(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075709
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】塗料用組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 183/10 20060101AFI20220511BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220511BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220511BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220511BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C09D183/10
C09D175/04
C09D7/63
C09D7/65
C08F293/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030873
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2022505638の分割
【原出願日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020151233
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】秋月 伸介
(72)【発明者】
【氏名】三輪 安紀
(72)【発明者】
【氏名】森本 幸子
(72)【発明者】
【氏名】井上 侑紀
(72)【発明者】
【氏名】増本 覚
(57)【要約】
【課題】
本発明は、汚れを容易に除去することが可能な撥水性の塗料用組成物であって、撥水成分が他の材料との相溶性に富むため外観がよい塗料用組成物を提供する。
【解決手段】
本発明は、シロキサン基含有ポリマー(A)および架橋剤(B)を含む塗料用組成物であり、
前記シロキサン基含有ポリマー(A)が、AブロックとBブロックとを含むブロック共重合体であり、Aブロックに少なくともシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位を含み、Bブロックに水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位および必要に応じて、前記ビニルモノマー(a)および(b)と共重合可能な他のビニルモノマー(c)に由来する構造単位を含み、
かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であり、リビングラジカル重合により重合した共重合体である、塗料用組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン基含有ポリマー(A)および架橋剤(B)を含む塗料用組成物であり、
前記シロキサン基含有ポリマー(A)が、AブロックとBブロックとを含むブロック共重合体であり、Aブロックに少なくともシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位を含み、Bブロックに水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位ならびに必要に応じて、前記ビニルモノマー(a)および(b)と共重合可能な他のビニルモノマー(c)に由来する構造単位を含み、
かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であり、リビングラジカル重合により重合された共重合体である、
塗料用組成物。
【請求項2】
前記シロキサン基含有ポリマー(A)が、AB型ジブロック共重合体またはABA型トリブロック共重合体である、請求項1記載の塗料用組成物。
【請求項3】
前記シロキサン基含有ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)が、5,000~100,000である、請求項1または請求項2に記載の塗料用組成物。
【請求項4】
前記リビングラジカル重合が、下記式(1):
【化1】
〔式中、R
1は、C
1~C
8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R
2及びR
3は、水素原子又はC
1~C
8のアルキル基を示す。R
4は、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
で表される有機テルル化合物を用いて重合する方法である、請求項1~3のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
【請求項5】
更に、水酸基含有ポリマー(C)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
【請求項6】
前記シロキサン基含有ポリマー(A)と前記水酸基含有ポリマー(C)との配合割合が、シロキサン基含有ポリマー(A):水酸基含有ポリマー(C)の重量比で15:85~80:20の割合である請求項1~5のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
【請求項7】
前記シロキサン基含有ビニルモノマー(a)の数平均分子量(Mn)が、500~50,000である、請求項1~6のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
【請求項8】
前記架橋剤(B)が、イソシアネート系架橋剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の塗料用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料用組成物、特に撥水性を有する塗膜を提供する塗料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の表面は、洗車をしなくても、汚れが雨水で洗い流されてきれいに保たれる、いわゆる洗車フリーが望まれている。洗車フリーにする技術には、表面を親水性にして雨水で汚れを洗い流す方法と、逆に撥水性にして走行中に汚れと共に水滴を吹き飛ばす方法との二つが存在するが、高級車の外観などでは水を良く弾く撥水性の外観が人々に好まれる傾向にある。
【0003】
塗膜表面を撥水性にするには、撥水材料としてフッ素系材料かシリコーン系材料が用いられることが多い。フッ素系材料は、高い撥水性を有していて効果的であるのだが、現時点では高価であり汎用的な塗料には用いることが難しく、環境汚染などの問題も存在しているので、使用は容易ではない。シリコーン系材料は、汎用的に使用しやすい利点があるので、開発が先行している。例えば、特開平11-293184号公報(特許文献1)等には、両末端に不飽和結合を有するシロキサンマクロモノマーを用いたポリマー組成物が提案されている。しかし、シリコーン系材料はフッ素系材料に比べて撥水能力が低いので、どうしても材料の使用量が増えて、配合する他の材料との相溶性や、下地塗膜との密着性に問題が生じる。また、シリコーン系材料は、引張り強さや引き裂き強さに問題があり、更には耐磨耗性にも改良が必要であるといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、汚れを容易に除去することが可能な撥水性の塗料用組成物であって、しかも、撥水成分が他の材料との相溶性に富むため外観がよい塗料用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、
[1]シロキサン基含有ポリマー(A)および架橋剤(B)を含む塗料用組成物であり、
前記シロキサン基含有ポリマー(A)が、AブロックとBブロックとを含むブロック共重合体であり、Aブロックに少なくともシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位を含み、Bブロックに水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位ならびに必要に応じて、前記ビニルモノマー(a)および(b)と共重合可能な他のビニルモノマー(c)に由来する構造単位を含み、
かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であり、リビングラジカル重合により重合された共重合体である、
塗料用組成物を提供する。また、本発明は、更に以下の態様を提供する:
【0007】
[2] 前記シロキサン基含有ポリマー(A)が、AB型ジブロック共重合体またはABA型トリブロック共重合体である、[1]の塗料用組成物。
[3]前記シロキサン基含有ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)が、5,000~100,000である、[1]または[2]の塗料用組成物。
[4]前記リビングラジカル重合が下記式(1):
【化1】
〔式中、R
1は、C
1~C
8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R
2及びR
3は、水素原子又はC
1~C
8のアルキル基を示す。R
4は、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
で表される有機テルル化合物を用いて重合する方法である、[1]~[3]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[5]更に、水酸基含有ポリマー(C)を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[6]前記シロキサン基含有ポリマー(A)と前記水酸基含有ポリマー(C)との配合割合が、シロキサン基含有ポリマー(A):水酸基含有ポリマー(C)の重量比で15:85~80:20の割合である[1]~[5]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[7]前記シロキサン基含有ビニルモノマー(a)の数平均分子量(Mn)が、500~50,000である、[1]~[6]のいずれかに記載の塗料用組成物。
[8]前記架橋剤(B)が、イソシアネート系架橋剤である、[1]~[7]のいずれかに記載の塗料用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、シロキサン基含有ポリマーを配合することにより、塗膜に撥水性を付与することができる。シロキサン基含有ポリマーは、塗膜の架橋反応により強固に塗膜に組み込まれているので、分離したりブリードしたりすることがなく、撥水性能を安定かつ長期間保持することができる。また、シロキサン基含有ポリマーがブロック共重合体の場合、塗膜の架橋反応に寄与する部分と、撥水性を付与するシロキサン部分とが、ポリマー分子中で分かれているので、それぞれの部分の働きが他の部分から干渉を受けず発揮され、それぞれ架橋部分への固定機能と、撥水性へのポリシロキサン部分の機能とが、明確かつ長期に発揮することが可能となる。それにより、シロキサン基含有ポリマーの配合量が、少なくても撥水性が発現できる。
【0009】
本発明の塗料用組成物から形成された塗膜が、自動車などの表面に存在すると、撥水性が安定にかつ長期間保持できるので、雨水などが水滴(玉状の水滴)になって、走行時に飛び散る。従って、塗膜上に存在する埃等の汚れは、雨が降った時に、雨水がそれらを含んで、走行時に飛び散ることにより、塗膜上から無くなる。シロキサン部分は、撥油性も有しているので、油性物質の付着も少なくなり、油状汚れも少なくなる。
【0010】
また、本発明のシロキサン基含有ポリマー(A)を用いると、シロキサン基部分が分離してブリードしたりすることなく、強固に塗膜中に存在するので、その性能が安定にかつ長期間発揮できるだけでなく、塗膜の他の性能、例えば引張り強さ、引き裂き強さまたは耐摩耗性にも悪影響を与えることなく維持されるので、これらの性能も高く保持される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1、3、4、5および9で形成した塗膜を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の塗料用組成物は、シロキサン基含有ポリマー(A)および架橋剤(B)を含むものであり、必要に応じて別の水酸基含有ポリマー(C)を含むことができる。それぞれの成分について説明する。
【0013】
<シロキサン基含有ポリマー(A)>
上記シロキサン基含有ポリマー(A)は、AブロックとBブロックとを含むブロック共重合体であり、Aブロックに少なくともシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位を含み、Bブロックに水酸基含有ビニルモノマー(b)ならびに必要に応じて、前記ビニルモノマー(a)および(b)と共重合可能な他のビニルモノマー(c)に由来する構造単位を含み、
かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であり、リビングラジカル重合により重合された共重合体である。
本明細書中で「ビニルモノマー」とは分子中にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーのことをいう。「ビニルモノマーに由来する構造単位」とは、ビニルモノマーのラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合が、重合して炭素-炭素単結合になった構造単位をいう。
【0014】
上記シロキサン基含有ビニルモノマー(a)は、シロキサン基(より具体的には、ポリシロキサン基)を有するビニルモノマーであれば、特に限定的ではない。シロキサン基含有ビニルモノマーは、より具体的には下記式I
【化2】
[式中、Meはメチル基を示し、R
11は水素原またはメチル基を示し、R
12は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示し、R
13は酸素原子が介在することもある炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0または1以上の整数を表す。]
で表されるものである。上記式(I)のシロキサン基含有ビニルモノマー(a)は下記式II:
【化3】
で表されるポリシロキサンの末端にあるアルコール基と(メタ)アクリル酸との反応物が好適である。上記式I中、R
11は(メタ)アクリル酸から誘導される基であり、水素原子またはメチル基を示す。上記式Iおよび式II中において、R
12は水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、Meはメチル基である。R
13は炭素数1~6のアルキル基である。nは0または1以上の整数あり、nは好ましくは6~300である。本明細書中で「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」とはアクリル、メタクリルのいずれかまたは両方、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかまたは両方を意味する。
【0015】
上記式(I)を有するシロキサン基含有ビニルモノマー(a)は、より具体的には、信越化学工業社(変性シリコーンオイルシリーズ)やJNC株式会社(サイラプレーン(登録商標))から市販されており、信越化学社製のX-22-2404[官能基当量(g/mol):420][数平均分子量:420]、X-22-174ASX[官能基当量(g/mol):900][数平均分子量:900]、X-22-174BX[官能基当量(g/mol):2,300][数平均分子量:2300]、KF-2012[官能基当量(g/mol):4,600]X-22-2426[官能基当量(g/mol):12,000][数平均分子量:12000]、JNC株式会社製のFM-0711[数平均分子量:1000]、FM-0721[数平均分子量:5000]、FM-0725[数平均分子量:10000](以上、商品名)等が挙げられる。尚、シロキサン基含有ビニルモノマーが1官能である場合、官能基当量[g/mol]はシロキサン1モルに対するシロキサン基含有ビニルモノマー(a)の数平均分子量と見做すことができる。
【0016】
シロキサン基含有ビニルモノマー(a)の官能基当量は、重合性の観点から、500~50,000が好ましく、600~3,000がさらに好ましく、700~1,200が特に好ましい。特に、700~1,200で優れた相溶性を示す。前記官能基はビニル基であり、シロキサン基含有ビニルモノマー(a)は重合性の観点から1官能であることが好ましい。
【0017】
シロキサン基含有ビニルモノマー(a)の数平均分子量(Mn)は、離型性の効果から、500~50,000が好ましく、600~3,000がさらに好ましく、700~1,200が特に好ましい。特に、700~1,200で優れた相溶性を示す。
【0018】
上記水酸基含有ビニルモノマー(b)は、分子中に水酸基を有するビニルモノマーであり、より具体的にはアルキルポリオールと(メタ)アクリル酸との反応物が好適である。水酸基含有ビニルモノマー(b)の例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエテレングリコールモノアクリレート、ヘキサエチレングリコールモノアクリレート、オクタエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ヘキサエチレングリコールモノメタクリレート、オクタエチレングリコールモノメタクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0019】
上記他の共重合可能なビニルモノマー(c)としては、上記ビニルモノマー(a)および(b)と共重合可能なビニルモノマーであればよく、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート等の直鎖または分岐鎖を有するアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレートなどのアクリル酸のダイマー酸等のカルボキシル基含有モノマー類;
シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)クリレート、t-ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有モノマー類;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル、(モノ(プロピレングリコールモノメタクリレート)ホスフェート等のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル、リン酸メチレン(メタ)アクリレート、リン酸トリメチレン(メタ)アクリレート、リン酸プロピレン(メタ)アクリレート、リン酸テトラメチレン(メタ)アクリレート等のリン酸アルキレン(メタ)アクリレート等のリン酸基含有(メタ)アクリレート類;
エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸基含有モノマー類あるいはその塩;
メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー、(メタ)アクリロイル
モルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドN-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー類;
グリシジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、メチルビニルケトン、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル等;
が挙げられ、特にイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートは塗膜物性バランスの観点から好ましい。
【0020】
上記シロキサン基含有ポリマー(A)は、ポリシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位が5~35重量%、水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位が5~35重量%、ならびにビニルモノマー(a)および(b)と共重合可能な他のビニルモノマー(c)に由来する構造単位が30~90重量%の量的範囲であることが好ましい。シロキサン基含有ビニルモノマー(a)は、ある程度多い方が、撥水性が塗膜に付与されることになるが、シロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位の量が多すぎると塗膜に悪影響を与えるので、好ましくない。水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位の量は多い方が、多数の反応点で共重合されることにより好ましい。水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位の量は、シロキサン基含有ポリマー(A)の水酸基価で制御することができ、シロキサン基含有ポリマー(A)の水酸基価は30~250mgKOH/gが好ましく、70~170mgKOH/gが特に好ましい。水酸基価が30mgKOH/gより小さいとイソシアネートと十分反応されず架橋密度の低い塗膜になるおそれがあり、水酸基価が250mgKOH/gより大きいと塗膜の耐水性能が悪化するおそれがある。
【0021】
上記シロキサン基含有ポリマー(A)は、AブロックとBブロックとを含むブロック共重合体であり、Aブロックにポリシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位が含まれており、Bブロックに水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位が含まれている。Bブロックは、さらにビニルモノマー(a)および(b)と共重合可能な他のビニルモノマー(c)に由来する構造単位が含まれているのが好ましい。また、前記ブロック共重合体は、AB型ジブロック共重合体またはABA型トリブロック共重合体であることが好ましい。より詳細には、ブロック共重合体におけるAブロックは、ポリシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位が含まれており、塗膜に撥水撥油性を付与することが可能となる。また、ブロック共重合体のBブロックは、水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位が含まれおり、架橋剤(B)と架橋して三次元網目構造を形成することができ、耐久性を向上させることが可能となる。すなわち、架橋剤との反応性を有する水酸基含有ビニルモノマー(b)を、Aブロックには導入せず、Bブロックに集中させているため、AブロックおよびBブロックの各ポリマーブロックが担う機能を明確に分けることが可能となる。
【0022】
また、AブロックおよびBブロックが、異なる極性や互いに不相溶である場合や、AブロックまたはBブロックに相溶なポリマーが存在していた場合に、塗膜中にミクロ相分離構造が形成されることがある。特に、塗膜中においてミクロ相分離構造を有しているときは、AブロックおよびBブロックの各ポリマーブロックが担う機能が最も明確に分かれているため、優れた機能を発揮する。ミクロ相分離構造はミクロ的に海島(球状)構造、柱状(線状)構造、ラメラ構造をとることが、塗膜を薄くスライスして透過顕微鏡写真(TEM写真)などにより確認される。
【0023】
前記共重合体がブロックポリマーでなくランダムに共重合されたポリマーは、ポリシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位と架橋剤との反応性を有する水酸基含有ビニルモノマー(b)に由来する構造単位が混在するため機能を発揮しにくい場合や組成によっては相溶性を悪くする場合がある。
【0024】
本発明のシロキサン基含有ポリマー(A)のAB型ジブロック共重合体の製造方法としては、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックのモノマーを重合してもよく;Bブロックを先に製造し、BブロックにAブロックのモノマーを重合してもよく;又はAブロックとBブロックとを別々に製造した後、AブロックとBブロックとをカップリングさせてもよい。
【0025】
例えば、ラジカル重合法でブロックを構成するビニルモノマーを順次重合反応させることにより得られる。具体的には、AブロックおよびBブロックのうち一方のブロックを構成するビニルモノマーを重合して、一方のブロックを重合する工程と、一方のブロックを重合した後、AブロックおよびBブロックのうち他方のブロックを構成するビニルモノマーを重合して、他方のブロックを重合する工程とを備えた製造方法が挙げられる。
【0026】
本発明の効果は、従来のラジカル重合(フリーラジカル重合:FRP)により得られたアクリル系ポリマーを用いた場合には、得ることが難しい。フリーラジカル重合では、反応中に連続的にラジカル種が発生してビニルモノマーに付加し、重合が進行する。そのためフリーラジカル重合では、反応の途中で生長末端ラジカルが失活したポリマーや、反応中に新しく発生したラジカル種により生長したポリマーが生成する。そのため、架橋性官能基を含有するアクリル系ポリマーをフリーラジカル重合で製造すると、比較的低分子量の架橋性官能基含有ビニルモノマーに由来する構造単位を含まないポリマーが生成してしまう。
【0027】
フリーラジカル重合により重合された架橋性アクリル系ポリマーでは、ポリマーの組成が不均一であり、比較的低分子量の架橋性官能基含有ビニルモノマーを含まないポリマーを含むことから、架橋に関与できないポリマー鎖が存在している。更には組成が不均一であり、例えばシロキサン含有ビニルモノマーだけが重合したホモポリマーなどが生成し、これは樹脂の相溶性を悪化させる原因となり、白濁さらにはハジキ等の塗膜欠陥になりうる。
【0028】
従って、リビングラジカル重合により重合された共重合体である。リビングラジカル重合によれば、上記フリーラジカル重合等と比較してより均一な分子量及び組成を有するポリマーが得られ、低分子量成分等の生成を抑えることができるため、経時でのブリードアウトなどが起こりにくい。リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法)、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT法)、有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)等がある。ATRP法は、アミン系錯体を使用するため、酸性基を有するビニルモノマーの酸性基を保護しなければ、使用できない場合がある。RAFT法は、多種のモノマーを使用した場合、低分子量分布になりづらく、かつ硫黄臭や着色等の不具合がある場合がある。これらの方法の中でも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御、均一な組成、あるいは着色の観点から、TERP法を用いることが好ましい。TERP法とは、有機テルル化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル重合性化合物(ビニルモノマー)を重合させる方法であり、例えば、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および、国際公開第2004/096870号に記載された方法である。
【0029】
TERP法としては、下記式(1)で表される有機テルル化合物を用いて重合する方法が好ましく、下記式(1)で表される有機テルル化合物と下記式(2)で表される有機ジテルリド化合物との混合物を用いて重合する方法がより好ましい。
下記式(1):
【化4】
〔式中、R
1は、C
1~C
8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R
2及びR
3は、水素原子又はC
1~C
8のアルキル基を示す。R
4は、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。〕
式(2):
(R
1Te)
2 (2)
〔式中、R
1は、上記と同じ。〕
【0030】
式(1)で表される有機テルル化合物は、具体的にはエチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、エチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-メチルテラニル-プロピオネート等、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された有機テルル化合物が挙げられる。式(2)で表される有機ジテルリド化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジブチルジテルリド等が挙げられる。
【0031】
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと一般式(1)の有機テルル化合物と、ビニルモノマーの種類に応じて反応促進、分子量および分子量分布の制御等の目的で、式(2)の有機ジテルリド化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。ビニルモノマーの使用量は、目的とする共重合体の物性により適宜調節すればよい。
【0032】
重合は、通常、無溶媒で行うが、ラジカル重合で一般に使用される有機溶媒を使用しても構わない。使用できる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。また、水性溶媒も使用でき、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール等が挙げられる。溶媒の使用量としては適宜調節すればよいが、例えば、ビニルモノマー1gに対して、溶媒を0.01~100mlが好ましい。反応温度、反応時間は、得られる共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0℃~150℃で、1分~100時間撹拌する。重合反応の終了後、得られた反応混合物から、通常の分離精製手段により、使用溶媒、残存ビニルモノマーの除去等を行い、目的とする共重合体を分離することができる。
【0033】
リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合である。リビングラジカル重合では、その反応途中では、全てのポリマー鎖が均一にモノマーと反応しながら重合し、全てのポリマーの組成は均一に近づく。このような架橋性アクリル系ポリマーを、架橋剤を用いて架橋すると、ほとんど全てのポリマーがポリマー鎖間の架橋に関与することができる。
【0034】
上記シロキサン基含有ポリマー(A)は、前述のようにポリシロキサン基含有ビニルモノマー(a)、水酸基含有ビニルモノマー(b)及びこれらと共重合可能な他の不飽和モノマー(c)の共重合により得られ、数平均分子量(Mn)が3,000~100,000のものが好ましく、更にシロキサン基含有ポリマー(A)の分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であるものが好ましい。
【0035】
上記シロキサン基含有ポリマー(A)の数平均分子量(Mn)が3,000~100,000と比較的高分子量であることで、ブリードアウトしにくく長期にわたり初期の表面特性を維持できる。シロキサン基含有ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、5,000~100,000であることが好ましい。Mwの下限値は8,000であることがより好ましい。Mwの上限値は80,000であることがより好ましく、30,000であることが更に好ましく、20,000であることが最も好ましい。数平均分子量および重量平均分子量が下限値より低いと、ブリードが発生易く、逆に上限値より高いと粘度の上昇などで取り扱いが難しく白濁が生じることがある。
【0036】
上記シロキサン基含有ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)が2.0以下であると、分子量分布がシャープであり、塗膜との相溶性がよく均一にかつ透明な塗膜を得る。ブロック共重合体のMw/Mnは、1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることが更に好ましい。なお、本発明において、分子量分布とは(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw))/(ブロック共重合体の数平均分子量(Mn))によって求められるものであり、Mw/Mnが小さいほど分子量分布の幅が狭い分子量のそろった共重合体となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。反対に、Mw/Mnが大きいほど、設計したポリマーの分子量に比べて、分子量の小さいものや、分子量の大きいものが含まれることになり、相溶性を悪くする場合がある。分子量が小さすぎるものは、溶解はするがブリードアウトといった塗膜のトラブルになり、分子量が大きすぎものは他のポリマー樹脂への溶解性が悪く塗膜が白濁するといったトラブルが起こる。
【0037】
<架橋剤(B)>
本発明の塗料用組成物に配合する架橋剤は、特に限定されるものではないが、シロキサン基含有ポリマー(A)に存在する水酸基と架橋反応するものであり、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミノプラスト樹脂、グリオキサール等が挙げられる。これら架橋剤は、単独で使用してもよいし、2 種以上を併用してもよい。
【0038】
イソシアネート系架橋剤とは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。イソシアネート系架橋剤は、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよびこれらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。イソシアネート系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
架橋剤(B)に用いられる脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート;例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0040】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;例えば、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0041】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-または1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;例えば、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0042】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;例えば、トリフェニルメタン-4,4’,4’’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;例えば、4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0043】
前記の芳香族ポリイソシアネートは、紫外線により黄変することがあり耐候性の観点から好ましくなく。脂肪族ポリイソシアネートが耐候性などの観点から好ましく、必要に応じて脂環族ポリイソシアネートを併用して用いてもよい。
【0044】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート硬化剤のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)およびクルードTDIなどを挙げることができる。特に、ビウレット、アロファネート、イソシアヌレートが好ましく、イソシアヌレートが塗膜の物性バランスの観点から最も好ましい。
【0045】
上記イソシアネート系架橋剤は、通常ブロック剤でイソシアネート基をブロックして使用する。ブロック剤は、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得る。ブロック剤は、活性水素基を有する化合物(例えば、アルコール類、オキシム類等)が挙げられる。ブロック剤の例としては、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;およびε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはそのヌレート体をブロック剤によりブロックしたブロックイソシアネート化合物がより好ましく用いられる。
【0046】
本発明の塗料用組成物において、シロキサン基含有ポリマー(A)とポリイソシアネート硬化剤との混合比は、塗膜の硬化性や組成物の安定性などの観点から、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基当量/シロキサン基含有ポリマー(A)の水酸基当量の比が、好ましくは0.5~2.5、より好ましくは0.9~1.5の量で配合する。ポリイソシアネート硬化剤のイソシアネート基当量/シロキサン基含有ポリマー(A)の水酸基当量の比が0.5より小さいと架橋性が不十分になり、2.5より大きいと熱による黄変が生じやすくなる。
【0047】
架橋剤(B)に用いられるエポキシ系架橋剤は、反応性基としてエポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。前記エポキシ系架橋剤は、単独で使用してもよいし、2 種以上を併用してもよい。
【0048】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンよりなるエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0049】
本発明の塗料用組成物において、シロキサン基含有ポリマー(A)とエポキシ系架橋剤との混合比は、塗膜の硬化性や組成物の安定性などの観点から、エポキシ系架橋剤のエポキシ当量/シロキサン基含有ポリマー(A)の水酸基当量の比が、好ましくは0.5~2.5、より好ましくは0.9~1.5の量で配合する。エポキシ系架橋剤のエポキシ当量/シロキサン基含有ポリマー(A)の水酸基当量の比が0.5より小さいと架橋性が不十分になり、2.5より大きいと熱による黄変が生じやすくなる。
【0050】
アミノプラスト樹脂としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、及びベンズアルデヒドなどのアルデヒドと、尿素、メラミン、及びベンゾグアナミンなどのアミノ含有又はアミド基含有物質との縮合生成物であり、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、エステル化メラミン-ホルムアルデヒド、及び尿素-ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0051】
<水酸基含有ポリマー(C)>
本発明の塗料用組成物には、必要に応じて水酸基含有ポリマー(C)を配合することができる。水酸基含有ポリマー(C)としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、フッソ樹脂等を挙げることができるが、これらのうちアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂が好適に使用できる。水酸基含有ポリマー(C)は、官能基の制御や製造の容易性から、水酸基を含有するアクリル樹脂(以下、「アクリルポリオール樹脂」と呼ぶこともある。)が好ましい。
【0052】
アクリルポリオール樹脂は、(メタ)アクリルモノマー、水酸基含有アクリルモノマー、そして他の共重合性モノマーなどの、アクリル樹脂の調製において通常用いられる不飽和モノマーを1種または2種以上用いて調製することができる。
【0053】
上記(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n、iまたはt-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキルエステル類;(メタ)アクリルアミドなどのアミド類;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
【0054】
水酸基含有アクリルモノマーとしては、前述のシロキサン基含有ポリマー(A)の合成時に使用した水酸基含有ビニルモノマー(b)に用いたものが好適に使用される。更にその他の共重合性モノマーとしては、アクリルモノマーと共重合するモノマーであって、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;酢酸ビニルなどのビニル化合物などを含む。
【0055】
上記アクリルポリオール樹脂の製造方法としては特に限定されず、例えば、通常のラジカル重合などの溶液重合などにより行うことができる。
【0056】
上記アクリルポリオール樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1,000~20,000であるのが好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であることによって、塗料用組成物の粘度および得られる塗膜の耐候性などの塗膜物性のバランスを良好な範囲に保つことができる。
【0057】
シロキサン基含有ポリマー(A)と水酸基含有ポリマー(C)との量的比率は、シロキサン基含有ポリマー(A):水酸基含有ポリマー(C)の重量比率で15:85~80:20の重量割合であることが好ましい。上記範囲の時に、ミクロ相分離構造を形成するシロキサン基含有ポリマー(A)に水酸基含有ポリマー(C)相溶することでミクロ相分離を制御でき、A鎖のポリマーブロックのポリシロキサン基含有ビニルモノマー(a)に由来する構造単位により、コーティング膜に撥水撥油性といった防汚機能を効率よく付与することが可能となる。シロキサン基含有ポリマー(A):水酸基含有ポリマー(C)の重量比は、好ましくは20:80~75:25、より好ましくは30:70~60:40である。
【0058】
<塗料用組成物>
本発明の塗料用組成物は、上記塗料用組成物を構成する各成分を、通常用いられる手段によって混合することによって、調製することができる。上記塗料用組成物には、必要に応じて、顔料、表面調整剤(消泡剤、レベリング剤等)、顔料分散剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、静電助剤、熱安定剤、光安定剤、溶剤(水、有機溶剤)その他の添加剤を含有してもよい。
【0059】
本発明の塗料用組成物は、被塗物上に塗布した後、好ましくは70~170℃、より好ましくは70~160℃、さらに好ましくは70~150℃で硬化する。
【0060】
<被塗物>
本発明の塗料用組成物が塗布される被塗物として、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、銅、亜鉛、スズなどの金属およびこれらの合金などの鋼板;ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、塩化ビニル樹脂、スチロール樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂などを含む)、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)などの樹脂;および、有機-無機ハイブリッド材などが挙げられる。これらは成形された状態であってもよい。本発明の塗料用組成物は、特にポリエチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、スチロール樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂などを含む)、ポリカーボネート樹脂などの帯電しやすい材料や、FRP、CFRPに用いる不飽和ポリエステル樹脂の時に効果を発揮する。
【0061】
本発明の塗料用組成物の塗装及または塗工は、特段制限されるものではなく、通常用いられる塗装または塗工方法によって塗装または塗工することができる。例えば、本発明の塗料用組成物を自動車車体に塗装する場合は、得られる塗膜の外観を高めるために、エアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装、好ましくは2ステージで塗装するか、または、エアー静電スプレー塗装と、通称「μμ(マイクロマイクロ)ベル」、「μ(マイクロ)ベル」あるいは「メタベル」等と言われる回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法などを用いることができる。フィルム等に塗工する場合は、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、バーコート、ナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法を用いることができる。さらには、本発明の塗料用組成物を含浸させた繊維を用いた手塗り、刷毛塗りなども可能であり、例えば、乾燥したスポンジやウエス等の繊維に適量含浸させ、これを手で基材表面に薄く塗り広げ、自然乾燥または乾燥機等を用いた強制乾燥により塗膜を形成させる方法を用いることができる。
【0062】
本発明の塗料用組成物から形成される塗膜の膜厚は、乾燥膜厚として例えば0.5μm~50μmであるのが好ましく、1μm~30μmであるのがさらに好ましい。
【実施例0063】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0064】
〔共重合体の製造〕
製造例1 シロキサン基含有ポリマー(A-1)の製造
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート(BTEE)1.49g、ジブチルジテルリド(DBDT)0.92g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)42g、メタクリル酸イソブチル(iBMA)98g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)0.33g、酢酸ブチル140gを仕込み(第1モノマー組成物)、60℃で36時間反応させBブロックを重合した。
【0065】
上記反応液に予めアルゴン置換したシロキサン基含有アクリルモノマー(信越化学社製:X-22-174ASX[官能基当量(g/mol)]:900 [数平均分子量:900]:表1中「PDMSA」と略す。)60.0g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル60gの混合溶液(第2モノマー組成物)を加え、60℃で36時間反応させAブロックを重合した。得られたABブロックのシロキサン基含有ポリマー(A-1)の物性を表1に示す。表1には、シロキサン基含有ポリマー(A-1)のモノマーの配合量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(有機テルル化合物を用いる方法(TERP)/フリーラジカル重合法(FRP))、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)およびブロック形態(AB/ABAの区別)を記載した。
【0066】
製造例2 シロキサン基含有ポリマー(A-2)の製造
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、BTEE 1.49g、DBDT 0.92g、HEMA 42g、iBMA 78g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル120gを仕込み(第1モノマー組成物)、60℃で36時間反応させBブロックを重合した。
【0067】
上記反応液に予めアルゴン置換したX-22-174ASX 60.0g、リン酸基含有モノマー(モノ(プロピレングリコールモノメタクリレート)ホスフェート 城北化学工業社製 製品名:JAMP-100N:表1中「PO4(JAMP)」と略す。)20g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル60gの混合溶液(第2モノマー組成物)を加え、60℃で36時間反応させAブロックを重合した。得られたABブロックのシロキサン基含有ポリマー(A-2)の物性、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)、ブロック形態(AB/ABAの区別)およびモノマーの配合を表1に示す。
【0068】
製造例3 シロキサン基含有ポリマー(A-3)の製造
製造例1のHEMA 42g、iBMA 98gをiBMA 140gに変更したこと以外は同様にし、シロキサン基含有ポリマー(A-3)を得た。得られたシロキサン基含有ポリマー(A-3)の物性、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)、ブロック形態(AB/ABAの区別)およびモノマーの配合を表1に示す。
【0069】
製造例4 シロキサン基含有ポリマー(A-4)の製造
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、BTEE 1.49g、DBDT 0.92g、HEMA 42g、iBMA 98g、X-22-174ASX 60g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル400gを仕込み(第1モノマー組成物)、60℃で36時間反応させランダム構造のシロキサン基含有ポリマー(A-4)を得た。得られたランダム構造のシロキサン基含有ポリマー(A-4)の物性、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)、ブロック形態(AB/ABAの区別)およびモノマーの配合を表1に示す。
【0070】
製造例5 シロキサン基含有ポリマー(A-5)の製造
温度調節器、攪拌翼、還流管、窒素導入口を備えた0.2Lのセパラブルフラスコに、酢酸ブチル30gを仕込み、フラスコ内部を窒素雰囲気下にした後、温度を120℃に昇温して一定に保った。一方、HEMA 20.88g、iBMA 49.12g、X-22-174ASX 30gおよびカヤエステルO 0.88gの混合液を滴下ロートに入れて、3時間かけて滴下した。
【0071】
次いで、1時間反応を継続した後、後開始剤として、酢酸ブチル2g、カヤエステルO 0.5gの混合液を30分間かけて滴下し、更に1時間反応を継続してランダム構造のシロキサン基含有ポリマー(A-5)を得た。得られたランダム構造のシロキサン基含有ポリマー(A-5)の物性、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)、ブロック形態(AB/ABAの区別)およびモノマーの配合を表1に示す。
【0072】
製造例6 シロキサン基含有ポリマー(A-6)の製造
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、BTEE 1.49g、DBDT 0.92g、HEMA 42g、iBMA 98g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル140gを仕込み(第1モノマー組成物)、60℃で36時間反応させBブロックを重合した。
【0073】
上記反応液に予めアルゴン置換したシロキサン基含有アクリルモノマー(信越化学社製:X-22-174ASX)60.0g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル60gの混合溶液(第2モノマー組成物)を加え、60℃で36時間反応させAブロックを重合した。得られたABブロックのシロキサン基含有ポリマー(A-6)の物性を表1に示す。表1には、シロキサン基含有ポリマー(A-1)のモノマーの配合量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)、ブロック形態(AB/ABAの区別)を記載した。
【0074】
製造例7 シロキサン基含有ポリマー(A-7)の製造
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、BTEE 1.49g、DBDT 0.92g、HEMA 42g、iBMA 98g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル140gを仕込み(第1モノマー組成物)、60℃で36時間反応させBブロックを重合した。
【0075】
上記反応液に予めアルゴン置換したシロキサン基含有アクリルモノマー(信越化学社製:X-22-174BX [官能基当量(g/mol)]:2300[数平均分子量:2300]:表1中「PDMSA」と略す。)60.0g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル60gの混合溶液(第2モノマー組成物)を加え、60℃で36時間反応させAブロックを重合した。得られたABブロックのシロキサン基含有ポリマー(A-1)の物性を表1に示す。表1には、シロキサン基含有ポリマー(A-7)のモノマーの配合量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)、ブロック形態(AB/ABAの区別)を記載した。
【0076】
製造例8 シロキサン基含有ポリマー(A-8)の製造
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、BTEE 1.49g、DBDT 0.92g、HEMA 42g、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)98g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル140gを仕込み(第1モノマー組成物)、60℃で36時間反応させBブロックを重合した。
【0077】
上記反応液に予めアルゴン置換したシロキサン基含有アクリルモノマー(信越化学社製:X-22-174ASX)60.0g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル60gの混合溶液(第2モノマー組成物)を加え、60℃で36時間反応させAブロックを重合した。得られたABブロックのシロキサン基含有ポリマー(A-8)の物性を表1に示す。表1には、シロキサン基含有ポリマー(A-8)のモノマーの配合量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)、ブロック形態(AB/ABAの区別)を記載した。
【0078】
製造例9 シロキサン基含有ポリマー(A-9)の製造
アルゴンガス導入管、撹拌翼を供えたフラスコに、予めアルゴン置換したシロキサン基含有アクリルモノマー(信越化学社製:X-22-174ASX)60.0g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル60gの混合溶液(第1モノマー組成物)を加え、60℃で36時間反応させAブロックを重合した。
【0079】
上記反応液に予めアルゴン置換したHEMA 42g、iBMA 98g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル140gを仕込み(第2モノマー組成物)、60℃で36時間反応させBブロックを重合した。
【0080】
上記反応液に予めアルゴン置換したシロキサン基含有アクリルモノマー(信越化学社製:X-22-174ASX)60.0g、AIBN 0.33g、酢酸ブチル60gの混合溶液(第1モノマー組成物)を加え、60℃で36時間反応させAブロックを重合した。得られたABAトリブロックのシロキサン基含有ポリマー(A-9)の物性を表1に示す。表1には、シロキサン基含有ポリマー(A-9)のモノマーの配合量、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)、ポリマー形態(ブロックポリマー/ランダムポリマー)、ブロック形態(AB/ABAの区別)を記載した。
【0081】
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は以下の方法で測定した。
[数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、カラムはTSKgel SuperMultipore HZ-H(Φ4.6×150)×2(東ソー(株)製)、移動相としてテトラヒドロフラン、標準物質としてポリスチレン(東ソー(株)製、TSK Standard)を使用して検量線を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。これらの測定値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0082】
水酸基含有ポリマー(C)の製造
温度調節器、攪拌翼、還流管、窒素導入口を備えた2Lのセパラブルフラスコに、酢酸ブチル444.27gを仕込み、フラスコ内部を窒素雰囲気下にした後、温度を130℃に昇温して一定に保った。一方、スチレン(ST)255g、メタクリル酸(MAA)8.5g、HEMA 394.4g、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)117.47g、iBMA 74.72g、およびカヤエステルO 102gの混合液を滴下ロートに入れて、3時間かけて滴下した。
【0083】
次いで、1時間反応を継続した後、後開始剤として、酢酸ブチル204g、カヤエステルO 20.4gの混合液を30分間かけて滴下し、更に1時間反応を継続して固形分60%になるように酢酸ブチルで希釈を行い、水酸基含有ポリマー(C)を得た。表1には、水酸基含有ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、水酸基価、製造方法(TERP/FRP)を記載した。
【0084】
表1には、また、架橋剤(B)としてコベストロ社製N3600(低粘度ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー:NCO%=23)を使用し、そのNCO/OH比率も記載した。
【0085】
(実施例1~12および比較例1~4)
塗料用組成物および塗膜の作成
シロキサン基含有ポリマー(A)(A-1~A-9)、架橋剤(B)としてのN3600(コベストロ社製、NCO%=23)、水酸基含有ポリマー(C)を表1に記載した配合量で配合し、酢酸ブチルを用いて樹脂分を50重量%に希釈した塗料用組成物を、アプリケーターを用いて、乾燥膜厚が30μmになるように、ブリキ板上に塗装し、試験片は、温度20±5℃、相対湿度78%以下の塗装環境下で7分間放置した。尚、比較例4はシロキサン基含有ポリマーを配合していない例である。尚、表1には、シロキサン基含有ポリマー(A)と水酸基含有ポリマー(C)の重量比率(シロキサン基含有ポリマー(A):水酸基含有ポリマー(C))も記載した。
【0086】
次いで、熱風乾燥機を用いて140℃下で、30分間乾燥及び加熱硬化させて、基材と塗膜とを有する試験片を得た。得られた塗膜に関する配合、各種物性、評価結果を表1に示す。
【0087】
得られた塗膜の性能を以下に記載の方法で評価し、結果を表2に示す。また、得られた塗膜の一部(実施例1、3、4、5および9)の透過顕微鏡写真(TEM写真)を撮り、
図1に掲載した。実施例10と比較例1~3についても、TEM写真を撮ったが、ミクロ分離構造が確認されなかったので、写真を掲載しなかった。また、比較例1~3では、塗膜が白濁した。
【0088】
[塗膜の透明性]
塗膜の表面を目視観察し、下記 の基準で評価した。
○:塗膜は透明であり全く異常が認められない
△:塗膜がうっすらと乳白色である。
×:塗膜に白濁が認められる
【0089】
[油系有機汚染物の除去性]
カーボンブラック(Furnace black(KREMER pigmente)に、松脂、テルピネオール、リモネンを入れ、ディスパーで攪拌させ、黒色のタール状液体を得た。これを油系有機汚染物とした。アプリケーターを用いて、乾燥膜厚が約20μmになるように、実施例で得られた塗膜の上にこれを塗工し、熱風乾燥機を用いて80℃下で、30分間乾燥させたものを下記条件で評価した。
高圧水噴射条件:噴射ノズル(1/4PMEG-2506)、水流(11L/min), 水温(50℃)、洗浄時間(1分)、水噴射距離(10cm)
○…水噴射と同時に汚れが吹き飛び、吹き飛んだところの塗膜に黒色の汚れがない
×…汚れがきれいに吹き飛ばない。塗面に黒い汚れが残っている。
【0090】
この試験は、油性有機物汚染の固着程度、易除去性を評価する試験方法であり、汚れの取れやすさという観点で、油系汚染物の除去性の代用試験となる。
【0091】
[水垢の除去性]
実施例で得られた塗膜の上に、エビアン(商品名)を、アトマイザーを用いて噴霧させ、塗膜の上に水滴をのせた。これを熱風乾燥機で60℃下、10分間乾燥させ、水垢を塗膜に固着させた。塗膜を水道水に流しながらスポンジを用い10往復洗浄した後の塗膜に残った水垢を目視により評価した。
◎…水垢が固着していない
○…水垢がほとんどとれている。小さな点状で残っている。
×…水垢がコーヒーリングのように環になって固着している。(外観が悪い)
【0092】
[接触角および撥水性評価]
協和界面科学社製のDMo-701型接触角計を用い、25℃、55%RHの雰囲気下で、約1μLの蒸留水を塗膜表面に着滴させ、10秒後の液滴と塗膜表面とのなす角をθ/2法にて算出した。
◎…接触角が95度以上、
○…接触角が85度以上、
×…接触角が85度未満。
【0093】
[研磨後の接触角および撥水性評価]
洗車を想定して、コンパウンド剤(#7500番)を電動ポリッシャーで10秒間、ポリッシングし、中性洗剤を用いイオン交換水で塗膜を水洗した後、常温乾燥させたものを測定塗膜とした。
協和界面科学社製のDMo-701型接触角計を用い、25℃、55%RHの雰囲気下で、約1μLの蒸留水を塗膜表面に着滴させ、10秒後の液滴と塗膜表面とのなす角をθ/2法にて算出した。
◎…接触角が95度以上、
○…接触角が85度以上、
×…接触角が85度未満。
【0094】
[耐溶剤性試験]
得られた塗膜の上にトルエンを2μl滴下し、5分間静置した。5分後にドライウエスでふき取った後の外観を以下の基準で評価した。
○…塗膜外観に異常がみられない。
△…うっすらと液滴のあとが残る。
【0095】
【0096】
【0097】
表2から明らかなように、実施例の塗料では、塗膜の透明性が高く、撥水性(撥水性表および油系有機汚染物質の除去性)も優れている。比較例1は水酸基含有ビニルモノマーがシロキサン基含有ビニルポリマーに配合されていない例であり、相溶性が悪く塗膜の透明性が良くない。比較例2は、ブロック重合ではなく、ランダム重合の例であり、やはり塗膜の透明性が劣る。比較例3はランダム重合であるのと、分子量分布(Mw/Mn)が高い場合の例であり、やはり塗膜の透明性が劣る。比較例4は前述のように、シロキサン基含有ポリマーを配合していない例であり、撥水性の評価が劣る。
前記シロキサン基含有ポリマー(A)と前記水酸基含有ポリマー(C)との配合割合が、シロキサン基含有ポリマー(A):水酸基含有ポリマー(C)の重量比で15:85~80:20の割合である請求項1~4のいずれか一項に記載の塗料用組成物。