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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076057
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】応力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20220512BHJP
   G01L 5/1623 20200101ALI20220512BHJP
【FI】
G01L1/20 Z
G01L5/1623
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186266
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】張 鴻立
(72)【発明者】
【氏名】笹川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 和弘
(72)【発明者】
【氏名】森脇 健司
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB07
2F051DA02
2F051DB05
(57)【要約】
【課題】センシング部分の微細化を実現し、より高精度な応力センサを提供すること。
【解決手段】基材と、対向配置された第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介装された圧力検知膜とを有し、前記圧力検知膜に生じる押圧力を検知する、前記基材の一方の面上に設けられた圧力検知部と、対向配置された第3電極と第4電極と、前記第3電極と前記第4電極との間に介装されたせん断力検知膜とを有し、前記せん断力検知膜に生じるせん断力を検知する、前記基材の一方の面上に設けられたせん断力検知部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
対向配置された第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介装された圧力検知膜とを有し、前記圧力検知膜に生じる押圧力を検知する、前記基材の一方の面上に設けられた圧力検知部と、
対向配置された第3電極と第4電極と、前記第3電極と前記第4電極との間に介装されたせん断力検知膜とを有し、前記せん断力検知膜に生じるせん断力を検知する、前記基材の一方の面上に設けられたせん断力検知部と、
を備える応力センサ。
【請求項2】
前記第2電極は、前記第1電極よりも小さい面積を有し、
前記第1電極及び前記第2電極は、応力センサのせん断変形の有無に関わらず、前記基材の厚さ方向から見た前記第1電極及び前記第2電極が重なる領域の面積が、前記第2電極の面積と等しくなるように配置されている
請求項1に記載の応力センサ。
【請求項3】
前記第2電極は、前記基材の厚さ方向から見て、前記第2電極の全面が前記第1電極の一部と重なるように配置されている
請求項2に記載の応力センサ。
【請求項4】
前記第4電極は、前記第3電極と異なる形状を有し、
前記第3電極及び前記第4電極は、前記基材の厚さ方向から見て、検知するせん断力検知方向へのせん断変位に応じて前記第3電極及び前記第4電極が重なる領域の面積が変化するとともに、前記せん断力検知方向と直行する方向のせん断変形の有無に関わらず前記第3電極及び前記第4電極が重なる領域の面積が一定となるように配置されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の応力センサ。
【請求項5】
前記第3電極及び前記第4電極は、前記第3電極の一部と前記第4電極の一部とが重複するように配置されている
請求項4に記載の応力センサ。
【請求項6】
前記圧力検知部は、前記基材の厚さ方向から見た前記第1電極及び前記第2電極が重なる領域の面積が0.1mm以上1.5mm以下となるように構成されている
請求項1から5のいずれか1項に記載の応力センサ。
【請求項7】
前記せん断力検知部は、前記基材の厚さ方向から見た前記第3電極及び前記第4電極が重なる領域の面積が0.1mm以上1.5mm以下となるように構成されている
請求項1から6のいずれか1項に記載の応力センサ。
【請求項8】
前記圧力検知膜及び前記せん断力検知膜の厚さは、1μm以上100μm以下である
請求項1から7のいずれか1項に記載の応力センサ。
【請求項9】
前記圧力検知部及び前記せん断力検知部は、一つの前記基材に対してそれぞれ複数設けられている
請求項1から8のいずれか1項に記載の応力センサ。
【請求項10】
複数の前記せん断力検知部のせん断力方向は、それぞれ異なる
請求項9に記載の応力センサ。
【請求項11】
前記せん断力検知部は、
前記基材の表面に平行な第1方向のせん断力を検知する第1方向せん断力検知部と、前記基材の表面に平行し、前記第1方向と異なる第2方向のせん断力を検知する第2方向せん断力検知部と、を有し、
前記第1方向せん断力検知部及び前記第2方向せん断力検知部は、前記基材の表面において一方向に交互に配置されている
請求項9又は10に記載の応力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、応力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センササイズを微細化し高集積とすることを可能にした応力センサは、電極を設計通りの位置に対向して配置することができず、せん断力のセンシング精度が低くなるという課題があった。
これに対し、形状の異なる電極同士を重なるように対向させることにより、せん断方向の対向電極の変化を捉えやすいセンサシートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-115873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧力のセンシング部分とせん断力のセンシング部分が平面視において異なる位置に配置された応力センサは、応力センサ上の押さえる場所によりセンシング精度が下がる可能性があった。また、このような応力センサは、平面展開されている分、センシング部分の面積が広いため、更なる応力センサの微細化に限界があった。
本開示は、センシング部分の微細化を実現し、より高精度な応力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る応力センサは、基材と、対向配置された第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介装された圧力検知膜とを有し、前記圧力検知膜に生じる押圧力を検知する、前記基材の一方の面上に設けられた圧力検知部と、対向配置された第3電極と第4電極と、前記第3電極と前記第4電極との間に介装されたせん断力検知膜とを有し、前記せん断力検知膜に生じるせん断力を検知する、前記基材の一方の面上に設けられたせん断力検知部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様に係る応力センサであれば、センシング部分の微細化を実現し、より高精度な応力センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1(A)、図1(B)及び図1(C)は、本開示の第一実施形態に係る応力センサの一構成例を示す平面図、断面図及び底面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る圧力測定方法のイメージ図である。
図3】本開示の一実施形態に係る第1方向せん断力測定方法のイメージ図である。
図4図4(A)、図4(B)及び図4(C)は、本開示の第一実施形態に係る応力センサの変形例を示す平面図、断面図及び底面図である。
図5図5(A)、図5(B)及び図5(C)は、本開示の第二実施形態に係る応力センサの一構成例を示す平面図、断面図及び底面図である。
図6図6(A)、図6(B)及び図6(C)は、本開示の第三実施形態に係る応力センサの一構成例を示す平面図、断面図及び底面図である。
図7図7(A)、図7(B)及び図7(C)は、本開示の第四実施形態に係る応力センサの一構成例を示す平面図、断面図及び底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図1から図7に示す構成は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造などが下記のものに限定されるものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
<第一実施形態>
本開示の一実施形態に係る応力センサの基本構成について、図1(A),図1(B)及び図1(C)を用いて説明する。
図1(A)は、本実施形態に係る応力センサ100の構成を示す平面図である。図1(B)は、本実施形態に係る応力センサ100の構成を示す断面図である。図1(C)は、本実施形態に係る応力センサ100の構成を示す底面図である。応力センサ100は、基材1と、基材1上に形成された圧力検知部2と、基材1の圧力検知部2と反対の面側に形成された第1方向せん断力検知部3とを備えている。
【0010】
<基材>
基材1は、可撓性を有するシート状の部材であることが好ましい。基材1の材料として、例えば、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、セロファンなどのプラスチックフィルムや、シリコーンゴムのジメチルポリシロキサン、クリーンペーパー、コート紙、カレンダー紙などの加工紙を使用することができる。
【0011】
特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートあるいはポリ-1、4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート及びこれらを主体とするポリエステルは、耐熱性、耐薬品性、機械的特性において優れた性質を有する。このために、生体内への埋め込みを要求される用途に好適である。
【0012】
基材1は、未延伸基材及び延伸基材の何であってもよい。機械的強度及び寸法安定性を考慮した場合には、基材1として一軸延伸基材及び二軸延伸基材などの延伸基材、特には二軸延伸基材が使用される。基材1の厚さは特に制限はないが、例えば6μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。基材1の厚さが6μm以上である場合、基材として十分な強度を得ることができる。基材1の厚さが200μm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。
基材1の形状に制限はない。但し、量産性を考慮した場合には、基材1は長尺物であることが有利である。
【0013】
<圧力検知部>
圧力検知部2は、基材1の厚さ方向にかかる圧力を検知するための検知部である。
図1(A)及び図1(B)に示すように、圧力検知部2は、基材1上に第1電極21、圧力検知膜25、第2電極23、第1絶縁膜27がこの順に積層されて形成されている。この圧力検知部2は、基材1表面に対し垂直方向(厚さ方向)の圧力を検知するための検知部である。
【0014】
(第1電極)
第1電極21は、図1(B)に示すように、基材1の一方の面上に形成される。第1電極21は、後述する第2電極23と対向配置されている。
第1電極21には、抵抗率が低い導電性材料を用いることができる。第1電極21としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属、あるいはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)などの導電性金属酸化物の使用が可能である。
第1電極21の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましい。第1電極21の厚さが0.01μm以上である場合、電極として良好に機能するため応力センサの検出精度が向上する。第1電極21の厚さが10μm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。
【0015】
第1電極21の形成方法は、特に限定されず、一般的な成膜方法を利用することができる。電極の製造は、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法を用いることもできる。
第1電極21の面積は0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましい。第1電極21の面積が0.2mm以上である場合、応力センサの検出精度が向上する。第1電極21の面積が3.0mm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。また、第1電極21の形状は限定されず、例えば、矩形、円形、三角形であってもよい。
【0016】
(第2電極)
第2電極23は、図1(B)に示すように、後述する圧力検知膜25上において、第1電極21と平行に延在するように形成される。
第2電極23は、第1電極21よりも小さい面積を有している。これにより、対向する第1電極21と第2電極23の部分ではせん断力によってずれが生じても、第1電極21と第2電極23とが重なる重なり領域2Aの面積が変わらず、抵抗値変化が生じないため、純粋に接触圧力のみを取り出すことが出来る。
【0017】
また、第1電極21及び第2電極23は、応力センサ100のせん断変形の有無に関わらず、基材1の厚さ方向から見た第1電極21と第2電極23とが重なる重なり領域2Aの面積が、第2電極23の面積と等しくなるように配置されている。本実施形態では、第2電極23は、基材1の厚さ方向から見て、第2電極23の全面が第1電極21の一部と重なるように配置されている。すなわち、第2電極23は、図1(A)に示すように平面視においては、第2電極23の外周が第1電極21の外周よりも内側に位置するように配置されている。これにより、第1電極21と第2電極23とが重なった重なり領域2Aの面積と、第2電極23の面積とが等しくなっている。
更に、無負荷の状態で、第1電極21の中央と第2電極23の中央とが同じ位置に配置されることが望ましい。これにより、応力センサ100は、任意の方向のせん断変位に対応することができる。
【0018】
第1電極21と第2電極23とが重なった重なり領域2Aの面積は、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。重なり領域2Aの面積が0.5mm以上である場合、圧力の検出精度が向上する。重なり領域2Aの面積が1.5mm以下である場合、応力センサ100の微細化を達成することが可能となる。
【0019】
第2電極23には、第1電極21と同様に、抵抗率が低い導電性材料を用いることができる。第2電極23としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属、あるいはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)などの導電性金属酸化物の使用が可能である。
第2電極23の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましい。第2電極23の厚さが0.01μm以上である場合、電極として良好に機能するため応力センサの検出精度が向上する。第2電極23の厚さが10μm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。
【0020】
第2電極23の形成方法は、特に限定されず、一般的な成膜方法を利用することができる。電極の製造は、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法を用いることもできる。
第2電極23の面積は0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましい。第2電極23の面積が0.1mm以上である場合、応力センサの検出精度が向上する。第2電極23の面積が1.5mm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。また、第2電極23の形状は限定されず、例えば、矩形、円形、三角形であってもよい。
【0021】
(圧力検知膜)
圧力検知膜25は、圧力検知膜25にかかる圧力に応じて変形して抵抗値が減少する膜である。
圧力検知膜25を構成する材料には、第1電極21及び第2電極23より抵抗率が高く、後述する第1絶縁膜27より抵抗率が低い必要がある。これは、外部からの影響を受けずに対向電極間の抵抗値変化を検出するためである。
圧力検知膜25は、変形することにより抵抗率が変化する材料により形成されていることがより好ましい。そのような材料としては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子や、グラファイトやカーボンナノチューブを用いたカーボンペーストが好適に用いられる。また、圧力検知膜25を形成する材料としては、想定する圧力の大きさに応じて選択された抵抗率を有する材料が選択されるべきである。想定する圧力が大きい場合はカーボンなど抵抗率の低い材料が選択され、想定する圧力が小さい場合は抵抗率の高い導電性高分子が選択されることが好ましい。
【0022】
圧力検知膜25の形成方法として、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法、熱化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積法を用いることもできる。
圧力検知膜25は、図1(B)に示すように、第1電極21を被覆し、第2電極23より面積が大きいことが好ましい。これにより、圧力検知膜25が第1電極21と第2電極23との間に必ず介在して圧力検知を行うため、応力センサ100は、安定して動作可能になる。もっとも、圧力検知膜25は、少なくとも第1電極21と第2電極23との対向位置(重なる領域)に存在していればよい。
【0023】
圧力検知膜25の厚さは、第1電極21及び第2電極23の厚さより厚く、1μm以上100μm以下であることが好ましい。圧力検知膜25の厚さが1μm以上である場合、圧力に対して変形しやすくなり、検出精度が向上する。圧力検知膜25の厚さが100μm以下である場合、応力センサ100の微細化が可能になる。
【0024】
(第1絶縁膜)
第1絶縁膜27は、第1電極21及び第2電極23、並びに圧力検知膜25を応力センサ100の外部から絶縁するための膜である。
第1絶縁膜27に使用する材料は、圧力検知膜25より抵抗率が高い絶縁材料を用いる必要がある。このような例としては、SiO(二酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、Si(窒化ケイ素)、BN(窒化ホウ素)などの無機酸化物や無機窒化物、ウレタン、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどの有機物を使用することができる。圧力を印加したとき、圧力検知膜25の変形を損なわず、センシング精度を向上させるため、第1絶縁膜27は、圧力検知膜25の材料より硬い絶縁体がより好ましい。
【0025】
第1絶縁膜27の形成方法は特に限定されず、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法、熱化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積法を用いることもできる。更に、塗布法の場合、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スプレーコート法を利用することができる。
第1絶縁膜27の厚さは第2電極23より厚い必要があり、1μm以上100μm以下が好ましい。第1絶縁膜27の厚さが1μm以上である場合、外部との絶縁が良好なため安定して圧力を検出することができる。第1絶縁膜27の厚さが100μm以下である場合、応力センサ100の微細化が可能になる。
【0026】
<第1方向せん断力検知部>
第1方向せん断力検知部3は、基材1の厚さ方向と交差する方向(特に基材1の厚さ方向と垂直な方向)のうちの一方向である第1方向にかかるせん断力を検知する検知部である。本実施形態では、「第1方向」が図1(C)中の左右方向であり、第1方向せん断力検知部3が図1(C)中の左右方向にかかるせん断力を検知する場合について説明する。
図1(B)及び図1(C)に示すように、第1方向せん断力検知部3は、基材1の圧力検知部2とは反対側の面に、第3電極31、第1方向せん断力検知膜35、第4電極33、第2絶縁膜37の順に積層して形成されている。
【0027】
(第3電極)
第3電極31は、図1(B)に示すように、基材1の圧力検知部2とは反対側の面上に形成される。第3電極31は、後述する第4電極33と対向配置されている。
第3電極31には、抵抗率が低い導電性材料を用いることができる。第3電極31は、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属、あるいはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)などの導電性金属酸化物の使用が可能である。
第3電極31の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましい。第3電極31の厚さが0.01μm以上である場合、電極として良好に機能するため応力センサの検出精度が向上する。第3電極31の厚さが10μm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。
【0028】
第3電極31の形成方法は、特に限定されず、一般的な成膜方法を利用することができる。電極の製造は、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法を用いることもできる。
第3電極31の面積は0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましい。第3電極31の面積が0.2mm以上である場合、応力センサの検出精度が向上する。第3電極31の面積が3.0mm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。また、第3電極31の形状は限定されず、例えば、矩形、円形、三角形であってもよい。
【0029】
(第4電極)
第4電極33は、図1(B)に示すように、後述する第1方向せん断力検知膜35上において、第3電極31と平行に延在するように形成される。
第3電極31及び第4電極33は、基材1の厚さ方向から見て、検知するせん断力検知方向へのせん断変位に応じて第3電極31及び第4電極33が重なる重なり領域3Aの面積が変化する。また、せん断力検知方向と直行する方向のせん断変形の有無に関わらず第3電極31及び第4電極33が重なる重なり領域3Aの面積が一定となるように配置されている。本実施形態では、第3電極31及び第4電極33は、第3電極31の一部と第4電極33の一部とが重複するように配置されている。すなわち、第3電極31及び第4電極33は、図1(C)に示すように平面視で、第3電極31の中央と第4電極33の中央とがずれて(第3電極31と第4電極33との外形が一致しないように)配置されており、第4電極33は第3電極31の片側にはみ出している。
【0030】
また、第4電極33は、第3電極31と異なる形状を有している。これにより、本実施形態において第1方向せん断力検知部3は、基材1表面に平行し、横方向に直行した縦方向のせん断力が入力されても、第3電極31と第4電極33とが重なった重なり領域3Aの面積が変化しない。
【0031】
第3電極31と第4電極33とが重なった重なり領域3Aの面積は、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。重なり領域3Aの面積が0.5mm以上である場合、せん断力の検出精度が向上する。重なり領域3Aの面積が1.5mm以下である場合、応力センサ100の微細化を達成することが可能となる。
【0032】
第4電極33には、第3電極31と同様に、抵抗率が低い導電性材料を用いることができる。第4電極33は、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属、あるいはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)などの導電性金属酸化物の使用が可能である。
第4電極33の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましい。第4電極33の厚さが0.01μm以上である場合、電極として良好に機能するため応力センサの検出精度が向上する。第4電極33の厚さが10μm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。
【0033】
第4電極33の形成方法は、特に限定されず、一般的な成膜方法を利用することができる。電極の製造は、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法を用いることもできる。
第4電極33の面積は0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましい。第4電極33の面積が0.2mm以上である場合、応力センサの検出精度が向上する。第4電極33の面積が3.0mm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。また、第4電極33の形状は限定されず、例えば、矩形、円形、三角形であってもよい。
【0034】
(第1方向せん断力検知膜)
第1方向せん断力検知膜35は、第1方向せん断力検知膜35にかかるせん断力に応じて変形して抵抗値が減少する膜である。
第1方向せん断力検知膜35を構成する材料には、第3電極31及び第4電極33より抵抗率が高く、後述する第2絶縁膜37より抵抗率が低い必要がある。これは、外部からの影響を受けずに対向電極間の抵抗値変化を検出するためである。
第1方向せん断力検知膜35は、変形することにより抵抗率が変化する材料により形成されていることがより好ましい。そのような材料としては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子や、グラファイトやカーボンナノチューブを用いたカーボンペーストが好適に用いられる。また、第1方向せん断力検知膜35を形成する材料としては、想定するせん断力の大きさに応じて選択された抵抗率を有する材料が選択されるべきである。想定するせん断力が大きい場合はカーボンなど抵抗率の低い材料が選択され、想定するせん断力が小さい場合は抵抗率の高い導電性高分子が選択されることが好ましい。
【0035】
第1方向せん断力検知膜35の形成方法として、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法、熱化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積法を用いることもできる。
【0036】
第1方向せん断力検知膜35は、図1(B)に示すように、第3電極31を被覆し、第4電極33より面積が大きいことが好ましい。これにより応力センサ100は、安定して動作可能になる。もっとも、第1方向せん断力検知膜35は、少なくとも第3電極31と第4電極33との対向位置(重なる領域)に存在していればよい。
第1方向せん断力検知膜35の厚さは、第3電極31及び第4電極33の厚さより厚く、1μm以上100μm以下であることが好ましい。第1方向せん断力検知膜35の厚さが1μm以上である場合、せん断力に対して変形しやすくなり、検出精度が向上する。第1方向せん断力検知膜35の厚さが100μm以下である場合、応力センサ100の微細化が可能になる。
【0037】
(第2絶縁膜)
第2絶縁膜37は、第3電極31及び第4電極33、並びに第1方向せん断力検知膜35を応力センサ100の外部から絶縁するための膜である。
第2絶縁膜37に使用する材料は、第1方向せん断力検知膜35より抵抗率が高い絶縁材料を用いる必要がある。このような例としては、SiO(二酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、Si(窒化ケイ素)、BN(窒化ホウ素)などの無機酸化物や無機窒化物、ウレタン、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどの有機物を使用することができる。せん断力を印加したとき、第1方向せん断力検知膜35の変形を損なわず、センシング精度を向上させるため、第2絶縁膜37は、第1方向せん断力検知膜35の材料より硬い絶縁体がより好ましい。
【0038】
第2絶縁膜37の形成方法は特に限定されず、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法、熱化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積法を用いることもできる。更に、塗布法の場合、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スプレーコート法を利用することができる。
第2絶縁膜37の厚さは第4電極33より厚い必要があり、1μm以上100μm以下が好ましい。第2絶縁膜37の厚さが1μm以上である場合、外部との絶縁が良好なため安定してせん断力を検出することができる。第2絶縁膜37の厚さが100μm以下である場合、応力センサ100の微細化が可能になる。
【0039】
<動作その他>
本開示の一実施形態に係る圧力測定方法について、図2(A)及び図2(B)を用いて説明する。
図2(A)は、圧力測定時における応力センサ100の変形前を示す図である。図2(B)は、圧力測定時における応力センサ100の変形後を示す図である。
圧力検知部2では、第1電極21及び第2電極23が圧力検知膜25を介して積層されている。図2(A)に示すように、圧力測定時において、第2電極23側から、第1電極21方向に向かって押圧力F1で押す。押圧力F1を掛けると、図2(B)に示すように圧力検知膜25が変形し第1電極21と第2電極23との距離が減少する。圧力検知部2は、このときの第1電極21と第2電極23との間の抵抗値の変化を接触圧力として出力する。
【0040】
図3は、応力センサ100の第1方向せん断力検知部3でのせん断力測定方法のイメージである。図3(A)は、第1方向せん断力測定時における応力センサ100の変形前を示す図である。図3(B)は、第1方向せん断力測定時における応力センサ100の変形後を示す図である。
【0041】
第1方向せん断力検知部3では、第3電極31及び第4電極33が第1方向せん断力検知膜35を介して積層されている。図3(A)に示すように、第1方向せん断力測定時において、第1方向せん断力検知部3に、第4電極33に対し紙面左に向かって第1方向せん断力F2を与える。このとき第1方向せん断力検知膜35の第3電極31と第4電極33とに挟まれた部分を、網掛けで示した重なり部分とする。第1方向せん断力F2によって第4電極33に第1方向せん断力検知膜35の変形を伴ってずれ(変位)が生じ、図3(B)のようになる。このとき、図3(A)の状態と比べて第3電極31と第4電極33との重なり部分の第1方向せん断力F2が掛けられた方向における幅(図3の紙面左右方向における幅)が減少することで、変形前と比べて電極間の抵抗値が増加する。第1方向せん断力検知部3は、これらの値の変化をせん断力値として出力する。そのため、応力の負荷前後で第3電極31と第4電極33との重なり部分の変化量(変形量)が大きいほどせん断力も大きい。
【0042】
ここで、応力センサ100に対しせん断力F2がかかる際に、一緒に押圧力が負荷される場合もある。この場合、不図示の制御部において、圧力検知部2に基づき検知される圧力検知分を用いて、検知したせん断力を補正することが好ましい。
本実施形態によれば、圧力及びせん断力が検知可能、かつ微細化、高集積化した高精度な応力センサ100を提供することができる。
【0043】
<変形例>
上述した応力センサ100は、基材1の厚さ方向と交差する方向のうち左右方向にかかるせん断力を検知する第1方向せん断力検知部を備える場合について説明したが、このような構成に限られない。例えば、応力センサは、基材1の厚さ方向と交差する方向のうち上下方向にかかるせん断力を検知する第2方向せん断力検知部を備えて形成されていても良い。第2方向せん断力検知部を備える応力センサの基本構成について、図4(A),図4(B)及び図4(C)を用いて説明する。
【0044】
図4(A)は、本実施形態に係る応力センサ200の構成を示す平面図である。図4(B)は、本実施形態に係る応力センサ200の構成を示す断面図である。図4(C)は、本実施形態に係る応力センサ200の構成を示す底面図である。応力センサ200は、基材1と、基材1上に形成された圧力検知部2と、基材1の圧力検知部2と反対の面側に形成された第2方向せん断力検知部4とを備えている。
すなわち、応力センサ200は、第1方向せん断力検知部3に代えて第2方向せん断力検知部4を備える点で、先述の応力センサ100と相違する。
【0045】
以下、第2方向せん断力検知部4について説明する。なお、第2方向せん断力検知部4以外の各層(基材1及び圧力検知部2)については、応力センサ100の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0046】
<第2方向せん断力検知部>
第2方向せん断力検知部4は、基材1の厚さ方向と交差し、かつ第一実施形態で説明した第1方向とも交差する第2方向にかかるせん断力を検知する検知部である。より具体的に、本実施形態では、第2方向せん断力検知部4は、基材1の厚さ方向と垂直であり、かつ第1方向とも垂直である方向のせん断力を検出する。本実施形態では、「第2方向」が図4(C)中の上下方向であり、第2方向せん断力検知部4が図4(C)中の上下方向にかかるせん断力を検知する場合について説明する。
本実施形態の第2方向せん断力検知部4は、図4(B)に示すように、基材1の圧力検知部2とは反対側の面に、第5電極41、第2方向せん断力検知膜45、第6電極43、第3絶縁膜47の順に積層して形成されている。
【0047】
(第5電極)
第5電極41は、図4(B)に示すように、基材1の圧力検知部2とは反対側の面上に形成される。第5電極41は、後述する第6電極43と対向配置されている。
第5電極41には、抵抗率が低い導電性材料を用いることができる。第5電極41は、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属、あるいはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)などの導電性金属酸化物の使用が可能である。
第5電極41の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましい。第5電極41の厚さが0.01μm以上である場合、電極として良好に機能するため応力センサの検出精度が向上する。第5電極41の厚さが10μm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。
【0048】
第5電極41の形成方法は、特に限定されず、一般的な成膜方法を利用することができる。電極の製造は、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法を用いることもできる。
第5電極41の面積は0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましい。第5電極41の面積が0.2mm以上である場合、応力センサの検出精度が向上する。第5電極41の面積が3.0mm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。また、第5電極41の形状は限定されず、例えば、矩形、円形、三角形であってもよい。
【0049】
(第6電極)
第6電極43は、図4(B)に示すように、後述する第2方向せん断力検知膜45上において、第5電極41と平行に延在するように形成される。
第5電極41及び第6電極43は、基材1の厚さ方向から見て、検知するせん断力検知方向へのせん断変位に応じて第5電極41及び第6電極43が重なる重なり領域4Aの面積が変化する。また、せん断力検知方向と直行する方向のせん断変形の有無に関わらず第5電極41及び第6電極43が重なる重なり領域4Aの面積が一定となるように配置されている。本実施形態では、第5電極41及び第6電極43は、第5電極41の一部と第6電極43の一部とが重複するように配置されている。すなわち、第5電極41及び第6電極43は、図1(C)に示すように平面視で、第5電極41の中央と第6電極43の中央とがずれて(第5電極41と第6電極43との外形が一致しないように)配置されており、第6電極43は第5電極41の片側にはみ出している。
【0050】
また、第6電極43は、第5電極41と異なる形状を有している。これにより、本実施形態において第2方向せん断力検知部4は、基材1表面に平行し、横方向のせん断力が入力されても、第5電極41と第6電極43とが重なった重なり領域4Aの面積が変化しない。
【0051】
第5電極41と第6電極43とが重なった重なり領域4Aの面積は、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。重なり領域4Aの面積が0.5mm以上である場合、第2方向せん断力の検出精度が向上する。重なり領域4Aの面積が1.5mm以下である場合、応力センサ200の微細化を達成することが可能となる。
【0052】
第6電極43には、第5電極41と同様に、抵抗率が低い導電性材料を用いることができる。第6電極43は、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属、あるいはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)などの導電性金属酸化物の使用が可能である。
第6電極43の厚さは、特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下の範囲が好ましい。第6電極43の厚さが0.01μm以上である場合、電極として良好に機能するため応力センサの検出精度が向上する。第6電極43の厚さが10μm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。
【0053】
第6電極43の形成方法は、特に限定されず、一般的な成膜方法を利用することができる。電極の製造は、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、リバースオフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法を用いることもできる。
第6電極43の面積は0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましい。第6電極43の面積が0.2mm以上である場合、応力センサの検出精度が向上する。第6電極43の面積が3.0mm以下である場合、応力センサの微細化が可能になる。また、第6電極43の形状は限定されず、例えば、矩形、円形、三角形であってもよい。
【0054】
(第2方向せん断力検知膜)
第2方向せん断力検知膜45は、第2方向せん断力検知膜45にかかる第2方向のせん断力に応じて変形して抵抗値が減少する膜である。
第2方向せん断力検知膜45を構成する材料には、第5電極41及び第6電極43より抵抗率が高く、後述する第3絶縁膜47より抵抗率が低い必要がある。これは、外部からの影響を受けずに対向電極間の抵抗値変化を検出するためである。
第2方向せん断力検知膜45は、変形することにより抵抗率が変化する材料により形成されていることがより好ましい。そのような材料としては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子や、グラファイトやカーボンナノチューブを用いたカーボンペーストが好適に用いられる。また、第2方向せん断力検知膜45を形成する材料としては、想定するせん断力の大きさに応じて選択された抵抗率を有する材料が選択されるべきである。想定するせん断力が大きい場合はカーボンなど抵抗率の低い材料を選び、想定するせん断力が小さい場合は抵抗率の高い導電性高分子が選択されることが好ましい。
【0055】
第2方向せん断力検知膜45の形成方法として、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法、熱化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積法を用いることもできる。
【0056】
第2方向せん断力検知膜45は、図4(B)に示すように、第5電極41を被覆し、第6電極43より面積が大きいことが好ましい。これにより、第2方向せん断力検知膜34が第5電極41と第6電極43との間に必ず介在してせん断力検知を行うため、応力センサ200は、安定して動作可能になる。もっとも、第2方向せん断力検知膜45は、少なくとも第5電極41と第6電極43との対向位置(重なる領域)に存在していればよい。
【0057】
第2方向せん断力検知膜45の厚さは、第5電極41及び第6電極43の厚さより厚く、1μm以上100μm以下であることが好ましい。第2方向せん断力検知膜45の厚さが1μm以上である場合、第2方向のせん断力に対して変形しやすくなり、検出精度が向上する。第2方向せん断力検知膜45の厚さが100μm以下である場合、応力センサ200の微細化が可能になる。
【0058】
(第3絶縁膜)
第3絶縁膜47は、第5電極41及び第6電極43、並びに第2方向せん断力検知膜45を応力センサ200の外部から絶縁するための膜である。
第3絶縁膜47に使用する材料は、第2方向せん断力検知膜45より抵抗率が高い絶縁材料を用いる必要がある。このような例としては、SiO(二酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、Si(窒化ケイ素)、BN(窒化ホウ素)などの無機酸化物や無機窒化物、ウレタン、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどの有機物を使用することができる。せん断力を印加したとき、第2方向せん断力検知膜45の変形を損なわず、センシング精度を向上させるため、第3絶縁膜47は、第2方向せん断力検知膜45の材料より硬い絶縁体がより好ましい。
【0059】
第3絶縁膜47の形成方法は特に限定されず、例えば、印刷法の場合、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法を用いることができる。また、気相堆積法の場合、真空蒸着法、スパッタリング法、熱化学気相堆積法、プラズマ化学気相堆積法を用いることもできる。更に、塗布法の場合、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スプレーコート法を利用することができる。
【0060】
第3絶縁膜47の厚さは第6電極43より厚い必要があり、1μm以上100μm以下が好ましい。第3絶縁膜47の厚さが1μm以上である場合、外部との絶縁が良好なため安定して第2方向のせん断力を検出することができる。第3絶縁膜47の厚さが100μm以下である場合、応力センサ200の微細化が可能になる。
【0061】
<第一実施形態の効果>
以上のような応力センサ100は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の応力センサ100は、第1方向せん断力検知部3又は第2方向せん断力検知部4を備えている。
この構成によれば、基材1の厚さ方向と交差する方向にかかる1方向のせん断力を検出可能な応力センサ100を提供することができる。
【0062】
(2)本実施形態の応力センサ100は、第1電極21と第2電極23とが重なった重なり領域2Aの面積が、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、検出精度が向上し、かつ微細化が可能な応力センサ100を提供することができる。
【0063】
(3)本実施形態の応力センサ100は、第3電極31と第4電極33とが重なった領域重なり3Aの面積が、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、検出精度が向上し、かつ微細化が可能な応力センサ100を提供することができる。
【0064】
<第二実施形態>
本開示の一実施形態に係る応力センサモジュールの基本構成について、図5(A),図5(B)及び図5(C)を用いて説明する。ここで、応力センサモジュールとは、第一実施形態において説明した複数の圧力検知部2と、複数のせん断力検知部(例えば第1方向せん断力検知部3)とを備える応力センサの一例である。
【0065】
図5(A)は、本実施形態に係る応力センサモジュール300の構成を示す平面図である。図5(B)は、本実施形態に係る応力センサモジュール300の構成を示す断面図である。図5(C)は、本実施形態に係る応力センサモジュール300の構成を示す底面図である。応力センサモジュール300は、基材1と、基材1上に形成された2以上の圧力検知部2と、基材1の圧力検知部2と反対の面側に形成された2以上の第1方向せん断力検知部及び2以上の第2方向せん断力検知部4とを備えている。
すなわち、応力センサ200は、複数の圧力検知部2と、複数の第1方向せん断力検知部3及び複数の第2方向せん断力検知部4を備える点で、先述の応力センサ100と相違する。なお、応力センサモジュール300を構成する各層については、応力センサ100の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0066】
図5(A)に示すように、基材1上に複数の圧力検知部2が一方向に配列されている。本実施形態においては、4つの圧力検知部2が一列に等間隔に並んで配置されているが、これに限られない。圧力検知部2の合計面積は、基材1の面積の4分の1以上を占めることが好ましい。これにより、圧力検知部2の密度が高くなり、応力センサのセンシング精度は単位面積当たりの数に依存するため、単位面積当たりの圧力検知部2の数が多ければ多いほど、圧力の検出精度が上がる。また、応用先の需要に応じて圧力検知部2の密度を調整することで、応力センサモジュール300の検出精度を調整することができる。
【0067】
図5(B)及び図5(C)に示すように、基材1の圧力検知部2とは反対側の面に、複数の第1方向せん断力検知部3と複数の第2方向せん断力検知部4とを備えている。これにより、応力センサモジュール300は、基材1の厚さ方向と交差する方向のうちの第1方向と第2方向との2方向にかかるせん断力を検知することができる。本実施形態においては、図5(C)中の左右方向及び上下方向にかかるせん断力を検知することができる。
【0068】
また、本実施形態においては、複数の第1方向せん断力検知部3と複数の第2方向せん断力検知部4とが一方向に交互に配置されている。これにより、応力センサモジュール300全体にかかる左右方向及び上下方向のせん断力について、高精度で検知することができる。
【0069】
第1方向せん断力検知部3の合計面積は、基材1の面積の8分の1以上を占めることが好ましい。これにより、第1方向せん断力検知部3の密度が高くなり、第1方向にかかるせん断力の検出精度が上がる。同様に、第2方向せん断力検知部4の合計面積は、基材1の面積の8分の1以上を占めることが好ましい。これにより、第2方向せん断力検知部4の密度が高くなり、第2方向にかかるせん断力の検出精度が上がる。また、応用先の需要に応じて第1方向せん断力検知部3及び第2方向せん断力検知部4の密度を調整することで、応力センサモジュール300の検出精度を調整することができる。
【0070】
応力センサモジュール300における圧力検知部2と第1方向せん断力検知部3との位置関係は、特に限定されないが、圧力検知部2と第1方向せん断力検知部3とが同軸に配置されることが好ましい。同様に、圧力検知部2と第2方向せん断力検知部4との位置関係は、特に限定されないが、圧力検知部2と第2方向せん断力検知部4とが同軸に配置されることが好ましい。
【0071】
<第二実施形態の効果>
以上のような応力センサモジュール300は、第一実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(4)本実施形態の応力センサモジュール300は、第1方向せん断力検知部3と第2方向せん断力検知部4とを備えている。
この構成によれば、基材1の厚さ方向と交差する方向のうち第1方向と第2方向との2方向にかかるせん断力を検出できる。そのため、検出した2方向のせん断力を合成し、任意方向のせん断力を検出する応力センサモジュール300を提供することができる。
【0072】
<第三実施形態>
本開示の一実施形態に係る応力センサモジュールの基本構成について、図6(A),図6(B)及び図6(C)を用いて説明する。
図6(A)は、本実施形態に係る応力センサモジュール400の構成を示す平面図である。図6(B)は、本実施形態に係る応力センサモジュール400の構成を示す断面図である。図6(C)は、本実施形態に係る応力センサモジュール400の構成を示す底面図である。応力センサモジュール400は、基材1と、基材1上に形成された2以上の圧力検知部2と、基材1の圧力検知部2と反対の面側に形成された2以上の第1方向せん断力検知部及び2以上の第2方向せん断力検知部4とを備えている。
【0073】
図6(A)及び図6(C)に示すように、応力センサモジュール400は、圧力検知部2、第1方向せん断力検知部3及び第2方向せん断力検知部4がマトリクス状に配置されている点で先述の応力センサモジュール300と相違する。なお、応力センサモジュール400を構成する各層については、応力センサ100の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0074】
図6(A)に示すように、基材1上に複数の圧力検知部2がマトリクス状に配列されている。本実施形態においては、4×4の圧力検知部2が等間隔に並んで配置されているが、これに限られない。圧力検知部2の合計面積は、基材1の面積の4分の1以上を占めることが好ましい。これにより、圧力検知部2の密度が高くなり、応力センサのセンシング精度は単位面積当たりの数に依存するため、単位面積当たりの圧力検知部2の数が多ければ多いほど、圧力の検出精度が上がる。また、応用先の需要に応じて圧力検知部2の密度を調整することで、応力センサモジュール400の検出精度を調整することができる。
【0075】
図6(B)及び図6(C)に示すように、基材1の圧力検知部2とは反対側の面に、複数の第1方向せん断力検知部3と複数の第2方向せん断力検知部4とを備えている。これにより、応力センサモジュール400は、基材1の厚さ方向と交差する方向のうちの第1方向と第2方向との2方向にかかるせん断力を検知することができる。本実施形態においては、図6(C)中の左右方向及び上下方向にかかるせん断力を検知することができる。
【0076】
また、本実施形態においては、第1方向せん断力検知部3と複数の第2方向せん断力検知部4とがマトリクス状に交互に配置されている。これにより、応力センサモジュール400全体にかかる左右方向及び上下方向のせん断力について、高精度で検知することができる。
【0077】
第1方向せん断力検知部3の合計面積は、基材1の面積の8分の1以上を占めることが好ましい。これにより、第1方向せん断力検知部3の密度が高くなり、第1方向にかかるせん断力の検出精度が上がる。同様に、第2方向せん断力検知部4の合計面積は、基材1の面積の8分の1以上を占めることが好ましい。これにより、第2方向せん断力検知部4の密度が高くなり、第2方向にかかるせん断力の検出精度が上がる。また、応用先の需要に応じて第1方向せん断力検知部3及び第2方向せん断力検知部4の密度を調整することで、応力センサモジュール400の検出精度を調整することができる。
【0078】
応力センサモジュール400における圧力検知部2と第1方向せん断力検知部3との位置関係は、特に限定されないが、圧力検知部2と第1方向せん断力検知部3とが同軸に配置されることが好ましい。同様に、圧力検知部2と第2方向せん断力検知部4との位置関係は、特に限定されないが、圧力検知部2と第2方向せん断力検知部4とが同軸に配置されることが好ましい。
【0079】
<第三実施形態の効果>
以上のような応力センサモジュール400は、第一実施形態及び第二実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(5)本実施形態の応力センサモジュール400は、圧力検知部2、第1方向せん断力検知部3及び第2方向せん断力検知部4がマトリクス状に交互に配置されている。
この構成によれば、応力センサモジュール400全体にかかる左右方向及び上下方向のせん断力について高精度で検出できる。そして、検出した2方向のせん断力を合成することにより、任意方向のせん断力を高精度で検出する応力センサモジュール400を提供することができる。
【0080】
<第四実施形態>
本開示の一実施形態に係る応力センサモジュールの基本構成について、図7(A),図7(B)及び図7(C)を用いて説明する。
【0081】
図7(A)は、本実施形態に係る応力センサモジュール500の構成を示す平面図である。図7(B)は、本実施形態に係る応力センサモジュール500の構成を示す断面図である。図7(C)は、本実施形態に係る応力センサモジュール500の構成を示す底面図である。応力センサモジュール500は、基材1と、基材1上に形成された2以上の圧力検知部2と、基材1の圧力検知部2と反対の面側に形成された2以上の第1方向せん断力検知部及び2以上の第2方向せん断力検知部5とを備えている。
【0082】
応力センサモジュール500は、第2方向せん断力検知部4に代えて第2方向せん断力検知部5を備える点で先述の応力センサモジュール400と相違する。なお、応力センサモジュール500を構成する基材1、圧力検知部2、及び第1方向せん断力検知部3については、応力センサ100の各層と同様の構成であるため説明を省略する。
【0083】
<第2方向せん断力検知部>
本実施形態において、応力センサモジュール500は、第2方向せん断力検知部5を備えている。第2方向せん断力検知部5は、基材1の厚さ方向と交差し、かつ第一実施形態で説明した第1方向とも交差する第2方向にかかるせん断力を検知する検知部である。より具体的に、本実施形態では、第2方向せん断力検知部5は、基材1の厚さ方向と垂直であり、かつ第1方向と45°の角度で交差する方向のせん断力を検出する。本実施形態における「第2方向」は、図7(C)中の右斜め上から左斜め下に向かう方向であり、第2方向せん断力検知部5が図7(C)中の右斜め上から左斜め下に向かう方向にかかるせん断力を検知する場合について説明する。
すなわち、第2方向せん断力検知部5は、第2方向せん断力検知部4と同様の構成であり、せん断力検知方向が第2方向せん断力検知部4のせん断力検知方向に対して基材1の表面において45°回転した方向となるように配置されている点で第2方向せん断力検知部4と相違する。
【0084】
図7(A)に示すように、基材1上に複数の圧力検知部2がマトリクス状に配列されている。本実施形態においては、4×4の圧力検知部2が等間隔に並んで配置されているが、これに限られない。圧力検知部2の合計面積は、基材1の面積の4分の1以上を占めることが好ましい。これにより、圧力検知部2の密度が高くなり、応力センサのセンシング精度は単位面積当たりの数に依存するため、単位面積当たりの圧力検知部2の数が多ければ多いほど、圧力の検出精度が上がる。また、応用先の需要に応じて圧力検知部2の密度を調整することで、応力センサモジュール500の検出精度を調整することができる。
【0085】
図7(B)及び図7(C)に示すように、基材1の圧力検知部2とは反対側の面に、複数の第1方向せん断力検知部3と複数の第2方向せん断力検知部5とを備えている。これにより、応力センサモジュール500は、基材1の厚さ方向と交差する方向のうちの第1方向と第2方向との2方向にかかるせん断力を検知することができる。本実施形態においては、図6(C)中の左右方向及び右斜め上から左斜め下に向かう方向にかかるせん断力を検知することができる。
【0086】
また、本実施形態においては、第1方向せん断力検知部3と複数の第2方向せん断力検知部5とがマトリクス状に交互に配置されている。これにより、応力センサモジュール500全体にかかる左右方向及び右斜め上から左斜め下に向かう方向にかかるせん断力について、高精度で検知することができる。
【0087】
第1方向せん断力検知部3の合計面積は、基材1の面積の8分の1以上を占めることが好ましい。これにより、第1方向せん断力検知部3の密度が高くなり、第1方向にかかるせん断力の検出精度が上がる。同様に、第2方向せん断力検知部5の合計面積は、基材1の面積の8分の1以上を占めることが好ましい。これにより、第2方向せん断力検知部35密度が高くなり、第2方向にかかるせん断力の検出精度が上がる。また、応用先の需要に応じて第1方向せん断力検知部3及び第2方向せん断力検知部5の密度を調整することで、応力センサモジュール500の検出精度を調整することができる。
【0088】
応力センサモジュール500における圧力検知部2と第1方向せん断力検知部3との位置関係は、特に限定されないが、圧力検知部2と第1方向せん断力検知部3とが同軸に配置されることが好ましい。同様に、圧力検知部2と第2方向せん断力検知部5との位置関係は、特に限定されないが、圧力検知部2と第2方向せん断力検知部5とが同軸に配置されることが好ましい。
【0089】
<第四実施形態の効果>
以上のような応力センサモジュール500は、第一実施形態から第三実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(6)本実施形態の応力センサモジュール500は、第2方向せん断力検知部を備えている。
この構成によれば、第2方向にかかるせん断力を検出でき、さらに検出した2方向のせん断力を合成することにより、任意方向のせん断力を検出する応力センサモジュール500を提供することができる。
以下、実施例および比較例を示して本開示を詳細に説明するが、本開示は下記例に制限されるものではない。
【実施例0090】
次に、実施例及び比較例の応力センサを示して本開示をさらに具体的に説明する。
<実施例1>
厚さ125μmのポリイミドフィルムを基材とし、その基材の表面に、圧力検知部を形成した。具体的には、まず基材の上に、銀インキをグラビアオフセット印刷法により塗布して第1電極を形成した。そして、第1電極を覆うようにしてカーボンの導電性インキ(十条ケミカル製、CH-N)をスクリーン印刷法により塗布して圧力検知膜を形成した。このとき、圧力検知膜の厚さを100μmとした。次に、圧力検知膜上に銀インキをグラビアオフセット印刷法により塗布して第2電極を形成した。このとき、第2電極は第1電極と電極形状が異なるように形成した。次に、第2電極及び圧力検知膜を覆うようにしてウレタン樹脂の絶縁性インキをスクリーン印刷法により塗布して絶縁膜を形成した。このとき、絶縁膜の厚さを100μmとした。以上のようにして圧力検知部を作製した。
圧力検知部の作製において、第1電極及び第2電極の中央が同じ位置となるように配置した。また、第2電極の電極面積を3.0mmとし、第1電極と第2電極との重なった領域の面積を1.5mmとした。このとき、圧力検知部の個数を1個とした。
【0091】
続いて、基材の圧力検知部と反対の面側に、圧力検知部と同軸で、せん断力検知部を形成した。具体的には、銀インキをグラビアオフセット印刷法により塗布して第3電極を形成した。そして、第3電極を覆うようにしてカーボンの導電性インキ(十条ケミカル製、CH-N)をスクリーン印刷法により塗布してせん断力検知膜を形成した。このとき、せん断力検知膜の厚さを100μmとした。次に、せん断力検知膜上に銀インキをグラビアオフセット印刷法により塗布して第4電極を形成した。このとき、第4電極は第3電極と電極形状が異なるように形成した。第4電極及びせん断力検知膜を覆うようにしてウレタン樹脂の絶縁性インキをスクリーン印刷法により塗布して絶縁膜を形成した。このとき、絶縁膜の厚さを100μmとした。以上のようにしてせん断力検知部を作製した。
せん断力検知部の作製において、第3電極及び第4電極の中央がずれるように配置した。また、第4電極の電極面積を3.0mmとし、第3電極と第4電極との重なった領域の面積を1.5mmとした。このとき、せん断力検知部の個数を1個とした。
以上のようにして、実施例1の応力センサを作製した。
【0092】
<実施例2>
圧力検知部の個数を4個に変更した。また、せん断力検知部の個数を4個に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の応力センサを作製した。
<実施例3>
圧力検知部において、第2電極が第1電極と電極形状が同一になるように形成した。また、せん断力検知部において、第4電極が第3電極と電極形状が同一になるように形成した。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の応力センサを作製した。
【0093】
<実施例4>
圧力検知部において、第2電極の電極面積を0.1mmとし、第1電極と第2電極との重なった領域の面積を0.05mmとした。また、せん断力検知部において、第4電極の電極面積を0.1mmとし、第3電極と第4電極との重なった領域の面積を0.05mmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の応力センサを作製した。
<実施例5>
圧力検知部において、第2電極の電極面積を0.2mmとし、第1電極と第2電極との重なった領域の面積を0.1mmとした。また、せん断力検知部において、第4電極の電極面積を0.2mmとし、第3電極と第4電極との重なった領域の面積を0.1mmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の応力センサを作製した。
【0094】
<実施例6>
圧力検知部において、第2電極の電極面積を1.0mmとし、第1電極と第2電極との重なった領域の面積を0.5mmとした。また、せん断力検知部において、第4電極の電極面積を1.0mmとし、第3電極と第4電極との重なった領域の面積を0.5mmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例6の応力センサを作製した。
<実施例7>
圧力検知部において、第2電極の電極面積を4.0mmとし、第1電極と第2電極との重なった領域の面積を2.0mmとした。また、せん断力検知部において、第4電極の電極面積を4.0mmとし、第3電極と第4電極との重なった領域の面積を2.0mmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例7の応力センサを作製した。
【0095】
<実施例8>
圧力検知膜の厚さを0.05μmとした。また、せん断力検知膜の厚さを0.05μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例8の応力センサを作製した。
<実施例9>
圧力検知膜の厚さを1μmとした。また、せん断力検知膜の厚さを1μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例9の応力センサを作製した。
<実施例10>
圧力検知膜の厚さを200μmとした。また、せん断力検知膜の厚さを200μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例10の応力センサを作製した。
<比較例1>
せん断力検知部の作製を省略した。それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例1の応力センサを作製した。
【0096】
<評価判定>
上述した実施例1~10、比較例1で得られた応力センサについて、以下の方法でセンサ特性及びセンサの微細化を評価した。また、センサ特性の評価を行うにあたって、応力センサの圧力検知特性及びせん断力検知特性について評価した。評価結果を表1に示す。
【0097】
<評価>
〔圧力検知特性〕
実施例1~10及び比較例1の応力センサをLCRメーターにつないで、圧力検知膜及びせん断力検知膜に5Vの交流電圧を掛けた状態で、上から指で押したりなでたりすることで、抵抗値の変化を測定し、以下の◎、〇、△、×の4段階で評価した。
<評価基準>
◎:圧力に対し、検出した電圧値は線形的に単調増加、あるいは単調減少の場合
○:圧力に対し、検出した電圧値は部分的に線形的ではないが、単調増加、あるいは単調減少の場合
△:圧力に対し、検出した電圧値は線形的ではないが、単調増加、あるいは単調減少の場合
×:圧力に対し、検出した電圧の変化は単調ではない場合
【0098】
〔せん断力検知特性〕
実施例1~10及び比較例1の応力センサをLCRメーターにつないで、圧力検知膜及びせん断力検知膜に5Vの交流電圧を掛けた状態で、上から指で押したりなでたりすることで、抵抗値の変化を測定して、以下の◎、〇、△、×の4段階で評価した。
<評価基準>
◎:せん断力に対し、検出した電圧値は線形的に単調増加、あるいは単調減少の場合
○:せん断力に対し、検出した電圧値は部分的に線形的ではないが、単調増加、あるいは単調減少の場合
△:せん断力に対し、検出した電圧値は線形的ではないが、単調増加、あるいは単調減少の場合
×:せん断力に対し、検出した電圧の変化は単調ではない場合
【0099】
〔微細化〕
実施例1~10及び比較例1の応力センサの各電極の寸法及び検知膜の膜厚を測定して、以下の◎、○、△、×で評価した。
<評価基準>
◎:第2電極の電極面積及び第4電極の電極面積が3.0mm以下であり、かつ圧力検知膜の厚さ及びせん断力検知膜の厚さが100μm以下の場合
○:第2電極の電極面積及び第4電極の電極面積が3.0mm以下であり、かつ圧力検知膜の厚さ及びせん断力検知膜の厚さが150μm以下の場合
△:第2電極の電極面積及び第4電極の電極面積が3.0mmより広く4.0mm以下である場合、または圧力検知膜の厚さ及びせん断力検知膜の厚さが150μm以上200μm以下である場合
×:第2電極の電極面積及び第4電極の電極面積が4.0mmより広い場合、または圧力検知膜の厚さ及びせん断力検知膜の厚さが200μm以上である場合
(評価結果)
以下の表1に、各実施例及び比較例の応力センサの構成を示す。また、以下の表2に、各実施例及び比較例のセンサ特性及びセンサの微細化の評価結果を示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
表1中に表されるように、実施例1~10、比較例1の評価結果から、実施例1~10のようにせん断力検知部を備える場合には、比較例1のようにせん断力検知部を備えない場合と比べてせん断力が検出可能であることがわかった。
また、実施例1及び実施例3の評価結果から、実施例1のように電極形状が異なる場合には、実施例3のように電極形状が同じである場合と比べて高い検出精度であることがわかった。
なお、本開示の応力センサは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
100,200:応力センサ
300,400,500:応力センサモジュール
1:基材
2:圧力検知部
2A:重なり領域
21:第1電極
23:第2電極
25:圧力検知膜
27:第1絶縁膜
3:第1方向せん断力検知部
3A:重なり領域
31:第3電極
33:第4電極
35:第1方向せん断力検知膜
37:第2絶縁膜
4:第2方向せん断力検知部
4A:重なり領域
41:第5電極
43:第6電極
45:第2方向せん断力検知膜
47:第3絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7