IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧

特開2022-7575サイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置
<>
  • 特開-サイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置 図1
  • 特開-サイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置 図2
  • 特開-サイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置 図3
  • 特開-サイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007575
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】サイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 39/14 20060101AFI20220105BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20220105BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B21B39/14 D
G05B23/02 R
B21C51/00 K
B21C51/00 Q
B21C51/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110631
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】川口 裕矢
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF02
3C223FF13
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】サイドガイド部材の摩耗量を検出し、適切な交換時期を管理することができるサイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置を提供する。
【解決手段】実施形態のサイドガイド部材摩耗管理システムは、サイドガイド部材の厚さを計測する摩耗センサと、前記摩耗センサによって計測された前記サイドガイド部材の厚さのデータを取得するコントローラと、前記コントローラから前記データを受信して、前記データにもとづいて前記サイドガイド部材の摩耗量を計算するサイドガイド部材摩耗管理装置と、を備える。前記サイドガイド部材摩耗管理装置は、前記摩耗量を、あらかじめ設定された第1しきい値と比較して、前記摩耗量が前記第1しきい値以上となったときに、前記サイドガイド部材の交換時期が近いことを表す第1信号を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドガイド部材の厚さを計測する摩耗センサと、
前記摩耗センサによって計測された前記サイドガイド部材の厚さのデータを取得するコントローラと、
前記コントローラから前記データを受信して、前記データにもとづいて前記サイドガイド部材の摩耗量を計算するサイドガイド部材摩耗管理装置と、
を備え、
前記サイドガイド部材摩耗管理装置は、前記摩耗量を、あらかじめ設定された第1しきい値と比較して、前記摩耗量が前記第1しきい値以上となったときに、前記サイドガイド部材の交換時期が近いことを表す第1信号を生成するサイドガイド部材摩耗管理システム。
【請求項2】
圧延スケジュールごとの被圧延材の鋼種、形状および本数に関する情報を管理する圧延スケジューラ
をさらに備え、
前記サイドガイド部材摩耗管理装置は、完了した圧延スケジュールにおいて前記サイドガイド部材を通過した被圧延材の量、そのときの摩耗量および将来の圧延スケジュールにおいて前記サイドガイド部材を通過する被圧延材の量にもとづいて、前記将来の圧延スケジュールにおける摩耗量を計算する請求項1記載のサイドガイド部材摩耗管理システム。
【請求項3】
前記サイドガイド部材を通過した被圧延材の量は、前記サイドガイド部材を通過した被圧延材の運動エネルギーの総和であり、
前記サイドガイド部材を通過する被圧延材の量は、前記サイドガイド部材を通過する被圧延材の運動エネルギーの総和である請求項1記載のサイドガイド部材摩耗管理システム。
【請求項4】
前記サイドガイド部材摩耗管理装置は、前記将来の圧延スケジュールにおける摩耗量を、あらかじめ設定された前記将来の圧延スケジュールにおける摩耗量に関する第2しきい値と比較して、前記将来の圧延スケジュールにおける摩耗量が前記第2しきい値以上となったときに、前記サイドガイド部材の交換時期が近いことを警告する第2信号を生成する請求項2または3に記載のサイドガイド部材摩耗管理システム。
【請求項5】
サイドガイド部材の厚さを計測する摩耗センサと、前記摩耗センサによって計測された前記サイドガイド部材の厚さのデータを取得するコントローラと、を含むプロセス制御システムに接続されたサイドガイド部材摩耗管理装置であって、
前記コントローラから前記データを受信して、前記データにもとづいて前記サイドガイド部材の摩耗量を計算し、
前記摩耗量を、あらかじめ設定された第1しきい値と比較して、前記摩耗量が前記第1しきい値以上となったときに、前記サイドガイド部材の交換時期が近いことを表す第1信号を生成するサイドガイド部材摩耗管理装置。
【請求項6】
前記サイドガイド部材摩耗管理装置は、前記プロセス制御システムに接続され、圧延スケジュールごとの被圧延材の鋼種、形状および本数に関する情報を管理する圧延スケジューラから、完了した圧延スケジュールにおいて前記サイドガイド部材を通過した被圧延材の量、そのときの摩耗量および将来の圧延スケジュールにおいて前記サイドガイド部材を通過する被圧延材の量にもとづいて、前記将来の圧延スケジュールにおける摩耗量を計算するサイドガイド部材摩耗管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱間圧延プラントのサイドガイド設備に用いられるサイドガイド部材の摩耗状態を管理するサイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延プラントでは、被圧延材の蛇行を抑止するために、サイドガイド設備が設置されている。サイドガイド設備は、サイドガイドを補強するサイドガイド部材を有している。サイドガイド部材は、被圧延材の搬送を繰り返すことによって、摩耗し、劣化する。サイドガイド部材が摩耗し、劣化すると、被圧延材は、十分にセンタリングされず、蛇行を生じるため、圧延工程における歩留りの低下を生じるおそれがある。そのため、サイドガイド部材は、その摩耗量が所定のレベルに達する前に交換される。
【0003】
サイドガイド部材の摩耗による劣化を抑制するために、サイドガイド部材の耐摩耗性を向上させて、寿命を延ばす方法が知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1は、摩擦面に超硬合金片を埋め込んでろう接したサイドガイド部材を開示している。このようなサイドガイド部材を用いることで、金属板素地そのものを摩擦面とした金属部材および金属素地にステンレスを溶接肉盛した層を摩擦面とした金属部材に比較して、摩擦面の摩耗がはるかに小さいため金属部材の寿命が延長されることになり、ラインの稼働率を向上させ、ラインの操業の安定化を図ることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-26002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイドガイド部材自体の耐摩耗性を向上することによって、サイドガイド部材の寿命を延長させることができるが、結局摩耗が起きてしまうことに変わりはない。適切な交換時期を把握できないと、摩耗量に余裕がある状態で、サイドガイド部材を交換することとなり、無駄な交換時間を生じるおそれがある。あるいは、サイドガイド部材が摩耗した状態で操業を継続した結果、被圧延材の蛇行を生じて、材料品質に影響が出るおそれがある。
【0006】
本発明の実施形態は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、サイドガイド部材の摩耗量を検出し、適切な交換時期を管理することができるサイドガイド部材摩耗管理システムおよびサイドガイド部材摩耗管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るサイドガイド部材摩耗管理システムは、サイドガイド部材の厚さを計測する摩耗センサと、前記摩耗センサによって計測された前記サイドガイド部材の厚さのデータを取得するコントローラと、前記コントローラから前記データを受信して、前記データにもとづいて前記サイドガイド部材の摩耗量を計算するサイドガイド部材摩耗管理装置と、を備える。前記サイドガイド部材摩耗管理装置は、前記摩耗量を、あらかじめ設定された第1しきい値と比較して、前記摩耗量が前記第1しきい値以上となったときに、前記サイドガイド部材の交換時期が近いことを表す第1信号を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態では、サイドガイド部材の摩耗量を検出し、適切な交換時期を管理することができるサイドガイド部材摩耗管理装置およびサイドガイド部材摩耗管理システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るサイドガイド部材摩耗管理装置を例示する模式的なブロック図である。
図2】サイドガイド設備を例示する模式的な平面図である。
図3】第2の実施形態に係るサイドガイド部材摩耗管理装置を例示する模式的なブロック図である。
図4】第2の実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置が出力するデータにもとづいて出力された模式的な表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るサイドガイド部材摩耗管理装置を例示する模式的なブロック図である。
図1は、本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置1を含むサイドガイド部材摩耗管理システム100の全体の構成が合わせて示されている。まず、サイドガイド部材摩耗管理システム100の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、サイドガイド部材摩耗管理システム100は、サイドガイド部材摩耗管理装置1と、コントローラ4と、摩耗センサ5と、を備える。
サイドガイド部材摩耗管理システム100は、表示装置9をさらに備えることができる。表示装置9は、サイドガイド部材摩耗管理装置1が出力する情報を表示する装置であり、本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理システム100では、表示装置9に代えて、あるいは表示装置9に加えて他のデータ出力装置を備えることができる。他のデータ出力装置は、たとえば、音声出力装置、プリンタ等である。
【0013】
本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理システム100では、サイドガイド部材摩耗管理装置1およびコントローラ4は、通信ネットワーク2を介して、相互に接続されている。表示装置9等の出力装置は、通信ネットワーク2に接続される。通信ネットワーク2は、汎用の通信ネットワークである。
【0014】
コントローラ4および摩耗センサ5は、制御用専用ネットワーク3を介して相互に接続されている。図では示していないが、摩耗センサ5は、入力インタフェースモジュール等を介して、制御用専用ネットワーク3に接続されている。
【0015】
摩耗センサ5は、サイドガイド部材の摩耗量を検出するためのセンサである。摩耗センサ5は、たとえば、光学式センサであり、計測対象物から離れた位置からレーザ光等を照射して、計測対象物の長さを計測する。本実施形態では、摩耗センサ5は、サイドガイド部材の厚さを計測する。
【0016】
コントローラ4は、摩耗センサ5が計測したサイドガイド部材の厚さのデータを取得し、所定の形式の内部信号8に変換して、サイドガイド部材摩耗管理装置1に送信する。コントローラ4は、たとえばプログラマブルロジックコントローラ(PLC)等のプロセス制御のためのコンピュータ装置等である。そのほか、コントローラ4は、あらかじめ導入されたプログラムにしたがって、摩耗センサ5によるデータの取得を含むプロセス制御データの取得や、制御指令等を生成する。
【0017】
摩耗センサ5によって計測された厚さのデータは、入力インタフェースモジュール等によってディジタルデータに変換されて、コントローラ4に送信される。コントローラ4は、受信した厚さのデータを含む内部信号8に変換して、処理を続行する。
【0018】
サイドガイド部材摩耗管理装置1は、コントローラ4が取得したサイドガイド部材の厚さのデータを含む内部信号8を受信する。サイドガイド部材摩耗管理装置1は、サイドガイド部材の厚さの初期値を用いて、摩耗量を計算し、計算された摩耗量が、あらかじめ設定されたしきい値(第1しきい値)以上となった場合に、サイドガイド部材の交換時期が近いことを表す信号(第1信号)を生成し、出力する。
【0019】
通信ネットワーク2に表示装置が接続されている場合には、サイドガイド部材摩耗管理装置1は、しきい値を超えたことを表す信号を表示装置9に出力する。表示装置9は、信号を受信して、たとえば、摩耗量が「交換時期」であるとの文字を出力する。
【0020】
サイドガイド部材摩耗管理装置1の構成について説明する。
サイドガイド部材摩耗管理装置1は、摩耗量計算部6と、摩耗量記録部7と、を備える。摩耗量計算部6および摩耗量記録部7は、たとえばデータ通信用バスを介して、相互に接続されている。サイドガイド部材摩耗管理装置1は、たとえば、サーバ等のコンピュータ装置であり、摩耗量計算部6は、たとえば、コンピュータ装置の演算装置(CPU)である。摩耗量記録部7は、たとえば、コンピュータ装置のための記憶装置であり、摩耗量計算部6によって計算されたデータを記憶する。摩耗量記録部7は、サイドガイド部材の初期値や、摩耗量のしきい値を格納する。また、摩耗量記録部7は、摩耗センサ5による計測時刻、計測周期等のデータ等を格納することができる。
【0021】
摩耗量計算部6は、摩耗センサ5によって計測されたサイドガイド部材の厚さのデータを含むコントローラ4の内部信号を取得する。摩耗量計算部6は、摩耗量記録部7からサイドガイド部材の厚さの初期値を読み出して、初期値と計測値との差を計算することによって、サイドガイド部材の摩耗量を計算する。計算された摩耗量のデータは、摩耗量記録部7に記憶される。
【0022】
摩耗量計算部6は、摩耗量を計算するたびに、摩耗量記録部7から摩耗量のしきい値を読み出して、計算された摩耗量としきい値とを比較する。計算された摩耗量のデータがしきい値以上の場合には、摩耗量計算部6は、サイドガイド部材の交換時期が近いことを表す信号を生成し、表示装置9等のデータ出力装置に出力する。
【0023】
図2は、サイドガイド設備を例示する模式的な平面図である。
図2に示すように、サイドガイド設備50は、摩耗センサ5と、サイドガイド52a,52bと、サイドガイド部材54a,54bと、を含む。サイドガイド52a,52bは、被圧延材(図示せず)の搬送方向(矢印)に沿って、ほぼ平行となるように設けられている。図2において、中心線Cは、被圧延材が搬送されるパスラインの中心を表している。サイドガイド52a,52bは、中心線からほぼ等間隔になるように配置される。なお、サイドガイド52a,52bは、図示しない駆動装置によって、被圧延材に応じた幅に調整され、設定される。
【0024】
サイドガイド部材54aは、被圧延材の搬送方向に沿って、サイドガイド52aの壁面に設けられている。サイドガイド部材54bは、被圧延材の搬送方向に沿って、サイドガイド52bの壁面に設けられている。サイドガイド部材54a,54bの摩耗面は、互いに対向するように配置される。
【0025】
摩耗センサ5は、サイドガイド部材54a,54bの厚さを検出するように、たとえばサイドガイド部材54a,54bの上方に設けられている。この例では、摩耗センサ5は、2個設けられており、一方の摩耗センサ5は、サイドガイド部材54aの上方に設けられ、サイドガイド部材54aの厚さを計測する。他方の摩耗センサ5は、サイドガイド部材54bの上方に設けられ、サイドガイド部材54bの厚さを計測する。摩耗センサ5は、サイドガイド部材54a,54bの厚さを正確に計測できれば、サイドガイド部材54a,54bのそれぞれの直上に設けられている必要はなく、サイドガイド部材54a,54bの斜め上方等に設置されてもよい。
【0026】
摩耗センサ5の設置位置については、この例では、被圧延材の進入側にもっとも近いサイドガイド部材54a,54bの厚さを計測するように設定されているが、これに限るものではない。たとえば、サイドガイド設備によっては、搬送方向に沿って摩耗量が異なる場合であって、摩耗量の大きい箇所が判明していることがある。そのような場合には、摩耗量の大きいサイドガイド部材の上方に摩耗センサを設けるようにしてもよい。
【0027】
なお、サイドガイド部材54a,54bの厚さは、たとえば、サイドガイド52a,52bの取付け面から摩耗面までの長さと定義される。摩耗面の搬送方向の位置については、あらかじめ設定するようにしてもよいし、摩耗センサ5によってサイドガイド部材54a,54bごとに複数の位置を計測して、最大値や、最小値、あるいは平均値を採用するようにしてもよい。
【0028】
本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置1の動作について説明する。
以下では、実測によって、サイドガイド部材54a,54bの厚さの初期値を設定する場合について説明する。
まず、本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置1では、摩耗センサ5によって、その摩耗センサ5が計測対象とするサイドガイド部材54a,54bの厚さの初期値を計測する。たとえば、サイドガイド部材54a,54bを交換した場合等にサイドガイド部材54a,54bの厚さの初期値が計測される。初期値を計測する場合には、たとえば、摩耗量計算部6は、初期値計測指令を生成し、指令をコントローラ4に送信する。コントローラ4は、初期値計測指令にもとづいて、摩耗センサ5によって、サイドガイド部材54a,54bの厚さを計測する。
【0029】
コントローラ4は、摩耗センサ5によって計測された厚さのデータを取得し、取得したデータを含む内部信号8を生成する。コントローラ4は、生成した内部信号8を摩耗量計算部6に送信する。
【0030】
摩耗量計算部6は、サイドガイド部材54a,54bの厚さのデータを含む内部信号8を受信し、受信した信号からサイドガイド部材54a,54bの厚さのデータを抽出する。摩耗量計算部6は、抽出した厚さのデータをサイドガイド部材54a,54bの厚さのデータの初期値にそれぞれ設定し、摩耗量記録部7に格納する。
【0031】
次に、サイドガイド部材54a,54bの厚さのデータの計測について説明する。
コントローラ4では、摩耗センサ5がサイドガイド部材54a,54bの厚さを計測する時刻および周期のデータ(以下、時刻等ともいう)がプログラム等によって、あらかじめ設定されている。たとえば、サイドガイド部材54a,54bの厚さの計測時刻および計測周期のデータは、コントローラ4にプログラムを導入する際に、摩耗量記録部7から読み出してプログラムに設定される。
【0032】
コントローラ4は、あらかじめ設定された計測時刻および計測周期で、摩耗センサ5によって、サイドガイド部材54a,54bの厚さのデータを計測する。
【0033】
サイドガイド部材54a,54bの厚さの計測の計測時刻および計測周期は、任意に設定することができる。たとえば、計測時刻の初期値が設定され、一定の計測周期で厚さを計測するようにしてもよいし、被圧延材が摩耗センサ5を通過するごとに厚さを計測するようにしてもよい。
【0034】
摩耗量計算部6は、摩耗センサ5によって計測されたサイドガイド部材54a,54bの厚さのデータをコントローラ4経由でそれぞれ取得する。
【0035】
摩耗量計算部6は、厚さの初期値から厚さデータの計測値を差し引いて、サイドガイド部材54a,54bの摩耗量を算出する。この例のように、厚さデータの計測値が複数個得られる場合には、摩耗量計算部6は、摩耗量の計算値が最大のものを選択して、摩耗量に設定する。厚さデータが複数ある場合には、適切な摩耗量を判定できれば、最大値を選択する場合に限らず、複数の計算値中の中央値や平均値等とするようにしてもよい。
【0036】
摩耗量計算部6は、計算した摩耗量のデータと、あらかじめ設定された摩耗量のしきい値とを比較する。摩耗量のデータがしきい値よりも小さい場合には、上述した手順を繰り返す。
【0037】
摩耗量計算部6は、摩耗量のデータがしきい値以上の場合には、摩耗量計算部6は、サイドガイド部材54a,54bの交換時期が近いことを表す信号を生成し、表示装置9等のデータ出力装置に生成した信号を出力する。
【0038】
表示装置9等のデータ出力装置は、信号にもとづいて、警告表示等を出力する。
【0039】
サイドガイド部材54a,54bの交換時期が近いことを表す信号を生成するためのしきい値は、1つに限らず、何段階かに分けて、複数個設定するようにしてもよい。複数のしきい値を設けた場合には、しきい値の大きさに応じて、交換時期の切迫度合いを操作者に知らせることが可能になる。
【0040】
本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置1の効果について説明する。
本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置1は、摩耗量計算部6および摩耗量記録部7を備えるので、摩耗センサ5によって計測されてたサイドガイド部材54a,54bの厚さデータを実測し、摩耗量を適時、算出することができる。そのため、適時計算された摩耗量は、しきい値と比較されることができ、操作者は、サイドガイド部材54a,54bの摩耗量を適時に知ることができる。
【0041】
本実施形態では、表示装置9等によって出力される警告表示等は、サイドガイド部材54a,54bの交換時期の目安を与えるものとすることができる。そのため、あらかじめ設定される摩耗量のしきい値は、実際に使用限界となる摩耗量に対して、十分な余裕をもって設定される。したがって、実際のサイドガイド部材の交換は、現在実施している圧延スケジュールの終了後や、もっとも近い時期の定期検査の時期とすることができる。
【0042】
摩耗センサ5を複数台用いて、すべてのサイドガイド部材の厚さを計測するようにしてもよく、その場合には、サイドガイドごとに交換時期を判断することができるので、より適切に修繕計画等を立案することができる。なお、複数のサイドガイド部材の厚さを計測する場合には、サイドガイド部材ごとに摩耗センサを設ける場合に限らず、複数のサイドガイド部材の厚さを計測するように、摩耗センサの走査範囲を設定する等してもよい。
【0043】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態の場合では、サイドガイド部材の交換時期を決定するしきい値をあらかじめ設け、実測の摩耗量がしきい値に達したか否かによって、サイドガイド部材の交換時期の判断基準の1つとする。摩耗量のしきい値に十分な余裕を取ることによって、サイドガイド部材の安全な交換時期を決定することができる反面、しきい値についての適切な余裕をどのように設定するかの判断が困難な側面も否定できない。本実施形態では、サイドガイド部材の交換時期をより適切に決定できるように、摩耗量の予測値を導入し、より実情に即した予防保全を実現する。
【0044】
図3は、本実施形態に係るサイドガイド部材摩耗管理装置を例示する模式的なブロック図である。
図3には、本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置201を含むサイドガイド部材摩耗管理システム200の全体の構成が合わせて示されている。まず、サイドガイド部材摩耗管理システム200の構成について説明する。
図3に示すように、サイドガイド部材摩耗管理システム200は、サイドガイド部材摩耗管理装置201と、コントローラ4と、摩耗センサ5と、圧延スケジューラ210と、を備える。第1の実施形態と同様に、サイドガイド部材摩耗管理システム200は、表示装置9等のデータ出力装置をさらに備えることができる。
【0045】
サイドガイド部材摩耗管理システム200では、第1の実施形態の場合と異なるサイドガイド部材摩耗管理装置201を備えている。また、本実施形態では、サイドガイド部材摩耗管理システム200は、圧延スケジューラ210を備える点でも、第1の実施形態の場合と相違する。第1の実施形態の場合と同一の構成要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。
【0046】
コントローラ4、サイドガイド部材摩耗管理装置201および圧延スケジューラ210は、通信ネットワーク2を介して、相互に接続されている。圧延スケジューラ210は、圧延のスケジュールに関するデータを有する。圧延のスケジュールに関するデータは、鋼種や被圧延材の形状、被圧延材の本数等の情報を含んでいる。本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置201が用いられる熱間圧延ラインでは、コントローラ4を含むプロセス制御装置は、圧延スケジューラ210が提供する情報にもとづいて、各種プロセスパラメータを設定して、それぞれ運転される。たとえば、図2に示したサイドガイド設備50においては、サイドガイド設備50を制御するプロセス制御装置は、圧延スケジューラ210から供給される被圧延材の形状のデータにもとづいて、サイドガイド52a,52b間の距離を調整し、設定する。
【0047】
サイドガイド部材摩耗管理装置201は、摩耗量計算部6と、摩耗量記録部7と、摩耗量予測部214と、を備える。本実施形態では、サイドガイド部材摩耗管理装置201は、摩耗量予測部214を備える点で、第1の実施形態の場合と相違する。
【0048】
摩耗量計算部6は、第1の実施形態の場合と同様に、あらかじめ設定された時刻等においてコントローラ4を介して計測されたサイドガイド部材54a,54bの厚さのデータを取得し、取得したデータを摩耗量記録部7に格納する。このとき、好ましくは、厚さのデータは、計測時の時刻に関連付けられて、摩耗量記録部7にデータベースとして格納される。
【0049】
データベースは、たとえば、各圧延スケジュールにおいて、最初の被圧延材が摩耗センサ5を通過する時刻t1における計測値および最後の被圧延材が摩耗センサ5を通過する時刻t2における計測値を含んでいる。この例では、時刻t1,t2におけるサイドガイド部材54a,54bそれぞれの厚さの差が、その圧延スケジュールにおけるサイドガイド部材54a,54bの摩耗量の実測値である。
【0050】
摩耗量予測部214は、摩耗量記録部7のデータベースに格納されたデータを用いて、サイドガイド部材54a,54bの摩耗量の予測値を計算する。摩耗量予測部214は、サイドガイド部材54a,54bの摩耗量が、サイドガイド部材54a,54b間を通過する被圧延材の量に応じて決定されるものとして予測値を計算する。サイドガイド部材54a,54b間を通過する被圧延材の量は、被圧延材の質量および搬送速度に関連する物理量であり、たとえば被圧延材の運動エネルギーである。
【0051】
1つの圧延スケジュールにおいて、サイドガイド部材54a,54b間を通過する被圧延材の運動エネルギーが大きいほど、サイドガイド部材54a,54bの摩耗量は大きくなると考えられる。各圧延スケジュールにおいて、被圧延材の質量および搬送速度が同一の場合には、サイドガイド部材54a,54bの摩耗量は、1つの圧延スケジュールに含まれる被圧延材の本数が多いほど大きくなる。
【0052】
摩耗量予測部214は、この例では、各圧延スケジュールにおける被圧延材の運動エネルギーの総量に比例して、サイドガイド部材54a,54bの摩耗量が決定されるものとして、摩耗量の予測値を計算する。
【0053】
この例では、サイドガイド部材54a,54b間を通過する被圧延材の運動エネルギーの総和に応じた摩耗量を計算できるように、各圧延スケジュールにおいて、最初の被圧延材の通過時刻におけるサイドガイド部材54a,54bの厚さのデータおよび最後の被圧延材の通過時刻におけるサイドガイド部材54a,54bの厚さのデータを取得する。2点の時刻を設定することができれば、上述に限らず時刻設定をすることができる。たとえば、すべての被圧延材の先端および尾端が摩耗センサ5を通過する時刻のおけるサイドガイド部材54a,54bの厚さを計測するようにすれば、圧延スケジュールごとの摩耗量をより正確に計測することができる。
【0054】
このように、摩耗量予測部214は、圧延スケジューラ210から将来の圧延スケジュールを読み出して、その圧延スケジュールにおける被圧延材の運動エネルギーの総和、すでに圧延が完了している圧延スケジュールにおける被圧延材の運動エネルギーの総和およびすでに計算した摩耗量にもとづいて、将来の圧延スケジュールにおける摩耗量の予測値を計算する。
【0055】
本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置201の動作について、具体例を用いて、より詳細に説明する。
図4は、本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置が生成するデータにもとづいて出力された模式的な表示例である。
図4は、表示装置9の表示画面90上に表示された圧延スケジュールに対する摩耗量のデータを模式的に示している。
表示画面90には、サイドガイド部材の交換時期を表す摩耗量の表示ボックス211(交換摩耗量と表記)、初期値設定ボタン212(交換と表記)およびグラフ表示領域213が表示されている。
【0056】
表示ボックス211は、摩耗量記録部7に、あらかじめ設定された摩耗量のしきい値のデータが表示される。表示ボックスを入力可能にして、表示画面90上やキーボード等の入力装置から摩耗量のしきい値を入力できるようにしてもよい。また、しきい値は、1つに限らず、複数個設定できるようにしてもよい。
【0057】
初期値設定ボタン212は、GUIを用いてマウス等によりクリックすることによって、摩耗量を0にリセットするボタンである。サイドガイド部材を交換した場合には、初期値設定ボタン212によって、摩耗量を0にすることができる。サイドガイド部材を交換したときに、サイドガイド部材の厚さの初期値を実測する場合には、初期値を実測し、摩耗量記録部7に計測された初期値が格納された後に、初期値設定ボタン212を使用することができる。
【0058】
グラフ表示領域213は、横軸に圧延スケジュール、縦軸に摩耗量とするデータがプロットされる。プロットされるデータには、実際の摩耗量のデータに加え、摩耗量の予測値が含まれる。この例では、n回目の圧延スケジュールまでは、実際の摩耗量のデータであり、n+1回目の圧延スケジュール以降では、摩耗量の予測値のデータがプロットされている。
【0059】
グラフ表示領域213では、表示ボックス211中の交換時期を表すしきい値(第2しきい値)が破線で表示されており、どの圧延スケジュールにおいて、摩耗量がしきい値に達するのを視認することができる。
【0060】
図4の表示例にしたがって、本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置201の動作について説明する。
図4に示すように、本実施形態では、サイドガイド部材摩耗管理装置201は、表示画面90上に、現在までのサイドガイド部材54a,54bの摩耗量の実績値および将来の摩耗量の予測値を表示する。より具体的には、摩耗量予測部214は、摩耗量記録部7のデータベースから、すでに完了したn-1回目およびn回目の圧延スケジュールにおけるサイドガイド部材54a,54bの厚さのデータを抽出し、これらの圧延スケジュールにおける摩耗量を計算し、圧延スケジュールに応じた座標にデータをプロットする。
【0061】
摩耗量予測部214は、n+1回目以降の圧延スケジュールにおける摩耗量を計算する。この例では、摩耗量予測部214は、摩耗量の予測値の計算には、直前の圧延スケジュールにおける摩耗量、被圧延材の運動エネルギーの総量および予測値に対応する圧延スケジュールにおける被圧延材の運動エネルギーの総量を用いて計算する。この例では、n回目までが実測値であり、n+1回目の摩耗量の予測値は、実測値にもとづいて計算される。
【0062】
n+1=(Kn+1/K)・a
ここで、an+1は、n+1回目の圧延スケジュールにおける摩耗量の予測値、aは、n回目の圧延スケジュールにおける摩耗量(実測値)、Kn+1は、n+1回目の圧延スケジュールにおける被圧延材の運動エネルギーの総和、Kは、n回目の圧延スケジュールにおける被圧延材の運動エネルギーの総和である。運動エネルギーの総和は、各被圧延材の運動エネルギーの総和であり、被圧延材の運動エネルギーは、被圧延材の質量および搬送速度を用いて計算される。
【0063】
同様に、n+2回目の圧延スケジュールにおける摩耗量の予測値は、以下のように計算される。
n+2=(Kn+2/Kn+1)・an+1
ここで、an+2は、n+2回目の圧延スケジュールにおける摩耗量の予測値、Kn+2は、n+2回目の圧延スケジュールにおける被圧延材の運動エネルギーの総和である。
【0064】
以降、同様にして、将来の圧延スケジュールにおける摩耗量の予測値が計算される。そして、摩耗量予測部214は、圧延スケジュールごとの摩耗量の予測値を積算することによって、初期値からの摩耗量を計算し、圧延スケジュールに応じた座標にデータをプロットする。
【0065】
摩耗量予測部214は、あらかじめ、摩耗量の予測値に関するしきい値を有している。摩耗量予測部214は、積算された摩耗量の予測値をしきい値と比較する。このしきい値は、第1の実施形態の場合のしきい値と同じであってもよいし、異なる値としてもよい。
【0066】
積算された摩耗量の予測値がしきい値に到達した場合に、摩耗量予測部214は、サイドガイド部材54a,54bの交換時期が近いことを表す警告信号(第2信号)を生成する。警告信号を受信した表示装置9等のデータ出力装置は、警告信号に応じたデータを出力する。
【0067】
上述では、摩耗量の予測値は、直前の圧延スケジュールにおけるデータを用いることとしたが、これに限るものではない。たとえば、摩耗量の予測値を計算するための既存データは、予測値を用いず、実測値のみを用いるようにしてもよい。また、1つの圧延スケジュールにおける予測値を計算するのに、複数回の圧延スケジュール(たとえば、該当する圧延スケジュールの直前のm回までの)摩耗量の計算値の平均値を摩耗量の予測値とする等してもよい。
【0068】
また、上述では、摩耗量の予測値は、その圧延スケジュールにおける運動エネルギーがそれ以前の圧延スケジュールにおける運動エネルギーに正比例するものとして計算することとしたが、これに限らない。たとえば、上式に1より小さい比例定数を乗じたり、1以上の比例定数を乗じたりするようにしてもよい。サイドガイド部材54a,54bの摩耗量は、被圧延材の鋼種や鋼の材質等によっても変化し得るので、これらに応じてた比例定数を乗じて摩耗量の予測値を計算するようにしてもよい。これらの比例定数は、たとえば実際の測定値にもとづいて、予測値を補正するものとして、決定される。
【0069】
本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置201の効果について説明する。
本実施形態のサイドガイド部材摩耗管理装置201は、摩耗量予測部214を備えているので、実測し、すでに計算したサイドガイド部材54a,54bの摩耗量を用いて、将来の摩耗量を予測することができる。将来のサイドガイド部材54a,54bの摩耗量の予測値を得ることによって、どのタイミングでサイドガイド部材54a,54bを交換すべきかをより確からしく決定することができる。
【0070】
本実施形態では、サイドガイド部材54a,54bの交換時期を圧延スケジュール単位で知ることができるので、メンテナンス期間の設定等のプラント全体の運用計画をより精密に立案することが可能になる。
【0071】
以上説明した実施形態によれば、サイドガイド部材の摩耗量を検出し、適切な交換時期を管理することができるサイドガイド部材摩耗管理装置およびサイドガイド部材摩耗管理システムを実現することができる。
【0072】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
1,201 サイドガイド部材摩耗管理装置、2 通信ネットワーク、3 制御用専用ネットワーク、4 コントローラ、5 摩耗センサ、6 摩耗量計算部、7 摩耗量記録部、8 内部信号、9 表示装置、50 サイドガイド設備、52a,52b サイドガイド、54a,54b サイドガイド部材、100,200 サイドガイド部材摩耗管理システム、210 圧延スケジューラ、214 摩耗量予測部
図1
図2
図3
図4