(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075605
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】測定口付き給気ボックス
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
F24F13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179800
(22)【出願日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2020184079
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 晃
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AC01
3L080AD02
3L080AE04
(57)【要約】
【課題】空調機から吐出される空調空気の温度などの状態量を低コストで正確に、かつ意匠性を損なわずに測定できるようにすることで、空調機の適切な性能試験を容易にする。
【解決手段】一実施形態に係る測定口付き給気ボックスは、建物の天井裏空間に配置された空調機と、空調機の下方の天井面に形成された天井点検口と、空調機で調整された空気を建物の床下空間に供給するためのダクトと、を含む床吹出し式空調システムにおいて、空調機とダクトとを接続するための測定口付き給気ボックスであって、空調機の出口部とダクトの入口部とを連通するチャンバを内部に画定するとともに、チャンバに連通する測定口が形成されたボックス本体部と、ボックス本体部の少なくとも一部に形成された断熱層と、を備え、測定口は、天井点検口を介して測定用プローブを挿入可能な位置に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井裏空間に配置された空調機と、前記空調機の下方の天井面に形成された天井点検口と、前記空調機で調整された空気を前記建物の床下空間に供給するためのダクトと、を含む床吹出し式空調システムにおいて、前記空調機と前記ダクトとを接続するための測定口付き給気ボックスであって、
前記空調機の出口部と前記ダクトの入口部とを連通するチャンバを内部に画定するとともに、前記チャンバに連通する測定口が形成されたボックス本体部と、
前記ボックス本体部の少なくとも一部に形成された断熱層と、を備え、
前記測定口は、前記天井点検口を介して測定用プローブを挿入可能な位置に形成された、
測定口付き給気ボックス。
【請求項2】
前記測定口は、前記ボックス本体部の一面に形成された貫通孔を含み、
前記断熱層は、前記ボックス本体部の外周面または内周面に少なくとも前記測定口を覆うように形成され、かつ、複数の独立気泡を有し、弾性を有するとともに、前記測定口を覆う箇所に切込みが形成されている、
請求項1に記載の測定口付き給気ボックス。
【請求項3】
前記切込みは十字形に形成された、
請求項2に記載の測定口付き給気ボックス。
【請求項4】
前記ボックス本体部は、前記ボックス本体部の一面において前記空調機で調整された空気を受け入れ可能な開口を形成する開口縁であって、前記空調機に対向する面の全縁に気密帯が設けられた開口縁を含み、
前記ボックス本体部は、前記開口縁と対向する前記ボックス本体部の他面から突出して設けられ、前記ダクトに接続される接続部をさらに備え、
前記測定口は、前記ボックス本体部の側面に形成された、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の測定口付き給気ボックス。
【請求項5】
前記ボックス本体部の高さ寸法は前記空調機の高さ寸法より大きい、
請求項4に記載の測定口付き給気ボックス。
【請求項6】
前記接続部の下端部は前記ボックス本体部の下端部より上方に位置し、
前記接続部の直径をDとしたとき、前記接続部の下端部と前記ボックス本体部の下端部との高さの差ΔHは、D/10≦ΔHを満たす、
請求項4又は5に記載の測定口付き給気ボックス。
【請求項7】
前記断熱層は、前記ボックス本体部の外周面の全体を覆うように形成された、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の測定口付き給気ボックス。
【請求項8】
前記断熱層は、ゴム発泡体、又は発泡ポリエチレンフォームから構成された、
請求項1乃至7の何れか1項に記載の測定口付き給気ボックス。
【請求項9】
前記天井点検口は、
前記空調機を交換可能な大きさの平面寸法を有する主点検口と、
前記主点検口を開閉可能な主点検口カバーの一部の領域に形成された副点検口と、を含み、
前記測定口は、前記副点検口を介して前記測定用プローブを挿入可能な位置に形成された、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の測定口付き給気ボックス。
【請求項10】
前記ボックス本体部は、前記ボックス本体部の一面において前記空調機で調整された空気を受け入れ可能な開口を形成する開口縁を含み、
前記開口の左右両側に位置する前記開口縁に前記空調機に対向するようにフランジ部が設けられ、
前記フランジ部に前記空調機に設けられた係止片が挿入可能な係止孔又は係止溝が形成され、
前記係止孔又は前記係止溝は、前記係止片が挿入可能な第1部位と、前記第1部位と連通し前記係止片を係止可能な第2部位とを含む、
請求項1乃至9の何れか1項に記載の測定口付き給気ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定口付き給気ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、オフィスビル等の空調システムとして、例えば、天井埋込型空調機を備える天井ダクト式空調システムの性能試験は、通常、建物の空調対象室の天井や壁部に設けられた吹出口で空調機から吐出される空調空気の温度を測定している。二重床を有する建物において、二重床空間を空調機からの給気又は換気の経路に利用する床吹出し式の空調システムでも、床に設けた床吹出口で給気温度の測定が行われる。
【0003】
特許文献1には、作業室などへ吹き出す空気から塵埃などを除去し清浄化するフィルタ装置が開示されている。このフィルタ装置は、箱状の枠体の内部に空気流通路を形成し、この空気流通路を遮るようにフィルタが配置され、フィルタの上流側及び下流側の枠体の側面にパイプ状の測定口を配置している。そして、該測定口から枠体の内部に圧力センサなど各種測定器を挿入し、フィルタの特性(圧力損失、塵埃の量等)を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
床吹出し式の空調システムの運転試験時等において、空調空気(給気)の温度などを床に設けられた床吹出口で測定する従来の測定方法は、空調機から供給される給気が床面下方に形成される二重床空間を通過する過程で温度が変化するため、床吹出口では正しい温度測定ができないという課題がある。しかも、建物全体を空調する床吹出し式の全館空調システムの場合、換気装置と空調機の双方から吐出される給気が混合した空気が二重床空間に送気される場合がある。この場合、床吹出口では空調機から吐出される給気の温度を正しく測定できない。対応策として、新たに市販の測定口を給気ダクトに取り付けるという対応策が考えられるが、この対応策は、現場での取付工事となり、さらに、取り付けた測定口の付近の天井面や壁面などに専用の点検口を新たに設ける必要が生じる。従って、これらの工事に多くの労力と時間を費やすことになり、さらに意匠性を損なう。また、現地工事では、測定口の形状などに制約もある。
【0006】
特許文献1に開示されたフィルタ装置における測定口は、パイプ状の突出した測定口を設ける必要があり、かつ工事中突出部に破損防止のための強度が必要となるため、コスト高となるという課題がある。また、常時使用しない場合は、漏気対策が必要となる。また、上述のように、測定口を天井内や壁内に設ける場合、測定口付近の天井面や壁面などに専用の点検口を新たに設ける必要が生じる。従って、これらの工事に多くの労力と時間を費やす必要があり、さらに意匠性を損なう虞がある。
【0007】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、空調機から吐出される空調空気の温度などの状態量を低コストで正確に、かつ意匠性を損なわずに測定できるようにすることで、空調機の適切な性能試験を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る測定口付き給気ボックスの一態様は、建物の天井裏空間に配置された空調機と、前記空調機の下方の天井面に形成された天井点検口と、前記空調機で調整された空気を前記建物の床下空間に供給するためのダクトと、を含む床吹出し式空調システムにおいて、前記空調機と前記ダクトとを接続するための測定口付き給気ボックスであって、前記空調機の出口部と前記ダクトの入口部とを連通するチャンバを内部に画定するとともに、前記チャンバに連通する測定口が形成されたボックス本体部と、前記ボックス本体部の少なくとも一部に形成された断熱層と、を備え、前記測定口は、前記天井点検口を介して測定用プローブを挿入可能な位置に形成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る測定口付き給気ボックス(以下、単に「給気ボックス」とも言う。)によれば、上記測定口に挿入された測定用プローブによって、空調機から吐出される給気の温度、湿度などの状態量を低コストで正確に測定でき、かつボックス本体部に測定口を形成するだけであるため、意匠性を損なう虞はない。従って、空調機施工後の試運転時などにおいて、空調機の適切な性能試験を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る床吹出し式空調システムの概略的構成図である。
【
図2】上記床吹出し式空調システムのうち天井裏空間に配置された給気ボックスを示す側面図である。
【
図3】一実施形態に係る給気ボックスの斜視図である。
【
図4】上記給気ボックスを別な方向から視た斜視図である。
【
図5】一実施形態に係るボックス本体部の断面図である。
【
図6】一実施形態に係る給気ボックスの斜視図である。
【
図7】天井裏空間に配置された一実施形態に係る給気ボックスを示す側面図である。
【
図8】さらに別な実施形態に係る給気ボックスの斜視図である。
【
図11】(A)はボックス本体部の一方のフランジ部に形成された係止孔の一例を示し、(B)は他方のフランジ部に形成された係止溝の一例を示す正面図である。
【
図12】(A)はボックス本体部の一方のフランジ部に形成された係止溝の別な例を示し、(B)は他方のフランジ部に形成された係止孔の別な例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る給気ボックス10(10A)を床吹出し式空調システム50に適用した概略的構成図であり、
図2は、給気ボックス10(10A)付近を示す側面図である。また、
図6は、給気ボックス10(10A)の変形例に係る給気ボックス10(10B)の斜視図であり、
図7は、別な実施形態に係る給気ボックス10(10C)付近を示す側面図であり、
図8は、給気ボックス10(10C)の斜視図である。
【0013】
図1及び
図2において、建物60は天井部62を備えており、天井面4の上方に天井裏空間S
1が形成されている。天井裏空間S
1に空調機1が配置され、空調機1の点検や取出しを可能とするため、空調機1の下方の天井面4に天井点検口5が設けられている。建物60の床は二重床部64で構成され、空調対象空間Rに面する床面64aの下方に床下空間S
2が形成されている。さらに、空調機1で調整された空気(給気)SAを建物60の床下空間S
2に供給するためのダクト2が設けられている。そして、空調機1とダクト2との間に給気ボックス10(10A)が設けられ、空調機1とダクト2とは給気ボックス10(10A)を介して接続される。床面64aに床吹出口66が設けられ、ダクト2から床下空間S
2に供給された給気SAは床吹出口66から複数の空調対象空間Rに供給されるように構成されている。
【0014】
給気ボックス10(10A~10C)はボックス本体部11を備え、空調機1のケーシング1aに隣接し、空調機1の出口部1bとダクト2の入口部2cとの間に配置され、出口部1bと入口部2cとを連通するチャンバCを内部に画定すると共に、壁面にチャンバCに連通する測定口12が形成されている。測定口12はチャンバCと連通し、かつ天井点検口5を介して測定用プローブを一例とする器具を挿入可能な位置に形成する必要がある。図示された実施形態では、測定口12はボックス本体部11の側面に設けられているが、ボックス本体部11の下面や開口縁22に設けても良く、また、測定用プローブの挿入以外に、例えば、空調機の冷房ドレンポンプの試運転のための注水口として利用しても良い。また、測定口12は複数であってもよい。また、ボックス本体部11の少なくとも一部の壁面に断熱層14が形成され、測定口12は、天井面4に設けられた天井点検口5を介して、作業者が測定用プローブを挿入可能な位置に形成される。
【0015】
図3は、給気ボックス10(10A)を一方向から視た斜視図である。
図4は給気ボックス10(10A)を
図3とは反対側の方向から視た斜視図である。
図5は、給気ボックス10(10A~10C)におけるボックス本体部11の隔壁の一部を示す断面図である。
図3及び
図4に示されるように、給気ボックス10(10A)は、ボックス本体部11の少なくとも一部の壁面に断熱層14が形成されている。図示は省略されているが、給気ボックス10(10B、10C)も同様の構成を有している。
【0016】
図1及び
図2に示される実施形態において、天井点検口5は、作業者が腕を挿入可能に構成され、測定口12は天井点検口5から作業者が腕を挿入して手が届く位置に配置されている。即ち、測定口12は、作業者によって測定口12に測定用プローブを挿入可能な位置に配置されている。
【0017】
建物60に床吹出し式空調システム50を施工した後、空調機1の空調性能検査を行う必要がある。この場合、従来は、床吹出口66から吹き出す給気SAを測定対象として温度、湿度などの給気SAの状態量の測定を行っていた。これに対し、床吹出し式空調システム50では、給気ボックス10(10A)を備えているため、作業者がボックス本体部11に設けられた測定口12に測定用プローブを挿入し、この測定用プローブで空調機1から吐出する給気SAの状態量を測定できる。従って、空調機1から吐出した給気SAを空調機1の直近で空調機1から吐出した直後に測定できるため、空調機1から吐出した給気SA以外の空気が混ざらず、温度や湿度などが変化する前の給気SAのみの状態量を正確に測定できる。
【0018】
また、
図3に示されるように、ボックス本体部11の少なくとも一部の壁面に断熱層14が形成されているので、断熱層14の断熱作用によって、ボックス本体部11に接続される空調機1のケーシング1aやダクト2の位置などに応じてチャンバCの給気SAの流れが異なっても、チャンバCの給気SAの温度、湿度等の状態量をある程度均一に保持できる。従って、給気SAの温度や湿度等の状態量を測定口12の設置場所の影響を受けずに正確に測定できる。さらに、測定口12は現地工事前に予め給気ボックス10に設けられるため、現地工事が不要であり、従って、測定口12の形状などに制約を受けるという問題は発生しない。また、測定口12は空調機1の近くにあり、天井点検口5から作業者の手の届く位置にあるため、天井点検口5を利用して上記測定ができる。従って、現地で測定口専用の点検口を設ける必要がない。
【0019】
図1に示す例示的な実施形態は、ダクト2は、一端が接続部24に接続され、天井裏空間S
1に略水平に延在する水平ダクト2aと、水平ダクト2aから下方へ直角に曲って鉛直方向下方に沿って延在し、他端が床面64aに接続されて床下空間S
2に開口する垂直ダクト2bと、で構成されている。垂直ダクト2bから床下空間S
2に供給された給気SAは、床吹出口66を介して居室R(R
2、R
3)や廊下R(R
1)などの空調対象空間Rに給気SAを供給できる。また、複数の空調対象空間Rを連通させ、給気SAを空調機1に戻すための風路68(例えば、扉のアンダーカットやガラリ等)が設けられている。
【0020】
また、空調機1の下部に、空調対象空間Rに内包される廊下R(R1)などに開口する還気風路3が設けられている。空調機1は、還気風路3から廊下R(R1)などの空気を吸い込み、調温、調湿した空調空気(給気SA)を給気ボックス10のチャンバCに供給する。チャンバCに供給された給気SAは、ダクト2、床下空間S2及び床吹出口66を通して空調対象空間Rに供給される。そして、空調機1の空調性能検査を行う場合などに、給気ボックス10の測定口12に、例えば、温度センサ又は湿度センサ等の測定用プローブを挿入することで、空調機1から吐出した直後の給気SAの状態量を正確に測定できる。天井点検口5は主点検口6を有し、主点検口6は通常運転時は主点検口カバー7で遮蔽されている。還気風路3の開口を形成するフランジ部3aは主点検口カバー7に取り付けられている。
【0021】
還気風路3の開口には例えばフィルタ(不図示)が設けられ、空調対象空間Rの空気はこのフィルタを介して空調機1に吸引され、このフィルタにより埃などの夾雑物が除去される。空調機1に吸引された空気は、空調機1で温度、湿度等の状態量が調整された後、ボックス本体部11の内部に給気SAとして吐出される。空調機1のケーシング1a及び給気ボックス10(10A)は、支持部材(不図示)により天井裏空間S1の所定位置に固定される。
【0022】
一実施形態では、
図3に示すように、測定口12は、ボックス本体部11の外壁面に形成された貫通孔で構成されている。また、
図5に示すように、断熱層14は複数の独立気泡14aを内蔵し、独立気泡14aを有することで弾性を有する。断熱層14は、ボックス本体部11の外周面又は内周面に少なくとも測定口12を覆うように形成される。
図2に示すように、測定口12を覆う箇所に設けられた断熱層14に切込み16が形成され、この切込み16から測定口12に測定用プローブが挿入可能になっている。
図示された実施形態では、
図3~
図5に示されるように、断熱層14はボックス本体部11の外周面に形成されている。
【0023】
ここで「断熱層14が独立気泡型で弾性を有する」とは、測定口12に挿入された測定用プローブが測定口12から取り除かれたとき、断熱層14が測定口12を覆って測定口12を閉塞することにより、測定口12からの給気SAの通過を阻止し、かつ給気SAに含まれる湿分の透過を阻止可能となる弾性を意味する。
【0024】
上記実施形態によれば、測定口12は貫通孔で構成されるため、部品数を省略できると共に、突出物がないため、破損のおそれがない。また、測定口12に測定用プローブが挿入されない時は、断熱層14が測定口12を閉塞するので、測定口12からボックス本体部11の内外の気体が漏洩するのを防止できる。また、断熱層14が弾性を有し、かつ測定口12を覆う箇所の断熱層14に切込み16が形成されているので、切込み16から測定用プローブを測定口12に容易に挿入できる。さらに、断熱層14は複数の独立気泡14aを有するため、透湿性及び通気性が低い。従って、給気SAの通過や湿分の透過を阻止できる。
【0025】
一実施形態では、
図3に示すように、給気ボックス10(10A)は、ボックス本体部11の一面において、空調機1で調整された給気SAを受け入れ可能な開口20を形成する開口縁22を有する。開口縁22はその全縁に気密帯23が設けられている。また、
図4に示すように、ボックス本体部11は、開口縁22と対向するボックス本体部11の他の面から接続部24が突出している。ボックス本体部11は、接続部24を介してダクト2に接続される。そして、測定口12は、開口20及び接続部24が設けられた面以外のボックス本体部11の側面に形成されている。
【0026】
この実施形態によれば、給気ボックス10は、開口縁22と接続部24とがボックス本体部11の互いに対向する面に設けられているので、開口20を形成する開口縁22を空調機1側に向け、かつ接続部24をダクト2側に向けた状態で、空調機1とダクト2との間に容易に配置できる。従って、給気ボックス10は、空調機1とダクト2との間で容易に空調機1とダクト2とに接続できる。また、この位置関係で給気ボックス10を配置したとき、ボックス本体部11の側面に配置された測定口12は、空調機1及びダクト2に隠れることなく、ボックス本体部11から外側に向けて露出される。従って、天井点検口5から主点検口カバー7を取り外したとき、主点検口6から挿入される作業者の手が測定口12に容易に届くため、作業者が測定用プローブを容易に測定口12に挿入できる。従って、空調機1の性能試験のための給気温度などの測定が容易になる。さらに測定用プローブを常設した場合には、測定口12及び測定口12に挿入された測定用プローブの点検が容易になる。
【0027】
図3及び
図4に図示された実施形態では、ボックス本体部11は空調機1からダクト2に向かう方向に沿う短辺を有し、該短辺と直交する方向(
図2の紙面に直交する方向であって、
図3の紙面上で左右方向)に沿って長辺を有する直方体の形状を有しているため、空調機1とダクト2との間に配置される場合場所を取らない。
【0028】
また、空調機1の出口部1bに対向して配置される開口縁22の面の全縁に気密帯23が設けられているため、出口部1bと開口縁22をビスなどで締結することで、出口部1bと開口縁22との接続部を気密にできる。従って、チャンバCからの空調機1の給気SAの漏洩を防止できる。気密帯23は、出口部1bを構成する面と接触して接触面を気密にできる材料で構成される。
【0029】
一実施形態では、気密帯23は開口縁22の他の面より出口部1b側へ突出した面を形成する。この実施形態では、給気ボックス10(10A)が出口部1bと接続された後、気密帯23の突出面が出口部1bの対向面に密着されることで、気密性を発揮できる。例えば、気密性を有するゴムテープを出口部1bに対向する開口縁22の面に張り付けるようにしてもよい。
【0030】
図3及び
図4に示す例示的な実施形態では、ボックス本体部11は実質的に直方体を有している。即ち、開口20が形成された正面30、接続部24が設けられた裏面32、上面34、下面36及び両側面38、40を有し、側面38に測定口12が形成されている。これらの面は、測定口12を除きすべて開口がない閉鎖面で構成される。これによって、これらの面に形成された断熱層14の断熱作用によって、ボックス本体部11のチャンバCの断熱効果を高めることができる。特に、開口縁22にも断熱層14を形成することによって、断熱性及び防露性を高めることができる。
【0031】
また、接続部24は裏面32から突設された接続管24(24a)で構成されている。接続管24(24a)はダクト2の入口部2cと互いに嵌合する直径を有し、入口部2cと嵌合した状態で入口部2cに接続される。
図4に示す実施形態は1個の接続管24(24a)で構成されているが、複数の接続管で構成されていてもよく、また、接続管24(24a)の位置は、
図4のように裏面32の中央部でなく、中央から外れた位置でもよい。
【0032】
また、開口20が形成された正面30とダクト2の入口部2cが接続される裏面32とは互いに平行な面にするとよい。これによって、給気ボックス10(10A)をケーシング1aの出口部1bとダクト2の入口部2cとの間に介在させやすい。
【0033】
次に、接続部24とダクト2の入口部2cとの接合方法の一実施形態を説明する。本実施形態の接続管24(24a)は、軸方向の中間部分に外周面42から外側に突出し周方向に延びて環状に繋がるリブ44を備えている。この接続管24(24a)は、ダクト2の内部に挿入され、リブ44より先端側位置でダクト2を外側から囲繞した締結バンド(不図示)で締め付けることにより、入口部2cと強固にかつ気密に接続される。これによって、入口部2cの内面と接続管24(24a)の外周面とが密着するため、給気SAの漏洩や湿分の透過が生じることはない。また、リブ44よりも小径の接続管24(24a)の付け根側部位で入口部2cの先端部を外側から囲繞した締結バンドで締め付けて、接続管24(24a)と入口部2cとを接続するため、締結バンドがリブ44を越えて外れることを防止でき、そのため、入口部2cが接続管24(24a)から外れてしまうことを防止できる。
【0034】
また、締結バンドを用いて給気ボックス10(10A)とダクト2とを接続するため、逆に、締結バンドを外すことで両者の固定を容易に解除できる。ダクト2との接続を解除した給気ボックス10(10A)は、作業者によってボックス本体部11の内部を容易に点検できるようになる。なお、ダクト2を接続管24(24a)に固定する手段として、締結バンドを用いる代わりに、例えばビス止めとテープとを併用した固定方法を用いてもよい。
【0035】
一実施形態では、
図6に示される給気ボックス10(10B)のように、ボックス本体部11が直方体に形成され、空調機1に対面する開口20を形成する開口縁22のうち、開口20の左右両側に位置する開口縁22に、開口20に対して外側に向けて突出するフランジ部70a及び70bが形成される。フランジ部70a及び70bに丸孔72が形成され、丸孔72に係止片74としてのビスが挿入され、該ビスは空調機1のケーシング1aに形成されたメネジ部に螺合される。
別な実施形態では、空調機1のケーシング1aにもフランジ部70a及び70bに対向する位置にフランジ部が設けられ、フランジ部70a及び70bとケーシング1a側のフランジ部とは、ボルト及びナットで締結される。
これらの実施形態によれば、給気ボックス10(10B)をケーシング1aに簡易な方法で取り付けることができる。
【0036】
図6に示される実施形態では、ボックス本体部11の高さ寸法H
1と接続管24(24a)の直径Dとはほぼ同一になるように構成されている。このように、接続管24(24a)の直径Dを大きくすることで、接続管24(24a)に嵌合するダクト2の口径を大きくすることができ、これによって、ボックス本体部11からダクト2へ流れる給気SAの流量を増加できる。
【0037】
図6に示される実施形態では、フランジ部70a及び70bの高さ寸法とボックス本体部11のH
1とはほぼ同一になるように構成されている。これによって、締結用として形成される丸孔72及び係止片74の位置決めの自由度を拡大できる。
また、
図6に示される実施形態では、フランジ部70a及び70bの下端部の間にフランジ部70cが、上端部の間にフランジ部70dが架設されている。これによって、気密帯23が取付け可能になるとともに、ボックス本体部11の強度を増加できる。
【0038】
一実施形態では、
図7及び
図8に示されるように、ボックス本体部11の高さ寸法H
1は空調機1の高さ寸法H
2より大きく構成される。これによって、空調機1の高さ寸法H
2より大きな口径のダクト2をボックス本体部11に接続することができる。また、空調機1の高さより高い位置にダクト2を配置できる。このように、大口径のダクト2の採用が可能になる。
【0039】
一実施形態では、
図7及び
図8に示されるように、接続部24(例えば、接続管24(24a))の下端部はボックス本体部11の下端部より上方に位置する。そして、接続部24の直径をDとしたとき、接続部24の下端部とボックス本体部11の下端部との高さの差ΔHは、D/10≦ΔHを満たすように構成される。この実施形態によれば、接続部24に接続されるダクト2と天井面4との間の間隔をボックス本体部11と天井面4との間の間隔より広げることができるため、ダクト2と天井上面に被覆される下地材又は天井上面に設けられる機器類との干渉を防止できる。
【0040】
図8に示される実施形態では、ボックス本体部11が直方体に形成され、空調機1に対面する開口20を形成する開口縁22のうち、開口20の左右両側に位置する開口縁22に、開口20に対して外側に向けて突出するフランジ部70a及び70bが形成される。また、フランジ部70a及び70bの間にフランジ部70c、70dが架設されている。そして、フランジ部70a、70b及び70c、70dのケーシング1aに対向する面にゴムテープ(不図示)が貼り付けられている。該ゴムテープを備えるため、フランジ部70a~70dとケーシング1aとの間の気密性を高めることができる。フランジ部70dにはリブ76が設けられ、フランジ部70dの面外強度を確保しているので、フランジ部70dのゴムテープが開口縁22に密着し、当該部での漏気を効果的に防ぐことができる。
【0041】
図示された実施形態では、リブ76は、開口20と直交し、かつ接続部24側へ突出する長方形状の板状体で構成されている。また、リブ76はフランジ部70dの全長に亘って設けられている。
【0042】
一実施形態では、
図3及び
図4に示すように、断熱層14はボックス本体部11の外周面全体を覆うように形成される。これによって、ボックス本体部11の内部に形成されるチャンバCの断熱効果を向上できるため、空調機1からチャンバCに吐出された給気SAの温度変化を抑制できる。給気ボックス10(10A)に接続する空調機1やダクト2の位置等によって、給気SAのチャンバCでの流れが様々に異なっても、チャンバCでの給気温度を均一に保てる。従って、測定口12に挿入された温度測定用プローブによって、空調機1から吐出される給気SAの温度を測定する場合に、吐出後の温度変化による誤差を極力抑制できる。また、断熱層14がボックス本体部11の外周面の全面に存在するため、ボックス本体部11に対する測定口12の配置の自由度を広げることができる。
【0043】
一実施形態では、
図5に示すように、断熱層14の内側に金属層18を有する。金属層18は、例えば鋼板などの金属板で構成され、この金属板の外面に断熱層14が被覆される。このように、金属層18が断熱層14の内側に形成されるため、断熱層14が金属層18の内側にある場合より、ボックス本体部11の内部の埃の堆積やカビの発生等を抑制でき、清掃がし易い。
【0044】
一実施形態では、断熱層14は、例えば、ゴム発泡体又は発泡ポリエチレンフォームで構成される。これらの材料は実質的に独立気泡14aのみを含むため、透湿性及び通気性が低い。従って、給気SAの通過や湿分の透過を阻止できる。また、これらの材料は独立気泡14aを有するため弾性を有する。従って、測定口12に挿入された測定用プローブを測定口12から除去したときの測定口12の閉鎖度を高めることができる。
【0045】
一実施形態では、
図1に示すように、切込み16は十字形に形成される。これによって、測定用プローブを測定口12に挿入するとき、断熱層14がじゃまにならずに容易に挿入できる。また、測定口12から測定用プローブを除去した後の測定口12の閉塞度をある程度確保できる。
【0046】
別な実施形態では、切込み16は、例えば一文字状(一定の長さを有する直線状)に形成される。この形状とすれば、測定口12から測定用プローブを除去した後で断熱層14による測定口12の閉塞度を向上できる。
【0047】
一実施形態では、測定口12はボックス本体部11の壁部を貫通した貫通孔で構成され、例えば、その横断面は円形を有する。しかし、円形に限られず、測定用プローブの横断面に合う形状とすればよい。また、別な実施形態では、測定口12から測定用プローブを除去した後、廉価なシール(例えば円形シール)を貼っておくことで、漏気を低減できる。さらに、別な実施形態では、切込み16に目立つ色(例えば白色)を塗っておくことで目印となる。
【0048】
一実施形態では、
図2に示すように、天井点検口5は、主点検口6及び副点検口8を有する。主点検口6は、空調機1を交換可能な大きさの平面寸法を有する。主点検口6を開放することで、空調機1の点検や交換が可能になる。主点検口6は、運転試験時などの点検時以外は主点検口カバー7で遮蔽される。主点検口カバー7は、主点検口6に対して主点検口6が開閉可能になるように設けられる。主点検口カバー7の一部の領域には副点検口8が設けられる。副点検口8は主点検口6より小さい領域を開放可能であり、かつ副点検口8を介して測定用プローブを挿入可能な位置に形成される。
【0049】
この実施形態によれば、給気ボックス10の点検や空調機1から吐出される給気SAの状態量の計測等の作業を行う場合、測定口12は副点検口8から作業者の手が届く位置にあるため、作業者は小型の副点検口8から手を挿入して測定口12に測定用プローブを挿入できる。これによって、チャンバCの給気SAの温度及び湿度等状態量の計測、常設した場合の測定用プローブの点検及び測定口12自体の点検が可能になる。従って、これらの作業に際し、大型の主点検口カバー7を逐一開閉して主点検口6を開放する必要がなく、作業を簡素化できる。従って、副点検口8から測定用プローブを挿入して測定する場合は、一人の作業者でも簡易に測定、空調機試験等を行うことができる。そのため、現地工事で測定口12及び測定口12に挿入される測定用プローブ専用の点検口を設ける必要がない。
【0050】
図2に示す例示的な実施形態では、副点検口8を遮蔽する副点検口カバー9が設けられている。通常運転時は副点検口カバー9で副点検口8を閉じておき、運転試験時や点検時のとき、副点検口カバー9を操作して副点検口8を開放すればよい。主点検口6、主点検口カバー7、副点検口8及び副点検口カバー9は、例えば四角形を有し、主点検口カバー7及び副点検口カバー9の四角形の一辺が天井面4又は主点検口カバー7の対向辺にヒンジ部(不図示)などで回動可能に接続されることにより、開閉可能になっている。
【0051】
図9は、
図8の一部であるフランジ部70aを拡大して示す正面図であり、
図10は
図9中のA-A線に沿う断面図である。また、
図11及び
図12は、夫々フランジ部70a及び70bに形成された幾つかの実施形態に係る係止孔78又は係止溝84を示す正面図である。
【0052】
一実施形態では、
図8に示されるように、ボックス本体部11は、ボックス本体部11の一面において空調機1で調整された空気(給気)SAを受け入れ可能な開口20を形成する開口縁22を有する。そして、開口20の左右両側に位置する開口縁22に空調機1に対向するようにフランジ部70a及び70bが設けられている。フランジ部70a及び70bには係止孔78又は係止溝84が形成され、他方、空調機1(例えばケーシング1a)の係止孔78又は係止溝84に対向する部位に係止片74が固定されている孔がある。
【0053】
図9~
図12に示されるように、フランジ部70a及び70bに形成された係止孔78又は係止溝84は、係止片74が挿入可能な第1部位80、86と、第1部位80、86と連通し係止片74を係止可能な第2部位82、88とを有する。給気ボックス10(10C)の施工、更新又は保守点検、等を行う場合に、ボックス本体部11の設置、位置ずれの矯正、取外し、等を行う必要がある。これらの作業を行う場合、作業者は、まず、係止片74を係止孔78の第1部位80又は係止溝84の第1部位86に挿入し、ボックス本体部11を第1部位80又は86に支持させながら、係止片74を係止孔78の第2部位82又は係止溝84の第2部位88に移動させるか、又は、係止片74を係止孔78又は係止溝84から取り外すことで、作業者が給気ボックス10(10C)の重量を負担することなく、狭・暗所における給気ボックス10と空調機1との相対的な位置の微調整をすることを不要として、これらの作業を効率良く行うことができる。
【0054】
図8~
図10に示される実施形態は、フランジ部70a及び70bに係止孔78が形成されている実施形態である。係止孔78は、係止片74が挿入可能な第1部位80と、第1部位80と連通し係止片74が係止可能な第2部位82とを有する。係止片74は係止孔78の第1部位80に対向する空調機1側の位置に配置されているため、例えば、作業者が、ボックス本体部11を空調機1に固定する作業を行う場合、係止片74はあらかじめ空調機1側に取付けられ第1部位80に挿入される。その後、作業者がボックス本体部11を
図8~
図10に示された矢印aの方向と反対方向へ移動させることで、係止片74は第2部位82に移動し、係止片74を締め付ける等の方法により、ボックス本体部11は空調機1に固定される。
【0055】
図8~
図10に示される実施形態では、係止孔78は、第1部位80と第1部位80に対して鉛直方向上方に形成された第2部位82とを有する。この実施形態において、ボックス本体部11を空調機1に固定する場合、作業者は、係止片74を第1部位80に挿入した後、ボックス本体部11を鉛直方向下方へ下げる。これによって、係止片74は矢印a方向へ相対的に移動し、第2部位82に係止され、その後係止片74の締め付け等によりボックス本体部11は空調機1に固定される。
【0056】
図11及び
図12に示される実施形態では、フランジ部70a及び70bの一方には係止孔78が形成され、フランジ部70a及び70bの他方には係止溝84が形成されている。係止溝84は、フランジ部70a又は70bの外縁に開口するように形成されている。これらの実施形態では、係止孔78又は係止溝84の第1部位80又は86に対して第2部位82又は88は相対的に水平方向に位置している。ボックス本体部11を空調機1に固定する作業を行う場合、作業者は、係止片74を係止孔78の第1部位80に予め挿入すると共に、係止溝84の開口の入口側に形成される第1部位86に挿入する。この状態で、作業者は、ボックス本体部11の重量を空調機1に負担させながら次の作業を行うことができる。
【0057】
その後、作業者は、ボックス本体部11を水平方向へ、即ち、
図11及び
図12中の矢印aとは反対方向へ移動させる。これによって、係止片74は矢印a方向に移動し、係止孔78では、第2部位82に移動して第2部位82でフランジ部70a又は70bに係止すると共に、係止溝84では、係止溝84の奥側にある第2部位88に移動して、第2部位88を形成するフランジ部70a又は70bに係止し、係止片74の締め付け等の方法により、ボックス本体部11は空調機1に固定される。
【0058】
図11及び
図12の図示された実施形態では、係止溝84の第1部位86は、係止溝84の開口部がフランジ部70a又は70bの外縁に対して傾斜した傾斜面が形成されるか、又はR部が形成され、開口部の溝の間隔が拡大された形状を有している。そのため、係止孔78が係止溝84に挿入しやすくなっている。
【0059】
一実施形態では、
図8~
図10に示されるように、係止片74は、頭部74aと軸部74bとを有する。頭部74aは係止孔78の第1部位80に挿入可能で、かつ第2部位82に係止可能な大きさの外形を有し、軸部74bは第1部位80及び第2部位82に挿入可能な大きさの外形を有する。また、頭部74aの外形は係止溝84の第1部位86及び第2部位88に形成される溝幅より大きく、軸部74bの外形は係止溝84の第1部位86及び第2部位88に形成される溝幅より小さい。
【0060】
図示される実施形態では、
図8~
図12に示されるように、係止片74としてビスが用いられる。ビスの頭部は円形の外形を有し、ネジ部(軸部74b)が空調機1に螺合されて、ビスは空調機1に固定される。
【0061】
図示される実施形態では、
図9~
図12に示されるように、係止孔78の第1部位80は円形を有し、第2部位82は円弧状に形成されている。係止片74の頭部74aは係止孔78の第1部位80の直径より小さく、かつ第2部位82の幅より大きい。また、頭部74aは係止溝84の溝幅より大きい寸法を有し、軸部74bは係止溝84の溝幅より小さい寸法を有する。
【0062】
また、別な実施形態では、ビスの代わりに六角形などの角形の頭部とネジ部とを有するボルトを用いてもよい。
【0063】
また、
図8~
図10に示される実施形態では、係止片74は空調機1のケーシング1aに固定されるようにしてもよい。例えば、係止片74は、ビスやボルトのようにオネジ部を有し、フランジ部70a又は70bに対向するように配置されたケーシング1aの対向面にメネジ部が形成され、該オネジ部が該メネジ部に螺合して係止片74がケーシング1aに固定される。さらに、別な実施形態では、空調機1のケーシング1aに、フランジ部70a及び70bに対向する位置にフランジ部を形成し、係止片74をケーシング1a側のフランジ部に固定するようにしてもよい。この場合、例えば、係止片74としてボルトが用いられ、該ボルトのオネジ部がケーシング1a側のフランジ部側でナットに螺合するように構成される。
【0064】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0065】
1)一態様に係る測定口付き給気ボックスは、建物(60)の天井裏空間(S1)に配置された空調機(1)と、前記空調機(1)の下方の天井面(4)に形成された天井点検口(5)と、前記空調機(1)で調整された空気(SA)を前記建物(60)の床下空間(S2)に供給するためのダクト(2)と、を含む床吹出し式空調システム(50)において、前記空調機(1)と前記ダクト(2)とを接続するための測定口付き給気ボックス(10)であって、前記空調機(1)の出口部(1b)と前記ダクト(2)の入口部(2c)とを連通するチャンバ(C)を内部に画定するとともに、前記チャンバ(C)に連通する測定口(12)が形成されたボックス本体部(11)と、前記ボックス本体部(11)の少なくとも一部に形成された断熱層(14)と、を備え、前記測定口(12)は、前記天井点検口(5)を介して測定用プローブを挿入可能な位置に形成される。
【0066】
空調機の施工後、空調性能検査時などにおいて、従来は、床吹出口(66)で温度などの測定を行っていたのに対し、上記構成によれば、空調機(1)に隣接されたボックス本体部(11)に設けられた測定口(12)に測定用プローブを挿入し、この測定用プローブで空調機(1)から吐出する空調空気(給気)(SA)の状態量を測定できる。従って、空調機(1)から吐出した給気(SA)を空調機(1)直近で測定するため、該給気(SA)の正確な状態量を測定できる。また、ボックス本体部(11)には上記断熱層(14)が形成されているため、チャンバ(C)内を均一な温度に保持できる。従って、空調機(1)から吐出する空調空気(SA)の温度を正確に測定できる。さらに、該測定口(12)は現地工事前に予め給気ボックス(10)に設けられるため、現地工事が不要であり、従って、形状などに制約を受けるという問題は発生しない。また、測定口(12)は空調機(1)の近くにあり、空調機用の点検口である天井点検口(5)から作業者の手の届く位置にあるため、天井点検口(5)を利用して上記測定ができる。従って、現地で測定口専用の点検口を設ける必要がない。
【0067】
2)別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、1)に記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記測定口(12)は、前記ボックス本体部(11)の外壁面に形成された貫通孔を含み、前記断熱層(14)は、前記ボックス本体部(11)の外周面または内周面に少なくとも前記測定口(12)を覆うように形成され、かつ、複数の独立気泡(14a)を有し、弾性を有するとともに、前記測定口(12)を覆う箇所に切込み(16)が形成されている。
【0068】
このような構成によれば、上記測定口(12)は、ボックス本体部(11)の外壁面に形成された貫通孔を含むため、部品数を省略でき、かつ突出物がないため、破損のおそれがない。また、測定口(12)に測定用プローブが挿入されない時は、断熱層(14)が測定口(12)を閉塞するので、測定口(12)を介してボックス本体部内外の気体が漏洩するのを防止できる。また、断熱層(14)が弾性を有し、かつ測定口(12)を覆う箇所の断熱層(14)に切込み(16)が形成されているので、測定用プローブを測定口に容易に挿入できる。さらに、断熱層(14)は複数の独立気泡(14a)を有するため、透湿性及び通気性が低い。従って、給気(SA)の通過や湿分の透過を阻止できる。
【0069】
3)さらに別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、2)に記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記切込み(16)は十字形に形成される。
【0070】
このような構成によれば、測定口(12)を覆う箇所に形成された切込み(16)が十字形を有するため、測定口(12)に測定用プローブを容易に挿入できると共に、測定口(12)から測定用プローブを除去した後の測定口(12)を断熱層(14)で密閉できる。
【0071】
4)さらに別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、1)乃至3)の何れかに記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記ボックス本体部(11)は、前記ボックス本体部の一面において前記空調機(1)で調整された空気(SA)を受け入れ可能な開口(20)を形成する開口縁であって、前記空調機(1)に対向する面の全縁に気密帯(23)が設けられた開口縁(22)を含み、前記ボックス本体部(11)は、前記開口縁(22)と対向する前記ボックス本体部(11)の他面から突出して設けられ、前記ダクト(2)に接続される接続部(24)をさらに備え、前記測定口(12)は、前記ボックス本体部(11)の側面(38)に形成される。
【0072】
このような構成によれば、給気ボックス(10)は、上記開口縁(22)を空調機(1)側に向け、かつ上記接続部(24)をダクト(2)側に向けた状態で、空調機(1)と接続部(249との間に容易に配置できる。また、空調機(1)とダクト(2)との間に給気ボックス(10)を配置したとき、ボックス本体部(11)の側面(38)に配置された上記測定口(12)は、天井点検口(5)から作業者の手が届く位置に配置されるので、天井点検口(5)から点検作業を容易に行うことができる。また、開口縁(22)のダクト(2)に対向する面の全縁に気密帯(23)が設けられるため、ボックス本体部(11)の内部に形成されるチャンバ(C)からの空調機(1)の給気(SA)の漏洩を防止できる。
【0073】
5)さらに別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、4)に記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記ボックス本体部(11)の高さ寸法(H1)は前記空調機(1)の高さ寸法(H2)より大きい。
【0074】
このような構成によれば、ボックス本体部(11)の高さ寸法(H1)は空調機(1)の高さ寸法(H2)より大きいため、空調機(1)の高さ寸法(H2)より大きな口径のダクト(2)をボックス本体部(11)に接続することができる。また、空調機(1)の高さより高い位置にダクト(2)を配置できる。
【0075】
6)さらに別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、4)又は5)に記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記接続部(24)の下端部は前記ボックス本体部(11)の下端部より上方に位置し、前記接続部(24)の直径をDとしたとき、前記接続部(24)の下端部と前記ボックス本体部(11)の下端部との高さの差ΔHは、D/10≦ΔHを満たす。
【0076】
このような構成によれば、接続部(24)に接続されるダクト(2)と天井面(4)との間の間隔をボックス本体部(10a)と天井面(4)との間の間隔より広げることができるため、ダクト(2)と天井上面に被覆される下地材又は天井上面に設けられる機器類との干渉を防止できる。
【0077】
7)さらに別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、1)乃至6)の何れかに記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記断熱層(14)は、前記ボックス本体部(11)の外周面の全体を覆うように形成される。
【0078】
このような構成によれば、断熱層(14)がボックス本体部(11)の外周面の全体を覆うように形成されるため、給気ボックス(10)はボックス本体部(11)の外周面の全域で断熱される。従って、空調機(1)からボックス本体部(11)のチャンバ(C)に吐出された給気(SA)の温度変化を抑制し、チャンバ(C)内の温度むらを抑制できるため、測定口(12)に挿入された測定用プローブで空調機から吐出された給気の温度、湿度等の状態量を正確に測定できる。
【0079】
8)さらに別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、1)乃至7)の何れかに記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記断熱層(14)は、ゴム発泡体、又は発泡ポリエチレンフォームから構成される。
【0080】
このような構成によれば、上記断熱層(14)は発泡系であり、実質的に独立気泡(14a)のみを含むため、透湿性及び通気性が低く、かつ独立気泡(14a)を内蔵するため弾性を有する。そのため、測定口(12)から測定用プローブを除去したとき、断熱層(14)によって測定口(12)を閉鎖できる。
【0081】
9)さらに別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、1)乃至8)の何れかに記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記天井点検口(5)は、前記空調機(1)を交換可能な大きさの平面寸法を有する主点検口(6)と、前記主点検口を開閉可能な点検口カバー(7)の一部の領域に形成された副点検口(8)と、を含み、前記測定口(12)は、前記副点検口(8)を介して前記測定用プローブを挿入可能な位置に形成される。
【0082】
このような構成によれば、給気ボックスの点検や状態量の計測等の作業を行う場合、作業者は小型の副点検口(8)から手を挿入して点検や計測を介して行うことができるので、大型の点検口カバー(7)を逐一開閉する必要がなく、作業を簡素化できる。
【0083】
10)さらに別な態様に係る測定口付き給気ボックスは、1)乃至9)の何れかに記載の測定口付き給気ボックスにおいて、前記ボックス本体部(11)は、前記ボックス本体部(11)の一面において前記空調機(1)で調整された空気(SA)を受け入れ可能な開口(20)を形成する開口縁(22)を含み、前記開口(20)の左右両側に位置する前記開口縁(22)に前記空調機(1)に対向するようにフランジ部(70a、70b)が設けられ、前記フランジ部(70a、70b)に前記空調機(1)に設けられた係止片(74)が挿入可能な係止孔(78)又は係止溝(84)が形成され、前記係止孔(78)又は前記係止溝(84)は、前記係止片(74)が挿入可能な第1部位(80、86)と、前記第1部位(80、86)と連通し前記係止片(74)を係止可能な第2部位(82、88)とを含む。
【0084】
給気ボックス(10)の施工、更新又は保守点検、等を行う場合に、ボックス本体部(11)の設置、位置ずれの矯正、取外し、等の作業を行う必要がある。上記構成によれば、これらの作業において、予め空調機1に固定した係止片(74)を係止孔(78)又は係止溝(84)の第1部位(80、86)に挿入してボックス本体部(11)を空調機(1)支持させながら、係止片(74)を第2部位(82、88)に移動させるか、あるいは、係止片(74)を係止孔(78)又は係止溝(84)から取り外すことで、作業者が給気ボックス(10)の重量を負担することなく、これらの作業を効率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0085】
1 空調機
1a ケーシング
1b 出口部
2 ダクト
2a 水平ダクト
2b 垂直ダクト
2c 入口部
3 還気風路
3a フランジ部
4 天井面
5 天井点検口
6 主点検口
7 主点検口カバー
8 副点検口
9 副点検口カバー
10(10A、10B、10C) 測定口付き給気ボックス
11 ボックス本体部
30 正面
32 裏面
34 上面
36 下面
38、40 側面
12 測定口
14 断熱層
14a 独立気泡
16 切込み
18 金属層
20 開口
22 開口縁
23 気密帯
24 接続部
24(24a) 接続管
42 外周面
44、76 リブ
50 床吹出し式空調システム
60 建物
62 天井部
64 二重床部
64a 床面
66 床吹出口
68 風路
70a、70b、70c、70d フランジ部
72 丸孔
74 係止片(ビス)
74a 頭部
74b 軸部
78 係止孔
80 第1部位
82 第2部位
84 係止溝
86 第1部位
88 第2部位
C チャンバ
R 空調対象空間
R(R1) 廊下
R(R2、R3) 居室
S1 天井裏空間
S2 床下空間
SA 給気