(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076090
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】エアクリーナ
(51)【国際特許分類】
F02M 35/024 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
F02M35/024 501G
F02M35/024 521A
F02M35/024 521B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186333
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直樹
(57)【要約】
【課題】フィルタにダストをより均一に堆積させることにより吸気をフィルタに均一に通過させて乱流の生成を低減し、フィルタよりも下流に設けられた空気流量検出装置を用いて算出される吸気の流量の正確さが低下することを抑制できるエアクリーナを提供する。
【解決手段】筒状のフィルタ62と、箱状に形成されて、流入口61A1と、流出口61A2と、を有し、内部にフィルタ62を収容するケース61と、流出口61A2に接続された流出管に設けられて流出口から流出する空気の流量に応じた検出信号を出力する空気流量検出装置と、を備え、フィルタ62の内部の空気の流れがフィルタ62の外周に沿って中心軸線回りに旋回する旋回流となるように流入口61A1が設けられており、ケース61に対してフィルタ62が中心軸線A62回りに回転可能となるようにフィルタ62を支持するフィルタ62回転支持機構を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状に形成されて、フィルタを収容するフィルタ収容空間と、外部から空気を前記フィルタ収容空間に流入させる流入口と、前記フィルタ収容空間から外部に空気を流出させる流出口と、を有するケースと、
前記フィルタ収容空間に収容されて自身の中心軸線に沿って延びる筒状の前記フィルタと、
前記流入口から外部に向けて接続された流入管と、
前記流出口から外部に向けて接続された流出管と、
前記流出管に設けられて前記流出口から流出する空気の流量に応じた検出信号を出力する空気流量検出装置と、
を備えて、内燃機関に設けられるエアクリーナであって、
前記中心軸線に沿った前記フィルタの両端部それぞれと前記ケースの内壁との間は、それぞれのシール部材にて密閉されており、
前記フィルタと前記シール部材にて、前記フィルタ収容空間は、前記フィルタの外周面が接している空間であるフィルタ外周空間と、前記フィルタの内周面が接している空間であるフィルタ内周空間と、に仕切られており、
前記流入口は前記フィルタ外周空間と連通され、前記流出口は前記フィルタ内周空間と連通されており、
前記流入口および前記流入管は、前記流入口から前記フィルタ収容空間へと流入した空気の流れが、前記フィルタの外周に沿って前記中心軸線回りに旋回する旋回流となるように設けられており、
前記ケースに対して前記フィルタが前記中心軸線回りに回転可能となるように前記フィルタを支持するフィルタ回転支持機構を有する、
エアクリーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアクリーナであって、
前記フィルタには、前記旋回流を受けて前記中心軸線回りに回転する羽根が固定されている、
エアクリーナ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアクリーナであって、
前記フィルタは、周方向沿って凹凸が繰り返されたひだ状に形成されている、
エアクリーナ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のエアクリーナであって、
前記フィルタ回転支持機構は、前記フィルタを前記ケースに対して前記中心軸線回りに回転させる電動モータを有する、
エアクリーナ。
【請求項5】
請求項4に記載のエアクリーナであって、
さらに、前記電動モータに給電する電源装置と、
前記電源装置から前記電動モータへの給電を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記内燃機関の運転状態に基づいて、前記フィルタを回転させる必要の有無を判定するフィルタ回転要求判定部と、
前記電源装置から前記電動モータへの給電を制御することで、前記電動モータを用いた前記フィルタの前記中心軸線回りの回転の制御するフィルタ回転制御部と、
を有し、
前記フィルタ回転要求判定部にて、前記フィルタを回転させる必要が有ると判定した場合に、前記フィルタ回転制御部にて、記前電動モータを用いて前記フィルタを前記中心軸線回りに既定の角度だけ回転させる、
エアクリーナ。
【請求項6】
請求項5に記載のエアクリーナであって、
前記制御装置は、
さらに、前記空気流量検出装置が出力する前記検出信号に基づいて、前記流出口から流出する空気の流量である流出口空気流量を検出する流出口空気流量検出部と、
前記内燃機関の前記運転状態に基づいて、前記流出口空気流量の下限値である流出口流量下限値を推定する流出口流量下限値推定部と、
を有し、
前記フィルタ回転要求判定部にて、前記流出口空気流量検出部にて検出した前記流出口空気流量が、前記流出口流量下限値推定部にて推定した前記流出口流量下限値よりも小さい場合に、前記フィルタを回転させる必要が有ると判定する、
エアクリーナ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のエアクリーナであって、
前記制御装置は、
前記フィルタ回転要求判定部にて、前記内燃機関が始動されたときに、前記フィルタを回転させる必要が有ると判定する、
エアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に設けられるエアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、内燃機関の吸気経路には、吸気に含まれるダストを濾過して吸気からダストを除去するエアクリーナと、吸気の流量に応じた検出信号を出力する空気流量検出装置と、が設けられている。
【0003】
例えば特許文献1には、円筒状に形成されたケースの内部の空間に、円筒状のフィルタエレメント(フィルタ)が収容されたエアクリーナが記載されている。特許文献1に記載のエアクリーナでは、ケース内にフィルタエレメントが固定されている。円筒状のケースの側面に設けられた流入口から流入した外気は、円筒状のフィルタエレメントの外周面から内周面に向かう方向に通過して濾過され、ケースの上面に設けられた流出口から流出する。
【0004】
また例えば特許文献2には、カムシャフトに連結されて回転駆動される筒状フィルタを有するブローバイガスのオイルセパレータが記載されている。筒状フィルタは、ブローバイガスに含まれているオイルを分離するとともにカムシャフトの回転によって自身の軸回りに高速回転し、分離して自身に付着したオイルを遠心力で吹き飛ばしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-247207号公報
【特許文献2】実開昭61-157114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な内燃機関では、エアクリーナの流出口は、空気流量検出装置が設けられた流出管に接続されている。一般的に、空気流量検出装置を用いて吸気の流量を求める際、所定時間ごとに流量をサンプリングし、さらに平均化等の処理を行って吸気の流量を求めている。ここで、空気流量検出装置で検出する吸気の流量が、乱流等によって大きな変動を繰り返している場合、サンプリングの際、例えば繰り返し変動している上ピークの値を多くサンプリングしてしまった場合や、繰り返し変動している下ピークの値を多くサンプリングしてしまった場合では、平均化等して求めた流量は、真の流量に対する誤差が大きい。つまり、乱流等によって吸気の流量の変動が大きいと、空気流量検出装置を用いて検出した吸気の流量の正確さ(確度)が低下するおそれがある。従って、吸気の流量の変動量は、より小さいことが好ましく、そのために乱流が発生しにくいことが好ましい。
【0007】
特許文献1に記載のエアクリーナでは、フィルタエレメントがケースに固定されているので、ダストは、フィルタエレメントの外周面に均一には堆積せず、ダストの付着が多い部分と少ない部分とが発生する。空気が通過しにくいダストの付着が多い部分では通過する空気の流量が少なくなることにより流速が下がる。従って、特許文献1に記載のエアクリーナでは、ダストの付着の多い部分を通過する空気の流速と、ダストの付着の少ない部分を通過する空気の流速に差が生じることで乱流が生じ易いので、好ましくない。
【0008】
一方、特許文献2に記載の筒状フィルタでは、筒状フィルタに付着したオイルを遠心力で筒状フィルタから離間させるために、筒状フィルタを高速に回転させる。これに伴い、筒状フィルタの周囲の空気は、筒状フィルタとの摩擦により、回転する筒状フィルタとともに筒状フィルタの周に沿って流れる。ここで、筒状フィルタの周囲の空気に遠心力が筒状フィルタの内部から外部へ流れるように働く。これにより、空気が筒状フィルタの外周面から内周面に向かって通過することを妨げてしまい、吸気の流量が低下するおそれがある。従って、特許文献2に記載の筒状フィルタをエアクリーナに適用した場合、吸気の流量が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、フィルタにダストをより均一に堆積させることにより吸気をフィルタに均一に通過させて乱流の生成を低減し、フィルタよりも下流に設けられた空気流量検出装置を用いて算出される吸気の流量の正確さが低下することを抑制できるエアクリーナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の発明は、箱状に形成されて、フィルタを収容するフィルタ収容空間と、外部から空気を前記フィルタ収容空間に流入させる流入口と、前記フィルタ収容空間から外部に空気を流出させる流出口と、を有するケースと、前記フィルタ収容空間に収容されて自身の中心軸線に沿って延びる筒状の前記フィルタと、前記流入口から外部に向けて接続された流入管と、前記流出口から外部に向けて接続された流出管と、前記流出管に設けられて前記流出口から流出する空気の流量に応じた検出信号を出力する空気流量検出装置と、を備えて、内燃機関に設けられるエアクリーナであって、前記中心軸線に沿った前記フィルタの両端部それぞれと前記ケースの内壁との間は、それぞれのシール部材にて密閉されており、前記フィルタと前記シール部材にて、前記フィルタ収容空間は、前記フィルタの外周面が接している空間であるフィルタ外周空間と、前記フィルタの内周面が接している空間であるフィルタ内周空間と、に仕切られており、前記流入口は前記フィルタ外周空間と連通され、前記流出口は前記フィルタ内周空間と連通されており、前記流入口および前記流入管は、前記流入口から前記フィルタ収容空間へと流入した空気の流れが、前記フィルタの外周に沿って前記中心軸線回りに旋回する旋回流となるように設けられており、前記ケースに対して前記フィルタが前記中心軸線回りに回転可能となるように前記フィルタを支持するフィルタ回転支持機構を有する、エアクリーナである。
【0011】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係るエアクリーナであって、前記フィルタには、前記旋回流を受けて前記中心軸線回りに回転する羽根が固定されている、エアクリーナである。
【0012】
次に、第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係るエアクリーナであって、前記フィルタは、周方向沿って凹凸が繰り返されたひだ状に形成されている、エアクリーナである。
【0013】
次に、第4の発明は、上記第1の発明~第3の発明のいずれか1つに係るエアクリーナであって、前記フィルタ回転支持機構は、前記フィルタを前記ケースに対して前記中心軸線回りに回転させる電動モータを有する、エアクリーナである。
【0014】
次に、第5の発明は、上記第4の発明に係るエアクリーナであって、さらに、前記電動モータに給電する電源装置と、前記電源装置から前記電動モータへの給電を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態に基づいて、前記フィルタを回転させる必要の有無を判定するフィルタ回転要求判定部と、前記電源装置から前記電動モータへの給電を制御することで、前記電動モータを用いた前記フィルタの前記中心軸線回りの回転の制御するフィルタ回転制御部と、を有し、前記フィルタ回転要求判定部にて、前記フィルタを回転させる必要が有ると判定した場合に、前記フィルタ回転制御部にて、記前電動モータを用いて前記フィルタを前記中心軸線回りに既定の角度だけ回転させる、エアクリーナである。
【0015】
次に、第6の発明は、上記第5の発明に係るエアクリーナであって、前記制御装置は、さらに、前記空気流量検出装置が出力する前記検出信号に基づいて、前記流出口から流出する空気の流量である流出口空気流量を検出する流出口空気流量検出部と、前記内燃機関の前記運転状態に基づいて、前記流出口空気流量の下限値である流出口流量下限値を推定する流出口流量下限値推定部と、を有し、前記フィルタ回転要求判定部にて、前記流出口空気流量検出部にて検出した前記流出口空気流量が、前記流出口流量下限値推定部にて推定した前記流出口流量下限値よりも小さい場合に、前記フィルタを回転させる必要が有ると判定する、エアクリーナである。
【0016】
次に、第7の発明は、上記第5の発明または第6の発明に係るエアクリーナであって、前記制御装置は、前記フィルタ回転要求判定部にて、前記内燃機関が始動されたときに、前記フィルタを回転させる必要が有ると判定する、エアクリーナである。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、エアクリーナでは、フィルタ回転支持機構が、ケースに対してフィルタが中心軸線回りに回転可能となるようにフィルタを支持している。また、フィルタ収容空間に流入した空気の流れは、フィルタ収容空間にて、フィルタの外周に沿って中心軸線回りに旋回する旋回流となる。その結果、フィルタ収容空間において、旋回流とフィルタの外周面との摩擦により、フィルタが回転する。そして、ダストは、回転するフィルタの外周面に付着してゆくことになるため、ダストをフィルタにより均一に堆積することができる。これにより、フィルタの外周面において、ダストの付着が比較的多い部分と、比較的少ない部分との間で空気の流速の差が生じにくくなり、さらには、フィルタのフィルタ内周空間においても空気の流速の差によって生じる乱流が生じにくくなる。
【0018】
この様に、フィルタの内部のフィルタ内周空間に乱流が生じにくくなるため、空気流量検出装置が設けられている流出管内に流出口から乱流が流入することが抑制される。すなわち、フィルタの外周面にダストが堆積していっても、空気流量検出装置が設けられた流出管内の乱流が生じにくいため、フィルタよりも下流に設けられた空気流量検出装置を用いて算出される吸気の流量の正確さ(確度)が、フィルタの表面にダストが堆積することで、低下することを抑制できる。従って、エアクリーナは、フィルタにダストをより均一に堆積させることにより吸気をフィルタに均一に通過させて乱流の生成を低減し、フィルタよりも下流に設けられた空気流量検出装置を用いて算出される吸気の流量の正確さが低下することを抑制できる。
【0019】
第2の発明によれば、フィルタに固定された羽根が、旋回流を受けてフィルタとともにフィルタの中心軸線回りに回転する。これにより、フィルタがより確実に回転するため、フィルタの表面に均一にダストが堆積させることがより確実となる。
【0020】
第3の発明によれば、フィルタは、周方向沿って凹凸が繰り返されたひだ状に形成されている。フィルタの外周に沿って中心軸線回りに旋回する旋回流を、フィルタの外周面の凹凸が受けることより、フィルタを中心軸線回りにより確実に回転させることができる。従って、フィルタの表面に均一にダストが堆積させることがより確実となる。
【0021】
第4の発明によれば、エアクリーナにおいて、電動モータを駆動させて、電動モータの駆動力によりフィルタをフィルタの中心軸線回りに回転させることができる。これによりフィルタを中心軸線回りにより確実に回転させることができるため、フィルタの表面に均一にダストが堆積させることがより確実となる。
【0022】
第5の発明によれば、フィルタを回転させる必要が有る場合に、フィルタをフィルタの中心軸線回りに回転させることができる。このため、フィルタを中心軸線回りにより確実に回転させることができる。従って、フィルタの表面により均一にダストを堆積させることがより確実となる。
【0023】
第6の発明によれば、制御装置は、流出口空気流量検出部にて検出した流出口から流出する空気の流量である流出口空気流量が、流出口流量下限値推定部にて推定した流出口空気流量の下限値である流出口流量下限値よりも小さい場合に、フィルタ回転制御部にて、電動モータを用いてフィルタを中心軸線回りに既定の角度だけ回転させる。この様に、フィルタの表面にダストが不均一に堆積していると考えることができる、流出口空気流量が流出口流量下限値よりも小さくなった場合に、フィルタを既定の角度だけ回転させる。従って、フィルタの表面により均一にダストを堆積させることがより確実となる。
【0024】
第7の発明によれば、制御装置は、内燃機関が始動されたときに、フィルタ回転要求判定部にて、フィルタを回転させる必要が有ると判定し、さらに、フィルタ回転制御部にて、電動モータを用いてフィルタを中心軸線回りに既定の角度だけ回転させる。これにより、フィルタを中心軸線回りにより確実に回転させることができる。従って、フィルタの表面により均一にダストを堆積させることがより確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の実施形態に係るエアクリーナを備える内燃機関システムの概略構成を説明する図である。
【
図2】第1の実施形態に係るエアクリーナの概略斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係るエアクリーナの概略断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係るエアクリーナの概略断面図である。
【
図7】第3の実施形態に係るエアクリーナを備える内燃機関システムの概略構成を説明する図である。
【
図8】第3の実施形態に係るエアクリーナの概略断面図である。
【
図9】第3の実施形態に係るエアクリーナの制御装置が実行する処理を説明するフローチャートである。
【
図10】第4の実施形態に係るエアクリーナの制御装置が実行する処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る第1の実施形態のエアクリーナ60~第4の実施形態のエアクリーナ80について、図面を用いて説明する。以下で説明する様に、第1の実施形態のエアクリーナ60~第4の実施形態のエアクリーナ80は、内燃機関10に設けられるエアクリーナであり、内燃機関10を備える内燃機関システム1(
図1及び
図7参照)に設けられている。ここで、内燃機関10を、内燃機関の例として、車両に設けられたディーゼルエンジンとする。
【0027】
●[第1の実施形態の内燃機関システム1の構成(
図1~
図2)]
まず、
図1を用いて、第1の実施形態のエアクリーナ60が設けられている内燃機関システム1について説明する。詳細は後述するが、
図3に示すように、第1の実施形態のエアクリーナ60の特徴は、旋回流を受けてフィルタ62の中心軸線A62回りに回転する羽根がフィルタ62に固定されていることである。以下の説明では、内燃機関システム1について、吸気側から排気側に向かって順に説明する。なお、吸気管11A、11B、吸気マニホルド11Cにて吸気経路が形成され、排気マニホルド12A、排気管12Bにて排気経路が形成されている。
【0028】
吸気管11Aの流入側には、エアクリーナ60、エアクリーナ60の有する空気流量検出装置65、吸気温度検出装置21が設けられている。空気流量検出装置65は、内燃機関10(ディーゼルエンジン)が吸入した吸気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。吸気温度検出装置21は、吸気の温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。エアクリーナ60の構成の詳細は後述するが、エアクリーナ60は、内部に設けられたフィルタ62で吸気を濾過する。
【0029】
吸気管11Aの流出側は、スロットル装置47の流入側に接続されている。そしてスロットル装置47の流出側は、吸気管11Bの流入側に接続されている。
【0030】
スロットル装置47は、制御装置50からの制御信号に基づいて吸気管11B(吸気管11A)の開度を調整するスロットルバルブ47Vを駆動し、吸気量を調整可能である。制御装置50は、スロットル開度検出装置47S(例えば、スロットル開度センサ)からの検出信号と目標スロットル開度に基づいて、スロットル装置47に制御信号を出力して吸気管11B(吸気管11A)に設けられたスロットルバルブ47Vの開度を調整する。
【0031】
アクセルペダル踏込量検出装置25は、例えばアクセルペダル踏込角度センサであり、アクセルペダルに設けられている。アクセルペダル踏込量検出装置25は、運転者が操作するアクセルペダルの踏込量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。制御装置50は、アクセルペダル踏込量検出装置25からの検出信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出することが可能である。
【0032】
吸気管11Bの下流側は、吸気マニホルド11Cの流入側に接続されている。吸気マニホルド11Cの流出側は内燃機関10の流入側に接続されている。
【0033】
内燃機関10は複数のシリンダ45Aを有しており、インジェクタ43Aが、それぞれのシリンダ45Aに設けられている。インジェクタ43Aには、コモンレール(図示省略)を介して燃料が供給されており、インジェクタ43Aは、制御装置50からの制御信号によって駆動され、それぞれのシリンダ45A内に燃料を噴射する。
【0034】
内燃機関10には、回転検出装置23等が設けられている。回転検出装置23は、例えば回転センサであり、内燃機関10のクランクシャフト(不図示)の回転数(すなわち、エンジン回転数)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0035】
内燃機関10の排気側には排気マニホルド12Aの流入側が接続され、排気マニホルド12Aの流出側には排気管12Bの流入側が接続されている。排気管12Bの流出側は排気浄化装置30の流入側に接続されている。図示省略するが、内燃機関10はディーゼルエンジンであるので、排気浄化装置30には、酸化触媒、微粒子捕集フィルタ(Diesel Particulate Filter)、選択式還元触媒等が含まれている。
【0036】
排気管12Bには、排気温度検出装置27が設けられている。排気温度検出装置27は、例えば排気温度センサであり、排気温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0037】
制御装置50は、CPU51、RAM52、記憶装置53、EEPROM54、タイマ55等を有している。RAM52、記憶装置53、EEPROM54、タイマ55等は、各種のバスにてCPU51と接続されている。記憶装置53は、例えばFlashROM等の記憶装置であり、内燃機関10を運転するためのプログラムやデータ等が記憶されている。
【0038】
制御装置50は、
図1に示す各検出装置からの検出信号に基づいて、上記のインジェクタ43A、スロットル装置47を含めた各種のアクチュエータを制御する。制御装置50は、
図1に示す各検出装置や各アクチュエータに限定されず、上記の検出装置を含めた各種の検出装置からの検出信号や、各アクチュエータの制御状態に基づいて、内燃機関10を運転可能であるとともに、内燃機関10の運転状態を検出可能である。
【0039】
●[第1の実施形態のエアクリーナ60の構成(
図2~
図4)]
次に第1の実施形態のエアクリーナ60について、
図2~
図4を用いて説明する。
図2は、エアクリーナ60の概略斜視図である。
図3は、エアクリーナ60の概略断面図である。
図4は、
図3のIV-IV断面図である。
図3に示すように、エアクリーナ60は、ケース61と、フィルタ62と、フィルタ回転支持機構63と、シール部材64と、空気流量検出装置65とを備えている。
図2に示すように、外部の空気は、ケース61に接続された流入管611からケース61に流入し、ケース61の内部にてケース61に支持されたフィルタ62によって濾過され、さらに、ケース61に接続された流出管612から外部に流出する。流出管612には、空気流量検出装置65が設けられており、流入管611および流出管612は、
図1に記載の吸気管11Aの一部である。
【0040】
ケース61は、
図2及び
図3に示すように、箱状に形成されている。また、ケース61は、本体部61Aと、本体部61Aに係脱自在に係合する蓋部61Bとを有する。ケース61の本体部61Aは、流入口61A1と、流出口61A2と、を有する。また、流入管611は、流入口61A1から外部に向けて接続されている。また、流出管612は流出口61A2から外部に向けて接続されている。
【0041】
ケース61の内部の空間は、フィルタ62を収容するフィルタ収容空間61Cとなっている。流入口61A1は、外部に向けて接続された流入管611に接続されており、流入管611から流入口61A1に流入する外部からの空気をフィルタ収容空間61Cに流入させる。
図2及び
図4に示す様に、流入口61A1(
図2参照)および流入管611は、流入口61A1からフィルタ収容空間61Cへと流入した空気の流れが、フィルタ62の外周に沿って中心軸線A62回りに旋回する旋回流となるように設けられている。このために、流入口61A1(
図2参照)は、流入管611の軸線(不図示)が、フィルタ62の中心軸線A62から外れるように設けられている。
【0042】
流出口61A2は、
図2及び
図3に示すように、流出口61A2から外部に向けて接続された流出管612に接続されており、
図3に示すように、フィルタ収容空間61Cから外部に空気を流出させる。流出管612の一端部は、流出口61A2からフィルタ収容空間61Cに差し込まれている。ここで、流出管612のフィルタ収容空間61Cに差し込まれている部分は、フィルタ62と同軸となるようフィルタ62に挿通されており、多数の孔612Aが設けられている。これによりフィルタ62の内側では、空気が多数の孔612Aから流出管612内に流入する。また、流出管612のフィルタ収容空間61Cに差し込まれている部分と、流出管612のフィルタ収容空間61Cに差し込まれている部分の周囲に設けられている第1スラストベアリング631、第1円板状蓋部632、及び第2円板状蓋部635との間それぞれには、隙間が設けられている。
【0043】
フィルタ62は、
図3に示すように、ケース61のフィルタ収容空間61Cに収容されて自身の中心軸線A62に沿って延びる円筒状(
図2参照)に形成されている。フィルタ62の内部には、流出管612が差し込まれている。フィルタ62は、不織布で形成されている。フィルタ62を、ろ紙や、フェルトや、発泡スポンジや、多孔質の金属板などの通気性を有する材質で形成してもよい。後述する様に、フィルタ62は、フィルタ回転支持機構63の第1円板状蓋部632の外周壁632Aと内周壁632Bの間に挟まれて支持されていると共に、第2円板状蓋部635の外周壁635Aと内周壁635Bの間に挟まれて支持されている。
【0044】
フィルタ回転支持機構63は、
図3に示すように、第1スラストベアリング631と、第1円板状蓋部632と、羽根633と、第2スラストベアリング634と、第2円板状蓋部635と、を有し、以下に説明する様に、ケース61に対してフィルタ62が中心軸線A62回りに回転可能となるようにフィルタ62を支持している。これらの、第1スラストベアリング631、第1円板状蓋部632、羽根633、第2スラストベアリング634、第2円板状蓋部635は、中心がフィルタ62の中心軸線A62と重なるように設けられている。
【0045】
第1スラストベアリング631は、輪状に形成されており、その中心が中心軸線A62に重なるように設けられている。第1スラストベアリング631は、中央部には流出管612が挿通されており、一端側がケース61の本体部61Aの内壁面に保持されており、他端側が第1円板状蓋部632を支持している。第1スラストベアリング631は、内部に中心軸線A62の周方向に並ぶ複数の球を有するベアリング(スラスト玉軸受)であり、ケース61に対して第1円板状蓋部632が中心軸線A62回りに回転可能となるように、第1円板状蓋部632を支持している。
【0046】
第1円板状蓋部632は、
図3及び
図4に示すように、輪状に形成されており、その中心が中心軸線A62に重なるように設けられている。そして、
図4に示すように、第1円板状蓋部632の外周側には、複数の羽根633が、周方向に間隔を開けて設けられている。また、
図3に示すように、第1円板状蓋部632は、上述した様に、第1スラストベアリング631によって中心軸線A62回りに回転可能に支持されている。第1円板状蓋部632は、第1スラストベアリング631とは反対側の面に、中心軸線A62回りに一周する、外周壁632A、および外周壁632Aの内側に設けられた内周壁632Bが設けられている。外周壁632Aおよび内周壁632Bは、間にフィルタ62を挟んで、フィルタ62を支持している。
【0047】
羽根633は、上述したが、
図4に示すように、第1円板状蓋部632の外周側に設けられている。羽根633は複数設けられており、複数の羽根633は、第1円板状蓋部632の外周側かつケース61の内壁側に、第1円板状蓋部632の周方向に間隔を開けて、放射状に設けられている。以上の様に複数の羽根633が設けられていることにより、複数の羽根633は、フィルタ62の外周に沿って中心軸線A62回りに旋回する上述の旋回流受けて中心軸線A62回りに回転する。また、複数の羽根633が設けられている第1円板状蓋部632は、フィルタ62を支持している。以上を換言すれば、フィルタ62には、旋回流を受けて中心軸線A62回りに回転する羽根633が固定されている。
【0048】
第2スラストベアリング634は、
図3に示すように、ケース61の内部において第1スラストベアリング631と対向しており、第1スラストベアリング631と同様に設けられている。すなわち、第2スラストベアリング634は、輪状に形成されており、その中心が中心軸線A62に重なるように設けられている。第2スラストベアリング634は、一端側がケース61の蓋部61Bの内壁面に保持されており、他端側が第2円板状蓋部635を支持している。第2スラストベアリング634は、内部に中心軸線A62の周方向に並ぶ複数の球を有するベアリング(スラスト玉軸受)であり、ケース61に対して第2円板状蓋部635が中心軸線A62回りに回転可能となるように、第2円板状蓋部635を支持している。
【0049】
第2円板状蓋部635は、ケース61の内部において第1円板状蓋部632と対向しており、円板状に形成されている。第2円板状蓋部635は、第1円板状蓋部632と同様に、第2円板状蓋部635の外周側に周方向に間隔を開けて設けられている複数の羽根633と、第2スラストベアリング634とは反対側の面(フィルタ62側の面)に、中心軸線A62回りに一周する、外周壁635Aと、外周壁635Aの内側に設けられた内周壁635Bと、が設けられている。外周壁635Aおよび内周壁635Bは、間にフィルタ62を挟んで、フィルタ62を支持している。
【0050】
また、第2円板状蓋部635は、第1円板状蓋部632と異なり、内部に流出管612が挿通されていないとともに、第2スラストベアリング634側に、第2スラストベアリング634の中心の孔に収まる円柱状の凸部を有している。第2円板状蓋部635は、凸部635Cが第2スラストベアリング634の中心の孔に収まることで、第2スラストベアリング634の中心が中心軸線A62からずれることが抑制されている。これにより、中心軸線A62から、第1スラストベアリング631および第1円板状蓋部632の中心がずれることが抑制されている。また、第2円板状蓋部635は、第2スラストベアリング634とは反対側の面(フィルタ62側の面)において、流出管612の端部との間に隙間が設けられている。
【0051】
以上で説明した様に、フィルタ62は、
図3に示すように、流出口61A2側では、第1円板状蓋部632を介して第1スラストベアリング631に、ケース61に対して中心軸線A62回りに回転可能となるように支持されている。また、フィルタ62は、流出口61A2の反対側では、第2円板状蓋部635を介して第2スラストベアリング634に、ケース61に対して中心軸線A62回りに回転可能となるように支持されている。この様に、フィルタ回転支持機構63は、第1スラストベアリング631、第1円板状蓋部632、第2スラストベアリング634、第2円板状蓋部635を有し、ケース61に対してフィルタ62が中心軸線A62回りに回転可能となるようにフィルタ62を支持している。
【0052】
シール部材64は、
図3に示すように、ケース61の本体部61Aと第1円板状蓋部632との間に設けられた第1シール部641と、ケース61の蓋部61Bと第2円板状蓋部635との間とに設けられた第2シール部642を有している。第1シール部641および第2シール部642は、輪状のシリコンゴムで形成されて、それぞれがケース61の内壁61D(本体部61Aの内壁、蓋部61Bの内壁)に保持されている。第1シール部641は、第1スラストベアリング631の外側を一周する環状に形成されている。第1シール部641は、ケース61の本体部61Aの内壁(ケース61の内壁61D)に保持されており、第1円板状蓋部632側にはグリースが塗布されている。これにより、第1シール部641は、第1円板状蓋部632を摺動可能に支持するとともに、ケース61の本体部61Aと第1円板状蓋部632との間を密閉している。ここで、第1円板状蓋部632は、上述した様に、フィルタ62を支持しているため、第1シール部641は、中心軸線A62に沿ったフィルタ62の第1円板状蓋部632側の端部と、ケース61の内壁61Dとを密閉しているとも言える。
【0053】
また、第2シール部642は、第1シール部641と同様に、第2スラストベアリング634の外側を一周する環状に形成されている。第2シール部642は、ケース61の蓋部61Bの内壁(ケース61の内壁61D)に保持されており、第2円板状蓋部635側にはグリースが塗布されている。これにより、第2シール部642は、第2円板状蓋部635を摺動可能に支持するとともに、ケース61の蓋部61Bと第2円板状蓋部635との間を密閉している。ここで、第2円板状蓋部635は、上述した様に、フィルタ62を支持しているため、第2シール部642は、中心軸線A62に沿ったフィルタ62の第2円板状蓋部635側の端部と、ケース61の内壁61Dとを密閉しているとも言える。以上の様に、中心軸線A62に沿ったフィルタ62の両端部それぞれとケース61の内壁61Dとの間は、それぞれのシール部材64(第1シール部641、第2シール部642)にて密閉されている。
【0054】
図3に示すように、フィルタ62とシール部材64(第1シール部641および第2シール部642)にて、フィルタ収容空間61Cは、フィルタ62の外周面62Aが接している空間であるフィルタ外周空間61CAと、フィルタ62の内周面62Bが接している空間であるフィルタ内周空間61CBと、に仕切られている。また、流入口61A1はフィルタ外周空間61CAと連通され、流出口61A2はフィルタ内周空間61CBと連通されている。
【0055】
空気流量検出装置65は、上述したが、流出管612に設けられており、流出口61A2から流出する空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。制御装置50は、空気流量検出装置65からの検出信号に基づいて、流出口61A2から流出する空気の流量(吸気の流量)を検出できる。この空気流量検出装置65用いた吸気の流量の検出では、制御装置50は、所定時間ごとに流量をサンプリングし、さらに平均化の処理を行っている。以上の様にエアクリーナ60が構成されていることにより、エアクリーナ60は、以下に説明する作用効果を奏する。
【0056】
●[第1の実施形態のエアクリーナ60の作用効果について(
図3、
図4)]
図4に示すように、外部の空気は、流入管611を流れ、ケース61の流入口61A1からフィルタ収容空間61Cに流入する。そして、フィルタ収容空間61Cに流入した空気の流れは、フィルタ収容空間61Cにて、フィルタ62の外周に沿って中心軸線A62回りに旋回する旋回流となる。フィルタ収容空間61Cにて、空気は、フィルタ62の外周に沿って中心軸線A62回りに旋回するとともに、フィルタ62を通過して濾過される。ここで、フィルタ62に固定された複数の羽根633(
図3及び
図4参照)が、旋回流を受けてフィルタ62とともにフィルタ62の中心軸線A62回りに回転する。これに伴い、フィルタ62は中心軸線A62回りに回転する。また、
図3に示すように、さらに、空気は、フィルタ内周空間61CBにて、流出管612の多数の孔612Aから流出管612内に流入し、流出管612内にてケース61の流出口61A2からさらに下流側へ流れる。ここで、流出管612に設けられている空気流量検出装置65は、流出口61A2から流出する空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0057】
一般的に、空気流量検出装置を用いて吸気の流量を求める際、所定時間ごとに流量をサンプリングし、さらに平均化等の処理を行って吸気の流量を求めている。ここで、空気流量検出装置で検出する吸気の流量が、乱流等によって大きな変動を繰り返している場合、サンプリングの際、例えば繰り返し変動している上ピークの値を多くサンプリングしてしまった場合や、繰り返し変動している下ピークの値を多くサンプリングしてしまった場合では、平均化等して求めた流量は、真の流量に対する誤差が大きい。つまり、乱流等によって吸気の流量の変動が大きいと、空気流量検出装置を用いて検出した吸気の流量の正確さ(確度)が低下するおそれがある。従って、吸気の流量の変動量は、より小さいことが好ましく、そのために流出管612内にて乱流が発生しにくいことが好ましい。
【0058】
仮にフィルタ62がケースに固定されている場合には、ダストは、フィルタ62の外周面62Aに均一には堆積せず、ダストの付着が多い部分と少ない部分とが発生する。空気が通過しにくいダストの付着が多い部分では通過する空気の流量が少なくなることにより流速が下がる。これにより、ダストの付着の多い部分を通過する空気の流速と、ダストの付着の少ない部分を通過する空気の流速に差が生じることで乱流が生じ易くなる。このため、フィルタ62の外周面62Aにダストが堆積してゆくにつれて、空気流量検出装置65が設けられた流出管612内の乱流がより激しくなるため、空気流量検出装置65を用いて検出した吸気の流量の正確さ(確度)が低下してゆくおそれがある。
【0059】
これに対して、エアクリーナ60では、フィルタ回転支持機構63が、ケース61に対してフィルタ62が中心軸線A62回りに回転可能となるようにフィルタ62を支持している。また、フィルタ収容空間61Cに流入した空気の流れは、フィルタ収容空間61Cにて、フィルタ62の外周に沿って中心軸線A62回りに旋回する旋回流となる。その結果、フィルタ収容空間61Cにおいて、旋回流とフィルタ62の外周面62Aとの摩擦により、フィルタ62が回転する。そして、ダストは、回転するフィルタ62の外周面62Aに付着してゆくことになるため、ダストをフィルタ62により均一に堆積することができる。これにより、フィルタ62の外周面62Aにおいて、ダストの付着が比較的多い部や、比較的少ない部分との間で空気の流速の差が生じにくくなり、さらには、フィルタ62のフィルタ内周空間61CBにおいても空気の流速の差によって生じる乱流が生じにくくなる。
【0060】
この様に、フィルタ62の内部のフィルタ内周空間61CBに乱流が生じにくくなるため、空気流量検出装置65が設けられている流出管612内に流出口61A2から乱流が流入することが抑制される。すなわち、フィルタ62の外周面62Aにダストが堆積していっても、空気流量検出装置65が設けられた流出管612内の乱流が生じにくいため、フィルタ62よりも下流に設けられた空気流量検出装置を用いて算出される吸気の流量の正確さ(確度)が、フィルタ62の表面にダストが堆積することで、低下することを抑制できる。従って、エアクリーナ60は、フィルタ62にダストをより均一に堆積させることにより、フィルタ62よりも下流に設けられた空気流量検出装置65を用いて算出される吸気の流量の正確さが、フィルタ62の表面にダストが堆積することで、低下することを抑制できる。
【0061】
また、フィルタ62に固定された羽根633が、旋回流を受けてフィルタ62とともにフィルタ62の中心軸線A62回りに回転する。これにより、フィルタ62がより確実に回転するため、フィルタ62の外周面62A(表面)により均一にダストを堆積させることがより確実となる。ひいては、フィルタ62よりも下流に設けられた空気流量検出装置65を用いて算出される吸気の流量の正確さが、フィルタ62の表面にダストが堆積することで、低下することをより確実に抑制できる。
【0062】
さらに、エアクリーナ60は、フィルタ62を回転させて、フィルタ62の外周面62A(表面)により均一にダストを堆積させる。従来のフィルタが固定されたエアクリーナでは、フィルタが固定されていることによりフィルタの外周面に均一にダストが堆積せず、このような従来のエアクリーナのフィルタに比べて、エアクリーナ60はそのフィルタ62をより長寿命に使用することができる。
【0063】
●[第2の実施形態のエアクリーナ70の構成(
図5、
図6)]
次に
図5及び
図6を用いて、第2の実施形態のエアクリーナ70について、まず構成を説明する。
図5は、エアクリーナ70の概略断面図である。
図6は、
図5のVI-VI断面図である。第2の実施形態のエアクリーナ70は、第1の実施形態のエアクリーナ60の有する羽根633を省き、フィルタ62の代わりに、周方向沿って凹凸が繰り返されたひだ状に形成されているフィルタ72を有する。そして、エアクリーナ70が設けられている本実施形態の内燃機関システム1のエアクリーナ70以外の部分の構成は、
図1を用いて上述した第1の実施形態の内燃機関システム1と同じである。この様に、エアクリーナ70が設けられているのは、内燃機関システム1(
図1参照)である。以下の第2の実施形態のエアクリーナ70の説明において、第1の実施形態との相違点について主に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0064】
図6に示すように、エアクリーナ70のフィルタ72は、襞折りされており、材質は第1の実施形態のフィルタ62と同じである。これにより、
図6に示すように、フィルタ72の外周面72Aは、周方向に沿って、凸部72AAと凹部72ABとが交互に並んでいる。これに伴い、第1の実施形態のエアクリーナ60の第1円板状蓋部632(
図3参照)に相当する、エアクリーナ70の第1円板状蓋部732(
図5参照)は、第1円板状蓋部632の周方向に一周する内周壁632B(
図3参照)に対応する、複数の内周支持棒732Bがフィルタ72の凸部72AAの内側に設けられている。第1円板状蓋部732は内周支持棒732Bを、フィルタ72の凸部72AAと同数有しており、内周支持棒732Bは、フィルタ72の凸部72AAのそれぞれの内側に設けられている。なお、エアクリーナ70の第1円板状蓋部732の外周壁732Aは、第1の実施形態のエアクリーナ60の第1円板状蓋部632の外周壁632Aと同様に形成されている。そして、第1円板状蓋部732の外周壁732A、および複数の内周支持棒732Bは、フィルタ62を挟んで支持している。
【0065】
また、第1円板状蓋部732の内周支持棒732Bと同様に、第1の実施形態のエアクリーナ60の第第2円板状蓋部635に相当する、エアクリーナ70の第2円板状蓋部735は、第2円板状蓋部635の内周壁635Bに代えて、内周支持棒735Bを、フィルタ72の凸部72AAと同数有している。内周支持棒735Bは、フィルタ72の凸部72AAのそれぞれの内側に設けられている。そして、第2円板状蓋部735の外周壁735A、および複数の内周支持棒735Bは、フィルタ62を挟んで支持している。なお、エアクリーナ70の第2円板状蓋部735の外周壁735Aおよび凸部735Cは、第1の実施形態のエアクリーナ60の第2円板状蓋部635の外周壁635Aおよび凸部635Cと同様に形成されている。
【0066】
●[第2の実施形態のエアクリーナ70の作用効果について(
図6)]
図6に示すように、エアクリーナ70は、フィルタ72が周方向沿って、凸部72AAと凹部72ABと(凹凸)が繰り返されたひだ状に形成されている。フィルタ72の外周に沿って中心軸線A62回りに旋回する旋回流を、フィルタ72の外周面72Aの凸部72AAと凹部72ABと(凹凸)が受けることより、フィルタ72を中心軸線A62回りにより確実に回転させることができる。従って、フィルタ72の表面に均一にダストを堆積させることがより確実となる。ひいては、フィルタ72よりも下流に設けられた空気流量検出装置65を用いて算出される吸気の流量の正確さが、フィルタ72の表面にダストが堆積することで、低下することをより確実に抑制できる。
【0067】
さらに、エアクリーナ70は、フィルタ72を回転させて、フィルタ72の外周面72A(表面)により均一にダストを堆積させる。従来のフィルタが固定されたエアクリーナでは、フィルタが固定されていることによりフィルタの外周面に均一にダストが堆積せず、このような従来のエアクリーナのフィルタに比べて、エアクリーナ70はそのフィルタ72をより長寿命に使用することができる。
【0068】
●[第3の実施形態のエアクリーナ80の構成(
図7、
図8)]
次に
図7及び
図8を用いて、第3の実施形態のエアクリーナ80について、まず構成を説明する。
図7はエアクリーナ80を備える本実施形態の内燃機関システム1の概略構成を説明する図である。
図8はエアクリーナ80の概略断面図である。以下の第3の実施形態のエアクリーナ80の説明において、第1の実施形態との相違点について主に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0069】
図7及び
図8に示すように、第3の実施形態のエアクリーナ80は、第1の実施形態のエアクリーナ60の有する羽根633を省き、第1の実施形態のエアクリーナ60のフィルタ回転支持機構63に対応する、フィルタ回転支持機構83は、フィルタ62をケース61に対して中心軸線A62回りに回転させる電動モータ86を有する。電動モータ86の回転軸は、
図8に示すように、第2円板状蓋部835(第1の実施形態のエアクリーナ60の第2円板状蓋部635に対応する)の凸部835Cに接続されており、凸部835Cを介して第2円板状蓋部835に支持されているフィルタ62を回転させることができる。また、第3の実施形態のエアクリーナ80は、電動モータ86に給電する電源装置87と、電源装置87から電動モータ86への給電を制御する制御装置50(エアクリーナ80の制御装置50は、内燃機関システム1の制御装置50を兼ねる)と、を有する。
【0070】
また、
図8に示すように、エアクリーナ80の第1円板状蓋部832は、第1の実施形態のエアクリーナ60の第1円板状蓋部632に相当し、外周壁632Aと同様の外周壁832Aと、内周壁632Bと同様の内周壁832Bを有し、外周壁832A及び内周壁832Bはフィルタ62を挟んで支持している。また、第1の実施形態のエアクリーナ60の第1円板状蓋部632に相当する、エアクリーナ80の第2円板状蓋部835は、外周壁635Aと同様の外周壁835Aと、内周壁635Bと同様の内周壁835Bを有し、外周壁835A及び内周壁835Bはフィルタ62を挟んで支持している。
【0071】
図7に示すように、制御装置50は、フィルタ回転要求判定部51Aと、フィルタ回転制御部51Bと、流出口空気流量検出部51Cと、流出口流量下限値推定部51Dとを有する。フィルタ回転要求判定部51Aは、内燃機関10の運転状態に基づいて、フィルタ62を回転させる必要の有無を判定する。フィルタ回転制御部51Bは、電源装置87から電動モータ86への給電を制御することで、電動モータ86を用いたフィルタ62の中心軸線A62回りの回転を制御する。流出口空気流量検出部51Cは、空気流量検出装置65が出力する検出信号に基づいて、流出口61A2から流出する空気の流量である流出口空気流量を検出する。流出口流量下限値推定部51Dは、内燃機関10の運転状態に基づいて、流出口空気流量の下限値である流出口流量下限値を推定する。
【0072】
そして、制御装置50は、以下に説明するように、
図9にフローチャートを示す処理を実行する。
図9にフローチャートを示す処理の特徴は、制御装置50は、フィルタ回転要求判定部51Aにて、流出口空気流量検出部51Cにて検出した流出口空気流量が、流出口流量下限値推定部51Dにて推定した流出口流量下限値よりも小さい場合に、フィルタ62を回転させる必要が有ると判定する処理を実行することにある。
【0073】
●[第3の実施形態の制御装置50の処理手順(
図9)]
次に、第3の実施形態の制御装置50の処理手順について説明する。制御装置50(CPU51(
図7参照))は、起動されると、タイマ55が計測する計測時間をリセットし(計測時間=0)、その後、例えば所定時間間隔(数10[ms]間隔)にて
図9に示す処理を起動する。制御装置50は、
図9にフローチャートを示す処理を起動すると、ステップS010へ処理を進める。
【0074】
ステップS010にて制御装置50は、タイマ55の計測時間が既定の時間である既定待機時間(例えば20ms)より大きい(計測時間>既定待機時間)か否かを判定し、計測時間が既定待機時間より大きい(計測時間>既定待機時間)と判定した場合(Yes)にはステップS020に処理を進め、計測時間が既定待機時間以下(計測時間≦既定待機時間)と判定した場合(No)には
図9のフローチャートに示す処理を終了する。なお、計測時間が既定待機時間以下(計測時間≦既定待機時間)の場合(ステップS010:No)は、内燃機関10が始動した直後や、フィルタ62を既定の角度回転させて(後述のステップS050)から既定待機時間たっていないときであり、フィルタ62を回転させる必要がないと考えることができるため、フィルタ62を回転させることなく、
図9のフローチャートに示す処理を終了する。
【0075】
ステップS020にて制御装置50は、内燃機関10の運転状態を検出して、流出口流量下限値を推定し、ステップS030に処理を進める。ここで、上述した様に、流出口流量下限値とは、制御装置50が、内燃機関10の運転状態に基づいて推定した、流出口空気流量の下限値である。
図1を用いて上述した様に、制御装置50は、
図7に示す各検出装置や各アクチュエータに限定されず、上記の検出装置を含めた各種の検出装置からの検出信号や、各アクチュエータの制御状態に基づいて、内燃機関10の運転状態を検出可能である。
【0076】
なお、ステップS020にて内燃機関10の運転状態に基づいて、流出口空気流量の下限値である流出口流量下限値を推定する制御装置50(CPU51)は、流出口流量下限値推定部51Dに相当する。
【0077】
ステップS030にて制御装置50は、空気流量検出装置65を用いて流出口空気流量を検出し、ステップS040に処理を進める。ここで、上述した様に、空気流量検出装置65(
図8参照)は流出管612に設けられており、流出口61A2から流出する空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。制御装置50は、空気流量検出装置65からの検出信号に基づいて、流出口61A2から流出する空気の流量(吸気の流量)を検出できる。
【0078】
なお、ステップS030にて、空気流量検出装置を用いて流出口空気流量を検出する制御装置50(CPU51)は、空気流量検出装置65が出力する検出信号に基づいて、流出口61A2から流出する空気の流量である流出口空気流量を検出する流出口空気流量検出部51Cに相当する。
【0079】
ステップS040にて制御装置50は、ステップS030にて検出した流出口空気流量が、ステップS020にて推定した流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)か否かを判定し、流出口空気流量が流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)と判定した場合(Yes)にはステップS050に処理を進め、流出口空気流量が流出口流量下限値以上((流出口空気流量≧流出口流量下限値)と判定した場合(No)には
図9のフローチャートに示す処理を終了する。
【0080】
ここで、流出口空気流量が流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)と判定した場合(ステップS040:Yes)には、フィルタ62に偏ってダストが堆積したことによりフィルタ62の通気性が低下しており、フィルタ62を回転させればフィルタ62の通気性を回復させることができると考えられる。そこで、以下に説明する様に、流出口空気流量が流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)と判定した場合(ステップS040:Yes)には、続くステップS050にて、フィルタ62を回転させる。
【0081】
一方、流出口空気流量が流出口流量下限値以上(流出口空気流量≧流出口流量下限値)と判定した場合(ステップS040:No)には、ダストは十分均一にフィルタ62に堆積しており、フィルタ62を回転させる必要がないと考えることができる。このため、フィルタ62を回転させることなく
図9のフローチャートに示す処理を終了する。
【0082】
なお、ステップS040にて、ステップS030にて検出した流出口空気流量が、ステップS020にて推定した流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)か否かを判定する。ここで、流出口空気流量が流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)との判定(ステップS040:Yes)は、フィルタ62を回転させる必要が有るとの判定をしたことを意味しており、続くステップS050にて、フィルタ62を既定の角度(例えば、15°)回転させる。一方、流出口空気流量が流出口流量下限値以上((流出口空気流量≧流出口流量下限値)との判定(ステップS040:No)は、フィルタ62を回転させる必要が無いとの判定をしたことを意味しており、フィルタ62を回転させることなく
図9のフローチャートに示す処理を終了する。この様に、ステップS040にて、制御装置50が実行する、流出口空気流量が流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)か否かの判定は、内燃機関10の運転状態に基づいて、フィルタ62を回転させる必要の有無の判定である。従って、ステップS040にて、流出口空気流量が流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)か否かを判定する制御装置50(CPU51)は、内燃機関10の運転状態に基づいて、フィルタ62を回転させる必要の有無を判定するフィルタ回転要求判定部51Aに相当する。
【0083】
ステップS050にて制御装置50は、電動モータ86を用いてフィルタを既定の角度回転させて、ステップS060に処理を進める。なお、上述した様に、制御装置50は、電源装置87から電動モータ86への給電を制御することで、電動モータ86を用いたフィルタ62の中心軸線A62回りの回転の制御することができる。そして、制御装置50は、電動モータ86を用いて62を中心軸線A62回りに既定の角度だけ回転させることができる。
【0084】
なお、ステップS050にて、電動モータ86を用いてフィルタを既定の角度回転させる制御装置50(CPU51)は、電源装置87から電動モータ86への給電を制御することで、電動モータ86を用いたフィルタ62の中心軸線A62回りの回転の制御するフィルタ回転制御部51Bに相当する。
【0085】
ステップS060にて制御装置50は、タイマ55が計測する計測時間をリセット(計測時間=0に設定する)させて、
図9のフローチャートに示す処理を終了する。なお、
図9のフローチャートに示す処理では、制御装置50は、ステップS010にて、計測時間が既定待機時間以下(計測時間≦既定待機時間)の場合(ステップS010:No)には、フィルタ62を回転させる(ステップS050)ことなく、
図9のフローチャートに示す処理を終了する。これにより、ステップS060にてタイマ55が計測する計測時間をリセットしてから、計測時間が既定待機時間を超える(計測時間≦既定待機時間)までフィルタ62を回転させることはない。制御装置50は、計測時間が既定待機時間を超える場合(ステップS010:Yes)であり、さらに、出口空気流量が流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)場合(ステップS040:Yes)には、電動モータ86を用いてフィルタ62を回転させる(ステップS050)。
【0086】
●[第3の実施形態のエアクリーナ80の作用効果について(
図1~
図3)]
エアクリーナ80において、電動モータ86を駆動させて、電動モータ86の駆動力によりフィルタ62をフィルタ62の中心軸線A62回りに回転させることができる。これにより、フィルタ62を中心軸線A62回りにより確実に回転させることができるため、フィルタ62の外周面62A(表面)に均一にダストを堆積させることがより確実となる。
【0087】
また、フィルタ62を回転させる必要が有る場合(
図9のステップS040:Yes)に、フィルタ62をフィルタ62の中心軸線A62回りに回転させることができる。このため、フィルタ62を中心軸線A62回りにより確実に回転させることができる。従って、フィルタ62の外周面62A(表面)に均一にダストを堆積させることがより確実となる。
【0088】
また、制御装置50は、流出口空気流量検出部51Cにて検出した流出口から流出する空気の流量である流出口空気流量が、流出口流量下限値推定部51Dにて推定した流出口空気流量の下限値である流出口流量下限値よりも小さい場合に(
図9のステップS040:Yes)、フィルタ回転制御部51Bにて、電動モータを用いてフィルタを中心軸線回りに既定の角度だけ回転させる(
図9のステップS050)。ここで、フィルタ62の外周面62A(表面)にダストが不均一に堆積していると考えることができる、流出口空気流量が流出口流量下限値よりも小さくなった場合(
図9のステップS040:Yes)に、フィルタを既定の角度だけ回転させる(
図9のステップS050)。従って、フィルタ62の外周面62A(表面)により均一にダストを堆積させることがより確実となる。ひいては、フィルタ62よりも下流に設けられた空気流量検出装置65を用いて算出される吸気の流量の正確さが、フィルタ62の表面にダストが堆積することで低下することをより確実に抑制できる。
【0089】
さらに、エアクリーナ80は、フィルタ62を回転させて、フィルタ62の外周面62A(表面)により均一にダストを堆積させる。従来のフィルタが固定されたエアクリーナでは、フィルタが固定されていることによりフィルタの外周面に均一にダストが堆積せず、このような従来のエアクリーナのフィルタに比べて、エアクリーナ80はそのフィルタ62をより長寿命に使用することができる。
【0090】
●[第4の実施形態のエアクリーナ80の構成(
図7、
図8)]
次に
図7、
図8を用いて、第4の実施形態のエアクリーナ80について、まず構成を説明する。以下の第4の実施形態のエアクリーナ80の説明において、第3の実施形態との相違点について主に説明し、同様の点については説明を省略する。第4の実施形態のエアクリーナ80の構成は、制御装置50の構成以外は第3の実施形態のエアクリーナ80の構成と同様である。また、第4の実施形態の制御装置50の構成は、第3の実施形態の制御装置50の流出口空気流量検出部51Cおよび流出口流量下限値推定部51Dを省いた構成となっている。すなわち、第4の実施形態のエアクリーナ80の制御装置50は、フィルタ回転要求判定部51A及びフィルタ回転制御部51Bを有する。
【0091】
第4の実施形態の制御装置50は、以下に説明するように、
図10にフローチャートを示す処理を実行する。
図10にフローチャートを示す処理において、第4の実施形態の制御装置50は、フィルタ回転要求判定部51Aにて、内燃機関10が始動されたときに、フィルタ62を回転させる必要が有ると判定する。
【0092】
●[第4の実施形態の制御装置50の処理手順(
図7、
図10)]
次に、第4の実施形態の制御装置50の処理手順について説明する。制御装置50(制御装置50のCPU51(
図7参照))は、内燃機関10が始動されることにより、起動されると、
図10に示す処理を起動する。制御装置50は、
図10にフローチャートを示す処理を起動すると、ステップS110へ処理を進める。
【0093】
ステップS110にて制御装置50は、電動モータ86を用いてフィルタ62を既定の角度(例えば、15°)回転させて、
図10のフローチャートに示す処理を終了する。なお、上述した様に、制御装置50は、電源装置87から電動モータ86への給電を制御することができる。そして、制御装置50は、電動モータ86を用いて62を中心軸線A62回りに既定の角度だけ回転させることができる。
【0094】
なお、起動されると、
図10に示す処理を起動する制御装置50(CPU51)は、内燃機関10の運転状態に基づいて、フィルタ62を回転させる必要の有無を判定するフィルタ回転要求判定部51Aに相当する。制御装置50は、フィルタ回転要求判定部51Aにて、内燃機関10が始動されるに伴って、制御装置50(CPU51)が起動された際にフィルタ62を回転させる必要が有ると判定し、制御装置50(CPU51)が起動された後はフィルタ62を回転させる必要が無いと判定している。
【0095】
また、ステップS110にて、電動モータ86を用いてフィルタを既定の角度回転させる制御装置50(CPU51)は、電源装置87から電動モータ86への給電を制御することで、電動モータ86を用いたフィルタ62の中心軸線A62回りの回転の制御するフィルタ回転制御部51Bに相当する。
【0096】
●[第4の実施形態のエアクリーナの作用効果について(
図7、
図8、
図10)]
第4の実施形態のエアクリーナ80において、
図8に示すように、電動モータ86を駆動させて、電動モータ86の駆動力によりフィルタ62をフィルタ62の中心軸線A62回りに回転させることができる。これにより、フィルタ62を中心軸線A62回りにより確実に回転させることができるため、フィルタ62の外周面62A(表面)に均一にダストを堆積させることがより確実となる。
【0097】
また、フィルタ62を回転させる必要が有る場合(
図10にフローチャートを示す処理が実行された場合)に、フィルタ62をフィルタ62の中心軸線A62回りに回転させることができる。このため、フィルタ62を中心軸線A62回りにより確実に回転させることができる。従って、フィルタ62の外周面62A(表面)に均一にダストを堆積させることがより確実となる。
【0098】
また、制御装置50は、内燃機関10(
図7参照)が始動されたときに、フィルタ回転要求判定部51Aにて、フィルタ62を回転させる必要が有ると判定し、さらに、フィルタ回転制御部51Bにて、電動モータ86を用いてフィルタ62を中心軸線A62回りに既定の角度だけ回転させる。これにより、フィルタ62を中心軸線A62回りにより確実に回転させることができる。従って、フィルタ62の外周面62A(表面)により均一にダストを堆積させることがより確実となる。ひいては、フィルタ62よりも下流に設けられた空気流量検出装置65を用いて算出される吸気の流量の正確さが、フィルタの表面にダストが堆積することで、低下することをより確実に抑制できる。
【0099】
さらに、エアクリーナ80は、フィルタ62を回転させて、フィルタ62の外周面62A(表面)により均一にダストを堆積させる。従来のフィルタが固定されたエアクリーナでは、フィルタが固定されていることによりフィルタの外周面に均一にダストが堆積せず、このような従来のエアクリーナのフィルタに比べて、エアクリーナ80はそのフィルタ62をより長寿命に使用することができる。
【0100】
●[他の実施形態]
本発明のエアクリーナは、上述した第1の実施形態のエアクリーナ60~第4の実施形態のエアクリーナ80の構成、形状、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。内燃機関10を、内燃機関の例として、車両に設けられたディーゼルエンジンとしたが、内燃機関10はガソリンエンジンであってもよい。また、例えば、フィルタ62、フィルタ72は、円筒状に形成されているが、筒状に形成されていればよく、例えば角筒状や、断面が楕円の筒状に形成されていてもよい。また、上述した第1の実施形態のエアクリーナ60~第4の実施形態のエアクリーナ80において、フィルタ回転支持機構63の構成を適宜変更してもよい。
【0101】
上述したフィルタ62を有する、第1の実施形態のエアクリーナ60、第3の実施形態のエアクリーナ80、第4の実施形態のエアクリーナ80に対して、第2の実施形態のエアクリーナ70のフィルタ72を適用してもよい。
【0102】
上述した第3の実施形態のエアクリーナ80の制御装置50は、
図9にフローチャートを示す処理にて、出口空気流量が流出口流量下限値より小さい(流出口空気流量<流出口流量下限値)と判定した場合(
図9のステップS040:Yes)には、電動モータ86を用いてフィルタを既定の角度回転させる(
図9のステップS050)。また、第4の実施形態のエアクリーナ80の制御装置50(制御装置50のCPU51(
図7参照))は、内燃機関10が始動されることにより、起動されると、電動モータ86を用いてフィルタ62を既定の角度回転させる(
図10のステップS110)。第3の実施形態のエアクリーナ80の制御装置50は、さらに、第4の実施形態の制御装置50(CPU51)と同様に、内燃機関10が始動されることにより、起動される場合にも、電動モータ86を用いてフィルタ62を既定の角度回転させてもよい。
【0103】
上述した第1の実施形態のエアクリーナ60~第4の実施形態のエアクリーナ80の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等が記載してある場合、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 内燃機関システム
10 内燃機関(ディーゼルエンジン)
11A、11B 吸気管
11C 吸気マニホルド
12A 排気マニホルド
12B 排気管
21 吸気温度検出装置
23 回転検出装置
25 アクセルペダル踏込量検出装置
27 排気温度検出装置
30 排気浄化装置
43A インジェクタ
45A シリンダ
47 スロットル装置
47S スロットル開度検出装置
47V スロットルバルブ
50 制御装置
51 CPU
51A フィルタ回転要求判定部
51B フィルタ回転制御部
51C 流出口空気流量検出部
51D 流出口流量下限値推定部
52 RAM
53 記憶装置
54 EEPROM
55 タイマ
60 エアクリーナ
61 ケース
61A 本体部
61A1 流入口
61A2 流出口
61B 蓋部
61C フィルタ収容空間
61CA フィルタ外周空間
61CB フィルタ内周空間
61D 内壁
611 流入管
612 流出管
612A 孔
62 フィルタ
62A 外周面
62B 内周面
63 フィルタ回転支持機構
631 第1スラストベアリング
632 第1円板状蓋部
632A 外周壁
632B 内周壁
633 羽根
634 第2スラストベアリング
635 第2円板状蓋部
635A 外周壁
635B 内周壁
635C 凸部
64 シール部材
641 第1シール部
642 第2シール部
65 空気流量検出装置
70 エアクリーナ
72 フィルタ
72A 外周面
72AA 凸部
72AB 凹部
72B 内周面
73 フィルタ回転支持機構
732 第1円板状蓋部
732A 外周壁
732B 内周支持棒
735 第2円板状蓋部
735A 外周壁
735B 内周支持棒
735C 凸部
80 エアクリーナ
83 フィルタ回転支持機構
832 第1円板状蓋部
832A 外周壁
832B 内周壁
835 第2円板状蓋部
835A 外周壁
835B 内周壁
835C 凸部
86 電動モータ
87 電源装置
A62 中心軸線