(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075844
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】発酵からケトン及びグリコールを回収する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/26 20060101AFI20220511BHJP
C12P 7/18 20060101ALI20220511BHJP
C12M 1/107 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
C12P7/26
C12P7/18
C12M1/107
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022044014
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2020525890の分割
【原出願日】2018-11-09
(31)【優先権主張番号】62/583,862
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リリアナ・ザネリ・デ・オ・マルティンス・イカリ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンダ・ムニョズ・アンデルリ
(72)【発明者】
【氏名】メリーナ・ジェステイラ・ソウザ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・グアルベルト・サントス・コスタ
(57)【要約】
【課題】発酵プロセスからケトン及びグリコールを得る方法を提供する。
【解決手段】方法は、発酵槽から排ガス及び/又は発酵ブロスを収集する工程であって、排ガスがケトンを含み、発酵ブロスが、グリコール又はケトンのうちの1種又は複数を含む、工程と、排ガスを発酵槽からケトン回復モジュールへ移す工程、又は発酵ブロスを流体分離モジュールへ移す工程の少なくとも一方を実施する工程と、排ガスからのケトン、及び発酵ブロスからのグリコールのうちの1種又は複数を単離する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵プロセスからケトンを得る方法であって、
発酵槽から排ガス及び発酵ブロスを収集する工程であり、排ガス及び発酵ブロスの両方が、ケトンを含む、工程と、
排ガスを発酵槽からケトン回復モジュールへ移し、発酵ブロスを流体分離モジュールへ移す工程を実施する工程と、
排ガス及び発酵ブロスの両方からケトンを単離する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
発酵プロセスからケトンを得る方法であって、
発酵槽から排ガス及び発酵ブロスを収集する工程であり、排ガス及び発酵ブロスの両方が、ケトンを含む、工程と、
排ガスを発酵槽からケトン回復モジュールへ移す工程と、
発酵ブロスを、ケトンを含んだストリームを生じる軽質有機物分離モジュールへ移す工程と、
ケトンを含んだストリームをケトン回復モジュールへ移す工程と、
排ガス及び発酵ブロスの両方からケトンを単離する工程と
を含む、方法。
【請求項3】
発酵プロセスからグリコールを得る方法であって、
発酵槽から発酵ブロスを収集する工程であり、発酵ブロスが、グリコールを含む、工程と、
発酵ブロスを、反応蒸留塔を含む流体分離モジュールへ移す工程と、
発酵ブロスからのグリコールを単離する工程と
を含み、
グリコールを単離する工程が、
反応蒸留塔における発酵ブロス中のグリコールを分離剤と反応させてアセタールを生成させ、反応蒸留塔からの、アセタールを含んだストリームを収集する工程、
アセタールを含んだストリームを蒸留塔へ移し、アセタールを含んだストリームを蒸留する工程と、
蒸留塔からのアセタールを含んだストリームを加水分解塔へ移し、アセタールを加水分解して、戻されたグリコールを生じる工程、
加水分解塔からの、戻されたグリコールを含んだストリームを収集する工程
を更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
微生物発酵により、ポリマー製造用途の、多様な範囲で原料として使用することができる、幾つかの、工業的に関連した化合物がもたらされる。対象となる化合物は、生成物ストリームとして発酵容器を出る、ブロス及び排ガスの成分として生成される。発酵ブロス及び排ガスは、極めて異なる特性を有する、広範囲の成分、例えば、細胞バイオマス、不溶性固体、水、有機物、無機及び有機イオン、並びに不凝縮ガスを含む、複雑な混合物である。加工に関係する時間及びエネルギーコストを最小限にしながら、様々な不純物から生成物化合物を単離する試みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
この要約は、詳細な説明において、以下に更に説明される概念の事例を紹介するために与えられる。この要約は、特許請求の範囲に記載の内容の要所又は本質的な特徴を特定しようというものではなく、特許請求の範囲に記載の内容の範囲を制限する一助として用いようというものでもない。
【0004】
一態様において、本明細書で開示された実施形態は、発酵プロセスからケトン及びグリコールを得る方法であって、発酵槽から排ガス及び/又は発酵ブロスを収集する工程であり、排ガスがケトンを含み、発酵ブロスが、グリコール又はケトンのうちの1種又は複数を含む、工程と、排ガスを発酵槽からケトン回復モジュールへ移す工程、又は発酵ブロスを流体分離モジュールへ移す工程の少なくとも一方を実施する工程と、排ガスからのケトン、及び発酵ブロスからのグリコールのうちの1種又は複数を単離する工程とを含む、方法に関連する。
【0005】
特許請求の範囲に記載の内容の、他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施形態の発酵プロセスのフロー図である。
【
図2】本開示の実施形態の発酵槽排ガスの塔吸収ベース精製(column absorption-based purification)のフロー図である。
【
図3】本開示の実施形態の蒸留法のフロー図である。
【
図4】本開示の実施形態の、発酵ブロスの前処理法のフロー図である。
【
図5】本開示の実施形態の蒸留法のフロー図である。
【
図6】本開示の実施形態の反応蒸留法のフロー図である。
【
図7】本開示の実施形態の反応抽出法のフロー図である。
【
図8】本開示の実施形態の薄膜蒸発法のフロー図である。
【
図9】本開示の実施形態の発酵ブロスの塩除去法のフロー図である。
【
図10】本開示の実施形態の、反応蒸留法を用いた発酵精製法のフロー図である。
【
図11】本開示の実施形態の、反応抽出法を用いた発酵精製法のフロー図である。
【
図12】本開示の実施形態の、薄膜蒸発法を用いた発酵精製法のフロー図である。
【
図13】本開示の実施形態の、蒸留モジュールと併用した前処理モジュールを用いた発酵精製法のフロー図である。
【
図14】本開示の実施形態の、様々なモジュール配置の概要を示すフロー図である。
【
図15】本開示の実施形態の反応蒸留法のフロー図である。
【
図16】本開示の実施形態の反応抽出法のフロー図である。
【
図17】本開示の実施形態の薄膜蒸発法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様において、本明細書で開示された実施形態は、微生物発酵によって製造されるケトン及びグリコールを分離し、精製する方法に関連する。1つ又は複数の実施形態において、本開示の方法を用いて、塩の様々な濃度を有する水性溶液から、ケトン及びグリコール等の有機発酵生成物を回収することができる。
【0008】
生物精製所における発酵プロセスの使用は、プラスチック及び他の精製化学製品の工業生産のための、回収可能な原料を開発するのに用いられる。これらの方法を商業的に妥当な規模まで拡大するには、最適な微生物増殖条件を確立することから、更に、純粋な生物学的に誘導された生成物を、発酵槽から得られる塩及び有機材料の複雑な混合物から単離するまでの、幾つかの試みが存在する。
【0009】
本開示の方法は、発酵によって、発酵槽を出る排ガス及び/又はブロスから単離され、幾つかの商業的に関連した生成物に変換される、回収可能な原料を使用することができる。本開示の生成物には、例えば、ケトン、アルコール、及びグリコールを挙げることができ、それらは、生物工学的方法で利用される代謝経路を用いて製造される。1つ又は複数の実施形態において、発酵プロセスにより、発酵ブロス及び/又は排ガスストリームにおいてグリコール及びケトンを製造することができる。これらの化学品を製造するための、従来の方法と比較して、ストリームの組成は、特に、発酵ブロスにおける、標的生成物の存在、高濃度の水、及び塩の存在のために、特異な性質を有する。結果として、発酵生成物ストリームは、工業的化学品製造に典型的に関連したものとは区別される、不純物及び副生成物を含む。本開示の方法は、精製法における、これらの違いに対処するものである。
【0010】
特に、
図1について、単純な発酵セットアップが示される。培養される、特定の微生物に合わせて選択された媒体を含む原料ストリーム102を、発酵槽104に導入する。例えば、原料ストリーム102は、水、糖、塩、並びに様々な、有機及び無機栄養混合物を含むことができる。有酸素発酵について、空気供給106を発酵槽に導入して、酸素源を提供することができる。発酵が進むにつれて、発酵槽を出る、不凝縮ガス、水、様々なケトン、アルデヒド、及びアルコール、並びに幾つかの微量混入物を含んだ排ガスストリーム108を生じることができる。様々な濃度の、水、グリコール、ケトン、アルコール、塩、カルボン酸、有機物、及び無機物を含む発酵ブロス110を獲得することもできる。
【0011】
本開示の方法は、発酵容器から得られる排ガス及び発酵ブロスの混合物において回収することができる、工業的に関連した化合物、例えば、発酵中に製造されるケトン及びグリコールを分離し、精製する方法を対象とする。回収に続いて、産出ストリームを分離して処理することができる。一部の実施形態において、方法は、幾つかのガス分離技術によって、不凝縮ガス及び他の不純物から揮発性化合物を単離する工程を含む。次いで、揮発性化合物を更に加工して、ケトン等の有機物を、回収し、単離することができる。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、発酵ブロスを発酵槽から流体分離モジュールへ移すことができ、そこで、様々な精製技術により、グリコール、アルコール、及び他の成分等の有益な生成物を単離することができる。一部の実施形態において、発酵ブロスは、流体分離モジュールへ送る前に、殺菌、濾過、塩除去、及び濃縮を含む、幾つかの技術を用いて前処理することができる。発酵ブロスストリームにおける揮発物は、ガス分離モジュールに移され、他の実施形態において、排ガス生成物と組み合わせることができる。
【0013】
本開示の方法は、塩を含む発酵ブロスから成分を分離するように調整された流体分離モジュールの使用を含むことができる。ブロス中の塩の存在は、蒸留及び他の分離技術の使用を複雑にすることがある。というのは、こうした技術が、固体及び他の薄片を生じ得る、並びに/又は腐食及び他の悪影響をもたらし得る、水の除去を使用し得るためである。
【0014】
排ガス分離及びケトン回収
1つ又は複数の実施形態において、本開示の方法及びシステムは、発酵槽から受けた排ガスストリームをその構成成分に分けるための、モジュール又は一連のモジュールを含むことができる。発酵槽から生じた排ガスは、大部分の不凝縮ガス、例えば、O2、N2、及びCO2を含むことができる。CO2は、微生物代謝の副生成物として生じることがあるが、ガスO2及びN2は、しばしば、発酵槽に注入される空気供給からの戻りである。排ガス生成物ストリームが加工されるとき、不凝縮ガスの除去は、生成物ストリームから、他の有益な成分を回収するのに必要とされ得る。一部の実施形態において、排ガスストリームは、その構成要素へ加工され、例えば、不凝縮ガス等の他の成分からケトンを分離し、精製することができる。
【0015】
排ガス分離モジュール
1つ又は複数の実施形態において、本開示の方法及びシステムは、発酵槽排ガス(
図1の108)を加工するために、吸収ベースの、又は凝縮ベースの精製技術を使用することができる。特に、
図2について、本開示の排ガス分離技術は、吸収モジュール200を含むことができる。吸収分離は、発酵槽からの排ガスストリーム202(
図1のストリーム108)を吸収塔204の下部へ移すことによって進めることができ、次いで、排ガスストリーム202を塔の上部に導入された吸収剤206(例えば、水)と接触させる。生成物混合物の分離は、不凝縮ガス208(例えば、CO
2、N
2、及びO
2)として生じるが、それらは、吸収剤に対する親和性が限定的であり、塔を通り抜け、出る。塔204を出る、残留生成物ストリーム210は、水、ケトン、他の対象の化学種、及び少量の不凝縮ガスを含み得る、ガス状原料202からの、可溶性成分を含む。ケトンが低分子量である場合、吸収剤206の多くの好適な候補、例えば、水がある。
【0016】
ケトン回復モジュール
吸収塔から得られた可溶性成分210は、含酸素添加剤、ケトン、アルコール、及び他の含酸素添加剤、微量のグリコール、及び酸を含むことができ、それらは、吸収剤及び微量の不凝縮ガスと共に液体混合物中にあると考えられる。例えば、蒸留、蒸発、液体-液体抽出、浸透気化等を含む、可溶性成分210の希釈溶液からケトンを回収することができる、様々な方法がある。1つ又は複数の実施形態において、可溶性成分210は、
図3について、以下に説明するように蒸留塔に送ることができる。
【0017】
特に、
図3について、ケトン回復モジュール300の一実施形態を示す。この例において、溶媒、ケトン、アルコール、水、酸、並びに微量のグリコール及び不凝縮ガスの混合物を含むことができる、排ガス分離モジュールからくる液体ストリーム302(例えば、
図2のストリーム210)は、蒸留塔304に供給され、非揮発性(多くの場合、水性)成分が下部ストリーム312として出る。下部ストリーム312は、様々な濃度の、水、アルコール、ケトン、及び他の含酸素添加剤、酸、並びに/又はグリコールの混合物を含むことができる。蒸留塔304からの塔頂ストリーム305は、例えば、熱交換器306を用いて、塔を出た後すぐに冷却することができる。一部の実施形態において、凝縮器306の後、還流槽308が続いて、ストリーム316のケトン及び他の揮発性成分から、不凝縮ガス314(例えば、二酸化炭素、窒素、及び酸素)を分離することができる。流れ316の非揮発性成分の一部は、追加的な還流のために、蒸留塔304の塔頂に戻すことができる。一部の実施形態において、1つ又は複数の実施形態において、ケトン316はまた、低温殺菌領域の下で、塔304からの側流において回収することもできる。
【0018】
溶媒(例えば、水)、酸、及びグリコールを含むことができる、ケトン回収塔304の下部312は、廃水処理に送ることができ、又は溶媒から混入物を除去するよう処理することができ、一部の実施形態において、吸収塔304に再循環させることができる。処理は、蒸留、蒸発、吸収、液体-液体抽出、又は当分野の技術水準で既知の、他の単位操作によって行うことができる。塔頂ストリーム305からの不凝縮ガス314は、場合により、
図2について説明されたように、一部の実施形態において、ケトンの残留損失を回収するために、吸収モジュールに循環させることができる。したがって、1つ又は複数の実施形態において、排ガス成分を加工するのに用いられる技術は、
図3の306で説明されたように、部分凝縮と連結した蒸留を含むことができる。
【0019】
流体分離及びグリコール回収
1つ又は複数の実施形態において、本開示の方法及びシステムは、発酵槽から得られる流体ストリームをその様々な構成成分に分ける、1種又は複数の流体分離モジュールを含むことができる。一部の実施形態において、流体分離モジュールを用いて、発酵プロセスから、ケトン、グリコール、及び他の工業的に関連した化合物を単離することができる。
【0020】
流体分離モジュール
本開示の方法及びシステムは、発酵槽から得られる発酵ブロスストリームをその様々な構成成分に分離する、1種又は複数の流体分離モジュールを含むことができる。発酵ブロスは、原料を生成するのに用いる、他の工業プロセスと対比させるとき、特異な、幾つかの特徴及び成分を有する。水及び対象の化合物に加えて、発酵ブロスストリームは、固体、塩、鉱物、カルボン酸、フェノール化合物、タンパク質、及び未変換糖(unconverted sugar)を含むことができる。固体の例には、沈殿糖、例えば、アラビノース、マンノース、グルコース及びそのオリゴマー、キシロース及びそのオリゴマー、並びに他のもの;様々な有機物、例えば、コハク酸及び沈殿リグニン;並びに生きている、及び死んでいる、バクテリア、酵母菌、及び他の微生物を含むバイオマスが挙げられる。
【0021】
発酵ブロスにおいて、塩は、しばしば、微生物の好ましい条件をつくるのに用いられ、著しく濃縮されて、下流プロセスに存在することが多い。塩沈殿は、特に、不溶性塩の形成によって、又は水の蒸発によって問題となり得る。沈殿した塩は、伝熱表面汚損の他に、流れの問題を生じることがあり、対処する時間及び経済的な出費をもたらし得る。しかし、1つ又は複数の、他の実施形態において、こうした塩除去を必要とせず、グリコールが、塩含有発酵ブロスから回収されることが想定される。こうした場合において、塩沈殿を避けるために、ブロスの水濃度が、塩の溶解限度を超えて維持されるように注意するべきである。更に、発酵ストリームに接触する材料は、産生ストリームにおける塩の種類を考慮して選択されるべきである。例えば、塩化物等の、一部の塩は、その高い腐食可能性が知られており、これらの塩を含んだ生成物ストリームを扱う機器は耐腐食性であるべきである。
【0022】
蒸留、反応蒸留(RD)、反応抽出(RE)、薄膜蒸発(TFE)、短経路蒸発(SPE)、連続クロマトグラフィー、及びバッチクロマトグラフィーを含むことができる、幾つかの技術によって操作することができる、1種又は複数の流体分離モジュールを用いた、本開示の方法を使用して、様々な塩濃度を含む生成物ストリームから、対象の生成物を取り出すことができる。更に、1つ又は複数の実施形態において、高濃度の塩を含む発酵ブロスから成分を分離する方法は、発酵ブロスからの、対象の生成物、例えば、ケトン及びグリコールの分離を促進する分離剤の使用を含むことができる。幾つかの可能な技術が、以下に順に説明される。
【0023】
蒸留系
水性溶液からグリコールを回収する方法は、1種又は複数の蒸留塔による蒸留を含むことができる。塩がブロス中に存在する場合、プロセス機器における、化学的な、又は水蒸発の結果としての、塩の沈殿は、方法における、流れの問題、表面汚損を引き起こすことがあり、しばしば、これらの問題に対処するための休止時間に至る。塩は、微生物の好ましい発酵条件をつくるのに必要とされ、しばしば、無視できない濃度で、下流プロセスに存在する。
【0024】
1つ又は複数の実施形態において、蒸留系を用いて、グリコール及び他の標的化合物を精製することができ、続いて、以下に説明される、塩除去モジュール又は他の前処理モジュールを用いて、塩濃度が取り除かれ、又は低減される。一部の実施形態において、塩除去モジュールを出る生成物ストリームは、2個以上の蒸留塔を含む蒸留系を用いて分離されて、有機物、例えば、グリコールを回収することができる。特に、
図5について、蒸留モジュール500における蒸留塔の試料配置が示される。生成物ストリーム502(例えば、水、より軽質な有機物、グリコール、及びより重質な有機物を含むことができる)が、第1蒸留塔504に入るとき、水及びより軽質な有機物が、塔頂ストリーム506として取り除くことができる。下部ストリーム508は、化合物、例えば、グリコール及び他の重質物を含み、連続した第2蒸留塔510に移される。グリコール及び他の化合物は、塔頂ストリーム512として第2塔510を出るが、重質物は、下部ストリーム514として出る。
【0025】
反応蒸留
反応蒸留は、化学反応及び蒸留が単一の機器で行われる、プロセス強化技術である。1つ又は複数の実施形態において、流体分離モジュールは、ポリオールと反応して対応するアセタールを生成する、カルボニル種(例えば、アルデヒド又はケトン)を含む分散剤と、ポリオールを反応させることによって、発酵ブロスからポリオール、例えば、グリコールを分離する、反応蒸留の使用を含むことができる。本開示のアセタールは、ケトン又はアルデヒドそれぞれを含むカルボニル種とアルコールとの反応から調製された、ケタール又はアセタールを含み、歴史的にケタール及びアセタールと称される化合物を含む。更に、本開示のアセタールは、環状アセタール、例えば、ジオキソラン及びジオキサンを含む。アセタール種、例えば、ジオキソランは、しばしば、対応するポリオールよりもより揮発性であり、水素結合能が低減されて、反応蒸留塔において、アセタールが溶液から分離することを可能にする。本明細書における「アセタール」は、生成物ストリームに存在する、複数のカルボニル種から生じる、アセタールの不均一混合物を示し、ケトンとアルデヒドとの両方から生じるアセタールを含むことも想定される。
【0026】
特に、
図6について、反応蒸留塔を組み込んだ流体分離モジュール600の一実施形態が示される。実施形態において、ブロスストリーム602(清澄化され、場合により濃縮された)は、反応蒸留塔604に移されるが、分離剤606(例えば、カルボニル種)は、他の位置で、塔604に供給される。1つ又は複数の実施形態において、ブロスストリーム602に存在するグリコールは、塔604において、分散剤606と反応し、触媒の存在下で分離剤と反応することによって、グリコールを対応するアセタール形態に変態させる。グリコールとカルボニル種との反応の場合、環状アセタールが生成される。例えば、モノエチレングリコールは、ホルムアルデヒドと反応して、1,3-ジオキソラン及び水を生成するが、モノエチレングリコールは、アセトンと反応して、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランをもたらす。グリコールのアセタール形態は、水よりもより揮発性であり、しばしば、ある程度の濃度の残留カルボニル種と共に、塔頂ストリーム608として蒸留することができる。一部の実施形態において、アセタールへの変換は、触媒の存在下で生じることができる。触媒は、鉱物酸、例えば、塩酸、又はイオン交換樹脂を含むことができる。アセタール生成反応は、平衡反応であり、一部の実施形態において、化学量論的過剰のカルボニル種を用いて、より高い変換率の反応を誘導することができる。
【0027】
1つ又は複数の実施形態において、水の一部は、アセタールと水との、最低沸点共沸混合物を生成するために、塔頂608として得られたアセタールと共に反応蒸留塔604を出ることができる。しかし、水の大部分は、塔604の下部に残り、残留ブロスにおいて、塩の溶解度を最大にし、下部ストリーム610として塔を出ることができる。反応蒸留塔の塔頂608は、第2蒸留塔612へ通され、そこで、未反応の分離剤(すなわち、カルボニル種、例えば、アルデヒド又はケトン)は、塔頂ストリーム614として回収され、第1塔604へ再利用される。
【0028】
第2塔612からの下部616は、第3蒸留塔618(加水分解塔)へ送られ、そこで、水620を添加してアセタールを加水分解し、対応するグリコールを得る。加水分解塔618の下部ストリーム624は、水/グリコール混合物であり、これは、最終的に、最終蒸留塔626へ送られて、塔頂ストリーム628として水を取り出す一方で、グリコールが630で得られる。1つ又は複数の実施形態において、発酵ブロスから、発酵の副生成物として得られるケトン又はアルデヒドは、反応蒸留に用いる分離剤606として用いることができる。
【0029】
一部の実施形態において、流れストリーム630は、最終蒸留塔に送ることができ、そこで、重質化合物が、下部ストリームで取り出される一方で、精製グリコールが塔頂ストリームとして得られる。一部の実施形態において、精製グリコールを収集し、熱交換器で冷却した後、保管することができる。この例において、グリコールは、代表的なポリオールとして示されるが、方法は、2個以上の、有効なアルコール基及び/又は2個以上の炭素原子を含む、他のポリオール種、例えば、1,3プロピレングリコールを獲得するように適応できることが想定される。
【0030】
反応抽出
1つ又は複数の実施形態において、化学反応及び溶媒抽出を、単一の、組み合わせた方法で行い、グリコール及び他の有機物を分離する、反応抽出は、プロセス強化技術として使用することができる。前述された反応蒸留と同様に、反応抽出は、グリコールを分離剤と反応させて、対応するアセタール又は環状アセタールを生成することにより、グリコールの溶解度及び揮発度を改質することによって行われる。更に、前処理モジュールが用いられる場合、溶媒は、水性発酵清澄化ブロスストリームから疎水性及び無極性種を抽出する、反応蒸留塔へ導入される。反応抽出は、有機溶媒相の変換グリコール(例えば、ジオキソラン)の親和性の変化を利用し、分離を促進する。次いで、変換グリコールの加水分解により、グリコール生成物下流を再び生じる。
【0031】
特に、
図7について、反応抽出モジュール700が示される。発酵ブロスストリーム702(一部の実施形態において、清澄化され、及び/又は濃縮された)は、反応抽出塔704へ移される。次いで、反応抽出は、分離剤706、例えば、アルデヒド又はケトンを用いてアセタールに変換することによって開始し、反応抽出塔704においてブロス702と合わせる。その後、
図6について説明したように、水性混合物からアセタールを蒸留する代わりに、ジオキソランは、溶媒708を用いて抽出され、反応物、アセタール、溶媒、及びごく少量の水を含んだストリーム710として、塔704から移される。
【0032】
次いで、アセタールを含んだ、溶媒に富んだ相710は、取り出され、蒸留塔712に送られて、ストリーム714として溶媒を回収する。塔712において、アセタールは、塔頂ストリーム716として回収され、下部714で取り出された溶媒は、反応抽出塔704にリサイクルされる。アセタール流は、加水分解塔と称される反応蒸留塔720に送られ、そこで、水718を添加してアセタールをグリコールに戻し、グリコールは、水との混合物である下部ストリーム722として出る。塔頂ストリーム724は、戻された(reverted)分離剤、例えば、アルデヒド又はケトンを主に含み、反応抽出塔704にリサイクルすることができる。この加水分解塔の下部722は、再び、水及びグリコールの混合物であり、これは、最終的に、最終蒸留塔726に送られ、水を含んだ塔頂ストリーム728及びグリコールを含んだ下部ストリーム730を生じる。1つ又は複数の実施形態において、流れストリーム730は、最終蒸留塔に送ることができ、そこで重質化合物が下部ストリームにおいて取り出される一方で、グリコールは、塔頂ストリームにおいて得られる。一部の実施形態において、精製グリコールを収集し、熱交換器で冷却した後、保管することができる。説明された構成の、一つの利点は、方法において、発酵の副生成物として既に存在するケトンを、反応抽出のための分離剤706として使用できることである。
【0033】
有機相におけるアセタールの回収を促進するために、溶媒を選択することができる。1つ又は複数の実施形態において、有機溶媒は、トルエン、エチルベンゼン、o-キシレン等を含むことができる。一部の実施形態において、反応抽出塔704からの水性相731は、水、塩、糖、分離剤、アセタール、及び溶媒を含むことができる。反応抽出塔704を出た後、水性相731は、デカンター736を備えた蒸留塔732へ移すことができる。分離剤、アセタール、及び溶媒は、デカンター736の有機相において、ストリーム738として回収され、一部の実施形態において、溶媒回収塔712へ再利用され得る。この構成の、一つの利点は、方法において、発酵の副生成物として既に存在するケトンを、反応抽出のための分離剤706として使用できることである。例えば、反応抽出塔704からの下部731は、溶媒、反応物を回収し、残留水を取り除くために、蒸留塔732へ送ることができる。例えば、下部731は、塔頂ストリーム733に分けることができ、塔頂ストリーム733は、熱交換器734を用いて冷却され、デカンター736へ通して、塔頂ストリーム733を、有機物、例えば、アルデヒド、ケトン、アセタール、及び溶媒を含む分画738、並びに水分画740に分離することができる。下部として、塔732を出る、水及び他の重質物は、ストリーム742として回収することができる。
【0034】
蒸発モジュール
1つ又は複数の実施形態において、流体分離モジュールは、1種又は複数の、薄膜蒸発器及び/又は短経路蒸発器を組み込んで、塩及びより重質な成分、例えば、糖を分離しながら、有機物及び水を回収することができる。一部の実施形態において、発酵清澄化ブロスストリームは、濃縮モジュールで濃縮され、第1段階蒸発器へ移されて、グリコール及び水に富んだストリームを回収することができる。より低い圧力で作動している、第2段階蒸発器も、系に加えられ、第1蒸発器の液体からグリコールを回収するのに役立つことができる。この場合、第2蒸発器からの蒸発させた流れは、凝縮され、第1蒸発器にポンプで送り込まれ、ここで、より高い塩濃度を有する液体が、系から一掃される。
【0035】
薄膜蒸発器は、発酵ブロスからの塩が、加熱した表面に粘着することを防ぐ。この技術は、幾つかの利点、例えば、短い滞留時間、乱流による高い伝熱係数、高い固体濃度及び粘性材料を扱う能力、並びにより少ない生成物分解も有し、より高い収率をもたらす。構成的に、薄膜蒸発器は、加熱ジャケットを備えた密閉容器から形成される。供給は、機械的ワイパーの補助の有無に関わらず、重力により蒸発器壁を下へ流れ、蒸発している表面を覆う薄膜を形成し、下部の出口へ重質物を誘導する。加熱及び適用された真空のために、揮発性成分は、蒸発し、次いで、外部の凝縮器で液化する。蒸発しない成分は、ポンプで出されるか、又は廃棄される。
【0036】
一部の実施形態において、短経路蒸発器を、グリコール回収に用いることができる。分子蒸留器としても既知である、短経路蒸発器(SPE)は、装置内に同軸に固定された凝縮器を備えることを除いて、薄膜蒸発器と極めて類似している。SPEは、一般に、2個の同心円筒体で構成され、一方は、蒸発表面として作用し、他方は、凝縮表面として作用する。濃縮された/蒸留された液体材料の供給は、加熱された壁を通って落ち、部分的に蒸発する。蒸気が生じるとき、低温の壁に直面し、凝縮する。
【0037】
一部の実施形態において、分離剤、例えば、塩添加溶剤は、ブロス媒体に導入されて、例えば、薄膜蒸発及び短経路蒸発の間、液相の塩を維持する一方で、より軽質な有機物、例えば、ケトン及びグリコールは、薄膜蒸発器によって蒸発し、収集される。本開示の添加溶剤は、通常、標的のケトン又はグリコールの化合物よりもより高い分子量の粘性生成物である。化学品の粘性特性のために、原料糖又はグリセロールは、液相において、塩を維持する塩添加溶剤として使用することができる一方で、揮発性成分及び水は溶液から蒸発する。1つ又は複数の実施形態において、塩添加溶剤(この例において、例えば、グリセロール)は、塩が、液相で保たれ、蒸発器の下部に混入されるように、過剰の濃度で発酵清澄化ブロスに添加することができる。
【0038】
特に、
図8について、薄膜蒸発器の仕組みを使用する流体分離モジュールの一実施形態が示される。発酵ブロス802(一部の実施形態において、清澄化され、場合により濃縮された)を、ストリーム810からの塩添加溶剤と合わせ、薄膜蒸発器812へ移して、グリコール、軽質成分、及び水を蒸発させることができる一方で、塩は、分離剤によって混入され、他の成分、例えば、塩及び糖を伴って、836の蒸発器の下部出口へ運ばれる。分離剤/添加溶剤はまた、塩が蒸発器の壁に粘着することを防ぎ、蒸発させたストリームにおけるグリコール回復を促進する。
【0039】
分離剤/添加溶剤が、依然として相当な量のグリコールを含む場合、より低い圧力で作動する第2蒸発器838を加えて、第1蒸発器からストリーム836としてくる液体からグリコールを回収することができる。この場合、塩添加溶剤に富んでいるが、グリコールも含む、第2蒸発器838からの蒸発させた流れ842は、凝縮器840を通り、第1蒸発器812へポンプで戻される。任意の、非再利用の分離剤は、ストリーム844である、第2薄膜蒸発器の下部として出る。一部の実施形態において、ストリーム844は、しばしば、塩添加溶剤及び塩に富んでおり、廃棄物ストリームと考えられる。高濃度の糖及び/又はグリセロールを含んだ発酵ブロスにおいて、ストリーム842へ添加溶剤をリサイクルするのに必要とされる、組成810の量は、ごく僅かであり得る。
【0040】
上記の実施形態のいずれかにおける、第1蒸発器812からの蒸留生成物814は、グリコール、軽質有機物、塩添加溶剤、及び水を多く含むことができ、部分凝縮器816へ送られ、そこで、グリコールが、ストリーム820として凝縮される一方で、水、軽質有機物、及び一部のグリコールは、塔頂ストリーム818として出る。次いで、グリコール、塩添加溶剤、軽質有機物、及び水を含んだストリーム820は、塔822及び830を含む蒸留系へ移されて、精製グリコールを生成することができる。例えば、ストリーム820は、水及び軽質有機物を含んだ塔頂824、及びグリコール、重質有機物、及び塩添加溶剤を含んだ下部ストリーム826に分離される塔822へ移される。次いで、ストリーム826は、塔830でポリッシュされて、グリコール生成物ストリーム832を生じ、重質物及び添加溶剤の分画834を分離する。代替的な構成において、第1蒸発器812からくる蒸留物は、凝縮器816で完全に凝縮され、その後、蒸留系、例えば、塔822及び830へ直接送られる。ここで、第1蒸留塔822は、頂上生成物824で水を取り出し、その下部生成物826は、第2塔830に送られ、そこで、グリコールが、塔頂832で回収され、重質物を含む下部834は、プロセスから一掃される。
【0041】
示された例は、添加溶剤を含むが、薄膜蒸発を組み込んだ流体分離モジュールは、分離剤なしで、すなわち、加える糖、及び発酵槽を出る糖の濃度を変えることによって、内在性の分離剤、例えば、糖を使用することによって、実施することができることも想定される。
【0042】
クロマトグラフィーモジュール
本開示の流体分離モジュールは、1種又は複数のクロマトグラフィーモジュールを含むことができる。本開示のクロマトグラフィー方法は、2相システムを通る移動速度の違いに基づいた、混合物の溶質の分離を含むことができる。クロマトグラフィーは、混合物の成分を特定する分析技術として使用され得るが、連続した大きな規模で、様々な合成の生成物を分離し、且つ精製するのに使用することができる。
【0043】
バッチクロマトグラフィーにおいて、供給混合物のパルスは、吸収剤を充填したカラムに注入され、溶媒の連続的な流れが、連続してカラムを通る。様々な溶質に対する、吸収剤の親和性の違いのために、流れは、異なる速度で、カラムを通って移動し、したがって分離される。しかし、バッチ操作は、しばしば非効率であり、大量の溶媒を必要とし、分離全体を通して、カラムを非効率に使用するゆえに、連続クロマトグラフィーシステムが、より効率的な操作をもたらして、より高い生産性を得るために、開発されてきた。
【0044】
1つ又は複数の実施形態において、クロマトグラフィーモジュールは、連続クロマトグラフィーを実施するように構成することができる。クロマトグラフィー生成物の大規模生産は、バッチユニットよりも、より高い効率性及びより少ない溶媒消費量をもたらす、連続的、且つ自律型のシステムを必要とすることがある。疑似移動床は、幾つかの分野で使用される、確立された連続クロマトグラフィー技術である。幾つかの他の連続システム、例えば、真の移動床(True Moving Bed)(TMB)、疑似移動床(SMB)、疑似SMB、断続的SMB、超臨界SMB、勾配SMB、POWERFEED(商標)、MODICON(商標)、可変外部ストリームシステム(variable external streams system)、VARICOL(商標)、マルチフィード(Multi-Feed)等も開発されてきた。
【0045】
1つ又は複数の実施形態において、発酵ブロスは、塩除去モジュールによって加工され、クロマトグラフィーモジュールに通して、精製グリコールを含んだ、少なくとも1つの分画及び他の発酵副生成物を含んだ、少なくとも1つの分画を生じることができる。一部の実施形態において、クロマトグラフィーモジュールの操作は、バッチ式で、又は連続法によって実施することができる。
【0046】
塩除去モジュール
本開示の流体分離モジュールは、塩及び他のイオン種を除去するための塩除去モジュールによる逐次的処理によって、グリコール及び他の対象の化学種を得て、続いて、標的化合物を濃厚にするために蒸留系で処理する、発酵ブロスを加工する工程を含むことができる。
【0047】
本開示の塩除去モジュールは、幾つかの技術、例えば、濾過、沈殿、イオン交換、及び電気透析を含むことができる。塩除去前処理モジュールは、ブロスの特徴に応じて、分離して、又は組み合わせて利用することができる。本明細書において、「塩除去」は、液体ストリームから塩濃度を完全に除去すること、又は塩濃度の一部を除去することを含むことができる。
【0048】
1つ又は複数の実施形態において、グリコール及び他の対象の化学種は、塩除去モジュールを用いて塩を除去し、続いて、流体分離モジュールを用いてグリコールを分離することによって、発酵清澄化ブロスから精製することができる。一部の実施形態において、方法は、前処理モジュールを用いて、塩の少なくとも一部を除去することによって、グリコール及び他の対象の化学種を精製する工程を含むことができる。
【0049】
濾過
濾過技術、例えば、ナノ濾過を用いて、溶解した塩を除去することができる。ナノ濾過は、相当な効率で、液体ストリームから多価イオンを分離することができる。
【0050】
1つ又は複数の実施形態において、塩除去方法を用いて、発酵ブロスから塩を除去することができる。特に、
図9について、一連の技術を組み込んだ塩除去モジュールが示される。発酵清澄化ブロスストリーム902は、ナノ濾過(NF)904を通り、NF保持物906を生じる。NF保持物が取り出されると、ストリームは、荷電種をとらえ、低減された塩のストリーム910を生じる、イオン交換部分908へ移される。
【0051】
沈殿モジュール
塩濃度を減らすのに用いることができる、他の技術は、沈殿、続いて固体分離工程を含む。沈殿は、化学沈殿又は蒸発沈殿(例えば、結晶化)を示すことができる。化学沈殿において、プロセスに対して異質な化合物が導入されると、溶解度を変え、塩を沈殿させる。蒸発沈殿又は結晶化において、溶媒は、塩の溶解度限度を超えて除去され、塩の一部を結晶化させ、沈殿させる。次いで、沈殿した塩は、デカンテーション、遠心分離、濾過、又は固体分離の、他の既知の形態を含む、幾つかの技術によって除去することができる。
【0052】
イオン交換
1つ又は複数の実施形態において、塩除去方法は、流体が流体分離モジュールを通る前に、イオン交換を用いて、発酵清澄化ブロスストリームから塩の一部を除去する工程を含む。イオン交換技術において、発酵清澄化ブロスは、1種又は複数のイオン交換ユニットを通り、そこで、反対の電荷のイオンが引き寄せられ、イオン交換樹脂に保持される。除去されたイオンは、他のイオンで置き換わる。樹脂は、カチオン性、アニオン性、又は混合荷電のいずれかであってもよい。イオン交換器は、連続して使用することができ、カチオン及びアニオン交換器部分を含むことができる。場合により、系の間の清澄化溶液を濃縮するための蒸発工程と共に、発酵ブロスの特性に応じて、複数のイオン交換ユニットを使用することができる。ストリームからイオンを引き寄せた後、樹脂は、段階的に飽和し、イオン交換ユニットは、ユニットの電荷に適切な、酸及び塩基を含む化学品を用いて再生される必要があり、廃液を生じる。特定の一実施形態において、イオン交換モジュールは、ナノ濾過ユニットによって先行されてもよい。この技術は、非一価イオンを部分的に除去するのに有効であり、イオン交換モジュールに課されるイオン電荷を軽減することができる。
【0053】
電気透析
1つ又は複数の実施形態において、塩除去は、1種又は複数の電気透析セルを含むことができる。電気透析は、イオンが、電気的に誘導されたイオン交換膜を介して輸送される、技術である。電気透析膜は、カチオン又はアニオン選択性のいずれであってもよく、同じ荷電種のみを通過させ、反対の電荷は拒絶することができる。電気透析セルスタックにおいて、選択性を変える、複数の膜を配置して、イオンの保持を最大にする。電気透析はまた、再生工程を必要としない点で有用である。特定の一実施形態において、電気透析モジュールは、ナノ濾過ユニットによって先行されてもよい。この技術は、非一価イオンを部分的に除去するのに有効であり、電気透析モジュールに課されるイオン電荷を軽減することができる。
【0054】
塩処理モジュールによる塩の除去に続いて、グリコール及び他の対象の化学種は、例えば、
図5及び添付の文について説明されたように、蒸留塔又は蒸留系を用いて単離することができる。
【0055】
本開示の塩除去は、一部の実施形態において、ナノ濾過、続いてイオン交換、又は他の実施形態において、沈殿及び/若しくはナノ濾過、続いてイオン交換を含むこともできる。更に他の実施形態において、沈殿及び/又はナノ濾過、続いて電気透析を実施することができる。他の実施形態において、塩除去は、沈殿及び/又はナノ濾過、続いてイオン交換及び/又は電気透析によって行うことができる。更に、前述された、全ての非限定的な実施形態において、水除去工程は、蒸発又は膜分離(逆浸透)等のモジュール間で実施することができる。幾つかの例が明確に示されているが、前述した技術のモジュール特性により、本開示の範囲を逸脱することなく、流体分離モジュールの、使用前に、及び/又は使用後に実施される、前処理モジュール及び塩除去の任意の組み合わせが可能になることが想定される。
【0056】
発酵ブロスの前処理加工
1つ又は複数の実施形態において、発酵ブロスは、流体分離モジュールで加工する前に、幾つかの前処理を受けねばならない。本開示の前処理方法は、発酵ブロスの、固体及び塩の含有量を減らす工程を含むことができる。
【0057】
前処理モジュール
1つ又は複数の実施形態において、発酵槽からの下部ストリームからの発酵ブロス(すなわち、
図1の発酵槽104からのブロス110)は、流体分離モジュールの下流加工でグリコール及び他の成分を精製する前に、前処理される。一部の実施形態において、前処理モジュールは、流体分離モジュールの前に並べて配置することができる。前処理モジュール及び流体分離モジュールで加工した後、生じた生成物ストリームを、1種又は複数の蒸留塔又は同様の分離技術に送って、精製グリコール及び他の対象の化学種を単離することができる。
【0058】
一部の実施形態において、発酵ブロスの前処理は、固体、バイオマス、及び有機物を除去するための殺菌及び/又は清澄化を含むことができる。例えば、発酵ブロスは、固体、塩、鉱物、カルボン酸、アルデヒド、フェノール化合物、フラン、ケトン、グリコール、アルコール、タンパク質、及び未変換糖を含むことがある。固体の例には、沈殿糖(アラビノース、マンノース、グルコース及びそのオリゴマー、キシロース及びそのオリゴマー等)、コハク酸、沈殿リグニン、並びにバイオマス(バクテリア又は酵母菌細胞)が挙げられる。したがって、発酵ブロスの前処理は、細胞及び他の沈殿固体だけを除去する遠心分離、又は引き続いて、未変換糖、大分子、及び細胞残屑を除去するための、精密濾過、限外濾過、及びナノ濾過を含む、1種又は複数の濾過技術を含むことができる。1つ又は複数の実施形態において、清澄化は、遠心分離なしで、1種又は複数の濾過技術を用いて行うことができる。
【0059】
1つ又は複数の実施形態において、清澄化技術、例えば、遠心分離から得られた細胞及び他の固体は、洗浄されて、細胞水分に含まれたグリコールを回収することができる。他の実施形態において、遠心分離に続いて、未変換糖、細胞残屑、及び他の可溶化大分子を除去するための、精密濾過及び/又は限外濾過及び/又はナノ濾過が行われる。一部の実施形態において、清澄化は、精密濾過によって、続いて限外濾過及び/又はナノ濾過によって行われる。
【0060】
以下で用いられる、用語「発酵清澄化ブロス」は、その細胞及び他の固体が、部分的に、又は完全に除去された発酵生成物を意味する。
【0061】
特に、
図4について、一連の前処理技術を組み込んだ前処理モジュールが示される。発酵ブロス402が発酵槽を出るとき、ブロスは、404で遠心分離されて、固体及びバイオマス406を除去する。液体分画は、さらなる清澄化のために、精密濾過408に続き、限外濾過(UF)410を通る前に、追加の固体及びバイオマス407を除去し、ナノ濾過(NF)414を通る前にUF保持物412を生じ、NF保持物(416)及び発酵清澄化ブロス415を生じる。
【0062】
軽質有機物分離モジュール
1つ又は複数の実施形態において、本開示の方法及びシステムは、発酵清澄化ブロスに存在し得る、残留したケトン及び軽質有機物を回収するための、ケトン及び軽質有機物分離モジュールを含むことができる。発酵清澄化ブロスからケトン及び軽質有機物を分離する方法は、1種又は複数の蒸留塔による蒸留、及び/又は蒸発器系における蒸発を含むことができる。
【0063】
1つ又は複数の実施形態において、1種又は複数の蒸留塔を用いて、発酵清澄化ブロスから、ケトン及び他のより軽質な化合物を分離し、続いて、上記の前処理モジュールを用いて固体及び細胞を除去することができる。一部の実施形態において、前処理モジュールを出る生成物ストリームは、1種又は複数の蒸留塔を含む蒸留系を用いて分離されて、ケトン及び軽質有機物、例えば、アルデヒド及びアルコールを回収することができる。一例として、特に、
図10について、発酵ブロスは、ストリーム1005として発酵槽1002を出、次いで、前処理モジュール400を用いて前処理することができ、ストリーム1005から細胞、固体、並びに固体及び塩の一部を除去することができ、次いで、蒸留塔1018へ移される。蒸留塔1018は、揮発物、例えば、溶解不凝縮ガス、水、ケトン、及び他の有機物を取り出すことができ、揮発物は、ストリーム1016として経由し、ストリーム1010と合流し、蒸留モジュール300に入り、適切に加工することができる。
【0064】
濃縮モジュール
1つ又は複数の実施形態において、濃縮モジュールは、発酵清澄化ブロスの有機物及び他の化合物を濃縮する第1蒸留塔を備え得る、蒸留系を含むことができる。濃縮ブロスから除去された水の分画は、塔からの塔頂ストリームとして出ることができる一方で、残留濃縮ストリームの塩の濃度は、依然として飽和点よりも低く、可能性のある塩沈殿を最小限にし、又は取り除く。
【0065】
濃縮工程は、蒸留塔に限定されず、熱蒸気再圧縮、機械式蒸気再圧縮蒸発器、又は多重効用と熱蒸気再圧縮との組み合わせ、又は機械式蒸気再圧縮を含む、多重効用塔又は多重効用蒸発器等の、他の種の技術を使用することができる。
【0066】
発酵ブロスからの生成物の追加の処理加工
本開示の方法は、流体分離モジュールから、更に流体分離モジュール内で説明された工程の間から得られる生成物含有ストリームをポリッシュするために、色素及び臭気除去モジュールの使用を含むことができる。一部の実施形態において、色素及び臭気除去モジュールは、流体分離モジュール内で、グリコール及び他の生成物の最終段階の分離の前に、例えば、生成物含有ストリームが蒸留塔又は蒸留系を通る前に、並べて配置することができる。
【0067】
色素及び臭気除去モジュール
1つ又は複数の実施形態において、本開示の方法は、対象の生成物を含んだストリームをポリッシュするために、色素及び臭気除去モジュールを組み込むことができる。例えば、生成物ストリームが、下流分離プロセスで加熱されるとき、化合物、例えば、残留糖、アルデヒド、ケトン、フェノール化合物、フラン誘導体等は、生成物の品質に悪影響を及ぼし得る着色をもたらすことがある。
【0068】
1つ又は複数の実施形態において、1種又は複数の、色素及び臭気除去モジュールを、本開示のプロセスに加えることができる。本開示の色素及びUV吸収不純物の除去は、遠心分離及び/又は濾過による発酵ブロスの前処理の後、流体分離プロセスの単位操作の前、後、若しくは間、又はその組み合わせを含む、標的化合物、例えば、ケトン及びグリコールを得るための精製法の任意の時点で行うことができる。例えば、活性炭床及び/又は水素化反応器及び/又は紫外線(UV)処理等の、色素及び臭気除去モジュールの使用を、蒸留、反応蒸留(RD)、反応抽出(RE)、薄膜蒸発(TFE)、短経路蒸発(SPE)、連続クロマトグラフィー、及びバッチクロマトグラフィーを含む、流体分離モジュールの前、又は後に配置することができる。
【0069】
一部の実施形態において、色素及び臭気除去モジュールは、1種又は複数の技術、例えば、ストリームを活性炭床、水素化触媒反応器に接触させること、又はストリームをUV放射に暴露させることを用いて、発酵清澄化ブロスストリームを処理する工程を含むことができる。一部の実施形態において、活性炭床は、色素の原因となる、有機物及び他の化合物を吸着することができる一方で、水素化触媒反応器において、水素のストリームを用いて、色素前駆体、例えば、不飽和有機物及び他の色素前駆体を水素化する。一部の実施形態において、水素化触媒反応器及びUV放射による処理は、最終蒸留の前に配置されて、生成され得る化合物を分離する。
【0070】
適用:集積ガス及び流体分離
この部分において、発酵プロセスから得られるガス及び流体を分離する、方法及びシステムの実施形態が提供される。
【実施例0071】
反応蒸留
第1の実施例において、反応蒸留を用いた、本開示の方法を用いて、微生物発酵からケトン及びグリコールを単離する。特に、
図10について、発酵槽1002は、
図2及び添付の文で説明された、吸収モジュール200へ移される排ガスストリーム1004を生じ、吸収モジュール200は、注入水1006を用いて、ストリーム1010としてモジュールを出る、ケトン及び対象の化合物を吸収する一方で、不凝縮ガス1008(CO
2、N
2、及びO
2を含む)が塔を出るのを可能にする。次いで、ストリーム1010を、
図3及び添付の文で説明されたケトン回復モジュール300に移し、ケトン回復モジュール300は、残留不凝縮ガスを含んだストリーム1012(一部の実施形態において、モジュール200にリサイクルすることができる)、及びケトンに富んだストリーム1014を生じる。
【0072】
発酵ブロスは、ストリーム1005として発酵槽1002を出、次いで、
図4及び添付の文で説明された前処理モジュール400を用いて前処理することができ、細胞並びに固体及び塩の一部をストリーム1005から除去することができ、次いで、軽質有機物分離モジュールである蒸留塔1018に移される。蒸留塔1018は、揮発物、例えば、溶解不凝縮ガス、水、ケトン及び他の有機物を除去することができ、揮発物は、ストリーム1016として経由し、ストリーム1010と合流し、ケトン回復モジュール300に入り、適切に加工することができる。
【0073】
塔1018からの、グリコール及び他の対象の生成物を含んだ下部1020を、別の蒸留塔1022、例えば、多重効用蒸留塔に移し、蒸留塔1022は、塔頂である水分画1024を除去することによってストリーム1020を濃縮し、下部1025を、
図6及び添付の文で説明された反応蒸留モジュール600へ移す。モジュール600の後に、グリコールに富んだストリーム1028に加えて、水ストリーム1026を生じる。
【0074】
代替的な構成において、脱水塔1022の下部からのグリコールに富んだストリーム1028を水素化反応器に送り、そこで、触媒が、少流量の酸素を用いて色素混入物を水素化する。水素化の後、グリコールを、蒸留塔、例えば、モジュール600に示された塔604(
図6)に送る。
【0075】
活性炭を用いて、色素又は臭気を低減することもできる。1つ又は複数の実施形態において、脱水塔1022の下部からのグリコールに富んだストリーム1025を、活性炭床に送り、そこで、色素及びUV吸収体混入物が吸着される。一部の実施形態において、モジュール600からのグリコールに富んだストリーム1028を、活性炭床に送ることができ、そこで、色素及びUV吸収混入物が吸着される。次いで、精製グリコールを冷却し、保管に送ることができる。
【0076】
本実施例において、グリコールが、代表的なポリオールとして示されるが、方法は、2個以上の有効なアルコール基、及び2個以上の炭素原子を含む、他のポリオール種、例えば、モノエチレングリコール又はプロピレングリコールを獲得するように適応できることが想定される。
代替的な構成において、脱水塔1122の下部からのグリコールに富んだストリーム1125を水素化反応器に送り、そこで、触媒が、少流量の水素を用いて、色素及びUV吸収体混入物を水素化する。水素化の後、グリコールを、モジュール700へ送ることができる。活性炭を用いて、色素及び臭気を低減することもできる。別の実施形態において、脱水塔1122の下部からのグリコールに富んだストリーム1125を活性炭床に送り、そこで、色素及びUV吸収体混入物が吸着される。他の実施形態において、モジュール700からのグリコールに富んだストリーム1128を活性炭床に送ることができ、そこで、色素及びUV吸収混入物が吸着される。次いで、精製グリコールは冷却され、保管に送られる。
本実施例において、グリコールが、代表的なポリオールとして示されるが、方法は、2個以上の有効なアルコール基、及び2個以上の炭素原子を含む、他のポリオール種、例えば、モノエチレン、モノエチレングリコール又はプロピレングリコールを獲得するように適応できることが想定される。