操作後のすすぎ操作におけるすすぎ操作後半の頭皮のさっぱり感、洗浄操作後のすすぎ操作を終えた後にコンディショナーを塗布した際の乗りの良さ、乾燥操作後の指通り(からまりの無さ)、乾燥操作後の毛髪表面のすべり(きしみの無さ)を、前記の専門パネル2名にて評価した。
かかる評価は、各項目について、1点から7点まで;0.5点間隔で採点を行い、平均化することにより行った。
【0108】
【0109】
表4に示す結果から、本発明を適用した実施例6の毛髪用洗浄剤を用いた場合、比較例3の毛髪用洗浄剤を用いた場合に比べて、洗浄操作時の性能、洗浄操作後のすすぎ操作におけるすすぎ操作後半の頭皮のさっぱり感、乾燥操作後の性能についての官能評価がいずれも顕著に高いことが分かる。
すなわち、実使用においても、すすぎ時の感触の違いを、使用者が充分に実感できることが確認できた。加えて、泡立て時の性能、コンディショナー処理後の感触の違いについても、使用者が充分に実感できることが確認できた。
【0110】
<毛髪用洗浄剤の調製(3)>
下記の表5に示す組成及び含有量となるように、各例の毛髪用洗浄剤を以下のようにして調製した。
【0111】
(実施例9)
溶剤である水に、(P1)成分を加温しながら分散し、80℃にて(A)成分、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤(2)、ノニオン界面活性剤(3)、粘度調整剤(増粘剤)を順次、添加しながら混合溶解した。次いで、冷却し、60℃以下で(P2)成分及び防腐剤を添加しながら混合溶解することにより、実施例9の毛髪用洗浄剤を得た。
【0112】
(実施例10)
ノニオン界面活性剤(3)を配合しない以外は、実施例9と同様にして、表5に示す各成分を混合溶解することにより、実施例10の毛髪用洗浄剤を得た。
【0113】
表5中、各成分の数値は、毛髪用洗浄剤中の各成分の含有量を示し、毛髪用洗浄剤の総質量に対する割合(質量%;純分換算)を意味する。
毛髪用洗浄剤のpHは、pHメーター(製品名HM-30G、東亜ディーケーケー株式会社製)を用い、25℃に調整した毛髪用洗浄剤中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定した。
【0114】
<評価(7)>
実施例9及び実施例10の各毛髪用洗浄剤について、以下のようにして粘度の測定、及び経時安定性の評価をそれぞれ行った。
【0115】
[粘度の測定]
各例の毛髪用洗浄剤の粘度は、BM型粘度計にてローターNo.4を用い、25℃に調整した毛髪用洗浄剤に対し、ローターを6rpmで1分間回転させた後の読み値から粘度を算出した。その結果を表5に示した。
【0116】
[経時安定性の評価]
各例の毛髪用洗浄剤を、温度2℃の冷蔵庫内に45日間静置して保管した。このように保管されていた毛髪用洗浄剤を冷蔵庫内から取り出し、室温(25℃)の実験室で3分間経過後の外観を
図6に示した。
【0117】
【0118】
表5に示す結果から、アミンオキシドを含有する実施例9の毛髪用洗浄剤の方が、アミンオキシドを含有しない実施例10の毛髪用洗浄剤よりも、粘度が高められていることが確認できる。このことから、アミンオキシドの配合が、組成物の粘度増加に影響していると考えられる。
【0119】
図6に示す結果から、アミンオキシドを含有する実施例9の毛髪用洗浄剤は、結露でほぼ透明な状態であり、アミンオキシドを含有しない実施例10の毛髪用洗浄剤は、明らかに白濁していることが確認できる。このことから、アミンオキシドの配合が、組成物の可溶化能、透明外観に影響していると考えられる。