(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075572
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】MRIシステム及び受信コイル装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220511BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20220511BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20220511BHJP
G01R 33/3415 20060101ALI20220511BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61B5/055 355
A61B5/055 366
A61B5/055 390
G01T1/161 A
G01N24/00 570C
G01R33/3415
A61N5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021177836
(22)【出願日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】2017436.3
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】521191414
【氏名又は名称】テスラ ダイナミック コイルズ ベーフェー
(71)【出願人】
【識別番号】521191425
【氏名又は名称】フーツラ コンポジッツ ベー.フェー.
(71)【出願人】
【識別番号】514116305
【氏名又は名称】ユーエムセー・ユトレヒト・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥニ クロンプ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ジユレマ
(72)【発明者】
【氏名】カタリナ アルテアガ デ カストロ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーノ ボルゴ
【テーマコード(参考)】
4C082
4C096
4C188
【Fターム(参考)】
4C082AE01
4C096AA18
4C096AC01
4C096AC03
4C096AD03
4C096AD10
4C096AD18
4C096CA15
4C096CA17
4C096CC06
4C096CC12
4C096CC40
4C096EB07
4C188EE02
4C188FF08
(57)【要約】
【課題】メインMRIスキャナ装置と共に使用するためのMRIシステム受信コイル装置3を提供する。
【解決手段】装置は、所定の周波数での第1のインピーダンス及び一次受信コイルによって画定される断面によって定められる第1のサイズを有する少なくとも1つの一次受信コイル6、並びに前記所定の周波数での第2のインピーダンス及び補助受信コイルによって画定される断面によって定められる第2のサイズを有する少なくとも1つの補助受信コイル7を備え、第1のインピーダンスが第2のインピーダンスより低く、第1のサイズが第2のサイズより大きい。
【選択図】
図8B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインMRIスキャン装置と共に使用するためのMRIシステム受信コイル装置であって、所定の周波数での第1のインピーダンス及び一次受信コイルによって画定される断面によって定められる第1のサイズを有する少なくとも1つの一次受信コイル、並びに前記所定の周波数での第2のインピーダンス及び補助受信コイルによって画定される断面によって定められる第2のサイズを有する少なくとも1つの補助受信コイルを備え、前記第1のインピーダンスが前記第2のインピーダンスより低く、前記第1のサイズが前記第2のサイズより大きい、MRIシステム受信コイル装置。
【請求項2】
前記受信コイル装置が、複数の補助受信コイルを備え、前記補助受信コイルの各々が、前記第1のインピーダンスより高い、前記所定の周波数でのインピーダンスを有し、前記補助受信コイルの各々が、前記第1のサイズより小さい、それぞれの前記補助受信コイルによって画定される断面によって定められるサイズを有する、請求項1に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの補助受信コイルが、前記一次受信コイルより柔軟である、請求項1又は2に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項4】
前記一次受信コイル及び前記補助コイルのうちの少なくとも1つを支える、支持構造を備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項5】
前記支持構造が少なくとも2つの部分を含み、前記部分の第1のものが前記一次受信コイルを支え、前記部分の第2のものが前記補助受信コイルを支える、請求項4に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項6】
前記支持構造の前記少なくとも2つの部分が、前記支持構造の前記2つの部分間での対象の設置を可能にするアクセス構成と、前記受信コイル装置が共に使用されるMRI機器の画像化操作中に使用するために、前記一次受信コイル及び補助受信コイルを互いに対して所望の位置に設置するための機能的構成との間で移動可能に配設される、請求項5に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの補助受信コイルを支持する前記支持部分が、前記一次受信コイルを支持する前記支持部分より柔軟である、請求項5又は6に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの支持部分のうちの1つが、MRI機器の患者支持ベッドに搭載する又は組み込むための基台部分を含む、請求項5から7までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項9】
前記少なくとも2つの支持部分のうちのもう一方が、前記基台部分に取り付けるためのカバー部分を含む、請求項8に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項10】
前記基台部分が前記一次受信コイルを支え、前記カバー部分が前記補助受信コイルを支える、請求項9に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項11】
前記カバー部分が、各々が対象における目的のそれぞれの部分を覆うための、複数のカバーリング部分を含み、複数の補助コイルがあり、前記複数の補助受信コイルにおけるそれぞれの少なくとも1つの補助受信コイルが、前記複数のカバーリング部分におけるそれぞれのカバーリング部分に設けられる、請求項9又は10に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項12】
前記基台部分が、対象の頭部を支持するための枕部分の少なくとも一部を含む、請求項8から11までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項13】
頭部及び/又は顔部及び/又は頸部及び/又は肩部受信コイル装置である、請求項1から12までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項14】
放射線治療のために提供される固定マスク又は他のジグに加えて、すなわち、その周囲で、使用することができるように配設される、請求項1から13までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項15】
放射線、例えば、使用中に適用される放射線治療ビーム、又は画像の形成に使用するための放射線が、使用において通過することができるゾーンと対応する、電子部品フリー・ゾーンを含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの補助受信コイルが、ループに配設される1本の同軸ケーブルを備え、ギャップが、前記ループの周囲の途中の位置で前記同軸ケーブルの外部導体に設けられ、前記1本の同軸ケーブルの第1の端部の前記外部導体が、前記1本の同軸ケーブルの第2の端部の前記外部導体と接続される、請求項1から15までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項17】
前記一次受信コイルが、少なくとも1つの非遮蔽導体部分を含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置。
【請求項18】
メインMRIスキャナ装置、患者支持器、及び前記患者支持器に設けられ、前記メインMRIスキャナ装置へ電気的に接続される、請求項1から17までのいずれか一項に記載のMRIシステム受信コイル装置を備える、MRIシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のMRIシステム及び医療用直線加速器システムを備える、MR-Linacシステム。
【請求項20】
請求項18に記載のMRIシステム及び陽電子放出断層撮影システムを備える、PET-MRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信コイル装置を含むMRIシステムに関し、MRIシステム、並びにいくつかの実施例において、MRIシステムが放射線源に依存する別のシステムと組み合わせて使用される、MR-Linac及びPET-MRシステムなどの組合せのシステムにおいて使用するための受信コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIシステムは、典型的には、メインMRIスキャナ装置、スキャン中に患者が横たわる患者支持器又はベッド、及び少なくともいくつかの場合に、スキャンを行おうとする特定の身体部分の領域において設置するために配設される、分離した局所的な受信コイル装置(又は身体部分専用受信コイル)を備える。
【0003】
メインMRIスキャナ装置は、典型的には、メイン磁石、勾配磁場コイル、RF送信コイル、及び受信コイルを備え、全てが、患者がスキャン中に配置されるボアを有するメイン・ユニットに配設される。存在する場合、身体部分専用受信コイルもまた、典型的には、スキャン中にボアに配置される。
【0004】
周知のように、MRI(磁気共鳴画像法:magnetic resonance imaging)システムは、対象を画像化するために広く使用され、MR-Linac及びPET-MRシステムなどの組合せシステムにおいても使用され得る。これらは、例えば治療のために、例えばMR-Linacにおいて、又は例えばPET-MRにおいて機能的画像化を提供するために、磁気共鳴画像法を放射線を利用する他の技術と組み合わせる。MRIの実施において、磁石が大きな静磁場B0を発生させ、RF送信コイルが交番磁場B1を発生させ、受信コイルが、メイン・ユニット又は身体部分専用受信コイルのいずれに設けられているかに関わらず、磁気共鳴信号を収集する(すなわち、磁気共鳴データを獲得する)ために配設される。勾配磁場コイルは、B0場での空間エンコードにより断層撮影を可能とするために使用される。
【0005】
MRIシステムが、スキャン機器のメイン・ユニットに設けられた受信コイルだけを使用して運用される場合に、その結果の解像度及び精度は、いくつかの場合において限定され得る。これにより、分離した、局所的と言われることもある、受信コイル、例えば、選択された位置/身体部分の画像化を改善することを目的とする、上記の身体部分専用コイルが使用されることになる。
【0006】
しかしながら、既存の身体部分専用受信コイル装置には制限がある。これらには、特定の身体部分の周囲に受信コイル装置を配置する、若しくは装置に特定の身体部分を配置するのに手間がかかる場合がある、及び/又は、受信コイル装置が目的の領域について不十分な画像化結果をもたらす場合がある、及び/又は、受信コイル装置が、放射線源を使用するシステム、例えば、直線加速器若しくは陽電子放出断層撮影システムなどの他のシステムの使用と適合しない場合があることが挙げられる。
【0007】
したがって、これらの課題のうちの少なくとも1つに対処することを目的とするMRIシステム受信コイル装置、並びに、そのようなMRIシステム受信コイル装置を含む、MRIシステム及び併用療法及び/又は画像化システムを提供することが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によると、メインMRIスキャン装置と共に使用するためのMRIシステム受信コイル装置であって、所定の周波数での第1のインピーダンス及び一次受信コイルによって画定される断面によって定められる第1のサイズを有する少なくとも1つの一次受信コイル、並びに前記所定の周波数での第2のインピーダンス及び補助受信コイルによって画定される断面によって定められる第2のサイズを有する少なくとも1つの補助受信コイルを備え、第1のインピーダンスが第2のインピーダンスより低く、第1のサイズが第2のサイズより大きい、MRIシステム受信コイル装置が提供される。
【0009】
これにより、一次受信コイルが、画像化される対象における比較的に深い領域から信号を取得するのに役立ち(依然として、受信コイル装置に限定的であるが)、補助受信コイルが、補助受信コイルの位置に比較的に近接する領域から信号を取得するのに役立つ、コイル装置の提供が可能になる。
【0010】
好ましくは、受信コイル装置は、複数の補助受信コイルを備え、補助受信コイルの各々が、第1のインピーダンスより高い、前記所定の周波数でのインピーダンスを有し、補助受信コイルの各々が、第1のサイズより小さい、それぞれの補助受信コイルによって画定される断面によって定められるサイズを有する。
【0011】
これらの補助受信コイルが比較的に高いインピーダンスを有するので、コイルとそれらの周辺部との間の相互結合の問題が低減される。
【0012】
1つの一次受信コイルを提供することが一般的に好ましいが、いくつかの実施例において、受信コイル装置は複数の一次受信コイルを備える。そのような場合に、複数の一次受信コイルは、典型的には、互いに対し精密な位置関係で維持されて、相互結合を最小限にし、例えば、複数の一次受信コイルは、剛性の支持体に取り付けられ得る。
【0013】
受信コイル装置は、対象の所定の部分の画像化に使用するために配設される、身体部分専用受信コイル装置であり得る。
【0014】
受信コイル装置は、一次受信コイル及び補助コイルのうちの少なくとも1つを支える、支持構造を備え得る。
【0015】
支持構造は、一次受信コイル及び補助コイルのうちの少なくとも1つを所望の形状で保持し得る。
【0016】
支持構造は、一次受信コイル及び補助コイルのうちの少なくとも1つを所望の形状で保持するための、設置手段を備え得る。
【0017】
設置手段は固定手段を備え得る。設置手段は1つ又は複数の溝又はチャネルを備え得る。
【0018】
支持構造が少なくとも2つの部分を含む場合があり、その部分の第1のものが一次受信コイルを支え、その部分の第2のものが補助受信コイルを支える。
【0019】
支持構造の少なくとも2つの部分は、支持構造の2つの部分間での対象の設置を可能にするアクセス構成と、受信コイル装置が共に使用されるMRI機器の画像化操作中に使用するために、一次受信コイル及び補助受信コイルを互いに対して所望の位置に設置するための機能的構成との間で移動可能に配設され得る。
【0020】
これにより、対象の部分を受信コイル装置に容易に導入することが可能になり、及び/又は、対象に受信コイル装置を容易に合わせることが可能になり、一方で、画像化のために対象に対してコイルを正確に配置することが可能になり得る。
【0021】
少なくとも1つの補助受信コイルは、一次受信コイルより柔軟であり得る。
【0022】
これは、少なくとも1つの補助受信コイルをそれぞれの支持部分へ取り付けるのを助けることができる。それにより、少なくとも1つの補助受信コイルを支持するために比較的に柔軟な支持部分を使用することが容易になり得る。
【0023】
少なくとも1つの補助受信コイルを支持する支持部分は、一次受信コイルを支持する支持部分より柔軟であり得る。
【0024】
少なくとも2つの支持部分のうちの1つは、MRI機器の患者支持ベッドに搭載する又は組み込むための基台部分を含み得る。
【0025】
少なくとも2つの支持部分のうちのもう一方は、基台部分に取り付けるためのカバー部分を含み得る。フック及びループ固定手段が、基台部分にカバー部分を固定するために設けられ得る。
【0026】
基台部分は一次受信コイルを支えることができる。カバー部分は補助受信コイルを支えることができる。好ましくは、複数の補助受信コイルがあり、その各々がカバー部分によって支えられる。
【0027】
カバー部分は、少なくとも1つの補助受信コイルを支えるプラスチック材料の基板、及び少なくとも1つの補助受信コイルを覆うための発砲材料の層を含み得る。
【0028】
カバー部分は、少なくとも1つの補助受信コイルを基板の適所に保持するための、少なくとも1つの固定手段を含み得る。固定手段はねじ山を備えてもよい。少なくとも1つの補助受信コイルが、適所に縫い付けられてもよい。
【0029】
カバー部分は、各々が対象における目的のそれぞれの部分を覆うための複数のカバーリング部分、及び複数のカバーリング部分におけるそれぞれのカバーリング部分に設けられる、複数の補助受信コイルにおけるそれぞれの少なくとも1つの補助受信コイルを含み得る。
【0030】
受信コイル装置は、頭部及び/又は顔部及び/又は頸部及び/又は肩部受信コイル装置であり得る。
【0031】
基台部分は、対象の頭部を支持するための枕部分の少なくとも一部を含み得る。カバー部分は、対象の頭部及び/又は顔部及び/又は頸部及び/又は肩部にわたって設置するために配設され得る。カバー部分は、頭部カバーリング部分、顔部カバーリング部分、頸部カバーリング部分、及び肩部カバーリング部分のうちの少なくとも1つを有し得る。
【0032】
複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルが、顔部カバーリング部分に設けられてもよく、及び/又は、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルが、頸部カバーリング部分に設けられてもよく、及び/又は、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルが、頭部カバーリング部分に設けられてもよく、及び/又は、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルが、肩部カバーリング部分に設けられてもよい。
【0033】
実施例の1つのセットにおいて、受信コイル装置は、複数の補助受信コイルを備え、その各々がカバー部分によって支えられ、カバー部分は、顔部カバーリング部分及び頸部カバーリング部分を有し、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルが、顔部カバーリング部分に設けられ、並びに/又は、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルが、頸部カバーリング部分に設けられる。
【0034】
そのような実施例のサブセットにおいて、カバー部分は頭部カバーリング部分をさらに含むことができ、そのような場合に、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルは、頭部カバーリング部分に設けられてもよい。
【0035】
そのような実施例の別のサブセットにおいて、カバー部分は肩部カバーリング部分をさらに含むことができ、そのような場合に、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルは、肩部カバーリング部分に設けられてもよい。
【0036】
実施例の別のセットにおいて、受信コイル装置は、複数の補助受信コイルを備え、その各々がカバー部分によって支えられ、カバー部分は、顔部カバーリング部分及び頭部カバーリング部分を有し、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルが、顔部カバーリング部分に設けられ、並びに/又は、複数の補助受信コイルにおける少なくとも1つの補助受信コイルが、頭部カバーリング部分に設けられる。
【0037】
受信コイル装置は、放射線治療のために提供される固定マスク又は他のジグに加えて、すなわち、その周囲で、使用することができるように配設され得る。
【0038】
カバー部分は、少なくとも1つの放射線透過性部分を有するように配設され得る。
【0039】
受信コイル装置は、放射線、例えば、使用中に適用される放射線治療ビーム、又は画像の形成に使用するための放射線が、使用において通過することができるゾーンと対応する、電子部品フリー・ゾーン(electronic component free zone)を含み得る。
【0040】
受信コイル装置は、例えばMR-Linacシステムの一部として、MRIを併用する放射線療法による方法又はシステムにおいて使用するために配設され得る。
【0041】
受信コイル装置は、例えばPET-MRシステムの一部として、MRIを併用する放射線に基づく画像化による方法又はシステムにおいて使用するために配設され得る。
【0042】
受信コイル装置は、それぞれの受信コイルのうちの少なくとも1つを同調させるための、少なくとも1つの同調コンデンサを備え得る。
【0043】
少なくとも1つの同調コンデンサは、電子部品フリー・ゾーンの外側に配置され得る。
【0044】
少なくとも1つの補助受信コイルは、少なくとも1本の同軸ケーブルを備え得る。
【0045】
少なくとも1つの補助受信コイルは、ループに配設される1本の同軸ケーブルを備え、ギャップが、ループの周囲の途中の位置で同軸ケーブルの外部導体に設けられ、1本の同軸ケーブルの第1の端部の外部導体が、1本の同軸ケーブルの第2の端部の外部導体と接続され得る。
【0046】
1本の同軸ケーブルの各端部は、マッチング・ボードへ接続され得る。
【0047】
一次受信コイルは、少なくとも1つの非遮蔽導体部分を含み得る。
【0048】
一次受信コイルは、ループに共に配設される2つの非遮蔽導体部分を含み得る。各非遮蔽導体部分のそれぞれの第1の端部がマッチング・ボードへ接続されてもよく、各非遮蔽導体部分のそれぞれの第2の端部がデチューン・ボードへ接続されてもよい。
【0049】
第1の支持部分は、少なくとも1つの非遮蔽導体部分の少なくとも一部を受容する、少なくとも1つのチャネル又は凹部を含み得る。
【0050】
第1の支持部分は、プレート部分及びプレート部分から突出する一組の直立部分を含み得る。一次受信コイルの第1の部分は、プレート部分で支えられてもよく、一方で、一次受信コイルの第2及び第3の部分は、一組の直立部分で支えられてもよい。
【0051】
実施例の1つセットにおいて、プレート部分は、一次受信コイルの第1の部分を受容するプレート・チャネルを含み、一組の直立部分の第1のものは、一次コイルの第2の部分を受容する第1の直立チャネルを含み、一組の直立部分の第2のものは、一次コイルの第3の部分を受容する第2の直立チャネルを含む。
【0052】
一実施例において、受信コイル装置は、1つの一次受信コイル及び7つの補助受信コイルを備える。
【0053】
本発明の別の態様によると、上記で定義された受信コイル装置において使用するためのカバー部分装置であって、受信コイル装置の複数の補助受信コイル、及び補助受信コイルの各々を支え、支持するカバー部分を備える、カバー部分装置が提供される。
【0054】
本発明の別の態様によると、メインMRIスキャナ装置、患者支持器、及び患者支持器に設けられ、メインMRIスキャナ装置へ電気的に接続される、上記で定義されたMRIシステム受信コイル装置を備える、MRIシステムが提供される。
【0055】
受信コイル装置は、一次受信コイル及び補助コイルのうちの少なくとも1つを支える、支持構造を備えることができ、支持構造の少なくとも一部は、患者支持器に取付け可能であるか、又はその一部を形成し得る。
【0056】
実施例の1つのセットにおいて、支持構造は、一次受信コイルを支える、及び患者支持器に取付け可能であるか、又はその一部を形成する、基台部分を含み得る。
【0057】
本発明の別の態様によると、上記で定義されたMRIシステム及び医療用直線加速器システムを備える、MR-Linacシステムが提供される。
【0058】
本発明の別の態様によると、上記で定義されたMRIシステム及び陽電子放出断層撮影システムを備える、PET-MRシステムが提供される。
【0059】
一般的用語において、及び表現における任意の必要な修正を伴って、上記の本発明の任意の態様に準ずる上記で定義されたさらなる特徴の全てが、上記で定義された本発明の他の全ての態様のさらなる特徴として適用可能であることに留意されたい。単に簡潔にするために、これらのさらなる特徴は、本発明の各態様の後に再び述べられない。
【0060】
ここで、添付図面を参照して、本発明の実施例をほんの一例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】受信コイル装置を含むMRIシステムを概略的に示す図である。
【
図2】対象の適所における、
図1のMRIシステムに含まれる型の受信コイル装置を概略的に示す図である。
【
図3】
図2に示された受信コイル装置の基台プレートを概略的に示す図である。
【
図4】
図2に示された受信コイル装置のカバー部分を概略的に示す図である。
【
図5】一次受信コイルを受容するために配設される、
図3に示された基台プレートの部分をより詳細に示す図である。
【
図6】基台プレートの一部が取り除かれた、基台プレートにおける一次受信コイルを示す図である。
【
図7】
図2に示された受信コイル装置に含まれる、補助受信コイルの接続構成を概略的に例示する図である。
【
図8A】対象の周囲に配置された場合の、
図2の受信コイル装置の一次及び補助コイルの正面図である。
【
図8B】対象の周囲に配置された場合の、
図2の受信コイル装置の一次及び補助コイルの側面図である。
【
図9】
図2に示された受信コイル装置における、様々な構成要素間の接続を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、メイン・スキャナ装置1、患者がスキャナ装置1にある場合に、患者を支持するために配設される患者支持器2、並びにメイン・スキャナ装置から分離される、及び本実施例において身体部分専用受信コイル装置である、MRIシステム受信コイル装置3を備える、MRIシステムを示す。より一般的に、そのような受信コイル装置3は、局所的受信コイル装置と呼ばれることがある。
【0063】
上記で示唆されるように、いくつかの例において、MRIシステムは、例えば、MRIシステム及び医療用直線加速器システムを備えるMR-Linacシステムを提供するために、又は別の実例では、MRIシステム及び陽電子放出断層撮影システムを備えるPET-MRシステムを提供するために、他のシステムと組み合わせて使用される。そのような場合に、
図1に示されるMRIシステムは、
図1において非常に概略的な形態で点線だけで例示される、直線加速器システム又は陽電子放出断層撮影システムSによって補完され得る。
【0064】
メインMRIスキャナ装置1は、典型的には超電導電磁石であるメイン磁石11、RF送信コイル12、勾配磁場コイル13、及びメイン・ユニット受信コイル14を備える、完全に従来型のメインMRIスキャナ装置であってもよい。これらの構成要素はMRIスキャナ装置1の本体に設けられ、MRIスキャナ装置1の本体はメイン・ボアBを有し、患者支持器2がメイン・ボアBに設けられるか、又はより典型的には、患者支持器2が操作位置に達するまで患者を支えてメイン・ボアB内に移動することができる。
【0065】
少なくとも使用において、身体部分専用受信コイル装置3もまた、このメイン・ボアBに設けられる。存在する場合、医療用直線加速器システム又は陽子放出断層撮影システムSの少なくとも一部もまた、操作中にこのメイン・ボアBに設置され得る。
【0066】
操作中にメインMRIスキャナ1のメイン・ボアBに設置されるのに加えて、受信コイル装置3は、メイン・スキャナ装置1へ電気的に接続され、受信コイル装置3によって集められる磁気共鳴信号が、処理を行うためにメイン・スキャナ装置1に送られ得る。
【0067】
受信コイル装置3によって集められる信号は、単独で、又は処理中及び画像の作成においてメイン・ユニット受信コイル14によって集められる信号と組み合わせて、使用され得る。いくつかの例において、それ自体のメイン・ユニット受信コイル14を有さないメインMRIスキャナ装置1は、本発明の型の受信コイル装置3と共に使用され得る。
【0068】
MRIスキャナ装置の構造及び動作は、十分に開発され、理解されており、本発明の概念は、そのようなMRIスキャナ装置と共に使用するための受信コイル装置3に関する。それゆえ、MRIスキャナ装置1の構造及び動作をさらに説明する必要はなく、この説明の残りの部分は、受信コイル装置3に関する。
【0069】
図2は、身体部分専用受信コイル装置3をより詳細に概略的に示す。身体部分専用受信コイル装置3は、カバー部分4及び基台部分5を備える。基台部分5は、患者支持器2に搭載されるように配設されるか、又はいくつかの実施例において、患者支持器2の一体化部分となるように作製されてもよい。他方で、カバー部分4は、それが対象を覆って合わせられ、その後、基台部分5の適所に固定され得るように、基台部分5に取外し可能に取り付けられる。
【0070】
図3、
図4、
図5及び
図6を考慮することによって確認され得るように、身体部分専用受信コイル装置3は、一次受信コイル6(
図5及び
図6を参照)並びに複数の補助受信コイル7(
図4を参照)を備える。基台部分5は、一次受信コイル6を支持するために配設され、カバー部分4は、補助受信コイル7を支持するために配設される。
【0071】
基台部分5は、プレート部分51及び2つの直立部分52を含む。直立部分52を、例えば
図3及び
図5において確認することができる。プレート部分51は、2つの層51a及び51bを有する。直立部分52は、
図3及び
図5で見ることができるように、上部層51aで支えられる。
図6において、上部層51aが持ち上げられて、下部層51bを示し、一次受信コイル6をより良好に示す。
【0072】
基台部分5には、一次受信コイル6を支持し、それを既定の位置に保持するための、複数のチャネル52a、52bが設けられる。それぞれのチャネル52a(そのうちの1つのみを図面すなわち
図5において確認することができる)は、一次受信コイル6のそれぞれの部分を直立部分52の適所に保持するために、直立部分52の各々に設けられる。
【0073】
例えば、
図2、
図3、
図4及び
図5を共に考慮することによって認識され得るように、使用において、一次受信コイル6のこの部分は、対象、特に、示される特定の実施例において対象の頭部に密接する。コイル6の特定の形状及び経路は、例えば、侵入深さを最大化して対象の組織へのエネルギーの比較的に一定の電磁結合を確保するための、所望の受信特性をもたらすように選択される。
【0074】
プレート部分51の下部層51bは、一次受信コイル6の他の部分を決められた適所に保持するための、それぞれのチャネル52bを含む。
【0075】
一次受信コイル6は、非遮蔽の複数の導体を有する。本実施例において、2つの部分の非遮蔽導体61が提供される。2つの部分の第1のものは、直立部52の第1のもののチャネル52aにおいて延び、2つの部分の第2のものは、もう一方の直立部52のチャネル52aにおいて延びる。これらの導体部分61の第1の端部は、デチューン・ボード62へ接続され、一方で、2つの導体部分61のそれぞれの他の端部は、マッチング・ボード63へ接続される。デチューン・ボード62及びマッチング・ボード63はそれぞれ、マッチング・ボード63の場合における少なくとも1つの同調コンデンサなどの、少なくとも1つの電子部品を備える。
【0076】
図6において確認されるように、デチューン・ボード62及びマッチング・ボード63は、コイル6の中央領域を避ける、すなわち、それらは、直立部分52、及び対象の目的の部分に最も近くなるコイル6の部分から離れている。これにより、対象の目的の領域において、電子部品フリー・ゾーンができる。これは、身体部分専用受信コイル装置3が、放射線が組合せシステムにおいて使用される、上記の型の組合せシステムにおいて使用される場合に、特に重要である。放射線はこの中央領域、すなわち、対象の目的の領域を通過し、電子部品の存在によって悪影響を受けず、及び/又は、そのような電子部品が損傷する危険をなくすことができる。したがって、一次受信コイル6のこの構成は、PET-MR及びMR-Linacシステムなどのシステムにおいて、本発明の受信コイル装置の使用に役立つ。
【0077】
基台部分5、すなわち、プレート部分51及び直立部分52は、一次受信コイル6を既定の位置に保持するために、比較的に剛性の高いプラスチック材料製である。
【0078】
上記で示唆されるように、これは、一次受信コイル6の形状の変更が、一次受信コイル6の感度に悪影響を及ぼす同調及びマッチングに影響を与える傾向があるので、重要である。剛性構造並びにコイル6の形状及び配置は、これらの効果を最小限にするように選択されている。
【0079】
補助受信コイル7の各々は、一次受信コイル6と異なる構造を有する。一次受信コイル6が、非遮蔽導体から作製され、比較的に低いインピーダンスを有する一方で、補助受信コイル7は、高インピーダンス・コイルとして配設される。特に、これらのコイル7は、一次受信コイル6のインピーダンスより高いインピーダンスを有する。さらに、補助受信コイル7のサイズは、一次受信コイル6のものより小さい、特に、補助受信コイル7が画定する領域は、一次受信コイル6が画定する領域より小さい。これは、一次受信コイル6が、対象内の深部から発する信号を受信するためにより好適であり、それに対して補助受信コイル7が、補助受信コイル7自体と近接する対象の領域から発せられる信号を集めるためにより好適であることを意味する。
【0080】
さらに、補助受信コイル7に使用される高インピーダンス・コイルの性質により、それらは、それらの周囲との連結が非常に乏しく、したがって、精密な配置はあまり重要ではない。これにより、これらの補助受信コイル7を対象に対してより正確に設置し、これらの受信コイル7を、それらを対象における目的の関連領域と密着させるために必要な形状へ、順応させることができるようになる。
【0081】
図7は、補助受信コイル7の各々の接続構成を概略的に示す。各補助受信コイル7は、中央導体71及び外部遮蔽導体72を含む1本の同軸ケーブルから作製される。受信コイルにおいて、中央導体71はコイルの周囲で連続しており、中央導体71の端部はそれぞれのマッチング・ボード73へ接続される(
図4を参照)。他方で、遮蔽導体72には、内部導体71の端部から離隔する位置にギャップが設けられ、一方で、内部導体71の端部の近くの遮蔽部72の2つの端部は、共に接続される。マッチング・ボード73はそれぞれ、少なくとも1つの同調コンデンサなどの、少なくとも1つの電子部品を備える。
【0082】
高インピーダンス・コイルの性質により、コイルを定める各同軸ケーブルの全長は、半波長に極めて近くなるように制限され、それによって、補助受信コイル7の全体サイズを限定する。
【0083】
これらの補助受信コイル7の各々は、カバー部分4のブラスチック基板41によって支持される。補助受信コイル7は、例えば繊維材料の糸を使用して、縫い付けることで適所に保持され得る。本実施例において、基板41は比較的に柔軟なプラスチック材料製であり、全体として、この基板41及びカバー部分4は基台部分5よりさらに柔軟である。基板41が柔軟であり、補助コイル7が柔軟であり、補助コイル7が所望の位置を取って効率的に動作することができる場合に、これは、カバー部分4が目的の対象の領域と密接に合わさるように設計され得ることを意味する。
【0084】
したがって、本実施例において、カバー部分4は、患者の頭部、顔部、及び頸部に設置するために配設される。それに応じて、それは、適所にある場合に、対象の頭部、顔部、及び頸部を覆うためのカバーの部分を含む。
【0085】
補助コイル7と組み合わせられたカバー部分4は、カバー部分装置4、7と呼ばれることがある。一次コイル6と組み合わせられた基台部分5は、基台部分装置5、6と呼ばれることがある。
【0086】
対象が基台部分5に配置され、カバー部分4が適所にある場合の、対象に対する一次コイル6及び補助コイル7の位置は、
図8A及び
図8Bにおいて最も良好に確認することができる。
【0087】
この例において、一次受信コイル6が患者の頭部の領域に設置されるのが確認できる。一次コイル6は、対象内のより深部からデータを獲得するのが非常に容易である。この受信コイル6は、患者の頭部及び頸部内の領域から発せられる信号を効果的に集めることができる。
【0088】
他方で、補助コイル7は、患者の顔部及び頸部にわたって異なる位置に設置される。各補助コイル7は部分的に重なるが、大部分において、各補助コイル7は対象の顔部及び頸部の異なる領域から信号を集めようとする。本実施例において、7つの補助コイル7があり、7つのうちの3つは、対象の顔部にわたって設置するために配設され、7つのうちの4つは、対象の頸部及び肩部にわたって設置するために配設される。それに応じて、カバー部分4を、例えば
図4において例示されたものとすると、補助コイル7のうちの4つは、カバーの頸部を覆う部分に設けられ、補助コイル7のうちの3つは、カバー4の顔部を覆う部分に設けられる。
【0089】
補助コイル7は、本実施例において、残留磁気誘導による結合をさらに低減するために、10~15%の領域で互いに重なるように配設される。
【0090】
さらに、補助コイル7用のマッチング・ボード73は、中央領域、すなわち、対象における目的の領域を避けるので、上記の利便をもたらす電子部品フリー・ゾーンができる。
【0091】
実際に、カバー部分装置4、7の基板41、補助コイル7、及びマッチング・ボード73は、基板41の各側面に設けられる発泡材の層によって覆われる。本実施例において、カバー部分4は、適切な取付位置に設けられるフック及びループ固定具44を使用して、基台部分5で適所に保持されるように配設される。
【0092】
カバー4の柔軟な設計、並びに補助コイル7が異なる位置に設けられ、わずかに異なる形状に曲げられるのを許容することは、組合せのシステムにおいて使用される必要があるマスク又は他のジグを覆って使用され得る、カバー部分装置4、7の提供を容易にすることに留意されたい。例えば、患者専用固定マスク又はジグが、放射線療法で使用される放射線を適切に方向付けて、MR-Linacシステムによって送達するために設けられる、MR-Linacシステムにおいて、本発明の種類のカバー部分4は、その既存のマスク又はジグと共に、それを改変する必要なく、使用され得る。
【0093】
図9は、
図2~
図8に示される受信コイル装置の全体の接続構成を示す概略図である。低インピーダンスの一次コイル6及び高インピーダンスの補助コイル7は、適切なケーブル・トラップ8を介してプリアンプ・ボード9へ接続され、その出力は、ドライバ・マルファンクション・ボード10へ供給され、この出力は、全体として、メインMRIスキャナ装置1に供給するための受信コイル装置3の出力となる。
【外国語明細書】