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特開2022-76114食品、その製造の方法、システム、プログラム、記録媒体および機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076114
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】食品、その製造の方法、システム、プログラム、記録媒体および機器
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/365 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
A23L3/365 Z
A23L3/365 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186374
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】松葉佐 智子
(72)【発明者】
【氏名】鍵屋 慎一
【テーマコード(参考)】
4B022
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB01
4B022LJ01
4B022LJ02
4B022LJ05
4B022LN01
4B022LQ07
4B022LT04
(57)【要約】
【課題】調理および冷凍処理で食品を実現し、食前に加熱することで食品本来の食感を実現する。
【解決手段】食品(2)は、食品本体(4)と、冷凍処理で形成されて前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部(8)とを備える。前記食品本体とともに調理され、前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部(6)を備える。前記氷層部を解凍して蒸発させ、食品表面に前記食品本体または前記被覆部を露出させ、食品表面の過熱を防止して食品本来の食感を実現できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品本体と、
冷凍処理で形成されて前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部と、
を備えることを特徴とする、食品。
【請求項2】
さらに、前記食品本体とともに処理されて前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
さらに、前記氷層部を解凍して蒸発させ、食品表面に前記食品本体または前記被覆部を露出させたことを特徴とする、請求項2に記載の食品。
【請求項4】
コンピュータを用いる製造方法であって、
調理部が、前記コンピュータの制御により食品本体を調理する工程と、
冷凍部が、前記コンピュータの制御により冷凍処理で前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項5】
さらに、前記冷凍部で、前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部の冷凍処理により前記氷層部が形成される工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
さらに、第1の計量部が、前記氷層部の形成前の第1の重量情報を取得する工程と、
第2の計量部が、前記氷層部の形成後の第2の重量情報を取得する工程と、
処理部が、前記第1の重量情報から求めた第1の加熱時間と、前記第2の重量情報から前記第1の重量情報を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間とを加算した加熱時間情報を含む加熱パターンを表す加熱パターン情報を生成する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
さらに、加熱部が、前記処理部より前記加熱パターン情報を取得する工程と、
前記加熱部が、前記加熱パターン情報に基づき食品を加熱する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記加熱部が、加熱により前記食品本体の前記氷層部を解凍する工程と、
前記加熱部が、前記氷層部の解凍により生成される水分の蒸発潜熱により前記食品の表面温度を抑制し、前記食品の内部を加熱する工程と、
前記加熱部が前記食品の表面を加熱する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
少なくとも食品本体を調理する調理部と、
前記食品本体を加湿する加湿部と、
前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部を形成する冷凍部と、
を備えることを特徴とする、製造システム。
【請求項10】
さらに、前記調理部は、前記食品本体とともに加熱調理し、前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部を形成すること特徴とする請求項9に記載の製造システム。
【請求項11】
さらに、前記氷層部の形成前の第1の重量情報を取得する第1の計量部と、
前記氷層部の形成後の第2の重量情報を取得する第2の計量部と、
前記第1の重量情報から求めた第1の加熱時間と、前記第2の重量情報から前記第1の重量情報を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間とを加算した加熱時間情報を含む加熱パターンを表す加熱パターン情報を生成する処理部と、
を備えることを特徴とする、請求項9に記載の製造システム。
【請求項12】
食品を加熱する加熱部と、
少なくとも加熱パターン情報を用いて前記加熱部を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする、製造システム。
【請求項13】
さらに、前記加熱パターン情報は、前記氷層部の解凍加熱、前記食品を解凍して食品表面に生じた水分による蒸発潜熱により前記食品表面の過熱を抑制する加熱、前記食品の内部加熱、前記食品の表面加熱の何れかまたは二以上の加熱を表す加熱情報を含むことを特徴とする、請求項12に記載の製造システム。
【請求項14】
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
食品の氷層部の形成前の第1の重量情報を取得する機能と、
前記氷層部の形成後の第2の重量情報を取得する機能と、
前記第1の重量情報から求めた第1の加熱時間と、前記第2の重量情報から前記第1の重量情報を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間とを加算した加熱時間情報を含む加熱パターンを表す加熱パターン情報を生成する機能と、
を前記コンピュータによって実現するためのプログラム。
【請求項15】
さらに、加熱部が前記加熱パターン情報を取得する機能と、
前記加熱部が前記加熱パターン情報を用いて前記食品を加熱する制御機能と、
を前記コンピュータによって実現するための請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
さらに、前記加熱部が加熱により前記氷層部を解凍する制御機能と、
前記加熱部が、加熱による前記氷層部の解凍で生成される水分の蒸発潜熱により加熱中の前記食品の表面温度を抑制し、前記食品の内部を加熱する制御機能と、
前記加熱部が前記食品の表面を加熱する制御機能と、
を前記コンピュータによって実現するための請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
請求項14ないし請求項16の何れかの請求項に記載のプログラムを格納したことを特徴とする記録媒体。
【請求項18】
食品本体を調理する調理部と、
食品本体を加湿する加湿部と、
前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部を形成する冷凍部と、
を備えることを特徴とする、製造機器。
【請求項19】
さらに、前記調理部は、前記食品本体とともに加熱し、前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部を形成すること特徴とする請求項18に記載の製造機器。
【請求項20】
さらに、前記氷層部の形成前の第1の重量情報を取得する第1の計量部と、
前記氷層部の形成後の第2の重量情報を取得する第2の計量部と、
前記第1の重量情報から求めた第1の加熱時間と、前記第2の重量情報から前記第1の重量情報を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間とを加算した加熱時間情報を含む加熱パターンを表す加熱パターン情報を生成する処理部と、
を備えることを特徴とする、請求項18に記載の製造機器。
【請求項21】
食品を加熱する加熱部と、
少なくとも加熱パターン情報を用いて前記加熱部を制御する制御部と、
を含むことを特徴とする、製造機器。
【請求項22】
さらに、前記加熱パターン情報は、前記氷層部の解凍加熱、前記食品を解凍して食品表面に生じた水分による蒸発潜熱により前記食品表面の過熱を抑制する加熱、前記食品の内部加熱、前記食品の表面加熱の何れかまたは二以上の加熱を表す加熱情報を含むことを特徴とする、請求項21に記載の製造機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理後、冷凍して提供される食品、その製造の方法、システム、プログラム、記録媒体および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
調理後、冷凍して保存ないし流通している冷凍食品がある。この冷凍食品はたとえば、コロッケ、春巻き、唐揚げなどがあり、食前に加熱して調理直後の状態に戻す処理が必要である。この食品の解凍ないし加熱には、電子レンジやオーブントースターが用いられている。
この種の冷凍食品の解凍に関し、電磁波照射により解凍することが知られている(たとえば、特許文献1)。これは生鮮品の解凍にすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】W02015/016171
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、この種の食品の解凍および加熱には電子レンジが用いられている。電子レンジによる加熱では、特性上、食品の内部から加熱が行われるため、食品の底部に水分が残留してしまい、水分や湿りけを除くことが困難であると言われている。このような水分の残留回避には、食品を浮かした状態に維持して加熱すればよいが、電子レンジにおいて、斯かる処理には困難が伴う。
【0005】
食品の残留水分を除くには、電子レンジでの加熱後、オーブントースターで再加熱すればよいが、電子レンジによる加熱とオーブントースターによる加熱を二段階で行うこととなり、手間がかかるという課題がある。
ガスコンロのグリルでは電子レンジ加熱のような水分の問題は生じない反面、火力が強く、庫内温度が短時間で高温化し、冷凍食品では解凍途上で食品表面や端部分に焦げを生じさせる。このため、冷凍食品の温めなおしにはガスコンロのグリルは不向きであると言われている。
斯かる食品の解凍および加熱には調理直後の食感を再現することが求められている。
【0006】
しかしながら、発明者は、加熱調理後、冷凍して提供される食品を再加熱して得られる食感は食前の加熱処理だけでなく、冷凍前処理にも大きく影響されるとの知見を得た。
そこで、本発明の目的は、上記課題および上記知見に基づき、調理および冷凍処理で食品を実現し、食前に加熱することで食品本来の食感を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の食品の一側面によれば、食品本体と、冷凍処理で形成されて前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部とを備える。
この食品において、さらに、前記食品本体とともに処理されて前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部を備えてよい。
この食品において、さらに、前記氷層部を解凍して蒸発させ、食品表面に前記食品本体または前記被覆部を露出させてよい。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の製造方法の一側面によれば、コンピュータを用いる製造方法であって、調理部が、前記コンピュータの制御により食品本体を調理する工程と、冷凍部が、前記コンピュータの制御により冷凍処理で前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部を形成する工程とを含む。
この製造方法において、さらに、前記冷凍部で、前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部の冷凍処理により前記氷層部が形成される工程を含んでよい。
この製造方法は、さらに、第1の計量部が、前記氷層部の形成前の第1の重量情報を取得する工程と、第2の計量部が、前記氷層部の形成後の第2の重量情報を取得する工程と、処理部が、前記第1の重量情報から求めた第1の加熱時間と、前記第2の重量情報から前記第1の重量情報を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間とを加算した加熱時間情報を含む加熱パターンを表す加熱パターン情報を生成する工程とを含んでよい。
この製造方法において、さらに、加熱部が、前記処理部より前記加熱パターン情報を取得する工程と、前記加熱部が前記加熱パターン情報に基づき食品を加熱する工程とを含んでよい。
この製造方法において、さらに、前記加熱部が、加熱により前記食品本体の前記氷層部を解凍する工程と、前記加熱部が、前記氷層部の解凍により生成される水分の蒸発潜熱により前記食品の表面温度を抑制し、前記食品の内部を加熱する工程と、前記加熱部が前記食品の表面を加熱する工程とを含んでよい。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の製造システムの一側面によれば、少なくとも食品本体を調理する調理部と、前記食品本体を加湿する加湿部と、前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部を形成する冷凍部とを備える。
この製造システムにおいて、さらに、前記調理部は、前記食品本体とともに加熱調理し、前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部を形成してよい。
この製造システムにおいて、さらに、前記氷層部の形成前の第1の重量情報を取得する第1の計量部と、前記氷層部の形成後の第2の重量情報を取得する第2の計量部と、前記第1の重量情報から求めた第1の加熱時間と、前記第2の重量情報から前記第1の重量情報を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間とを加算した加熱時間情報を含む加熱パターンを表す加熱パターン情報を生成する処理部とを備えてよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の製造システムの一側面によれば、食品を加熱する加熱部と、少なくとも加熱パターン情報を用いて前記加熱部を制御する制御部とを備える。
この製造システムにおいて、さらに、前記加熱パターン情報は、前記氷層部の解凍加熱、前記食品を解凍して食品表面に生じた水分による蒸発潜熱により前記食品表面の過熱を抑制する加熱、前記食品の内部加熱、前記食品の表面加熱の何れかまたは二以上の加熱を表す加熱情報を含んでよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のプログラムの一側面によれば、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、食品の氷層部の形成前の第1の重量情報を取得する機能と、前記氷層部の形成後の第2の重量情報を取得する機能と、前記第1の重量情報から求めた第1の加熱時間と、前記第2の重量情報から前記第1の重量情報を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間とを加算した加熱時間情報を含む加熱パターンを表す加熱パターン情報を生成する機能とを前記コンピュータによって実現する。
このプログラムにおいて、さらに、加熱部が前記加熱パターン情報を取得する機能と、前記加熱部が前記加熱パターン情報を用いて前記食品を加熱する制御機能とを前記コンピュータによって実現する。
このプログラムにおいて、さらに、前記加熱部が加熱により前記氷層部を解凍する制御機能と、前記加熱部が、加熱による前記氷層部の解凍で生成される水分の蒸発潜熱により加熱中の前記食品の表面温度を抑制し、前記食品の内部を加熱する制御機能と、前記加熱部が前記食品の表面を加熱する制御機能とを前記コンピュータによって実現する。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の記録媒体の一側面によれば、前記プログラムを格納している記録媒体である。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の製造機器の一側面によれば、食品本体を調理する調理部と、食品本体を加湿する加湿部と、前記食品本体の一部または全部を覆う氷層部を形成する冷凍部とを備える。
この製造機器において、さらに、前記調理部は、前記食品本体とともに加熱し、前記食品本体の一部または全部を覆う被覆部を形成してよい。
この製造機器において、さらに、前記氷層部の形成前の第1の重量情報を取得する第1の計量部と、前記氷層部の形成後の第2の重量情報を取得する第2の計量部と、前記第1の重量情報から求めた第1の加熱時間と、前記第2の重量情報から前記第1の重量情報を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間とを加算した加熱時間情報を含む加熱パターンを表す加熱パターン情報を生成する処理部とを備えてよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の製造機器の一側面によれば、食品を加熱する加熱部と、少なくとも加熱パターン情報を用いて前記加熱部を制御する制御部とを含む。
この製造機器において、さらに、前記加熱パターン情報は、前記氷層部の解凍加熱、前記食品を解凍して食品表面に生じた水分による蒸発潜熱により前記食品表面の過熱を抑制する加熱、前記食品の内部加熱、前記食品の表面加熱の何れかまたは二以上の加熱を表す加熱情報を含んでよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 調理後、冷凍処理によって氷層部が形成されているので、再加熱時、たとえば、輻射熱や対流熱を用いて加熱しても、食品表面の過熱を防止でき、食品本来の食感を実現できる。
(2) 加熱時、食品内部を短時間で高温状態に昇温させることができ、食品本来のうま味を引き出すことができる。
(3) 食品表面の水分を解凍して蒸発潜熱により食品表面の過熱を抑制しながら、食品内部の高温化とともに、水分の蒸発後、食品表面を充分に乾燥させることができる。
(4) 食品表面のぱりぱり感と食品内部のしっとり感とを引き出すことができ、加熱調理直後の食感に高めることができるとともに、加熱調理直後に比較して油脂分を落とすことができる。
(5) 加熱パターン情報を用いれば、食品の最適加熱を実現でき、均一な食感を実現できる。
(6) 加熱中、食品から油脂分を落とすので、調理直後の食品に比較して不要な油脂分を除いた食品に仕上げることができ、健康指向の満足度を充足できる。
(7) 加熱処理の均一化、簡易化を図ることができ、調理者の作業軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態に係る食品の一部を切欠いて示す図である。
図2】食品の一次製造工程を示す図である。
図3】食品の二次製造工程を示す図である。
図4】第2の実施の形態に係る食品の一次製造工程を示すフローチャートである。
図5】第2の実施の形態に係る製造システムを示す図である。
図6】製造システムの機能部の一例を示す図である。
図7】製造システムのハードウェアを示す図である。
図8】食品管理データベースを示す図である。
図9】Aは食品の製造工程を示す図であり、Bは食品の計測工程を示す図であり、Cは食品の加湿工程を示す図である。
図10】Aは食品の冷凍工程を示す図であり、Bは食品の計測工程を示す図である。
図11】第3の実施の形態に係る製造工程を示すフローチャートである。
図12】第3の実施の形態に係る製造システムを示す図である。
図13】製造システムの機能部の一例を示す図である。
図14】製造システムのハードウェアを示す図である。
図15】食品管理データベースを示す図である。
図16】食品の加熱パターン管理データベースを示す図である。
図17】Aは食品の搬入工程を示す図であり、Bは食品の加熱工程を示す図であり、Cは食品の搬出工程を示す図である。
図18】食品の解凍・加熱工程を示す図である。
図19】Aは食品の加熱パターンを示す図であり、Bは加熱パターンに対応する温度の時間推移を示す図である。
図20】実施例1に係る製造機器を示す図である。
図21】実施例2に係る製造機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る食品2を示している。図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に限定されるものではない。
この食品2は調理後、冷凍されたいわゆる冷凍食品であり、食前の加熱処理に適する一次製造品である。この食品2は食品本体4、被覆部6および氷層部8を含んでいる。
食品本体4は、肉、魚、野菜などの単一の食材、または肉、魚、野菜などの単一の食材を混合した複合食材の何れでもよい。複合食材はたとえば、複数の食材を用いた練り物などである。
【0018】
被覆部6は、揚げるなどの食品本体4とともに調理され、食品本体4の一部または全部を覆っている。被覆部6はたとえば、小麦粉、パン粉などの食材で形成される。被覆部6はたとえば、小麦粉などの穀粉、パン粉などの食材を水分または油脂分を媒体として食品本体4の表面部に付着させて加熱加工すればよい。
食品本体4によっては、食品本体4を構成する食材自体を素揚げし、この素揚げによって食品本体4の表面層に食品本体4そのもので形成されるものも含まれる。この場合には、加熱によって食品本体4の表面部に生成された外郭部が被覆部6を形成する。被覆部6を備えた食品2はたとえば、とんかつ、唐揚げ、餃子などの食品がその例である。
この実施の形態では、食品本体4の表面に被覆部6を備えているが、食品2によっては被覆部6を省略してもよい。
氷層部8は被覆部6の表面の一部または全部を覆う氷層であり、水18(図2)を凍らせた層である。この水18は調味液でもよい。この氷層部8は食品本体4および被覆部6の加熱調理の後、被覆部6に水18(図2のC)を付着させて食品本体4および被覆部6とともに冷凍処理によって形成される。
【0019】
この食品2は加熱すると、氷層部8の解凍によって水分(水18)が生成されるので、この水分の蒸発潜熱によって食品表面の過熱を防止できる。したがって、食品2の被覆部6や食品本体4の焦げを防止でき、加熱調理品に仕上げることができる。
【0020】
<食品2の一次製造工程>
図2は、食品2の一次製造工程を示している。この一次製造工程には、食品本体4を構成する食材の選択の後、被覆部6の形成(図2のA)、調理(図2のB)、加湿処理(図2のC)、冷凍処理(図2のD)が含まれる。
調理前、図2のAに示すように、食材自体である食品本体4の表面にたとえば、衣(ころも)食材を付着させ、被覆部6を形成する。
被覆部6を付着させた食品本体4は、図2のBに示すように、調理容器10内の食用油12内に投入して調理する。食用油12は食品本体4の投入前、熱源14によって最適な調理温度で加熱する。
この調理後、被覆部6で覆われた食品本体4は荒熱を除いた後、被覆部6に加湿処理を行う。たとえば、図2のCに示すように、調理容器16内の水18に浸し、被覆部6の表面に水18を付着させる。
この加湿処理の後、図2のDに示すように、食品2を冷凍庫20に投入し、冷凍処理を施す。これにより、一次調理品である食品2が形成される。この食品2の被覆部6の表面には水18の冷凍によって氷層部8が形成される。
【0021】
<食品2の二次製造工程>
図3は、食品2の二次製造工程を示している。この二次製造工程には食品2の解凍および加熱(図3のA)および仕上げ加熱(図3のB)が含まれる。
氷層部8が形成された食品2は、図3のAに示すように、熱源22-1、22-2からの熱24により加熱する。この加熱には解凍加熱、内部加熱および仕上げ加熱が含まれる。解凍加熱により氷層部8が解凍され、水18に戻される。
解凍加熱後、内部加熱に移行する。水18は沸騰状態となって蒸気26に変換され、蒸発潜熱により食品2の表面温度の上昇を抑制する。この表面温度の抑制期間において、食品2の内部の温度が上昇する。
内部加熱後、仕上げ加熱に移行する。図3のBに示すように、食品2は内部加熱の後、被覆部6が熱源22-1、22-2からの熱24を受けて加熱される。この加熱によって被覆部6から油脂28が離脱し、油脂分が減少した乾燥状態となる。
この結果、二次調理品としての食品2が完成する。この食品2は図3のCに示すように、氷層部8が消失し、食品本体4が加熱によって膨張し、被覆部6から水分および油脂分が除去されたものとなる。
【0022】
<第1の実施の形態の効果>
この第1の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 食品2は、加熱調理に適する一次調理品として提供でき、加熱調理(二次調理)を施すことにより、食品本来の食感を得ることができる。
(2) この食品2を熱24で加熱すれば、氷層部8を解凍して得られる水分が蒸発潜熱による食品表面の過熱防止により加熱中の焦げを防止でき、食感に優れた加熱調理品を提供できる。
(3) オーブントースターなど火力の強い調理機器を用いて加熱しても、食品2の過熱を防止できるとともに、内部のしっとり感を維持し、表面層の乾燥によって優れた食感を創成することができる。
(4) 加熱中に食品2から油脂分の離脱を生じさせることができ、過剰な油脂分の摂取を防止することができる。
【0023】
〔第2の実施の形態〕
図4は、第2の実施の形態に係る、食品2の一次製造工程を示している。図4に示す工程は一例であり、この工程に本発明が限定されるものではない。各工程において、Sは一部の工程、Sに付した番号は順序の一例である。
この一次製造工程には食品2の調理および冷凍して提供する処理としてたとえば、食品2の選択(S101)、食品2の調理(S102)、冷凍前の重量情報G1の取得(S103)、食品表面の加湿(S104)、食品2の冷凍(S105)、冷凍後の重量情報G2の取得(S106)、加熱パターンの生成(S107)、食品情報の提示(S108)、食品2の提供(S109)などが含まれる。
【0024】
食品2の選択(S101): 調理対象としての食品2が選択される。この食品2には加工前の食材、加工後の食材の何れであってもよい。
食品2の調理(S102): 食品2の加熱調理が行われる。この調理はたとえば、天ぷら、カツ、唐揚げなど何れでもよい。
冷凍前の重量情報G1の取得(S103): 冷凍前、食品2は第1の計量部39で重量を計測し、その計測結果が制御部46に提供される。制御部46は、計測結果を受け、冷凍前(加湿前)の食品2の重量情報G1を取得する。
食品表面の加湿(S104): 食品2は加湿部40により食品表面の加湿を行う。
食品2の冷凍(S105): 表面を加湿した食品2は冷凍部44に搬入され、冷凍される。
冷凍後の重量情報G2の取得(S106): 冷凍後、食品2は第2の計量部43で重量を計測し、その計測結果が制御部46に提供される。制御部46は、計測結果を受け、冷凍後の食品2の重量情報G2を取得する。氷層部8の重量をgf、氷層部8の形成前の重量をg1、氷層部8の形成後の重量をg2とすれば、これらの関係は次式で与えられる。
g2=g1+gf ・・・(1)
gf=g2-g1 ・・・(2)
【0025】
加熱パターンの生成(S107): 制御部46は、食品2の種別、加湿前の第1の重量情報G1、冷凍後の第2の重量情報G2などを含む食品情報に基づき、食品2の加熱パターン(図19のA)を生成し、この加熱パターンを表す加熱パターン情報を取得する。
この加熱パターンには、第1の重量情報G1から求めた第1の加熱時間Th1と、第2の重量情報G2から第1の重量情報G1を減算して得られる重量情報から求めた第2の加熱時間Th2との加算加熱情報が含まれる。この加算加熱情報には、食品2の解凍加熱、内部加熱、表面加熱および仕上げ加熱などの加熱時間が含まれる。つまり、加熱時間Th2は式(2)の重量gfから求めることができる。
食品情報の提示(S108): 制御部46は、現時点までに取得している各種情報から提示情報を生成し、情報提示部74に提示させる。
食品2の提供(S109): 食品2は、調理・加湿・冷凍された一次加工品として提供される。この食品2には食品情報が付され、この食品情報が食品2の二次加工に用いられる。
【0026】
<製造システム32>
図5は、第2の実施の形態に係る製造システム32を示している。図5に示す構成は一例であり、斯かる構成に限定されるものではない。
この製造システム32は一次製造工程(図4)に用いられるシステムであって、搬送機構34、調理部36、待機部38、加湿部40、待機部42、冷凍部44が含まれる。
【0027】
搬送機構34は、食品2の原材料である食品本体4を処理容器30とともに調理部36に搬入し、調理部36から待機部38に移送し、加湿部40で加湿後の食品2は待機部42を経て冷凍部44に搬入し、冷凍後の食品2を冷凍部44から待機部42に搬出させる。
調理部36は、被覆部6の形成など事前処理した食品本体4を加熱調理するエリアである。待機部38は加熱調理された食品2を待機させるとともに、重量計測を行うエリアである。この待機部38には冷凍前の食品2の重量情報G1を取得するための第1の計量部39が設置されている。
加湿部40は、被覆部6を加湿するエリアである。待機部42は、冷凍前の食品2を待機させて重量計測を行うエリアであり、冷凍後の食品2を待機させるエリアでもある。この待機部42には冷凍後の食品2の重量情報G2を取得するための第2の計量部43が設置されている。
【0028】
<製造システム32の機能部>
図6は、製造システム32の機能部を示している。図6において、図5と同一部分には同一符号を付してある。
搬送機構34は、調理部36にコンベア35-1、待機部38にコンベア35-2、加湿部40にコンベア35-3、待機部42にコンベア35-4、冷凍部44にコンベア35-5を備える。コンベア35-1はコンベア駆動部37-1から駆動力を受け、コンベア35-2はコンベア駆動部37-2から駆動力を受け、コンベア35-3はコンベア駆動部37-3から駆動力を受け、コンベア35-4はコンベア駆動部37-4から駆動力を受け、また、コンベア35-5はコンベア駆動部37-5から駆動力を受けて食品本体4や食品2を搬送する。各コンベア駆動部37-1、37-2、37-3、37-4、37-5は個別に制御部46で制御される。制御部46はたとえば、通信機能を備えるコンピュータで構成され、各種制御を情報処理で実行する。
【0029】
調理部36は、調理容器10および熱源14を備える。調理容器10には食用油12が装填され、熱源14によって加熱される。熱源14は制御部46により制御される熱源駆動部48で駆動される。調理容器10には温度センサ50が設置され、食用油12の温度が検出される。制御部46は温度センサ50の検出温度により温度情報を取得し、熱源駆動部48を制御する。
【0030】
待機部38はコンベア35-2を備え、コンベア35-1から処理容器30とともに調理後の食品2を受け取る。コンベア35-2には計量部39の一例である重量センサ52が設置されている。重量センサ52は加湿前の食品2の重量g1を検出する。制御部46は重量センサ52の検出出力を受け、加湿前の食品2の重量情報G1を取得する。
【0031】
加湿部40には加湿庫54を備える。加湿庫54の上部筐体56-1には水噴射機構57の水噴射ノズル58-1、加湿庫54の下部筐体56-2には水噴射機構57の水噴射ノズル58-2が設置され、各水噴射ノズル58-1、58-2は水噴射機構57の水噴射部60に連結されている。水噴射部60は水噴射駆動部62からの駆動力を受け、加湿庫54内のコンベア35-3上にある食品2に水18を噴射する。水噴射駆動部62は制御部46で制御される。これによって食品2の加湿が実行される。
【0032】
待機部42はコンベア35-4を備え、コンベア35-3から加湿後の処理容器30を受け取る。加湿後、コンベア35-4に待機させた食品2は処理容器30とともに冷凍部44に搬入される。
冷凍部44には冷凍庫64が設置され、この冷凍庫64には冷凍機構66、温度センサ68が設置されている。この冷凍機構66は冷凍駆動部70を備え、加湿後の食品2の冷凍処理を行う。温度センサ68は冷凍庫64の庫内温度を検出し、この検出情報を制御部46に提供する。冷凍駆動部70は制御部46により、温度センサ68の検出温度を参照し、冷凍庫64の冷凍温度の制御、食品2の冷凍時間を制御する。
【0033】
冷凍後、食品2はコンベア35-5から待機部42のコンベア35-4に搬出される。コンベア35-4には計量部43の一例である重量センサ72が設置されている。重量センサ72は冷凍後の食品2の重量g2を検出する。制御部46は重量センサ72の検出出力を受け、冷凍後の食品2の重量情報G2を取得する。
【0034】
そして、制御部46は処理部の一例であり、加湿前の食品2の重量情報G1、冷凍後の食品2の重量情報G2を取得し、これら重量情報G1、G2を用いて加熱パターン情報を生成する。情報提示部74には制御部46が取得している提示情報たとえば、食品2の食品情報、温度情報、重量情報G1、G2、水噴射情報、冷凍情報、二次製造工程に用いられる加熱パターン情報など、食品2の搬入時点から搬出時点までに取得した情報を段階的に提示する。
情報入力部76は制御部46により制御され、食品2の既述の食品情報などの入力に用いられる。
【0035】
<制御部46による制御>
制御部46の制御にはプログラムによって実現される制御機能により、
(1) 食品2の食品情報の取得
(2) 搬送機構34の制御
(3) 調理部36の制御
(4) 食品2の加湿制御
(5) 食品2の加湿前の重量情報G1の取得
(6) 食品2の冷凍制御
(7) 食品2の冷凍後の重量情報G2の取得
(8) 食品2の加熱パターンの生成
(9) 提示情報の制御
などが含まれる。
【0036】
<製造システム32のハードウェア>
図7は、製造システム32のハードウェアを示している。この製造システム32において、図6と同一部分には同一符号を付してある。
制御部46には、プロセッサ78、記憶部80、入出力部(I/O)82、通信部84、タイマー86が含まれる。
プロセッサ78は、記憶部80にあるOS(Operating System)を実行し、既述の調理、加湿処理、冷凍処理の制御に用いられる本開示の調理プログラムなどの各種プログラムを実現するための情報処理を実行する。
【0037】
記憶部80は、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)などの記憶素子を備え、本開示の調理プログラムなどを格納する記録媒体の一例である。この記憶部80にはOS、既述の調理、加湿、冷凍処理の制御情報の生成などを実行するための調理プログラムなど、各種のプログラム、処理情報などが格納される。本開示では、食品情報などがプロセッサ78の制御によって食品管理DB88(図8)に格納される。
【0038】
I/O82は、プロセッサ78の制御により、情報入力部76からの情報の入力、情報の取出しなどを行う。このI/O82には、重量センサ52、72などの検出出力や、タイマー86の計測出力や情報入力部76からの操作入力が取り込まれる。そして、I/O82は、コンベア駆動部37-1、37-2、37-3、37-4、37-5、熱源駆動部48、水噴射駆動部62、冷凍駆動部70などの制御信号を出力し、情報提示部74に対しては提示情報を出力する。
【0039】
タイマー86はプロセッサ78の制御により水噴射時間、加熱時間、冷凍時間などの計測に用いられる。通信部84はプロセッサ78の制御により、図示しない情報端末やリモコン装置などとの無線接続または有線接続により情報の授受を行う。
情報入力部76にはキーボードやマウスの他、情報提示部74の表示画面に設置されたタッチセンサなどを含んでよい。
【0040】
<食品管理DB88>
図8は、食品管理DB88の一例を示している。この食品管理DB88には、食品管理ファイル90が含まれる。この食品管理ファイル90には、食品情報部92、調理情報部94、加湿情報部96、冷凍情報部98、加熱パターン情報部100および履歴情報部102が設定されている。
食品情報部92には、食品2を特定するための識別情報や重量情報などが格納される。この食品情報部92には識別情報部92-1、属性情報部92-2、重量情報部92-3が含まれる。
【0041】
識別情報部92-1には食品2の名称などの識別情報が格納される。属性情報部92-2には肉、魚、野菜など、食品2の種別を含む属性情報が格納される。重量情報部92-3には食品2の食品本体4の調理前の重量情報G1、冷凍後の重量情報G2が格納される。
調理情報部94には加熱時間部94-1、加熱温度部94-2が設定されている。加熱時間部94-1には加熱調理に要する時間を表す時間情報が格納されている。加熱温度部94-2には調理温度を表す温度情報が格納されている。
【0042】
加湿情報部96には噴射水量や噴射時間などの加湿情報が格納される。冷凍情報部98には冷凍時間や冷凍温度などの制御情報が格納される。
加熱パターン情報部100には食品2の解凍加熱、内部加熱、表面加熱、仕上げ加熱などを含む加熱パターン情報が格納される。履歴情報部102には、食品2の調理、加湿、冷凍などの処理記録など、制御履歴を表す履歴情報が格納される。
【0043】
このような食品管理DB88を用いれば、制御部46の制御により食品2の加熱に関する情報の検索の他、予測や異常の検知、情報の関係性などの情報処理に活用することができる。
【0044】
<一次製造工程の各処理>
図9および図10は一次製造工程の各処理を示している。この一次製造工程には調理(図9のA)、第1の重量計測(図9のB)、加湿処理(図9のC)、冷凍処理(図10のD)、第2の重量計測(図10のE)が含まれる。
図9のAに示すように、食品本体4に被覆部6を形成した後、調理部36のコンベア35-1に載せられ、待機させる。調理容器10の食用油12が調理温度に到達すれば、食品本体4は食用油12に投入される。調理後、食品2は食用油12から引き上げられてコンベア35-1で搬送されて待機部38のコンベア35-2に渡される。
【0045】
調理後、被覆部6で覆われた食品2は待機部38のコンベア35-2上で荒熱を取る。図9のBに示すように、コンベア35-2に載せられた加湿前の食品2は重量センサ52で計測され、制御部46は加湿前の食品2の重量情報G1を取得する。
【0046】
重量計測の後、図9のCに示すように、食品2はコンベア35-2から加湿部40のコンベア35-3に渡される。加湿部40ではコンベア35-3上で食品2に水噴射ノズル58-1、58-2から所定時間、水18を噴射し、被覆部6の水18による加湿を行う。
【0047】
図10のDに示すように、加湿後の食品2は、待機部42のコンベア35-4で待機させた後、コンベア35-4から冷凍部44のコンベア35-5に渡し、冷凍処理を行う。これにより、食品2には被覆部6を覆う氷層部8が形成される。
【0048】
冷凍処理の後、図10のEに示すように、冷凍部44のコンベア35-5から待機部42のコンベア35-4に戻され、一次調理品である食品2が完成する。
そして、コンベア35-4上の食品2の重量が重量センサ72で計測され、制御部46が冷凍後の食品2の重量情報G2を取得する。
【0049】
<情報の提示>
この情報の提示は、制御部46の制御により情報提示部74の表示画面に生成される。この情報提示にはたとえば、調理提示画面に調理状況、計測提示画面に食品2の計測状況、加湿提示画面には食品2の加湿状況、冷凍提示画面には食品2の冷凍状況、搬出提示画面には食品2の搬出および冷凍後の計測状況の他、食品2の重量情報G1、G2、温度情報、搬送情報などが含まれる。
【0050】
<第2の実施の形態の効果>
この第2の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 一次調理品である食品2の製造の自動化を図ることができる。
(2) この実施の形態では、食品本体4の表面に形成された被覆部6に対し、水18の噴霧によって加湿を自動的に行うことができる。
(3) 食品2の自動製造を実現でき、調理者による食品2の搬送や冷凍処理などの負担を軽減できる。
(4) 食品2の調理温度などの管理を自動化でき、均一化された食品2を製造することができる。
【0051】
〔第3の実施の形態〕
図11は、第3の実施の形態に係る製造工程を示している。この製造工程は一次製造工程(図4)によって製造された食品2の二次製造工程の一例であり、斯かる工程に本発明が限定されるものではない。各工程において、Sは一部の工程、Sに付した番号は順序の一例である。
この製造工程には、食品2の取得(S201)、食品情報の取得(S202)、加熱パターン情報の取得(S203)、情報の提示(S204)、加熱パターンによる食品2の加熱(S205)、解凍加熱(S206)、内部加熱(S207)、情報の提示(S208)、表面加熱(S209)、仕上げ加熱(S210)、加熱の判定(S211)、食品2の搬出(S212)、情報の提示(S213)などが含まれる。
食品2の取得(S201): 加熱対象として一次調理品である食品2(図1)を取得する。
【0052】
食品情報の取得(S202): 加熱対象である食品2について、制御部120は一次調理品である食品2に関係付けられた食品情報を取得する。この食品情報は食品管理DB88から取得すればよい。
加熱パターン情報の取得(S203): 制御部120は食品2に関係付けられた加熱パターン情報を取得する。
情報の提示(S204): 制御部120は、現時点までに取得している各種情報から提示情報を生成し、情報提示部130に提示させる。
【0053】
加熱パターンによる食品2の加熱(S205): 制御部120は既に取得している加熱パターン情報に基づき熱源22-1、22-2を制御し、加熱パターンで食品2を加熱する。この加熱パターンには解凍加熱、内部加熱、表面加熱および仕上げ加熱の加熱情報が含まれる。
解凍加熱(S206): 制御部120は加熱庫122に投入された食品2に対し、氷層部8を解凍するための解凍加熱を行う。
内部加熱(S207): 制御部120は解凍加熱の後、食品2の内部加熱を行う。
情報の提示(S208): 制御部120は、現時点までに取得している各種情報から提示情報を生成し、情報提示部130に提示させる。
表面加熱(S209): 制御部120は内部加熱を経た食品2に対し、表面加熱を行う。
【0054】
仕上げ加熱(S210): 制御部120は表面加熱を経た食品2に対し、仕上げ加熱を行う。
加熱の判定(S211): 制御部120は加熱パターンによる食品2の加熱が終了したかの判定を行う。この加熱の終了は、解凍加熱の開始から所定時間が経過したかを判定すればよい。
食品2の搬出(S212): 制御部120は加熱の終了の後(S211のYES)、加熱庫122から食品2の搬出をさせる。
情報の提示(S213): 制御部120は、現時点までに取得している各種情報から提示情報を生成し、情報提示部130に提示させる。
【0055】
<製造システム104>
図12は、第3の実施の形態に係る製造システム104を示している。図12に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
この製造システム104には搬送機構106、加熱前待機部108、加熱部110、加熱後待機部112が含まれる。
【0056】
搬送機構106は、加熱前待機部108に搬入された食品2を処理容器114とともに加熱部110に搬送し、加熱後、加熱部110から食品2を加熱後待機部112に搬出する。
加熱前待機部108は、加熱前の食品2を待機させるエリアである。加熱部110は、食品2の解凍加熱、内部加熱、表面加熱および仕上げ加熱を行う。加熱後待機部112は加熱後の食品2を待機させるエリアである。
【0057】
<製造システム104の機能部>
図13は、製造システム104の機能部を示している。図13において、図12と同一部分には同一符号を付してある。
搬送機構106は、加熱前待機部108にコンベア116-1、加熱部110にコンベア116-2、加熱後待機部112にコンベア116-3を備える。コンベア116-1はコンベア駆動部118-1から駆動力を受け、コンベア116-2はコンベア駆動部118-2から駆動力を受け、また、コンベア116-3はコンベア駆動部118-3から駆動力を受け、食品2を搬送する。各コンベア駆動部118-1、118-2、118-3は個別に制御部120で制御される。制御部120はたとえば、通信機能を備えるコンピュータで構成され、各種制御を情報処理で実行する。
【0058】
加熱部110には加熱庫122、熱源22-1、22-2および温度センサ126が設置されている。この加熱庫122はコンベア116-2を挟んで上部筐体128-1および下部筐体128-2を備える。
上部筐体128-1には熱源22-1が設置され、下部筐体128-2には熱源22-2が設置されている。熱源22-1は食品2の上面を加熱する上面側熱源であり、熱源22-2は食品2の下面を加熱する下面側熱源である。したがって、熱源22-1、22-2の双方を稼働させれば、コンベア116-2上の食品2の上下両面を加熱することができる。
熱源22-1には熱源駆動部23-1、熱源22-2には熱源駆動部23-2が備えられ、制御部120によって制御される。各熱源22-1、22-2には輻射熱または対流熱を放射する熱源が用いられる。熱には遠赤外線を含んでよいし、熱源22-1、22-2には電熱源を用いてもよい。
【0059】
温度センサ126は加熱庫122の庫内温度を検出する。制御部120は温度センサ126の検出出力を受けて温度情報を取得し、熱源22-1、22-2の温度制御を行う。
そして、情報提示部130は制御部120により制御され、食品2の食品情報、加熱パターン情報など、食品2の搬入時点から搬出時点までに取得した情報を段階的に提示する。また、情報入力部132は制御部120により制御され、食品2の既述の食品情報などの入力に用いられる。
【0060】
<制御部120による制御>
制御部120の制御にはプログラムによって実現される制御機能により、
(1) 食品2の食品情報の取得制御
(2) 食品2の食品情報に関係付けられた加熱パターン情報の取得
(3) 食品2の搬送制御
(4) 加熱庫122の庫内温度の取得
(5) 加熱パターンによる熱源22-1、22-2の制御および食品2の加熱制御
(6) 食品2に関する情報の提示制御
などが含まれる。
【0061】
<製造システム104のハードウェア>
図14は、製造システム104のハードウェアを示している。この製造システム104において、図13と同一部分には同一符号を付してある。
制御部120には、プロセッサ134、記憶部136、入出力部(I/O)138、通信部140、タイマー142が含まれる。
プロセッサ134は、記憶部136にあるOSを実行し、既述の加熱処理の制御に用いられる本開示の製造プログラムなどの各種プログラムを実現するための情報処理を実行する。
【0062】
記憶部136は、ROM、RAMなどの記憶素子を備え、本開示の加熱プログラムなどを格納する記録媒体の一例である。この記憶部136にはOS、既述の加湿、加熱処理の制御情報の生成などを実行するための加熱プログラムなど、各種のプログラム、処理情報などが格納される。本開示では、食品情報などがプロセッサ134の制御によって食品管理DB144(図15)に格納される。
【0063】
I/O138は、プロセッサ134の制御により、情報入力部132からの情報の入力、情報の取出しなどを行う。このI/O138には、温度センサ126などの検出出力や、タイマー142の計測出力や情報入力部132からの操作入力が取り込まれる。そして、I/O138は、コンベア駆動部118-1、118-2、118-3、熱源駆動部23-1、23-2などの機器に対する制御信号や駆動信号を出力し、情報提示部130に対しては提示情報を出力する。
【0064】
タイマー142はプロセッサ134の制御により加熱時間などの計測に用いられる。通信部140はプロセッサ134の制御により、図示しない情報端末やリモコン装置などとの無線接続または有線接続により情報の授受を行う。
情報入力部132にはキーボードやマウスの他、情報提示部130の表示画面に設置されたタッチセンサなどを含んでよい。
【0065】
<食品管理DB144>
図15は、食品管理DB144の一例を示している。この食品管理DB144には、食品管理ファイル146が含まれる。この食品管理ファイル146には、食品情報部148、加熱パターン情報部150、履歴情報部152が設定されている。
食品情報部148には、食品2を特定するための識別情報が格納される。この食品情報部148には識別情報部148-1、属性情報部148-2、数量情報部148-3が含まれる。
【0066】
識別情報部148-1には食品2の名称などの識別情報が格納される。属性情報部148-2には肉、魚、野菜など、食品2の種別を含む属性情報が格納される。数量情報部148-3には製造すべき食品2の数量を表す数量情報が格納される。
加熱パターン情報部150には食品2の加熱パターンを表す加熱情報が格納される。この加熱パターン情報部150には解凍加熱部150-1、内部加熱部150-2、表面加熱部150-3、仕上げ加熱部150-4などが含まれる。
解凍加熱部150-1には食品2の食品情報に関係付けられた解凍加熱に必要な加熱温度(H1)、加熱時間(t1-2)などを含む加熱情報が格納されている。
【0067】
内部加熱部150-2には、食品2の食品情報に関係付けられた食品2の内部加熱に必要な加熱温度(H2)、加熱時間(t2-3)などを含む加熱情報が格納されている。
表面加熱部150-3には、内部加熱後の表面加熱に必要な加熱温度(H3)、加熱時間(t3-4)などを含む加熱情報が格納されている。
仕上げ加熱部150-4には、表面加熱後の仕上げ加熱に必要な加熱温度(H4)、加熱時間(t4-5)などを含む加熱情報が格納されている。
【0068】
そして、履歴情報部152には、食品2の加熱などの処理を含む処理記録など、制御履歴を表す履歴情報が格納される。
このような食品管理DB144を用いれば、制御部120の制御により食品2の加熱に関する情報の検索の他、予測や異常の検知、情報の関係性などの情報処理に活用することができる。
【0069】
<加熱パターン管理DB153>
図16は、加熱パターン管理DB153の一例を示している。この加熱パターン管理DB153には、加熱パターン管理ファイル154が含まれる。この加熱パターン管理ファイル154にはたとえば、図19のAに示す加熱パターンを表すパターン情報が格納され、調理種別部156、食品情報部158、解凍加熱部160、内部加熱部162、表面加熱部164、仕上げ加熱部166が設定されている。
調理種別部156にはフライ、天ぷらなどの調理種別を表す種別情報が格納される。食品情報部158には調理種別に便類された食品2の名称などを表す食品情報が格納される。
【0070】
解凍加熱部160には加熱温度部160-1、加熱時間部160-2が設定され、加熱温度および加熱時間を表す加熱制御情報が格納される。内部加熱部162には加熱温度部162-1、加熱時間部162-2が設定され、加熱温度および加熱時間を表す加熱制御情報が格納される。表面加熱部164には加熱温度部164-1、加熱時間部164-2が設定され、加熱温度および加熱時間を表す加熱制御情報が格納される。仕上げ加熱部166には加熱温度部166-1、加熱時間部166-2が設定され、加熱温度および加熱時間を表す加熱制御情報が格納される。
【0071】
<食品2の製造工程>
図17は、食品2の搬入、加熱、搬出の製造工程を示している。この製造工程には食品2の搬入工程(図17のA)、食品2の加熱工程(図17のB)、食品2の搬出工程(図17のC)が含まれる。
食品2は図17のAに示すように、処理容器114に入れられて加熱前待機部108に搬入されて待機させる。コンベア116-1に処理容器114が載せられると、加熱庫122が空いていれば、コンベア駆動部118-1、118-2が制御部120により制御され、コンベア116-1、116-2を駆動する。これにより、食品2は処理容器114とともに加熱庫122内に搬入される。
【0072】
食品2は図17のBに示すように、加熱庫122に搬入されて加熱される。加熱庫122の庫内温度は温度センサ126で検出され、制御部120に取り込まれる。制御部120は温度センサ126の検出温度から食品2の温度情報を取得し、加熱終了を判断する。
加熱終了を判断したとき、図17のCに示すように、制御部120はコンベア116-2、116-3を駆動し、加熱庫122から処理容器114とともに加熱後の食品2をコンベア116-2からコンベア116-3に引き渡す。これにより、食品2は加熱後待機部112に搬出され、待機状態となる。
【0073】
<食品2の解凍ないし加熱>
図18は、加熱庫122による食品2の解凍・加熱を示している。食品2はコンベア116-2上で、上側より熱源22-1からの熱24、下側より熱源22-2からの熱24により両面加熱が行われる。
熱24を受けると、食品2は加熱されて温度が上昇し、氷層部8が解けて水18に変化し沸騰して蒸気26に変化する。蒸気26の発生は蒸発潜熱により、食品2の表面温度の上昇を抑制する。
加熱庫122の庫内温度は温度センサ126により検出され、制御部120に取り込まれ、熱源22-1、22-2の温度制御に用いられる。
この加熱庫122では、加湿後の食品2の解凍、加熱、内部加熱、表面加熱および仕上げ加熱が行われる。
【0074】
<食品2の解凍・加熱工程>
図19のAは加熱パターンを示している。この加熱パターンには解凍加熱、内部加熱、表面加熱および仕上げ加熱が含まれる。
この加熱温度パターンには解凍加熱時間(t1-2)、内部加熱時間(t2-3)、表面加熱時間(t3-4)および仕上げ加熱時間(t4-5)の各時間が設定されるとともに、加熱温度H1、H2、H3、H4が設定されている。各加熱温度H1、H2、H3、H4は連続でもよいし不連続でもよい。
加熱温度H1、H2、H3、H4の大小関係は一例としてH1<H2<H3<H4である。
解凍加熱時間(t1-2): 加熱開始の時点t1から時点t2までの食品2の解凍時間であり、加熱温度H1に設定する。時間t1-2が経過した時点t2で加熱温度H1から加熱温度H2に上昇させる。
【0075】
内部加熱時間(t2-3): 解凍終了の時点t2から時点t3までの加熱時間であり、解凍後、食品2の内部を加熱するための時間である。この例では、時間t2-3で一定の加熱温度H2に維持される。この場合、食品2の表面温度は蒸発潜熱によって一定温度に維持される。つまり、食品2の表面にある水18を蒸発させ、蒸発潜熱によって表面温度の上昇を抑えることにより、焦げを防止して食品2の内部温度を上昇させる。
そして、水18の蒸発終了により、時点t3で加熱温度H2から加熱温度H3に上昇させる。
【0076】
表面加熱時間(t3-4): 時点t3から時点t4までの食品2の表面を乾燥させる時間であり、加熱温度H2より高い加熱温度H3に上昇させる。時間t3-4で食品2の被覆部6の乾燥を行う。
仕上げ加熱時間(t4-5): 食品2の仕上げ加熱の時間である。この時間では食品2の被覆部6の乾燥から焦げる直前までの加熱を行い、加熱の仕上げを実行する。
【0077】
図19のBは、加熱パターンにより加熱された食品2の温度上昇の一例を示している。Tsは食品2の表面温度の上昇、Tiは内部温度の上昇を示している。
食品2の表面温度Tsは、加熱開始から解凍まで上昇し(t1-2)、解凍後、蒸発潜熱による一定温度(t2-3)を経て、上昇し、加熱終了に至る(t3、t4、t5)。
食品2の内部温度Tiは、加熱開始から解凍、水18の蒸発中も緩やかな温度上昇を継続し(t1、t2、t3)、水18の蒸発終了後、時点t4で表面温度Tsに一致する。つまり、最終的には内部温度Tiは表面温度Tsと同一の推移となる。
【0078】
<食品2の解凍および加熱、仕上げ加熱>
加熱工程: 食品2の加熱工程には、第1の加熱工程、第2の加熱工程、第3の加熱工程が含まれる。第1の加熱工程は、食品2を解凍する工程である。
解凍前の食品2および水18に熱24を照射して加熱し、食品2の温度を上昇させて解凍する。
第2の加熱工程は、解凍後の食品2を加熱する工程であり、水18の蒸発潜熱による食品2の表面温度の上昇を抑制し、食品2を熱24で加熱する。
解凍後の食品2および水18に熱24を照射すると、食品2の表面にある水18が沸騰し、食品2の被覆部6から蒸気26が発生する。この水18が蒸気26に変化するプロセスにおいて、蒸発潜熱により食品2の表面温度が奪われ、熱24の照射による温度上昇が抑制される。この状態は、水18の蒸発が終了するまで維持され、食品本体4は水分を持つ被覆部6で覆われて蒸されるとともに、蒸発潜熱によって被覆部6の過熱が防止される。
【0079】
第3の加熱工程では水18の蒸発終了後の仕上げ加熱を行う。水18の蒸発が終了すると、蒸発潜熱の影響を受けることなく熱24を受けて食品2の被覆部6の温度が上昇し、食品本体4も温められる。この加熱工程では、第2の加熱工程に比較して高い加熱温度で加熱することにより、食品2の温度を上昇させればよい。
【0080】
食品2は、第3の加熱工程で食品本体4の温度は100℃または100℃近傍に上昇する。この結果、食品2は食品本体4および被覆部6は膨張するとともに蒸し焼き状態に維持され、被覆部6は乾燥状態に遷移する。
【0081】
<情報の提示>
この製造システム104において、情報提示部130による情報提示には、たとえば、搬入提示画面、加熱中提示画面、搬出提示画面などが含まれる。
食品2の搬入時、搬入提示画面には食品2の搬入情報や食品情報を提示すればよい。加熱中提示画面には加熱中の食品2の加熱状況、加熱温度、加熱時間などの制御情報を提示すればよい。そして、搬出提示画面には加熱を終了した食品2の提示情報、加熱温度、加熱時間、加熱終了時間などを提示すればよい。
【0082】
<第3の実施の形態の効果>
第3の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) この製造システム104では製造システム32により事前に食品2に氷層部8が形成されているので、加湿処理をする必要がなく、氷層部8の解凍により最適な加熱を行うことができる。
(2) 食品2の解凍の後、水18を沸騰させ、水18の蒸発で蒸発潜熱により熱が奪われ、食品2の表面温度の急激な上昇を抑制でき、食品2の内部温度を均一に上昇させることができる。
【0083】
(3) 蒸発潜熱を伴う加熱により、食品2の内部温度を上昇させて膨張させることができるとともに、被覆部6の熱膨張を図ることができる。
(4) 加熱の継続によって被覆部6を乾燥させることができる。
(5) 被覆部6の乾燥により、食品2の形状を維持することができる。
(6) 食品内部のしっとり感や食材の風味を損なうことなく、被覆部6の硬度を上げることができるので、食品本体4の弾力感とともに、被覆部6のぱりぱり感を高め、歯触り、歯ごたえといった食材が持つ鮮度感のある食感を実現できる。
(7) 食品2の加熱作業者に対する負担を軽減でき、食品2の加熱を自動化したシステムを構築できる。
【実施例0084】
図20は、実施例1に係る製造機器200を示している。図20に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図20において、図5図6と同一部分には同一符号を付してある。
【0085】
製造機器200には製造システム32が搭載され、機器本体202およびコントローラ204が含まれる。機器本体202には既述の調理部36、待機部38、加湿部40、待機部42および冷凍部44が設置されている。機器本体202には窓部206-1、206-2、206-3、206-4および食品搬出部208が形成されている。搬送台210から食品2および処理容器30が調理部36に搬入される。処理中の食品2は、窓部206-1、206-2、206-3、206-4で確認することができる。冷凍後、食品2は食品搬出部208から搬出され、搬送台212に引き渡される。
コントローラ204には既述の制御部46を制御するための処理部214が設置され、この処理部214には情報提示部74や情報入力部76が設置されている。
【0086】
<実施例1の効果>
この実施例1によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 製造システム32を内蔵した製造機器200を実現できる。
(2) 加熱中、加湿中および冷凍中の各食品2は、窓部206-1、206-2、206-3、206-4から監視できるとともに、情報提示部74による提示情報で確認できる。
【実施例0087】
図21は、実施例2に係る製造機器300を示している。図21に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図21において、図12図13と同一部分には同一符号を付してある。
【0088】
製造機器300には製造システム104が搭載され、機器本体302およびコントローラ304が含まれる。機器本体302には既述の加熱前待機部108、加熱部110および加熱後待機部112が設置されている。機器本体302には窓部306-1、306-2、306-3および食品搬出部308が形成されている。搬送台310から食品2および処理容器114が加熱前待機部108に搬入される。処理中の食品2は、窓部306-1、306-2、306-3で確認することができる。加熱後、食品2は食品搬出部308から搬出され、搬送台312に引き渡される。
コントローラ304には既述の制御部120を制御するための処理部314が設置され、この処理部314には情報提示部130や情報入力部132が設置されている。
【0089】
<実施例2の効果>
この実施例2によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 製造システム104を内蔵した製造機器300を実現できる。
(2) 処理中の食品2は、窓部306-1、306-2、306-3から容易に監視できるとともに、情報提示部130による提示情報で確認できる。
【0090】
〔他の実施の形態〕
上記実施の形態には次のバリエーションが含まれる。
(1) 第2の実施の形態では食品2の表面を加湿する手段として水噴射を例示したが、霧状の水を噴霧してもよい。
(2) 水噴射処理において、調味や着色などを施して食感の他、色調や鮮度感などの外観品位を高めてもよい。
【0091】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、加熱調理後、冷凍された食品に氷層部を形成したので、二次的な加熱処理にあっては加湿処理を省略でき、食品の加熱処理の均一化や食品2の食感の向上を図ることができるとともに、作業者の負担軽減を実現できる。
【符号の説明】
【0093】
2 食品
4 食品本体
6 被覆部
8 氷層部
10 調理容器
12 食用油
14 熱源
16 調理容器
18 水
20 冷凍庫
22-1、22-2 熱源
23-1、23-2 熱源駆動部
24 熱
26 蒸気
28 油脂
30 処理容器
32 製造システム
34 搬送機構
35-1、35-2、35-3、35-4、35-5、116-1、116-2、116-3 コンベア
37-1、37-2、37-3、37-4、37-5、118-1、118-2、118-3 コンベア駆動部
36 調理部
38 待機部
39 第1の計量部
40 加湿部
42 待機部
43 第2の計量部
44 冷凍部
46 制御部
48 熱源駆動部
50、68、126 温度センサ
52、72 重量センサ
54 加湿庫
56-1 上部筐体
56-2 下部筐体
57 水噴射機構
58-1、58-2 水噴射ノズル
60 水噴射部
62 水噴射駆動部
64 冷凍庫
66 冷凍機構
70 冷凍駆動部
74、130 情報提示部
76、132 情報入力部
78、134 プロセッサ
80,136 記憶部
82、138 入出力部(I/O)
84、140 通信部
86、142 タイマー
88、144 食品管理DB
90、146 食品管理ファイル
92 食品情報部
92-1 識別情報部
92-2 属性情報部
92-3 重量情報部
94 調理情報部
94-1 加熱時間部
94-2 加熱温度部
96 加湿情報部
98 冷凍情報部
100 加熱パターン情報部
102 履歴情報部
104 製造システム
106 搬送機構
108 加熱前待機部
110 加熱部
112 加熱後待機部
114 処理容器
120 制御部
122 加熱庫
128-1 上部筐体
128-2 下部筐体
148 食品情報部
148-1 識別情報部
148-2 属性情報部
148-3 数量情報部
150 加熱パターン情報部
150-1 解凍加熱部
150-2 内部加熱部
150-3 表面加熱部
150-4 仕上げ加熱部
152 履歴情報部
153 加熱パターン管理DB
154 加熱パターン管理ファイル
156 調理種別部
158 食品情報部
160 解凍加熱部
162 内部加熱部
164 表面加熱部
166 仕上げ加熱部
160-1 加熱温度部
160-2 加熱時間部
162-1 加熱温度部
162-2 加熱時間部
164-1 加熱温度部
164-2 加熱時間部
166 仕上げ加熱部
166-1 加熱温度部
166-2 加熱時間部
200、300 製造機器
202、302 機器本体
204、304 コントローラ
206-1、206-2、206-3、206-4、306-1、306-2、306-3 窓部
208、308 食品搬出部
210、212、310、312 搬送台
214、314 処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21