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特開2022-76058運搬装置、運搬補助架台、運搬システム及び運搬方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076058
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】運搬装置、運搬補助架台、運搬システム及び運搬方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20220512BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
H01F27/00 120
H01F27/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186267
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241957
【氏名又は名称】北海道電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】戸江 斉也
【テーマコード(参考)】
5E059
【Fターム(参考)】
5E059KK01
5E059LL02
(57)【要約】
【課題】段差がある場所でも運搬対象物を簡単に運搬することが可能な運搬装置、運搬補助架台、運搬システム及び運搬方法を提供する。
【解決手段】運搬装置10は、直線状に延びるレール11と、基端部が床面に設置され、長手方向に伸縮可能であって、レール11の各端部をそれぞれの先端部で支持する第1の支持脚12A及び第2の支持脚12Bと、レール11に取り付けられ、レール11にガイドされた状態でレール11の長手方向に移動可能である水平移動機構13と、水平移動機構13から下向きに延びるように支持され、長手方向に伸縮可能な油圧シリンダ14と、油圧シリンダ14の先端部に設けられ、変圧器を吊り下げ可能な吊り下げ部材15と、を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に延びるレールと、
基端部が床面に設置され、長手方向に伸縮可能であって、前記レールの各端部をそれぞれの先端部で支持する一対の支持脚と、
前記レールに取り付けられ、前記レールにガイドされた状態で前記レールの長手方向に移動可能である水平移動機構と、
前記水平移動機構から下向きに延びるように支持され、長手方向に伸縮可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータの先端部に設けられ、運搬対象物を吊り下げ可能な吊り下げ部材と、
を備える運搬装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、シリンダ本体と、前記シリンダ本体に対して長手方向に移動可能なピストンロッドと、を備える複動油圧シリンダであり、
前記ピストンロッドは、前記シリンダ本体に対して長軸周りに回転可能に支持されている、
請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
前記吊り下げ部材は、
前記アクチュエータの先端部に固定された円筒部と、
前記円筒部に接続され、前記円筒部から互いに離れる方向に延びる複数のアーム部と、
各アーム部の先端部に設けられ、前記運搬対象物に係止される複数の係止部と、
を備える、
請求項1又は2に記載の運搬装置。
【請求項4】
前記支持脚は、
前記レールの端部を支持し、その長手方向に伸縮可能な細長形状の本体部と、
前記本体部に対して折り畳み可能に接続され、広げられた状態で床面に設置されると、前記本体部が上向きに延びるように前記本体部を支持する複数の脚部と、
を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の運搬装置。
【請求項5】
前記レールは、互いに平行に配置された第1のレール及び第2のレールを備え、
前記水平移動機構は、
前記第1のレール及び前記第2のレールを覆うように配置され、前記アクチュエータが下向きに延びるように支持された本体部と、
前記本体部の一方の端部に設けられ、前記第1のレールにガイドされた状態で前記第1のレール上を転動する車輪を回転可能に支持する第1の転動部と、
前記本体部の他方の端部に設けられ、前記第2のレールにガイドされた状態で前記第2のレール上を転動する車輪を回転可能に支持する第2の転動部と、
を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の運搬装置。
【請求項6】
上面部が運搬対象物の底面部に装着され、前記底面部の一部が段差の上側にある床面に接触するように設置された場合に前記運搬対象物を支持する支持台と、
前記支持台の前記底面部から下方に延び、前記支持台が前記段差の上側にある床面に一部が設置された場合に、基端部が前記段差の下側にある床面に接触するように長手方向に伸縮可能な支持脚と、
を備える運搬補助架台。
【請求項7】
前記運搬補助架台は、複数の支持脚を備え、
前記支持台は、前記底面部に設けられ、互いに平行に延びる複数のガイドレールを備え、
各支持脚の先端部には、前記ガイドレールに取り付けられ状態で前記ガイドレールの長手方向に摺動可能な摺動部が形成されている、
請求項6に記載の運搬補助架台。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の運搬装置と、
前記運搬装置が運搬する前記運搬対象物の底面部に装着され、段差を有する床面に設置された場合でも下方から前記運搬対象物を支持する請求項6又は7に記載の運搬補助架台と、
を備える運搬システム。
【請求項9】
運搬装置と運搬補助架台とを備える運搬システムを用いて段差を有する床面で運搬対象物を運搬する運搬方法であって、
前記運搬対象物を床面に設置するとともに、前記運搬装置の支持脚を床面及び段差に合わせて前記運搬装置を設置する工程と、
前記運搬装置が設置された状態で、前記運搬装置により前記運搬対象物を吊り上げる工程と、
前記運搬対象物を吊り上げた状態で、前記運搬対象物の底面部に前記運搬補助架台を装着する工程と、
前記運搬対象物が装着された前記運搬補助架台を移動させる工程と、
移動させた前記運搬補助架台の支持脚を床面及び段差に合わせて前記運搬補助架台を設置する工程と、
前記運搬補助架台が設置された状態で、前記運搬装置を持ち上げる工程と、
持ち上げられた前記運搬装置を移動させる工程と、
移動させた前記運搬装置の前記支持脚を床面及び段差に合わせて前記運搬装置を設置する工程と、
を備える運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬装置、運搬補助架台、運搬システム及び運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器の容量変更や老朽化、絶縁油へのポリ塩化ビフェニル(Poly Chlorinated Biphenyl:PCB)の混入等を理由として、マンション等の地下の借室に設置された変圧器の取り替え作業が行われている。変圧器は、一般的なもので0.5トン以上の重さを有するにも関わらず、取り替えの際には、階段等の段差がある狭い通路から外部に運び出す必要があり、多くの時間及び人員が必要とされる。このため、変圧器の取り替え作業を省力化するための試みがなされている。例えば、特許文献1には、階段上に設置される複数の設置ベースと、各設置ベースに支持される一対のレールと、一対のレール上を走行する運搬機と、を備える運搬装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-137344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の運搬装置では、取り替え作業の度に階段上に多数の設置ベースを設置し、設置ベース上に一対のレールを組み立て、一対のレール上に運搬機を設置する必要があるため、設置及び撤去に多くの時間を要する。また、特許文献1の運搬装置では、階段の踊り場等で変圧器の移動方向を変えたり、運搬機上の変圧器を床面に下ろしたりするために別途、吊り下げ装置を必要とし、変圧器の運搬を省力化する点で更なる改善の余地がある。そして、このような問題は、変圧器を階段から外部に運び出す場合に限られず、段差がある場所において他の運搬対象物を運搬する場合にも存在している。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、段差がある場所でも運搬対象物を簡単に運搬することが可能な運搬装置、運搬補助架台、運搬システム及び運搬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る運搬装置は、
直線状に延びるレールと、
基端部が床面に設置され、長手方向に伸縮可能であって、前記レールの各端部をそれぞれの先端部で支持する一対の支持脚と、
前記レールに取り付けられ、前記レールにガイドされた状態で前記レールの長手方向に移動可能である水平移動機構と、
前記水平移動機構から下向きに延びるように支持され、長手方向に伸縮可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータの先端部に設けられ、運搬対象物を吊り下げ可能な吊り下げ部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、段差がある場所でも運搬対象物を簡単に運搬することが可能な運搬装置、運搬補助架台、運搬システム及び運搬方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る運搬システムの構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る運搬装置の構成を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係るレール及び支持脚の構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る水平移動機構及び油圧シリンダの構成を示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る水平移動機構及び油圧シリンダの構成を示す他の斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る吊り下げ部材の構成を示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態に係る油圧回路の構成を示す回路図である。
図8】本発明の実施の形態に係る運搬補助架台の構成を示す斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係る運搬補助架台の構成を示す他の斜視図である。
図10】(a)~(f)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る変圧器の運搬方法の各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る運搬装置、運搬補助架台、運搬システム及び運搬方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0010】
図1に示すように、運搬システム1は、運搬装置10が床面に設置された状態で変圧器2及び運搬補助架台20を移動させる工程と、変圧器2が載せられた運搬補助架台20を床面に設置した状態で運搬装置10を移動させる工程と、を繰り返すことで、階段のような段差がある経路で変圧器2等の運搬対象物を運搬するシステムである。
【0011】
運搬装置10は、移動元の床面から変圧器2を吊り上げ、吊り上げた変圧器2を水平方向に移動させ、移動された変圧器2を移動先の床面に下ろすことで、階段のような段差がある経路で変圧器2を運搬する装置である。なお、実施の形態では、「水平方向」は、厳密に水平方向の場合のみならず、水平方向に対してわずかな角度で、例えば、5°以下の角度で傾斜している場合も含むものとする。
【0012】
運搬補助架台20は、ロープ、ベルト等の接続手段(図示せず)を介して変圧器2の底面部に装着され、運搬装置10を移動させる際に変圧器2が載せられた状態で床面に設置され、変圧器2を下方から支持する架台である。運搬補助架台20に変圧器2を支持させた状態で、運搬装置10を床面から持ち上げることで、運搬装置10を水平方向に移動させることができる。
【0013】
次に、図2図7を参照して、実施の形態に係る運搬装置10の構成を説明する。図2に示すように、運搬装置10は、直線状に延びるレール11と、基端部が床面に設置され、長手方向に伸縮可能であって、レール11の各端部をそれぞれの先端部で支持する一対の支持脚12と、レール11に取り付けられ、レール11にガイドされた状態でレール11の長手方向に移動可能である水平移動機構13と、水平移動機構13から下向きに延びるように支持され、長手方向に伸縮可能な油圧シリンダ14と、油圧シリンダ14の先端部に設けられ、変圧器2を吊り下げ可能な吊り下げ部材15と、を備える。運搬装置10の各部は、鋼材で形成されることが好ましい。
【0014】
レール11は、水平移動機構13を移動可能に支持する直線状の長尺な部材である。レール11は、変圧器2から荷重が加えられた場合であっても水平移動機構13の走行に影響を及ぼす湾曲が生じない程度の剛性を有する。レール11は、例えば、断面矩形状であり、その寸法は、幅50mm、高さ100mmである。
【0015】
運搬装置10は、互いに平行に配置された一対のレール11を備える。各レール11の端部には、一方の側面部から他方の側面部に向かって延びるように形成され、ロックピン11aを挿通可能な貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0016】
一対の支持脚12は、レール11が水平方向に延びるようにレール11の両端部を支持する。一対の支持脚12は、第1の支持脚12Aと、第2の支持脚12Bと、を備える。第1の支持脚12Aは、階段の下側の段や借室の床面に設置され、レール11の一端を支持し、第2の支持脚12Bは、第1の支持脚12Aが設置された段よりも上側の段に設置され、レール11の他端を支持する。第1の支持脚12A及び第2の支持脚12Bは、同一又は同等の構成を備えるが、第1の支持脚12Aは、階段の下側の段に設置されるため、第2の支持脚12Bよりも長さを有する。以下、第1の支持脚12A及び第2の支持脚12Bの区別が不要な場合は、これらをまとめて支持脚12と表現する。
【0017】
図3に示すように、支持脚12は、レール11の端部を先端部で支持し、長手方向に伸縮可能な細長形状の本体部12aと、先端部が本体部12aに接続され、広げられた状態で基端部を床面に設置すると、本体部12aの基端部を床面から持ち上げた状態で支持する2本の脚部12bと、を備える。各支持脚12は、レール11の各端部に接続されるため、各支持脚12の脚部12bが2本以上であれば、レール11の姿勢を安定させることができる。支持脚12は、レール11からの荷重が加えられたとしても変形しない程度の剛性を有する。
【0018】
本体部12aは、先端側に配置された管状体12cと、基端側に配置され、管状体12cに対して管状体12cの長手方向の位置を調整可能な管状体12dと、を備える。管状体12cの外径は、管状体12dの内径よりも小さく、管状体12cは、管状体12dの内部に収容可能に構成されている。管状体12dの先端部には、内側に配置された管状体12cを締め付けるナットハンドル12eが管状体12dに対して回転可能に設けられている。このため、作業者の手で管状体12dに対する管状体12cの長手方向の位置を調整し、管状体12cをナットハンドル12eで締め付けることで、本体部12aを任意の長さに調整できる。なお、支持脚12の長手方向は、管状体12cに対して管状体12dが伸縮する方向である。
【0019】
各脚部12bは、本体部12aと同一又は同等の構成を備え、長手方向に伸縮可能に構成されている。各脚部12bは、本体部12a側に折り畳まれた状態と、広げられた状態との間で姿勢を変化させることできるように、管状体12dに対して旋回可能に支持されている。各脚部12bは、本体部12aの互いに対向する位置に接続されている。各脚部12bの基端部には、床面に設置された場合に床面に対する滑りを防止するため、例えばゴム製のキャップが取り付けられてもよい。
【0020】
支持脚12は、管状体12cの先端部から管状体12cの径方向に延び、一対のレール11の各端部を支持するレール支持部12fをさらに備える。レール支持部12fは、管状体12cの先端部に取り付けられる円筒部12gと、円筒部12gから管状体12cの径方向に延びる延出部12hと、延出部12hの先端側に設けられ、一対のレール11の各端部をそれぞれ収容する一対のレール収容部12iと、を備える。
【0021】
円筒部12gは、管状体12cの先端側から管状体12cに取り付け可能な筒状部材である。円筒部12g及び管状体12cには、各周面部を貫通し、ロックピン12jを挿通可能な貫通孔がそれぞれ形成されている。ロックピン12jを円筒部12g及び管状体12cの貫通孔に通すことで、管状体12cに対して円筒部12gを固定できる。
【0022】
延出部12hは、円筒部12gと一対のレール収容部12iとを接続する部材である。第1の支持脚12Aの延出部12hは、管状体12cの先端部から斜め上方に延び、第2の支持脚12Bの延出部12hは、管状体12cの先端部から水平方向に延びるように形成されている。延出部12hは、円筒部12gの周面部の互いに対向する部分から接線方向に延びる一対の板状部材と、一対の板状部材の間に配置され、一対の板状部材を補強する補強部材と、を備える。
【0023】
各レール収容部12iは、延出部12hの一対の板状部材のそれぞれに固定され、レール11の端部を内部に収容する。各レール収容部12iは、断面矩形状のレール11に合わせて断面矩形状に形成されている。レール収容部12iの一対の側面部には、ロックピン11aを挿通可能な貫通孔が形成されている。各レール11の端部にもロックピン11aを挿通可能な貫通孔が形成されているため、レール11及びレール収容部12iの貫通孔にロックピン11aを挿通することで、レール11の端部をレール収容部12iに固定できる。
【0024】
各レール11は、ロックピン11aを介して各レール収容部12iに対して回転可能に支持されているため、各支持脚12の長さを調整することで、水平面に対してレール11をいくらか傾けた状態で設置することもできる。水平面に対してレール11を傾けることで、変圧器2からの引張荷重がレール11の長手方向にも作用し、作業員が実行する水平移動機構13の移動操作を容易にすることができる。
【0025】
図4及び図5に示すように、水平移動機構13は、油圧シリンダ14及び吊り下げ部材15を介して変圧器2を吊り下げ、レール11にガイドされた状態で移動することで、変圧器2を水平方向に移動させる機構である。
【0026】
水平移動機構13は、各レール11を下方から覆う本体部13aと、本体部13aの一方の端部から上方に延び、一方のレール11(第1のレール)の上面部を転動する第1の転動部13bと、本体部13aの他方の端部から上方に延び、他方のレール11(第2のレール)の上面部を転動する第2の転動部13cと、を備える。第1の転動部13bは、一方のレール11の長手方向に離して配置される一対の車輪13dを備え、第2の転動部13cも、他方のレール11の長手方向に離して配置される一対の車輪13dを備える。
【0027】
本体部13aは、レール11の下面部を覆う板状部材と、板状部材の上面部に回転可能に支持され、一方のレール11の長手方向に離して配置され、一方のレール11の下面部を転動する一対の補助車輪13eと、板状部材の上面部に回転可能に支持され、他方のレール11の長手方向に離して配置され、他方のレール11の下面部を転動する一対の補助車輪13eと、を備える。
【0028】
第1の転動部13bは、互いに離して配置された一対のガイド部材と、一対のガイド部材の間に配置され、一対のガイド部材の間隔を保持するスペーサと、一対のガイド部材の間に配置され、一対のガイド部材に対して回転可能に支持された一対の車輪13dと、を備える。一対のガイド部材は、板状の部材であり、レール11の対向する側面部を挟み込み、第1の転動部13bがレール11上を転動するように第1の転動部13bをガイドする。各車輪13dは、一対のガイド部材のそれぞれに回転軸を介して回転可能に支持されている。第2の転動部13cは、第1の転動部13bと同一又は同等の構成を備える。
【0029】
車輪13dは、変圧器2からの荷重をレール11に伝えるため、補助車輪13eよりも大きな径を有する。補助車輪13eは、ピッチ方向の姿勢変化を抑えるために設けられているため、車輪13dよりも小さな径であってもよい。一例として、車輪13dの直径は80mmであり、補助車輪13eの直径は30mmである。このように水平移動機構13では、大径の車輪13d及び小径の補助車輪13eが上下からレール11を挟み込んでいるため、運搬対象物である変圧器2を移動させる場合でもレール11に対するピッチ方向の姿勢変化を抑制できる。
【0030】
油圧シリンダ14は、水平移動機構13に支持され、水平移動機構13に対して吊り下げ部材15を上下方向に移動させるアクチュエータの一例である。油圧シリンダ14は、例えば、複動油圧シリンダである。
【0031】
油圧シリンダ14は、シリンダ本体14aと、シリンダ本体14a内に配置され、シリンダ本体14aに対して進退自在に構成されたピストンロッド14bと、シリンダ本体14aの基端部に設けられ、シリンダ本体14aに対して作動油の出し入れを可能にするカプラ14cと、シリンダ本体14aの先端部に設けられ、シリンダ本体14aに対して作動油の出し入れを可能にするカプラ14dと、を備える。なお、油圧シリンダ14の長手方向は、シリンダ本体14aに対してピストンロッド14bが伸縮する方向である。
【0032】
シリンダ本体14aは、水平移動機構13の本体部13aの中心部を貫通し、第1の転動部13b及び第2の転動部13cに挟まれるように配置された状態で、本体部13a、第1の転動部13b及び第2の転動部13cに固定されている。また、ピストンロッド14bは、先端部において吊り下げ部材15に接続されている。このため、油圧シリンダ14に加えられた荷重は、第1の転動部13b及び第2の転動部13cに均等に配分され、変圧器2を吊り上げる場合にも油圧シリンダ14の姿勢変化を抑制できる。
【0033】
ピストンロッド14bは、シリンダ本体14a内における作動油の流れに応じてシリンダ本体14aに対して相対的に移動する。油圧シリンダ14は、チューブを介して油圧発生装置(図示せず)に接続され、油圧発生装置から供給された作動油により伸縮する。基端側のカプラ14cに作動油が供給されると共に、先端側のカプラ14dから作動油が排出されると、油圧シリンダ14は長手方向に延びる。他方、先端側のカプラ14dに作動油が供給されると共に、基端側のカプラ14cから作動油が排出されると、油圧シリンダ14は長手方向に縮む。
【0034】
また、ピストンロッド14bは、図5の矢印Aに示すようにシリンダ本体14aに対して長手方向に延びる長軸周りに回転可能に構成されている。このため、変圧器2が載せられた運搬補助架台20を床面に設置させた状態で、運搬装置10を床面から持ち上げ、油圧シリンダ14の長軸周りに回転させることで、床面に対するレール11の向きを任意に調整できる。
【0035】
吊り下げ部材15は、油圧シリンダ14のピストンロッド14bの先端部に設けられ、下方に変圧器2を吊り下げる。図6に示すように、吊り下げ部材15は、ピストンロッド14bの先端部に接続される円筒部15aと、円筒部15aの周面部に固定され、円筒部15aの周面部から離れる方向に延びる4つのアーム部15bと、アーム部15bの先端部に設けられ、変圧器2の端部に設けられたフックを係止する4つの係止部15cと、を備える。吊り下げ部材15の各部は、例えば、鋼材で形成されている。
【0036】
円筒部15aは、ピストンロッド14bの先端部が内部に収容される円筒形状の部材である。
【0037】
各アーム部15bは、円筒部15aの周面部から互いに離れる方向に延びるように配置され、例えば、円筒部15aの径方向に延びている。2つのアーム部15bは、互いに対向するように配置され、他の2つのアーム部15bも互いに対向するように配置されている。各アーム部15bは、変圧器2が吊り下げられた場合に変圧器2の重さにより湾曲しない程度の剛性を有する。
【0038】
各アーム部15bは、円筒部15aの周面部の異なる位置から延び、先端側に向かって延びるにつれて互いに接近する一対の第1のアーム部15eと、一対の第1のアーム部15eの先端部に挟まれるように配置され、一対の第1のアーム部15eから円筒部15aの径方向に延びる第2のアーム部15fと、第2のアーム部15fの先端部に設けられ、係止部15cを挟み込むように支持する係止部支持部15gと、を備える。
【0039】
第2のアーム部15fは、第1のアーム部15eに対して長手方向の位置調整が可能となるように構成されている。具体的には、第1のアーム部15eは、上下方向に並べて配置された一対の貫通孔の2つのペアが長手方向に離して形成され、第2のアーム部15fには、上下方向に並べて配置された一対の貫通孔の3つのペアが互いに第2のアーム部15fの長手方向に離れた位置に形成されている。各貫通孔には、それぞれボルト15hが挿通可能であり、ボルト15hにはナット15iが締め付け可能である。このため、第1のアーム部15eに対して第2のアーム部15fを位置決めし、各貫通孔にボルト15hを挿通し、ボルト15hにナット15iを締め付けることで、第1のアーム部15eと第2のアーム部15fとを固定できる。
【0040】
係止部支持部15gは、第2のアーム部15fの先端部から互いに平行に延びる一対の板状部材15jと、各板状部材15jに対して垂直な方向に延びる回転軸を有し、板状部材15jに対して回転可能に支持された回転部材15kを備える。板状部材15jの側面部は、回転部材15kの回転軸を中心とする円弧状に形成されている。回転部材15kには、その径方向に延びる貫通孔が形成され、貫通孔には係止部15cの一部が挿通される。
【0041】
各アーム部15bの先端側の下面部は、変圧器2の上面部に接触する当て板15dが接触可能な形状に形成されている。当て板15dは、吊り下げ部材15とは別体であり、ある程度の厚さや硬さを有するゴム、エラストマー等の弾性材料で形成された板状部材である。吊り下げ部材15を変圧器2に装着する際に、吊り下げ部材15のアーム部15bの先端側の下面部と変圧器2の上面部との間に当て板15dが配置されることで、吊り下げ部材15に吊り下げられた変圧器2が傾き、アーム部15bや変圧器2が破損すること防止する。当て板15dは、各アーム部15bの先端側の下面部や変圧器2の上面部に接触した際に、各アーム部15bの先端側の下面部や変圧器2の上面部の形状に合わせて変形する程度の弾性を有する。
【0042】
係止部15cは、アーム部15bの先端部に回転可能に支持された直線状の細長部15mと、細長部15mの先端部に設けられ、変圧器2の端部に設けられたフックを係止可能なリング15nと、を備える。細長部15mには、その周面部にナット15pを締め付け可能な雄ねじが形成されている。細長部15mは、係止部支持部15gの回転部材15kの貫通孔に挿通された状態で、ナット15pを締め付けられている。この状態で係止部15cを回転部材15kの回転軸の周りに回転させると、ナット15pは板状部材15jの円弧状の側面部に接触しながら円弧状の軌跡を描いて移動する。
【0043】
リング15nは、頂点が丸みを帯びた矩形状に形成されている。リング15nは、係止部支持部15gに吊り下げられた状態で、先端部が吊り下げ部材15の内側に向かって延びるように途中で屈曲されている。
【0044】
図7に示すように、運搬装置10は、油圧シリンダ14に接続され、作業油を加圧して油圧シリンダ14に供給する油圧発生装置16と、油圧シリンダ14と油圧発生装置16との間に配置され、油圧発生装置16からの作動油の流れを制御する油圧制御装置17と、をさらに備える。油圧発生装置16は、油圧シリンダ14に加圧された作業油を供給することで油圧シリンダ14を伸縮させる装置である。
【0045】
油圧発生装置16は、油タンク16aと、油圧ポンプ16bと、を備える。油タンク16aは、内部に作動油を貯蔵するタンクである。油タンク16aは、油圧ポンプ16b及び油圧制御装置17に接続され、油圧ポンプ16bに作動油を供給し、油圧制御装置17からの作動油を受け入れる。
【0046】
油圧ポンプ16bは、油タンク16a及び油圧制御装置17にそれぞれ接続され、油タンク16aから作動油を吸込み、吸い込まれた作動油を加圧して油圧シリンダ14に向けて吐出する。油圧ポンプ16bは、例えば、ギヤポンプ、ベーンポンプ、プランジャポンプ等である。
【0047】
油圧ポンプ16bの入力軸には、モータ(図示せず)が接続され、モータが油圧ポンプ16bの入力軸を回転させることで油圧ポンプ16bが駆動される。モータは、外部電源(図示せず)に電気的に接続され、油圧ポンプ16bの動作及び停止は、モータに設けられた動作スイッチ(図示せず)をユーザが操作することで行われる。
【0048】
油圧制御装置17は、油圧シリンダ14の先端側のカプラ14c及び基端側のカプラ14d、油タンク16a及び油圧ポンプ16bにそれぞれ接続され、ユーザの操作に応じて油圧発生装置16から油圧シリンダ14への作動油の流れを制御する装置である。油圧制御装置17は、例えば、マニュアルバルブ17aを備える。
【0049】
マニュアルバルブ17aは、例えば、4つのポートA、B、P、Tを備える4方向バルブであり、油圧ポンプ16bから供給された作動油を油圧シリンダ14の先端側のカプラ14c及び基端側のカプラ14dのいずれに供給するかを切り換える。マニュアルバルブ17aには、作動油の経路を切り換える作業者の操作を受け付けるレバー17bが設けられている。
以上が、運搬装置10の構成である。
【0050】
次に、図8及び図9を参照して、実施の形態に係る運搬補助架台20の構成を説明する。運搬補助架台20は、変圧器2の底面部に上面部が装着され、変圧器2を下方から支持する支持台21と、支持台21の底面部から下方に延び、支持台21が水平面上に配置されるように長手方向に伸縮可能な複数の支持脚22と、を備える。支持台21は、階段の段に一部が設置され、支持脚22は、支持台21の一部が当該段に設置された場合に当該段よりも下側の段又は借室の床面に設置される。運搬補助架台20の各部は、鋼材で形成されることが好ましい。
【0051】
支持台21は、変圧器2が載せられる本体部21aと、本体部21aの底面部に設けられ、互いに平行に配置され、各支持脚22の先端側に設けられた摺動部を移動可能に収容する2つのガイドレール21bと、を備える。本体部21a及びガイドレール21bは、変圧器2からの荷重が加えられたとしても変形しない程度に剛性を有する。運搬補助架台20は、ガイドレール21bの向きがレール11の向きと一致するように変圧器2の底面部に装着されることが好ましい。
【0052】
本体部21aは、変圧器2の底面部の形状に合わせて変圧器2の底面部を覆うように構成されている。また、本体部21aは、互いに対向する位置にある側面部に設けられ、接続手段の一例であるロープ(図示せず)を係止可能な一対の係止部21cをさらに備える。変圧器2の側面部及び上面部を取り囲むようにロープを配置し、ロープの両端部を各係止部21cに係止することで、支持台21を変圧器2の底面部に装着する。
【0053】
ガイドレール21bは、支持脚22の摺動部を摺動可能に受け入れ、支持脚22の摺動部の移動をガイドするガイド手段の一例である。各ガイドレール21bの端部には、支持脚22の摺動部を着脱するための開口部が設けられている。
【0054】
ガイドレール21bは、互いに離して配置された一対のレール片21d、21eを備える。レール片21d、21eは、それぞれ平板状に形成され、本体部21aの底面部に固定される固定部と、固定部から下方に離して配置され、支持脚22の摺動部を下方から支持する支持部と、固定部及び支持部に対して垂直な方向に延び、固定部と支持部とを接続する接続部と、を備える。支持部は、支持台21の底面部を直接床面に設置できるように、床面と接する面が平面状に形成されている。レール片21dの支持部とレール片21eの支持部とは、互いに対向するように配置され、両者の間には、支持脚22の一部が配置される隙間21fが形成されている。
【0055】
支持脚22は、先端側に配置された管状体22aと、基端側に配置され、管状体22aに対する位置を調整可能な管状体22bと、管状体22aの先端部に設けられ、ガイドレール21bに取り付けられた状態で摺動可能な摺動部22cと、管状体22bの先端部に設けられ、床面に設置される設置部22dと、を備える。なお、支持脚22の長手方向は、管状体22bに対して管状体22aが伸縮する方向である。
【0056】
管状体22bの内径は、管状体22aの外径よりも大きく、管状体22aは、管状体22bの内部に突没自在に構成されている。管状体22aの基端部には、寸切りボルトのように雄ねじが形成され、管状体22aの雄ねじには、ナット22eがねじ込まれている。管状体22bの先端部には、管状体22aの雄ねじにねじ込み可能なナット22fが溶接等の手段で固定されている。このため、一方の手で管状体22bを保持しつつ、他方の手で管状体22aを回転させ、その後、ナット22fに接触するようにナット22eを締め付けることで、支持脚22の長さを調整できる。
【0057】
摺動部22cは、作業者の手で押すことでガイドレール21bにガイドされた状態で摺動可能となるように構成されている。摺動部22cは、例えば、矩形状の板である。隙間21fは、支持脚22の一部を受け入れ可能であるが、支持脚22の摺動部22cがレール片21d、21eの下方に脱落しない程度の幅に形成されているため、ガイドレール21bに装着された摺動部22cがガイドレール21bの下方に抜け落ちることはない。
【0058】
設置部22dは、管状体22bの基端部から管状体22bの径方向に延びるように形成され、床面に設置された状態で支持脚22を自立させる。設置部22dは、例えば、矩形状の板である。
以上が、運搬補助架台20の構成である。
【0059】
次に、図10を参照して、作業者が運搬システム1を用いて実行する変圧器2の運搬方法の流れを説明する。図10では、理解を容易にするために、運搬システム1の各部の構成を簡略化して図示している。以下、借室の床面に設置された変圧器2を目標位置である階段の1段目に移動させる場合を例に説明する。
【0060】
まず、水平移動機構13を借室の床面側にある第1の支持脚12A側に配置した状態で、レール11が階段に沿って延びるように、かつ、吊り下げ部材15が変圧器2の真上に配置されるように運搬装置10を設置する。このとき、第2の支持脚12Bを階段の2段目の段に設置し、第1の支持脚12Aを借室の床面に設置する。第2の支持脚12Bを階段の2段目の段に設置するのは、目標位置である階段の1段目の段の面積(スペース)が小さく、第2の支持脚12Bと運搬補助架台20の支持台21とを同時に載せられないためである。
【0061】
次に、図10(a)に示すように、運搬装置10を変圧器2が設置された借室の床面及び階段の2段目の段に設置し、吊り下げ部材15の係止部15cを変圧器2のフックに引っ掛ける。
【0062】
次に、図10(b)に示すように、各支持脚12が階段の2段目の段及び借室の床面に設置された状態で、油圧シリンダ14を縮めることで、借室の床面に設置された変圧器2を上方に吊り上げる(運搬対象物吊り上げ工程)。具体的には、作業者が油圧発生装置16の油圧モータ(図示せず)の動作スイッチをONにし、油圧制御装置17のマニュアルバルブ17aを操作することで、油圧シリンダ14を縮める。
【0063】
次に、図10(c)に示すように、変圧器2が上方に吊り上げられた状態で、吊り上げられた変圧器2の底面部に運搬補助架台20を装着し、その後、支持台21に対する各支持脚22の位置及び長さを運搬補助架台20が設置される目標位置に合わせて予め調整する。具体的には、まず、変圧器2の底面部に運搬補助架台20の上面部を接触させ、変圧器2と運搬補助架台20とを、ロープを介して固定する。次に、支持台21の一部を階段の1段目の段に設置した場合に、各支持脚22が借室の床面の真上に位置するように、かつ各支持脚22の設置部22dが借室の床面に接触するように各支持脚22の位置及び長さを調整する。
【0064】
次に、水平移動機構13を階段の2段目の段に設置された第2の支持脚12Bに向けて移動させる(運搬対象物移動工程)。水平移動機構13を作業者の手で押すことで、第2の支持脚12Bに向けて移動させる。
【0065】
次に、図10(d)に示すように、変圧器2が目標位置の真上に移動した時点で油圧シリンダ14を伸長させることで、変圧器2が装着された運搬補助架台20を借室の床面及び階段の1段目の段に設置する(運搬対象物設置工程)。具体的には、マニュアルバルブ17aを操作して、油圧シリンダ14を伸長させることで、運搬補助架台20を目標位置に設置する。運搬補助架台20の支持脚22の位置及び長さが調整されているため、支持台21の一部を階段の1段目の段の床面に設置させると、各支持脚22が借室の床面に設置される。以上の工程で、変圧器2の階段の1段目の段の床面への移動が完了する。
【0066】
次に、変圧器2を次の目標位置である階段の2段目の段に移動させるための準備工程を実行する。まず、図10(e)に示すように、運搬補助架台20が階段の1段目の段の床面及び借室の床面に設置された状態で、油圧シリンダ14をさらに伸長させることで、運搬補助架台20及び変圧器2に支持された運搬装置10を床面から持ち上げる(運搬装置持ち上げ工程)。
【0067】
次に、運搬装置10を床面から持ち上げた状態で、運搬装置10を作業者の手で押すことで、第2の支持脚12Bが階段の3段目の段の真上に位置するように運搬装置10を水平移動させる(運搬装置移動工程)。
【0068】
次に、図10(f)に示すように、階段の3段目の段に第2の支持脚12Bを設置した状態で第1の支持脚12Aが借室の床面に到達するように各支持脚12の長さを調整し、油圧シリンダ14を短縮させることで、第1の支持脚12Aを借室の床面に、第2の支持脚12Bを階段の3段目の段に設置する(運搬装置設置工程)。油圧シリンダ14の短縮は、変圧器2の移動の場合と同様にマニュアルバルブ17aを操作することで実行する。運搬装置持ち上げ工程、運搬装置移動工程、運搬装置設置工程を順番に実行することにより、変圧器2を階段の2段目の段から3段目の段に移動させる準備工程が終了する。
【0069】
その後、変圧器2を階段の2段目の段から3段目の段に移動させる際にも、上記の例で説明した運搬対象物吊り上げ工程、運搬対象物移動工程、運搬対象物設置工程を実行して変圧器2を移動させ、その後、運搬装置持ち上げ工程、運搬装置移動工程、運搬装置設置工程を順番に実行し、変圧器2を階段の3段目の段から4段目の段に移動させる準備を行えばよい。上記6つの工程を階段の各段において順番に繰り返し、変圧器2及び運搬補助架台20のアセンブリと運搬装置10とを交互に移動させることで、階段を経由して外部に変圧器2を運び出すことができる。
【0070】
なお、上記の運搬装置移動工程の例では、第1の支持脚12Aが借室の床面に設置された状態を維持していたが、レール11の長さに限りがあるため、第2の支持脚12Bが階段の上段側に更に移動した場合には、第1の支持脚12Aも階段の各段に設置すればよい。また、階段の踊り場等で移動方向の変更が必要な場合は、運搬装置移動工程において運搬補助架台20を床面に設置した状態で、油圧シリンダ14の軸周りにレール11、一対の支持脚12及び水平移動機構13を回転させることで、レール11の向きを調整すればよい。
以上が、変圧器2の運搬方法の一連の流れである。
【0071】
以上説明したように、実施の形態に係る運搬装置10は、直線状に延びるレール11と、基端部が床面に設置され、長手方向に伸縮可能であって、レール11の各端部をそれぞれの先端部で支持する一対の支持脚12と、レール11に取り付けられ、レール11にガイドされた状態でレール11の長手方向に移動可能である水平移動機構13と、水平移動機構13から下向きに延びるように支持され、長手方向に伸縮可能な油圧シリンダ14と、油圧シリンダ14の先端部に設けられ、変圧器2を吊り下げ可能な吊り下げ部材15と、を備える。
【0072】
このため、運搬装置10を簡易で軽量な構成で実現でき、設置及び撤去が容易である。また、変圧器2を吊り下げ部材15で吊り下げているため、別途装置を必要とせずに、変圧器2を床面から吊り上げたり床面に下ろしたりできる。したがって、階段を経由した変圧器2の運搬を簡単に行えるため、少数の作業員、例えば、作業員一人でも変圧器2の運搬を行うことができる。
【0073】
実施の形態に係る運搬装置10では、サポートパイプ等の汎用品を用いて構成できるため、製造コストを抑制できる。また、アクチュエータとして油圧シリンダ14を用いて吊り下げ部材15を支持するように構成されているため、重さが1トンを超える変圧器2であっても簡単に吊り上げることができる。
【0074】
実施の形態に係る運搬装置10は、ピストンロッド14bがシリンダ本体14aに対して長軸周りに回転可能に支持されている。このため、変圧器2及び運搬補助架台20を床面に設置した状態で、運搬装置10のレール11を油圧シリンダ14の長軸周りに回転させることで、レール11の向きを簡単に調整でき、別途吊り下げ装置を必要とせずに変圧器2の移動方向を任意に転換できる。
【0075】
本発明は上記の実施形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0076】
(変形例)
上記実施の形態では、運搬装置10は、一対のレール11を備え、それぞれのレール11に対して水平移動機構13を装着していたが、本発明はこれに限られない。例えば、運搬装置10は、1本のレール11を備え、1本のレール11に対して水平移動機構13を装着してもよい。レール11が1本である場合、水平移動機構13を本体部13a及び第1の転動部13bから構成すればよい。水平移動機構13の姿勢を安定させるため、油圧シリンダ14が本体部13aの底面部から下方に延びるように固定すればよい。
【0077】
上記実施の形態では、レール11は一対の支持脚12にわずかに回転可能に支持されているが、本発明はこれに限られない。例えば、レール11を支持脚12に対して回転できないように固定してもよい。
【0078】
上記実施の形態では、支持脚12が本体部12aと本体部12aを支持する2本の脚部12bとを備えていたが、本発明はこれに限られない。脚部12bは2本に限られず、3本以上であってもよい。また、本体部12aを支持するのは、2本以上の脚部12bに限られず、例えば、本体部12aの基端部から径方向に延び、本体部12aを自立させるように床面に設置される設置板であってもよい。
【0079】
上記実施の形態では、レール11の上下に配置された車輪13d及び補助車輪13eでレール11を挟み込んでいたが、本発明はこれに限られない。例えば、レール11の上面部に接触する車輪13dとレール11の下面部に接する摺動板とでレール11を上下から挟み込んでもよい。また、運搬される変圧器2の重量によっては補助車輪13eを省略してもよい。
【0080】
上記実施の形態では、車輪13d及び補助車輪13eは、レール11の長手方向に並べて2つずつ設けられていたが、本発明はこれに限られない。車輪13d及び補助車輪13eは、1つずつであってもよく、それぞれレール11の長手方向に並べて3つ以上設けられてもよい。
【0081】
上記実施の形態では、アクチュエータとして油圧シリンダ14を用い、油圧シリンダ14の先端部に吊り下げ部材15を設けていたが、本発明はこれに限られない。例えば、油圧シリンダ14及び吊り下げ部材15を手動又は電動のチェーンブロックに置き換えてもよい。
【0082】
上記実施の形態では、吊り下げ部材15の円筒部15aと係止部15cとをアーム部15bで接続していたが、本発明はこれに限られない。例えば、板状部材の中心部に円筒部15aを設け、板状部材の端部に複数の係止部15cを設けてもよい。
【0083】
上記実施の形態では、変圧器2のフックに吊り下げ部材15の係止部15cを引っ掛けることで吊り下げ部材15が変圧器2を吊り下げていたが、本発明はこれに限られない。例えば、吊り下げ部材15はスリング等の接続手段を介して変圧器2を吊り下げてもよい。また、上記実施の形態では、ベルトを介して運搬補助架台20を変圧器2に装着していたが、ベルト以外の他の接続手段を用いて運搬補助架台20を変圧器2に装着してもよい。
【0084】
上記実施の形態では、当て板15dはアーム部15bと別体であったが、本発明はこれに限られない。当て板15dは、アーム部15bの先端側の下面部に固定されていてもよい。
【0085】
上記実施の形態では、運搬補助架台20の支持台21の一部を直接床面に設置していたが、本発明はこれに限られない。段差のある床面であっても支持台21を水平面上に配置できればいかなる方法で設置してもよい。例えば、段差の上側の床面に支持台21を支持する一方の支持脚22を載せ、段差の下側の床面に支持台21を支持し、一方の支持脚22よりも長さが長くなるように調整された他方の支持脚22を載せてもよい。
【0086】
上記実施の形態では、運搬補助架台20の支持脚22が支持台21に対して着脱自在に構成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、支持脚22は、紛失を防止するため、支持台21に対して摺動可能であるが、支持台21から取り外しできないようにしてもよい。具体的には、ガイドレール21bの端部に開口部を設ける代わりに、支持脚22の摺動部22cの抜け落ちを防止するストッパを設けてもよい。
【0087】
上記実施の形態では、支持台21に4つの支持脚22が取り付けられていたが、本発明はこれに限られない。支持台21が直接設置される床面の形状や面積、変圧器2の重量等によっては、支持脚22は3本以下であってもよく、5本以上であってもよい。
【0088】
上記実施の形態では、運搬装置10及び運搬補助架台20を組み合わせて変圧器2を運搬していたが、本発明はこれに限られない。例えば、階段のように段差が連続している場合でなければ、段差を越えて変圧器2を移動させるために運搬装置10を単独で用いればよい。また、段差がある場所で一時的に変圧器2を保管する場合には、変圧器2を載置可能な面を構成するために運搬補助架台20を単独で用いてもよい。
【0089】
上記実施の形態では、変圧器2を一段ずつ持ち上げる場合を例に説明していたが、本発明はこれに限られない。例えば、階段の段の高さによっては、運搬システム1を用いて変圧器2を二段ずつ持ち上げてもよい。また、階段の上側から地下の借室に向けて変圧器2を下ろす場合に運搬システム1を用いてもよい。
【0090】
上記実施の形態では、運搬対象物として変圧器2を例示していたが、本発明はこれに限られない。例えば、ポンプ、電動機、蓄電池、キャパシタ、各種タンク等の他の運搬対象物を運搬してもよい。
【0091】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 運搬システム
2 変圧器
10 運搬装置
11 レール
12 支持脚
12A 第1の支持脚
12B 第2の支持脚
12a 本体部
12b 脚部
13 水平移動機構
13a 本体部
13b 第1の転動部
13c 第2の転動部
14 油圧シリンダ
14a シリンダ本体
14b ピストンロッド
15 吊り下げ部材
15a 円筒部
15b アーム部
15c 係止部
20 運搬補助架台
21 支持台
21b ガイドレール
22 支持脚
22c 摺動部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る運搬装置は、
直線状に延びるレールと、
基端部が床面に設置され、長手方向に伸縮可能であって、前記レールの各端部をそれぞれの先端部で支持する一対の支持脚と、
前記レールに取り付けられ、前記レールにガイドされた状態で前記レールの長手方向に移動可能である水平移動機構と、
前記水平移動機構から下向きに延びるように支持され、長手方向に伸縮可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータの先端部に設けられ、運搬対象物を吊り下げ可能な吊り下げ部材と、
を備える運搬装置であって、
前記アクチュエータは、前記運搬対象物が前記床面に設置された状態で、前記床面から前記運搬装置を持ち上げることができる
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に延びるレールと、
基端部が床面に設置され、長手方向に伸縮可能であって、前記レールの各端部をそれぞれの先端部で支持する一対の支持脚と、
前記レールに取り付けられ、前記レールにガイドされた状態で前記レールの長手方向に移動可能である水平移動機構と、
前記水平移動機構から下向きに延びるように支持され、長手方向に伸縮可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータの先端部に設けられ、運搬対象物を吊り下げ可能な吊り下げ部材と、
を備える運搬装置であって、
前記アクチュエータは、前記運搬対象物が前記床面に設置された状態で、前記床面から前記運搬装置を持ち上げることができる、
運搬装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、シリンダ本体と、前記シリンダ本体に対して長手方向に移動可能なピストンロッドと、を備える複動油圧シリンダであり、
前記ピストンロッドは、前記シリンダ本体に対して長軸周りに回転可能に支持されている、
請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
前記吊り下げ部材は、
前記アクチュエータの先端部に固定された円筒部と、
前記円筒部に接続され、前記円筒部から互いに離れる方向に延びる複数のアーム部と、
各アーム部の先端部に設けられ、前記運搬対象物に係止される複数の係止部と、
を備える、
請求項1又は2に記載の運搬装置。
【請求項4】
前記支持脚は、
前記レールの端部を支持し、その長手方向に伸縮可能な細長形状の本体部と、
前記本体部に対して折り畳み可能に接続され、広げられた状態で床面に設置されると、前記本体部が上向きに延びるように前記本体部を支持する複数の脚部と、
を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の運搬装置。
【請求項5】
前記レールは、互いに平行に配置された第1のレール及び第2のレールを備え、
前記水平移動機構は、
前記第1のレール及び前記第2のレールを覆うように配置され、前記アクチュエータが下向きに延びるように支持された本体部と、
前記本体部の一方の端部に設けられ、前記第1のレールにガイドされた状態で前記第1のレール上を転動する車輪を回転可能に支持する第1の転動部と、
前記本体部の他方の端部に設けられ、前記第2のレールにガイドされた状態で前記第2のレール上を転動する車輪を回転可能に支持する第2の転動部と、
を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の運搬装置。
【請求項6】
前記一対の支持脚は、水平面に対して前記レールを傾けることができるように前記レールの両端部をそれぞれ回転可能に支持している、
請求項1から5のいずれか1項に記載の運搬装置。
【請求項7】
前記水平移動機構は、前記レールの上面部を転動する車輪と、前記車輪よりも径が小さく、前記車輪と共に前記レールを挟み込むように前記レールの下面部を転動する補助車輪と、を備える、
請求項1から6のいずれか1項に記載の運搬装置。
【請求項8】
上面部が運搬対象物の底面部に装着され、前記底面部の一部が段差の上側にある床面に接触するように設置された場合に前記運搬対象物を支持する支持台と、
前記支持台の前記底面部から下方に延び、前記支持台が前記段差の上側にある床面に一部が設置された場合に、基端部が前記段差の下側にある床面に接触するように長手方向に伸縮可能な複数の支持脚と、
を備え
前記支持台は、前記底面部に設けられ、互いに平行に延びる複数のガイドレールを備え、
各支持脚の先端部には、前記ガイドレールに取り付けられた状態で前記ガイドレールの長手方向に摺動可能な摺動部がそれぞれ形成されている、
運搬補助架台。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の運搬装置と、
前記運搬装置が運搬する前記運搬対象物の底面部に装着され、段差を有する床面に設置された場合でも下方から前記運搬対象物を支持する請求項に記載の運搬補助架台と、
を備える運搬システム。
【請求項10】
運搬装置と運搬補助架台とを備え、前記運搬装置は、前記運搬対象物を吊り下げた状態で長手方向に伸縮可能なアクチュエータを備える運搬システムを用いて段差を有する床面で運搬対象物を運搬する運搬方法であって、
前記運搬対象物を床面に設置するとともに、前記運搬装置の支持脚を床面及び段差に合わせて前記運搬装置を設置する工程と、
前記運搬装置が設置された状態で、前記アクチュエータを作動させることで前記運搬装置により前記運搬対象物を吊り上げる工程と、
前記運搬対象物を吊り上げた状態で、前記運搬対象物の底面部に前記運搬補助架台を装着する工程と、
前記運搬対象物が装着された前記運搬補助架台を移動させる工程と、
移動させた前記運搬補助架台の支持脚を床面及び段差に合わせて前記運搬補助架台を設置する工程と、
前記運搬補助架台が設置された状態で、前記アクチュエータを作動させることで前記運搬装置を持ち上げる工程と、
持ち上げられた前記運搬装置を移動させる工程と、
移動させた前記運搬装置の前記支持脚を床面及び段差に合わせて前記運搬装置を設置する工程と、
含む運搬方法。