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特開2022-75629ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075629
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B21D 47/00 20060101AFI20220511BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20220511BHJP
   E04C 2/08 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
B21D47/00 E
B32B3/12 Z
E04C2/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180491
(22)【出願日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/109,348
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一哉
(72)【発明者】
【氏名】石田 祥子
(72)【発明者】
【氏名】李 牧東
【テーマコード(参考)】
2E162
4F100
【Fターム(参考)】
2E162CB15
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DC01A
4F100DC01B
4F100DC03A
4F100DC03B
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB81
(57)【要約】
【課題】生産性に優れかつ特性向上が図られたハニカム構造体を製造する。
【解決手段】山部と谷部とが繰り返し交互に形成された複数のコルゲートシートを組み合わせるハニカム構造体の製造方法であって、山部においてハニカム構造体の厚さ方向に沿って延びる凹部、及び、谷部においてハニカム構造体の厚さ方向に沿って延びる凸部、の少なくとも一方を有する、複数のコルゲートシートを準備することと、互いに異なるコルゲートシートの山部及び谷部を組み合わせることで、対向配置された一対の二重壁構造の隔壁を含んで構成されるセルが複数配置されたハニカム構造を形成することと、を含み、ハニカム構造面において、セルは、それぞれ6つの他のセルに囲われた配置となっていて、ハニカム構造を形成することにおいて、凹部または凸部を用いて、二重壁構造の隔壁の少なくとも一部において、セルとは異なる空間を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部とが繰り返し交互に形成された複数のコルゲートシートを組み合わせるハニカム構造体の製造方法であって、
前記山部において前記ハニカム構造体の厚さ方向に沿って延びる凹部、及び、前記谷部において前記ハニカム構造体の厚さ方向に沿って延びる凸部、の少なくとも一方を有する、複数の前記コルゲートシートを準備することと、
互いに異なる前記コルゲートシートの前記山部及び前記谷部を組み合わせることで、対向配置された一対の二重壁構造の隔壁を含んで構成されるセルが複数配置されたハニカム構造を形成することと、
を含み、
ハニカム構造面において、前記セルは、それぞれ6つの他のセルに囲われた配置となっていて、
前記ハニカム構造を形成することにおいて、前記凹部または前記凸部を用いて、前記二重壁構造の隔壁の少なくとも一部において、前記セルとは異なる空間を形成する、ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記複数のコルゲートシートは、前記ハニカム構造体の厚さに対応した幅の前記コルゲートシートであって、
前記ハニカム構造を形成することにおいて、互いに異なる前記コルゲートシートの前記山部及び前記谷部を組み合わせて、一方の前記コルゲートシートにおける前記山部と他方の前記コルゲートシートにおける前記谷部とが対向した状態となるように、前記複数のコルゲートシートを配置し、前記山部と前記谷部とを一体化することにより、前記ハニカム構造を形成する、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記複数のコルゲートシートは、前記ハニカム構造体の厚さに対応した幅の前記コルゲートシートが一方向に複数連結した状態のシート材として準備され、
前記ハニカム構造を形成することは、
前記シート材における前記一方向に沿って延びる折り曲げ線で前記シート材を折り曲げることで、前記凹部または前記凸部を含む前記コルゲートシートが連結された波板状とすることと、
前記一方向に対して直交すると共に交互に配置された山折り線と谷折り線とによって、前記波板状の前記シート材をジグザグに折り曲げることとを含み、
前記山折り線及び前記谷折り線に沿ってスリットが形成され、
前記スリットを開きながら前記シート材をジグザグに折り曲げることで、隣接する前記コルゲートシート同士の一部が接続された状態で二重壁構造の隔壁を形成する、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
対向配置された一対の二重壁構造の隔壁を含んで構成されるセルが複数配置されたハニカム構造を含むハニカム構造体であって、
ハニカム構造面において、前記セルは、それぞれ6つの他のセルに囲われた配置であり、
前記二重壁構造の隔壁は同一方向に延び、
前記二重壁構造の隔壁の少なくとも一部において、前記二重壁構造の間に前記セルとは異なる空間を有する、ハニカム構造体。
【請求項5】
前記空間は、ハニカム構造面における断面形状が円形である、請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記空間は、前記二重壁構造を形成する隔壁の両方が互いに離間することによって形成されている、請求項4または5に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記空間は、前記二重壁構造の隔壁の中央付近に設けられる、請求項4~6のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記二重壁構造の隔壁は、1枚のシートを折り曲げることにより形成されている、請求項4~7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハニカム構造体の製造方法及びハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量かつ高剛性・高強度を実現できるハニカム構造は航空機・宇宙機等の飛翔体を中心に建材、家具にまで広く用いられている。ハニカム構造体(ハニカムコア)は主に構造用サンドイッチパネルの芯材として圧縮力と面外せん断力に抵抗し、軽量高剛性パネルを実現する。また、六角柱の軸方向に潰すことで衝撃吸収材としても用いられる。さらに、ハニカム構造体は、機械的特性だけでなく、吸音、遮音などの音響特性や断熱などの熱的特性,整流作用などの機能特性を有する。また、六角形のタイリングが織りなす審美的な美しさから意匠用途にも用いられる。
【0003】
しかしながら、ハニカム構造体(ハニカムコア)の重要な性能である圧縮特性については改善の余地があることが知られている。例えば、非特許文献1には、正六角形のタイリングによる周期的且つ対称的な構造であるため、六角形のセル壁が交互に折り畳まれるように座屈してしまうため、この波長で圧縮強度が決まってしまうことが示されている。
【0004】
また、非特許文献1では、六角形セルの変形による高いポアソン比の影響で、曲げたときに鞍型に変形することから、屈曲性が低いという点も指摘されている。これはロケットのボディのような曲面のサンドイッチパネルを作成する際に問題となる可能性がある。曲面のパネルを作成する場合には、フレックスコアなどの特殊なハニカム構造体が使われているものの、通常のハニカム構造体と比べて高価であり、機械的特性も通常のハニカムより低いことが知られている。
【0005】
このような背景を踏まえて、ハニカム構造の機械的強度を上げる構造が検討されている。例えば、非特許文献2には、六角形のセルの頂点に円柱を設けた改良ハニカム構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6075006号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bitzer,T. N. Honeycomb technology: materials, design, manufacturing, applications andtesting. Springer Science & Business Media, 1997.
【非特許文献2】Chen,Jinxiang, et al. "The deformation mode and strengthening mechanism ofcompression in the beetle elytron plate." Materials & Design 131(2017): 481-486.
【非特許文献3】斉藤一哉, etal. "折紙の数理を応用したハニカム構造材料の新しい製造法." 応用数理 28.1 (2018): 26-31.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献2に記載の改良ハニカム構造は3枚のセル壁の交点に新たな円柱構造を持つため,3Dプリンタを使ってしか製造できないという問題がある。すなわち、非特許文献2に記載の改良ハニカム構造は、公知の大量生産法であるコルゲート式または展張式では製造できない形状となっている。また、その他のハニカム構造の製造方法として、非特許文献3及び特許文献1に記載の折紙工法も知られているものの、非特許文献2に記載の改良ハニカム構造は、折紙工法でも製造が不可能である。
【0009】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、生産性に優れかつ特性向上が図られたハニカム構造体を製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係るハニカム構造体の製造方法は、山部と谷部とが繰り返し交互に形成された複数のコルゲートシートを組み合わせるハニカム構造体の製造方法であって、前記山部において前記ハニカム構造体の厚さ方向に沿って延びる凹部、及び、前記谷部において前記ハニカム構造体の厚さ方向に沿って延びる凸部、の少なくとも一方を有する、複数の前記コルゲートシートを準備することと、互いに異なる前記コルゲートシートの前記山部及び前記谷部を組み合わせることで、対向配置された一対の二重壁構造の隔壁を含んで構成されるセルが複数配置されたハニカム構造を形成することと、を含み、ハニカム構造面において、前記セルは、それぞれ6つの他のセルに囲われた配置となっていて、前記ハニカム構造を形成することにおいて、前記凹部または前記凸部を用いて、前記二重壁構造の隔壁の少なくとも一部において、前記セルとは異なる空間を形成する。
【0011】
本開示の一形態に係るハニカム構造体は、対向配置された一対の二重壁構造の隔壁を含んで構成されるセルが複数配置されたハニカム構造を含むハニカム構造体であって、ハニカム構造面において、前記セルは、それぞれ6つの他のセルに囲われた配置であり、前記二重壁構造の隔壁は同一方向に延び、前記二重壁構造の隔壁の少なくとも一部において、前記二重壁構造の間に前記セルとは異なる空間を有する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、生産性に優れかつ特性向上が図られたハニカム構造体を製造する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a),(b)は、一形態に係るハニカム構造体の構造の一例を説明する図である。
図2図2(a)は、従来のハニカム構造体に使用されるコルゲートシートを作成する金型の例を示し、図2(b),(c)は、一形態に係るハニカム構造体に使用されるコルゲートシートを作成する金型の例を示す図である。
図3図3(a)~図3(d)は、ハニカム構造体のコルゲート式による製造方法の一例を示す図である。
図4図4(a)~図4(d)は、従来のハニカム構造体の折紙式による製造方法の一例を示す図である。
図5図5は、一実施形態に係るハニカム構造体の折紙式による製造方法の一例を示す図である。
図6図6は、一実施形態に係るハニカム構造体の折紙式による製造方法の一例を示す図である。
図7図7(a)~図7(c)は、一実施形態に係るハニカム構造体の折紙式による製造方法の一例を示す図である。
図8図8(a)~図8(c)は、ハニカム構造体の強度評価の一例について説明する図である。
図9図9(a)~図9(c)は、ハニカム構造体の強度評価の一例について説明する図である。
図10図10(a)~図10(c)は、変形例に係るハニカム構造体の一例について説明する図である。
図11図11(a)~図11(d)は、変形例に係るハニカム構造体の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[ハニカム構造体]
図1は、一形態に係るハニカム構造体を示す図である。図1(a)はハニカム構造体の全体図であり、図1(b)はその部分拡大図である。なお、ハニカム構造体を説明するために、XYZ座標軸を用いて説明する。ハニカム構造体1は、XY平面に沿って延びるハニカム構造面10を有する構造体であり、Z軸方向に沿ってXY平面に平行な各断面において、ハニカム構造面10と同じ形状が現れる。図1(a)ではハニカム構造面10を破線で例示している。なお、ハニカム構造面10とは、ハニカム構造体1の主面に相当する面である。
【0016】
ハニカム構造体1は、複数のコルゲートシート20の組み合わせで構成されている。ハニカム構造体1の製造方法は後述するが、コルゲートシート20同士を貼り合わせることで構成される。コルゲートシート20は、幅方向が長尺状のシートであり、長手方向が概略X軸方向に延び、短手方向がZ軸方向に延びている。コルゲートシート20の短手方向、すなわち、幅方向が、ハニカム構造体1の厚さ方向となる。
【0017】
ハニカム構造体1は、ハニカム構造面10において、2種類の開口として第1開口11と第2開口12とを有している。第1開口11とは概ね六角形の開口であり、X軸方向に沿って互いに平行に延びる一対の第1隔壁11aと、第1隔壁11aを挟むように設けられて互いに平行に延びる一対の第2隔壁11b及び互いに平行に延びる一対の第3隔壁11cとによって形成されている柱状の空間である。一対の第1隔壁11a、一対の第2隔壁11b、及び、一対の第3隔壁11cは略同一の長さであるため、第1開口11は、概ね正六角形状とされているが、第2開口12が設けられていることでその一部が変形している。また、第1開口11は、ハニカム構造体1において繰り返し現れる基本的な空間であり、セルと呼ぶ場合がある。なお、セルの形状は正六角形を基準としたものには限定されず、例えば、各辺の長さが異なる六角形や一部変形した六角形等を用いてもよい。
【0018】
第1開口11は、それぞれ略六角形状であるが、1つのセル(第1開口11)に着目した場合、各セルは、6つのセル(別の第1開口11)に囲われている配置とされている。セル同士は上述の一対の第1隔壁11a、一対の第2隔壁11b、及び、一対の第3隔壁11cによって区切られている。このうち、一対の第1隔壁11aは二重壁構造となっている。つまり、2つの隔壁が重ねられた状態となっている。
【0019】
第1隔壁11aの中央付近には、第2開口12が設けられる。第2開口12は、第1隔壁11aを分断する位置において、二重壁構造を形成する2つの隔壁の間に設けられた柱状の空間である。図1に示す例では、第2開口12は断面形状が円形とされている。第2開口12が設けられることで、第1開口11においては、第1隔壁11aの一部が内側(開口の中心側)へ突出している。その結果、第1開口11は、一対の第1隔壁11aの一部が切り欠かれたような形状となっている。
【0020】
なお、ハニカム構造体1では、第2開口12の外径は第1開口11の外径よりも小さくなり得る。一例として、第1開口11の外径に対して、第2開口12の外径は50%未満程度としてもよい。なお、第1開口11、第2開口12の「外径」とは、開口が正多角形を一部変形した形状からなる場合には、開口の断面の外接円の直径として設定することができる。また、正多角形ではない場合には、開口の外形をすべて含む最小の円(最小包含円)の直径を外径として設定することができる。
【0021】
ハニカム構造体1を構成するコルゲートシート20は、第1開口11の半分と、第2開口12の半分とを形成するような形状となる。具体的には、図1(b)に示すように、コルゲートシート20は、複数の山部21と谷部22とが規則的に繰り返す波状の構成である。山部21及び谷部22は同一方向(図1(b)ではX軸方向)に延びる平坦面とされている。また、山部21と谷部22との間には傾斜部23が形成されている。一例として、山部21または谷部22と傾斜部23とのなす角は120°とされる。ただし、この角度は第1開口11の形状によって変更され得る。
【0022】
また、XZ平面に沿って延びる山部21には、Z軸方向に沿って延びる凹部21aが形成される。凹部21aは、1枚のコルゲートシート20で見た場合に、山部21から谷部22に向かう方向に突出している。また、凹部21aは、Z軸方向に対して直交するXY平面における断面形状が半円状となっている。
【0023】
同様に、また、XZ平面に沿って延びる谷部22には、Z軸方向に沿って延びる凸部22aが形成される。凸部22aは、1枚のコルゲートシート20で見た場合に、谷部22から山部21に向かう方向に突出している。また、凸部22aは、Z軸方向に対して直交するXY平面における断面形状が半円状となっている。X軸方向に沿った山部21及び谷部22の長さは同じとされ、山部21におけるX軸方向に沿った凹部21aの形成位置と、谷部22におけるX軸方向に沿った凸部22aの形成位置は同じとされる。
【0024】
ハニカム構造体1は、上記のコルゲートシート20を組み合わせることで形成される。具体的には、Y軸方向に沿って隣接するコルゲートシート20との間で、山部21と谷部22と対向させ、これらを一体化させる(例えば、貼り合わせる)ことで、ハニカム構造体1が形成される。図1(b)に示す例では、例えばコルゲートシート20Aの谷部22とコルゲートシート20Bの山部21とが対向する位置に2つのコルゲートシート20A,20Bが配置されている。この状態で対向する谷部22と山部21とを貼り合わせる。この結果、コルゲートシート20Aの山部21とコルゲートシート20Bの谷部22とによって略六角形の空間が形成されている。この空間が第1開口11に相当する。
【0025】
このとき、山部21に形成された凹部21aと、谷部22に形成された凸部22aとは離間した状態となるので、対向する凹部21aと凸部22aとの間に空間が形成されている。この空間が第2開口12に相当する。
【0026】
コルゲートシート20Aの山部21は、コルゲートシート20Bとは逆側に配置されたコルゲートシート20Cの谷部22と一体化される。また、コルゲートシート20Bの谷部22は、コルゲートシート20Aとは逆側に配置されたコルゲートシート20Dの山部と一体化される。このように複数のコルゲートシート20を組み合わせることによって、隣接するコルゲートシート20との間に、第1開口11及び第2開口12が繰り返し形成されることになり、ハニカム構造面10が形成される。上記のように、第2開口12は、ハニカム構造体1において、2つのコルゲートシート20が重ね合わせられた第1隔壁11aに形成される。すなわち、第1隔壁11aは二重壁構造とされている。換言すると、すべての二重壁構造は、ハニカム構造体1のハニカム構造面10において同一の方向(図1に示す例では、X軸方向)に延びているともいえる。
【0027】
なお、第2開口12の形状は特に限定されず、例えば、四角形であってもよい。四角形の場合、断面形状が半円状ではなく中央に頂点を有する山型状となるように、凹部21a及び凸部22aを形成するとよい。
【0028】
[ハニカム構造体の製造方法]
次に、図2~7を参照しながら、ハニカム構造体1の製造方法として、2つの方法を説明する。
【0029】
(第1の方法:コルゲート式)
第1の方法として、図2及び図3を参照しながら、所謂コルゲート式の製造方法について説明する。コルゲート式では、複数のコルゲートシート20を準備し、これらを接着等によって一体化することで上記のハニカム構造体1を形成する。
【0030】
コルゲートシート20は、例えば、図2に示す金型で平坦なシート材をプレス成形することによって形成することができる。
【0031】
図2(a)は、従来の正六角形が繰り返し配置されたハニカム構造面を有するハニカム構造体を形成する際の金型90の例であり、2つの上金型91、下金型92のそれぞれにおいて、山部21及び谷部22を構成する平坦面93,94と、その間の傾斜部を構成する傾斜面95とが設けられている。一方、図2(b)、図2(c)に示す金型80は、上金型81、下金型82のそれぞれにおいて、山部21及び谷部22を構成する平坦面83,84と、その間の傾斜部を構成する傾斜面85とが設けられている。さらに、山部21を形成する平坦面83には、凹部21aに対応した形状にシート材を変形させる凹凸部83aが設けられ、山部21を形成する平坦面84には、凸部22aに対応した形状にシート材を変形させる凹凸部84aが設けられる。
【0032】
まず、図3(a)に示すように、上金型81、下金型82の間にシート材20Xを挟み、上金型81、下金型82によってプレス成形することによって、コルゲートシート20が形成される。なお、コルゲートシート20の形成方法としては、プレス成形に限定されず、一般的なコルゲートシート20の形成方法を用いることができる。具体的には、コルゲートロールを使ってもよいし、真空成型等によって形成してもよい。さらに、シート材全体を一度に成形しなくてもよく、シートを送りながら、部分的に成形する構成としてもよい。
【0033】
次に、図3(b)に示すように、複数のコルゲートシート20を一方向(図3(b)の例では上下方向)に並べ、且つ、隣接するコルゲートシート20との間で、山部21と谷部22とが対向するように配置する。この状態で、図3(c)に示すように、近接して配置された山部21と谷部22とを一体化させる(例えば、貼り合わせる)ことで、ハニカム構造体1が形成される。一体化された山部21及び谷部22が二重壁構造となる第1隔壁11aを形成する。
【0034】
このとき、図3(c)に示すように、山部21に形成された凹部21aと、谷部22に形成された凸部22aとが対向した状態で、山部21の凹部21a以外の領域と、谷部22の凸部22a以外の領域と、を対向させて一体化することにより、対向する凹部21aと凸部22aによって形成される第2開口12に対応した空間が形成される。すなわち、二重壁構造の2つの隔壁の間に第2開口12が形成される。なお、一体化していない山部21と谷部22、すなわち、離間した状態で配置された山部21と谷部22との間には、第1開口11に対応した空間が形成される。
【0035】
さらに、図3(d)に示すように、隣接するコルゲートシート20との間で、山部21と谷部22とが対向するように配置するようにしながら、複数のコルゲートシート20を積層し、近接配置した山部21と谷部22とを一体化させる。これにより、第1開口11及び第2開口12の2種類の開口を有する、図1に示すようなハニカム構造体が形成される。
【0036】
なお、複数の幅の広い(奥行きがある)シート材を用いて、幅広のコルゲートシート20を形成し、このコルゲートシートから厚みのあるブロック状のハニカム構造体を成形した後、ハニカム構造面に沿ってスライスすることによって、ハニカム構造体1を形成してもよい。
【0037】
(第2の方法:折紙式)
次に、1枚の大きなシートに対してスリットを設け、さらにこれを折り曲げることで、コルゲートシート20が複数連結した状態のハニカム構造体1を形成することができる。この方法を用いてハニカム構造体1を形成する方法について説明する。
【0038】
まず、図4を参照しながら、一般的な正六角形のみから構成されるハニカム構造体を折紙式(折紙工法,Kirigami honeycomb)を用いて作成する方法について説明する。
【0039】
まず、図4(a)に示すように、大きなシート材30Xを準備し、これに対して、一方向(図4(a)におけるW軸方向)に延びる複数の山折り線及び谷折り線を設ける。山折り線は、W軸方向に対して直交するL軸方向に沿って、2つの山折り線と2つの谷折り線が交互に設けられるように設定する。山折り線及び谷折り線の間隔c’は、図4(a)に示すように等間隔とされている。
【0040】
さらに、L軸方向に延びるスリットを形成する。スリットは、2つの山折り線を挟む谷折り線同士を結ぶスリットs1と、2つの谷折り線を挟む山折り線を結ぶスリットs2と、を含む。
2つの山折り線を挟む谷折り線同士を結ぶスリットs1は、L軸方向に沿って繰り返し設けられている。また、スリットs1に沿って、L軸方向に沿って山折り線が設けられる。一方、2つの谷折り線を挟む山折り線を結ぶスリットs2についても、L軸方向に沿って繰り返し設けられる。また、スリットs2に沿って、L軸方向に沿って谷折り線が設けられる。
【0041】
スリットs1を含む山折り線と、スリットs2を含む谷折り線とは、W軸方向に沿って交互に設けられる。また、W軸方向に沿ったスリットs1を含む山折り線と、スリットs2を含む谷折り線との間隔は等しくされる。この結果、図4(a)に示すように、L軸方向に隣接する山折り線と谷折り線との間では、W軸方向における隣接するスリットの間隔がd’であるのに対して、L軸方向に隣接する山折り線同士の間、もしくは谷折り線同士の間では、W軸方向における隣接するスリットの間隔が2d’となっている。
【0042】
次に、シート材30Xに形成されたW軸方向に延びる山折り線及び谷折り線に沿って、シート材30Xを折り曲げる。この結果、図4(b)に示すように、シート材30Xは、L軸方向に沿って平坦な山部31と平坦な谷部32とが交互に現われるような波板のような形状となる。
【0043】
次に、シート材30Xに設けられたL軸方向に延びる山折り線及び谷折り線に沿って、シート材30Xを折り曲げる。L軸方向に延びる折り線としては、山折り線と谷折り線とが交互に設けられているので、図4(c)に示すように、ジグザグに折り曲げられる。このとき、スリットs1,s2が設けられている部分は折り曲げ時に互いに離間するように(スリットが開くように)変形する。その結果、図4(d)に示すように、山折り線に沿って形成されたスリットs1によって、図示上方における六角形の開口の端部が形成され、山折り線に沿って形成されたスリットs2によって、図示上方における六角形の開口の端部が形成される。スリットs1,s2の端面は、ハニカム構造体1における一対の主面(ハニカム構造面)に表れることになる。スリットs1に沿って延びる山折り線と、スリットs2に沿って延びる谷折り線とを利用して、シート材30Xをジグザグに折り曲げると、山折り線を挟んだ谷部32同士が当接すると共に、谷折り線を挟んだ山部31同士が当接する。これらを一体化させることで、正六角形の開口のみを有するハニカム構造体を形成することができる。
【0044】
一方、本実施形態に係るハニカム構造体1を製造する場合、図4に示すハニカム構造体の形成方法と比較して、上述の凹部21a及び凸部22aに対応する形状を追加する点が相違する。
【0045】
まず、図5に示すように、大きなシート材40Xを準備し、これに対して、一方向(図5におけるW軸方向)に延びる複数の山折り線L1及び谷折り線L2を設ける。山折り線は、W軸方向に対して直交するL軸方向に沿って、2つの山折り線L1と2つの谷折り線L2が交互に設けられるように設定する。この2つの山折り線L1の間は波板状に成形した後には山部41になり、2つの谷折り線L2の間は谷部42になる。ただし、山部41及び谷部42は、コルゲート方式において用いられるコルゲートシート20における山部21及び谷部22とは異なる。つまり、シート材40Xにおける山部41の一部は、コルゲートシート20の山部21に対応するが、他の領域は谷部22に対応する。これは、シート材40Xをジグザグに折り曲げることに由来する。
【0046】
また、2つの山折り線L1の間に凹部41aとなる領域a1を設けると共に、2つの谷折り線L2の間に凸部42aとなる領域a2を設ける。この点は、図4に示す例と相違する部分である。
【0047】
なお、図4(a)に示す例では、山折り線及び谷折り線の幅が基本的に同じ(c’)とされていたが、図5に示す例では、凹凸に変形する領域a1,a2が追加されたため、2つの山折り線L1または谷折り線L2の間の距離c1は、山折り線と谷折り線との間の距離c2よりも大きくなる。ただし、距離c2は凹部41aまたは凸部42aの凹凸形状を形成した後に2つの山折り線L1または2つの谷折り線L2の間の距離がc2となるように設定され得る。
【0048】
次に、シート材40Xに対して、L軸方向に延びるスリットを形成する。スリットは、2つの山折り線L1を挟む谷折り線L2同士を結ぶスリットs1と、2つの谷折り線L2を挟む山折り線L1同士を結ぶスリットs2と、を含む。さらに、スリットs1またはスリットs2と同一の直線上且つ領域a1またはa2上のスリットs3、s4が設けられる点が、図4に示す例と相違する部分である。
【0049】
2つの山折り線L1を挟む谷折り線同L2士を結ぶスリットs1は、L軸方向に沿って繰り返し設けられている。また、スリットs1に沿って、L軸方向に沿って山折り線L3が設けられる。また、スリットs1、山折り線と同じ直線上にスリットs3が設けられる。スリットs3は、スリットs1及び山折り線が領域a2と交差する位置に形成される。
【0050】
一方、2つの谷折り線を挟む山折り線を結ぶスリットs2についても、L軸方向に沿って繰り返し設けられる。また、スリットs2に沿って、L軸方向に沿って谷折り線が設けられる。また、スリットs2、谷折り線と同じ直線上にスリットs3が設けられる。スリットs3は、スリットs2及び谷折り線が領域a1と交差する位置に形成される。
【0051】
スリットs1,s3を含む山折り線と、スリットs2,s4を含む谷折り線とは、W軸方向に沿って交互に設けられる。また、W軸方向に沿ったスリットs1を含む山折り線と、スリットs2を含む谷折り線との間隔は等しくされる。
【0052】
次に、シート材40Xに形成されたW軸方向に延びる山折り線L1及び谷折り線L2に沿って、シート材40Xを折り曲げる。この結果、図6に示すように、シート材40Xは、L軸方向に沿って平坦な山部41と平坦な谷部42とが交互に現われるような波板状の状態となる。このとき、領域a1,a2の両端でもシート材20Xを折り曲げ、且つ、領域a1,a2を曲線状に折り曲げることで、領域a1から溝状の凹部41aが形成され、領域a2から凸部42aが形成される。
【0053】
次に、シート材40Xに形成されたL軸方向に延びる山折り線L3及び谷折り線L4に沿って、シート材40Xを折り曲げる。L軸方向に延びる折り線としては、山折り線L3と谷折り線L4とが交互に設けられているので、図7(a)に示すように、ジグザグに折り曲げられる。このとき、スリットs1~s4が設けられている部分は折り曲げ時に互いに離間するように変形する。図7(a)では、スリットs1,s3について、スリット間が広がりながら(スリットが開きながら)変形している状態を示している。
【0054】
折り曲げ角度をさらに大きくすると、図7(b)及び図7(c)に示すように、スリットs3によって分離された凸部42a同士が対向するようになる。その結果、図7(c)に示すように、2つの凸部42aがハニカム構造体1における第2開口12を形成するように変形する。また、山折り線L3で折り曲げられた結果、谷部42同士が重なるようになり、これらが二重壁構造の第1隔壁11aを形成することになる。
【0055】
また、スリットs1によって分離された2つの山部41同士が対向し、ハニカム構造体1における開口11を形成する。
【0056】
なお、図7では、拡大図を示していないが、スリットs2,s4についてもスリットs1,s3と同様に開口11,12を形成するように変形する。すなわち、シート材40Xの折り曲げに伴ってスリットが広がりながら変形する。そして、スリットs3によって分離された凹部41a同士が対向するようになる。その結果、2つの凹部41aが第2開口12を形成するように変形する。一方、スリットs2によって分離された2つの谷部42同士が対向し、ハニカム構造体1における開口11を形成する。
【0057】
図7(c)に示すようにスリットs1~S4に重なる山折り線及び谷折り線に沿ってシート材40Xを折り曲げた後に、当接する部分(山部41同士または谷部42同士)を一体化すると、ハニカム構造体1が完成する。このように、シート材40Xを折り曲げて成形する折紙式によってハニカム構造体1を形成することができる。
【0058】
なお、上記の手順では、スリットs1~s4を導入したシート材40Xを折り曲げ成形する手順で、スリットs1~s4が形成された状態の波板(図6参照)を作成する手順を示したが、この手順には限定されない。例えば、プレス成形等の手法を用いて、先にシート材40Xを図6に示す波板状に成形した後に、レーザー加工機などで所定の位置にスリットを形成してもよい。
【0059】
[ハニカム構造体の特徴]
上述のハニカム構造体1に係る4つの特徴について説明する。これらの特徴は、これまでに知られているハニカム構造に比べて優位な点である。
【0060】
(第1の特徴)
第1の特徴は、既存の大量生産法のうち、コルゲート式または折紙式の装置を用いて容易に製造できる点である。上述の第1の方法で説明したように、コルゲート式においては、従来のプレス型またはベンダー等について、凹部21a及び凸部22aに対応する形状を形成するように加工することで、ハニカム構造体1が製造可能となる。また、第2の方法で説明した折紙式においても、従来の装置に対して、凹部41a及び凸部42aを形成すると共に当該領域にスリットs3,s4を追加する機能を追加することで、ハニカム構造体1が製造可能となる。
【0061】
このように、従来の正六角形の開口のみから構成されるハニカム構造体1を作成する際の手法の一部を改良することによって、ハニカム構造体1を製造することが実現され得る。
【0062】
(第2の特徴)
【0063】
ハニカム構造体1の第2の特徴は、機械的特性が向上する点である。
【0064】
ハニカム構造体1は、非特許文献2に記載の改良ハニカム構造と同様に、正六角形の開口に加えて、小さな開口を有する。このような微小な柱状構造は圧縮強度を向上させる。圧縮強度の上昇によって、外圧を受けた場合のエネルギー吸収量も上がる。したがって、ハニカム構造体1は、衝撃吸収性能も向上する。
【0065】
なお、ハニカム構造体1における圧縮強度は、ハニカム構造面10において各辺をそれぞれ構成している矩形板の周辺条件が4辺単純支持であると仮定し、この矩形板の一方向一様圧縮荷重による座屈を考えることで算定され、具体的には以下の数式(1)で表される。
【0066】
【数1】
【0067】
上記数式(1)において、Ec,ν,σyは、それぞれハニカム構造体1を構成する材料のヤング率、ポアソン比、降伏応力である。また、tはシートの厚さ(箔厚)であり、aは矩形板の幅である。上述のハニカム構造体1では、第2開口12の周囲を構成する柱状構造がハニカム構造体1を構成する矩形板の中央部を補強することなる。そのため、数式(1)において用いられる有効な矩形板の幅は2分の1以下となる。また、数式(1)から、圧縮強度は、矩形板の幅の逆数1/aの二乗に比例して増加することがわかる。ここで、ハニカム構造体1において基本構造となる正六角形の開口11の周辺を形成する6枚の矩形板のうち、第2開口12によって補強されるのは2枚である。そこで、圧縮力を負担する6枚のうち2枚の矩形板が、第2開口12が形成されることによって4倍の強度を持つと仮定すると、ハニカム構造体1の全体としての圧縮強度は、理論上は2倍程度まで大きくなると予測される。さらに、ハニカム構造体1は、矩形板の幅(数式(1)におけるa)がほぼ変わらないことを考えると、非特許文献2に記載された改良ハニカム構造のように矩形板の端部に補強のための開口を導入する場合と比べて、ハニカム構造体1のほうが高い補強効果が期待される。
【0068】
ハニカム構造体1の圧縮強度を紙製のサンプルを用いて評価した結果について図8を参照しながら説明する。
【0069】
0.25mm厚の紙を準備し、開口11のセルサイズ(六角形の対向する辺の間の距離)が30mmであり、第2開口12が一辺5mmの四角形となるようにハニカム構造体1を作成した(図10も参照)。なお、ハニカム構造面の大きさは、90mm×150mmであり、ハニカム構造体1の厚さ(高さ;ハニカム構造面に対する奥行き;図1におけるZ軸方向の長さ)は15mmであった。また、試験片としたハニカム構造体1では、略六角形の開口11が13個あり、四角形の第2開口12が12個設けられていた。
【0070】
上記のハニカム構造体1の試験片を、図8(a)に示す材料試験機(島津製作所社製;型番:SHIMADZU AG-X Plus 20kN)に設置し、試験速度1.0mm/minの条件で、圧縮強度を測定した。
【0071】
表1として、圧縮強度及びエネルギー吸収量の結果を示す。また、図8(b)として、変位量と反力との関係の測定結果(荷重変位曲線)を示す。なお、比較対象として、第2開口12が設けられていない通常のハニカム構造体(w/o hollows)に係る測定結果も併せて示している。
【0072】
【表1】

表1に示すように、第2開口12を有するハニカム構造体1(w/ hollows)の場合、通常のハニカム構造体(w/o hollows)と比較して、圧縮強度が21.8%上昇し、エネルギー吸収量は46.2%上昇した。
【0073】
なお、数式(1)に基づいて推定した値より上昇していない理由としては、圧縮強度が初期不正の影響を受けやすく、簡易的な試験片を用いた測定では、十分性能を発揮できていないためと思われる。より精密な試験を実施すると更に高い性能を示すと予測される。
【0074】
また、図8(b)に示すように、第2開口12を有する(柱状構造ありの)ハニカム構造体1の方が荷重変位曲線の荷重変化が滑らかになることも確認された。これは、上記実施形態で説明したハニカム構造体1のほうが通常のハニカム構造体よりも短い波長で座屈するためと考えられる。すなわち、座屈中にも荷重が下がらないため,より多くのエネルギーを吸収し、衝撃吸収効果を高めると推測される。図8(c)は、ハニカム構造体1の座屈した状態を示している。ハニカム構造体1では、第2開口12の座屈が細かい波長で進行するため、より多くのエネルギーを吸収することが可能であると推測される。
【0075】
なお、予備試験では圧縮剛性の上昇も見られた。これは、第2開口12による柱状の補強構造が、非線形弾性モードの座屈を抑制したためと推測される。また、ハニカム構造体1としては重要であると考えられる面外せん断剛性・強度も、ハニカム構造における開口のセルサイズに反比例するため、小さな第2開口12を有するハニカム構造体1では強化されると期待される。
【0076】
(第3の特徴)
ハニカム構造体1の第3の特徴は、屈曲性が向上する点である。従来は、曲面サンドイッチパネル用の特殊ハニカムコアとして、ポアソン比がより低くゼロまたはマイナスの値を示す構造が有効であり、オーバーエキスパンドコアやフレックスコア等が用いられている。
【0077】
一方、ハニカム構造体1は、図9(a)に示すように第2開口12が形成される辺の延在方向(X軸方向)に沿って負荷をかけた場合、図9(b)及び図9(c)に示すように、第2開口12は、X軸方向に対して交差するY軸方向に向かって広がるようにしてつぶれる。一方で、ハニカム構造体1自体は、Y軸方向に広がるような変形は生じない。そのため、ハニカム構造体1では、この第2開口12の変形によって、ポアソン比ゼロが実現可能とされる。したがって、オーバーエキスパンドコア(バタフライ型ハニカム;Re-entrant型ハニカム)と同様に屈曲性の向上にも期待できる。なお、このような特徴は、非特許文献2に記載の改良型ハニカム構造では期待できない。さらに、ハニカム構造体1であれば、従来から知られている既存の曲面用ハニカムコアと異なり、強度・剛性の低下を防ぎながら、屈曲性が向上される点についても有利である。
【0078】
(第4の特徴)
ハニカム構造体1の第4の特徴は、第2開口12の断面形状を変更することによる意匠性の向上である。
【0079】
上述したように、ハニカム構造体1では第2開口12のハニカム構造面10における形状が円形である場合について説明したが、第2開口12は四角形等の他の形状であってもよい。図10(a)及び図10(b)は、第2開口12が四角形である場合を示している。コルゲートシート20における凹部21a及び凸部22aの形状を変えることで、第2開口12の形状を変更することができる。コルゲート式の場合、図10(c)に示すように、金型における凹凸部83a,84aの形状を半円状から頂点を有する三角形状に変更することで、コルゲートシートにおける凹部21a及び凸部22aの形状を変更することができ、これらを組み合わせることで、第2開口12の形状を変更することができる。
【0080】
図11は、ハニカム構造体1と比べて、第2開口12の形状を変更した例を示している。図11(a)に示すハニカム構造体1Aは、第2開口12の形状を大きくしたものである。ハニカム構造体1Aでは、二重壁構造を形成するコルゲートシート20の山部21及び谷部22の長さに対して半分以上の領域が第2開口12とされている。
【0081】
図11(b)に示すハニカム構造体1Bは、第2開口12の形を変更したものであり、六角形となるようにしたものである。第2開口12の形状は、コルゲートシート20における凹部21a及び凸部22aの形状を変更することによって変更することができる。なお、第2開口12の形は、上述の円形、四角形、及び、六角形に限定されない。また、上記実施形態では、凹部21a及び凸部22aが対称な形状である場合を示しているが、凹部21a及び凸部22aの形を互いに異なる構成とすることで、第2開口12の形状をさらに変更することができる。
【0082】
図11(c)に示すハニカム構造体1Cは、二重壁構造を形成するコルゲートシート20の山部21及び谷部22の一部に対してのみ第2開口12を設けた構成を示している。例えば、コルゲートシート20Eでは、谷部22に凸部22aを設ける一方、山部21には凹部21aを設けていない。一方、コルゲートシート20Fでは、山部21に凹部21aを設ける一方、谷部22には凸部22aを設けていない。このような2種類のコルゲートシート20E,20Fを、凹部21aが設けられた山部21と、凸部22aが設けられた谷部22とが対向するように交互に配置して一体化すると、第2開口12が形成される二重壁部分と、第2開口12が形成されない二重壁部分と、が交互に設けられることになる。なお、このような構成の場合、第2開口12の有無によって第1開口11の形状も異なることになる。例えば、第2開口12が形成されない二重壁が対向配置されて形成されている第1開口11は正六角形となる。一方、第2開口12が形成されている二重壁が対向配置されて形成されている第1開口11は、第2開口12の形状によって正六角形から変形されている。第2開口12は二重壁構造の部分のすべてに設けられている必要はなく、一部のみに設けられていてもよい。
【0083】
図11(d)に示すハニカム構造体1Dは、第2開口12の形をさらに変更したものであり、十字型となるようにしたものである。第2開口12の形状は、コルゲートシート20における凹部21a及び凸部22aの形状を変更することによって変更することができる。
【0084】
このように、第2開口12の形状は種々変更することができる。また、第2開口12の数についても適宜変更することができる。一例として、1つの二重壁構造を構成する山部21と谷部22とが一体化された部分において、第2開口12を複数設ける構成としてもよい。
【0085】
[その他]
第2開口12は、第1隔壁11aのすべてに設けられている必要はなく、その一部にのみ設けられていてもよい。
【0086】
また、第1隔壁11aのどの位置にどのような大きさの第2開口12を設けるかは適宜変更することができるが、図1等に示すように、第1隔壁11aの中央付近に第2開口12を設ける場合、各部分の強度をある程度均等にすることができるため、Z軸方向に圧縮のエネルギーを受けた場合に、偏って負荷を受けることが防がれる。強度を均等にするという観点では、全ての第1隔壁11aにおいて、同じ位置(例えば中央付近)に同一形状の第2開口12が設けられていると、ハニカム構造面10において受ける負荷の偏りを低減することができる。
【0087】
ただし、意匠性を高めることを目的として、第2開口12の配置を均等とせず、図11(c)に示すハニカム構造体1Cのように第2開口12が設けられる位置と設けられない位置とを偏らせる構成としてもよい。また、複数の第2開口12の形状を互いに異ならせる構成としてもよい。
【0088】
また、第2開口12を設けるための構成も適宜変更できる。例えば、上記実施形態では、凹部21a及び/または凸部22aが基本的に同じ形状(対称)のものを対向させた開口について説明したが、互いに異なる形状の凹部21a及び/または凸部22aを対向させることで第2開口12を形成してもよい。二重壁構造を形成する一体化された山部21のみに凹部21aを設けるか、または、谷部22のみに凸部22aを設けるかによって、第2開口12を形成することとしてもよい。つまり、第2開口12のそれぞれは、二重壁構造を形成する二つのコルゲートシートのうちいずれか一方に形成される凹凸によって形成されていればよく、その構成は適宜変更することができる。
【0089】
また、上記実施形態で説明したハニカム構造体1では、第2隔壁11b及び第3隔壁11cは平坦である場合について説明したが、これらの隔壁を変形させる構成としてもよく、例えば、ハニカム構造面10において第2隔壁11b及び第3隔壁11cが直線ではなくなるように凹凸を設けてもよい。
【0090】
[付記]
本開示の一形態に係るハニカム構造体の製造方法は、山部と谷部とが繰り返し交互に形成された複数のコルゲートシートを組み合わせるハニカム構造体の製造方法であって、前記山部において前記ハニカム構造体の厚さ方向に沿って延びる凹部、及び、前記谷部において前記ハニカム構造体の厚さ方向に沿って延びる凸部、の少なくとも一方を有する、複数の前記コルゲートシートを準備することと、互いに異なる前記コルゲートシートの前記山部及び前記谷部を組み合わせることで、対向配置された一対の二重壁構造の隔壁を含んで構成されるセルが複数配置されたハニカム構造を形成することと、を含み、ハニカム構造面において、前記セルは、それぞれ6つの他のセルに囲われた配置となっていて、前記ハニカム構造を形成することにおいて、前記凹部または前記凸部を用いて、前記二重壁構造の隔壁の少なくとも一部において、前記セルとは異なる空間を形成する。
【0091】
前記複数のコルゲートシートは、前記ハニカム構造体の厚さに対応した幅の前記コルゲートシートであって、前記ハニカム構造を形成することにおいて、互いに異なる前記コルゲートシートの前記山部及び前記谷部を組み合わせて、一方の前記コルゲートシートにおける前記山部と他方の前記コルゲートシートにおける前記谷部とが対向した状態となるように、前記複数のコルゲートシートを配置し、前記山部と前記谷部とを一体化することにより、前記ハニカム構造を形成する態様であってもよい。
【0092】
前記複数のコルゲートシートは、前記ハニカム構造体の厚さに対応した幅の前記コルゲートシートが一方向に複数連結した状態のシート材として準備され、前記ハニカム構造を形成することは、前記シート材における前記一方向に沿って延びる折り曲げ線で前記シート材を折り曲げることで、前記凹部または前記凸部を含む前記コルゲートシートが連結された波板状とすることと、前記一方向に対して直交すると共に交互に配置された山折り線と谷折り線とによって、前記波板状の前記シート材をジグザグに折り曲げることとを含み、前記山折り線及び前記谷折り線に沿ってスリットが形成され、前記スリットを開きながら前記シート材をジグザグに折り曲げることで、隣接する前記コルゲートシート同士の一部が接続された状態で二重壁構造の隔壁を形成する態様であってもよい。
【0093】
本開示の一形態に係るハニカム構造体は、対向配置された一対の二重壁構造の隔壁を含んで構成されるセルが複数配置されたハニカム構造を含むハニカム構造体であって、ハニカム構造面において、前記セルは、それぞれ6つの他のセルに囲われた配置であり、前記二重壁構造の隔壁は同一方向に延び、前記二重壁構造の隔壁の少なくとも一部において、前記二重壁構造の間に前記セルとは異なる空間を有する。
【0094】
前記空間は、ハニカム構造面における断面形状が円形であってもよい。
【0095】
前記空間は、前記二重壁構造を形成する隔壁の両方が互いに離間することによって形成されている態様であってもよい。
【0096】
前記空間は、前記二重壁構造の隔壁の中央付近に設けられる態様であってもよい。
【0097】
前記二重壁構造の隔壁は、1枚のシートを折り曲げることにより形成されている態様であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1,1A~1D…ハニカム構造体、10…ハニカム構造面、11…第1開口(セル)、11a…第1隔壁、11b…第2隔壁、11c…第3隔壁、12…第2開口、20,20A~20F…コルゲートシート、20X…シート材、21…山部、21a…凹部、22…谷部、22a…凸部、23…傾斜部、30X…シート材、31…山部、32…谷部、40X…シート材、41…山部、41a…凹部、42…谷部、42a…凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11