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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007555
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】手芸用補助器具
(51)【国際特許分類】
   D04B 3/04 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
D04B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110594
(22)【出願日】2020-06-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年2月22日に第25回手づくりフェア in 九州にて公開 令和2年2月29日から3月1日に~しあわせを編む~マルティナさんと魔法の毛糸フェアにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】500215229
【氏名又は名称】チューリップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕太郎
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AB06
4L054NA02
(57)【要約】
【課題】繰り出す糸の張力を容易に調整および保持可能とし、手指に力の入りにくい人や、手芸の初心者でも糸を使った手芸が容易になるよう補助する。
【解決手段】平板状の本体部2と、本体部2の下方に設けられ本体部2を立設させる基部3と、を備え、本体部2は、複数の挿通孔21a,22a,23a,24aと、本体部2の縁部201,202から挿通孔21a,22a,23a,24aへ達するスリット21b,22b,23b,24bと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を保持するための手芸用補助器具であって、
平板状の本体部と、該本体部の下方に設けられ該本体部を立設させる基部と、を備え、
前記本体部は、複数の挿通孔と、該本体部の縁部から各該挿通孔へ達するスリットと、を有することを特徴とする手芸用補助器具。
【請求項2】
請求項1に記載の手芸用補助器具において、
複数の前記挿通孔は、それぞれ異なる大きさを有することを特徴とする手芸用補助器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の手芸用補助器具において、
前記本体部は、左右に間隔をあけて設けられた第1挿通孔および第2挿通孔と、該本体部の左側の前記縁部から横方向に延び該第1挿通孔へ達する第1スリットと、該本体部の右側の前記縁部から横方向に延び該第2挿通孔へ達する第2スリットと、を少なくとも有することを特徴とする手芸用補助器具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の手芸用補助器具において、
前記本体部は、前記スリットの外側端部に、前記縁部へ向かうにつれて幅広に形成され、該スリットの幅寸法より大きく形成された導入部を有することを特徴とする手芸用補助器具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の手芸用補助器具において、
前記基部は、平滑面へ着脱自在な吸着部を有することを特徴とする手芸用補助器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を用いた手芸のための手芸用補助器具に関する。
【背景技術】
【0002】
毛糸や刺繍糸等の糸を用いた手芸は、手指によって糸を引っ張る力を調節し、一定の張力を保ちながら作業する必要がある。例えば、かぎ針編みでは、右手でかぎ針を持って編み進める場合、左手では、親指と中指とで編み目を保持しつつ、他の指で繰り出す糸の張力を調節しなければならない。このような作業は、手指に力の入りにくい人や手芸の初心者にとって、非常に困難である。
【0003】
従来、手芸を補助するための器具には様々なものが知られている。例えば特許文献1には、かぎ針又は編み棒と補助具とを一体化させてあり、力の弱い人や、手指の動きが不自由な人でも、編み物を行うことのできる編み物補助具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6687936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている編み物補助具は、両手にそれぞれ装着することができる。この編み物補助具を、かぎ針を持つ手に装着することにより、弱い力でもかぎ針を保持することができる。しかしながら、この編み物補助具を、かぎ針を持たない手に装着しても、繰り出す糸の張力の調整は、作業者自身が行わなければならない。片手で、編み目を保持すると同時に、糸の張力を調節しなければならないという困難性は解消されていない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、繰り出す糸の張力を容易に調整および保持可能とし、手指に力の入りにくい人や、手芸の初心者でも糸を用いた手芸が容易になるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、糸を保持するための手芸用補助器具であって、平板状の本体部と、該本体部の下方に設けられ該本体部を立設させる基部と、を備え、前記本体部は、複数の挿通孔と、該本体部の縁部から各該挿通孔へ達するスリットと、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、基部によって本体部を立設させるため、手芸用補助器具を机等に載置することができる。毛糸や刺繍糸等の手芸用の糸は、従来のように手元から繰り出されるのではなく、少し離れた位置から手芸用補助器具を介して繰り出されるので、糸の絡まりを防止できる。そして、本体部に設けられた少なくとも2箇所の挿通孔へ糸を挿通させることによって、張力の調整が可能となり、手芸の作業が容易となる。例えばかぎ針編みでは、かぎ針を持たない手は編み目を軽く保持するだけでよく、糸の張力を行う必要がないため、かぎ針を持った手に意識を集中させて作業を進めることができる。また、スリットを介して挿通孔へ糸を導入できるため、手芸用補助器具から糸を外す際に糸を切断する必要がない。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、複数の前記挿通孔は、それぞれ異なる大きさを有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、複数の挿通孔へ糸を架け渡す際に、糸の種類や太さに基づいて、架け渡す挿通孔の大きさを選択し、糸の張力を調整することができるため、汎用性が高い。例えば、張力を弱くしたい場合は、より大きな挿通孔を選択し、張力を強くしたい場合は、より小さな挿通孔を選択することが可能である。大きさの異なる複数の挿通孔を組み合わせて糸を挿通させることにより、糸の張力を適度に調整可能となる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記本体部は、左右に間隔をあけて設けられた第1挿通孔および第2挿通孔と、該本体部の左側の前記縁部から横方向に延び該第1挿通孔へ達する第1スリットと、該本体部の右側の前記縁部から横方向に延び該第2挿通孔へ達する第2スリットと、を少なくとも有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1挿通孔および第2挿通孔へ糸を通し、手芸用補助器具を横断するように糸を架け渡して使用することにより、適度な張力を発生させつつも円滑に糸を繰り出すことが可能となり、糸と挿通孔との間に過度な摩擦力が働いて糸が傷ついたり、絡まったりするのを防ぐことができる。
【0013】
第4の発明は、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記本体部は、前記スリットの外側端部に、前記縁部へ向かうにつれて幅広に形成され、該スリットの幅寸法より大きく形成された導入部を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、幅広に形成された導入部から糸を導入できるので、本体部の縁部からスリットへ糸を導入する作業が容易となる。
【0015】
第5の発明は、第1から第4のいずれか1つの発明において、前記基部は、平滑面へ着脱自在な吸着部を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、手芸用補助器具を様々な場所に固定することが可能であり、作業中に誤って過度な力が掛かった場合も、手芸用補助器具が転倒するおそれがない。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、繰り出す糸の張力を容易に調整および保持可能とし、手指に力の入りにくい人や、手芸の初心者でも糸を使った手芸が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る手芸用補助器具を示す正面図である。
図2】本体部の正面図である。
図3】本体部の側面図である。
図4】本体部の平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る手芸用補助器具の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る手芸用補助器具1を示す正面図である。手芸用補助器具1は、手芸において糸を保持するための補助器具であり、本体部2と、本体部2の下方に設けられ本体部2を立設させる基部3と、を備えている。なお、糸は毛糸や刺繍糸の他にも、手芸に用いられる様々な種類や太さの糸を使用することができる。
【0021】
図2は、本体部2の正面図である。なお、図示しない背面図は正面図と左右対称である。また、図3は、本体部2の右側面図である。なお、図示しない左側面図は右側面図と同一である。図4は、本体部2の平面図である。なお、図示しない底面図は平面図と同一である。図2から図4にも示すように、本体部2は、平板状の部材である。本体部2の材質は限定されないが、適度な弾性を有するものが好ましく、例えばプラスチック製の板材を用いることができる。また、本体部2の厚みは、例えば1mm~数mmである。
【0022】
本体部2は、上下方向に長く、上方は半楕円形であり、下方は角部が丸みを帯びた略矩形であるが、他の形状であっても良い。本体部2は、複数の挿通孔21a,22a,23a,24aと、本体部2の縁部201,202から、各該挿通孔21a,22a,23a,24aへ達するスリット21b,22b,23b,24bと、を有する。詳細には、左右に間隔をあけて設けられた第1挿通孔21aおよび第2挿通孔22aと、第1挿通孔21aおよび第2挿通孔22aの下方に設けられ、これらと同様に左右に間隔をあけて設けられた第3挿通孔23aおよび第4挿通孔24aとを有する。
【0023】
本体部2の左右端部には、上下方向に縁部201,202が延びている。第1挿通孔21aおよび第3挿通孔23aは、本体部2の左側の縁部201から約1cm内側に離れて設けられている。本体部2は、左側の縁部201から横方向に延び第1挿通孔21aへ達する第1スリット21bと、左側の縁部201から横方向に延び第3挿通孔23aへ達する第3スリット23bとを有する。
【0024】
第2挿通孔22aおよび第4挿通孔24aは、本体部2の右側の縁部202から約1cm内側に離れて設けられており、本体部2は、右側の縁部202から横方向に延び第2挿通孔22aへ達する第2スリット22bと、左側の縁部202から横方向に延び第4挿通孔24aへ達する第4スリット24bとを有する。
【0025】
第1挿通孔21a,第2挿通孔22a,第3挿通孔23aおよび第4挿通孔24aは、それぞれ異なる大きさを有する。その大きさは限定されないが、例えば本実施形態においては、第1挿通孔21aの直径が2.5mm、第2挿通孔22aの直径が1.5mm、第3挿通孔の直径が4.5mm、第4挿通孔24aの直径が3.5mmである。これらの挿通孔21a,22a,23a,24aのうち少なくとも2つに糸を挿通させて手芸用補助器具1を用いるが、使用する糸の太さや材質および挿通孔の大きさの組み合わせによって、挿通孔において発生する摩擦力が異なるため、糸の張り具合を考慮しながら、架け渡す挿通孔を選定することができる。なお、本実施形態では4つの挿通孔を設けたが、挿通孔の数は複数であればよく、4つに限定されない。
【0026】
スリット21b,22b,23b,24bの幅や縁部201,202からの長さは、限定されないが、挿通孔21a,22a,23a,24aに挿通された糸が作業中に脱落しないよう、挿通孔21a,22a,23a,24aの直径よりも狭い幅であることが好ましい。スリット21b,22b,23b,24bは、それぞれが達する挿通孔21a,22a,23a,24aの大きさによって、異なる幅や長さに形成することにより、糸を扱いやすくすることが可能である。例えば本実施形態においては、4つの挿通孔21a,22a,23a,24aのうち、小さい2つの挿通孔21a,22aに達するスリット21b,22bは幅0.75mmであり、大きい2つの挿通孔23a,24aに達するスリット23b,24bの幅1.25mmよりも狭く形成されている。また、スリット21b,22bの縁部201,202からの長さは9.5mmであり、スリット23b,24bの縁部201,202からの長さ11.5mmよりも短く形成されている。
【0027】
また、本体部2は、スリット21b,22b,23b,24bの外側端部に、縁部201,202へ向かうにつれて幅広に形成され、該スリットの幅寸法より大きく形成された導入部21c,22c,23c,24cを有する。本実施形態において、導入部21c,22c,23c,24cは、スリット21b,22b,23b,24bの一方の側壁を傾斜させ、本体部2の縁部201,202へ向かうにつれて幅が広くなるように形成されている。上記したように、糸が作業中に脱落しないよう、挿通孔21a,22a,23a,24aの直径よりも狭い幅でスリット21b,22b,23b,24bを設けた場合、縁部から狭いスリットに糸を導入することが難しくなってしまうが、導入部21c,22c,23c,24cを設けたことによって、糸の導入が容易となる。
【0028】
基部3は、差込口31aを有する接続部31と、接続部31の左右両端に設けられた小物入れ32,32と、接続部31の下部に設けられた吸着部33とを備える。接続部31は、本体部2よりも厚みのある板材であり、上方に向けて開口する差込口31aを有する。本体部2は、下部が基部3に設けた差込口31aに差し込まれることにより、基部3の上方に立設する。小物入れ32は、上下方向に延びる円筒状の部材であり、底部を有し上方が開口しているため、針等の手芸道具を立てておくことができる。吸着部33は、例えば吸盤であり、手芸用補助器具1を平滑面へ着脱自在とする。机等の平滑面へ吸着部33を当接させ、吸着部33の中心部に圧力をかけるように基部3を押し付けると、吸着部33は、内部が負圧になって平滑面に吸着する。が吸着面に吸着する。
【0029】
(手芸用補助器具の使用要領)
次に、手芸用補助器具1の使用要領について説明する。まず、机等の平滑面に吸着部33を吸着させ、基部3を固定する。そして、手芸に用いる糸を、導入部からスリットを介して挿通孔に挿通させ、糸を手芸用補助器具1の左右に横断させるように複数の挿通孔へ挿通させる。
【0030】
詳細には、図5に示すように、糸Yを本体部2の正面側から導入部23cおよびスリット23bを介して第3挿通孔23aへ挿通させ、本体部2の背面側を横断させて、本体部2の背面側から導入部24cおよびスリット24bを介して第4挿通孔24aへ挿通させ、本体部2の正面側へ引き出すことによって、手元へ繰り出す糸Yを準備する。本実施形態では、同じ高さにある第3挿通孔23aと第4挿通孔24aを用い、左側から右側へ糸Yを横断させるように架け渡したが、右側から左側へ架け渡しても良い。また、高さの異なる2つの挿通孔を用いても良く、例えば、第1挿通孔21aから第4挿通孔24aのように、斜めに架け渡しても良い。糸Yの張力は、糸の太さ、種類、材質によって異なるため、使用する糸に基づいて挿通させる挿通孔21a,22a,23a,24aの組み合わせを選択し、適度な張力となるよう調整する。
【0031】
このように手芸用補助器具1に架け渡した糸Yは、繰り出される際に略一定の張力が発生する。そのため、例えばかぎ針編みを行う場合は、右手にかぎ針Xを持ち、左手で編み目を軽く保持するだけで良い。手芸用補助器具1によって、繰り出される糸Yには適度な張力が掛かるため、編み目を保持する左手は、繰り出す糸の張力の調整をする必要がない。
【0032】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、基部3の上方に立設する本体部2に複数の挿通孔21a,22a,23a,24aを設け、少なくとも2つの挿通孔に糸を挿通させることにより糸に適度な張力を発生させることができるので、手指に力の入りにくい人や、手芸の初心者であっても、手指で糸の張力を調整する必要がなく、手芸が容易になる。
【0033】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明に係る手芸用補助器具は、糸を用いた手芸を補助するために使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 手芸用補助器具
2 本体部
21a,22a,23a,24a 挿通孔
21b,22b,23b,24b スリット
21c,22c,23c,24c 導入部
201,202 縁部
3 基部
31 接続部
31a 差込口
32 小物入れ
33 吸着部
図1
図2
図3
図4
図5