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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076122
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】定圧弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/17 20060101AFI20220512BHJP
   F16K 31/126 20060101ALI20220512BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
F16K7/17 B
F16K31/126 Z
F16K27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186392
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 起美仁
【テーマコード(参考)】
3H051
3H056
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051DD07
3H051FF09
3H056AA07
3H056BB41
3H056CA07
3H056CB02
3H056CD03
3H056DD04
3H056GG04
3H056GG14
(57)【要約】
【課題】ダイアフラムの屈曲性に優れるとともにパーティクルの発生が低減できる定圧弁を提供する。
【解決手段】弁体21には、弁体21及びシャフト31の移動方向に対して垂直な弁体側当接面21xが形成され、シャフト31には、弁体21及びシャフト31の移動方向に対して垂直なシャフト側当接面31xが形成され、流量制御流路13には、弁体21及びシャフト31の移動方向に対して垂直な弁座側当接面41xが形成され、弁体側当接面21x又は弁座側当接面41xには、リング状に突出させた弁閉塞用当接部41yが形成され、弁体側当接面21x又はシャフト側当接面31xには、リング状に突出させた弁体押圧用当接部31yが形成され、シャフト31とシャフト側ダイアフラム32とを、PTFEと架橋PTFEとを接合した複合材で形成し、シャフト側ダイアフラム32を、PTFEによって形成し、シャフト側当接面31xを、架橋PTFEによって形成した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御流体が流入する流入流路と、
前記被制御流体が流出する流出流路と、
前記流入流路と前記流出流路との間に位置する流量制御流路と、
前記流量制御流路に配置される弁体と、
前記弁体を変位させる弁体側ダイアフラムと、
前記弁体を押圧するシャフトと、
前記シャフトを変位させるシャフト側ダイアフラムと
を有し、
前記弁体側ダイアフラムの一方には前記流入流路が連通し、前記弁体側ダイアフラムの他方には弁体側加圧室が形成され、
前記シャフト側ダイアフラムの一方には前記流出流路が連通し、前記シャフト側ダイアフラムの他方にはシャフト側加圧室が形成され、
前記流入流路から流入する前記被制御流体による流入側圧力が変動しても、前記弁体側ダイアフラム及び前記シャフト側ダイアフラムが変形することによって、前記流出流路から流出する前記被制御流体による流出側圧力を一定に維持する定圧弁であって、
前記弁体には、前記弁体及び前記シャフトの移動方向に対して垂直な弁体側当接面が形成され、
前記シャフトには、前記弁体及び前記シャフトの前記移動方向に対して垂直なシャフト側当接面が形成され、
前記流量制御流路には、前記弁体及び前記シャフトの移動方向に対して垂直な弁座側当接面が形成され、
前記弁体側当接面又は前記弁座側当接面には、リング状に突出させた弁閉塞用当接部が形成され、
前記弁体側当接面又は前記シャフト側当接面には、リング状に突出させた弁体押圧用当接部が形成され、
前記シャフトと前記シャフト側ダイアフラムとを、PTFEと架橋PTFEとを接合した複合材で形成し、
前記シャフト側ダイアフラムを、前記PTFEによって形成し、
前記シャフト側当接面を、前記架橋PTFEによって形成した
ことを特徴とする定圧弁。
【請求項2】
前記弁体と前記弁体側ダイアフラムとを、前記複合材で形成し、
前記弁体側ダイアフラムを、前記PTFEによって形成し、
前記弁体側当接面を、前記架橋PTFEによって形成した
ことを特徴とする請求項1に記載の定圧弁。
【請求項3】
前記弁体側当接面を、前記架橋PTFEによって形成した
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定圧弁。
【請求項4】
前記弁閉塞用当接部及び前記弁体押圧用当接部を、前記架橋PTFEによって形成した
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定圧弁。
【請求項5】
流路形成用ボディと、弁体側ボディと、シャフト側ボディとから、ボディを構成し、
前記流路形成用ボディは、前記流入流路と、前記流出流路と、前記流量制御流路とを形成し、
前記弁体側ボディは、前記弁体側加圧室を形成し、
前記シャフト側ボディは、前記シャフト側加圧室を形成し、
前記弁体側ダイアフラムは、前記弁体側ボディによって前記流路形成用ボディに固定され、
前記シャフト側ダイアフラムは、前記シャフト側ボディによって前記流路形成用ボディに固定され、
前記弁体側ボディ及び前記シャフト側ボディを、前記PTFEによって形成し、
前記流路形成用ボディを、前記架橋PTFEによって形成した
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入流路から流入する被制御流体による流入側圧力が変動しても、流出流路から流出する被制御流体による流出側圧力を一定に維持する定圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造のシリコンウェハプロセスでの洗浄、剥離工程では、強酸や強アルカリなどの腐食性の高い薬液を使用する。
また、弁からの金属や有機物溶質は許されず、洗浄、剥離工程で用いられる薬液には、極めて高い清浄度が求められる。そのため、薬液を流す弁には、耐酸性、耐アルカリ性に優れて低溶出材料であるフッ素樹脂が採用される。
半導体製造工程における流体の流通経路にパーティクルが混入することは、製品の歩留まりに大きな影響を与えるため、弁からのパーティクルの発生は許されない。
そのため、高純度薬液、超純水の供給用弁として、弁の接液部に摺動部からの発塵が影響しないように、ダイアフラムで駆動部と接液部とを隔離する構造が採用されている。
例えば特許文献1では、被制御流体が流入する流入流路と、被制御流体が流出する流出流路と、流入流路と流出流路との間に位置する流量制御流路と、流量制御流路に配置される弁体と、弁体を変位させる弁体側ダイアフラムと、弁体を押圧するシャフトと、シャフトを変位させるシャフト側ダイアフラムとを有し、弁体側ダイアフラムの一方には流入流路が連通し、弁体側ダイアフラムの他方には弁体側加圧室が形成され、シャフト側ダイアフラムの一方には流出流路が連通し、シャフト側ダイアフラムの他方にはシャフト側加圧室が形成された定圧弁を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-193106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐薬品性及び屈曲性に優れ、長寿命である材料としてPTFE(四フッ化エチレン樹脂)がある。
しかし、昨今では、更なる半導体製造プロセスの微細化(10nmプロセス以下)の開発に伴い、切削加工面からの発塵に対しても改善が要求されるようになっており、PTFEを用いても要求に十分に対応し難くなっている。
なお、架橋PTFEは、PTFEと同等の耐薬品性と屈曲性とを持ち、PTFEよりも更に耐摩耗性に優れた材料であるが、製造工程がPTFEよりも多くなることから高額であり、弁体全てを架橋PTFEで構成しにくい。
【0005】
そこで本発明は、ダイアフラムの屈曲性に優れるとともにパーティクルの発生が低減できる定圧弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の定圧弁は、被制御流体が流入する流入流路11と、前記被制御流体が流出する流出流路12と、前記流入流路11と前記流出流路12との間に位置する流量制御流路13と、前記流量制御流路13に配置される弁体21と、前記弁体21を変位させる弁体側ダイアフラム22と、前記弁体21を押圧するシャフト31と、前記シャフト31を変位させるシャフト側ダイアフラム32とを有し、前記弁体側ダイアフラム22の一方には前記流入流路11が連通し、前記弁体側ダイアフラム22の他方には弁体側加圧室14が形成され、前記シャフト側ダイアフラム32の一方には前記流出流路12が連通し、前記シャフト側ダイアフラム32の他方にはシャフト側加圧室15が形成され、前記流入流路11から流入する前記被制御流体による流入側圧力が変動しても、前記弁体側ダイアフラム22及び前記シャフト側ダイアフラム32が変形することによって、前記流出流路12から流出する前記被制御流体による流出側圧力を一定に維持する定圧弁であって、前記弁体21には、前記弁体21及び前記シャフト31の移動方向に対して垂直な弁体側当接面21xが形成され、前記シャフト31には、前記弁体21及び前記シャフト31の前記移動方向に対して垂直なシャフト側当接面31xが形成され、前記流量制御流路13には、前記弁体21及び前記シャフト31の移動方向に対して垂直な弁座側当接面41xが形成され、前記弁体側当接面21x又は前記弁座側当接面41xには、リング状に突出させた弁閉塞用当接部41yが形成され、前記弁体側当接面21x又は前記シャフト側当接面31xには、リング状に突出させた弁体押圧用当接部31yが形成され、前記シャフト31と前記シャフト側ダイアフラム32とを、PTFEと架橋PTFEとを接合した複合材で形成し、前記シャフト側ダイアフラム32を、前記PTFEによって形成し、前記シャフト側当接面31xを、前記架橋PTFEによって形成したことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の定圧弁において、前記弁体21と前記弁体側ダイアフラム22とを、前記複合材で形成し、前記弁体側ダイアフラム22を、前記PTFEによって形成し、前記弁体側当接面21xを、前記架橋PTFEによって形成したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の定圧弁において、前記弁体側当接面21xを、前記架橋PTFEによって形成したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の定圧弁において、前記弁閉塞用当接部41y及び前記弁体押圧用当接部31yを、前記架橋PTFEによって形成したることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の定圧弁において、流路形成用ボディ41と、弁体側ボディ42と、シャフト側ボディ43とから、ボディ40を構成し、前記流路形成用ボディ41は、前記流入流路11と、前記流出流路12と、前記流量制御流路13とを形成し、前記弁体側ボディ42は、前記弁体側加圧室14を形成し、前記シャフト側ボディ43は、前記シャフト側加圧室15を形成し、前記弁体側ダイアフラム22は、前記弁体側ボディ42によって前記流路形成用ボディ41に固定され、前記シャフト側ダイアフラム32は、前記シャフト側ボディ43によって前記流路形成用ボディ41に固定され、前記弁体側ボディ42及び前記シャフト側ボディ43を、前記PTFEによって形成し、前記流路形成用ボディ41を、前記架橋PTFEによって形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の定圧弁によれば、弁体側当接面、シャフト側当接面、及び弁座側当接面を、弁体及びシャフトの移動方向に対して垂直な面とし、リング状に突出させた弁閉塞用当接部によって、弁体側当接面と弁座側当接面とを当接させ、リング状に突出させた弁体押圧用当接部によって、弁体側当接面とシャフト側当接面とを当接させるため、当接によるパーティクルの発生を低減できる。また、シャフトとシャフト側ダイアフラムとを複合材で形成することで、シャフトとシャフト側ダイアフラムとが別部材で形成される場合と比較してパーティクルの発生が低減できる。また、シャフト側ダイアフラムをPTFEによって形成することで屈曲性に優れ、シャフト側当接面を架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例による定圧弁を示す断面図
図2】同定圧弁の動作状態を示す断面図
図3】本発明の他の実施例による定圧弁を示す断面図
図4】本発明の更に他の実施例による定圧弁を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による定圧弁は、弁体には、弁体及びシャフトの移動方向に対して垂直な弁体側当接面が形成され、シャフトには、弁体及びシャフトの移動方向に対して垂直なシャフト側当接面が形成され、流量制御流路には、弁体及びシャフトの移動方向に対して垂直な弁座側当接面が形成され、弁体側当接面又は弁座側当接面には、リング状に突出させた弁閉塞用当接部が形成され、弁体側当接面又はシャフト側当接面には、リング状に突出させた弁体押圧用当接部が形成され、シャフトとシャフト側ダイアフラムとを、PTFEと架橋PTFEとを接合した複合材で形成し、シャフト側ダイアフラムを、PTFEによって形成し、シャフト側当接面を、架橋PTFEによって形成したものである。本実施の形態によれば、弁体側当接面、シャフト側当接面、及び弁座側当接面を、弁体及びシャフトの移動方向に対して垂直な面とし、リング状に突出させた弁閉塞用当接部によって、弁体側当接面と弁座側当接面とを当接させ、リング状に突出させた弁体押圧用当接部によって、弁体側当接面とシャフト側当接面とを当接させるため、当接によるパーティクルの発生を低減できる。また、シャフトとシャフト側ダイアフラムとを複合材で形成することで、シャフトとシャフト側ダイアフラムとが別部材で形成される場合と比較してパーティクルの発生が低減できる。また、シャフト側ダイアフラムをPTFEによって形成することで屈曲性に優れ、シャフト側当接面を架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による定圧弁において、弁体と弁体側ダイアフラムとを、複合材で形成し、弁体側ダイアフラムを、PTFEによって形成し、弁体側当接面を、架橋PTFEによって形成したものである。本実施の形態によれば、弁体と弁体側ダイアフラムとを複合材で形成することで、弁体と弁体側ダイアフラムとが別部材で形成される場合と比較してパーティクルの発生が低減できる。また、弁体側ダイアフラムをPTFEによって形成することで屈曲性に優れ、弁体側当接面を架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による定圧弁において、弁体側当接面を、架橋PTFEによって形成したものである。本実施の形態によれば、弁体側当接面を架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3の実施の形態による定圧弁において、弁閉塞用当接部及び弁体押圧用当接部を、架橋PTFEによって形成したものである。本実施の形態によれば、弁閉塞用当接部及び弁体押圧用当接部を架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4の実施の形態による定圧弁において、流路形成用ボディと、弁体側ボディと、シャフト側ボディとから、ボディを構成し、流路形成用ボディは、流入流路と、流出流路と、流量制御流路とを形成し、弁体側ボディは、弁体側加圧室を形成し、シャフト側ボディは、シャフト側加圧室を形成し、弁体側ダイアフラムは、弁体側ボディによって流路形成用ボディに固定され、シャフト側ダイアフラムは、シャフト側ボディによって流路形成用ボディに固定され、弁体側ボディ及びシャフト側ボディを、PTFEによって形成し、流路形成用ボディを、架橋PTFEによって形成したものである。本実施の形態によれば、流路形成用ボディを架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
【実施例0014】
以下本発明の一実施例による定圧弁について説明する。
図1は本実施例による定圧弁を示す断面図であり、図1(a)は定圧弁全体、図1(b)はシャフト及びシャフト側ダイアフラム、図1(c)は弁体及び弁体側ダイアフラム、図1(d)はボディを示している。
【0015】
本実施例による定圧弁は、被制御流体が流入する流入流路11と、被制御流体が流出する流出流路12と、流入流路11と流出流路12との間に位置する流量制御流路13と、流量制御流路13に配置される弁体21と、弁体21を変位させる弁体側ダイアフラム22と、弁体21を押圧するシャフト31と、シャフト31を変位させるシャフト側ダイアフラム32とを有している。
本実施例による定圧弁は、弁体側ダイアフラム22の一方には流入流路11が連通し、弁体側ダイアフラム22の他方には弁体側加圧室14が形成され、シャフト側ダイアフラム32の一方には流出流路12が連通し、シャフト側ダイアフラム32の他方にはシャフト側加圧室15が形成される。
弁体側加圧室14には、弁体側ダイアフラム22を押圧する押圧部材14aが配置される。押圧部材14aは、弾性部材14bによって弁体側ダイアフラム22の方向に付勢される。
シャフト側加圧室15には、加圧気体が導入され、導入される加圧気体によってシャフト側ダイアフラム32が押圧される。
なお、本実施例では、弁体側加圧室14には弾性部材14bを設けているが、弾性部材14bとともに、又は弾性部材14bに代えて流体により付勢してもよい。
また、本実施例では、シャフト側加圧室15には加圧気体を導入するが、加圧気体とともに又は加圧気体に代えてバネ材を設けてもよい。
【0016】
なお、図中において墨色は架橋PTFEであることを示している。
図1(b)に示すように、シャフト31とシャフト側ダイアフラム32とは、シャフト側部材30として樹脂で一体に成型されている。シャフト側部材30は、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)と架橋PTFE(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)とを接合した複合材で形成している。
架橋PTFEは、独立していた分子同士を橋架けする反応で出来ているPTFEであり、例えば化学架橋や放射線架橋などの架橋方法によって製作される。架橋PTFEは、摺動特性において、PTFEに対して1,000倍以上の耐摩耗性があり、摺動相手の材料が損傷しにくい。また、架橋PTFEは、耐変性が高く荷重に対して変形しにくく、室温及び高温のいずれでもPTFEより耐変性に優れている。また、架橋PTFEは、切削、溶接、及び貼り付けなどの加工性、耐薬品性、非粘着性、電気特性はPTFEと同等である。PTFEと架橋PTFEとの接合は、加圧・加熱接合により行う。
【0017】
シャフト31は、シャフト側ダイアフラム32に繋がる接続部31aと、弁体21を押圧する当接部31bとを有する。
接続部31aは、円錐台形状をしており、底面がシャフト側ダイアフラム32に繋がり、天面が当接部31bに繋がる。
当接部31bは、円柱形状をしており、一方の端面が接続部31aの天面に繋がり、他方の端面がシャフト側当接面31xとなる。
シャフト側当接面31xは、弁体21及びシャフト31の移動方向に対して垂直な面となる。
シャフト側当接面31xには、リング状に突出させた弁体押圧用当接部31yが形成されている。弁体押圧用当接部31yは、シャフト側当接面31xの外周に形成することが好ましい。すなわち、弁体押圧用当接部31yの外径は、当接部31bの外径と同一とすることが好ましい。
【0018】
シャフト側ダイアフラム32は、シャフト31に繋がる肉厚部32aと、肉厚部32aの外周に形成される薄肉部32bと、薄肉部32bの更に外周に形成される固定部32cとを有する。シャフト側ダイアフラム32は、肉厚部32aの中央部で肉厚部32aと繋がる。
シャフト側ダイアフラム32は、PTFEによって形成し、シャフト側当接面31x及び弁体押圧用当接部31yは、架橋PTFEによって形成する。
本実施例では、シャフト側ダイアフラム32、接続部31a、及び当接部31bの接続部31a側をPTFEによって形成し、当接部31bのシャフト側当接面31x側を架橋PTFEによって形成している。
【0019】
図1(c)に示すように、弁体21と弁体側ダイアフラム22とは、弁体側部材20として樹脂で一体に成型されている。弁体側部材20は、PTFEと架橋PTFEとを接合した複合材で形成している。
弁体21は、弁体側ダイアフラム22に繋がる接続部21aと、シャフト31によって押圧されるとともに弁座側当接面41xに当接する当接部21bとを有する。
接続部21aは、円柱形状をしており、一方の端面が弁体側ダイアフラム22に繋がり、他方の端面が当接部21bに繋がる。
当接部21bは、円柱形状をしており、一方の端面が接続部21aの他方の端面に繋がり、他方の端面が弁体側当接面21xとなる。
当接部21bは、接続部21aよりも大きな外径で形成されている。
弁体側当接面21xは、弁体21及びシャフト31の移動方向に対して垂直な面となる。
【0020】
弁体側ダイアフラム22は、弁体21に繋がる薄肉部22aと、薄肉部22aの外周に形成される固定部22bとを有する。弁体側ダイアフラム22は、薄肉部22aの中央部で薄肉部22aと繋がる。
弁体側ダイアフラム22は、PTFEによって形成し、弁体側当接面21xは、架橋PTFEによって形成する。
本実施例では、弁体側ダイアフラム22、接続部21a、及び当接部21bの接続部21a側をPTFEによって形成し、当接部21bの弁体側当接面21x側を架橋PTFEによって形成している。
【0021】
図1(d)に示すように、ボディ40は、流路形成用ボディ41と、弁体側ボディ42と、シャフト側ボディ43とを有している。
流路形成用ボディ41は、流入流路11と、流出流路12と、流量制御流路13とを形成する。
弁体側ボディ42は、弁体側加圧室14と、弁体側加圧室14に連通する呼吸孔14cを形成する。
弁体側部材20は、弁体側ボディ42によって流路形成用ボディ41に固定される。
シャフト側ボディ43は、シャフト側加圧室15と、シャフト側加圧室15に連通する設定エアポート15a及び排気ポート15bとを形成する。
シャフト側部材30は、シャフト側ボディ43によって流路形成用ボディ41に固定される。
【0022】
弁座側当接面41xは、流量制御流路13に、弁体21及びシャフト31の移動方向に対して垂直な面として形成される。
弁座側当接面41xには、リング状に突出させた弁閉塞用当接部41yが形成されている。弁閉塞用当接部41yは、弁座側当接面41xの内周に形成することが好ましい。すなわち、弁閉塞用当接部41yの内径は、弁座側当接面41xの内径と同一とすることが好ましい。
弁体側当接面41x及び弁閉塞用当接部41yは架橋PTFEによって形成し、弁体側当接面41x以外の流路形成用ボディ41と、弁体側ボディ42と、シャフト側ボディ43とはPTFEによって形成する。
【0023】
図2は本実施例による定圧弁の動作状態を示す断面図であり、図2(a)は被制御流体が流れている状態、図2(b)は流出側圧力が高くなった状態を示している。
図2(a)に示すように、流入流路11から流入する被制御流体は、流量制御流路13を通り、流出流路12から流出する。
シャフト側ダイアフラム32は、シャフト側加圧室15の気体圧力によってシャフト31が弁体21を押圧する方向に変形する。設定エアポート15aから加圧気体を導入し、又は排気ポート15bから加圧気体を排出することで、シャフト側加圧室15の設定圧力を調整する。
弁体側ダイアフラム22は、弁体側加圧室14の押圧力によって弁体21がシャフト31を押圧する方向に変形する。弁体側加圧室14の押圧力は、弾性部材14bによって設定される。
図2(a)に示すように、流量制御流路13に被制御流体が流れている状態では、シャフト31はシャフト側ダイアフラム32によって弁体21を押圧し、弁体21は弁体側ダイアフラム22によってシャフト31を押圧するので、弁体21とシャフト31は当接した状態である。
【0024】
図2(a)に示す状態において、流入流路11から流入する被制御流体による流入側圧力が上昇し、設定圧力に対して高くなると、シャフト側ダイアフラム32は、流入側圧力によってシャフト31が弁体21から離間する方向に変位する。
シャフト31が弁体21から離間する方向に変位することで弁体21はシャフト31とともに変位する。すなわち、弁体21は、弁座側当接面41xに近接する方向に変位するため、流量制御流路13が絞られる。
流量制御流路13が絞られることで、流出流路12から流出する被制御流体による流出側圧力が上昇することを防ぐことができる。
一方、図2(a)に示す状態において、流入流路11から流入する被制御流体による流入側圧力が低下し、設定圧力に対して低くなると、シャフト側ダイアフラム32は、シャフト31が弁体21を押圧する方向に変位する。
シャフト31が弁体21を押圧する方向に変位することで弁体21は変位する。すなわち、弁体21は、弁座側当接面41xから離間する方向に変位するため、流量制御流路13が拡大する。
流量制御流路13が拡大することで、流出流路12から流出する被制御流体による流出側圧力が低下することを防ぐことができる。
このように本実施例による定圧弁は、流入流路11から流入する被制御流体による流入側圧力が変動しても、シャフト側ダイアフラム32が変形することによって、流出流路12から流出する被制御流体による流出側圧力を一定に維持することができる。なお、弁体21をシャフト31とともに変位させるために、弁体側ダイアフラム22も、流入側圧力の変動とともに変位する。
【0025】
図2(b)は流出側圧力が高くなった状態を示している。
流出側圧力が高くなると、シャフト側ダイアフラム32は、流出側圧力によってシャフト31が弁体21から離間する方向に変位する。
シャフト31が弁体21から離間する方向に変位することで、弁体21はシャフト31とともに変位し、弁体21は弁座側当接面41xに当接する。
弁体21が弁座側当接面41xに当接した状態でも、流出側圧力が設定圧力よりも高い場合には、図2(b)に示すように、シャフト31は弁体21から離間する。
従って、流出側圧力が高くなり、弁体21が弁座側当接面41xに当接しても、弁体21には、弾性部材14bによる押圧力だけで、流出側圧力による負荷が加わることがない。
【0026】
図3は本発明の他の実施例による定圧弁を示す断面図である。
上記実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例では、流路形成用ボディ41を、架橋PTFEによって形成した点が上記実施例と相違し、その他の構成は同一である。
本実施例のように、流路形成用ボディ41を、全て架橋PTFEによって形成することで、流入流路11、流出流路12、及び流量制御流路13におけるパーティクルの発生が低減できる。
【0027】
図4は本発明の更に他の実施例による定圧弁を示す断面図である。
上記実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例では、弁体押圧用当接部31y及び弁閉塞用当接部41yを、弁体側当接面21xに設けた点が上記実施例と相違し、その他の構成は同一である。
本実施例のように、弁体押圧用当接部31yをシャフト側当接面31xではなく、弁閉塞用当接部41yを弁座側当接面41xではなく、弁体側当接面21xに形成してもよい。
なお、図3に示す実施例を、図4に示す実施例に適用してもよい。
【0028】
以上のように、本実施例によれば、弁体側当接面21x、シャフト側当接面31x、及び弁座側当接面41xを、弁体21及びシャフト31の移動方向に対して垂直な面とし、リング状に突出させた弁閉塞用当接部41yによって、弁体側当接面21xと弁座側当接面41xとを当接させ、リング状に突出させた弁体押圧用当接部31yによって、弁体側当接面21xとシャフト側当接面31xとを当接させるため、当接によるパーティクルの発生を低減できる。また、シャフト31とシャフト側ダイアフラム32とを複合材で形成することで、シャフト31とシャフト側ダイアフラム32とが別部材で形成される場合と比較してパーティクルの発生が低減できる。また、シャフト側ダイアフラム32をPTFEによって形成することで屈曲性に優れ、シャフト側当接面31xを架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
また、本実施例によれば、弁体21と弁体側ダイアフラム22とを複合材で形成することで、弁体21と弁体側ダイアフラム22とが別部材で形成される場合と比較してパーティクルの発生が低減できる。また、弁体側ダイアフラム22をPTFEによって形成することで屈曲性に優れ、弁体側当接面21xを架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
また、本実施例によれば、弁体側当接面21xを架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
また、本実施例によれば、弁閉塞用当接部41y及び弁体押圧用当接部31yを架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
また、本実施例によれば、流路形成用ボディ41を架橋PTFEによって形成することでパーティクルの発生が低減できる。
【0029】
図1及び図2に示す定圧弁について、全ての部材をPTFEとした場合を比較例としてパーティクル発生量について実証実験を行った。その結果、本実施例による定圧弁は、比較例に対して15nm以下のパーティクル発生量が、定常制御状態で1/10に低減していた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、半導体製造分野において精密な流量制御及び高清浄度が要求される定圧弁に適している。
【符号の説明】
【0031】
11 流入流路
12 流出流路
13 流量制御流路
14 弁体側加圧室
14a 押圧部材
14b 弾性部材
14c 呼吸孔
15 シャフト側加圧室
15a 設定エアポート
15b 排気ポート
21 弁体
21a 接続部
21b 当接部
21x 弁体側当接面
22 弁体側ダイアフラム
22a 薄肉部
22b 固定部
30 シャフト側部材
31 シャフト
31a 接続部
31b 当接部
31x シャフト側当接面
31y 弁体押圧用当接部
32 シャフト側ダイアフラム
32a 肉厚部
32b 薄肉部
32c 固定部
40 ボディ
41 流路形成用ボディ
41x 弁座側当接面
41y 弁閉塞用当接部
42 弁体側ボディ
43 シャフト側ボディ
図1
図2
図3
図4