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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076074
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186294
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】720009310
【氏名又は名称】オンキヨーサウンド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 優一
【テーマコード(参考)】
5D005
【Fターム(参考)】
5D005BA09
5D005BA14
(57)【要約】
【課題】設計の自由度が高いイヤホンを提供すること。
【解決手段】イヤホン1は、外部に音を導くための音響通路5を内部に有するノズル部位4と、音響通路フィルター7が設けられる音響通路フィルター台3と、ノズル部位4の先端に設けられた鍔部6と、音響通路フィルター台3に設けられ、鍔部6と係合する被係合部14と、を備える。ノズル部位4が延びる方向に直交する方向における、ノズル部位4の断面形状は、略楕円である。音響通路5の形状は、略楕円である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に音を導くための音響通路を内部に有するノズル部位と、
音響通路フィルターが設けられる音響通路フィルター台と、
前記ノズル部位の先端に設けられた鍔部と、
前記音響通路フィルター台に設けられ、前記鍔部と係合する被係合部と、
を備えることを特徴とするイヤホン。
【請求項2】
前記鍔部は、前記音響通路の中心を挟んで対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記音響通路フィルター台は、
前記音響通路フィルターが延在する面と直交する方向に延びるスカート部と、
前記スカート部に設けられた切欠部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記切欠部は、前記音響通路フィルターの中心を挟んで対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記切欠部は、前記被係合部と連続していることを特徴とする請求項4に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記鍔部が、前記切欠部内に位置するように、前記音響通路フィルター台が、前記ノズル部位に載置された後、回転されることで、前記鍔部は、前記被係合部に係合することを特徴とする請求項5に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記ノズル部位が延びる方向に直交する方向における、前記ノズル部位の断面形状は、略楕円であることを特徴とする請求項1に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記音響通路の形状は、略楕円であり、
前記鍔部は、前記音響通路の中心を挟んで、長径方向において対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のイヤホン。
【請求項9】
前記音響通路フィルターの形状は、略楕円であり、
前記音響通路フィルター台は、
前記音響通路フィルターが延在する面と直交する方向に延びるスカート部と、
前記音響通路フィルターの短径方向において、前記スカート部の対向する位置に設けられた切欠部と、を有することを特徴とする請求項8に記載のイヤホン。
【請求項10】
前記音響通路の長径方向に対して、前記音響通路フィルターの長径方向が斜めとなるように、前記音響通路フィルター台が前記ノズル部位の先端に載置されたときに、前記鍔部は、前記切欠部内に位置することを特徴とする請求項9に記載のイヤホン。
【請求項11】
前記鍔部は、前記ノズル部位が延びる方向と直交する方向に延在し、
前記ノズル部位に設けられ、前記ノズル部位が延びる方向において、前記鍔部と隣接し、前記鍔部が延在する方向に突出した凸部と、
前記音響通路フィルター台に設けられ、前記鍔部と前記被係合部とが係合したときに、前記凸部と嵌合する凹部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のイヤホン。
【請求項12】
外部に音を導くための音響通路を内部に有するノズル部位と、
音響通路フィルターが設けられる音響通路フィルター台と、を備え、
前記音響通路フィルター台は、前記ノズル部位に対して、着脱可能であり、
前記ノズル部位が延びる方向に直交する方向における、前記ノズル部位の断面形状は、略楕円であり、
前記音響通路の形状は、略楕円であることを特徴とするイヤホン。
【請求項13】
音響通路フィルター台に設けられ、前記音響通路に対応した形状の孔と、
前記孔の周囲に設けられ、前記音響通路フィルターを載置するための載置部と、
前記載置部と略同形状である音響通路フィルターカバーと、をさらに備え、
前記音響通路フィルターは、前記載置部に載置され、前記載置部と前記音響通路フィルターカバーとに挟まれることで、前記音響通路フィルター台に設けられていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
イヤホンには、インナーイヤー型とカナル(耳栓)型との2タイプが存在する。インナーイヤー型イヤホンは、耳の表面の耳介と呼ばれる部分に、イヤホンのパーツを引っ掛けて使用されるタイプのイヤホンである。カナル型イヤホンは、耳栓型のイヤーピースを外耳道に挿入するようにして装着され、使用されるタイプのイヤホンである。
【0003】
図7は、従来のカナル型イヤホンの例を示す図である。図7に示すイヤホンにおいて、筐体は、フロントケースとバックケースとによって形成されている。フロントケースの内部には、ダイナミックトランスデューサーが取り付けられている。ダイナミックトランスデューサーの正面から放射される音は、ノズル部位の中央にある音響通路を通って、外部へ伝わる。つまり、音響通路は、ダイナミックトランスデューサーへとつながっている。外部から塵などが音響通路に侵入すると、音響通路とつながっているダイナミックトランスデューサーへと塵などが到達してしまい、振動部に触れると、ノイズ発生の原因となる。
【0004】
これを防止するために、図8に示すように、ノズル部位の先端に、音響通路フィルターが設置される。音響通路フィルターは、図8に示すように、貼付け材(両面テープ、接着剤など)によって、ノズル部位に固定される。このように、音響通路フィルターは、外部からの塵などの内部への侵入を防止するために設置される。これに加え、音響通路フィルターは、ダイナミックトランスデューサー放射音の外部への伝搬の状態に変化を生じさせるため、ダイナミックトランスデューサーが音響通路の外部へ放射する音響特性を変化させる。つまり、音響通路フィルターは、音響特性を操作する役割を兼ねている。音響特性を操作できるということを、ユーザーエクスペリエンスとして、積極的に利用しようとする例がある。
【0005】
上述のように、音響特性を操作するためには、音響通路フィルターの交換が必要となる。図8において、貼付け材を両面テープとすれば、ユーザーは、簡単に音響通路フィルターを取り外すことができる。ユーザーは、取り外した音響通路フィルターの替わりに、網目の細かさが異なる音響通路フィルターを貼り付ければ、音響特性を変更することができる。しかしながら、両面テープの再利用は、音響通路フィルターの剥離の危険があるため、取り外された音響通路フィルターは、破棄されることになる。従って、ユーザーの交換の度に、新品の音響通過フィルターが必要となるため、繰り返しのユーザーエクスペリエンスを得難い。
【0006】
図9は、音響通路フィルターが、音響通路フィルター台によってノズル部位の先端に設置される例を示す。音響通路フィルターは、接着剤によって、音響通路フィルター台へ貼付けられるが、音響通路フィルダー台の、ノズル部位先端への設置は、圧入嵌合によるものである。図8に示す例よりも、音響通路フィルターの設置は、容易となる。しかしながら、逆に、音響通路フィルターの取り外しは、困難となり、且つ、音響通路フィルター台の破壊を伴う取り外しになる場合もあり、繰り返しのユーザーエクスペリエンスを得難い。
【0007】
図9に示す構成に類する従来例として、特許文献1~3に記載の発明がある。これらの発明においては、ノズル部位への音響通路フィルター台の嵌合は、取り外し難く、逆に、嵌合されていない場合には、イヤーピースの交換の度に、音響通路フィルター台が、ノズル部位から脱落してしまい、扱い難い。また、音響通路フィルター台をノズル部位に被せる、又は、差し込むために、音響通路フィルター台とノズル部位とをオーバーラップさせる必要があり、オーバーラップのためのスペースが必要となる。このスペースは、ノズル部位の径方向に取る必要があるが、ユーザーの外耳道の直径制約のため、ノズル部位の外径を大きくするのではなく、内径を小さくする必要に迫られる。すなわち、ユーザーの外耳道の断面は、略円形であり、略円形の直径以上にノズル部位を大きくすることはできないため、内径を小さくする必要がある。つまり、音響通路を細くすることになり、ダイナミックトランスデューサーが音響通路の外部へ放射する音響特性を阻害する。
【0008】
図10は、音響通路フィルター台とノズル部位とをねじ締結する従来例を示している。ねじ締結により、上述した従来例よりも、音響通路フィルター台の交換が容易になる。しかしながら、ねじ構造寸法の確保、及び、音響通路径の確保のため、ノズル部位先端を、金属又は金属に類する強度を備えるもので作る必要がある。このため、設計の自由度が低い。その他、引用文献4、5に記載の発明では、イヤーピースに音響通路フィルターが設置されているため、ノズル部位への音響通路フィルターの設置、及び、取り外し共に、簡単に行うことができる。しかしながら、音響通路フィルターの種類と同数のイヤーピースが必要になり、且つ、専用イヤーピース以外の使用ができないという制限が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-186641号公報(特許第5488499号公報)
【特許文献2】特開2003-143684号公報(特許第3742330号公報)
【特許文献3】特開2011-151793号公報
【特許文献4】特開2020-058031号公報
【特許文献5】特開2008-277909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、例えば、音響通路フィルター台とノズル部位とをねじ締結する従来例では、ノズル部位先端を、金属又は金属に類する強度を備えるもので作る必要があるため、設計の自由度が低いという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、設計の自由度が高いイヤホンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明のイヤホンは、外部に音を導くための音響通路を内部に有するノズル部位と、音響通路フィルターが設けられる音響通路フィルター台と、前記ノズル部位の先端に設けられた鍔部と、前記音響通路フィルター台に設けられ、前記鍔部と係合する被係合部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明では、イヤホンは、ノズル部位の先端に設けられた鍔部と、音響通路フィルター台に設けられ、鍔部と係合する被係合部と、を備える。従って、鍔部と被係合部とにより、ノズル部位と音響通路フィルター台とが着脱可能となる。これにより、ノズル部位と音響通路フィルター台とを着脱可能とするために、例えば、ねじ構造を用いる必要がないため、ノズル部位先端を、金属又は金属に類する強度を備えるもので作る必要がなく、設計の自由度が高い。このように、本発明によれば、設計の自由度が高いイヤホンを提供することができる。例えば、ノズル部位の材質は、金属、又は、樹脂のいずれでも構わないので、設計の自由度が高い。
【0014】
また、音響通路フィルターが設けられる音響通路フィルター台は、ノズル部位に着脱可能であるため、音響通路フィルター台を交換することで、音響通路フィルターを繰り返し交換することができる。
【0015】
また、音響通路フィルター台のノズル部位への設置は、例えば、圧入嵌合によらないため、破壊を伴うことが防止される。
【0016】
また、鍔部と被係合部との係合により、ノズル部位に音響通路フィルター台を簡単に着脱することができる。
【0017】
また、音響通路フィルターが設けられる音響通路フィルター台をノズル部位に着脱可能であるため、イヤーピースの有無にかかわらず、音響通路フィルターをノズル部位の先端に設置することができる。
【0018】
また、音響通路フィルター台に、音響通路フィルターが設けられるため、音響通路フィルターが、イヤーピースに設置されていない。
【0019】
第2の発明のイヤホンは、第1の発明のイヤホンにおいて、前記鍔部は、前記音響通路の中心を挟んで対向する位置に設けられていることを特徴とする。
【0020】
第3の発明のイヤホンは、第1又は第2の発明のイヤホンにおいて、前記音響通路フィルター台は、前記音響通路フィルターが延在する面と直交する方向に延びるスカート部と、前記スカート部に設けられた切欠部と、を有することを特徴とする。
【0021】
第4の発明のイヤホンは、第1~第3のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記切欠部は、前記音響通路フィルターの中心を挟んで対向する位置に設けられていることを特徴とする。
【0022】
第5の発明のイヤホンは、第4の発明のイヤホンにおいて、前記切欠部は、前記被係合部と連続していることを特徴とする。
【0023】
第6の発明のイヤホンは、第5の発明のイヤホンにおいて、前記鍔部が、前記切欠部内に位置するように、前記音響通路フィルター台が、前記ノズル部位に載置された後、回転されることで、前記鍔部は、前記被係合部に係合することを特徴とする。
【0024】
第7の発明のイヤホンは、第1の発明のイヤホンにおいて、前記ノズル部位が延びる方向に直交する方向における、前記ノズル部位の断面形状は、略楕円であることを特徴とする。
【0025】
第8の発明のイヤホンは、第7の発明のイヤホンにおいて、前記音響通路の形状は、略楕円であり、前記鍔部は、前記音響通路の中心を挟んで、長径方向において対向する位置に設けられていることを特徴とする。
【0026】
本発明では、音響通路の形状は、略円である。また、鍔部は、音響通路の中心を挟んで、長径方向において対向する位置に設けられている。言い換えれば、ノズル部位が楕円状の断面を持つ従来のイヤホンにおいて、ノズル部位の、楕円長手側だけを切り欠くことよって、ノズル部位に鍔部が設けられるため、音響通路に該当する範囲を侵すことなく、ノズル部位に鍔部を備えさせることができる。これにより、鍔部を設けても、音響通路を狭くする必要がない。
【0027】
第9の発明のイヤホンは、第8の発明のイヤホンにおいて、前記音響通路フィルターの形状は、略楕円であり、前記音響通路フィルター台は、前記音響通路フィルターが延在する面と直交する方向に延びるスカート部と、前記音響通路フィルターの短径方向において、前記スカート部の対向する位置に設けられた切欠部と、を有することを特徴とする。
【0028】
第10の発明のイヤホンは、第9の発明のイヤホンにおいて、前記音響通路の長径方向に対して、前記音響通路フィルターの長径方向が斜めとなるように、前記音響通路フィルター台が前記ノズル部位の先端に載置されたときに、前記鍔部は、前記切欠部内に位置することを特徴とする。
【0029】
第11の発明のイヤホンは、第1~第10のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記鍔部は、前記ノズル部位が延びる方向と直交する方向に延在し、前記ノズル部位に設けられ、前記ノズル部位が延びる方向において、前記鍔部と隣接し、前記鍔部が延在する方向に突出した凸部と、前記音響通路フィルター台に設けられ、前記鍔部と前記被係合部とが係合したときに、前記凸部と嵌合する凹部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0030】
本発明では、ノズル部位側に凸部、音響通路フィルター台側に凹部を設けることにより、凸部と凹部とが噛み合って、ノズル部位への、音響通路フィルター台の、簡易なロック機構を備えさせることができる。また、ロックする際の手応えによって、正しく音響通路フィルター台が、ノズル部位へ装着されたという、ユーザーへの触感フィードバックを実現することができる。
【0031】
第12の発明のイヤホンは、外部に音を導くための音響通路を内部に有するノズル部位と、音響通路フィルターが設けられる音響通路フィルター台と、を備え、前記音響通路フィルター台は、前記ノズル部位に対して、着脱可能であり、前記ノズル部位が延びる方向に直交する方向における、前記ノズル部位の断面形状は、略楕円であり、前記音響通路の形状は、略楕円であることを特徴とする。
【0032】
人の外耳道、いわゆる、耳の穴は、断面が楕円形に近い。本発明では、ノズル部位が延びる方向に直交する方向における、ノズル部位の断面形状は、略楕円である。また、音響通路の形状は、略楕円である。これにより、ノズル部位の外径として採り得る最大値を、円形よりも大きくすることができる。
【0033】
第13の発明のイヤホンは、第1~第12のいずれかの発明のイヤホンにおいて、音響通路フィルター台に設けられ、前記音響通路に対応した形状の孔と、前記孔の周囲に設けられ、前記音響通路フィルターを載置するための載置部と、前記載置部と略同形状である音響通路フィルターカバーと、をさらに備え、前記音響通路フィルターは、前記載置部に載置され、前記載置部と前記音響通路フィルターカバーとに挟まれることで、前記音響通路フィルター台に設けられていることを特徴とする。
【0034】
本発明では、音響通路フィルターは、音響通路フィルターカバーと、音響通路フィルター台と、に挟まれているため、より強固に音響通路フィルター台への設置が可能となり、また、意匠性も増す。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、設計の自由度が高いイヤホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態に係るイヤホンを示す図である。
図2】外耳道断面を模式的に示す図である。
図3】ノズル部位が楕円状の断面を有する従来のイヤホンを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るイヤホンの筐体を示す図である。
図5】音響通路フィルター台等を示す図である。
図6】ノズル部位に取り付けられていない状態での音響通路フィルター台と、ノズル部位の先端と、を示す拡大図である。
図7】従来のカナル型イヤホンの例を示す図である。
図8】従来のカナル型イヤホンの例を示す図である。
図9】音響通路フィルターが、音響通路フィルター台によってノズル部位の先端に設置される例を示す図である。
図10】音響通路フィルター台とノズル部位とをねじ締結する従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るイヤホン1を示す図である。図1においては、イヤーピースの図示が、省略されている。イヤホン1は、耳栓型のイヤーピースを耳の中に入れるようにして装着され、使用されるカナル型のイヤホンである。図1(a)は、音響通路フィルター台3が、ノズル部位4に装着される前の状態を示している。図1(b)は、音響通路フィルター台3が、ノズル部位4に載置された状態を示している。図1(c)は、図1(b)の状態から、音響通路フィルター台3が回転された状態を示している。音響通路フィルター台3は、ノズル部位4に対して、着脱可能である。
【0038】
図示するように、イヤホン1は、筐体2と、音響通路フィルター台3と、を備える。筐体2は、ノズル部位4を有する。ノズル部位4は、筐体2の先端において、図1における上下方向に延びる部位である。筐体2の内部には、図示しないが、例えば、ダイナミックトランスデューサーが設けられている。ノズル部位4は、筐体2の内部に設けられたダイナミックトランスデューサーからの音を外部に導くための音響通路5を内部に有する。音響通路5の形状は、例えば、略楕円である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、例えば、「略楕円」という表現は、楕円を含む楕円に類似する形状を示すように、「略~」という表現は、その形状及びその形状に類似する形状を含む。
【0039】
ノズル部位4が延びる方向(図1では、矢印Sの方向)に直交する方向における、ノズル部位4の断面形状は、略楕円である。ノズル部位4の先端には、鍔部6が設けられている。具体的には、鍔部6は、音響通路5の中心を挟んで対向する位置2か所に設けられている。より具体的には、鍔部6は、音響通路5の中心を挟んで、長径方向において対向する位置2か所に設けられている。なお、鍔部6は、2か所に(2つ)設けられているが、1か所にのみ(1つだけ)設けられていてもよい。
【0040】
図2は、外耳道断面を模式的に示す図である。人の外耳道、いわゆる、耳の穴は、断面が楕円形に近い。よって、ノズル部位4の外径として、採り得る最大値は、円形よりも楕円状にする方が、大きくすることができる。ノズル部位4の外径を大きくしたい場合、ノズル部位4の断面を、楕円状にする方が、斜線領域だけ有利である。図3は、ノズル部位が楕円状の断面を有する従来のイヤホンを示す図である。図4は、本発明の実施形態に係るイヤホン1の筐体2を示す図である。図3におけるノズル部位の、楕円長手側(図3における矢印Aを付した部分)だけを、つまり、図2の斜線領域を鍔状に切り欠いたものが、図4に示す本実施形態の鍔部6である。これにより、音響通路に該当する範囲を侵すことなく、ノズル部位4に鍔部6を備えさせることができる。
【0041】
図5は、音響通路フィルター台3等を示している。音響通路フィルター台3には、音響通路フィルター7が設けられる。音響通路フィルター7の形状は、略楕円である。音響通路フィルター台3は、音響通路5と対応する形状(略楕円形状)の孔10を有する。孔10の周囲には、音響通路フィルター7を載置するための載置部11が設けられている。音響通路フィルター7は、載置部11に載置された後、音響通路フィルターカバー12と載置部11とに挟まれることによって、音響通路フィルター台3に設置される。音響通路フィルターカバー12は、載置部11と略同じ形状であり、載置部11内側の孔10に対応する形状の孔13が設けられている。
【0042】
なお、音響通路フィルター7は、音響通路フィルター台3に、直接、貼り付けられていてもよい。本実施形態のように、音響通路フィルター7が、音響通路フィルターカバー12と音響通路フィルター台3(載置部11)に挟まれていれば、より強固に、音響通路フィルター台3への設置が可能となり、また、意匠性も増す。
【0043】
音響通路フィルター台3は、音響通路フィルター台3が延在する面と直交する方向(図5における上下方向)に延びるスカート部8を有する。また、音響通路フィルター台3は、スカート部8に設けられた切欠部9を有する。具体的には、切欠部9は、音響通路フィルター7の中心を挟んで対向する位置2か所に設けられている。より具体的には、切欠部9は、音響通路フィルター7の短径方向において、スカート部8の対向する位置2か所に設けられている。
【0044】
音響通路フィルター7が設けられた音響通路フィルター台3は、ノズル部位4に取り付けられる。図1(a)に示すように、まず、音響通路フィルター台3は、切欠部9内に、鍔部6が位置するように、上方から下方に(矢印Sの方向)移動され、図1(b)に示すように、ノズル部位4の先端に載置される。言い換えれば、音響通路5の長径方向に対して、音響通路フィルター7の長径方向が斜めとなるように、音響通路フィルター台3がノズル部位4の先端に載置されたときに、鍔部6は、切欠部9内に位置する。図1(b)に示す状態から、図1(c)に示すように、音響通路フィルター台3が時計方向(矢印Rの方向)に回転されると、鍔部6は、後述する被係合部14に係合する。
【0045】
図6は、ノズル部位4に取り付けられていない状態での音響通路フィルター台3と、ノズル部位4の先端と、を示す拡大図である。図6に示すように、スカート部8の内側に、鍔部6と係合する被係合部14が設けられている。被係合部14は、音響通路フィルター7の中心を挟んで対向する位置2か所に設けられている。具体的には、被係合部14は、音響通路フィルター7の中心を挟んで、長径方向において対向する位置2か所に設けられている。被係合部14は、鍔部6の外形形状に対応する凹形状となっている。音響通路フィルター台3が回転されると、鍔部6は、被係合部14に係合し、鍔部6の側壁が、被係合部14の側壁に当接することで、音響通路フィルター台3の回転が止まるようになっている。被係合部14は、切欠部9と連続している。
【0046】
被係合部14、すなわち、音響通路フィルター台3の、ノズル部位4の鍔部6へ係合するための構造は、図2の斜線領域に設ける。これにより、音響通路に該当する範囲を侵すことなく、被係合部14を、ノズル部位4の鍔部6に係合させることができる。
【0047】
また、図6に示すように、ノズル部位4には、ノズル部位4が延びる方向において、鍔部6と隣接し、鍔部6が延在する方向に突出した凸部15が設けられている。さらに、音響通路フィルター台3には、鍔部6と被係合部14とが係合したときに、凸部15と嵌合する凹部16が設けられている。すなわち、ノズル部位4側に凸部15、音響通路フィルター台3側に凹部16が設けられることにより、凸部15と凹部16とが噛み合って、ノズル部位4への、音響通路フィルター台3の、簡易なロック機構を備えさせることができる。また、ロックする際の手応えによって、正しく音響通路フィルター台3が、ノズル部位4へ装着されたという、ユーザーへの触感フィードバックを実現することができる。
【0048】
音響通路フィルター台3を、ノズル部位4から取り外す場合、音響通路フィルター台3を、ノズル部位4に取り付ける場合の逆の手順、すなわち、図1(c)に示す状態から、音響通路フィルター台3を、反時計回り方向に回すことで、音響通路フィルター台3を、ノズル部位4から取り外すことができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、イヤホン1は、ノズル部位4の先端に設けられた鍔部6と、音響通路フィルター台3に設けられ、鍔部6と係合する被係合部14と、を備える。従って、鍔部6と被係合部14とにより、ノズル部位4と音響通路フィルター台3とが着脱可能となる。これにより、ノズル部位4と音響通路フィルター台3とを着脱可能とするために、例えば、ねじ構造を用いる必要がないため、ノズル部位4先端を、金属又は金属に類する強度を備えるもので作る必要がなく、設計の自由度が高い。このように、本実施形態によれば、設計の自由度が高いイヤホン1を提供することができる。例えば、ノズル部位4の材質は、金属、又は、樹脂のいずれでも構わないので、設計の自由度が高い。
【0050】
また、音響通路フィルター7が設けられる音響通路フィルター台3は、ノズル部位4に着脱可能であるため、音響通路フィルター台3を交換することで、音響通路フィルター7を繰り返し交換することができる。
【0051】
また、音響通路フィルター台3のノズル部位4への設置は、例えば、圧入嵌合によらないため、破壊を伴うことが防止される。
【0052】
また、鍔部6と被係合部14との係合により、ノズル部位4に音響通路フィルター台3を簡単に着脱することができる。
【0053】
また、音響通路フィルター7が設けられる音響通路フィルター台3をノズル部位4に着脱可能であるため、イヤーピースの有無にかかわらず、音響通路フィルター7をノズル部位4の先端に設置することができる。
【0054】
また、音響通路フィルター台3に、音響通路フィルター7が設けられるため、音響通路フィルターが、イヤーピースに設置されていない。
【0055】
また、本実施形態では、音響通路5の形状は、略楕円である。また、鍔部6は、音響通路5の中心を挟んで、長径方向において対向する位置に設けられている。言い換えれば、ノズル部位が楕円状の断面を持つ従来のイヤホンにおいて、ノズル部位の、楕円長手側だけを切り欠くことよって、ノズル部位4に鍔部6が設けられるため、音響通路に該当する範囲を侵すことなく、ノズル部位4に鍔部6を備えさせることができる。これにより、鍔部6を設けても、音響通路5を狭くする必要がない。
【0056】
また、本実施形態では、ノズル部位4側に凸部15、音響通路フィルター台3側に凹部16を設けることにより、凸部15と凹部16とが噛み合って、ノズル部位4への、音響通路フィルター台3の、簡易なロック機構を備えさせることができる。また、ロックする際の手応えによって、正しく音響通路フィルター台3が、ノズル部位4へ装着されたという、ユーザーへの触感フィードバックを実現することができる。
【0057】
人の外耳道、いわゆる、耳の穴は、断面が楕円形に近い。本実施形態では、ノズル部位4が延びる方向に直交する方向における、ノズル部位4の断面形状は、略楕円である。また、音響通路5の形状は、略楕円である。これにより、ノズル部位4の外径として採り得る最大値を、円形よりも大きくすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、音響通路フィルター7は、音響通路フィルターカバー12と、音響通路フィルター台3と、に挟まれているため、より強固に音響通路フィルター台3への設置が可能となり、また、意匠性も増す。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、イヤホンに好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0061】
1 イヤホン
2 筐体
3 音響通路フィルター台
4 ノズル部位
5 音響通路
6 鍔部
7 音響通路フィルター
8 スカート部
9 切欠部
10 孔
11 載置部
12 音響通路フィルターカバー
13 孔
14 被係合部
15 凸部
16 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10