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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022075948
(43)【公開日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ペン及びペンシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20220511BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20220511BHJP
   G06F 3/044 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
G06F3/03 400
G06F3/046 A
G06F3/03 400A
G06F3/044 B
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048547
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2020517685の分割
【原出願日】2018-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】久野 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】今田 吉史
(57)【要約】
【課題】ペンとセンサ装置の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減する。
【解決手段】センサ装置に対してNビットの内部デジタル値NAを供給するペンであって、一連の内部デジタル値NAを取得する集積回路27を含む。集積回路27は、第1の内部デジタル値NAに対応する第1の基準デジタル値MSを含む第1の送信データMFを送信することによって、第1の内部デジタル値NAをセンサ装置に対して供給し、第1の基準デジタル値MSから復元されてなる第1の内部デジタル値NAと第2の内部デジタル値NAとの相対値に対応するMビット(M<N)の相対デジタル値MRを含むNビット未満の第2の送信データMFを送信することによって、第2の内部デジタル値NAをセンサ装置に対して供給する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置に対してNビットの内部デジタル値を供給するペンであって、
一連の前記内部デジタル値を取得する集積回路を含み、
前記一連の内部デジタル値は、第1の内部デジタル値と、該第1の内部デジタル値の後に取得された第2の内部デジタル値とを含み、
前記集積回路は、
前記第1の内部デジタル値に対応する第1の基準デジタル値を含む第1の送信データを送信することによって、前記第1の内部デジタル値を前記センサ装置に対して供給し、
前記第1の基準デジタル値から復元されてなる前記第1の内部デジタル値と前記第2の内部デジタル値との相対値に対応するMビット(M<N)の相対デジタル値を含むNビット未満の第2の送信データを送信することによって、前記第2の内部デジタル値を前記センサ装置に対して供給する、
ペン。
【請求項2】
前記集積回路は、前記第1の基準デジタル値から復元された前記第1の内部デジタル値を保持する供給済内部デジタル値保持部を含み、
前記相対値は、前記第2の内部デジタル値と前記供給済内部デジタル値保持部に保持される前記第1の内部デジタル値との相対値である、
請求項1に記載のペン。
【請求項3】
前記相対値は、前記第2の内部デジタル値と前記供給済内部デジタル値保持部に保持される前記第1の内部デジタル値との差分である、
請求項2に記載のペン。
【請求項4】
前記集積回路は、前記相対値に基づいて、前記第2の内部デジタル値に対応する第2の基準デジタル値、及び、前記相対デジタル値のいずれを前記第2の送信データに設定するかを判定する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のペン。
【請求項5】
前記集積回路は、前記相対値がMビットで表現できる数値である場合に、前記相対デジタル値を前記第2の送信データに設定すると判定し、前記相対値がMビットで表現できない数値である場合に、前記第2の基準デジタル値を前記第2の送信データに設定すると判定する、
請求項4に記載のペン。
【請求項6】
前記第2の基準デジタル値は、前記第2の内部デジタル値を圧縮することによって得られるMビットのデジタル値である、
請求項4又は5に記載のペン。
【請求項7】
前記集積回路は、前記第2の基準デジタル値から誤差なしで前記第2の内部デジタル値を復元可能である場合に、前記相対値によらず、前記第2の内部デジタル値に対応する第2の基準デジタル値を前記第2の送信データに設定すると判定する、
請求項6に記載のペン。
【請求項8】
前記集積回路は、前記相対値に基づいて、前記第2の内部デジタル値に対応する第2の基準デジタル値、Lビット(L<M)で表現された前記相対値である前記相対デジタル値、及び、L+Kビット(1≦K≦N-M)で表現された前記相対値の上位Lビットである中間精度相対デジタル値のいずれを前記第2の送信データに設定するかを判定する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のペン。
【請求項9】
前記集積回路は、前記相対値がLビットで表現できる数値である場合に、前記相対デジタル値を前記第2の送信データに設定すると判定し、前記相対値がLビットで表現できないがL+Kビットで表現できる数値である場合に、前記中間精度相対デジタル値を前記第2の送信データに設定すると判定し、前記相対値がL+Kビットで表現できない数値である場合に、前記第2の基準デジタル値を前記第2の送信データに設定すると判定する、
請求項8に記載のペン。
【請求項10】
前記第2の送信データは、前記第2の基準デジタル値を含む場合に、第1の値を示す第1の識別フラグをさらに含み、
前記第2の送信データは、前記中間精度相対デジタル値を含む場合に、前記第1の値とは異なる第2の値を示す前記第1の識別フラグ、及び、第3の値を示す第2の識別フラグをさらに含み、
前記第2の送信データは、前記相対デジタル値を含む場合に、前記第2の値を示す前記第1の識別フラグ、及び、前記第3の値とは異なる第4の値を示す前記第2の識別フラグをさらに含む、
請求項9に記載のペン。
【請求項11】
前記集積回路は、
供給済みの前記内部デジタル値に対応する参照値を前記センサ装置から受信した場合に、該参照値を保持する供給済内部デジタル値保持部を含み、
前記供給済内部デジタル値保持部に保持される値に応じて前記内部デジタル値を前記センサ装置に対して供給するための動作を行う、
請求項1に記載のペン。
【請求項12】
前記集積回路は、前記第2の内部デジタル値と前記供給済内部デジタル値保持部に保持される前記参照値とに基づいて前記相対値を取得する、
請求項11に記載のペン。
【請求項13】
前記集積回路は、
前記センサ装置に対して供給済みの1以上の前記内部デジタル値に基づいて前記内部デジタル値の予測値を取得可能に構成され、
前記第2の内部デジタル値と前記予測値とに基づいて前記相対値を取得する、
請求項1に記載のペン。
【請求項14】
センサ装置に対してNビットの内部デジタル値を供給するペンであって、
一連の前記内部デジタル値を取得する集積回路を備え、
前記集積回路は、供給済みの前記内部デジタル値に対応する参照値を前記センサ装置から受信し、前記一連の内部デジタル値に含まれる第1の内部デジタル値と前記参照値との相対値に対応するMビット(M<N)の相対デジタル値を含むNビット未満の送信データを送信することによって、前記第1の内部デジタル値を前記センサ装置に対して供給する、
ペン。
【請求項15】
前記参照値は、前記センサ装置が前記送信データから復元した前記内部デジタル値である、
請求項14に記載のペン。
【請求項16】
ペンと装置とを含み、Nビットの内部デジタル値を出力するペンシステムであって、
前記ペンは、一連の前記内部デジタル値を取得する集積回路を含み、
前記集積回路は、前記内部デジタル値の値が小さいほど量子化ステップが小さくなる圧縮方法により前記一連の内部デジタル値に含まれる第1の内部デジタル値を圧縮してなる基準デジタル値を含む第1の送信データを送信することによって、前記第1の内部デジタル値を前記装置に対して供給し、
前記装置は、前記第1の送信データから前記第1の内部デジタル値を復元して出力するよう構成される、
ペンシステム。
【請求項17】
前記圧縮方法は、相対的に大きなビット数で表現される離散値を相対的に小さなビット数で表現される離散値に変換する処理である、
請求項16に記載のペンシステム。
【請求項18】
前記一連の内部デジタル値は、前記第1の内部デジタル値の後に取得された第2の内部デジタル値を含み、
前記集積回路は、前記第1の送信データを送信した後、前記第2の内部デジタル値と前記基準デジタル値から復元されてなる前記第1の内部デジタル値との相対値に対応するMビット(M<N)の相対デジタル値を含むNビット未満の第2の送信データを送信することによって、前記第2の内部デジタル値を前記装置に対して供給する、
請求項16又は17に記載のペンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペン、センサ装置、及びペンシステムに関し、特に、デジタル値の送信を行うペン、該デジタル値を受信するセンサ装置、及びこれらを含むペンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
交流電界、交流磁界、又は交流電磁界を変化させることにより、センサ装置に向けてデジタル値を送信するペンが知られている。例えば特許文献1には、連続操作に対応する連続量(例えば筆圧)の情報を表すデジタル値をセンサ装置に向けて送信するペンが開示されている。
【0003】
また、センサ装置を構成するタッチセンサをインセル形式によって内蔵してなるディスプレイ装置が知られている。この種のディスプレイ装置を用いるペンシステムにおいては、ペンからセンサ装置への信号送信はディスプレイ非駆動期間内に実行されるが、ディスプレイ非駆動期間の時間長は固定長データである筆圧値を送信するには短すぎるため、筆圧値の送信は、アップリンク信号により規定される1フレーム中に散在する複数のディスプレイ非駆動期間内に分割して実行される。特許文献2には、このような分割送信を行うペンシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3135183号
【特許文献2】国際公開第2018/066100号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、8196段階の階調により筆圧値を表現するなど、ペンからセンサ装置に向けて送信するデータのサイズが増加傾向にある。その結果、特に特許文献2のようにディスプレイ非駆動期間内に通信時間が制限されるなどに、ペンとセンサ装置の間の通信に用いることのできる通信リソースが不足しがちになっており、改善が必要とされている。加えて、近年では同時に複数のペンを利用可能とするマルチペン方式が普及の兆しを見せており、そうすると通信リソースのさらなる不足が懸念される。
【0006】
したがって、本発明の目的の一つは、ペンとセンサ装置の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減できるペン、センサ装置、及びペンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によるペンは、センサ装置に対してNビットの内部デジタル値を供給するペンであって、ペン先端部に加えられた力を検出する筆圧検出部と、アンテナと、前記筆圧検出部及び前記アンテナに接続され、前記筆圧検出部の状態に基づいて一連の前記内部デジタル値を取得する集積回路と、を含み、前記一連の内部デジタル値は、第1の内部デジタル値と、該第1の内部デジタル値の後に取得された第2の内部デジタル値とを含み、前記集積回路は、前記第1の内部デジタル値に対応する第1の基準デジタル値を含む第1の送信データを前記アンテナから送信することによって、前記第1の内部デジタル値を前記センサ装置に対して供給し、前記第1の基準デジタル値から復元されてなる前記第1の内部デジタル値と前記第2の内部デジタル値との相対値に対応するMビット(M<N)の相対デジタル値を含むNビット未満の第2の送信データを前記アンテナから送信することによって、前記第2の内部デジタル値を前記センサ装置に対して供給する、ペンである。
【0008】
また、本発明の第1の側面によるセンサ装置は、ペン先端部に加えられた力に基づいてそれぞれNビットの一連の内部デジタル値を取得するように構成されたペンから、前記一連の内部デジタル値の供給を受けるセンサ装置であって、前記一連の内部デジタル値は、第1の内部デジタル値と、該第1の内部デジタル値の後に取得された第2の内部デジタル値とを含み、前記センサ装置は、前記第1の内部デジタル値に対応する第1の基準デジタル値を含む第1の送信データを前記ペンから受信した場合に、該第1の送信データから前記第1の内部デジタル値を復元するとともに内部メモリに格納し、前記第1の基準デジタル値から復元されてなる前記第1の内部デジタル値と前記第2の内部デジタル値との相対値に対応するMビット(M<N)の相対デジタル値を含むNビット未満の第2の送信データを前記ペンから受信した場合に、前記内部メモリに格納されている値を用いて、前記第2の送信データから前記第2の内部デジタル値を復元する、センサ装置である。
【0009】
本発明の第2の側面によるペンは、センサ装置に対してNビットの内部デジタル値を供給するペンであって、アンテナと、前記操作部及び前記アンテナに接続され、一連の前記内部デジタル値を取得する集積回路と、を備え、前記集積回路は、供給済みの前記内部デジタル値に対応する参照値を前記センサ装置から受信し、前記一連の内部デジタル値に含まれる第1の内部デジタル値と前記参照値との相対値に対応するMビット(M<N)の相対デジタル値を含むNビット未満の送信データを前記アンテナから送信することによって、前記第1の内部デジタル値を前記センサ装置に対して供給する、ペンである。
【0010】
本発明の第2の側面によるセンサ装置は、ペン先端部に加えられた力に基づいてそれぞれNビットの一連の内部デジタル値を取得するように構成されたペンから、前記一連の内部デジタル値の供給を受けるセンサ装置であって、前記ペンに対して参照値を送信し、前記一連の内部デジタル値に含まれる第1の内部デジタル値と前記参照値との相対値に対応するMビット(M<N)の相対デジタル値を含むNビット未満の送信データを前記ペンから受信した場合に、前記参照値を用いて、前記送信データから前記第1の内部デジタル値を復元する、センサ装置である。
【0011】
本発明によるペンシステムは、ペンと装置とを含み、Nビットの内部デジタル値を出力するペンシステムであって、前記ペンは、ペン先端部に加えられた力を検出する筆圧検出部と、アンテナと、前記筆圧検出部及び前記アンテナに接続され、前記筆圧検出部の状態に基づいて一連の前記内部デジタル値を取得する集積回路と、を含み、前記集積回路は、前記内部デジタル値の値が小さいほど量子化ステップが小さくなる圧縮方法により前記一連の内部デジタル値に含まれる第1の内部デジタル値を圧縮してなる基準デジタル値を含む第1の送信データを前記アンテナから送信することによって、前記第1の内部デジタル値を前記センサ装置に対して供給し、前記装置は、前記第1の送信データから前記第1の内部デジタル値を復元して出力するよう構成される、ペンシステムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の側面によれば、Nビットの内部デジタル値をNビット未満の送信データにより供給することができるので、ペンとセンサ装置の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減することが可能になる。
【0013】
本発明の第2の側面によれば、通信エラーなどによりペンが取得している内部デジタル値とセンサ装置が取得している内部デジタル値の間に誤差が生じたとしても、参照値の送受信後には誤差を解消することが可能になる。
【0014】
本発明によるペンシステムによれば、基準デジタル値の送信時に生じ得る誤差をユーザに感じさせてしまう可能性を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態によるペンシステム1のシステム構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施の形態の原理を説明する図である。
図3】集積回路27の機能ブロックを示す略ブロック図である。
図4】集積回路27が行う内部デジタル値NAの送信処理を示すフロー図である。
図5】(a)(b)はそれぞれ、内部デジタル値NAの圧縮方法の一例を示す図である。
図6図4に示した処理の過程で使用する各値の具体的な例を示す図である。
図7図4に示した処理の過程で使用する各値の具体的な例を示す図である。
図8】センサコントローラ31が行う内部デジタル値NAの受信処理を示すフロー図である。
図9】(a)(b)はそれぞれ、ペン2及びセンサ装置3のそれぞれにおいて取得される各種デジタル値の時間変化を示す図である。
図10】本発明の第1の実施の形態の実施例を示す図である。
図11】本発明の第1の実施の形態の実施例を示す図である。
図12】本発明の第1の実施の形態の実施例を示す図である。
図13】本発明の第1の実施の形態の実施例を示す図である。
図14】本発明の第2の実施の形態の原理を説明する図である。
図15】本発明の第2の実施の形態による集積回路27が行う内部デジタル値NAの送信処理を示すフロー図である。
図16】本発明の第2の実施の形態によるセンサコントローラ31が行う内部デジタル値NAの受信処理を示すフロー図である。
図17】本発明の第2の実施の形態の実施例を示す図である。
図18】本発明の第3の実施の形態による集積回路27が行う内部デジタル値NAの送信処理を示すフロー図である。
図19】本発明の第3の実施の形態によるセンサコントローラ31が行う内部デジタル値NAの受信処理を示すフロー図である。
図20】本発明の第3の実施の形態の実施例を示す図である。
図21】本発明の第4の実施の形態によるペン2及びセンサ装置3のそれぞれにおいて取得される各種デジタル値の時間変化を示す図である。
図22】本発明の第4の実施の形態による集積回路27の機能ブロックを示す略ブロック図である。
図23】本発明の第5の実施の形態による集積回路27が行う処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるペンシステム1のシステム構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態によるペンシステム1は、ペン2と、センサ装置3と、ホストコンピュータ4とを有して構成される。このうちホストコンピュータ4は、タブレット型、ノート型、デスクトップ型など各種タイプのコンピュータである。
【0018】
センサ装置3は、アクティブES方式、電磁共鳴(EMR)方式、感圧方式などの各種方式に対応する位置検出装置であり、タッチ面3tを構成するセンサ30と、集積回路であるセンサコントローラ31とを有して構成される。図示していないが、センサ30は、タッチ面3t内に複数の電極が配置された構成を有している。センサコントローラ31は、これらの電極を用いてタッチ面3t内におけるペン2の位置を検出するとともに、これらの電極を介してペン2が送信した信号(以下、「ダウンリンク信号DS」という)を受信することにより、ペン2が送信したデータを受信する。
【0019】
センサ装置3がアクティブES方式又は電磁共鳴(EMR)方式に対応する場合について具体的に説明すると、ダウンリンク信号DSには、無変調のバースト信号と、各種データによって変調されてなるデータ信号とが含まれる。バースト信号は、センサコントローラ31がタッチ面3t内におけるペン2の位置を検出するために用いられる信号である。センサコントローラ31は、センサ30を構成する複数の電極を順次走査することによりバースト信号が受信されている電極を決定し、その結果に基づいてペン2の位置を検出する。データ信号は、ペン2が取得した各種の内部デジタル値(後述する操作部によって取得される筆圧値やホイール指示値など)を含む信号である。センサコントローラ31は、センサ30を構成する複数の電極のうちペン2の位置に最も近いものをアンテナとして用いてデータ信号を受信することにより、ペン2が送信したデータを受信する。
【0020】
センサコントローラ31からペン2に対しても、信号を送信可能としてもよい。以下、こうして送信される信号を「アップリンク信号US」と称する。センサコントローラ31は、センサ30を構成する複数の電極を送信アンテナとして用いて、アップリンク信号USの送信を行う。
【0021】
アップリンク信号USには、センサコントローラ31からペン2に対する命令(コマンド)が含まれ得る。ペン2は、アップリンク信号USを受信したタイミングに基づいてダウンリンク信号DSの送信タイミングを決定するとともに、アップリンク信号USに含まれるコマンドに基づいて、ダウンリンク信号DSにより送信する内部デジタル値の種類を決定する。
【0022】
センサコントローラ31は、検出した位置及び受信したデータをホストコンピュータ4に供給する。ホストコンピュータ4は、こうして供給された一連の位置及び信号に基づいてペン2の軌跡を示すストロークデータを生成し記憶するとともに、記憶したストロークデータのレンダリングを行う。
【0023】
なお、本実施の形態では、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSはセンサ30を介して送受信されるものとして説明するが、アップリンク信号USは、その他の通信方式(例えば、ブルートゥース(登録商標)、無線LANなど)によって送受信されるものとしてもよい。
【0024】
センサ30は、一例では、タブレット型であるホストコンピュータ4のディスプレイ装置内にインセル形式で内蔵される。この場合、ディスプレイ装置内で行われる画素駆動により発生するノイズの影響を避けるため、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信は、例えば液晶表示装置の垂直帰線期間又は水平帰線期間などのディスプレイ非駆動期間内に実行される。ディスプレイ駆動期間内にはアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信を行うことができないので、ペン2とセンサ装置3の間の通信に用いることのできる通信リソースは大幅に制限されることになる。
【0025】
ここで、ペン2と、インセル形式でディスプレイ装置に内蔵されたセンサ30を有するセンサ装置3との間では、通常、1フレーム内に複数の時間スロット(=ディスプレイ非駆動期間)を含むフレーム通信により通信が行われる。この場合、アップリンク信号USの送信のために使用される時間スロットは、予め、ダウンリンク信号DSの送信のために使用される時間スロットとは別に確保される。したがって、第4の実施の形態で説明するようにアップリンク信号USにより参照値Refを送信する場合であっても、そのことによってダウンリンク信号DSの送信が妨げられることはない。
【0026】
ペン2は、センサ装置3と同じ方式(例えばアクティブES方式又は電磁共鳴(EMR)方式)に対応する電子ペンであり、芯体20、アンテナ22、筆圧検出部23、電源26、及び集積回路27を有して構成される。
【0027】
芯体20は、その長手方向がペン2のペン軸方向と一致するように配置される棒状の部材であり、その一端はペン2のペン先端部21を構成する。芯体20の表面には導電性材料が塗布され、アンテナ22を構成している。
【0028】
アンテナ22は、芯体20の近傍に設けられる導電体であり、配線により集積回路27と電気的に接続されている。集積回路27は、このアンテナ22を介して、上述したアップリンク信号USの受信及びダウンリンク信号DSの送信を行う。ただし、上述したバースト信号以外の信号は、アンテナ22以外のアンテナ(図示せず。例えば、ブルートゥース(登録商標)用の内蔵アンテナ)を用いて送受信することとしてもよい。また、アンテナ22を送信用のアンテナと受信用のアンテナとに分離することとしてもよい。
【0029】
筆圧検出部23は、ペン先端部21に加えられた力(筆圧)を検出する機能部である。具体的には説明すると、筆圧検出部23は芯体20の後端部と当接しており、この当接を通じて、ユーザがペン2のペン先をタッチ面3t等に押し当てたときにペン先端部21に加わる力を検出するよう構成される。具体的な例では、筆圧検出部23は、ペン先端部21に加えられた力に応じて静電容量の変化する可変容量モジュールにより構成される。
【0030】
ここで、筆圧検出部23は、ユーザによる操作の量(具体的には、ユーザがタッチ面3tを押す力の大きさ)を検出する操作部であると言うことができ、ペン2は、筆圧検出部23の他にもこのような操作部を含むことができる。例えば、ユーザによって回転可能なホイールを含み、ホイールの回転量を検出するホイール操作部をペン2に設けてもよい。
【0031】
電源26は、集積回路27に動作電力(直流電圧)を供給するためのもので、例えば円筒型のAAAA電池により構成される。
【0032】
集積回路27は、図示しない基板に形成された回路群によって構成される処理部であり、操作部及びアンテナ22に接続される。アップリンク信号USの受信又はダウンリンク信号DSの送信のためにアンテナ22以外のアンテナを用いる場合には、集積回路27は、そのアンテナにも接続される。集積回路27は、筆圧検出部23の状態(或いは、その他の操作部の状態)に基づいてそれぞれNビットの一連の内部デジタル値NAを取得し、ダウンリンク信号DSを用いて順次センサ装置3に供給する役割を担うが、Nビットのままで送信すると通信リソースが不足するおそれがあるため、図1に示すように、Nビット未満の送信データMFに変換してから送信するよう構成される。本実施の形態の特徴は、集積回路27がこうしてNビット未満の送信データMFを送信するとしても、センサ装置3において元のNビットの内部デジタル値NAを復元することができ、ホストコンピュータ4にはNビットの内部デジタル値NAが提供されるようにペン2及びセンサ装置3を構成する点にある。以下、この点について詳しく説明する。
【0033】
初めに、図2は本実施の形態の原理を説明する図である。集積回路27は、Nビットの内部デジタル値NAを送信するにあたり、内部デジタル値NAそのものに代え、図示した基準デジタル値MS及び相対デジタル値MRのいずれかであるMビット(M<N-1)の送信デジタル値MDと、送信デジタル値MDの種類を示す1ビットの識別フラグFとを含むM+1ビットの送信データMFを送信するよう構成される。
【0034】
基準デジタル値MSは内部デジタル値NAに対応する値であり、具体的には、内部デジタル値NAを圧縮することによって得られるMビットのデジタル値により構成される。この圧縮は、図2の例では、内部デジタル値NAの下位N-Mビットを切り捨てることによって実行されている。ただし、後述するように、他の圧縮方法で基準デジタル値MSを得ることも可能である。
【0035】
相対デジタル値MRは、供給対象の内部デジタル値NAとセンサ装置3に対して供給済みの内部デジタル値NAとの相対値に対応するMビットのデジタル値である。ここでいう供給済みの内部デジタル値NAとは、実際に送信した送信デジタル値MDから内部デジタル値NAを復元したものであり、この送信デジタル値MDを受信したセンサ装置3によって復元される内部デジタル値NAと(後述する通信エラーがない限り)同じものとなる。相対値は、例えば、供給対象の内部デジタル値NAとセンサ装置3に対して供給済みの内部デジタル値NAとの差分である。
【0036】
詳しくは後述するが、集積回路27は、通信を開始したばかりで供給済みの内部デジタル値NAが存在しない場合、内部デジタル値NAが基準デジタル値MSから誤差なしで復元可能なものである場合(例えば、内部デジタル値NAの下位N-Mビットがすべて0である場合)、又は、相対値をMビットで表現できない場合に、基準デジタル値MSを送信デジタル値MDに設定する一方、供給済みの内部デジタル値NAが存在し、内部デジタル値NAが基準デジタル値MSから誤差なしで復元可能なものでなく(例えば、内部デジタル値NAの下位N-Mビットに0でないビットが含まれ)、かつ、相対値をMビットで表現できる場合に、相対デジタル値MRを送信デジタル値MDに設定するよう構成される。なお、相対値をMビットで表現できない場合とは、例えば2の補数を用いてマイナスのデジタル値を表現する場合であれば、相対値が-2M-1~+2M-1-1の範囲に含まれない値となった場合をいう。
【0037】
センサコントローラ31は、Nビット未満の送信データMFをペン2から受信した場合、まず初めに、識別フラグFに基づいてそれが基準デジタル値MS及び相対デジタル値MRのいずれを含むかを判定する。その結果、基準デジタル値MSを含むと判定した場合には、送信デジタル値MD(=基準デジタル値MS)から内部デジタル値NAを復元するとともに、復元した内部デジタル値NAを図示しない内部メモリに格納するよう構成される。図2の例では、この復元は、下位N-Mビットを所定値(例えば0)で補うことによって実行される。この場合、最大でN-Mビット分の誤差が生じ得る。
【0038】
一方、相対デジタル値MRを含むと判定した場合には、センサコントローラ31は、内部メモリに格納されている値を用いて、送信デジタル値MD(=相対デジタル値MR)から内部デジタル値NAを復元するとともに、復元した内部デジタル値NAを図示しない内部メモリに格納するよう構成される。上記した例のように相対デジタル値MRを供給対象の内部デジタル値NAとセンサ装置3に対して供給済みの内部デジタル値NAとの差分により構成する場合、この復元は、内部メモリに格納している値と受信した相対デジタル値MRとを加算することによって実行される。相対デジタル値MRにより復元した内部デジタル値NAは、通信エラー等により送信データMFの欠落が生じない限り、誤差を含まずNビットの精度を保ったデータとなる。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、Nビットの内部デジタル値NAをNビット未満(具体的にはM+1ビット)の送信データMFにより供給することができる。そして、基準デジタル値MSを送信する場合にはある程度の誤差が生じ得るが、この誤差は直後の相対デジタル値MRにより解消することができるので、実質的には問題とならない。しかも、基準デジタル値MSの送信に起因する誤差が発生するのは相対値が大きい場合、すなわち、内部デジタル値NAの変化が大きい場合であり、そのような場合には、多少の誤差があっても(内部デジタル値NAの変化が小さい場合に比べて)人間の知覚に対する影響は限定的となる。したがって、本実施の形態によれば、ペン2とセンサ装置3の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減することが可能になると言える。以下、このような内部デジタル値NAの供給を可能にするための具体的な構成について、詳しく説明する。
【0040】
図3は、集積回路27の機能ブロックを示す略ブロック図である。図3に示すように、集積回路27は機能的に、内部デジタル値取得部100、送信デジタル値取得部101、送信部102、及び供給済内部デジタル値保持部103を含んで構成される。
【0041】
内部デジタル値取得部100は、筆圧検出部23の状態OPS(或いは、その他の操作部の状態)を、Nビットの内部デジタル値に逐次変換する機能部である。内部デジタル値取得部100は、変換により取得される一連の内部デジタル値NAを、順次、送信デジタル値取得部101に供給する。
【0042】
送信デジタル値取得部101は、内部デジタル値取得部100から供給された内部デジタル値NAに基づいて送信デジタル値MD及び識別フラグFを含む送信データMFを生成し、送信部102に供給する機能部である。送信デジタル値取得部101は、内部デジタル値NAが新たに供給された場合に、該内部デジタル値NAに基づいて、次に送信する送信デジタル値MDに基準デジタル値MSと相対デジタル値MRのいずれを設定するかを判定し、判定結果に基づいて、基準デジタル値MSと相対デジタル値MRのいずれかを含む送信データMFを生成するよう構成される。
【0043】
この判定は、2つの判定によって構成される。1つ目は、内部デジタル値NAが基準デジタル値MSから誤差なしで復元可能なものであるか否かの判定である。誤差なしで復元可能であると判定した送信デジタル値取得部101は、内部デジタル値NAに対応する基準デジタル値MSを取得し、次に送信する送信デジタル値MDに設定する。
【0044】
2つ目は、供給済内部デジタル値保持部103に保持される供給済内部デジタル値NSと供給対象の内部デジタル値NAとの相対値がMビットで表現可能なものであるか否かの判定であり、1つ目の判定において誤差なしでは復元できないと判定したことを受けて行われる。Mビットでは表現できないと判定した場合、送信デジタル値取得部101は、内部デジタル値NAに対応する基準デジタル値MSを取得し、次に送信する送信デジタル値MDに設定する。一方、Mビットで表現できると判定した場合には、送信デジタル値取得部101は、相対値を相対デジタル値MRとして取得し、次に送信する送信デジタル値MDに設定する。
【0045】
なお、送信デジタル値取得部101は、1つ目の判定の前に、前回のペンアップ(ペン先端部21がタッチ面3tから離れること)の後、基準デジタル値NAが一度も送信されていないことを示す値(例えば内部デジタル値NAが筆圧である場合であれば、0)が供給済内部デジタル値保持部103に保持されているか否かの判定をさらに行い、この判定の結果が肯定であれば、上記2つの判定によらず、次に送信する送信デジタル値MDに基準デジタル値MSを設定することとしてもよい。こうすることで、ペンダウン(ペン先端部21がタッチ面3tに接触すること)時に、基準デジタル値NAが送信されることなく相対デジタル値NRが送信されてしまうことを防止することが可能になる。
【0046】
供給済内部デジタル値保持部103は、1つ以上のNビットレジスタを含んで構成される機能部であり、供給済内部デジタル値NSを保持する役割を担う。保持される供給済内部デジタル値NSの具体的な保持内容は、送信デジタル値取得部101が生成した送信デジタル値MDの内容に応じて決まる。例えば、送信デジタル値取得部101が送信デジタル値MDに基準デジタル値MSを設定した場合には、基準デジタル値MSからの復元によって得られる内部デジタル値NA(内部デジタル値取得部100によって取得された内部デジタル値NAとは必ずしも一致しない)が供給済内部デジタル値保持部103に設定される。一方、送信デジタル値取得部101が送信デジタル値MDに相対デジタル値MRを設定した場合には、供給済内部デジタル値保持部103が保持している供給済内部デジタル値NSを用いて相対デジタル値MRから復元してなる内部デジタル値NAが供給済内部デジタル値保持部103に設定される。この場合には、復元された内部デジタル値NAと内部デジタル値取得部100によって取得された内部デジタル値NAとが必ず一致するので、復元された内部デジタル値NAに代え、内部デジタル値取得部100によって取得された内部デジタル値NAを供給済内部デジタル値保持部103に設定することとしてもよい。
【0047】
ここで、内部デジタル値取得部100による内部デジタル値NAの取得は常に実行されているわけではなく、センサ装置3に対して内部デジタル値NAを供給する必要がある場合(例えば、ペン2がセンサ装置3を検出している場合)にのみ行われる。送信デジタル値取得部101の動作は、内部デジタル値取得部100から新たな内部デジタル値NAが供給されたことに応じて実行されるので、場合によっては、供給済内部デジタル値保持部103の保持内容がいつまでも更新されない場合が生じ得る。そこで供給済内部デジタル値保持部103は、所定時間にわたり保持内容が更新されない場合に、保持内容を自律的に消去するよう構成される。
【0048】
送信部102は、送信デジタル値取得部101から供給された送信データMFを、ダウンリンク信号DSを構成するデータ信号の一部として、アンテナ22を介してセンサ装置3に送信する機能部である。
【0049】
図4は、集積回路27が行う内部デジタル値NAの送信処理を示すフロー図である。以下、同図を参照しながら、集積回路27が行う内部デジタル値NAの送信処理について、より具体的に説明する。
【0050】
集積回路27はまず初めに、操作部の状態OPS(図3を参照)に基づいて、Nビットの内部デジタル値NAを取得する(ステップS1)。続いて集積回路27は、ステップS1で取得した内部デジタル値NAが基準デジタル値MSから誤差なしで復元可能なものであるか否かを判定する(ステップS3)。なお、この処理は、後述するステップS5の後に実行することとしてもよい。図2の例のように、基準デジタル値MSを内部デジタル値NAの上位Mビットにより構成し、下位N-Mビットを所定値(例えば0)で補うことにより基準デジタル値MSから内部デジタル値NAを復元するようにセンサ装置3を構成する場合であれば、この判定の結果は、内部デジタル値NAの下位N-Mビットがすべて0である場合に肯定となり、そうでない場合に否定となる。集積回路27は、この判定において誤差なしで復元できると判定した場合には、後述するステップS4で取得される相対値によらずステップS6に処理を移し、誤差なしでは復元できないと判定した場合にはステップS4に処理を移す。
【0051】
ステップS4において集積回路27は、供給済内部デジタル値NSとステップS1で取得した内部デジタル値NAとの相対値を取得する(ステップS4)。ここで取得される相対値は、例えば上述したように、供給済内部デジタル値NSとステップS1で取得した内部デジタル値NAとの差分である。そして集積回路27は、取得した相対値がMビットで表現できる数値であるか否かを判定する(ステップS5)。集積回路27は、この判定において表現できないと判定した場合にはステップS6に処理を移し、表現できると判定した場合にはステップS9に処理を移す。
【0052】
ステップS6において集積回路27は、内部デジタル値NAを圧縮することにより、Mビットの基準デジタル値MSを取得する(ステップS6)。この圧縮は、例えば上述したように、内部デジタル値NAの上位Mビットを取り出して基準デジタル値MSとする処理である。
【0053】
ここで、図5を参照しながら、内部デジタル値NAの圧縮方法について、より詳しく説明する。
【0054】
図5(a)(b)はそれぞれ、内部デジタル値NAの圧縮方法の一例を示す図である。なお、これらの図においては、N=12,M=8の例を示している。いずれの圧縮方法も、相対的に大きなビット数で表現される離散値(内部デジタル値NA)を相対的に小さなビット数で表現される離散値(基準デジタル値MS)に変換する処理となっている。
【0055】
図5(a)に示す圧縮方法は、Nビットにより表現可能な2種類の内部デジタル値NAを小さいものから順に2N-Mずつ、合計2個の範囲(以下、この範囲の大きさを「量子化ステップ」という)に区切り、各範囲に基準デジタル値MSの値を割り当てるというものである。この圧縮方法は、内部デジタル値NAの上位Mビットを取り出して基準デジタル値MSとする処理に他ならない。したがって、図5(a)に示す圧縮方法を採用する場合には、内部デジタル値NAの上位Mビットを取り出すという処理により基準デジタル値MSを取得するよう、集積回路27を構成することが好ましい。また、基準デジタル値MSを受信したセンサ装置3は、上述したように、下位N-Mビットを所定値(例えば0)で補うことによって、内部デジタル値NAを復元することが好ましい。
【0056】
図5(b)に示す圧縮方法は、2種類の内部デジタル値NAを小さいものから順に2個の範囲に区切り、各範囲に基準デジタル値MSの値を割り当てるという点では図5(a)に示す圧縮方法と同様であるが、内部デジタル値NAの値が小さいほど量子化ステップが小さくなるように範囲の境目を調節している点で、図5(a)に示す圧縮方法と異なっている。図5(b)には、内部デジタル値NAが0~5である場合の量子化ステップを1とし、内部デジタル値NAが620~658である場合の量子化ステップを13とし、内部デジタル値NAが2042~2133である場合の量子化ステップを23とし、内部デジタル値NAが3968~4095である場合の量子化ステップを32とする例を示しているが、図示しない中間の内部デジタル値NAについても、内部デジタル値NAの上昇に伴って段階的に上昇するように量子化ステップを設定することが好ましい。
【0057】
図5(b)に示す圧縮方法を採用する場合には、各内部デジタル値NAに基準デジタル値MSを対応付けるテーブルを予め記憶しておき、このテーブルを参照することにより内部デジタル値NAを基準デジタル値MSに変換するよう集積回路27を構成することが好ましい。また、基準デジタル値MSを受信したセンサ装置3については、各基準デジタル値MSに、対応する内部デジタル値NAの範囲に属する複数の値のうちの1つ(例えば中央値又は最大値)を対応付けるテーブルを予め記憶しておき、このテーブルを参照することにより基準デジタル値MSから内部デジタル値NAを復元するよう構成することが好ましい。
【0058】
図5(a)(b)いずれの圧縮方法によっても、Nビットの内部デジタル値NAがMビットの基準デジタル値MSに圧縮されることになるが、図5(b)の圧縮方法によれば、図5(a)の圧縮方法に比べて、内部デジタル値NAが小さい場合の基準デジタル値MSの圧縮率を小さくすることができる。このような図5(b)の圧縮方法は、内部デジタル値NAが筆圧値を表すものである場合に特に有利である。つまり、筆圧値には、その値が小さいほどユーザが誤差に敏感になるという性質があるが、図5(b)の圧縮方法によれば、筆圧値が小さい(すなわち、内部デジタル値NAが小さい)ほど基準デジタル値MSの圧縮率を小さくすることができる。したがって、図5(b)の圧縮方法によれば、基準デジタル値MSの送信時に生じ得る誤差をユーザに感じさせてしまう可能性を低減することが可能になると言える。
【0059】
図4に戻る。ステップS6で基準デジタル値MSを取得した集積回路27は、取得した基準デジタル値MSを送信デジタル値MDに設定する(ステップS7)とともに、基準デジタル値MSから内部デジタル値NAを復元する(ステップS8)。この復元は、センサ装置3が行う復元と同じ方法で実行される。
【0060】
処理をステップS9に進めた場合の集積回路27は、Mビットで表現された相対値である相対デジタル値MRを送信デジタル値MDに設定する(ステップS9)とともに、供給済内部デジタル値NSを用いて、相対デジタル値MRから内部デジタル値NAを復元する(ステップS10)。この復元も、センサ装置3が行う復元と同じ方法で実行される。
【0061】
ステップS8又はステップS10を実行した集積回路27は、次に、復元した内部デジタル値NAを供給済内部デジタル値保持部103に設定する(ステップS11)。そして、送信デジタル値MDに設定した値に応じた識別フラグFを送信デジタル値MDに付してなる送信データMFを送信し(ステップS12)、ステップS1に戻って処理を継続する。
【0062】
図6及び図7は、図4に示した処理の過程で使用する各値の具体的な例を示す図である。図6には、送信デジタル値MDに基準デジタル値MSを設定する場合(すなわち、図4のステップS6が実行される場合)を示し、図7には、送信デジタル値MDに相対デジタル値MRを設定する場合(すなわち、図4のステップS9が実行される場合)を示している。また、図6及び図7には、内部デジタル値NAから基準デジタル値MSを取得する方法として図5(a)に示した圧縮方法を用いる場合を示している。
【0063】
初めに図6を参照すると、この場合の送信デジタル値MDには、内部デジタル値NAの上位Mビットである基準デジタル値MSが設定される。そして送信データMFは、基準デジタル値MSと、基準デジタル値MSを示す値(第1の値。例えば「1」)を有する識別フラグFとにより構成される。送信データMFを送信した後の供給済内部デジタル値NS(ステップS11で供給済内部デジタル値保持部103に設定されるもの)は、基準デジタル値MSから復元される内部デジタル値NA、すなわち、基準デジタル値MSの下位にN-Mビット分の「0」を付加した値となる。
【0064】
次に図7を参照すると、この場合の送信デジタル値MDには、内部デジタル値NAと供給済内部デジタル値NSとから算出されたMビットの相対デジタル値MRが設定される。そして送信データMFは、相対デジタル値MRと、相対デジタル値MRを示す値(第1の値とは異なる第2の値。例えば「0」)を有する識別フラグFとにより構成される。送信データMFを送信した後の供給済内部デジタル値NS(ステップS11で供給済内部デジタル値保持部103に設定されるもの)は、供給済内部デジタル値NSを用いて相対デジタル値MRから復元される内部デジタル値NA、すなわち、ステップS1で取得される内部デジタル値NAそのものとなる。
【0065】
図8は、センサコントローラ31が行う内部デジタル値NAの受信処理を示すフロー図である。以下、同図を参照しながら、センサコントローラ31が行う内部デジタル値NAの受信処理について、詳しく説明する。
【0066】
センサコントローラ31はまず初めに、例えばセンサ30を介して送信データMFを受信する(ステップS20)。そして、その中に含まれる識別フラグFに基づき、送信データMF内の送信デジタル値MDが基準デジタル値MSであるか相対デジタル値MRであるかを判定する(ステップS21)。
【0067】
ステップS21において基準デジタル値MSであると判定した場合、センサコントローラ31は、受信したMビットの送信デジタル値MD(=基準デジタル値MS)からNビットの内部デジタル値NAを復元する処理を行う(ステップS22)。この処理の具体的な内容は、図5(a)(b)を参照しながら説明したとおりである。
【0068】
一方、ステップS21において相対デジタル値MRであると判定したセンサコントローラ31は、後述するステップS24により以前に内部メモリに格納されている値を用いて、受信したMビットの送信デジタル値MD(=相対デジタル値MR)からNビットの内部デジタル値NAを復元する処理を行う(ステップS23)。この処理は、図4のステップS4でペン2が相対値の取得に使用した方法の逆処理(例えば、内部メモリに格納されている値に相対デジタル値MRを加算する処理)により実行される。
【0069】
ステップS22又はステップS23を実行したセンサコントローラ31は、次に、復元したNビットの内部デジタル値NAをホストコンピュータ4(図1を参照)に出力するとともに、内部メモリに格納する(ステップS24)。その後、センサコントローラ31は、ステップS20に処理を戻して次の送信データMFの受信を待機する。ステップS24で内部メモリに格納された内部デジタル値NAは、次にステップS23を実行する際に使用される。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、Nビットの内部デジタル値NAをNビット未満(具体的にはM+1ビット)の送信データMFにより供給することができるので、ペン2とセンサ装置3の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減することが可能になる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、基準デジタル値MSもMビットとしているので、送信データMFの送信を固定長通信により行うことが可能になる。この場合、基準デジタル値MSを受信した直後においては、センサ装置3で復元される内部デジタル値NAに誤差が含まれ得るが、この誤差は、その後に送信される相対デジタル値MRにより解消される。
【0072】
また、本実施の形態によれば、図5(b)に示す圧縮方法を使用して基準デジタル値MSを取得することにより、基準デジタル値MSの送信時に生じ得る誤差をユーザに感じさせてしまう可能性を低減することが可能になる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、一定の場合に、相対デジタル値MRに代えて基準デジタル値MSを送信することとしているので、通信エラーなどによりペン2が取得している内部デジタル値NAとセンサ装置3が取得している内部デジタル値NAの間に誤差が生じたとしても、基準デジタル値MSの送受信後には誤差を解消することが可能になる。以下、この効果について、図9(a)(b)を参照しながら詳しく説明する。
【0074】
図9(a)は、ペン2及びセンサ装置3のそれぞれにおいて取得される各種デジタル値の時間変化を示す図である。なお、同図においては、N=12、M=7としている。同図の例では、時刻t,tでは送信デジタル値MDに基準デジタル値MS(網掛けした値)が設定され、時刻t~tでは送信デジタル値MDに相対デジタル値MR(網掛けなしの値)が設定されている。
【0075】
時刻tは、ペン2からセンサ装置3への内部デジタル値NAの供給が開始された時刻である。時刻t以前の段階では、供給済内部デジタル値保持部103には、ペン2とセンサ装置3の前回の通信において最後に書き込まれた内部デジタル値NAが保持されている。こうして保持されている内部デジタル値NAと、新たに取得された内部デジタル値NAとの相対値は、例えば例示した「-200」のように大きな値になることが通常であるため、時刻tでも、基準デジタル値MSが送信されている。ただし、集積回路27は、ペン2とセンサ装置3の通信が終了した場合に、供給済内部デジタル値保持部103の保持内容を所定値で上書きすることとしてもよい。この所定値の具体的な値は特に限定されないが、内部デジタル値NAが通常取り得る値からかけ離れた値(例えば、最大値「4095(=111111111111)」)とすることが好ましい。こうすることで、次回の通信で最初に相対デジタル値NRが送信されてしまうことを防止することが可能になる。また、時刻tで基準デジタル値MSを送信しているのは、内部デジタル値NA「1088(=010001000000)」と、この内部デジタル値NAから得られる基準デジタル値MS「34(=0100010)」の末尾にN-M個分の「0」を追加してなる値「1088(=010001000000)」とが一致しており、図4のステップS3の判定結果が肯定となったためである。
【0076】
ここで、図9(a)においては、時刻t,tで通信エラーが発生し、センサ装置3に送信データMFが到達しなかった結果、時刻t~tでは、ペン2が取得した内部デジタル値NAと、センサ装置3で復元された内部デジタル値NAとが不一致となっている。しかし、時刻tでペン2が基準デジタル値MSを送信したことにより、これらは再び一致した状態に戻っている。このように、本実施の形態によれば、内部デジタル値NAが基準デジタル値MSから誤差なしで復元可能である場合に送信される基準デジタル値MSにより、通信エラーにより生じた誤差を解消することができる。
【0077】
次に、図9(b)も、ペン2及びセンサ装置3のそれぞれにおいて取得される各種デジタル値の時間変化を示す図である。同図においても、N=12、M=7としている。同図の例における時刻tまでの状況は図9(a)と同じであり、時刻t~tでは、ペン2が取得した内部デジタル値NAと、センサ装置3で復元された内部デジタル値NAとが不一致となっている。その後、時刻tで内部デジタル値NAが大きく変化した結果、相対値がMビットで表現できる範囲(M=7では-64~+63)を超えたため、ペン2は、時刻tでは基準デジタル値MSを送信している。その結果、図9(a)の場合と同様に、時刻tでは、ペン2が取得した内部デジタル値NAと、センサ装置3で復元された内部デジタル値NAとが再び一致している。このように、本実施の形態によれば、相対値がM-1ビットで表現できない場合に送信される基準デジタル値MSによっても、通信エラーにより生じた誤差を解消することができる。なお、こうして基準デジタル値MSを送信した際にはペン2が取得した内部デジタル値NAとセンサ装置3で復元された内部デジタル値NAとが一致せず誤差が残る可能性があるが、上述したように、この誤差は直後の相対デジタル値MRにより解消するものであり、しかも、この誤差が人間の知覚に与える影響は限定的であるので、特に問題にはならない。
【0078】
図10図13は、本実施の形態の実施例を示す図である。図11図13の上段に示した曲線は、図10に示す3つのストロークA1~A3をユーザがペン2を用いて入力した場合に、集積回路27(図3を参照)によって順次取得される内部デジタル値NA(筆圧値)を示している。また、中抜き丸印は、そのタイミングで送信デジタル値MDに基準デジタル値MSが設定されていること、及び、設定される基準デジタル値MSの具体的な値を示し、中抜き三角印は、そのタイミングで送信デジタル値MDに相対デジタル値MRが設定されていること、及び、設定される相対デジタル値MRの具体的な値を示している。さらに、図11図13の下段に示した曲線は、元の内部デジタル値NAと送信デジタル値MDから復元される内部デジタル値NAとの誤差を示している。なお、図11及び図12にはN=10、M=7の例を示し、図13にはN=12、M=7の例を示している。また、図12には、図4に示したステップS3の判定結果を否定に固定した場合(つまり、基準デジタル値MSから誤差なしで内部デジタル値NAを復元可能であっても、そのことを理由としては基準デジタル値MSの送信を行わない場合)の例を示している。
【0079】
初めに図11を参照すると、各ストロークの初め及び終わりの内部デジタル値NAが大きく変化している部分では送信デジタル値MDに基準デジタル値MSが設定されており、一方で、各ストロークの中ほどの内部デジタル値NAの変化が小さい部分では、一部を除き、送信デジタル値MDに相対デジタル値MRが設定されていることが理解される。また、各ストロークの中ほどでは、送信デジタル値MDに基準デジタル値MSが設定されている場合を含めて、元の内部デジタル値NAと送信デジタル値MDから復元される内部デジタル値NAとの誤差が0の状態が継続していることが理解される。送信デジタル値MDに基準デジタル値MSが設定されており、かつ、元の内部デジタル値NAと送信デジタル値MDから復元される内部デジタル値NAとの誤差が0になる場合とは、要するに、図4のステップS3の判定結果が肯定であったことにより、送信デジタル値MDに基準デジタル値MSが設定された場合である。さらに、元の内部デジタル値NAと送信デジタル値MDから復元される内部デジタル値NAとの誤差の絶対値は、最大でも4であることが理解される。
【0080】
図11の例から、本実施の形態によれば、少なくともN=10、M=7の場合には、十分に誤差の小さい状態でペン2からセンサ装置3に内部デジタル値NAを伝達できていると言える。したがって、本実施の形態を実際のペンシステム1に適用し、内部デジタル値NA送信のために使用される通信リソースを削減することが可能になると言えるので、本実施の形態によれば、ペン2とセンサ装置3の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減できることになる。
【0081】
次に図12を参照すると、ステップS3をスキップしても、ステップS3を実行する場合と同様の結果が得られることが理解される。したがってこの場合には、内部デジタル値NAが基準デジタル値MSから誤差なしで復元可能か否かを判定し、その結果に応じて処理を変える構成は必須でないと言える。
【0082】
最後に図13を参照すると、同図の例では、送信デジタル値MDに基準デジタル値MSが設定されるケースが図11に比べて非常に多くなっており、元の内部デジタル値NAと送信デジタル値MDから復元される内部デジタル値NAとの誤差の絶対値も、広い範囲にわたって大きな値(最大で15)となっている。これでは本実施の形態を実際のペンシステム1に適用することは難しいので、N=12、M=7の場合には、本実施の形態によってペン2とセンサ装置3の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減できるとは言いにくい。N=12、M=7の場合にも効果が得られるようにするためには、さらなる工夫が必要である。以下に記述する第2及び第3の実施の形態においては、そのような工夫の一例を説明する。
【0083】
図14は、本発明の第2の実施の形態の原理を説明する図である。本実施の形態は、第1の実施の形態でも使用した相対デジタル値MRに加え、中間精度相対デジタル値MMを用いる点で第1の実施の形態と相違し、その他の点では第1の実施の形態と同様である。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明を続ける。
【0084】
本実施の形態による集積回路27は、Nビットの内部デジタル値NAを送信するにあたり、内部デジタル値NAそのものに代え、図示したMビットの基準デジタル値MS、Lビット(L<M)の中間精度相対デジタル値MM、又はLビットの相対デジタル値MRのいずれかである送信デジタル値MDを含むNビット未満ビットの送信データMFを送信するよう構成される。なお、図14にはL=M-1の例を示しており、以下では、この例を前提として説明を続ける。ただし、LはM未満の整数であればよく、L=M-1でなくても構わない。
【0085】
送信デジタル値MDが基準デジタル値MSである場合、送信データMFには1つの識別フラグF1が含まれる。一方、送信デジタル値MDが中間精度相対デジタル値MM又は相対デジタル値MRである場合、送信データには2つの識別フラグF1,F2が含まれる。識別フラグF1は、送信デジタル値が基準デジタル値MSである場合に第1の値(例えば「1」)となり、送信デジタル値が基準デジタル値MSでない場合に第1の値と異なる第2の値(例えば「0」)となる1ビットのデータである。識別フラグF1は、送信デジタル値が中間精度相対デジタル値MMである場合に第3の値(例えば「1」)となり、送信デジタル値が相対デジタル値MRである場合に第3の値と異なる第4の値(例えば「0」)となる1ビットのデータである。
【0086】
本実施の形態による相対デジタル値MRは、第1の実施の形態で説明した相対値がLビットで表現できるものである場合に、Lビットで表現された相対値によって構成される。また、中間精度相対デジタル値MMは、第1の実施の形態で説明した相対値がL+Kビット(1≦K≦N-M)で表現できるものである場合に、L+Kビットで表現された相対値の上位Lビットによって構成される。なお、図5(b)に示した圧縮方法と同様の圧縮方法によって内部デジタル値NAを圧縮することにより、中間精度相対デジタル値MMを得ることとしてもよい。
【0087】
図15は、本実施の形態による集積回路27が行う内部デジタル値NAの送信処理を示すフロー図である。以下、この図15を参照しながら、本実施の形態による集積回路27が行う内部デジタル値NAの送信処理について、詳しく説明する。なお、図15の処理フローは、図4の一部を置き換えるものとなっている。
【0088】
本実施の形態による集積回路27は、図4のステップS4を実行することによって供給済内部デジタル値NSと内部デジタル値NAとの相対値を取得した後、取得した相対値がLビットで表現できるものであるか否かを判定する(ステップS30)。集積回路27は、この判定において表現できないと判定した場合にはステップS33に処理を移し、表現できると判定した場合にはステップS31に処理を移す。
【0089】
ステップS31において集積回路27は、Lビットで表現された相対値である相対デジタル値MRを送信デジタル値MDに設定し(ステップS31)、図4に示したステップS10に処理を移す。
【0090】
一方、ステップS33において集積回路27は、ステップS4で取得した相対値がL+Kビットで表現できるものであるか否かを判定する(ステップS33)。集積回路27は、この判定において表現できないと判定した場合には図4のステップS6に処理を移し、表現できると判定した場合にはステップS34に処理を移す。
【0091】
ステップS34において集積回路27は、L+Kビットで表現された相対値の上位Lビットである中間精度相対デジタル値MMを送信デジタル値MDに設定し(ステップS34)、供給済内部デジタル値NSを用いて、中間精度相対デジタル値MMから内部デジタル値NAを復元した後(ステップS35)、図4に示したステップS11に処理を移す。この復元は、図4に示したステップS8,S10と同様、センサ装置3が行う復元と同じ方法で実行される。
【0092】
図16は、本実施の形態によるセンサコントローラ31が行う内部デジタル値NAの受信処理を示すフロー図である。以下、同図を参照しながら、本実施の形態によるセンサコントローラ31が行う内部デジタル値NAの受信処理について、詳しく説明する。なお、図16の処理フローは、図8の一部を置き換えるものとなっている。
【0093】
本実施の形態によるセンサコントローラ31は、図8のステップS20を実行することによって送信データMFを受信した後、その中に含まれる識別フラグF1に基づき、送信データMF内の送信デジタル値MDが基準デジタル値MSであるか否かを判定する(ステップS40)。
【0094】
ステップS40において基準デジタル値MSであると判定した場合、センサコントローラ31は、図8のステップS22(基準デジタル値MSから内部デジタル値NAを復元するステップ)に処理を移す。一方、ステップS40において基準デジタル値MSでないと判定した場合、センサコントローラ31はさらに、受信した送信データMF内に含まれる識別フラグF2に基づき、送信データMF内の送信デジタル値MDが相対デジタル値MRと中間精度相対デジタル値MMとのいずれであるかを判定する(ステップS41)。
【0095】
ステップS41において相対デジタル値MRであると判定したセンサコントローラ31は、図8に示したステップS24により以前に内部メモリに格納されている値を用いて、受信したLビットの送信デジタル値MD(=相対デジタル値MR)からNビットの内部デジタル値NAを復元する処理を行う(ステップS42)。この処理は、図4のステップS4でペン2が相対値の取得に使用した方法の逆処理により実行される。
【0096】
一方、ステップS41において中間精度相対デジタル値MMであると判定したセンサコントローラ31は、図8に示したステップS24により以前に内部メモリに格納されている値を用いて、受信したLビットの送信デジタル値MD(=中間精度相対デジタル値MM)からNビットの内部デジタル値NAを復元する処理を行う(ステップS43)。この処理は、まず送信デジタル値MDの下位にKビット分の「0」を付加することによってL+Kビットのデジタル値を取得し、このデジタル値に図4のステップS4でペン2が相対値の取得に使用した方法の逆処理を施すことによって実行される。
【0097】
ステップS42又はステップS43を実行したセンサコントローラ31は、図8のステップS24(復元したNビットの内部デジタル値NAを出力するとともに内部メモリに格納するステップ)に処理を移す。
【0098】
図17は、本実施の形態の実施例を示す図である。同図上段の曲線、中抜き丸印、中抜き三角印、及び、同図下段の曲線の意味は、図11図13のものと同様である。図17の上段に示した黒四角印は、そのタイミングで送信デジタル値MDに中間精度相対デジタル値MMが設定されていること、及び、設定される中間精度相対デジタル値MMの具体的な値を示している。なお、図17には、図13と同じくN=12、M=8の例を示している。なお、L=M-1=7である。
【0099】
図17から理解されるように、本実施例では、内部デジタル値NAの変化が中程度のところで送信デジタル値MDに中間精度相対デジタル値MMが設定されている。その結果として、図13の例と比べて明らかに、元の内部デジタル値NAと送信デジタル値MDから復元される内部デジタル値NAとの誤差が大きくなる範囲が小さくなっている。その結果として、本実施の形態は、第1の実施の形態に比べて実際のペンシステム1に採用する際の支障が少ないと言えるので、本実施の形態によれば、N=12、M=8の場合にも、ペン2とセンサ装置3の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減できると言える。
【0100】
なお、本実施の形態では、1種類の中間精度相対デジタル値MMを用いる例を説明したが、複数種類の中間精度相対デジタル値MMを用いることとしてもよい。例えば、L+K1ビット(1≦K1≦N-M)で表現された相対値の上位Lビットである中間精度相対デジタル値と、L+K2ビット(1≦K2≦N-MかつK2>K1)で表現された相対値の上位Lビットである中間精度相対デジタル値とを用いることとしてもよい。この場合、識別フラグは、例えば、中間精度相対デジタル値の種類数が増加するか又は減少するかを識別するものであってもよい。
【0101】
また、相対値又は相対値の変化量に応じて適応的に、中間精度相対デジタル値MMの1ビットにより示される値の大きさ(すなわち、Kの値)を変化させることとしてもよい。この場合、識別フラグは、中間精度相対デジタル値MMの1ビットにより示される値の大きさの変更比率(すなわち、変更前のKと変更後のKの比率)を示すものであってもよい。
【0102】
また、本実施の形態では、基準デジタル値MSに1ビットの識別フラグを付加し、相対デジタル値MR及び中間精度相対デジタル値MMに2ビットの識別フラグを付加する例を説明したが、相対デジタル値MR及び中間精度相対デジタル値MMのいずれか一方に1ビットの識別フラグを付加し、相対デジタル値MR及び中間精度相対デジタル値MMのいずれか他方及び基準デジタル値MSに2ビットの識別フラグを付加することとしてもよい。こうすることにより、相対デジタル値MR及び中間精度相対デジタル値MMのいずれか一方のビット数をMビットとし、相対デジタル値MR及び中間精度相対デジタル値MMのいずれか他方及び基準デジタル値MSをLビットとすることが可能になる。要するに、どのタイプの筆圧表現(基準デジタル値MS、中間精度相対デジタル値MM、相対デジタル値MRなど)にフラグ用ビット数を幾つ割くか、という点は任意に決定されることができる。
【0103】
図18は、本発明の第3の実施の形態による集積回路27が行う内部デジタル値NAの送信処理を示すフロー図である。なお、図18の処理フローは、図4の一部を置き換えるものとなっている。本実施の形態は、供給済内部デジタル値NSと内部デジタル値NAとの相対値に代えて内部デジタル値NAの予測値Pと内部デジタル値NAとの相対値を用いる点で第1の実施の形態と相違し、その他の点では第1の実施の形態と同様である。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明を続ける。
【0104】
本実施の形態による集積回路27の供給済内部デジタル値保持部103は、過去所定回数分の内部デジタル値NA(ステップS11で設定されるもの)を記憶するように構成される。そして本実施の形態による集積回路27は、図18に示すように、ステップS3の否定判定の後に、記憶しておいた過去所定回数分の内部デジタル値NAから、所定の予測ルールによって内部デジタル値NAの予測値Pを取得する処理を行う(ステップS50)。この処理は、例えば過去所定回数分の内部デジタル値NAの補間曲線に基づいて実行され得る。一例として、過去2回分の内部デジタル値NAの補間曲線に基づく例を詳しく説明すると、まず、過去2回分の内部デジタル値NAの補間曲線を求める。この場合の補間曲線は直線であり、例えば過去2回分の内部デジタル値NAが「1100」「1090」であったとすると、補間曲線としてNA(n)=-10n+1080が求められる。ただし、NA(n)はn回目の内部デジタル値NAを表し、nは、前々回が-2、前回が-1、今回か0となる数値である。こうして求めた補間曲線にn=0を代入することによって、予測値Pを「1080」と求めることができる。
【0105】
ステップS50を実行した集積回路27は、図4のステップS4に代えて、予測値PとステップS1で取得した内部デジタル値NAとの相対値を取得する処理を行う(ステップS51)。ここで取得される相対値は、例えば、予測値PとステップS1で取得した内部デジタル値NAとの差分である。その後、集積回路27は処理をステップS5に処理を移し、図4を参照して説明した処理を実行する。
【0106】
次に、図19は、本実施の形態によるセンサコントローラ31が行う内部デジタル値NAの受信処理を示すフロー図である。なお、図19の処理フローは、図8の一部を置き換えるものとなっている。
【0107】
本実施の形態によるセンサコントローラ31は、内部メモリに過去所定回数分の内部デジタル値NA(ステップS24で格納されるもの)を記憶するように構成される。そして本実施の形態によるセンサコントローラ31は、図19に示すように、ステップS21において送信データMF内の送信デジタル値MDが相対デジタル値MRであると判定した場合に、記憶しておいた過去所定回数分の内部デジタル値NAから、所定の予測ルールによって内部デジタル値NAの予測値Pを取得する処理を行う(ステップS60)。この処理は、図18のステップS50と同じ方法で実行される。
【0108】
ステップS60を実行したセンサコントローラ31は、図8のステップS23に代えて、予測値Pを用いて、受信したMビットの送信デジタル値MD(=相対デジタル値MR)からNビットの内部デジタル値NAを復元する処理を行う(ステップS61)。この処理は、図8のステップS51でペン2が相対値の取得に使用した方法の逆処理(例えば、予測値Pに相対デジタル値MRを加算する処理)により実行される。その後、センサコントローラ31は処理をステップS24に移し、図8を参照して説明した処理を実行する。
【0109】
図20は、本実施の形態の実施例を示す図である。同図上段の曲線、中抜き丸印、中抜き三角印、及び、同図下段の曲線の意味は、図11図13図17のものと同様である。図20には、図13及び図17と同じくN=12、M=7の例を示している。
【0110】
図20から理解されるように、本実施例では、図13及び図17の例と比べて明らかに、元の内部デジタル値NAと送信デジタル値MDから復元される内部デジタル値NAとの誤差が大きくなる範囲が小さくなっている。その結果として、本実施の形態は、第2の実施の形態よりもさらに実際のペンシステム1に採用する際の支障が少ないと言えるので、本実施の形態によっても、N=12、M=7の場合にも、ペン2とセンサ装置3の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足を軽減できると言える。
【0111】
図21は、本発明の第4の実施の形態によるペン2及びセンサ装置3のそれぞれにおいて取得される各種デジタル値の時間変化を示す図である。同図に示すように、本実施の形態は、センサ装置3からペン2に対して参照値Refを供給し、この参照値Refにより供給済内部デジタル値NSを更新する点で第1の実施の形態と相違し、その他の点では第1の実施の形態と同様である。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明を続ける。
【0112】
本実施の形態によるセンサコントローラ31は、図21に示すように、内部メモリに記憶している内部デジタル値NA(ステップS24で格納されるもの)を参照値Refとして、任意のタイミングでアップリンク信号USによりペン2に向けて送信するように構成される。この任意のタイミングは、例えば、センサコントローラ31がペン2を検出した直後であってもよいし、センサコントローラ31が最後に送信データMFを受信してから所定時間が経過したタイミングであってもよいし、乱数により決定されるタイミングであってもよいし、周期的に到来するタイミングであってもよいし、これらのタイミングのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。参照値Refを送信した後、センサコントローラ31は、次の参照値Refを送信するまで、又は、基準デジタル値MSを受信するまで、ステップS24をスキップする。その結果、センサコントローラ31の内部メモリには参照値Refが記憶され続け、図8のステップS23では、参照値Refを用いて、受信したM-1ビットの送信デジタル値MD(=相対デジタル値MR)からNビットの内部デジタル値NAを復元する処理が行われることになる。
【0113】
図22は、本実施の形態による集積回路27の機能ブロックを示す略ブロック図である。同図に示すように、本実施の形態による集積回路27は機能的に受信部104をさらに含んで構成される。受信部104は、アンテナ22を介してアップリンク信号USを受信するとともに、受信したアップリンク信号USから参照値Refを取り出し、供給済内部デジタル値保持部103に設定する機能部である。
【0114】
本実施の形態による集積回路27は、供給済内部デジタル値保持部103に保持される値に応じて、内部デジタル値NAをセンサ装置3に対して供給するための動作を行う。具体的に説明すると、集積回路27は、参照値Refが供給済内部デジタル値保持部103に設定されるまでは、図21にも示したように、第1の実施の形態と同じ処理を実行する。しかし、一旦参照値Refが供給済内部デジタル値保持部103に設定されると、その後は、図4のステップS10経由で実行される限り、図4のステップS11をスキップする。その結果、送信デジタル値MDに相対デジタル値MRが設定され続ける間、供給済内部デジタル値NSは参照値Refであり続け、図4のステップS4では、参照値RefとステップS1で取得した内部デジタル値NAとの相対値が取得されることになる。
【0115】
ペン2及びセンサ装置3が以上のような処理を実行することにより、図21に示すように、一旦参照値Refのやり取りが行われた後は、参照値Refに基づいて相対値の生成及び内部デジタル値NAの復元が行われることになる。この処理は、図21に示す例のように、通信エラーが発生した場合に特に有効である。すなわち、通信エラーによってペン2が取得している内部デジタル値NAとセンサ装置3が取得している内部デジタル値NAの間に誤差が生じたとしても、参照値Refの送受信後には誤差を解消することが可能になる。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態によれば、通信エラーなどによりペンが取得しているデジタル値とセンサ装置が取得しているデジタル値の間に誤差が生じたとしても、参照値の送受信後には誤差を解消することが可能になる。
【0117】
なお、本実施の形態では、一旦参照値Refが供給済内部デジタル値保持部103に設定されると、その後は、集積回路27の処理が図4のステップS10経由で実行される限り、図4のステップS11をスキップする例を説明したが、ステップS11のスキップは、参照値Refが供給済内部デジタル値保持部103に設定された直後の1回に限ることとしてもよい。この場合、例えば図21の時刻tでは、送信後の供給済内部デジタル値NSとして1030が設定されることになる。このようにしても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0118】
図23は、本発明の第5の実施の形態による集積回路27が行う処理を示すフロー図である。本実施の形態は、集積回路27が2つの動作モードで動作でき、しかも、センサ装置3から集積回路27の動作モードを切り替え可能である点で第1の実施の形態と相違し、その他の点では第1の実施の形態と同様である。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に説明を続ける。
【0119】
本実施の形態による集積回路27は、図4の通りに動作を行う相対デジタル値利用モードと、図4のステップS3~S5をスキップし、ステップS1の後に常にステップS6以降の処理を行う常時基準デジタル値利用モードとのいずれかで動作するように構成される。これらの切り替えは、センサ装置3により、アップリンク信号USに含まれるコマンドを用いて実行される。
【0120】
集積回路27の動作について説明すると、図23に示すように、集積回路27はまず、アップリンク信号USを受信する(ステップS70)。そして、その中に動作モードを指示するコマンドが含まれるか否かを判定する(ステップS71)。含まれていなければ、現在の動作モードを維持し、処理をステップS70に戻す。含まれていれば、さらに相対デジタル値利用モードと常時基準デジタル値利用モードのいずれが指示されているかを判定し、相対デジタル値利用モードが指示されていた場合には相対デジタル値利用モードにエントリし(ステップS72)、常時基準デジタル値利用モードが指示されていた場合には常時基準デジタル値利用モードにエントリする(ステップS73)。その後、集積回路27は、処理をステップS70に戻す。
【0121】
本実施の形態によれば、センサ装置3が基準デジタル値MSを必要とする場合に、センサ装置3からの指示でペン2に基準デジタル値MSを送らせることが可能になる。したがって、例えば通信エラーが発生したことによってペン2が取得している内部デジタル値NAとセンサ装置3が取得している内部デジタル値NAの間に誤差が生じたとしても、直ちに誤差を解消することが可能になる。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0123】
例えば、上記各実施の形態では、内部デジタル値取得部100が操作部(筆圧検出部23を含む)の状態をNビットの内部デジタル値に変換する例を説明したが、内部デジタル値取得部100は、操作部の状態以外からNビットの内部デジタル値を取得することとしてもよい。例えば、ペン2からセンサ装置3又はホストコンピュータ4の設定を行うために送信されるデータを、Nビットの内部デジタル値として取得することとしてもよい。こうすることにより、このデータについてもMビット(M<N)の送信データにより供給することが可能になるので、ペン2とセンサ装置3の間の通信に用いることのできる通信リソースの不足をより軽減することが可能になる。
【0124】
また、上記各実施の形態では、基準デジタル値NSを送信するか否かの判定はペン2側で行っていたが、センサコントローラ31においてもこの判定を行い、ペン2に基準デジタル値NSを送信させると判定した場合には、アップリンク信号USにより送信するコマンドを用いて、電子ペン5に基準デジタル値NSを送信させることとしてもよい。この場合においてセンサコントローラ31は、ペン2を検出した後、まだ一度も基準デジタル値NSを受信していない場合、所定時間にわたり基準デジタル値NSを受信していない場合などに、ペン2に基準デジタル値NSを送信させると判定することが好ましい。また、センサコントローラ31は、ペン2に基準デジタル値NSを送信させた後、所定回数にわたり基準デジタル値NSの送信を継続させることとしてもよい。この継続送信は、その都度センサコントローラ31からコマンドを送信することによって実現してもよいし、基準デジタル値NSの送信を要求するコマンドを受信したペン2が自律的に、所定回数にわたって基準デジタル値MSを送信することによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 ペンシステム
2 ペン
3 センサ装置
3t タッチ面
4 ホストコンピュータ
20 芯体
21 ペン先端部
22 アンテナ
23 筆圧検出部
26 電源
27 集積回路
30 センサ
31 センサコントローラ
100 内部デジタル値取得部
101 送信デジタル値取得部
102 送信部
103 供給済内部デジタル値保持部
104 受信部
A1~A3 ストローク
DS ダウンリンク信号
F,F1,F2 識別フラグ
MD 送信デジタル値
MF 送信データ
MM 中間精度相対デジタル値
MR 相対デジタル値
MS 基準デジタル値
NA 内部デジタル値
OPS 状態
P 予測値
Ref 参照値
US アップリンク信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23