(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007592
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】保全計画支援システム、保全計画支援装置および保全計画支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20220105BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220105BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110663
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 千佳子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 篤
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】事業計画の初期段階で保全計画を迅速に作成することができる。
【解決手段】動植物の保全計画の作成を支援する保全計画支援システム1であって、表示手段3bと、検討対象とする動植物を特定する特定情報を入力する入力手段3aと、保全に必要な環境を分類した環境タイプと前記動植物とを対応づけた情報を記憶する記憶手段10と、前記表示手段に表示させる画面を作成する制御手段20と、を備え、制御手段20は、前記特定情報を用いて前記記憶手段を検索して前記検討対象とする動植物に適した環境タイプを取得し、前記検討対象とする動植物と前記取得した環境タイプとを関連付けた環境タイプ表示画面を表示手段3bに表示させる保全評価処理手段23を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動植物の保全計画の作成を支援する保全計画支援システムであって、
表示手段と、
検討対象とする動植物を特定する特定情報を入力する入力手段と、
保全に必要な環境を分類した環境タイプと前記動植物とを対応づけた情報を記憶する記憶手段と、
前記表示手段に表示させる画面を作成する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記特定情報を用いて前記記憶手段を検索して前記検討対象とする動植物に適した環境タイプを取得し、前記検討対象とする動植物と前記取得した環境タイプとを関連付けた環境タイプ表示画面を前記表示手段に表示させる保全評価処理手段を有する、
ことを特徴とする保全計画支援システム。
【請求項2】
前記環境タイプ表示画面は、行および列で構成されるテーブルを含み、
前記保全評価処理手段は、前記行および列の何れか一方に前記検討対象とする動植物を配置し、また前記行および列の他方に環境タイプを配置し、代償地としての適否が環境タイプごとに分かるように前記テーブルを表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の保全計画支援システム。
【請求項3】
前記環境タイプは、周辺の状況または他の種の生息に関する条件によってさらに細分化されており、
前記保全評価処理手段は、代償地としての適否が環境タイプおよび前記条件ごとに分かるように前記テーブルを表示させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の保全計画支援システム。
【請求項4】
前記記憶手段は、前記動植物ごとにレッドリストランクおよび代償の難易度のうちの少なくとも一つを記憶しており、
前記保全評価処理手段は、前記レッドリストランクおよび前記代償の難易度のうちの少なくとも一つを前記検討対象とする動植物に関連付けてさらに表示させる、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の保全計画支援システム。
【請求項5】
前記保全評価処理手段は、前記環境タイプ表示画面に含まれる一つの環境タイプが選択された場合に、前記選択された環境タイプに対応する代償地のイメージおよび代償地として必要な環境条件に関する情報を含んだ環境条件表示画面を前記表示手段に表示させる、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の保全計画支援システム。
【請求項6】
前記記憶手段は、前記動植物の生態情報を記憶しており、
前記制御手段は、
前記特定情報を用いて前記記憶手段を検索して前記検討対象とする動植物の生態情報を取得し、前記検討対象とする動植物の生態情報を含んだ生態情報表示画面を前記表示手段に表示させる知る評価処理手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の保全計画支援システム。
【請求項7】
前記保全評価処理手段は、代償地としての好適環境評価スコアを地図情報に関連付けた適地マップを前記表示手段に表示させ、
前記好適環境評価スコアは、地形と湿潤度に関する指標、標高に関する指標、樹林からの距離に関する指標、道路の面積割合に関する指標、および地表面の傾斜角に関する指標に基づいて算出されたものである、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の保全計画支援システム。
【請求項8】
動植物の保全計画の作成を支援する保全計画支援装置であって、
地図情報を取得する通信手段と
地形と湿潤度に関する指標、標高に関する指標、樹林からの距離に関する指標、道路の面積割合に関する指標、および地表面の傾斜角に関する指標に基づいて好適環境評価スコアを算出し、前記算出した好適環境評価スコアを前記地図情報に関連付けた適地マップを作成する制御手段を備える、
ことを特徴とする保全計画支援装置。
【請求項9】
動植物の保全計画の作成を支援する保全計画支援装置であって、
保全に必要な環境を分類した環境タイプと前記動植物とを対応づけた情報を記憶する記憶手段と、
表示手段に表示させる画面を作成する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
検討対象とする動植物を特定する特定情報を用いて前記記憶手段を検索して前記検討対象とする動植物に適した環境タイプを取得し、前記検討対象とする動植物と前記取得した環境タイプとを関連付けた環境タイプ表示画面を作成する保全評価処理手段を有する、
ことを特徴とする保全計画支援装置。
【請求項10】
動植物の保全計画の作成を支援する保全計画支援装置としてコンピュータを動作させる保全計画支援プログラムであって、
前記コンピュータは、
保全に必要な環境を分類した環境タイプと前記動植物とを対応づけた情報を記憶する記憶手段と、
表示手段に表示させる画面を作成する制御手段と、を備え、
前記制御手段に、
検討対象とする動植物を特定する特定情報を用いて前記記憶手段を検索して前記検討対象とする動植物に適した環境タイプを取得し、前記検討対象とする動植物と前記取得した環境タイプとを関連付けた環境タイプ表示画面を作成する保全評価処理を実行させる、
ことを特徴とする保全計画支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保全計画支援システム、保全計画支援装置および保全計画支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な自然環境改変を伴うダムや処分場などの事業では、生態系への配慮が必須となっており、希少動植物の保全対策として移植や代償地の創出などのミティゲーションを実施することが求められる。ミティゲーションとは、人間の活動によって生じる環境への影響を緩和することである。影響を緩和するための保全措置としては、例えば「回避」、「低減」、「代償」などがある。回避は、例えば事業の中止、事業実施区域の変更などを行うことである。低減は、例えば工事工程の変更、施設構造の変更などを行うことである。代償は、例えば保全対象(動植物)の移植、新たな生息地の創出などを行うことである。
【0003】
希少動植物の生息地が消失することに対応する措置として代償を選択する場合においては、適切な代償地を選定し、移植適期を逃さぬよう、事業の早い段階で的確なミティゲーション計画を作成し、事業者や工事関係者の間でミティゲーション計画を共有することが重要である。現状では、案件ごとに生物専門家の知見を聞きながら調査を行い、時間をかけてミティゲーション計画を策定している。
【0004】
これに関連して、例えば特許文献1に記載される技術が知られている。特許文献1に記載された技術では、地域緑地評価(必要緑地面積・緑地率の2項目)、環境リスク評価(生態系・環境容量・植生自然度・希少動植物・水環境・法的指定地域・その他の7項目)、地域活動評価の3つの大項目について評価を行う。また、上記の評価結果を基に評価シート及び評価書の形にまとめ、評価書では評価シートに対応した要素別・総合的な環境リスク、環境保全レイアウト及び保全指針を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された技術を含めて、保全措置として代償を実施する場合における保全計画の作成を支援する技術が存在していなかった。そのため、保全計画の作成には案件ごとに専門家の知見が必要となり、また多くの時間と費用を要するという問題があった。
【0007】
このような観点から、本発明は、事業計画の初期段階で保全計画を迅速に作成することができる保全計画支援システム、保全計画支援装置および保全計画支援プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る保全計画支援システムは、動植物の保全計画の作成を支援する保全計画支援システムである。この保全計画支援システムは、表示手段と、検討対象とする動植物を特定する特定情報を入力する入力手段と、保全に必要な環境を分類した環境タイプと前記動植物とを対応づけた情報を記憶する記憶手段と、前記表示手段に表示させる画面を作成する制御手段と、を備える。
前記制御手段は、前記特定情報を用いて前記記憶手段を検索して前記検討対象とする動植物に適した環境タイプを取得し、前記検討対象とする動植物と前記取得した環境タイプとを関連付けた環境タイプ表示画面を前記表示手段に表示させる保全評価処理手段を有する。
【0009】
本発明に係る保全計画支援システムによれば、動植物を指定することで当該動植物の保全に必要となる環境タイプが分かるので、情報収集に時間をかけることなく迅速・簡便に保全計画を作成できる。
【0010】
前記環境タイプ表示画面は、行および列で構成されるテーブルを含むようにしてもよい。前記保全評価処理手段は、前記行および列の何れか一方に前記検討対象とする動植物を配置し、また前記行および列の他方に環境タイプを配置し、代償地としての適否が環境タイプごとに分かるように前記テーブルを表示させるのがよい。
【0011】
このようにすると、動植物の保全に必要となる環境タイプを容易に理解できる。また、例えば検討対象とする動植物を複数指定した場合に、最も多くの動植物を保全できる環境タイプを一目瞭然で判断できる。
【0012】
前記環境タイプは、周辺の状況または他の種の生息に関する条件によってさらに細分化されていてもよい。その場合、前記保全評価処理手段は、代償地としての適否が環境タイプおよび前記条件ごとに分かるように前記テーブルを表示させるのがよい。
【0013】
このようにすると、迅速・簡便により的確な保全計画を作成できる。
【0014】
前記記憶手段は、前記動植物ごとにレッドリストランクおよび代償の難易度のうちの少なくとも一つを記憶しているのがよい。前記保全評価処理手段は、前記レッドリストランクおよび前記代償の難易度のうちの少なくとも一つを前記検討対象とする動植物に関連付けてさらに表示させる。
【0015】
このようにすると、保全の必要性や難易度の判断が容易になる。その為、迅速・簡便により的確な保全計画を作成できる。
【0016】
前記保全評価処理手段は、前記環境タイプ表示画面に含まれる一つの環境タイプが選択された場合に、前記選択された環境タイプに対応する代償地のイメージおよび代償地として必要な環境条件に関する情報を含んだ環境条件表示画面を前記表示手段に表示させるのがよい。
【0017】
このようにすると、環境タイプに応じた代償地のイメージがつきやすい。その為、迅速・簡便により的確な保全計画を作成できる。
【0018】
前記記憶手段は、前記動植物の生態情報を記憶しており、前記制御手段は、知る評価処理手段をさらに有していてもよい。
この知る評価処理手段は、前記特定情報を用いて前記記憶手段を検索して前記検討対象とする動植物の生態情報を取得し、前記検討対象とする動植物の生態情報を含んだ生態情報表示画面を前記表示手段に表示させる。
【0019】
このようにすると、生物の知識がない人でも動植物の生態を容易に知ることができる。
【0020】
前記保全評価処理手段は、代償地としての好適環境評価スコアを地図情報に関連付けた適地マップを前記表示手段に表示させてもよい。
前記好適環境評価スコアは、地形と湿潤度に関する指標、標高に関する指標、樹林からの距離に関する指標、道路の面積割合に関する指標、および地表面の傾斜角に関する指標に基づいて算出されたものであるのが好ましい。
【0021】
このようにすると、実際の地形や環境を考慮した代償地を選ぶことが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、事業計画の初期段階で保全計画を迅速に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る保全計画支援システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る保全計画支援装置およびユーザ端末の機能構成図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る保全計画支援システムの動作を示すフローである。
【
図10】適地マップを作成する処理を説明するための図であり、(a)~(d)は各基準(湿潤度、樹林からの距離、道路面積の割合、地表面の傾斜角)の算出結果を地図画像に重ねたものである。
【
図11】好適環境評価スコアを地図画像に重ねた適地マップの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0025】
<実施形態に係る保全計画支援システムの構成>
図1を参照して、実施形態に係る保全計画支援システム1について説明する。
図1は、保全計画支援システム1の概略構成図である。保全計画支援システム1は、建設事業による自然環境への影響を緩和するための保全措置に関する計画の作成を支援するシステムである。「保全措置に関する計画」を略して「保全計画」と呼ぶ場合がある。本実施形態では、開発対象になりやすい里山の水辺(溜池や湿地など)の動植物に関する保全計画を作成する場合を想定する。
【0026】
保全措置には、例えば「回避」、「低減」、「代償」などがあるが、本実施形態では、保全措置として「代償」を実施する場面での支援を想定している。保全措置としての代償は、損なわれる環境と同種の環境要素を創出することにより、損なわれる環境の持つ価値を代償することである。代償には、例えば保全対象(動植物)の移植、新たな生息地の創出などが含まれる。ただし、各々の保全措置では、共通する内容を検討することがあるので、その他の保全措置の支援を除外するものではない。なお、生息できる環境条件が限られていることが判明している生物を生態学的な呼び方として「指標生物」と呼ぶ場合があり、また保全対象となる指標生物を特に「保全指標生物」と呼ぶ場合がある。
【0027】
図1に示すように、保全計画支援システム1は、保全計画の作成を支援するサービスを提供する保全計画支援装置2と、保全計画支援装置2によって提供されるサービスを利用するユーザが使用するユーザ端末3とを備える。本実施形態でのユーザは、例えば事業者や工事関係者などである。保全計画支援装置2とユーザ端末3とは、通信回線4を介して通信可能に接続されている。通信回線4は、例えば当該サービスを提供するための専用回線を想定しているが、これに限定されない。
【0028】
ユーザ端末3は、保全計画支援装置2から提供される情報を画面や音声などを通じてユーザに伝えることが可能な装置であり、例えばパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)である。ユーザ端末3の種類は限定されず、持ち運び可能なタブレット型のPC、据え置き型のPCなどであってよい。
【0029】
図2を参照して、ユーザ端末3の構成について説明する。
図2は、保全計画支援装置2およびユーザ端末3の機能構成図である。
ユーザ端末3は、入力手段3a(マウス、キーボード、タッチパネルなど)、表示手段3b(ディスプレイなど)、制御手段3c(CPU(Central Processing Unit)など)、通信手段3d(ネットワークカードなど)を備える。ユーザ端末3は、入力手段3aを介してユーザが入力した情報を保全計画支援装置2に送信し、保全計画支援装置2から送信された情報を表示手段3bに表示する。
【0030】
図2に示す保全計画支援装置2は、保全計画の作成を支援するサービスをユーザに提供する装置であり、例えばアプリケーションサーバである。
保全計画支援装置2は、動植物の保全に必要な情報を記憶しており、ユーザの要求に応じて該当する情報を応答する。例えば、保全計画支援装置2は、ユーザからの要求に応じて、保全対象とする動植物の生態などの基本的な情報を応答する。また、保全計画支援装置2は、ユーザからの要求に応じて、保全対象とする動植物を保全するために必要な情報(例えば、保全に必要な環境を分類した環境タイプ、代償地の環境条件、具体的な保全対策などの情報)を応答する。
【0031】
図2に示すように、保全計画支援装置2は、記憶手段10と、制御手段20と、通信手段30とを備える。記憶手段10は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の記憶媒体から構成される。制御手段20は、CPU(Central Processing Unit)によるプログラム実行処理や、専用回路等により実現される。制御手段20がプログラム実行処理により実現する場合、記憶手段10には、制御手段20の機能を実現するためのプログラム(保全計画支援プログラム)が格納される。
【0032】
記憶手段10には、保全計画の作成の支援に必要な様々な情報が格納される。本実施形態における記憶手段10には、保全指標生物DB(Data Base)11と、レッドリストDB12と、適地マップDB13とが記憶されている。なお、保全計画支援装置2は、記憶手段10に記憶される情報を図示しない外部の記憶手段から必要に応じて取得してもよい。
【0033】
図3を参照して、保全指標生物DB11のデータ構成について説明する。保全指標生物DB11には、保全対象となる動植物(指標生物)に対応付けて、代償の難易度に関する情報、環境タイプ別の代償地情報、基本的な生態情報、環境条件情報、保全対策情報などが格納されている。保全指標生物DB11は、例えば、生物専門家の知見を参考にして予め作成されたものである。保全指標生物DB11に格納される情報は、ユーザに提供する画面の作成に用いられる。
【0034】
代償の難易度に関する情報は、例えば代償の難易度に基づいてレベル分けした情報であり、ここでは「可能(困難でない)」、「難しい」、「きわめて困難」の三つのレベルに分類している。
環境タイプ別の代償地情報は、環境タイプ別に代償地としての適否を示す情報によって構成されている。環境タイプは、生物が生息する環境を分類したものであり、ここでは、環境タイプが条件によってさらに細分化されている。環境タイプは、例えば環境タイプA~環境タイプFに分類される。環境タイプAは「水田」であり、環境タイプBは「貧栄養湿地」であり、環境タイプCは「その他の湿地」であり、環境タイプDは「池沼」であり、環境タイプEは「河川・水路」であり、環境タイプFは「河川の緩流域(岸部、ワンド)」である。環境タイプを細分化する条件は、例えば「環境タイプに該当する場所だけあればよい」、「周辺に樹林・草地が必要」、「周辺の樹林・草地に加えて隣接する樹林・草地が必要」、「他の種(生息に不可欠な特定の生物)が生息していることが必要」の4つのである。なお、代償地として適している環境タイプのみ、または代償地として適していない環境タイプのみを動植物に対応付けて記憶することも可能である。前者の場合、動植物に対応付けられた環境タイプが代償地の候補となる環境であることを意味する。
【0035】
基本的な生態情報は、例えば生息する分布、身体的な特徴、生活史などに関する情報を含んだ情報である。環境条件情報は、例えば日照、生息する場所の水域、水深、底質に関する情報を含んだ情報である。保全対策情報は、例えば保全の具体策、関係する生物に関する情報を含んだ情報である。
【0036】
図4を参照して、レッドリストDB12のデータ構成について説明する。レッドリストDB12には、保全対象となる動植物(指標生物)に対応付けて、都道府県別のレッドリストランクおよび環境省のレッドリストランクが格納されている。なお、レッドリストを「RL」と表現する場合がある。
【0037】
図2に示す適地マップDB13には、代償地としての評価(どのくらい好適であるか)を示す好適環境評価スコアと地図情報とを関連付けた適地マップが格納されている。適地マップは、例えば地図画像に好適環境評価スコアを重ねて表示したものであり、必要に応じて事前に作成される。適地マップの基になる地図情報は、例えば保全計画支援装置2と通信可能に接続される地図情報DB5に格納されており、保全計画支援装置2は適地マップの作成に際して地図情報DB5から地図情報を取得する。地図情報DB5には、例えば日本全国の地図情報が格納されている。地図情報DB5は、例えば国土地理院が提供する基盤地図情報であってよい。
【0038】
制御手段20は、保全計画支援装置2が提供するサービスに関する全体の制御を行う保全計画支援手段21を備えており、また、保全計画支援手段21は、知る評価処理手段22と、保全評価処理手段23と、適地マップ処理手段24と有する。なお、
図2に示す制御手段20の各機能は、説明の便宜上分けたものであり、当該機能の分け方は本発明の一例に過ぎない。
【0039】
知る評価処理手段22は、後述する「動植物の検索サービス」に関する処理を主に行う。保全評価処理手段23は、後述する「動植物の保全情報提供サービス」に関する処理を主に行う。適地マップ処理手段24は、適地マップの作成に関する処理を主に行う。なお、保全計画支援装置2以外の装置(図示せず)が適地マップ処理手段24を備える構成であってもよい。つまり、保全計画支援装置2以外の装置で適地マップの作成が行われ、当該装置が適地マップDB13を保有する。その場合、保全計画支援装置2は、必要に応じて適地マップを取得する。
【0040】
<実施形態に係る保全計画支援システム1の動作>
図5を参照して(適宜、
図1ないし
図4を参照)、実施形態に係る保全計画支援システム1の主な動作について説明する。
図5は、実施形態に係る保全計画支援システム1の動作を示すフローである。なお、
図5の管理画面501は、システム管理者が保全計画支援システム1を管理するために用いられる画面であり、例えば保全指標生物DB11、レッドリストDB12などを更新する場合に使用される。
【0041】
保全計画支援システム1に係るサービスは、例えばユーザ端末3に格納されるアプリケーションプログラム(図示せず)がユーザによって起動されることによって開始する。保全計画支援装置2の制御手段20は、オープニング画面201をユーザ端末3に表示させる。オープニング画面201には、計画地(例えば都道府県)を指定する欄が設けられており、ユーザは、計画地を入力する。ユーザによって入力された計画地の情報は、保全計画支援装置2に送信され、制御手段20は、入力された計画地の情報を取得する。
【0042】
次に、制御手段20は、サービスの選択画面202をユーザ端末3に表示させる。サービスの選択画面202は、「動植物の検索サービス(いきものを知る)」または「動植物の保全情報提供サービス(いきものを保全する)」を選択可能になっている。ユーザは、サービスの選択画面202を介して何れかのサービスを選択する。
【0043】
(動植物の検索サービス(いきものを知る))
サービスの選択画面202でユーザが動植物の検索サービスを選択した場合、制御手段20は、保全指標生物を選択(指定)する方法を選ぶための選択画面301をユーザ端末3に表示させる。選択画面301は、例えば「名前から選ぶ」または「地域から選ぶ」ことが可能な構成になっている。ユーザは、選択画面301を介して何れかの選択方法を選択する。
【0044】
次に、制御手段20は、保全指標生物を選択(複数選択できる)するための選択画面302をユーザ端末3に表示させる。選択画面301でユーザが「名前から選ぶ」を選択した場合、制御手段20は、例えばユーザに対して種名の一部の入力を要求し、ユーザに入力された情報を種名に含むものを一覧とした選択画面302をユーザ端末3に表示させる。また、選択画面301でユーザが「地域から選ぶ」を選択した場合、制御手段20は、例えばオープニング画面201で入力された計画地の情報(またはさらに細かい地域の入力を要求してもよい)に対応する種名を一覧とした選択画面302をユーザ端末3に表示させる。ユーザは、選択画面302を介して種(動植物)を選択する。
【0045】
次に、制御手段20は、選択画面302で選択された種(動植物)の基本的な生態情報を含んだ生態情報表示画面303をユーザ端末3に表示させる。生態情報表示画面303の一例を
図6に示す。なお、
図6は動物である「トウキョウダルマガエル」を例示しているが、植物の生態情報も同様の手順によって画面が表示される(表示される項目の種類は相違してもよい)。
【0046】
図6に示すように、生態情報表示画面303は、種名等表示領域303a、画像表示領域303b、リスト表示領域303c、分布情報表示領域303d、特徴情報表示領域303e、生息範囲情報表示領域303f、水辺環境情報表示領域303g、水域条件情報表示領域303h、難易度情報表示領域303i、および生活史情報表示領域303jを含む。生態情報表示画面303は、主に保全指標生物DB11に格納される情報によって作成される。
【0047】
種名等表示領域303aには、種や科の名称、学名、ならびに動物または植物を示す記号(
図6では、白抜きの四角の中に動物を示す「動」の字を付したもの)が表示される。
画像表示領域303bには、当該種の画像が表示される。
リスト表示領域303cには、都道府県レッドリストの情報が地図に重ねて表示される。制御手段20は、例えば他のシステム(図示せず)で予め作成されている保全指標生物ごとの都道府県RL指定状況を表したマップを取得してリスト表示領域303cに表示する。なお、オープニング画面201で入力された計画地の情報を用いてレッドリストDB12を検索し、都道府県ごとの保全指標種リスト305(
図5参照)を取得し、その情報を用いてリスト表示領域303cの表示を行ってもよい。リスト表示領域303cの上方には、環境省レッドリストの情報が表示されている。
【0048】
分布情報表示領域303dには、当該種が分布する場所の説明が表示されている。
特徴情報表示領域303eには、当該種の特徴の説明が表示されている。
生息範囲情報表示領域303fには、生息範囲の広さが図形を用いて表示されている。ここでは、生息範囲の広さ「広い、中程度、狭い」を円の大きさ「大、中、小」に対応させて表している。生息範囲が「広い」とは、例えば数十m以上であり、「中程度」とは、例えば数mから数十mであり、「狭い」とは、例えば数m以内である。
【0049】
水辺環境情報表示領域303gには、当該種が利用する水辺環境についての情報が記号を用いて表示されている。例えば、黒丸の記号は「必須」であることを表し、二重丸の記号は「好む」ことを表し、三角の記号は「利用することができる」ことを表し、バツの記号は「不可」であることを表す。
図6では、池や沼および湿地は「必須」であり、河川や水路は「不可」であることを表している。
水域条件情報表示領域303hには、当該種が利用する水域の条件についての情報が記号を用いて表されている。記号の内容は、水辺環境情報表示領域303gと同様であり、
図6では、水位変動や流水は「不可」であり、止水は「必須」であることを表している。なお、ハイフンの記号は「不要」を意味し、湧水は「不要」であることを示している。
【0050】
難易度情報表示領域303iには、当該種を代償する場合の難易度が図形を用いて表示されている。
図6での「太い実線の円」の中に「可」の文字を付した記号は、代償の難易度が「困難でない」ことを表しており、「太い破線の円」の中に「難」の文字を付した記号は、代償の難易度が「困難である」ことを表しており、「細い破線の円」の中に「きわめて困難」の文字を付した記号は、代償の難易度が「きわめて困難である」ことを表している。なお、中の文字を省略して図形でのみ代償の難易度を表現してもよい。
生活史情報表示領域303jには、当該種の成育過程における形態の変化(例えば、繁殖期、幼生、幼体、成体)に対応付けて活動時期が表示されている。
【0051】
また、生態情報表示画面303は、「生息・生育環境を見る」ボタン303p、PDF出力ボタン303q、および図鑑参照ボタン303rを有する。
【0052】
ユーザが「生息・生育環境を見る」ボタン303pを押下すると、保全計画支援装置2の制御手段20は、当該種が生息・生育する環境の画像を含む生息生育環境画面304(
図5参照)をユーザ端末3に表示させる。制御手段20は、例えば当該種が生息・生育する環境の画像を外部の記憶手段から取得し、取得した画像を用いて生息生育環境画面304を作成する。
【0053】
ユーザがPDF出力ボタン303qを押下すると、制御手段20は、生態情報表示画面303に含まれる当該種の生態情報をPDFファイルとして出力する。
ユーザが図鑑参照ボタン303rを押下すると、制御手段20は、当該種のより詳細な情報が掲載されるサイト(例えば、図鑑が形成されるサイト)に接続し、当該種のより詳細な情報をユーザ端末3に表示させる。
【0054】
(動植物の保全情報提供サービス(いきものを保全する))
図5に示すサービスの選択画面202でユーザが動植物の保全情報提供サービスを選択した場合、制御手段20は、保全指標生物を選択(複数を指定可能)するための選択画面401をユーザ端末3に表示させる。選択画面401は、例えばオープニング画面201で入力された計画地の情報(またはさらに細かい地域の入力を要求してもよい)に対応する種名を一覧で表示したものであってよい。ユーザは、選択画面401を介して、保全措置(ここでは「代償」を想定)の検討対象である少なくとも一つの種(動植物)を選択する。
【0055】
次に、制御手段20は、選択画面401で選択された種(動植物)と保全に必要な環境を分類した環境タイプとを関連づけた環境タイプ表示画面402をユーザ端末3に表示させる。環境タイプ表示画面402の一例を
図7に示す。
図7では、「アサザ」、「トウキョウダルマガエル」、「イチョウウキゴケ」、「モリアオガエル」、「ヘラオモダカ」および「ゲンジホタル」の6種が選択された場合を想定している。
【0056】
図7に示すように、環境タイプ表示画面402は、代償地評価表示領域402a、都道府県RLランク表示領域402h、環境省RLランク表示領域402i、および難易度表示領域402jを含む。環境タイプ表示画面402は、主に保全指標生物DB11に格納される情報によって作成される。
【0057】
代償地評価表示領域402aには、選択された種に関して、環境タイプごとの代償地としての評価が表示される。代償地評価表示領域402aは、タイプ情報表示領域402bおよびテーブル表示領域402cを含む。
【0058】
タイプ情報表示領域402bには、各々の環境タイプに関する情報が表示されている。タイプ情報表示領域402bは、環境タイプA~環境タイプFに分かれている。環境タイプAは「水田」であり、環境タイプBは「貧栄養湿地」であり、環境タイプCは「その他の湿地」であり、環境タイプDは「池沼」であり、環境タイプEは「河川・水路」であり、環境タイプFは「河川の緩流域(岸部、ワンド)」である。
【0059】
また、各々の環境タイプは、条件によって細分化されている。
図7では、環境タイプA~環境タイプEは、「環境タイプに該当する場所だけあればよい」、「周辺に樹林・草地が必要」、「周辺の樹林・草地に加えて隣接する樹林・草地が必要」、「他の種(生息に不可欠な特定の生物)が生息していることが必要」の4つの条件に細分化されている。環境タイプFは、「「環境タイプに該当する場所だけあればよい」、「他の種(生息に不可欠な特定の生物)が生息していることが必要」の2つの条件に細分化されている。なお、
図7に示すものは、細分化の一例である。
【0060】
テーブル表示領域402cには、環境タイプおよび条件ごとに代償地としての適否が分かるようにテーブルとして表示されている。テーブル表示領域402cに表示されるテーブルは、行および列で構成されており、行に種を配置すると共に列に環境タイプ(条件も含む)を配置している(つまり、行に種が対応付けられ、列に環境タイプ(条件も含む)が対応付けられている)。なお、種名および環境タイプの配置は逆であってもよい。そして、当該種にとって環境タイプおよび条件が代償地として適している場合、各マスに「白抜きの丸」が表示されている。例えば、「トウキョウダルマガエル」の場合、水田を代償地とするのであれば周辺の樹林・草地に加えて隣接する樹林・草地が必要であり、他の種(生息に不可欠な特定の生物)が生息していることが必要ないことを示している。つまり、環境タイプに該当する場所だけや、周辺に樹林・草地があるだけでは代償地として適していないことを示している。また、代償地に当該種の生物を生息させるだけでは適切でないことを示している。これにより、ユーザは、例えば最も多くの種(動植物)を保全できる環境タイプを一目瞭然で判断できる。
【0061】
都道府県RLランク表示領域402hには、都道府県レッドリストのランクが当該種に関連付けて表示されている。また、環境省RLランク表示領域402iには、環境省レッドリストのランクが当該種に関連付けて表示されている。都道府県レッドリストのランクの分類および環境省レッドリストのランクの分類は同じであり、「絶滅」、「絶滅危惧I類」、「絶滅危惧II類」、「準絶滅危惧種」などの7つに分類されている。
図7では、レッドリストのランクを図形と図形の中に描かれる模様との組合せで表現している。都道府県のレッドリストのランクは、四角形およびその中に描かれる模様で表しており、環境省のレッドリストのランクは、ひし形およびその中に描かれる模様で表している。ユーザは、都道府県RLランク表示領域402hや環境省RLランク表示領域402iに表示されるランクを確認し、選択画面401を用いた種の選択をやり直すこともできる。これにより、ユーザは、環境タイプ表示画面402を参照することで、保全の必要性がより高い動植物についての環境タイプを重点的に確認できる。
【0062】
難易度表示領域402jには、保全措置として代償を実施する場合の難易度が当該種に関連付けて表示されている。
図7では、代償の難易度を円の線種によって表現している。例えば、「太い実線の円」は代償の難易度が「困難でない」ことを表しており、「太い破線の円」は代償の難易度が「困難である」ことを表しており、「細い破線の円」は代償の難易度が「きわめて困難である」ことを表している。これにより、ユーザは、環境タイプ表示画面402を参照することで、代償を実施した後で目的とする動植物が代償地で生息してくれるかという見通しを予め把握することが可能である。つまり、本実施形態では、代償の難易度を成功可能性の目安として示している。
【0063】
なお、本実施形態では、
図7に示すように、環境タイプを条件によってさらに細分化していたが、条件で細分化せずに環境タイプの評価のみを環境タイプ表示画面402に表示してもよい。また、都道府県および環境省のレッドリストランク、ならびに代償の難易度を代償地評価表示領域402aに並べて表示していたが、レッドリストランクや代償の難易度を環境タイプ表示画面402に表示しなくてもよい。
【0064】
また、環境タイプ表示画面402のテーブル表示領域402cに表示される種名の部分は、選択可能なボタンとして機能するようになっている。ユーザがテーブル表示領域402cの種名部分を押下すると、制御手段20は、押下された当該種の生態情報表示画面303(
図6参照)をユーザ端末3に表示させる。
【0065】
また、環境タイプ表示画面402のタイプ情報表示領域402bに表示される条件の部分(環境タイプを示すイラストの下の領域)は、選択可能なボタンとして機能するようになっている。ユーザがタイプ情報表示領域402bの条件部分を押下すると、制御手段20は、代償地のイメージや環境条件を含む環境条件表示画面403(
図5参照)をユーザ端末3に表示させる。環境条件表示画面403の一例を
図8に示す。
図8は、環境タイプ表示画面402(
図7参照)における環境タイプA(水田)の条件「周辺の樹林・草地に加えて隣接する樹林・草地が必要」がユーザによって押下された場合の画面であり、環境タイプAの当該条件に適している種である「トウキョウダルマガエル」、「イチョウウキゴケ」、「モリアオガエル」、「ヘラオモダカ」に関する情報が表示される。
【0066】
図8に示すように、環境条件表示画面403は、選択種表示領域403a、代償地イメージ表示領域403b、および環境条件情報表示領域403cを含む。環境条件表示画面403は、主に保全指標生物DB11に格納される情報によって作成される。
【0067】
選択種表示領域403aには、ユーザによって選択された環境タイプおよび条件に適している種を特定する情報(
図8では種名)が表示される。種名の横にはラジオボタンが設けられており、何れか一つの種を選択できるようになっている。
代償地イメージ表示領域403bには、選択された環境タイプを示すイメージ画が表示される。
図8は、環境タイプA(水田)の条件「周辺の樹林・草地に加えて隣接する樹林・草地が必要」を選択された場合を想定しているので、代償地イメージ表示領域403bには、環境タイプAに対応する水田のイメージ画が表示され、また周辺の樹林・草地を表すイメージ画(水田のイメージ画の右上方に配置されるイメージ画)が表示され、さらに隣接する樹林・草地を表すイメージ画(左側の小さいイメージ画)が表示されている。
【0068】
環境条件情報表示領域403cには、代償地に求められる環境条件が表示される。環境条件情報表示領域403cは、光に関する条件を表示する光条件情報表示領域403d、水に関する条件を表示する水条件情報表示領域403e、および土その他に関する条件を表示する土条件情報表示領域403fを有する。
環境条件情報表示領域403cに表示される環境条件には、植物に関するものと動物に関するものとがある。植物に関する環境条件には、四角形の中に「植」を記した記号が付されており、動物に関する環境条件には、四角形の中に「動」を記した記号が付されている。
【0069】
環境条件情報表示領域403cでは、各々の環境条件の必要度を4~5段階で分類し、各分類に記号を対応付けて表示する。
図8では必要度が最も高い分類に「黒丸」を対応づけ、その次に必要度が高い分類に「二重丸」を対応付け、その次に必要度が高い分類に「白丸」を対応づけ、その次に必要度が高い分類に「白三角」を対応付け、必要度が最も低い分類に「ハイフンまたはバツ印」を対応付けている。「ハイフン」は、なくても良いことを示しており、「バツ印」は、あってはいけないことを示している。なお、情報がない項目はブランク(空白)になっている。
【0070】
環境条件情報表示領域403cに表示される各々の環境条件の必要度の情報は、保全指標生物DB11に格納されている。保全計画支援装置2の制御手段20は、種を特定する情報を用いて保全指標生物DB11を検索し、取得した各々の環境条件の必要度の情報を環境条件情報表示領域403cに表示させる。なお、複数の種が選択されている場合には、より高い分類の必要度が表示される。
【0071】
例えば、選択中の植物Aの「日照(陸域)明るい」の必要度が「黒丸(最も高い)」であり、「日照(陸域)やや暗い」の必要度が「ハイフン(最も低い)」であったとする。また、選択中の植物Bの「日照(陸域)明るい」の必要度が「ハイフン(最も低い)」であり、「日照(陸域)やや暗い」の必要度が「黒丸(最も高い)」であったとする。この場合、光条件情報表示領域403dの環境条件「日照(陸域)明るい」および「日照(陸域)やや暗い」には、ともに「黒丸(最も高い)」が表示される。つまり、
図8では、保全指標生物として4種が選択されており、このうちの「イチョウウキゴケ」および「ヘラオモダカ」が植物になる。環境条件「日照(陸域)」には「植」という記号が付されているように植物の条件を示すものであるので、保全指標生物DB11でこの2種の植物の環境条件「日照(陸域)」の項目を参照し、より必要度が高い方を抽出して表示させる。
【0072】
また、環境条件表示画面403は、「環境条件の詳細を見る」ボタン403g、「保全対策例と配慮事項を見る」ボタン403h、および「代償地の適地を見る」ボタン403iを有する。
【0073】
ユーザが選択種表示領域403aに設けられたラジオボタンを用いて一つの種を選択し、その後で「環境条件の詳細を見る」ボタン403gを押下すると、制御手段20は、選択された種の環境条件の詳細を表示した画面(図示せず)をユーザ端末3に表示させる。
【0074】
また、ユーザが選択種表示領域403aに設けられたラジオボタンを用いて一つの種を選択し、その後で「保全対策例と配慮事項を見る」ボタン403hを押下すると、制御手段20は、選択された種を保全するための対策例および配慮事項を含んだ対策例等表示画面404(
図5参照)をユーザ端末3に表示させる。対策例等表示画面404の一例を
図9に示す。
図9は、環境条件表示画面403(
図8参照)で「トウキョウダルマガエル」が選択された場合の画面である。
【0075】
図9に示すように、対策例等表示画面404は、対策例等表示領域404a、対策時期表示領域404b、具体策表示領域404c、および関係生物表示領域404dを有する。
【0076】
対策例等表示領域404aには、当該種を保全するための対策例や配慮事項が表示される。対策時期表示領域404bには、対策例を実施するのに適した時期が表示される。具体策表示領域404cには、より詳細な具体策が表示される。関係生物表示領域404dには、関係する生物に関する情報が表示される。
【0077】
また、対策例等表示画面404は、PDF出力ボタン404eを有する。ユーザがPDF出力ボタン404eを押下すると、保全計画支援装置2の制御手段20は、対策例等表示画面404に含まれる当該種の対策例等の情報をPDFファイルとして出力する。
【0078】
また、対策例等表示画面404の対策例等表示領域404aに表示される種名の部分は、選択可能なボタンとして機能するようになっている。ユーザが対策例等表示領域404aの種名部分を押下すると、制御手段20は、押下された当該種の生態情報表示画面303(
図6参照)をユーザ端末3に表示させる。
【0079】
図8に戻って環境条件表示画面403の説明を続ける。ユーザが選択種表示領域403aに設けられたラジオボタンを用いて一つの種を選択し、その後で「代償地の適地を見る」ボタン403iを押下すると、制御手段20は、入力された計画地に対応する適地マップ601(
図11参照)をユーザ端末3に表示させる。適地マップ601の表示方法は特に限定されず、他の画面とは別の画面として表示してもよいし、他の画面に重ねて表示してもよい。
【0080】
上述した「動植物の検索サービス」で動物の生態を知ることができる。また、ここまで説明してきた「動植物の保全情報提供サービス」によって、代償地の環境タイプや条件を知ることができる。しかしながら、例えば代償地として環境タイプや条件に適合した場合であっても、起伏の激しい土地や標高の高い土地は、代償地として相応しくないことが想定される。また、生物の移動しにくい場所や維持管理をしにくい場所は、代償地として相応しくないことが想定される。その為、これらのことを考慮して実際の代償地を決定するのが望ましい。
【0081】
本実施形態では、保全計画支援装置2の制御手段20(特に、適地マップ処理手段24)が、地図情報に基づいて好適環境評価スコアを算出し、算出した好適環境評価スコアと地図情報とを関連付けた適地マップ601(
図11参照)を作成する。
図11に示す適地マップ601は、地図画像に好適環境評価スコアを重ねて表示したものである。作成された適地マップ601は、適地マップDB13に格納される。適地マップ601を作成する時期は特に限定されず、例えば事前に作成される。そして、制御手段20は、
図8に示す「代償地の適地を見る」ボタン403iが押下されたタイミングで入力された計画地に対応する適地マップ601を適地マップDB13から取得し、ユーザ端末3に表示させる。
【0082】
好適環境評価スコアは、HSI(Habitat Suitable Index)モデルの考え方を用いて算出することができる。例えば以下の式(1)によって好適環境評価スコアを算出するのがよい。式(1)の変数V1~V5は次の表によって決定される。好適環境評価スコアは「0~1」の範囲で表され、「1」に近いほど好適であり、「0」に近いほど不適である。
・好適環境評価スコア=V1×V2×V3×V4×V5 ・・・式(1)
なお、本実施形態では、開発対象になりやすい里山の水辺(溜池や湿地など)の動植物に関する保全計画を作成する場合を想定しているので、ここでの好適環境スコアは、水辺の動植物にとって好適であるか否かを表すものである。
例えば、変数V1として、表流水の集まりやすさ(湿潤度)を示す指標と谷地形を表す指標を評価に取り入れている。また、変数V4として、両生類は移動能力が低い(地面を這って移動する)ことを考慮して、道路の面積割合を評価に取り入れている(道路の幅が広いほど横断が困難になる)。
【0083】
【0084】
図10および
図11を参照して、適地マップを作成する処理について説明する。
図10は、適地マップを作成する処理を説明するための図であり、(a)~(d)は各基準(湿潤度、樹林からの距離、道路面積の割合、地表面の傾斜角)の算出結果を地図画像に重ねたものである。
図11は、好適環境評価スコアを地図画像に重ねた適地マップ601の例示である。ユーザは、例えば
図11に示す適地マップ601を参照し、好適環境評価スコアが高い地域から上述した環境タイプおよび条件に該当する場所を代償地として決定することができる。
【0085】
なお、好適環境評価スコアを算出する方法は上述した式(1)を用いるものに限定されない。また、例えば代償地の環境タイプや条件によって変数の数を増減させたり、変数の算出方法を調整するなどを行ってもよい。
【0086】
以上のように、実施形態に係る保全計画支援システム1(特に、保全計画支援装置2)によれば、動植物(種)を指定することで選択された動植物と保全に必要な代償地を分類した環境タイプとを関連付けた環境タイプ表示画面402(
図7参照)をユーザ端末3に表示する。その為、環境タイプ表示画面402を参考にすることで迅速・簡便に保全計画を作成できる。
特に、環境タイプ表示画面402(
図7参照)には、環境タイプおよび条件ごとに代償地としての適否が分かるようにテーブルとして表示している。その為、生物の知識がない人でも動植物の環境タイプを容易に理解でき、例えば検討対象とする動植物を複数指定した場合に、最も多くの動植物を保全できる環境タイプを一目瞭然で判断できる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 保全計画支援システム
2 保全計画支援装置
3 ユーザ端末
3a 入力手段
3b 表示手段
3c 制御手段
3d 通信手段
5 地図情報DB
10 記憶手段
11 保全指標生物DB
12 レッドリストDB
13 適地マップDB
20 制御手段
21 保全計画支援手段
22 知る評価処理手段
23 保全評価処理手段
24 適地マップ処理手段
30 通信手段
303 生態情報表示画面
402 環境タイプ表示画面
403 環境条件表示画面
404 対策例等表示画面
601 適地マップ