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特開2022-75689合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物、合わせガラス中間膜、合わせガラス、太陽電池封止材および太陽電池モジュール
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  • 特開-合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物、合わせガラス中間膜、合わせガラス、太陽電池封止材および太陽電池モジュール 図1
  • 特開-合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物、合わせガラス中間膜、合わせガラス、太陽電池封止材および太陽電池モジュール 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075689
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物、合わせガラス中間膜、合わせガラス、太陽電池封止材および太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220511BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220511BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20220511BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20220511BHJP
【FI】
C03C27/12 F
C08L33/04
C08L31/04 S
C08K5/14
H01L31/04 560
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026433
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2020500465の分割
【原出願日】2019-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018024177
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】福山 佳那
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】小松 晴信
(72)【発明者】
【氏名】永山 敬
(72)【発明者】
【氏名】礒川 素朗
(57)【要約】
【課題】光学特性および耐湿接着性の性能バランスに優れた合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物であって、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)を含み、可動ダイレオメータを用いて、130℃にて当該樹脂組成物のトルクを経時的に測定した際の、測定開始から60分後のトルク値をT100[dN・m]とし、T100の10%のトルク値をT10とし、T100の50%のトルク値をT50とし、測定中のトルクの最小値をTminとし、測定開始からT10に達する時間をX[分]とし、測定開始からT50に達する時間をY[分]としたとき、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度(ただし、T50=(T100-Tmin)×0.5+Tmin、T10=(T100-Tmin)×0.1+Tmin)が0.01dN・m/分を超え0.25dN・m/分以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物であって、
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)を含み、
可動ダイレオメータを用いて、130℃にて当該樹脂組成物のトルクを経時的に測定した際の、測定開始から60分後のトルク値をT100[dN・m]とし、T100の10%のトルク値をT10とし、T100の50%のトルク値をT50とし、測定中のトルクの最小値をTminとし、測定開始からT10に達する時間をX[分]とし、測定開始からT50に達する時間をY[分]としたとき、
(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度(ただし、T50=(T100-Tmin)×0.5+Tmin、T10=(T100-Tmin)×0.1+Tmin)が0.01dN・m/分を超え0.25dN・m/分以下である樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物において、
JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)が10g/10分以下である樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含む樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の不飽和エステルに由来する構成単位の含有量が28質量%以上48質量%以下である樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物において、
前記架橋剤(B)が有機過酸化物を含む樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の樹脂組成物において、
下記方法により測定されるヘイズが2.5%未満である樹脂組成物。
(方法)
前記樹脂組成物により構成された120mm×75mmの膜を得る。次いで、得られた前記膜を120mm×75mm×3.2mmのガラス板で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得る。次いで、得られた前記合わせガラスのヘイズをJIS K7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂組成物において、
下記方法により測定される樹脂組成物のはみ出し長さが10mm未満である樹脂組成物。
(方法)
前記樹脂組成物により構成された120mm×75mmの膜を得る。次いで、得られた前記膜を120mm×75mm×3.2mmのガラス板で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得る。次いで、得られた前記合わせガラスの端部からはみ出した樹脂組成物の、前記合わせガラスの端面に対して垂直方向のはみ出し長さを測定する。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の樹脂組成物において、
シート状またはフィルム状である樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂組成物により構成された合わせガラス中間膜。
【請求項11】
請求項10に記載の合わせガラス中間膜と、
前記合わせガラス中間膜の両面に設けられた透明板状部材と、
を備える合わせガラス。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の樹脂組成物により構成された太陽電池封止材。
【請求項13】
請求項12に記載の太陽電池封止材を含む太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物、合わせガラス中間膜、合わせガラス、太陽電池封止材および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラス中間膜や太陽電池封止材としては、エチレン・不飽和エステル共重合体および架橋剤により構成された膜が知られている。
【0003】
このような合わせガラス中間膜に関する技術としては、例えば、特許文献1(国際公開第2014/208756号)および特許文献2(特開2007-331952号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、ニップロールを用いて加圧する工程を含む積層体の製造方法に用いられる積層体形成用シートであって、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び架橋剤を含む組成物からなり、上記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率が、上記エチレン-酢酸ビニル共重合体に対して30質量%以上であり、かつ、上記エチレン-酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(JIS-K7210に準拠する)が、5g/10分以下であることを特徴とする積層体形成用シートが記載されている。
【0005】
特許文献2には、エチレン/酢酸ビニル共重合体に有機過酸化物を含有してなる合わせガラス用中間膜であって、有機過酸化物が特定の化学式で表され、かつ、10時間半減期の温度が100℃以下であるパーオキシケタールであることを特徴とする合わせガラス用の中間膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/208756号
【特許文献2】特開2007-331952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
合わせガラス中間膜の各種特性について要求される技術水準は、ますます高くなっている。本発明者らは、合わせガラス中間膜に関し、以下のような課題を見出した。
まず、特許文献1および2に記載されているような、エチレン・不飽和エステル共重合体および架橋剤により構成された合わせガラス中間膜は光学特性および高湿度下での接着性(以下、耐湿接着性とも呼ぶ。)が十分に満足するものではなかった。
すなわち、本発明者らは、従来のエチレン・不飽和エステル共重合体および架橋剤により構成された合わせガラス中間膜には、光学特性および耐湿接着性をバランスよく向上させるという観点において、改善の余地があることを見出した。
また、太陽電池封止材も上記合わせガラス中間膜と同様の課題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、光学特性および耐湿接着性の性能バランスに優れた合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、架橋速度が速い樹脂組成物は、耐湿接着性や合わせガラス製造時の気泡抜けに劣る傾向にあることが明らかになった。これに対して、樹脂組成物の架橋速度を低下させることによって、得られる架橋膜の光学特性を良好に保ちながら、耐湿接着性が改善されることが見出された。
本発明者らは、上記知見を基にさらに検討したところ、可動ダイレオメータを用いて、130℃にて樹脂組成物のトルクを経時的に測定した際の、測定開始から60分後のトルク値をT100[dN・m]とし、T100の10%のトルク値をT10とし、T100の50%のトルク値をT50とし、測定中のトルクの最小値をTminとし、測定開始からT10に達する時間をX[分]とし、測定開始からT50に達する時間をY[分]としたとき、(T50-T10)/(Y-X)で示される値(ただし、T50=(T100-Tmin)×0.5+Tmin、T10=(T100-Tmin)×0.1+Tmin)を樹脂組成物の架橋速度を評価する指標として利用できることを見出した。
こうした知見に基づいて、鋭意検討した結果、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度を特定の範囲に調整することによって、合わせガラス中間膜または太陽電池封止材の光学特性および耐湿接着性の性能バランスを効果的に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下に示す合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物、合わせガラス中間膜、合わせガラス、太陽電池封止材および太陽電池モジュールが提供される。
【0011】
[1]
合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物であって、
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)を含み、
可動ダイレオメータを用いて、130℃にて当該樹脂組成物のトルクを経時的に測定した際の、測定開始から60分後のトルク値をT100[dN・m]とし、T100の10%のトルク値をT10とし、T100の50%のトルク値をT50とし、測定中のトルクの最小値をTminとし、測定開始からT10に達する時間をX[分]とし、測定開始からT50に達する時間をY[分]としたとき、
(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度(ただし、T50=(T100-Tmin)×0.5+Tmin、T10=(T100-Tmin)×0.1+Tmin)が0.01dN・m/分を超え0.25dN・m/分以下である樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の樹脂組成物において、
JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)が10g/10分以下である樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載の樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含む樹脂組成物。
[4]
上記[3]に記載の樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含む樹脂組成物。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の全体を100質量%としたとき、上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の不飽和エステルに由来する構成単位の含有量が28質量%以上48質量%以下である樹脂組成物。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の樹脂組成物において、
上記架橋剤(B)が有機過酸化物を含む樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の樹脂組成物において、
下記方法により測定されるヘイズが2.5%未満である樹脂組成物。
(方法)
上記樹脂組成物により構成された120mm×75mmの膜を得る。次いで、得られた上記膜を120mm×75mm×3.2mmのガラス板で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得る。次いで、得られた上記合わせガラスのヘイズをJIS K7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の樹脂組成物において、
下記方法により測定される樹脂組成物のはみ出し長さが10mm未満である樹脂組成物。
(方法)
上記樹脂組成物により構成された120mm×75mmの膜を得る。次いで、得られた上記膜を120mm×75mm×3.2mmのガラス板で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得る。次いで、得られた上記合わせガラスの端部からはみ出した樹脂組成物の、上記合わせガラスの端面に対して垂直方向のはみ出し長さを測定する。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の樹脂組成物において、
シート状またはフィルム状である樹脂組成物。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の樹脂組成物により構成された合わせガラス中間膜。
[11]
上記[10]に記載の合わせガラス中間膜と、
上記合わせガラス中間膜の両面に設けられた透明板状部材と、
を備える合わせガラス。
[12]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の樹脂組成物により構成された太陽電池封止材。
[13]
上記[12]に記載の太陽電池封止材を含む太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学特性および耐湿接着性の性能バランスに優れた合わせガラス中間膜または太陽電池封止材用樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
図1】可動ダイレオメータ(MDR、Moving Die Rheometer)を用いた測定により得られるトルク値と測定時間との関係を模式的に示した図である。
図2】本発明に係る実施形態の合わせガラスの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、数値範囲の「X~Y」は特に断りがなければ、X以上Y以下を表す。また、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを意味する。
【0016】
1.樹脂組成物
図1は、可動ダイレオメータを用いた測定により得られるトルク値と測定時間との関係を模式的に示した図である。図2は、本発明に係る実施形態の合わせガラス10の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)は、合わせガラス中間膜11または太陽電池封止材を形成するために用いられる樹脂組成物であって、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)を含み、可動ダイレオメータを用いて、130℃にて当該樹脂組成物のトルクを経時的に測定した際の、測定開始から60分後のトルク値をT100[dN・m]とし、T100の10%のトルク値をT10とし、T100の50%のトルク値をT50とし、測定中のトルクの最小値をTminとし、測定開始からT10に達する時間をX[分]とし、測定開始からT50に達する時間をY[分]としたとき、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度(ただし、T50=(T100-Tmin)×0.5+Tmin、T10=(T100-Tmin)×0.1+Tmin)が0.01dN・m/分を超え0.25dN・m/分以下である。
【0017】
ここで、可動ダイレオメータを用いた本実施形態に係る樹脂組成物(P)のトルク値(T10、T50、T100)の測定は、以下の条件に従い行うことができる。
測定装置としては、例えば、アルファテクノロジー社製の可動ダイレオメータ(製品名:MDR-2000P)を使用し、測定温度130℃、周波数1.66Hzの条件で樹脂組成物(P)の溶融トルクを経時的に測定することにより本実施形態に係る樹脂組成物(P)のトルク値(T10、T50、T100)を測定することができる。
【0018】
本発明者らの検討によれば、特許文献1および2に記載されているような、エチレン・不飽和エステル共重合体および架橋剤により構成された合わせガラス中間膜は光学特性および高湿度下での接着性が十分に満足するものではないことが明らかになった。
すなわち、本発明者らは、従来のエチレン・不飽和エステル共重合体および架橋剤により構成された合わせガラス中間膜には、光学特性および耐湿接着性をバランスよく向上させるという観点において、改善の余地があることを見出した。
また、太陽電池封止材も上記合わせガラス中間膜と同様の課題があった。
【0019】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、架橋速度が速い樹脂組成物は、耐湿接着性に劣る傾向にあることが明らかになった。これに対して、樹脂組成物の架橋速度を低下させることによって、得られる架橋膜の光学特性を良好に保ちながら、耐湿接着性が改善されることが見出された。
本発明者らは、上記知見を基にさらに検討したところ、可動ダイレオメータを用いて、130℃にて樹脂組成物のトルクを経時的に測定した際の、測定開始から60分後のトルク値をT100[dN・m]とし、T100の10%のトルク値をT10とし、T100の50%のトルク値をT50とし、測定中のトルクの最低値をTminとし、測定開始からT10に達する時間をX[分]とし、測定開始からT50に達する時間をY[分]としたとき、(T50-T10)/(Y-X)で示される値(ただし、T50=(T100-Tmin)×0.5+Tmin、T10=(T100-Tmin)×0.1+Tmin)を樹脂組成物の架橋速度を評価する指標として利用できることを見出した。
こうした知見に基づいて、鋭意検討した結果、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度を特定の範囲に調整することによって、合わせガラス中間膜または太陽電池封止材の光学特性および耐湿接着性の性能バランスを効果的に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物(P)は、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度が0.01dN・m/分を超え0.25dN・m/分以下の範囲内になるように構成されることによって、合わせガラス中間膜または太陽電池封止材の光学特性および耐湿接着性の性能バランスを良好にすることができる。
(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度を上記範囲内にすることによって、合わせガラス中間膜または太陽電池封止材の光学特性および耐湿接着性の性能バランスを良好にすることができる理由は明らかではないが、樹脂組成物の架橋速度を上記範囲内に調整することによって、樹脂組成物の架橋がより穏やかで、かつ、適切な速度で進み、樹脂組成物の架橋反応が進行している際に、樹脂組成物中に含まれる水分や気泡等が脱気しやすくなり、その結果、得られる架橋膜中の気泡の量等を抑制でき、光学特性および耐湿接着性が良好になるからだと考えられる。
なお、本実施形態では、光学特性とは、例えばヘイズ、全光線透過率等をいう。
【0020】
本実施形態において、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度は0.01dN・m/分を超えているが、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の機械的特性や耐熱性をより一層良好にしたり、合わせガラスや太陽電池モジュールの端部からの樹脂はみ出しをより一層抑制したりする観点から、0.02dN・m/分以上であることが好ましく、0.03dN・m/分以上であることがより好ましい。
また、本実施形態において、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度は0.25dN・m/分以下であるが、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の光学特性および耐湿接着性の性能バランスをより一層良好にする観点から、0.20dN・m/分以下であることが好ましく、0.17dN・m/分以下であることがより好ましく、0.15dN・m/分以下であることが特に好ましい。
【0021】
本実施形態において、樹脂組成物(P)のトルクを経時的に測定した際の、測定開始から60分後のトルク値T100の下限値は、例えば1.5dN・m以上であり、好ましくは1.8dN・m以上である。これにより、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の形状安定性や、架橋性、耐熱性、機械的特性、取扱い性、加工性等をより一層良好にすることができる。また、トルク値T100の上限値は、例えば、12.0dN・m以下であり、好ましくは8.0dN・m以下であり、より好ましくは6.0dN・m以下である。これにより、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の光学特性および耐湿接着性の性能バランスをより一層良好にすることができる。
【0022】
本実施形態では、例えばエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の種類、架橋剤(B)の1時間半減期温度、架橋剤(B)の含有量等を適切に選択することにより、本実施形態に係る樹脂組成物(P)の(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度や、トルク値T100を所望の範囲に制御することが可能である。
これらの中でも、例えば、後述するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)のMFRや架橋剤(B)の1時間半減期温度、架橋剤(B)の含有量等が、本実施形態に係る樹脂組成物(P)の(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度や、トルク値T100を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。例えば、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のMFRを低くする、架橋剤(B)の1時間半減期温度を高くする、あるいは架橋剤(B)の含有量を減らすと、上記架橋速度を低下させることができる。
【0023】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物(P)を構成する各成分について説明する。
【0024】
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレンと、不飽和エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)としては、エチレンと不飽和エステルとを含む共重合体を例示することができる。
また、本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)はエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むことが好ましい。
また、本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレンおよび不飽和エステル以外の重合性モノマーを含んでいてもよく、例えばプロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンを例示することができる。
【0025】
本実施形態に係るエチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0026】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸アルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
【0027】
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。
これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の生産性、衛生性等の観点から、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
不飽和カルボン酸アルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1~12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。本実施形態では、アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は、1~8が好ましい。
【0029】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、および(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルから選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および(メタ)アクリル酸n-ブチルから選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
【0030】
本実施形態において、好ましいエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。その中でも(メタ)アクリル酸エステルとして1種類の化合物からなる共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体等が挙げられる。
【0031】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。
なお、本実施形態においてはエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本実施形態において、得られる合わせガラスや太陽電池モジュールの端部からの樹脂はみ出しをより一層抑制する観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、10g/10分以下であることが好ましく、9g/10分以下であることがより好ましく、8g/10分以下であることがさらに好ましく、7g/10分以下であることが特に好ましい。また、MFRが上記上限値以下であると、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の耐熱性や機械的強度、光学特性等をより一層良好にすることができ、さらに合わせガラスの加工プロセス性向上につながる。
また、本実施形態において、樹脂組成物の加工性をより一層向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましく、2g/10分以上であることが特に好ましい。
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のMFRは、異なるMFRを有するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)を複数ブレンドして調整してもよい。ここで、異なるMFRを有するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)を複数ブレンドした場合、ブレンド物のMFRをエチレン・不飽和エステル共重合体(A)のMFRとする。
【0033】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)において、エチレン・不飽和エステル共重合体の全体を100質量%としたとき、エチレンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは52質量%以上72質量%以下、より好ましくは54質量%以上70質量%以下である。
エチレンに由来する構成単位の含有量が上記下限値以上であると、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の耐熱性や機械的強度、耐水性、加工性等をより良好にすることができる。また、エチレンに由来する構成単位の含有量が上記上限値以下であると、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好にすることができる。
【0034】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)において、エチレン・不飽和エステル共重合体の全体を100質量%としたとき、不飽和エステルに由来する構成単位の含有量は、好ましくは28質量%以上48質量%以下、より好ましくは30質量%以上46質量%以下である。
不飽和エステルに由来する構成単位の含有量が上記下限値以上であると、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好にすることができる。また、不飽和エステルに由来する構成単位の含有量が上記上限値以下であると、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の耐熱性や機械的強度、耐水性、加工性等をより良好にすることができる。
【0035】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温および高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は市販されているものを用いてもよい。
【0036】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)において、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)の合計含有量は、樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)の合計含有量が上記範囲内であると、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材の光学特性、接着性、耐水性、機械的特性、耐熱性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0037】
<架橋剤(B)>
本実施形態に係る樹脂組成物(P)は、必須成分として架橋剤(B)を含む。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)が架橋剤(B)を含有することで、得られる合わせガラス中間膜や太陽電池封止材に耐熱性を付与することができる。
架橋剤(B)としては、有機過酸化物が好ましく、1時間半減期温度(分解温度)が好ましくは90~180℃、より好ましくは100~150℃の有機過酸化物がより好ましい。
【0038】
このような有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジt-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキシル-2,5-ビスパーオキシベンゾエート、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも、少なくとも、炭素数3~6の分岐アルキルパーオキシ基を有する化合物が好ましく、少なくとも、t-ブチルパーオキシ基を有する化合物がより好ましく、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン〔1時間半減期温度=140℃〕およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート〔1時間半減期温度=121℃〕がさらに好ましく、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)が架橋速度の点と合わせガラスの製造プロセスの観点から特に好ましい。
架橋剤(B)は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)100質量部に対し、好ましくは0.1~1.5質量部、より好ましくは0.2~1.0質量部、さらに好ましくは0.3~1.0質量部、特に好ましくは0.4~1.0質量部の量で含有させることができる。
架橋剤(B)としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)を含む場合、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)100質量部に対し、好ましくは0.2~1.5質量部、より好ましくは0.3~1.0質量部、さらに好ましくは0.4~1.0質量部、特に好ましくは0.4~0.8質量部の量で含有させることができる。
【0039】
<その他の成分>
本実施形態に係る樹脂組成物(P)には、本発明の目的を損なわない範囲内において、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)以外の成分を含有させることができる。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤等を挙げることができる。その他の成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
架橋助剤としては、例えば、ポリアリル化合物やポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物が挙げられる。より具体的には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等のポリアリル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のポリ(メタ)アクリロキシ化合物;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
架橋助剤は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)100質量部に対し、例えば5質量部以下、好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.1~1質量部の量で含有させることができる。
【0041】
シランカップリング剤としては、ビニル基、アミノ基またはエポキシ基と、アルコキシ基のような加水分解基とを有するシランカップリング剤等を挙げられる。より具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプピルトリメトキシシランおよびN-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
シランカップリング剤は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)100質量部に対し、例えば5質量部以下、好ましくは0.02~3質量部、より好ましくは0.05~1質量部の量で含有させることができる。シランカップリング剤が上記範囲で含まれていると、樹脂組成物(P)の接着性をより一層向上させることができる。
【0042】
また、紫外線に基づく樹脂組成物(P)の劣化を防ぐために、本実施形態に係る樹脂組成物(P)中に紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤等を含有させるのが好ましい。
【0043】
紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジt-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;フェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤等が用いられる。
【0044】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が用いられる。
酸化防止剤として各種ヒンダードフェノール系酸化防止剤やホスファイト系酸化防止剤等が用いられる。
酸化防止剤、光安定剤および紫外線吸収剤は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)100質量部に対し、各々、例えば5質量部以下、好ましくは0.001~3質量部、より好ましくは0.01~1質量部の量で含有させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る樹脂組成物(P)には、上述した添加剤以外に、必要に応じて、着色剤、光拡散剤および難燃剤等の添加剤を含有させることができる。
着色剤としては、顔料、無機化合物、染料等が挙げられ、特に白色の着色剤としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの添加剤を含有する樹脂組成物(P)を太陽電池素子の受光側の封止材として用いる場合は、透明性を損なう場合があるが、太陽電池素子の受光側と反対面の封止材として用いる場合には好適に用いられる。
【0046】
光拡散剤としては、無機系の球状物質としてはガラスビーズ、シリカビーズ、シリコンアルコキシドビーズ、中空ガラスビーズ等が挙げられる。有機系の球状物質としてはアクリル系やビニルベンゼン系等のプラスチックビーズ等が挙げられる。
【0047】
難燃剤としては、臭素化物等のハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物等が挙げられる。
【0048】
<ヘイズ>
本実施形態に係る樹脂組成物(P)において、下記方法により測定されるヘイズが2.5%未満であることが好ましく、2.0%未満であることがより好ましく、1.0%未満であることがより好ましく、0.6%未満であることがさらに好ましく、0.5%未満であることが特に好ましい。上記ヘイズが上記上限値以下であると、得られる合わせガラスや太陽電池モジュールの透明性をより良好にすることができる。
このようなヘイズを達成するためには、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度や、本実施形態に係る樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)の種類や含有量等を適宜調整すればよい。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)の上記ヘイズの下限値は特に限定されないが、例えば、0.01%以上である。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)を使用することにより、本実施形態に係る合わせガラスのヘイズを2.5%未満とすることができる。合わせガラスの好ましいヘイズは上記と同じある。
(方法)
本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成された120mm×75mmの膜を得る。次いで、得られた上記膜を120mm×75mm×3.2mmのガラス板で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得る。次いで、得られた上記合わせガラスのヘイズをJIS K7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。
【0049】
<はみ出し長さ>
本実施形態において、下記方法により測定される樹脂組成物(P)のはみ出し長さが10mm未満であることが好ましく、9mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。上記はみ出し長さが上記上限値以下であると、得られる合わせガラスや太陽電池モジュールの外観をより良好にすることができる。
このような白濁部の長さを達成するためには(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度や、本実施形態に係る樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)および架橋剤(B)の種類や含有量等を適宜調整すればよいが、(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度やエチレン・不飽和エステル共重合体(A)のMFRが特に重要となる。
本実施形態に係る樹脂組成物(P)の上記はみ出し長さの下限値は0.0mmが好ましい。
(方法)
本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成された120mm×75mmの膜を得る。次いで、得られた上記膜を120mm×75mm×3.2mmのガラス板で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得る。次いで、得られた上記合わせガラスの端部からはみ出した樹脂組成物の、上記合わせガラスの端面に対して垂直方向のはみ出し長さを測定する。はみ出し長さは、上記ガラスの長辺の中心点から垂直に測定した長さであり、各長辺で測定した2点の平均値とする。
【0050】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)の形状としては、例えば、シート状、フィルム状等が挙げられる。
【0051】
2.合わせガラス中間膜および太陽電池封止材
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11は、本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される。
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11の厚みは、例えば、0.1mm以上10mm以下、好ましくは0.2mm以上5mm以下、より好ましくは0.3mm以上2mm以下である。
ガラス中間膜11の厚みが上記下限値以上であると、ガラス中間膜11の機械的強度をより良好にすることができる。また、ガラス中間膜11の厚みが上記上限値以下であると、得られる合わせガラスの光学特性や層間接着性をより良好にすることができる。
【0052】
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11の製造方法としては、例えば、プレス成形法、押出成形法、Tダイ成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る太陽電池封止材は、本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される。
本実施形態に係る太陽電池封止材も合せガラス中間膜と同様の膜厚が好ましく、同様の製造方法で製造することができる。
【0054】
3.合わせガラス
図2は、本発明に係る実施形態の合わせガラス10の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る合わせガラス10は、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11と、合わせガラス中間膜11の両面に設けられた透明板状部材13と、を備える。本実施形態に係る合わせガラス10は、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11を備えることにより、光学特性およびガラス中間膜11と透明板状部材13との間の耐湿接着性の性能バランスに優れている。
合わせガラス中間膜11は2層以上使用してもよく、また他の樹脂からなる層を2枚の合わせガラス中間膜11の間に挟んで3層以上としてもよい。
【0055】
透明板状部材13は特に限定されないが、例えば、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができ、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ポリカーボネート板、ポリ(メタ)アクリレート板、ポリメチル(メタ)アクリレート板、ポリスチレン板、環式ポリオレフィン板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリエチレンナフタレート板、ポリエチレンブチレート板等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
また透明板状部材13は、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の表面処理を適宜施していてもよい。
【0056】
透明板状部材13の厚さは、例えば、1mm以上20mm以下である。本実施形態に係る合わせガラス10において、合わせガラス中間膜11の両面に設けられるそれぞれの透明板状部材13は、同一のものを用いてもよく、異なる板状部材を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本実施形態に係る合わせガラス10の製造方法は特に限定されず、例えば、ニップロール法、オートクレーブ法、真空バッグ法、真空ラミネーター法等の従来公知の製造方法を用いることができる。これらの手法を1種類用いて製造をしてもよいし、2種以上の製造方法を組み合わせて製造することもできる。
本実施形態に係る合わせガラス10の製造方法としては、例えば、図2に示すように、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11を2枚の透明板状部材13の間に狭持した後、加熱加圧する方法等が用いられる。
これらの中でも、本実施形態に係る合わせガラス10の製造方法としてはニップロール法とオートクレーブ法を組み合わせた方法、あるいは真空バッグ法とオートクレーブ法を組み合わせた方法が好ましい。
ニップロール法とオートクレーブ法を組み合わせた方法は、例えば、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11を2枚の透明板状部材13の間に狭持して得られた積層体をニップロールにより仮圧着し、次いで、オートクレーブを用いて上記積層体を加熱・加圧処理することによって熱圧着し、合わせガラス10を得る方法である。
真空バッグ法とオートクレーブ法を組み合わせた方法は、例えば、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11を2枚の透明板状部材13の間に狭持して得られた積層体を真空バッグ内に入れ、次いで、真空バック内を減圧して上記積層体を仮圧着し、次いで、オートクレーブを用いて上記積層体を加熱・加圧処理することによって熱圧着し、合わせガラス10を得る方法である。
【0058】
これらの合わせガラスは、種々の用途に使用することができ、例えば、建築用合わせガラス、自動車用合わせガラス、一般建造物、農業用建造物、鉄道用窓等に使用されるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0059】
4.太陽電池モジュール
本実施形態に係る太陽電池モジュールは、少なくとも、太陽光が入射する基板と、太陽電池素子と、本実施形態に係る太陽電池封止材とを備える。本実施形態に係る太陽電池モジュールは、必要に応じて、さらに保護材を備えていてもよい。なお、太陽光が入射する基板を、単に基板と称することもある。
本実施形態に係る太陽電池モジュールは、上記基板上に、本実施形態に係る太陽電池封止材により封止された太陽電池素子を固定することで作製することができる。
【0060】
このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば、基板/封止材/太陽電池素子/封止材/保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの;ガラス等の基板の表面上に予め形成された太陽電池素子を、基板/太陽電池素子/封止材/保護材のように構成するもの;基板の内周面上に形成された太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系シート上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と保護材を形成させるような構成のもの;等を挙げることができる。
なお、保護材は、太陽光が入射する基板を太陽電池モジュールの上部としたとき、太陽電池モジュールの基板側とは反対側、すなわち下部に備えられるため、下部保護材と称することもある。
【0061】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系、ガリウム-砒素、銅-インジウム-セレン、銅-インジウム-ガリウム-セレン、カドミウム-テルル等のIII-V族やII-VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。本実施形態に係る太陽電池封止材は、特にアモルファスシリコン太陽電池素子、およびアモルファスシリコンと単結晶シリコンのヘテロ接合タイプ太陽電池素子の封止に有用である。
【0062】
本実施形態に係る太陽電池モジュールを構成する基板としては、ガラス基板、アクリル樹脂基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、フッ素含有樹脂基板等を例示することができる。
保護材(下部保護材)としては、金属や各種熱可塑性樹脂等により形成された単体もしくは多層のシート等を用いることができ、例えば、錫、アルミ、ステンレススチール等の金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィン等により形成された1層もしくは多層のシートを例示することができる。本実施形態に係る太陽電池封止材は、これらの基板または保護材に対して良好な接着性を示す。
【0063】
本実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法は特に限定されず、例えば、ニップロール法、オートクレーブ法、真空バッグ法、真空ラミネーター法等の従来公知の製造方法を用いることができる。これらの手法を1種類用いて製造をしてもよいし、2種以上の製造方法を組み合わせて製造することもできる。
これらの中でも、本実施形態に係る太陽電池モジュールの製造方法としては真空ラミネーターを用いた製造方法が好ましい。
真空ラミネーターを用いた方法は、例えば、本実施形態に係る太陽電池封止材および太陽電池素子を基板や保護材の間に狭持して得られた積層体を二重真空装置の中で加熱、真空脱気を実施したのち、加圧工程でダイアフラムゴムを二重真空上部から、上記積層体を加熱・加圧処理することによって熱圧着し、太陽電池モジュールを得る方法である。
【0064】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(1)評価方法
[架橋速度]
装置はアルファテクノロジー株式会社製可動ダイレオメータ(MDR)、MDR-2000Pを用いた。
実施例および比較例で得られた、厚さ450μmの合わせガラス中間膜を約30mm角にカットし、測定試料とした。
装置を測定条件である130℃に設定し、装置の温度が安定したことを確認し、試料を装置にセットして、試料の溶融トルクの測定を開始させた(周波数1.66Hz)。測定開始後、一般的にはいったんトルクが下がる(その最低粘度をTminとする)。その後、架橋の進行具合によってトルクの上昇度合が変化する。
測定開始から60分後のトルク値をT100[dN・m]とし、T100の10%のトルク値をT10とし、T100の50%のトルク値をT50とし、測定中のトルクの最低値をTminとし、測定開始からT10に達する時間をX[分]とし、測定開始からT50に達する時間をY[分]としたとき、(T50-T10)/(Y-X)、(ただし、T50=(T100-Tmin)×0.5+Tmin、T10=(T100-Tmin)×0.1+Tmin)で示される値を樹脂組成物の架橋速度として評価した。
【0067】
[光学特性]
実施例および比較例で得られた合わせガラス中間膜を120mm×75mmのサイズに裁断した。次いで、得られた試験片を120mm×75mm×3.2mmのガラス板(旭硝子社製、製品名:フロート板ガラス、全光線透過率:90.4%、ヘイズ:0.2%)で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得た。なお、得られた合わせガラスは約30分かけて室温に戻るように徐冷にて冷却した。次いで、得られた合わせガラスの全光線透過率およびヘイズをJIS K7136:2000に準じてヘイズメータ(村上色彩社製、製品名:ヘイズメータHM150)により測定した。
【0068】
[耐湿接着性]
実施例および比較例で得られた合わせガラス中間膜を120mm×75mmのサイズに裁断した。次いで、得られた試験片を120mm×75mm×3.2mmのガラス板(旭硝子社製、白板フロートガラス)に積層し、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着を行い、上記試験片を上記ガラス板に接着させ、積層体を得た。次いで、積層体を85℃、90%RHの環境下に500時間および1000時間保管した。次いで、引張速度100mm/分で上記試験片を上記ガラス板から引き離し、最大応力をガラス板に対する接着強度(N)として算出した。なお、接着強度は、85℃、90%RHの環境下に500時間および1000時間それぞれ保管した後の積層体の接着強度と、保管前の積層体の接着強度についてそれぞれ測定した。
【0069】
[樹脂組成物(P)のはみ出し長さ]
実施例および比較例で得られた合わせガラス中間膜を120mm×75mmのサイズに裁断した。次いで、得られた試験片を120mm×75mm×3.2mmのガラス板(旭硝子社製、製品名:フロート板ガラス)で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得た。なお、得られた合わせガラスは約30分かけて室温に戻るように徐冷にて冷却した。次いで、ガラスの長辺側の中心点から垂直にはみ出した樹脂組成物の長さをノギスを用いて測定した。各長辺の中心点での測定の平均値をはみ出し長さとした。
【0070】
(2)材料
合わせガラスの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
EVA1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=14g/10min、エチレン含量=67質量%、酢酸ビニル含量=33質量%)
EVA2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=1.0g/10min、エチレン含量=67質量%、酢酸ビニル含量=33質量%)
EVA3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=30g/10min、エチレン含量=65質量%、酢酸ビニル含量=35質量%)
EVA4:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=4.3g/10min、エチレン含量=74質量%、酢酸ビニル含量=26質量%)
【0071】
<架橋剤(B)>
架橋剤1:2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(1時間半減期温度:140℃)
架橋剤2:t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(1時間半減期温度:121℃)
【0072】
<その他の成分>
架橋助剤1:トリアリルイソシアヌレート
紫外線吸収剤1:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤
光安定剤1:ヒンダードアミン系光安定剤
酸化防止剤1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤
シランカップリング剤1:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0073】
(3)実施例1~8および比較例1~4
表1および2に示す配合割合で、各成分を事前にブレンドし、次いで、シリンダー温度をC1(先端部):70℃、C2(中間部):80℃、C3(後部):90℃に設定した40mmφ異型押出機(L/D=26)を用いて、得られた樹脂組成物を押出成形することにより、厚さ450μmの合わせガラス中間膜を得た。
得られた合わせガラス中間膜について上記の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1および2にそれぞれ示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
実施例の合わせガラス中間膜は光学特性および耐湿接着性の性能バランスに優れていた。さらに、得られる合わせガラスは、樹脂はみ出しの長さが短く、外観に優れていた。これに対し、比較例の合わせガラス中間膜は光学特性および耐湿接着性の性能バランスに劣っていた。
【0077】
この出願は、2018年2月14日に出願された日本出願特願2018-024177号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)架橋剤(B)および架橋助剤を含む樹脂組成物から構成された合わせガラス中間膜であって、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)はエチレン・酢酸ビニル共重合体であり、
前記架橋剤(B)の含有量は、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)100質量部に対し、0.3~1.0質量部であり、
前記架橋助剤の含有量は、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)100質量部に対し、0.1~0.8質量部であり、
可動ダイレオメータを用いて、130℃にて当該樹脂組成物のトルクを経時的に測定した際の、測定開始から60分後のトルク値をT100[dN・m]とし、T100の10%のトルク値をT10とし、T100の50%のトルク値をT50とし、測定中のトルクの最小値をTminとし、測定開始からT10に達する時間をX[分]とし、測定開始からT50に達する時間をY[分]としたとき、
(T50-T10)/(Y-X)で示される架橋速度(ただし、T50=(T100-Tmin)×0.5+Tmin、T10=(T100-Tmin)×0.1+Tmin)が0.01dN・m/分を超え0.25dN・m/分以下である合わせガラス中間膜
【請求項2】
請求項1に記載の合わせガラス中間膜において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の全体を100質量%としたとき、前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)中の不飽和エステルに由来する構成単位の含有量が28質量%以上48質量%以下である合わせガラス中間膜
【請求項3】
請求項1または2に記載の合わせガラス中間膜において、
前記架橋剤(B)が有機過酸化物を含む合わせガラス中間膜
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の合わせガラス中間膜において、
前記架橋助剤が、ポリアリル化合物、ポリ(メタ)アクリロキシ化合物、およびジビニルベンゼンの中から選ばれる合わせガラス中間膜
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の合わせガラス中間膜において、
下記方法により測定されるヘイズが2.5%未満である合わせガラス中間膜
(方法)
前記樹脂組成物により構成された120mm×75mmの膜を得る。次いで、得られた前記膜を120mm×75mm×3.2mmのガラス板で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得る。次いで、得られた前記合わせガラスのヘイズをJIS K7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の合わせガラス中間膜において、
下記方法により測定される樹脂組成物のはみ出し長さが10mm未満である合わせガラス中間膜
(方法)
前記樹脂組成物により構成された120mm×75mmの膜を得る。次いで、得られた前記膜を120mm×75mm×3.2mmのガラス板で挟み、真空ラミネーターにて130℃、1atmで60分間加熱圧着し、合わせガラスを得る。次いで、得られた前記合わせガラスの端部からはみ出した樹脂組成物の、前記合わせガラスの端面に対して垂直方向のはみ出し長さを測定する。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の合わせガラス中間膜において、
シート状またはフィルム状である合わせガラス中間膜
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の合わせガラス中間膜において、
前記合わせガラス中間膜の厚みが0.1mm以上10mm以下である合わせガラス中間膜。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の合わせガラス中間膜と、
前記合わせガラス中間膜の両面に設けられた透明板状部材と、
を備える合わせガラス。