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特開2022-76089冷蔵保存庫内に電場を形成するための高圧パネル
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  • 特開-冷蔵保存庫内に電場を形成するための高圧パネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076089
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】冷蔵保存庫内に電場を形成するための高圧パネル
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20220512BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
F25D11/00 101Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186332
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】520437537
【氏名又は名称】小森 治
(71)【出願人】
【識別番号】520114203
【氏名又は名称】株式会社スーリヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】小森 治
(72)【発明者】
【氏名】草間 貢
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝啓
(72)【発明者】
【氏名】シバスンタラン スハルナン
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA06
3L045BA01
3L045BA02
3L045CA02
3L045KA11
3L045PA04
3L345AA02
3L345AA05
3L345AA12
3L345BB01
3L345GG40
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で製造し易く、取り扱いが容易な冷蔵保存庫用の高圧パネルを提供する。
【解決手段】冷蔵保存庫内に電場を形成するための高圧パネル(10)は、絶縁材料からなる枠部材(101)と、枠部材の枠内にその裏面から所定距離(d)だけ離れた位置に固定された平面電極部材(201)と、平面電極部材(201)の電場形成側を覆う断熱樹脂板(202)と、断熱樹脂板(202)を覆う保護シート(102)と、からなる。平面電極部材(201)は電場を形成するための高電圧が印加されるメッシュ状の平面電極(210)と平面電極(210)を挟んで圧着された樹脂板(210a、210b)とから構成され得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵保存庫内に電場を形成するための高圧パネルであって、
絶縁材料からなる枠部材と、
前記枠部材の枠内にその裏面から所定距離だけ離れた位置に固定された平面電極部材と、
前記平面電極部材の電場形成側を覆う断熱樹脂板と、
前記断熱樹脂板を覆う保護シートと、
からなることを特徴とする高圧パネル。
【請求項2】
前記平面電極部材は、
前記電場を形成するための高電圧が印加されるメッシュ状の平面電極と、
前記平面電極を挟んで圧着された樹脂板と、
からなることを特徴とする請求項1に記載の高圧パネル。
【請求項3】
前記樹脂板は前記平面電極より大きいサイズを有し、前記平面電極の外周に伸びた前記樹脂板の外周部で前記平面電極部材が前記枠部材に固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高圧パネル。
【請求項4】
前記断熱樹脂板は発泡樹脂からなることを特徴とする請求項1-請求項3のいずれか1項に記載の高圧パネル。
【請求項5】
前記枠部材の内壁の前記裏面から所定距離だけ離れた位置に前記平面電極部材を固定するための内側突出部を設けたことを特徴とする請求項1-請求項4のいずれか1項に記載の高圧パネル。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか1項に記載の高圧パネルを冷蔵保存庫内の壁面に配置した冷蔵保存庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電場内で食品などを冷蔵保存することで鮮度を長期間維持することができる冷蔵保存庫に係り、特に冷蔵保存庫内に電場を形成するための高圧パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫内に形成された電場空間内に食品を保存すると食品の分子が電場により振動し、冷蔵室内の温度を氷点下数度程度にまで下げても非凍結状態を維持することができる。この現象を利用して食品の鮮度を長期間に渡って維持する冷蔵保存庫がこれまでに種々提案されている(例えば特許文献1および2参照)。
【0003】
また、上述した冷蔵保存庫の電場空間を簡易に形成するための電場形成用パネルも提案されている。たとえば特許文献3には、冷蔵庫の収容部壁面に電場形成用パネルを配置して高電圧を印加するだけで氷結点以下の温度でも食品を非凍結状態に維持する電場空間を形成する方法が開示されている。この電場形成用パネルは、メッシュ状の平面電極の裏側に絶縁材と保護シートを配置し、表側(電場形成側)に保護シートだけを厚く積層させ、平面電極の外周を囲むように余った保護シートを絶縁性リベットで閉じることで1枚のパネルとして構成される。保護シートには水滴、結露に対して反応しない材質である難燃性テント生地が採用され、絶縁材には柔軟性を有する合成樹脂等の絶縁材料が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-215074号公報
【特許文献2】特許第3862085号公報
【特許文献3】特開2013-096675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に開示された電場形成用パネルは取り扱いが面倒であり、また構造が複雑で製造が容易ではない。
【0006】
上述したように、電場形成用パネルは平面電極の表側を保護シートで何重にも積層して外周部を束ねてリベットで閉じた構造であり、簡易に製造できない。また外周取り付け部は保護シートを束ねただけであるから折れ曲がり易く取り付け部が安定しない。特に平面電極は最大1m×2mの大きさとされており、その前面が何重にも積層した難燃性テント生地で覆われるのであるから、パネル全体としての重量が増大する。このように重量があり取り付け部が折れ曲がりやすい電場形成用パネルは取り扱いが容易ではなく、また安定した取り付けが困難である。
【0007】
さらに、特許文献3の電場形成用パネルは、平面電極の裏側が柔軟性を有する絶縁材を介して冷蔵庫の壁面に設置されるために、平面電極を壁面から適切な距離だけ確実に離すことが困難となる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、構造が簡単で製造し易く、取り扱いが容易な冷蔵保存庫用の高圧パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による高圧パネルは、冷蔵保存庫内に電場を形成するための高圧パネルであって、絶縁材料からなる枠部材と、前記枠部材の枠内にその裏面から所定距離だけ離れた位置に固定された平面電極部材と、前記平面電極部材の電場形成側を覆う断熱樹脂板と、前記断熱樹脂板を覆う保護シートと、からなることを特徴とする。このように構成することで枠部材内に平面電極部材および断熱樹脂板を取り付けた簡単な構造であるから製造が極めて容易になり、さらに移動、設置が簡単になる。また高圧パネルを壁面に配置するだけで平面電極を所望の位置に容易に設置することができるので、冷蔵保存庫内の必要な空間に必要な電場を容易にかつ確実に形成することができる。
前記平面電極部材は、前記電場を形成するための高電圧が印加されるメッシュ状の平面電極と、前記平面電極を挟んで圧着された樹脂板と、から構成され得る。平面電極が樹脂板で覆われるために外部環境から平面電極を保護することができ、取り扱いも容易になる。
前記樹脂板は前記平面電極より大きいサイズを有し、前記平面電極の外周に伸びた前記樹脂板の外周部で前記平面電極部材が前記枠部材に固定され得る。平面電極より大きいサイズの樹脂板の間に平面電極を挟んで圧着するだけで、平面電極部材を取り付けるための外周部を同時に形成することができ、製造が容易になる。
前記断熱樹脂板は発泡樹脂で形成することができる。これにより高圧パネルの軽量化を促進できる。
前記枠部材の内壁の前記裏面から所定距離だけ離れた位置に前記平面電極部材を固定するための内側突出部を設けることができる。これにより平面電極部材を裏面から所定距離の位置に確実にかつ簡単に固定することができる。
上記高圧パネルを冷蔵保存庫の壁面に少なくとも1枚配置することができる。高圧パネルを所望の枚数設置することで、必要な空間に必要な電場を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構造が簡単で製造し易く、取り扱いが容易な高圧パネルおよびそれを配置した冷蔵保存庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による高圧パネルの外観の一例を示す斜視図である。
図2図1に例示する高圧パネルの正面図(A)、I-I線断面図(B)、および背面図(C)である。
図3】本実施形態による高圧パネルにおける平面電極部材の正面図(A)およびII-II線断面図(B)である。
図4】本実施形態による高圧パネルの構成を説明するための模式的断面図である。
図5】本実施形態による高圧パネルを用いた冷蔵保存庫と電源系の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成要素は単なる例示であり、構成要素の形状、寸法およびそれらの間の比率等は本発明を説明するためのものであって本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨ではない。
【0013】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による高圧パネル10は長さL、幅W、厚さDの枠部材101のなかに2枚の平面電極部材201が固定され、枠部材101の前面を保護シート102で覆った構造を有する。言うまでもなく図1に示す構成は一例であり、長さL1、幅W、厚さDの枠部材を単独で使用しても良いし、図示するように2個を連結させて使用しても良い。一例として、長さLは2m前後、幅Wは1m前後、厚さDは6cm前後であり、長さL1は95~97cmである。
【0014】
なお、本実施形態では、図1の紙面手前を電場形成側(あるいは表側)、紙面奥を冷蔵保存庫の壁面側(あるいは裏側)という。以下、高圧パネル10の詳細な構成を説明する。
【0015】
図2において、枠部材101の枠内に平面電極部材201が固定され、平面電極部材201の表側に断熱樹脂板202が固定され、その上に枠部材101の全面を保護シート102が覆っている。枠部材101は例えば繊維強化プラスチック(FRP)等を用いて成形される。断熱樹脂板202は例えば板状に成形された発泡ポリウレタンからなり、その優れた断熱性により冷蔵保存庫内の低温環境から平面電極部材201を保護する。断熱樹脂板202の厚さt1は所定の断熱効果が得られる程度であればよく、ここでは発泡ポリウレタンを用いて15mm程度である。
【0016】
保護シート102は冷蔵保存庫内の水滴、結露あるいは消毒液を用いた洗浄等から平面電極部材201を保護するために設けられており、本実施形態ではたとえばポリカーボネート(PC)からなり厚さt2は約1mmである。平面電極部材201は枠部材101の裏面(壁面)から所定距離dだけ離れた位置に裏面と平行になるように適当な固定手段(タッピングビス等)により固定される。なお所定距離dは45~50mm程度であり、ここではd=46mmである。以下、平面電極部材201について詳述する。
【0017】
図3において、平面電極部材201は長さL2、幅W2の矩形状を有し、高電圧を印加するためのリード線220を有する矩形状の平面電極210と、平面電極210より各辺の長さが長い2枚の矩形状の樹脂板210aおよび210bとからなる。詳しくは、平面電極210を樹脂板210aおよび210bの中心付近に挟んで圧着し、これによってリード線220が露出した状態で平面電極210が樹脂板210aおよび210b内に閉じ込められ、平面電極210の外周から外側の樹脂板外周部211が形成される。なお一例として、長さL2は90~93cm、幅W2は90cm前後である。
【0018】
平面電極210は樹脂板210aおよび210b内に封じ込められることで外部に露出することがなく、平面電極部材201として極めて取り扱いが容易になる。また樹脂で覆われているために外部環境の影響を受けにくくなり、高圧パネルの信頼性を向上させる。
【0019】
樹脂板外周部211には複数の貫通孔212が設けられ、これらの貫通孔212にタッピングビス113を通して平面電極部材201を枠部材101に固定する。本実施形態によれば、平面電極210を樹脂板210aおよび210bに挟んで圧着するだけで、固定するための樹脂板外周部211を同時に形成することができる。この圧着工程で貫通孔212を同時に形成することも可能である。ここでは貫通孔212が樹脂板外周部211の四隅および各辺の中央部に形成されている。なお、平面電極210は軽量で機械的および化学的に丈夫なステンレスメッシュで構成されることが望ましい。本実施形態では平面電極201の厚さは約0.5mmである。また平面電極210を樹脂板210aおよび210bに挟んで圧着して形成された平面電極部剤201の厚さt3はたとえば3mm程度である。樹脂板201aおよび201bにはたとえばABS樹脂を用いることができる。
【0020】
次に図4を参照しながら枠部材101に平面電極部材201および断熱樹脂板202を取り付ける方法の一例を説明する。
【0021】
図4に模式的に示すように、枠部材101の内壁110に囲まれた矩形状の裏側開口部は同じく矩形状の平面電極部材201を収容可能な面積を有する。さらに内壁110には枠部材101の裏面111から距離dだけ離れた位置に平面電極部材201を固定するための内側突出部112が形成されている。内側突出部112は枠部材101の内壁110の全周に設けられ、その矩形の表側開口部には後述するように断熱樹脂板202がはめ込まれる。
【0022】
平面電極部材201は枠部材101の内壁110に沿って裏側から内側突出部112上に載置され、樹脂板外周部211の貫通孔212を通してタッピングビス113により内側突出部112に固定される。これにより平面電極部材201を裏面111から所定距離dだけ離れた位置に確実に固定することが可能になる。平面電極210には高電圧が印加されるので平面電極部材201には脱落しない確実な固定が必要である。ここではタッピングビス113を内側突出部112の樹脂内にねじ込むことで平面電極部材201を簡単、軽量でかつ確実に固定する方法を例示したが、脱落しない確実な固定手段であればよく、たとえば内側突出部112を貫通したボルトナットを用いることもできる。
【0023】
こうして平面電極部材201が枠部材101の内側に固定されると、その上に表側開口部を通して断熱樹脂板202が重ねて配置される。断熱樹脂板202は、たとえば枠部材101の内側突出部112に凹部を形成し、そこにはめ込まれて固定されても良い。最後に断熱樹脂板202の上を含む枠部材101の全面を保護シート102で覆う。
【0024】
上述したように高圧パネル10を構成することで、平面電極部材201が容易かつ確実に枠部材101に取り付け可能となり、さらに断熱樹脂板202および保護シート102により庫内の低温環境や洗浄時の消毒剤の影響から保護される。高圧パネル10の使用方法の一例を図5に示す。
【0025】
図5において、冷蔵保存庫300の向かい合った壁面301に本実施形態による高圧パネル10を必要な枚数だけ配置する。本実施形態によれば、高圧パネル10を壁面301に設置するだけで平面電極部材201を壁面301から距離dだけ離れた位置に確実に配置することができる。例えば20フィートコンテナの場合、本実施形態による高圧パネル10(長さL=2035mm、幅W=940mm、厚さD=60mm)を合計8枚使用することができる。
【0026】
高圧電源401は高圧ケーブル402を通して庫内に設置された各高圧パネル10の平面電極部材201のリード線220に接続されている。高圧電源401は庫内の高圧パネル10の平面電極210に対して高電圧(たとえば2500~7000Vの交流電圧)を印加し、これにより冷蔵保存庫300内の高圧パネル10前方に所定の電場Eが形成される。この電場E内に食品等を配置することで、上述したように冷蔵保存庫内の温度を氷点下数度程度に下げても非凍結状態を維持することができ、食品の鮮度を長期間に渡って維持することができる。なお言うまでもなく、枠部材101、保護シート102、断熱樹脂板202、および樹脂板210a、210bは合成樹脂等の絶縁材料で形成される。
【0027】
上述したように本実施形態による高圧パネル10は枠部材101内に平面電極部材201および断熱樹脂板202を取り付けた簡単な構造であり、上述したように製造が極めて容易である。また軽量であるから高圧パネル10を容易に移動させることができる。高圧パネル10を壁面301に配置するだけで平面電極210を所望の位置に容易に設置することができるので、冷蔵保存庫300内の必要な空間に必要な電場Eを容易に形成することができる。
【0028】
本実施形態による高圧パネル10を用いる冷蔵保存庫は、食品用の冷蔵保管庫には限らず、食品以外にも動物の血液や臓器あるいは微生物等、鮮度を長期間維持する必要があるものの冷蔵保管庫であれば、どのようなものにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は冷蔵庫、冷蔵コンテナ等の冷蔵保存庫内の電場形成に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 高圧パネル
101 枠部材
102 保護シート
110 内壁
111 裏面
112 内側突出部
113 タッピングビス
201 平面電極部材
202 断熱樹脂板
210 平面電極
210a、210b 樹脂板
211 樹脂板外周部
212 貫通孔
220 リード線
300 冷蔵保存庫
301 壁面
401 高圧電源
402 高圧ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5