(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076079
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】ヒレ酒エッセンス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20220512BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20220512BHJP
C12G 3/06 20060101ALN20220512BHJP
【FI】
A23L27/10 B
A23L27/00 C
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186304
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】520437423
【氏名又は名称】小野尾 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(72)【発明者】
【氏名】小野尾 貴之
【テーマコード(参考)】
4B047
4B115
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LE01
4B047LF07
4B047LG07
4B047LG54
4B047LP01
4B047LP07
4B047LP20
4B115MA04
(57)【要約】
【課題】生臭さやコゲの発生を抑制し、ヒレ酒の風味が十分に供与できるヒレ酒のエッセンスを得ることを目的とする。
【解決手段】エタノールの含有割合が50体積%以上80体積%以下のエタノール含有水を有し、特定の風味を有するエッセンスであり、特定の風味は、日本酒180mlにこのエッセンスを0.01ml以上0.5ml以下含有させたときに生じるヒレ酒の風味であるヒレ酒エッセンスを製造する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールの含有割合が50体積%以上80体積%以下のエタノール含有水を有し、特定の風味を有するエッセンスであり、
前記特定の風味は、日本酒180mlにこのエッセンスを少なくとも0.01ml含有させたときに生じるヒレ酒の風味であるヒレ酒エッセンス。
【請求項2】
干し及び焼きの工程を経たヒレを、エタノールの含有割合が80体積%以上98体積%以下のエタノール含有水を1週間以上2カ月以下の期間、漬け込み、
エタノールの含有割合が40体積%以上80体積%以下となるまでエタノールを除去したヒレ酒エッセンスの製造方法。
【請求項3】
前記のヒレは、ぬめりをとり、1週間以上1カ月間以下の期間、干した後、オーブンで加熱したものである請求項2に記載のヒレ酒エッセンスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、日本酒にヒレ酒の風味を付与するヒレ酒エッセンス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ヒレ酒は、飲食店、料理店において、フグのヒレを焼き、日本酒に浸し、加熱することにより作られ、提供される。
また、飲食店や料理店でなく、野外や家庭でヒレ酒を楽しむ方法として、発熱装置付き容器に日本酒と加熱処理をしたフグのヒレを封入し、飲用する際に、発熱装置で発熱させてヒレ酒とする方法が特許文献1に開示されている。これに用いるフグのヒレは、その先端が十分に炭化するまで加熱処理がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、飲食店、料理店において、提供される方法では、ヒレを焼いたときにコゲが生じ、これが日本酒に混ざり、風味を損なうことがある。また、ヒレの焼き具合等によっては、魚のもつ生臭さが残る場合があり、生臭さが残ると、ヒレ酒の風味に生臭さが加わってしまい、風味を損なうことがある。
また、特許文献1に記載の方法においては、ヒレの先端部にコゲが生じるので、それが日本酒に混ざり、風味を損なうことがある。
そこで、この発明は、生臭さやコゲの発生を抑制し、ヒレ酒の風味が十分に供与できるヒレ酒のエッセンスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記の課題を解決したものであり、その要旨は、下記の[1]~[3]に存する。
[1]エタノールの含有割合が50体積%以上80体積%以下のエタノール含有水を有し、特定の風味を有するエッセンスであり、前記特定の風味は、日本酒180mlにこのエッセンスを少なくとも0.01ml含有させたときに生じるヒレ酒の風味であるヒレ酒エッセンス。
[2]干し及び焼きの工程を経たヒレを、エタノールの含有割合が80体積%以上98体積%以下のエタノール含有水を1週間以上2カ月以下の期間、漬け込み、エタノールの含有割合が50体積%以上80体積%以下となるまでエタノールを除去したヒレ酒エッセンスの製造方法。
[3]前記のヒレは、ぬめりをとり、1週間以上1カ月以下の期間、干した後、オーブンで加熱したものである[2]に記載のヒレ酒エッセンスの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
この発明に係るヒレ酒エッセンスは、爪楊枝や細い針で1滴程度(0.01ml以上)を180mlの日本酒に滴下すると、生臭さや炭っぽさが抑制されたヒレ酒の風味が、その日本酒に与えられ、ヒレ酒を楽しむことができる。
また、日本酒以外の酒を用いると、その酒では得られない、変わった風味の酒を楽しむことができる。
この発明に係るヒレ酒エッセンスは、実質上、50体積%以上80体積%以下のエタノールを含むエタノール含有水であり、ヒレ等を含まないので、より長い期間、保存・使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
この発明に係るヒレ酒エッセンスは、エタノールの含有割合が50体積%以上80体積%以下のエタノール含有水を有し、特定の風味を有するエッセンスである。
この特定の風味とは、後記の通りに日本酒に滴下することにより、ヒレ酒の風味が生じる風味(以下、「ヒレ酒の風味」と称する。)をいう。
この「風味」とは、香りや味などで構成される酒の味わいをいう。また、「ヒレ酒の風味」とは、一般的に、フグのヒレを焼き、日本酒に浸し、加熱することにより得られるヒレ酒が生じさせる風味をいう。
【0008】
このヒレ酒エッセンスは、次の方法で製造することができる。
まず、フグ、特にトラフグのヒレを準備し、このヒレのぬめりをとる工程を行う。このヒレのぬめりは魚臭さの原因の1つであるので、これを取り除く必要がある。
このぬめりを取る方法としては、包丁等の刃物でぬめりをこそぎ取る方法、塩をつけてぬめりを取り除く方法、塩をつけた後に包丁等の刃物でぬめりをこそぎ取る方法等があげられる。
【0009】
次に、前記のぬめりを取ったヒレを乾燥させる工程を行う。乾燥方法としては、自然乾燥させる方法や乾燥機を用いて強制的に乾燥させる方法があげられる。
自然乾燥の方法としては、室外や室内にヒレを配し、干す方法があげられる。このとき、日光に当てる天日干しや、日光に当てない陰干し、又はそれらの組み合わせの方法のいずれも採用することができる。また、風に当てて干してもよく、無風状態で干してもよい。
この自然乾燥において、ヒレは、木製や金属製、プラスチックス製等の板や金網等においてもよく、クリップ等を用いて吊るしてもよい。
また、乾燥時間は、その方法に合わせて適宜、設定することができるが、魚臭さをさらに除く観点から、1週間以上1カ月間以下が好ましい。
【0010】
また、乾燥機を用いる方法は、温度をあげればより早く乾燥させることができるが、乾燥時間が短すぎると、残っている魚臭さをさらに除くことが困難となるため、乾燥機のある場所の温度+30℃以下がよく、乾燥機のある場所の温度+20℃以下が好ましく、乾燥機のある場所の温度+10℃以下がより好ましい。一方、乾燥機の下限は、乾燥機のある場所の温度より高ければよく、乾燥機のある場所の温度+5℃が好ましい。
このときの乾燥時間は、魚臭さをさらに除く観点から、1日間以上1カ月間以下が好ましい。
【0011】
なお、魚臭さをより確実にとり除く観点から、自然乾燥によって乾燥することがより好ましい。
【0012】
次に乾燥させた前記のヒレを、オーブンで加熱する工程を行い、処理済ヒレを得る。直火で焼くのではなく、オーブンを用いることにより、焼けカス等のコゲが生じるのを抑制でき、コゲによる苦味が生じて、これが次工程でエタノール含有水に移るのを抑制できる。
このオーブンとしては、コゲが生じないオーブンが好ましく、このようなオーブンの例としては、コンベクションオーブンがあげられる。
【0013】
また、このオーブンの条件としては、コゲが生じない条件とすることが好ましい。オーブンとしてコンベクションオーブンを用いる場合、設定温度は、200℃以上がよく、210℃以上が好ましい。また、250℃以下がよく、240℃以下が好ましい。この範囲を超えると、焼けカスが生じるおそれがある。一方、この範囲を下回ると、十分な加熱が得るために、より長時間が必要となり、効率的でない。
【0014】
前記の温度範囲の場合、加熱時間は、3分間以上がよく、5分間以上が好ましい。また、8分以下がよく、6分以下が好ましい。この範囲を超えると、コゲが生じるおそれがある。一方、この範囲を下回ると、十分な加熱が得られず、十分なヒレ酒の風味が生じにくくなるおそれがある。
なお、このオーブンで加熱した後は、直火で炙る必要はない。直火で炙ると、コゲが生じやすくなるからである。
【0015】
このようにして得られた処理済ヒレを、所定のエタノール含有水に浸漬する工程を行う。
このエタノール含有水とは、所定のエタノール濃度(アルコール度)のエタノールを含有する水をいう。このエタノール濃度(アルコール度)は、80体積%(80度)以上がよく、85体積%(85度)以上が好ましく、90体積%(90度)以上がより好ましく、95体積%(95度)以上がさらに好ましい。また、98体積%(98度)以下がよく、97体積%(97度)以下が好ましく、96体積%(96度)以下がより好ましい。このようなエタノール含有水を用いることにより、後工程における濃縮度を高めることができ、より少量を用いることにより、十分なヒレ酒風味を得ることができる。
【0016】
このようなエタノール含有水としては、純エタノールに所定の濃度となるように水を加えたものや、アルコール度の高い蒸留酒等を用いることができる。このような蒸留酒としては、ウォッカや、スピリッツ等のその他の蒸留酒等をあげることができる。
前記ウォッカの例としては、スピリタス(アルコール度95~96度、ポーランド:ポルモス ワルシャワ社製)、エバークリア(アルコール度95度、アメリカ)、ドーバー スピリッツ 88(アルコール度88度、日本:ドーバー洋酒貿易(株)製)、バルカン176ウォッカ(アルコール度88度、ブルガリア:バルカン社製)、デビルズ・スプリングス・ウォッカ(アルコール度80度、アメリカ)等があげられる。
また、前記のスピリッツ等のその他の蒸留酒としては、ココロコ(アルコール度96度、ボリビア)、ノッキーン・ヒルズ・ポチーン(アルコール度90度、80度、アイルランド)、
ストロー80(アルコール度80度、オーストリア)等があげられる。
【0017】
前記エタノール含有水に漬ける前記処理済ヒレの量は、前記エタノール含有水180ml当たり、1g以上がよく、2g以上が好ましい。1gより少ないと、エタノール含有水に移るヒレ酒風味を醸し出す成分(以下、「ヒレ酒風味成分」と略する。)が十分でないおそれがある。なお、上限は、特に限定されないが、5gもあれば、エタノール含有水に移るヒレ酒風味成分が十分となる。
【0018】
前記の処理済ヒレを、所定のエタノール含有水に浸漬する時間は、2週間以上がよく、3週間以上が好ましい。また、2カ月以下がよく、1カ月以下が好ましい。この期間、浸漬することにより、ヒレ酒風味成分を、十分に処理済ヒレから引き出し、エタノール含有水に移すことができる。
また、前記の処理済ヒレを、所定のエタノール含有水に浸漬するときの温度は、-60℃以上がよく、-30℃以上が好ましく、-10℃以上がより好ましく、4℃以上が特に好ましい。また、40℃以下がよく、35℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。温度が低すぎると、ヒレ酒風味成分を十分にエタノール含有水に移すことが困難となる場合がある。一方、温度が高すぎると、ヒレ酒風味成分のうち、香り等の揮散性の成分の揮散する程度が高くなり、最終的に十分なヒレ酒風味が得られなくおそれがある。さらに、エタノール揮散量が増大し、作業に危険性が生じるおそれがある。
【0019】
このようにして得られたヒレ酒風味成分を有するエタノール含有水(ヒレ酒風味成分含有エタノール含有水)を、減圧下でエタノール成分を留出除去する工程にかけ、この発明にかかるヒレ酒エッセンスを得る。
この留出除去は、室温以上70℃以下の条件下で、ヒレ酒風味成分含有エタノール含有水のエタノールを留去できる程度に減圧する。70℃以下とすることにより、ヒレ酒風味成分が揮散しすぎるのを防止でき、得られるヒレ酒エッセンスにより多くのヒレ酒風味成分を残すことができる。より好ましい温度は60℃以下であり、さらに好ましい温度は50℃以下である。また、留出条件の下限は、室温未満でも構わないが、冷却を要するので、室温であれば十分である。より好ましい温度は30℃以上、さらに好ましい温度は40℃以上である。なお、室温とは、一般的に25℃をいう。
また、減圧の条件は、温度に合わせて、エタノールを留去できる減圧度でよく、温度によって変動はあるが、70hPa以上800hPa以下の範囲内が好ましい。
【0020】
前記の減圧下でエタノール成分を留出除去する装置として、一般的な減圧蒸留装置を用いることができる。この減圧蒸留装置の例としては、ロータリーエバポレーター等のエバポレーター類や、多管式凝縮器、プレート式凝縮器、プレート式冷却器等の凝縮器や冷却器を有する減圧蒸留装置等をあげることができる。
【0021】
前記の留出除去により、ヒレ酒風味成分含有エタノール含有水中のエタノールを除去し、ヒレ酒風味成分含有エタノール含有水中のエタノールの含有割合を80体積%以下とするのがよく、75体積%以下とすることが好ましく、70体積%以下とすることがより好ましい。また、40体積%以上とするのがよく、50体積%以上とすることが好ましく、60体積%以上とすることがより好ましい。エタノールの含有割合をこの範囲とすることにより、得られるヒレ酒エッセンスを使用するとき、好適なヒレ酒風味を得ることができる。
【0022】
この留出除去により得られたヒレ酒エッセンスの、留出除去前のヒレ酒風味成分含有エタノール含有水に対する濃縮割合は、1体積%以上20体積%以下、好ましくは、2体積%以上18体積%以下となる。
【0023】
得られたヒレ酒エッセンスは、爪楊枝や針等の先端の細い物体の先端に付け、これの1滴~10滴程度を日本酒に添加して含有させることにより、その日本酒にヒレ酒の風味を付与することができる。具体的には、日本酒180mlに対し、このヒレ酒エッセンスを先端の細い物体の先に付けた1滴以上を添加させることにより、ヒレ酒の風味を有する日本酒を得ることができる。日本酒180mlに対する、このヒレ酒エッセンスの上限は特にないが、ヒレ酒風味を十分に付与できる量を添加すれば十分である。この量の具体例としては、このヒレ酒エッセンスを爪楊枝の先に付けた10滴分があげられる。
ところで、先端の細い物体の先に付けた1滴は、その物体の種類や先端部の形状、先端の細さによっても変わる。この発明においては、先端の細い物体としては、だいたい、1滴あたり、0.01ml以上0.1ml以下となる物体を用いると、1滴滴下することで、この発明の効果を発現することができるので、好ましい。
なお、この測定方法としては、ヒレ酒エッセンスを先端の細い物体につけ、これの1滴を秤量皿に滴下させる。この作業を10回繰り返し、その増量を秤量し、その増量分の1/10倍とすることで、1滴の重さを算出することができる。
【実施例0024】
以下、この発明を、実施例を用いてより具体的に説明する。
[対比用ヒレ酒の製造]
2g~3gのトラフグのヒレ10切の表面を包丁でこそぎ、ぬめりをとった。
次いで、全てのヒレを木の板に張り付け、2週間、陰干しをした。
次いで、炭火でヒレを数分間焼いた。
得られた焼きヒレの1切を日本酒180mlに入れ、対比用ヒレ酒を製造した。
【0025】
[実施例1]
(処理済ヒレの製造)
2g~3gのトラフグのヒレ10切の表面を包丁でこそぎ、ぬめりをとった。
次いで、全てのヒレを木の板に張り付け、2週間、陰干しをした。
次いで、コンベクションオーブン((株)日立製)にヒレをいれ、220℃で6分間、加熱し、処理済ヒレを作製した。
【0026】
(ヒレ酒エッセンスの製造)
得られたヒレ1切を180mlのスピリタス(アルコール度96度、ポーランド:ポルモス ワルシャワ社製)に入れ、室内(平均気温:25~30℃)にて1月間漬け込んだ。
得られた漬け込み酒15.8gを300mlのガラス製ナスフラスコ(口径24mm)に入れ、ロータリーエバポレーターに設置した。
次いで、ナスフラスコを60℃の温浴中、100rpmの速度で回転させ、十分に液温が高まった後に、ロータリーエバポレーターに接続されたアスピレーターで、ロータリーエバポレーター内の全体を100hPaに減圧し、エタノールを留去した。
液量が微小になった段階でロータリーエバポレーター内を徐々に常圧に戻し、回転を停止させ、温浴からナスフラスコを取り出し、ヒレ酒エッセンスを得た。
得られたヒレ酒エッセンスの重量は0.6g、エタノール濃度は65体積%、濃縮割合は、約4体積%であった。
なお、エタノール濃度は、高速液体クロマトグラフ((株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0027】
(ヒレ酒エッセンスの評価)
得られたヒレ酒エッセンスを爪楊枝の先端部につけ、これの1滴を180ml日本酒に滴下し、試飲用ヒレ酒1を製造し、5人に試飲してもらった。また、前記の対比用ヒレ酒も試飲した。
なお、ヒレ酒エッセンスを爪楊枝の先端部につけ、これの1滴を秤量皿に滴下するのを10回繰り返したところ、0.4g増加し、このエッセンス10滴は0.4gであることが確認された。エタノール濃度65体積%の水溶液の密度は、約0.87g/cm3なので、このエッセンス10滴は約0.57mlとなり、このエッセンス1滴は約0.057mlとなる。
その結果、5人とも、いずれのヒレ酒も、十分なヒレ酒の風味を感じた。また、試飲用ヒレ酒1は、対比用ヒレ酒に比べ、ヒレ酒の香りがより高かった。
一方、対比用ヒレ酒は、少し苦みを感じた。これは、炭火で焼いたときに生じたコゲによるものと思われる。
【0028】
また、得られたヒレ酒エッセンスを40℃、湿度80%で1週間保管したが、カビや異臭は生じていなかった。また、これを用いて試飲用ヒレ酒を製造しても、香り、風味に変化はなく、同様の評価が得られた。
【0029】
[実施例2]
(処理済ヒレの製造)
2g~3gのトラフグのヒレ10切の表面に食塩を塗り付け、次いで包丁でこそぎ、ぬめりをとった。
次いで、全てのヒレを木の板に張り付け、2週間、陰干しをした。
次いで、コンベクションオーブン((株)日立製)にヒレをいれ、220℃で6分間、加熱し、処理済ヒレを作製した。
【0030】
(ヒレ酒エッセンスの製造)
ナスフラスコに入れる漬け込み酒の量を80gとし、ロータリーエバポレーターの温浴の温度を50℃、ロータリーエバポレーター内の全体の圧力を100hPaとした以外は、実施例1と同様にして、エタノールを留去した。
実施例1と同様にして、ナスフラスコとを取り出し、漬け込み酒を75g追加し、同様にしてエタノールを留去した。
実施例1と同様にして、ナスフラスコとを取り出し、ヒレ酒エッセンスを得た。
得られたヒレ酒エッセンスの重量は5.3g、エタノール濃度は45体積%、濃縮割合は、約3.5体積%であった。
【0031】
(ヒレ酒エッセンスの評価)
得られたヒレ酒エッセンスを爪楊枝の先端部につけ、これの1滴を180ml日本酒に加えて、試飲用ヒレ酒2を製造し、5人に試飲してもらった。また、前記の対比用ヒレ酒も試飲した。
その結果、5人とも、いずれのヒレ酒も、十分なヒレ酒の風味を感じた。また、試飲用ヒレ酒1は、対比用ヒレ酒に比べ、ヒレ酒の香りがより高く、少し甘みも感じた。
一方、対比用ヒレ酒は、少し苦みを感じた。これは、炭火で焼いたときに生じたコゲによるものと思われる。
なお、甘みは、ヒレのぬめりとりの際に用いた塩の影響がある可能性がある。
【0032】
[比較例1]
スピリタスの代わりに日本酒(アルコール度15度)を用いた以外は、実施例1と同様にした。しかし、水の含有量が多いため、エタノールのほとんどが留去してしまい、水が主体の濃縮液が5g得られた。
【0033】
(ヒレ酒エッセンスの評価)
得られた濃縮液を爪楊枝の先端部に1滴つけ、これを180ml日本酒に加えて、試飲用ヒレ酒3を製造し、5人に試飲してもらった。また、前記の対比用ヒレ酒も試飲した。
その結果、5人とも、試飲用ヒレ酒3は、十分なヒレ酒の風味を感じず、対比用ヒレ酒の方が十分なヒレ酒の風味を感じると評価した。
【0034】
(結論)
上記の実施例1、2と比較例1とから、実施例1、2で得られたヒレ酒エッセンスは、日本酒にヒレ酒の風味を与えるエッセンスとして、十分に使用できることがわかった。
一方、比較例1は、ヒレを漬けたアルコールの水分含有量が多いため、留出除去工程で、エタノールの大半が留去してしまい、その後は水の留去が中心となったため、ヒレから出た風味の成分が、水と一緒に留去されてしまい、十分な風味が得られなかったと考えられる。
なお、対比用ヒレ酒は、炭火で焼いたときに生じたコゲにより、少し苦みが感じられた。