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特開2022-75594アスファルト材料を締固めるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075594
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】アスファルト材料を締固めるための方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/28 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
E01C19/28
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021179421
(22)【出願日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】10 2020 128 842.5
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508123375
【氏名又は名称】ハム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Hamm AG
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・ミュールハウゼン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・マインドル
(72)【発明者】
【氏名】フランク・シュテグナー
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AB01
2D052BB01
2D052DA31
(57)【要約】
【課題】配設された運動生成構造を有する少なくとも1つの締固めローラを備えた、少なくとも1つのソイルコンパクタを用いて、アスファルト材料を締固めるための方法を提供する。
【解決手段】a)締固められるべきアスファルト材料(A)のアスファルト温度を検出するステップと、b)アスファルト温度が上側境界温度(O)を上回る場合に、少なくとも1つの締固めローラの、非アクティブな運動生成構造によって、アスファルト材料(A)を静的に締固めるステップと、c)アスファルト温度が下側境界温度(U)を下回る場合に、少なくとも1つの締固めローラの、非アクティブな運動生成構造によって、アスファルト材料(A)を静的に締固めるステップと、を含んでおり、上側境界温度(O)又は/及び下側境界温度(U)は、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動に影響を与える少なくとも1つの環境パラメータ(T)に依存して設定される方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配設された運動生成構造を有する少なくとも1つの締固めローラ(14、16)を備えた、少なくとも1つのソイルコンパクタ(10)を用いて、アスファルト材料(A)を締固めるための方法であって、
a)締固められるべき前記アスファルト材料(A)のアスファルト温度を検出するステップと、
b)前記アスファルト温度が上側境界温度(O)を上回る場合に、少なくとも1つの前記締固めローラの、非アクティブな運動生成構造によって、前記アスファルト材料(A)を静的に締固めるステップと、
c)前記アスファルト温度が下側境界温度(U)を下回る場合に、少なくとも1つの前記締固めローラの、非アクティブな運動生成構造によって、前記アスファルト材料(A)を静的に締固めるステップと、
を含んでおり、前記上側境界温度(O)又は/及び前記下側境界温度(U)は、締固められるべき前記アスファルト材料(A)の冷却挙動に影響を与える少なくとも1つの環境パラメータ(T、W)に依存して設定される方法。
【請求項2】
前記上側境界温度(O)又は/及び前記下側境界温度(U)が、締固められるべき前記アスファルト材料(A)の冷却挙動に影響を与える少なくとも2つの環境パラメータ(T、W)に依存して設定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上側境界温度(O)又は/及び前記下側境界温度(U)が、締固められるべき前記アスファルト材料(A)の冷却挙動に影響を与える環境パラメータ(T、W)としての周囲温度(T)に依存して設定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記上側境界温度(O)が、前記周囲温度(T)の低下と共に上昇すること、又は/及び、前記下側境界温度(U)が、前記周囲温度(T)の低下と共に低下することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記上側境界温度(O)又は/及び前記下側境界温度(U)が、締固められるべき前記アスファルト材料(A)の冷却挙動に影響を与える環境パラメータ(T、W)としての風速(W)に依存して設定されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記上側境界温度(O)が、前記風速(W)の増大と共に上昇すること、又は/及び、前記下側境界温度(U)が、前記風速(W)の増大と共に低下することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記上側境界温度(O)及び前記下側境界温度(U)によって区切られた中間温度領域(Z)内に位置するアスファルト温度において、締固められるべき前記アスファルト材料(A)が、少なくとも1つの前記締固めローラ(14、16)のアクティブな運動生成構造で締固められることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記中間温度領域(Z)の、前記上側境界温度(O)に至る上側温度領域内で、少なくとも1つの前記締固めローラ(14、16)の運動生成構造が、より大きなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態(g)において動作すること、及び、前記中間温度領域(Z)の、前記下側境界温度(U)に至る下側温度領域内で、少なくとも1つの前記締固めローラ(14、16)の運動生成構造が、より小さなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態(k)において動作することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記運動生成構造が、互いに異なるエネルギー入力を有する、複数の不連続の運動刺激動作状態(g、k)において動作可能であること、及び、前記運動生成構造が、前記アスファルト温度が前記中間温度領域(Z)内にある少なくとも1つの中間境界温度(M)を上回る場合に、より大きなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態(g)において動作すること、及び、前記アスファルト温度が少なくとも1つの前記中間境界温度(M)を下回る場合に、より小さいエネルギー入力を有する運動刺激動作状態(k)において動作すること、を特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記運動生成構造が、互いに異なるエネルギー入力を有する2つの運動刺激動作状態(g、k)において動作可能であること、及び、前記運動生成構造が、前記アスファルト温度が前記中間境界温度(M)を上回る場合に、より大きいエネルギー入力を有する運動刺激動作状態(g)において動作すること、及び、前記アスファルト温度が前記中間境界温度(M)を下回る場合に、より小さいエネルギー入力を有する運動刺激動作状態(k)において動作すること、を特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの前記中間境界温度(M)が、締固められるべき前記アスファルト材料(A)の冷却挙動に影響を与える少なくとも1つの環境パラメータ(T、W)に依存して設定されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記中間境界温度(M)が、締固められるべき前記アスファルト材料(A)の冷却挙動に影響を与える環境パラメータ(T、W)としての周囲温度(T)に依存して設定されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記中間境界温度(M)が、前記周囲温度(T)の低下と共に低下することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記中間境界温度(M)が、締固められるべき前記アスファルト材料(A)の冷却挙動に影響を与える環境パラメータ(T、W)としての風速(W)に依存して設定されることを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記中間境界温度(M)が、前記風速(W)の増大と共に低下することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記運動生成構造が、最小のエネルギー入力と最大のエネルギー入力との間で連続的に可変であるエネルギー入力で動作可能であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項17】
前記アスファルト温度が前記上側境界温度(O)である、若しくは、前記上側境界温度O)の範囲内にある場合、前記運動生成構造が最大のエネルギー入力で動作すること、又は/及び、前記アスファルト温度が前記下側境界温度(U)である、若しくは、前記下側境界温度(U)の範囲内にある場合、前記運動生成構造が最小のエネルギー入力で動作することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの前記締固めローラ(14、16)に配設された運動生成構造が、振動構造であること、又は/及び、少なくとも1つの前記締固めローラ(14、16)に配設された運動生成構造が、揺動構造であることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのソイルコンパクタ(10)が、2つの前記締固めローラ(14、16)を有しており、前記締固めローラ(14、16)それぞれには、振動構造が配設されていること、又は/及び、少なくとも1つのソイルコンパクタ(10)が2つの前記締固めローラ(14、16)を有しており、前記締固めローラ(14、16)の内の一方には振動構造が配設されており、前記締固めローラ(14、16)の内の他方には揺動構造が配設されていること、を特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト材料を締固めるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば道路建設においてアスファルト材料を締固めるために、特に、配設された運動生成構造を備えた、少なくとも1つの締固めローラを有するソイルコンパクタが用いられる。運動生成構造が非アクティブである場合、締固められるべきアスファルト材料は、当該締固めローラを用いて静的に、すなわち締固めローラによって加えられる重量負荷によって締固められる。運動生成構造がアクティブである場合、締固めローラを振動させることによって、又は、締固めローラの変位運動を生成することによって、付加的なエネルギーが締固めローラに入力され、締固めローラを通じて、締固められるべきアスファルト材料に入力される。運動生成構造によって生成される変位運動又は振動は、ソイルコンパクタが締固められるべきアスファルト材料上を移動する際、締固めローラの転動運動に重ねられる。
【0003】
本発明に係る方法を実施するために用いられるソイルコンパクタにおいて、締固めローラに割り当てて設けらている当該運動生成構造は、振動構造として構成されていてよく、当該振動構造によって、締固めローラの回転軸に略直交する加速度又は力が、締固めローラに加えられる。当該振動構造は、締固めローラの内部に、アンバランス駆動部によってアンバランス回転軸の周りに回転するように駆動可能な、アンバランス回転軸に対して偏心する質量中心を備えたアンバランスマス構造を含み得る。アンバランス回転軸は、例えば、配設された締固めローラの回転軸に一致し得る。当該振動構造において、互いに異なるエネルギー入力を有する異なる動作状態を設定可能にするため、従って、配設された締固めローラにおいて、異なる振動振幅を生成可能にするために、アンバランスマス構造は、互いに対して移動可能である質量部分を含むことが可能であり、これによって、質量中心において作用する質量が変更可能であり、又は/及び、アンバランスマス構造の質量中心の、アンバランス回転軸に対する径方向距離が変更可能である。例えば、質量中心において作用する質量を変更するために、2つの質量部分が、アンバランスマス構造の回転方向に依存して、アンバランス回転軸の周りで互いに異なる角度位置を占めていてよい。締固めローラ又はアスファルト材料に入力されるエネルギーを変更するために、代替的又は付加的に、各アンバランス構造の回転数と、従って振動頻度とが変更され得る。配設された振動構造を有する締固めローラは、一般的に、振動ローラと呼ばれている。配設された振動構造を備えた締固めローラを有するソイルコンパクタは、特許文献1及び特許文献2から知られている。特許文献3及び特許文献4からは、振動構造が知られており、当該振動構造においては、回転方向の変更によって、アンバランスマス構造の2つの質量部分の互いに対して異なる位置を有し、従って質量中心において異なって作用する質量を有する2つの動作状態の間で切り替えが行われ得る。
【0004】
代替的な態様において、当該締固めローラに、揺動構造が配設されていてよく、当該揺動構造によって、締固めローラの回転軸の周りで締固めローラに作用し、周期的に変化するトルクが生成される。当該揺動構造は、締固めローラの内部において、配設された締固めローラの回転軸に対して偏心するアンバランス回転軸の周りに回転するようにアンバランス駆動部によって駆動可能な、複数のアンバランスマス構造を含み得る。それぞれ配設されたアンバランス回転軸の周りにおけるアンバランスマス構造の回転運動を互いに調整することによって、締固めローラの回転軸の周りにおいて周方向に作用し、周期的に変化するトルクが生成される。当該揺動構造においても、締固めローラに入力され、従って締固められるべきアスファルト材料にも入力されるエネルギーを変更するため、又は、各締固めローラにおいて生成される揺動振幅を変更するために、各アンバランスマス構造は、互いに対して移動可能である質量部分を含むことが可能であり、これによって、質量中心において作用する質量、又は/及び、各アンバランスマス構造の質量中心の、アンバランス回転軸に対する径方向距離が変更可能である。例えば、各マス構造の質量中心において作用する質量を変更するために、2つの質量部分は、アンバランスマス構造の回転方向に依存して、各アンバランス回転軸の周りで、互いに異なる角度位置を占めることが可能である。締固めローラ又は基層に入力されるエネルギーを変更するために、代替的又は付加的に、アンバランスマス構造の回転数と、従って揺動頻度と、が変更され得る。配設された揺動構造を有する締固めローラは、一般的に、揺動ローラと呼ばれている。当該揺動構造、又は、配設された揺動構造を有する締固めローラを備えたソイルコンパクタは、例えば特許文献5から知られている。特許文献6及び特許文献7からは、揺動トルク又は揺動運動の振幅が、概ね無段階に調整可能である揺動構造が知られている。特許文献8は、揺動構造を開示しており、当該揺動構造においては、回転方向の変更を通じて、締固めローラの回転軸に対して偏心するアンバランスマス構造への質量部分の変位によって、異なる揺動振幅を有する動作状態の間の切り替えが得られる。当該アンバランスマス構造を、締固めローラの回転軸に対して中心に配置する場合、アンバランスマス構造は、振動構造として利用可能である。
【0005】
本発明に係る方法を実施するために用いられるソイルコンパクタは、少なくとも1つの締固めローラを有しており、当該締固めローラは、配設された、一般的には締固めローラ内に配置された運動生成構造、例えば上に挙げた先行技術から知られているような運動生成構造を有している。当該運動生成構造は、振動構造として、又は、揺動構造として構成されていてよい。1つかつ同じ締固めローラにおいて、振動構造と揺動構造とを組み合わせてもよい。さらに、本発明に係る方法を実施するために用いられるソイルコンパクタは、2つの締固めローラを有することが可能であり、当該締固めローラは、同じ運動生成構造、すなわちそれぞれ振動構造又は揺動構造を有しているか、又は、異なる運動生成構造を有し、従って、一方の締固めローラには振動構造が、他方の締固めローラには揺動構造が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016109888号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102018132379号明細書
【特許文献3】国際公開第2018/23633号
【特許文献4】中国実用新案第201801803号明細書
【特許文献5】国際公開第2019/063540号
【特許文献6】独国特許出願公開第102017122371号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102015112847号明細書
【特許文献8】国際公開第2013/013819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、配設された運動生成構造を有する少なくとも1つの締固めローラを備えた少なくとも1つのソイルコンパクタを用いて、アスファルト材料を締固めるための方法を提供することにあり、当該方法によって、締固められるべきアスファルト材料の、外部からの影響によって概ね阻害されない締固め状態が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、本課題は、配設された運動生成構造を有する少なくとも1つの締固めローラを備えた少なくとも1つのソイルコンパクタを用いて、アスファルト材料を締固めるための方法によって解決され、当該方法は、
a)締固められるべきアスファルト材料のアスファルト温度を検出するステップと、
b)アスファルト温度が上側境界温度を上回る場合に、少なくとも1つの締固めローラの、非アクティブな運動生成構造を用いて、アスファルト材料を静的に締固めるステップと、
c)アスファルト温度が下側境界温度を下回る場合に、少なくとも1つの締固めローラの、非アクティブな運動生成構造を用いて、アスファルト材料を静的に締固めるステップと、
を含んでおり、上側境界温度又は/及び下側境界温度は、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動に影響を与える少なくとも1つの環境パラメータに依存して設定される。
【0009】
本発明に係る方法では、上側境界温度又は下側境界温度を適切に調整することによって、アスファルト材料の冷却挙動に影響を与える状況に依存して、当該方法の過程において実施されるべき締固めステップのために十分な時間が利用可能であることが保証され得る。特に、上側境界温度又は下側境界温度の調整によって、アクティブな運動生成構造を用いた締固めが適さない、又は、有意義ではないアスファルト材料の状態において、アクティブな運動生成構造を用いた締固めが行われないように努められる。さらに、環境条件に依存した上側境界温度又は下側境界温度の調整によって、これらの境界温度の間で決定された温度枠は、アスファルト材料が徐々に冷却されるという事情を考慮して、時間枠に対応しており、当該温度枠は、これらの境界温度の間で、運動生成構造がアクティブである場合に、アスファルト材料を、例えばそのために作成された締固め計画に従って締固めるために十分な時間を用いることができる。従って、当該時間枠が短すぎるゆえに、作成された締固め計画を完遂できない状態、又は、コンパクタの運転者が、生じる時間的制約ゆえに、ソイルコンパクタの操作を誤る危険が存在するような状態、は回避され得る。
【0010】
アスファルト材料を締固める際の、環境条件の考慮における正確性の向上は、上側境界温度又は/及び下側境界温度が、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動に影響を与える少なくとも2つの環境パラメータに依存して設定されることによって得られる。
【0011】
上側境界温度又は/及び下側境界温度が、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動に影響を与える環境パラメータとしての周囲温度に依存して設定される場合、アスファルト材料の徐々の冷却に重要な影響を与える要因が考慮され得る。
【0012】
この際、運動生成構造がアクティブである場合の、アスファルト材料の加工に関する時間枠を、周囲温度を考慮して可能な限り大きく保つために、上側境界温度を周囲温度の低下に伴って上昇させること、又は/及び、下側境界温度を周囲温度の低下に伴って低下させることが提案される。
【0013】
アスファルト材料の冷却挙動に重要な影響を与えるさらなるパラメータは、風速である。従って、本発明では、上側境界温度又は/及び下側境界温度は、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動に影響を与える環境パラメータとしての風速に依存して設定され得る。
【0014】
風速を考慮して、アクティブである運動生成構造を用いて締固めプロセスを実施するために利用可能である時間枠を可能な限り大きく保つために、上側境界温度を風速の増大に伴って上昇させること、又は/及び、下側境界温度を風速の増大に伴って低下させることを規定してよい。
【0015】
アスファルト温度が、上側境界温度及び下側境界温度によって区切られた、中間温度領域内にある場合、締固められるべきアスファルト材料は、少なくとも1つの締固めローラのアクティブである運動生成構造を用いて締固められ得る。これが生じ得るのは特に、アスファルト温度が上側境界温度を上回る場合、本発明に係る方法によると、アスファルト材料は静的に締固められ、従って、上側境界温度に到達する場合、又は、上側境界温度を下回る場合、及び、その際依然としてアスファルト材料が比較的温かい場合、当該アスファルト材料は既に、運動生成構造の作動が、アスファルト材料の構造に不利な影響をもたらさず、実際に締固めの継続をもたらし得る程度に締固められているからである。
【0016】
アスファルト材料が十分ではあるが高すぎない流動性を有している状態を、エネルギーを最適に導入するために利用可能にするために、中間温度領域の、上側境界温度に至る上側温度領域内で、少なくとも1つの締固めローラの運動生成構造が、より大きなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態において動作すること、及び、中間温度領域の、下側境界温度に至る下側温度領域内で、少なくとも1つの締固めローラの運動生成構造が、より小さなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態において動作すること、が提案される。
【0017】
このために例えば、運動生成構造が、互いに異なるエネルギー入力を有する、複数の不連続の運動刺激動作状態において動作であること、及び、運動生成構造が、アスファルト温度が中間温度領域内にある少なくとも1つの中間境界温度を上回る場合に、より大きなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態において動作すること、及び、アスファルト温度が少なくとも1つの中間境界温度を下回る場合に、より小さいエネルギー入力を有する運動刺激動作状態において動作すること、を規定してよい。
【0018】
本発明に係る方法を実施するために用いられるソイルコンパクタの、構造的に容易に実現され得る態様において、これは、運動生成構造が、互いに異なるエネルギー入力を有する2つの、すなわち正確に2つ、又は、2つのみの運動刺激動作状態において動作可能であること、及び、運動生成構造が、アスファルト温度が中間境界温度を上回る場合に、より大きいエネルギー入力を有する運動刺激動作状態において動作し、アスファルト温度が中間境界温度を下回る場合に、より小さいエネルギー入力を有する運動刺激動作状態において動作することによって得られる。
【0019】
異なる運動刺激動作状態の間で切り替えを行う際に、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動又は当該冷却挙動に影響を与える状況を考慮可能にするために、さらに、少なくとも1つの中間境界温度が、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動に影響を与える少なくとも1つの環境パラメータに依存して設定されると規定してよい。
【0020】
例えば、中間境界温度を、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動に影響を与える環境パラメータとしての周囲温度に依存して設定することが可能であり、当該中間境界温度は、周囲温度の低下に伴って低下し得る。
【0021】
代替的又は付加的に、中間境界温度を、締固められるべきアスファルト材料の冷却挙動に影響を与える環境パラメータとしての風速に依存して設定することも可能である。例えば、中間境界温度は、風速の増大と共に低下し得る。
【0022】
ソイルコンパクタ又は締固めローラの代替的な態様では、締固めローラに配設された運動生成構造は、最小のエネルギー入力と最大のエネルギー入力との間において連続的に変化し得るエネルギー入力で動作可能であってよい。これによって、変化する締固め度又は変化するアスファルト材料の温度に、エネルギー入力を細かく調整して適応させることが可能になる。例えば、このエネルギー入力の連続的な変更は、アンバランスマス構造の2つの質量部分が、配設されたアクチュエータによって、互いに対して連続的に調整され、これによって、質量中心の位置、又は、当該アンバランスマス構造の質量中心において作用する質量が、対応して連続的に変化することによって得られる。
【0023】
当該態様においても、アスファルト材料を冷却する間、アスファルト材料の所望の締固め度に到達するために必要なエネルギーを導入可能にするために、アスファルト温度が上側境界温度である、若しくは、上側境界温度の範囲内にある場合、運動生成構造が最大のエネルギー入力で動作すること、又は/及び、アスファルト温度が下側境界温度である、若しくは、下側境界温度の範囲内にある場合、運動生成構造が最小のエネルギー入力で動作すること、が提案される。当該エネルギー入力は、これら両方の状態の間、すなわち最大のエネルギー入力を有する状態と最小のエネルギー入力を有する状態との間で、例えば直線的に変更され得る。
【0024】
この関連において指摘しておくべきことに、本発明によると、運動生成構造は、例えば配設された締固めローラにおいて最大の運動振幅が生成される場合、又は/及び、締固めローラに作用する力若しくは加速度若しくはその振幅が最大である場合、最大のエネルギー入力を有する運動刺激動作状態にある。同様に、本発明によると、運動生成構造は、例えば引き起こされた運動振幅若しくは締固めローラに作用する力若しくは加速度若しくはその振幅がゼロである場合、又は、運動生成構造がゼロとは異なるエネルギー入力の最小値で動作すべき場合にゼロとは異なる最小値を有する場合、最小のエネルギー入力を有する運動刺激動作状態にある。この意味において、最小のエネルギー入力がゼロの運動刺激動作状態は、運動生成構造が非アクティブである状態に一致し得る。
【0025】
少なくとも1つの締固めローラに配設された運動生成構造は、振動構造であってよい。さらに、少なくとも1つの締固めローラに配設された運動生成構造は、揺動構造であってよい。
【0026】
運動生成構造が振動構造である場合、エネルギー入力の変更を、第1に、又は、専ら、締固めローラの生成されるべき振動又は変位運動の振幅の変更によって引き起こす一方で、例えば振動頻度が概ね一定に保持され得るか、又は、締固められるべきアスファルト材料上のソイルコンパクタの移動速度に合わせて変更され得ると、特に有利である。
【0027】
さらに、本発明に係る方法を実施するために用いられる少なくとも1つのソイルコンパクタは、2つの締固めローラを有していてよく、各締固めローラには、振動構造が配設されている。本発明に係る方法を実施するために用いられる少なくとも1つのソイルコンパクタが2つの締固めローラを有しており、締固めローラの内の一方には振動構造が配設されており、締固めローラの内の他方には揺動構造が配設されている、と規定してもよい。
【0028】
以下において、本発明を、添付された図面を用いて詳細に説明する。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】2つの締固めローラを有する、アスファルト材料を締固めるための方法を実施するために使用可能であるソイルコンパクタを示す図である。
図2】周囲温度に依存した、締固めローラに配設された運動生成構造の異なる動作状態間での移行を具体的に示すための図である。
図3図3のa)は、2つの締固めローラを有するソイルコンパクタに関する異なる動作状態間での移行を示す図であり、図3のb)は、振動ローラ及び揺動ローラを有するソイルコンパクタにおける異なる動作状態間での移行を示す図である。
図4】風速に依存した、異なる動作状態間での移行を具体的に示すための、図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、アスファルト材料Aの締固めに使用可能であるソイルコンパクタが、全体として参照符号10で示されている。図示された実施例では、ソイルコンパクタ10は、中央の締固めフレーム12を有するように構成されており、締固めフレーム12には、ソイルコンパクタ10を操作する運転者のための運転台13が設けられている。中央の締固めフレーム12の前側端部領域及び後側端部領域には、それぞれ締固めローラ14、16が、各ローラ回転軸の周りに回転可能に取り付けられており、いずれの締固めローラ14、16も、中央の締固めフレーム12に対してソイルコンパクタ10を操縦するために、例えば略垂直な操舵軸の周りに旋回可能である。
【0031】
ソイルコンパクタ10は、有利には、締固めローラ14、16のそれぞれに割り当てて、運動生成構造を有している。当該運動生成構造は、振動構造として構成されていてよく、これによって、各締固めローラ14又は16に、当該締固めローラの各ローラ回転軸に略直交して当該締固めローラに作用する力又は加速度が生成される。当該振動構造は、一般的に、各締固めローラ14又は16の内部に配置され、アンバランス回転軸の周りに回転可能なアンバランスマス構造を含んでおり、当該アンバランスマス構造は、有利には各ローラ回転軸に対応し得るアンバランス回転軸に対して偏心する質量中心を有している。当該振動構造と、ローラ回転軸に直交して作用する力又は加速度と、によって、締固められるべきアスファルト材料Aに、周期的に負荷が加えられる。
【0032】
代替的な態様において、当該運動生成構造は、揺動構造として構成されていてよく、当該揺動構造によって、各ローラ14又は16をそのローラ回転軸の周りで周期的に往復して加速する揺動トルクが生成される。ソイルコンパクタ10が締固められるべきアスファルト材料A上を移動する際に各締固めローラ14、16の回転に重ねられる周期的な揺動運動によって、アスファルト材料Aの締固め度の上昇をもたらす攪拌又は混練効果が生成される。当該揺動構造は、例えば2つの、各アンバランス回転軸の周りに回転可能なアンバランスマス構造を含むことが可能であり、当該アンバランスマス構造は、各アンバランス回転軸に対して偏心する質量中心を有しており、両方のアンバランス回転軸は、ローラ回転軸に対して偏心しており、例えばローラ回転軸に関して互いに直径上で向かい合っており、ローラ回転軸に対して平行に配置されている。
【0033】
ソイルコンパクタ10は、例えば両方の締固めローラ14、16のそれぞれに割り当てて、振動構造を含み得る。代替的な態様において、ソイルコンパクタ10は、例えば両方の締固めローラ14、16の内の一方に割り当てて、振動構造を含み、両方の締固めローラ14、16の内の他方に割り当てて、揺動構造を含み得る。
【0034】
特に、当該運動生成構造が振動構造として構成されている場合、異なる運動刺激動作状態において動作可能である。後続の説明に関して、当該振動構造が、異なるエネルギー入力を有する2つの運動刺激動作状態において動作可能であり、これは、有利には、各アンバランスマス構造の回転数が略一定であると仮定される場合に、アンバランスマス構造の質量中心において統合された、又は、作用する質量が切り替え可能であることによって得られる、と仮定される。この切り替えは、例えばアンバランスマス構造の回転方向の変化と、これによって引き起こされたアンバランスマス構造の2つの質量部分の周方向における相対運動と、によって引き起こされ得る。運動刺激動作状態に応じて、当該振動構造において、振動ローラは、大きな刺激振幅gで、又は、小さな刺激振幅kで動作し得る。振動ローラ14又は16に配設された運動生成構造が非アクティブである場合、締固めローラ14又は16は、静的動作状態sにおいて機能しており、従って、当該締固めローラによって上を走行されるアスファルト材料Aを、ただ当該アスファルト材料Aに加えられる静荷重によって締固める。
【0035】
アスファルト材料Aを、例えば道路建設において、1つ以上のアスファルトフィニッシャー18を用いて敷き均す際、アスファルトフィニッシャー18の後方に位置する領域におけるアスファルト材料Aの温度は、アスファルトフィニッシャー18との距離が増大するにつれて低下する。これは、アスファルトフィニッシャー18との距離が異なる領域は、異なる温度を有していることを意味している。図2には、アスファルトフィニッシャー18との距離が増大するにつれて低下していくアスファルト温度を、図示されたアスファルト材料Aの減少していく厚さを通じて、具体的に示されている。
【0036】
アスファルトフィニッシャー18によって敷き均されたアスファルト材料Aを締固める際、締固めプロセスに関して例えば作成された締固め計画を考慮して、所望の、又は、最適な締固め結果を得るために、異なる温度領域において、1つ以上のソイルコンパクタ10を用いて、異なる動作状態において作業が行われる。例えばアスファルト材料Aが比較的高い温度を有している、アスファルトフィニッシャー18の後に直接続く領域においては、静的にのみ締固めが行われる。これは、当該領域では、当該ソイルコンパクタ10に設けられた1つ以上の運動生成構造が非アクティブであることを意味している。アスファルト温度が、上側境界温度Oを下回る場合、締固めローラ14、16の内少なくとも一方において、当該締固めローラに配設された運動生成構造がアクティブになり、これによって、既にいくらか冷却されたアスファルト材料Aが、静荷重によって締固められるだけではなく、各締固めローラ14、16に配設された運動生成構造によって生成されたエネルギーの導入によっても締固められる。
【0037】
アスファルト温度が、下側境界温度Uを下回る場合、再び静的動作状態sに移行する。なぜなら、アスファルト温度が下側境界温度Uより低い場合、運動生成構造の動作、及び、それによって引き起こされるエネルギー入力の際にも、アスファルト材料Aのさらなる締固めはもはや得られず、むしろ、既に締固められ、冷却されたアスファルト材料Aの構造的完全性が損なわれるという危険が存在するからである。
【0038】
上側境界温度Oと下側境界温度Uとの間に位置する中間温度領域Zにおいて、ソイルコンパクタ10では、少なくとも締固めローラ14又は16に配設された運動生成機構が動作しており、これによって、当該中間温度領域Zにおいて、エネルギーの付加的な導入によって、アスファルト材料Aの所望の締固めが得られる。この際、中間温度領域Z内で、アスファルト温度が既に低下し、例えばより小さいエネルギー入力で作業可能である場合、その間は、より高いアスファルト温度においてより大きなエネルギー入力で作業することが有利であり得る。上述した場合において、すなわち運動生成構造が振動構造であり、当該振動構造が、2つの運動刺激動作状態g、kにおいて、大きなエネルギー入力で、すなわち大きな振幅で、かつ、小さなエネルギー入力で、すなわち小さな振幅で動作可能である場合において、これら両方の運動刺激動作状態の間での移行が、中間境界温度Mにおいて行われ得る。アスファルト温度が中間境界温度Mを下回る場合、運動刺激動作状態は、大きな振幅を有する運動刺激動作状態gから、小さな振幅を有する運動動作状態kに切り替えられる。アスファルト温度が下側境界温度Uも下回る場合、静的締固め動作に移行するために、運動生成構造、この場合は振動構造は非アクティブになる。
【0039】
アスファルトフィニッシャー18によって敷き均されたアスファルト材料Aの温度は、アスファルト材料Aの冷却挙動に影響を与える環境パラメータに強く依存する。当該冷却挙動に実質的な影響を与える環境パラメータの内の1つは、周囲温度Tである。周囲温度Tが低い場合、アスファルト材料Aは、周囲温度Tが高い場合よりも速く冷却される。風速Wも、アスファルト材料Aの冷却挙動に実質的な影響を与える。風速Wが大きくなると、風速がより小さい場合よりも、エネルギー放出が明らかに大きくなり、従って、アスファルト材料Aもより速く冷却される。
【0040】
アスファルト材料Aの冷却挙動に影響を与える当該環境パラメータを考慮して、異なる境界温度O、M、Uが調整され、これによって、特にアスファルト材料Aに付加的なエネルギーを導入する締固めプロセスの実施に関して、すなわち運動生成構造がアクティブである場合に、例えば作成された締固め計画を、例えば複数の走行で完遂するために十分な時間が利用可能であることが保証される。異なる境界温度O、M、Uの、環境パラメータに依存する設定又は選択は、以下において図2図4を用いて詳細に説明される。
【0041】
図2は、締固められるべきアスファルト材料Aの冷却挙動に影響を与えるパラメータとしての、周囲温度Tの考慮を示している。図2には、3つの異なる周囲温度T、T、Tが示されている。Tは、周囲温度Tが比較的高い状態、例えば30℃から40℃の範囲にある状態である。状態Tは、中間の周囲温度T、例えば10℃から20℃の範囲に相当し、状態Tは、周囲温度Tが比較的低く、10℃未満の範囲にある状態に相当し得る。
【0042】
図2においてより明確に認識できることに、上側境界温度Oを下回ると、静的締固め動作から、付加的なエネルギー入力を伴う締固め動作、すなわち運動刺激動作状態への移行が引き起こされるが、当該上側境界温度Oは、周囲温度Tの低下と共に上昇する。これは、周囲温度Tが低い場合に、周囲温度Tがより高い場合よりも高いアスファルト温度において既に、例えば大きな振幅を有する運動刺激動作状態における作業が開始されるということを意味している。これによって、付加的なエネルギー入力を伴う締固め動作に関して利用可能である温度枠が、上方に拡大される。同様に、周囲温度Tの低下と共に、下側境界温度Uは、より低い温度にシフトする。これは、周囲温度Tの低下によって、静的締固め動作への移行が延期されることを意味しており、これによって、同様に、付加的なエネルギー入力を伴う動作状態に関して利用可能である温度枠が拡大される。境界温度Oと境界温度Uとの間に位置する温度枠が、周囲温度Tの低下と共に拡大することによって、周囲温度Tが低下する場合の、アスファルト材料Aの高速冷却が補償されるので、周囲温度が低い場合でも、アスファルト材料Aを、例えば作成された締固め計画に従って適切に締固めるために、十分な時間が利用可能である。従って、当該作業プロセスのために利用できる時間が短すぎることによって、運転者が時間的制約を受け、これによって、ストレスに起因する運転ミスが生じるという危険は、最小化されるか、又は、排除され得る。
【0043】
図2からはさらに、中間境界温度Mも、周囲温度Tの低下と共に低下することが認識される。これもまた、大きなエネルギー入力又は大きな振幅を有する締固め動作の実施に関して、より大きく、従ってより速い冷却を補償する温度枠が利用可能であり、従って、アスファルト材料Aの適切な締固めにとって特に重要な運動刺激動作状態gが、大きなエネルギー入力で、すなわち大きな振幅で、所定の規模で実施され得るということを意味している。
【0044】
図3a)は、振動ローラとして構成された2つの締固めローラ14、16を有するソイルコンパクタ10に関して、上側境界温度O、中間境界温度M、及び下側境界温度Uに関して、異なる周囲温度又は温度領域に関して定められた値を具体的に示している。この際、列vは、それぞれ前側の締固めローラ14に関して設定されるべき動作状態を示しており、列hは、それぞれ後側の締固めローラ16に関して設定されるべき動作状態を示している。3つの層L1、L2及びL3は、3層構造において、下に配置されるべき支持層L1と、支持層L1の上に配置されるべき基層L2と、基層L2の上に配置され、表面を供給する表層L3と、に対応する。
【0045】
図3a)からは、アスファルト温度が上側境界温度Oを上回る場合に、両方の締固めローラ14、16が、静的に動作する、すなわち当該締固めローラに配設された運動生成構造が非アクティブであり、これは、アスファルト温度が下側境界温度Uを下回る場合にも生じるということが認識される。アスファルト温度が中間温度領域Z内、すなわち上側境界温度Oと下側境界温度Uとの間にある場合、アスファルト温度が中間境界温度Mよりも高いか、又は、低いかに依存して、かつ、3つの層L1、L2又はL3の内のいずれが締固められるべきかに依存して、両方の締固めローラ14、16、又は、当該締固めローラにそれぞれ配設された運動生成構造は、大きなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態gにおいて、小さいエネルギー入力を有する運動刺激動作状態kにおいて、又は、静的に動作する。図3a)からは、異なる周囲温度T又は周囲温度Tの範囲に関して、異なる境界温度O、M及びUが、周囲温度Tが低下すると共に上側境界温度Oが上昇する一方で、中間境界温度M及び下側境界温度Uが、周囲温度Tの低下と共に低下するように選択されていることも明らかに認識される。
【0046】
図3b)は、対応する方法で、例えば前側の締固めローラ14には振動構造が配設され、当該振動構造はすなわち振動ローラであり、後側の締固めローラ16には揺動構造が配設され、当該揺動構造はすなわち揺動ローラであるソイルコンパクタ10に関して、異なる境界温度O、M及びUの選択を具体的に示している。図3b)からは、異なる境界温度O、M及びUの、温度に依存する同じ傾向が認識される。さらに、異なる締固められるべき層L1、L2又はL3に依存して、前側の締固めローラ14に配設された振動構造が、異なる運動刺激動作状態g及びkにおいて動作し得ることも認識される。当該例において、後側の締固めローラ16に配設された揺動構造は、運動刺激動作状態оにおいてのみ動作し、すなわち、アクティブであるか、又は、非アクティブであってよい。当該実施例では、互いに異なるエネルギー入力を有する運動刺激動作状態間での揺動構造の切り替えは、設けられていない。
【0047】
図4は、異なる境界温度O、M、Uを設定する際の風又は風速Wの考慮を、具体的に示している。図4に示されているのは、4つの異なる風の状態又は風速W、W、W及びWである。この際、状態Wは、無風の状態であり、状態W、W及びWは、風速Wが増大していく状態である。大きい風速Wは、アスファルト材料Aの高速冷却を意味し、従って、その冷却挙動に、低い周囲温度Tと同じような影響を与える。これに対応して、風速Wの増大と共に、従って、アスファルト材料Aのより高速になる冷却と共に、上側境界温度Oが上昇し、これによって、より早くに既に、すなわちより高い温度において、静的締固め動作から、付加的なエネルギー入力を伴う締固め動作に移行する。本図において具体的に示された、配設された振動構造を備えた締固めローラ14又は16を有するソイルコンパクタ10の例では、上側境界温度を超過すると、例えば大きなエネルギー入力、すなわち大きな振幅を有する運動刺激動作状態gが開始し得る。
【0048】
大きなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態gから、小さいなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態kへの切り替えが行われる中間境界温度Mは、風速の増大と共に、より低い温度にシフトするので、大きなエネルギー入力を有する運動刺激動作状態gでの締固め動作の実施のために、対応してより大きく、高速冷却を補償する温度枠が利用可能である。同様に、下側境界温度Uを下回ると静的締固め動作sへの移行が引き起こされるが、当該下側境界温度Uも、風速Wの増大と共に、より低い温度にシフトする。
【0049】
図2図4に関連して上述した、アスファルト材料Aの冷却挙動を考慮した様々なパラメータの考慮は、特に有利な方法で組み合わされ得る。例えば、境界値O、M及びUの設定の際、周囲温度Tだけではなく、風速Wも考慮され得る。例えば、図3a)又は図3b)に示した表を用いて周囲温度Tを考慮して、各境界値O、M又はUの各基準値を選択することが可能であり、当該基準値は、風速Wを考慮して修正可能であり、例えば風速に依存して、それぞれ所定の温度の値の分だけシフトする、又は、%を変更されることが可能である。風速Wを考慮して基準値を設定すること、及び、当該基準値を周囲温度Tに依存して調整することも可能であり、同様に、風速W又は周囲温度Tにそれぞれ依存する修正値の設定も可能であり、当該修正値は、例えば各境界温度の設定のために、加算して利用され得る。
【0050】
上述した方法において考慮されるべき様々なパラメータ、すなわちアスファルト温度、周囲温度T及び風速Wは、このために適しており、先行技術から知られているセンサによって検出され、それぞれ検出信号の形において、制御ユニットに誘導され得る。例えば、アスファルト温度が、例えば赤外線センサ等の光学センサによって検出され得る一方で、周囲温度は、従来の温度センサによって検出され、風速は、配設された回転数センサを有する風車によって検出され得る。内部に保存又は内部で処理される機械語プログラムを有するマイクロプロセッサを備えるように構成され得る制御ユニット内では、当該パラメータは、上述した意味において処理され、自動化されて、締固めローラ14、16又は当該締固めローラに配設された運動生成構造に関して、適切な動作状態を、ソイルコンパクタ10が現在それぞれ走行しているアスファルト材料Aが、いずれの温度を有しているかに依存して決定するために利用され得る。この際、運転者には、それぞれ優勢である環境条件に関して決定された境界温度が、運転者によって、付加的により高い温度又はより低い温度の方向において、区切られた温度領域にシフトされ得ることによって、この自動化された動作に介入する可能性が与えられていてよい。
【0051】
さらに指摘されるべきことに、上述の方法が実施可能であるのは、例えば、振動構造が、2つより多い異なる運動刺激動作状態において動作可能であり、従って、上側境界温度と下側境界温度との間で、複数の中間境界温度が存在可能であり、これら複数の中間境界温度は、それぞれ異なるエネルギー入力を有する運動刺激動作状態間における移行を表している場合もである。このような運動生成構造は、不連続の、すなわち段階的なエネルギー入力の変化が、異なる運動刺激動作状態間での移行の際に生じず、各締固めローラ及びアスファルト材料に入力されるエネルギーの連続的な、無段階な調整可能性が得られるように構成されていてよい。例えば、当該運動生成構造は、上側境界温度を下回る場合、実施されてきた静的締固め動作から、最大のエネルギー入力、すなわち例えば振動構造又は揺動構造における最大の刺激振幅を有する締固め動作へ移行し、アスファルト温度の低下と共に、線形に減少するエネルギー入力が、下側境界温度を下回る場合に最小エネルギー入力の状態が得られるまで、調整されるように動作し得る。この最小エネルギー入力の状態は、例えば、非アクティブな運動生成構造の状態に相当するか、又は、ゼロとは異なるエネルギー入力を有する状態に相当し得る。
【符号の説明】
【0052】
10 ソイルコンパクタ
12 締固めフレーム
13 運転台
14、16 締固めローラ
18 アスファルトフィニッシャー
A アスファルト材料
g、k 運動刺激動作状態
h 後側の締固めローラ16に関して設定されるべき動作状態
L1 支持層
L2 基層
L3 表層
M 中間境界温度
O 上側境界温度
s 静的動作状態、静的締固め動作
T、T、T、T 周囲温度
U 下側境界温度
v 前側の締固めローラ14に関して設定されるべき動作状態
W、W、W、W及びW 風速、風の状態
Z 中間温度領域
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】