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特開2022-75914湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物及び車両外装用部材
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  • 特開-湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物及び車両外装用部材 図1
  • 特開-湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物及び車両外装用部材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075914
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物及び車両外装用部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
C09J175/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022047485
(22)【出願日】2022-03-23
(62)【分割の表示】P 2017238802の分割
【原出願日】2017-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】大田 英生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健介
(57)【要約】
【課題】 十分な接着強度を有するのみならず、冷却固化の過程における体積収縮を可能な限り低減させたホットメルト接着剤の提供。
【解決手段】 本発明のある態様は、ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物であって、前記ポリオール成分(A)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールであり、前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の含有量が、20重量%~60重量%であり、前記プレポリマー中の前記脂環構造の含有率が、1重量%超10重量%未満の範囲内であることを特徴とする、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物である(ただし、アクリルポリオールを5重量%~40重量%含むものを除く)。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物であって、
前記ポリオール成分(A)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールであり、
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の含有量が、20重量%~60重量%であり、
前記プレポリマー中の前記脂環構造の含有率が、1重量%超10重量%未満の範囲内である
ことを特徴とする、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物(ただし、アクリルポリオールを5重量%~40重量%含むものを除く)。
【請求項2】
ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物であって、
前記ポリオール成分(A)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールであり、
前記プレポリマー中の前記脂環構造の含有率が、1重量%超10重量%未満の範囲内であり、
前記ホットメルト接着剤組成物を冷却固化させた接着剤の固化収縮率が3.5%以下である
ことを特徴とする、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物であって、
前記ポリオール成分(A)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールであり、
前記プレポリマー中の前記脂環構造の含有率が、1重量%超10重量%未満の範囲内である
ことを特徴とする、車両外装用部材用の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を硬化させてなる硬化物層を有する、車両外装用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物及び車両外装用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、圧着後、冷却固化するのみで被着物を固定化可能であり、作業性が高いことから、建築分野、電気分野、自動車分野をはじめとした種々の分野で使用されている。そのため、高機能なホットメルト接着剤が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ポリオール成分(A)とポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有し、前記ポリオール成分(A)は、分子中にシクロオレフィン構造を有するポリオール(a)を含有するものであって、かつ前記ポリオール(a)として分子中にシクロオレフィン構造を有するポリカーボネートポリオールを50~90重量%の範囲内で含有し、前記ウレタンプレポリマー中の前記シクロオレフィン構造の含有量が10~30重量%の範囲内である、湿気硬化型ホットメルト接着剤が開示されている。このような湿気硬化型ホットメルト接着剤によれば、優れた機械強度および接着強さを有するとともに、接着剤単独で優れた耐透湿性能を発揮することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5303846号
【特許文献2】特開2015-69860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るホットメルト接着剤では、車両外装用部材等の立体物や曲面からなる材料等に対しては、十分な接着強度を発揮しない場合があった。以下、このような問題点について具体的に説明する。
【0006】
特許文献2では、アウタレンズと、そのハウジングからなる車両用灯具において、前記ハウジングの開口部周縁にはレンズ取付溝が形成され、前記取付溝は、別部材である前記アウタレンズ側に設けられたレンズ取付脚に向かって開口し、嵌合する。そして、前記アウタレンズを灯具の前記ハウジングに固定するには、加熱により溶融状態としたホットメルト接着剤を、前記ハウジングのレンズ取付溝にポッティングした後、アウタレンズのレンズ取付脚をハウジングのレンズ取付溝に挿入することにより行う。そして、その状態で前記接着剤が冷却されて固化するまで待ち、アウタレンズがハウジングの開口部周縁に接着固定される。
【0007】
しかし、上記ホットメルト接着剤を用いたビード状の接着に際し十分な接着強度が発揮され難かった。なぜなら、上述のようにビード状の接着に際しては、平面同士を積層する接着に比して冷却固化の経過における体積収縮の影響が非常に高くなると考えられる。より詳細には、ビード状の接着に際しての接着剤の冷却固化に際しては、接着剤が3次元的に収縮するため、接着界面における微小クラックが発生し易くなる。このような微小クラックが破壊の開始点となり、ビード状の接着において十分な接着強度が発揮されないこととなる。
【0008】
以上を踏まえ、本発明は、十分な接着強度を有するのみならず、冷却固化の過程における体積収縮を可能な限り低減させたホットメルト接着剤及び車両外装用部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に基づき鋭意研究を行ったところ、ホットメルト接着剤組成物において、特定のポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られるウレタンプレポリマーを使用することで、上記課題を解決可能であることが判った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
本発明の第一の態様は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物である。当該湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、
ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物であって、
前記ポリオール成分(A)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールであり、
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の含有量が、20重量%~60重量%であり、
前記プレポリマー中の前記脂環構造の含有率が、1重量%超10重量%未満の範囲内である
ことを特徴とする(ただし、アクリルポリオールを5重量%~40重量%含むものを除く)。
本発明の第二の態様は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物である。当該湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、
ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物であって、
前記ポリオール成分(A)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールであり、
前記プレポリマー中の前記脂環構造の含有率が、1重量%超10重量%未満の範囲内であり、
前記ホットメルト接着剤組成物を冷却固化させた接着剤の固化収縮率が3.5%以下である
ことを特徴とする。
本発明の第三の態様は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物である。当該湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、
ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物であって、
前記ポリオール成分(A)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)は、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールであり、
前記プレポリマー中の前記脂環構造の含有率が、1重量%超10重量%未満の範囲内である
ことを特徴とする。
本発明の第四の態様は、車両外装用部材である。当該車両外装用部材は、
本発明の第一~第三の態様のいずれかの湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を硬化させてなる硬化物層を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な最終接着強度を有するのみならず、加熱溶融状態から冷却固化の過程における体積収縮を可能な限り低減させることにより優れた初期接着力を発揮するホットメルト接着剤を提供することが可能となる。そのため、ビード状、より具体的には3次元的に線描される曲面上のビードにおいて、積層される被接着部材でも十分な接着性を有するホットメルト接着剤が提供される。また、塗布面は、厚みのある線条いわゆるビードだけでなく、少吐出の塗工により所定幅のあるテープ状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例における試験サンプル作成方法を示す模式図である。
図2図2は、実施例における引張試験方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、イソシアネート末端であるウレタンプレポリマーを含む。このような湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を用いると、加熱溶融状態のウレタンプレポリマーが冷却・固化することによる接着性が発現し、更に、未反応のイソシアネート末端が空気中の湿分と反応し架橋構造を形成することで、より強固な接着性を発現する。
【0014】
以下、本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の、組成(各成分及び各成分の含有率)、製造方法、用途、適用方法について説明するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
【0015】
<<<湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の組成>>>
本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含有するホットメルト接着剤組成物である。なお、該反応の際には、通常、ポリイソシアネート成分(B)を化学量論的に過剰量となるように反応させる。また、発明の効果を阻害しない範囲内で、その他の成分を更に含んでいてもよい。以下、ウレタンプレポリマー、その他の成分、及び、各成分量について説明する。
【0016】
<<ウレタンプレポリマー>>
ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分(A)と、ポリイソシアネート成分(B)と、を反応させて得られる。
【0017】
<ポリオール成分(A)>
ポリオール成分は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)と、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)と、ポリエーテルポリオール(a-3)と、を含有し、低分子量ジオール(a-4)を更に含有することが好ましい。以下、これらの各成分について説明する。
【0018】
(a-1:脂環式ポリカーボネートポリオール)
本形態に係る脂環式ポリカーボネートポリオールは、炭酸エステル結合が主鎖にあり、かつ分子中に2以上の水酸基を持つ線状高分子であり、しかも炭素数6以上の脂環構造を分子中に有するポリカーボネートポリオールである。なお、本形態に係る脂環式ポリカーボネートポリオールは、常温固体であることが好ましい。なお、脂環構造としては、炭素数が6以上であれば特に限定されず、例えば6~10のもの等が挙げられるが、炭素数6のものが広く用いられ好ましい。脂環構造は環式の脂肪族炭化水素であり、シクロアルカン、シクロアルケン、シクロアルキン等があるが、なかでも二重結合、三重結合を含まないシクロアルカンが好ましい。
【0019】
このような脂環式ポリカーボネートポリオールとしては、炭素数6以上の脂環構造を分子中に有する限り特に限定されず、例えば、特許5303846号等に記載されたものを使用可能である。
【0020】
より具体的には、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,6-シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン-ジメタノール、ビシクロ[4.3,0]-ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカンジオール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカン-ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5,3,1,1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’-ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ-ルA、1,3-アダマンタンジオール等の脂環式ポリオールと、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等に代表される環式カーボネート、またはホスゲン等との反応生成物等が挙げられる。
【0021】
脂環式ポリカーボネートポリオールは、数平均分子量が500~3000であることが好ましい。脂環式ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が500以上である場合、本接着剤硬化後の機械強度が向上し、3000以下である場合、本接着剤の硬化後の最終接着強さを維持することができる。脂環式ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、800以上であることがより好ましく、2000以下であることがより好ましい。なお、本形態において、数平均分子量は、ASTM標準試験D5296に準じて、PEG標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって求める。
【0022】
本形態に係るホットメルト接着剤組成物が、このような脂環式ポリカーボネートポリオールを後述する量含有することで、接着剤組成物の凝集が高まり、冷却・固化時の体積収縮を防ぐことができる。
【0023】
(a-2:結晶性ポリエステルポリオール)
結晶性ポリエステルポリオールとしては、通常、融点が60℃~80℃であるポリエステルポリオールを用いることができる。前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-2)は、優れた接着性(初期接着強度及び最終接着強度)が得られる点で必須の成分であり、例えば、水酸基を2個以上有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121-1987に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0024】
具体的な結晶性ポリエステルポリオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールとアジピン酸、1,6-へキサンジオールとセバシン酸、1,4-ブタンジオールと1,12-ドデカンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジオールと1,12-ドデカンジカルボン酸、1,10-ノナンジオールとコハク酸、1,10-ノナンジオールとアジピン酸、1,8-オクタンジオールとアジピン酸、をそれぞれ反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。中でも、下記式(1)で示すポリエステルポリオール(式中、nは、3~40の整数)であり、図1で示すR1とR2はそれぞれ独立して、Cの数が偶数の直鎖アルキレン基であり、且つR1とR2のCの数の合計が12以上のポリエステルポリオールであることが好ましい。
【0025】
結晶性ポリエステルポリオールは、数平均分子量が2,000~10,000であることが好ましい。
【0026】
(a-3:ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを開環、それぞれを付加重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及び、これらのコポリエーテル等が挙げられる。また、グリセリンやトリメチロールエタン等の多価アルコールを用い、上記の環状エーテルを重合させて得ることもできる。中でも、ポリオテトラメチレンエーテルグリコールであることが好ましい。
【0027】
ポリエーテルポリオールは、数平均分子量が1000~3000であることが好ましい。ポリエーテルポリオールをホットメルト接着剤組成物に添加することで、分子的に一定量のソフトセグメントが形成され、反応硬化後の接着剤の耐加水分解性、湿熱老化性、耐候性に優れるようになる。
【0028】
(a-4:低分子量ジオール)
低分子量ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール、アダマンタンジ-メタノール、アダマンタンジ-エタノール、シクロペンタンジメタノール、シクロペンタンジエタノール等が挙げられる。
【0029】
低分子量ジオールは、数平均分子量が、500以下であることが好ましい。
【0030】
なお、ポリオール成分(A)としては、発明の効果を阻害しない範囲内で、その他のポリオール(例えば、アクリルポリオール等)を含んでいてもよい。
【0031】
<<ポリイソシアネート(B)>>
ポリイソシアネート(B)としては、通常のウレタンプレポリマーの製造に際して使用されるポリイソシアネートであれば何ら限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、水素添加MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,8-ジイソシアナトメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、及びこれらの変性体、誘導体等が挙げられる。
【0032】
<<その他の成分>>
本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、抗菌剤、光安定剤、安定剤、分散剤、溶剤等が挙げられる。
【0033】
ここで、ポリウレタンプレポリマーのNCO基含有率は、特に限定されないが、好ましくは0.5~10%であり、よりこのましくは、0.7~2.5%であり、さらに好ましくは、0.8~2.0%であり、特に好ましくは1.0~1.8%である。0.5%以上の場合、耐熱性が向上する。10%以下の場合、加熱溶融時の熱安定性が良くなる。なお、このようなNCO基含有率は、JISK1603‐1に従って測定されたものである。
【0034】
<<各成分量>>
ポリオール成分(A)全体に対する、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)の含有率が、5~50重量%であることが好ましく、5~45重量%であることがより好ましく、10~40重量%であることが更に好ましい。
【0035】
ポリオール成分(A)全体に対する、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の含有率が、20~60重量%であることが好ましく、30~50重量%であることがより好ましい。
【0036】
ポリオール成分(A)全体に対する、ポリエーテルポリオール(a-3)の含有率が、20~60重量%であることが好ましく、25~45重量%であることがより好ましい。
【0037】
ポリオール成分(A)全体に対する、低分子量ジオール(a-4)の含有率が、1~10重量%であることが好ましく、2~8重量%であることがより好ましい。
【0038】
ここで、本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、プレポリマー中、脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)における脂環構造の含有率が、1重量%超10重量%未満の範囲内であり、好ましくは、3~9重量%の範囲内である。
【0039】
脂環式ポリカーボネートポリオール(a-1)、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)及びポリエーテルポリオール(a-3)をポリオール成分として含有するウレタンプレポリマーを使用し、且つ、脂環構造の含有率を上記範囲とすることにより、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)及びポリエーテルポリオール(a-3)を含む系において、冷却固化時時の体積収縮率を顕著に低減可能となる。このような効果を奏する理由は、定かではないが、脂環式ポリカーボネートポリオールを添加することで、その他の成分による効果を低減させることなく接着剤組成物のガラス転移点が高くなる。これにより、塗布後の初期粘度が安定し、塗布した形状で液だれ等をすることなく、冷却固化時の硬度を維持することができる。また、体積固化収縮率が小さくなる事で、被着体との十分な濡れ性を保ったまま、溶融状態から冷却固化まで接着した状態を保持することが可能となる。一方で、結晶性ポリオールで融点を制御し塗布時の作業温度で初期溶融性を確保し、また冷却固化時に十分な材料強度を発現することができる。更には、このような配合により得られたウレタンプレポリマーは、塗布後初期強度及び最終強度が高く、且つ、溶融粘度を高く設定できることでビード塗布等に使用することが可能となる。
【0040】
なお、本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物中における上記その他の成分の含有率は特に限定されないが、例えば、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物全体に対して、10重量%以下等とすればよい。
【0041】
<<<湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の製造方法>>>
本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法に従えばよい。例えば、前述の各成分を用いて、(1)所定量のポリイソシアネートの入った反応容器に、所定量のポリオールを滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネートの有するイソシアネート基が、前記ポリオールの有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させ、ウレタンプレポリマーを調整する、(2)前記ポリウレタンプレポリマーにその他の成分を所定量滴下し、撹拌することで所望の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を製造する方法が挙げられる。前記反応は、例えば50~120℃、好ましくは60~100℃の温度で行われる。反応時間は例えば1~15時間である。なお、ウレタンプレポリマーの調整時にその他の成分を添加してもよい。
【0042】
<<<湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の用途>>>
本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、従来の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物における用途と同様の用途としてよい。例えば、建材、具体的には化粧シート被覆材料等の建築内装部材や、家具部材等とすることができる。更に、本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、高い初期接着強度及び最終接着強度を有し、厚みのある線条いわゆるビード塗布が可能であり、且つ、より具体的には3次元的に線描される曲面上のビードにおける接着性に非常に優れるため、車両外装用部材(例えば、リアスポイラー)や車両用内装部材、例えば座席やヘッドレストのカバーパッドの縫製部等の接着用とすることが好ましい。具体的には、意匠面材と基材を積層接着するスポイラーの貼り合せに好適である。特に、車幅方向、ほぼ全体に装着されるリアスポイラーにおいては、その車幅方向両端において、上記意匠面材と基材を強固に接着しなければならない。しかも、設計上、上記意匠面材端部の剛性が低い場合もあり、基材と密着しにくく、それらの貼付けには、精度の高い治具が求められる。このような精度の高い治具の使用を避けるべく、初期接着強度に優れ、かつ最終接着強度の低下もない本接着剤組成物が使用できる。さらに、塗布面はビードだけでなく、少吐出の平面状に塗工することにより所定幅のあるテープ状でもよい。
【0043】
<<<湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の適用>>>
次に、本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の適用方法の一例について説明する。なお、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の適用方法はこれには限定されず、公知の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の適用方法に従って適用可能である。以下では、本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物をエアスポイラーに適用する工程について例示する。
【0044】
先ず、水分非含有雰囲気にて、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を溶融した状態で、ホットメルト塗布装置の供給タンクで温調保管する。次に、アツパー部及びロアー部の2部材によって、その内部に中空を形成させるリアスポイラーを用意する。まず、2部材の接合面を脱脂溶剤、例えばイソプロピルアルコール等で脱脂綿を濡らし、よく拭き取る。その後、上記温調により適正粘度に調節された溶融状態である湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を、少量吐出のホットメルト樹脂用ビードガンにより、上記リアスポイラーのアッパー部材の外周縁部に設けた溝すなわち線条塗布部に、前記接着剤を塗布することで、前記アッパー部にビードを形成する。この時、少量吐出の前記ビードガンを上記所定の溝にそって移動させた後、すみやかにロア部を嵌合させ、アツパー部及びロアー部を固定し、前記接着剤が冷却固化するまで放置することでリアスポイラーを得ることができる。
【0045】
なお、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の塗布厚さは、例えば0.7±0.3mm、等とすればよい。なお、接着対象面に対して、公知の前処理(例えば、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等)を行ってもよい。
【0046】
以上のようにして、本形態に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化物である硬化物層を有する積層体が得られる。
【実施例0047】
以下、実施例により、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の効果について、具体的に説明する。
【0048】
<<<湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の製造>>>
各実施例及び比較例に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の、原料及び具体的な製造方法を以下に示す。
【0049】
<<原料>>
<ポリオール成分(A)>
(a-1:脂環式ポリカーボネートポリオール)
・エターナコールUC-100:宇部興産株式会社製:1,4-シクロヘキサンジメタノ-ルベ-スのポリカーボネートジオ-ル(数平均分子量約1000、脂環構造含有率49.5重量%)
・エターナコールUM90(3/1):宇部興産株式会社製:1,4-シクロヘキサンジメタノール/1,6-ヘキサンジオ-ル=3/1(モル比)共重合ポリカーボネートジオ-ル(数平均分子量:約1000、脂環構造含有率34.8重量%)
(a-2:結晶性ポリエステルポリオール)
・HS2H500S(豊国製油製、分子量5000)
(a-3:ポリエーテルポリオール)
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール(品名:PTMG2000、数平均分子量2000)(三菱ケミカル社製)
(a-4:低分子量ジオール)
・ブチルエチルプロパンジオール(BEPG)
<ポリイソシアネート(B)>
・MDI(モノメリック・メチレンジフェニルジイソシアネート)
<脂肪族ポリカーボネートジオール>
・ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製 デュラノールT6002、数平均分子量2000)
【0050】
<<製造方法>>
<実施例1>
撹拌羽を有する1リットル四つ口フラスコ内にポリイソシアネートMDIを、表1に示した配合量で投入し、フラスコ内を窒素ガスでパージした後に温度を80℃まで加熱させた。次に、フラスコ内にポリオール成分A(a-1~a-3)を、それぞれ表1に示した配合量で、80℃に加熱溶融させて溶融状態で投入し、窒素ガス雰囲気下で液温100℃以下に保持して2時間以上撹拌した。これにより、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とが反応して、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ホットメルト接着剤を得た。
<実施例2~3、比較例1~4>
使用するポリオール成分を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~3及び比較例1~4に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を製造した。
【0051】
ここで、各実施例及び比較例に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物における、NCO%、及び、脂環構造含有率(重量%)を表1に示す。なお、比較例3では、粘度が高すぎることから湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物製造することができなかった。
【0052】
<<評価>>
次に、各実施例及び比較例に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の評価を行った。
【0053】
<引張試験>
(試験サンプル作成)
被着体として、帯状の平板に切り出した状の自動車外装用樹脂部材であるポリカーボネート(PC),ポリカーボネートとアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンのアロイ(PC/ABS),アクリレート・スチレン・アクリロニトリル(ASA)のいずれからなる樹脂部材、幅25±0.2mm×長さ100±0.5mm、厚さ2±0.1mm)を2枚準備した。
次に、2部材の接合面を脱脂溶剤、例えばイソプロピルアルコール等で脱脂綿を濡らし、よく拭き取った。
脱脂溶剤が十分に乾燥した後、水分が0の状態であるいわゆる絶対乾燥状態にて130℃で保持して溶融状態とした湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を、1枚目の自動車外装用樹脂部材(PC/ABS)の板面に30秒以内に、図1で示すように、基材の中央に一辺25±0.2mmの正方形領域内を全面覆うようにビード塗布し、2枚目の自動車外装用樹脂部材(ASA)の板面とを十字状になるように貼り合わせ、15秒間圧着した。なお、塗布厚さ(塗布時)は、圧着後で0.7±0.3mmである。また、圧着時に、接着面よりはみ出した接着剤は冷却固化前に速やかに除去した。
以上のように、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化物を介して2枚の自動車外装用樹脂部材が接着された試験サンプルを得た。
(試験)
図2に示す方法で、 自動車外装用樹脂部材の板面同士を垂直に引き剥がす方向に、10mm/minとなる条件にてクロスピール引張試験を行った。なお、該引張試験は、試験サンプル作成後に、10分放置したサンプル、1時間放置したサンプル、1日以上養生し、湿気硬化したサンプル、の各々の試験サンプルについて実施した。試験結果を表1に示す。
【0054】
<固化体積収縮率>
100℃に加熱溶融した湿気硬化型ホットメルト接着剤を、容積100cmの円柱状のPP製カップ内に100cm流し込み、室温(25±5℃)、窒素雰囲気下で4時間以上放冷し、冷却固化させた。
冷却固化した湿気硬化型ホットメルト接着剤の上面の表面を注視すると、固化収縮した体積分、凹部を生じる。その凹部がなくなるまで、密度0.87g/cm(20℃)のオイル(PW-90、出光興産社製)を流し込み、オイルの重量を測定し、下記の式より固化体積収縮率を算定した。
固化体積収縮率(%)={{(凹部に流し込んだオイルの重量(g))÷オイルの密度(0.87g/cm)}÷(最初にPPカップに流し込んだ湿気硬化型ホットメルトの体積(100cm))}×100
評価基準は、下記のとおりとする。
○:固化収縮率が2.5%以下のもの。
△:固化収縮率が2.5%より高く、3.5%以下のもの。
×:固化収縮率が3.5%より高いもの。
試験結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
比較例1は、脂環式ポリカーボネートポリオールが配合されないことで、接着後10分の初期および接着後1時間の中期の接着強度が得られなかった。比較例2では、脂環族ポリカーボネートジオールに代えて脂肪族ポリカーボネートジオールを配合することで、初期および中期の接着強度が得られなかった。比較例3では、3成分からなるポリオール成分(A)を配合している。これら3成分の脂環族構造含有率は13.6重量%であり、初期および中期ばかりでなく最終接着強度も得られなかった。

図1
図2