(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076148
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法及び製造用組成物
(51)【国際特許分類】
C12P 7/42 20060101AFI20220512BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
C12P7/42
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186432
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昭介
(72)【発明者】
【氏名】福居 俊昭
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC02
4B064AD02
4B064CA02
4B064CC03
4B064CC30
4B064CD09
4B064CD16
4B064CE08
4B064DA16
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BA21
4B065BB08
4B065BB14
4B065BC01
4B065CA55
4B065CA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法及び製造用組成物の提供。
【解決手段】イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させることを含む、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させることを含む、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
【請求項2】
前記炭素源が、ポリエチレンテレフタル酸及び糖類からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカン酸が、3-ヒドロキシブタン酸を構成単位とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
イデオネラ・サカイエンシスを含む、ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
【請求項5】
さらに、炭素源を含む、請求項4に記載のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
【請求項6】
前記炭素源が、ポリエチレンテレフタル酸及び糖類からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4又は5に記載のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
【請求項7】
前記ポリヒドロキシアルカン酸が、3-ヒドロキシブタン酸を構成単位とする、請求項4~6のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法及びポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、そのほとんどが石油を原料として製造されている。また、使用済みのプラスチックは、埋め立て、又は焼却などにより処理されたり、環境放出されたりするものが多く、リサイクルされる割合が少ないことが問題となっている。
【0003】
そこで、近年、微生物等により分解されるポリヒドロキシアルカン酸(PolyHydroxyAlkanoates:PHA)などの生分解性プラスチックの開発が盛んに行われている。
【0004】
一方、プラスチックの1種である、ポリエチレンテレフタル酸(PolyEthylene Terephthalate:PET)を分解する、イデオネラ・サカイエンシスが発見され(非特許文献1)、その応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yoshida et al., Science 351 (6278), 1196-1199, 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、イデオネラ・サカイエンシスがPETを分解すること、及びポリヒドロキシアルカン酸を産生することを見出し、さらに改良を重ねた。
【0009】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させることを含む、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
項2.
前記イデオネラ・サカイエンシスが、イデオネラ・サカイエンシス NBRC 110686である、項1に記載の製造方法。
項3.
前記炭素源が、ポリエチレンテレフタル酸及び糖類からなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記ポリヒドロキシアルカン酸が、3-ヒドロキシブタン酸を構成単位とする、項1~3のいずれかに記載の製造方法。
項5.
イデオネラ・サカイエンシスを含む、ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
項6.
前記イデオネラ・サカイエンシスが、イデオネラ・サカイエンシス NBRC 110686である、項5に記載のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
項7.
さらに、炭素源を含む、項5又は6に記載のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
項8.
前記炭素源が、ポリエチレンテレフタル酸及び糖類からなる群より選択される少なくとも1種である、項5~7のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
項9.
前記ポリヒドロキシアルカン酸が、3-ヒドロキシブタン酸を構成単位とする、項5~8のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物。
【発明の効果】
【0010】
イデオネラ・サカイエンシスを用いたポリヒドロキシアルカン酸の製造方法が提供される。また、イデオネラ・サカイエンシスを含む、ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】イデオネラ・サカイエンシスの電子顕微鏡写真を示す。
【
図2】炭素源として滅菌A-PET顆粒を含む培地にイデオネラ・サカイエンシスを作用させた時の、菌体内のポリヒドロキシアルカン酸分解物の分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0013】
本開示は、イデオネラ・サカイエンシスを含む、ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物を包含する。本明細書において、当該組成物を「本開示のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物」と表記することがある。
【0014】
本開示に用いられるイデオネラ・サカイエンシスとしては、イデオネラ・サカイエンシス NBRC 110686が例示される(上記非特許文献1参照)。イデオネラ・サカイエンシス NBRC 110686は、イデオネラ・サカイエンシス 201-F6、又はイデオネラ・サカイエンシス TISTR 2288とも称される。
【0015】
本開示に用いられるイデオネラ・サカイエンシスは、PETase(EC3.1.1.101)をコードする塩基配列を有することが好ましい。本開示に用いられるイデオネラ・サカイエンシスは、PETaseにより、PETを、モノヒドロキシエチルテレフタル酸に分解することができる。なお、イデオネラ・サカイエンシス NBRC 110686のPETaseのアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号GAP38373.1である。
【0016】
本開示に用いられるイデオネラ・サカイエンシスは、MHETase(EC3.1.1.102)をコードする塩基配列を有することが好ましい。本開示に用いられるイデオネラ・サカイエンシスは、MHETaseにより、モノヒドロキシエチルテレフタル酸を、エチレングリコール及びテレフタル酸に分解することができる。なお、イデオネラ・サカイエンシス NBRC 110686のPETaseのアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号GAP38911.1である。
【0017】
ポリヒドロキシアルカン酸は、微生物等によって産生されるポリエステルである。本開示により得られるポリヒドロキシアルカン酸は、1種のモノマーからなる単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、少なくとも2種以上のモノマーからなる共重合体(コポリマー)であってもよい。構成するモノマーとしては、例えば、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、3-ヒドロキシオクタン酸等の3-ヒドロキシアルカン酸、4-ヒドロキシブタン酸等の4-ヒドロキシアルカン酸、乳酸や2-ヒドロキシブタン酸等の2-ヒドロキシアルカン酸が挙げられる。本開示により得られるポリヒドロキシアルカン酸は、3-ヒドロキシブタン酸を構成単位とすることが好ましい。本開示により得られるポリヒドロキシアルカン酸としては、例えば、3-ヒドロキシブタン酸モノマーの単独重合体であるポリ(3-ヒドロキシブタン酸)等が挙げられる。
【0018】
ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物中、イデオネラ・サカイエンシスの含有量は、適宜設定することができ、例えば、0.00001~100質量%とすることができる。より具体的には、0.00001~90質量%であってもよい。
【0019】
ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物は、さらに炭素源を含んでいても良い。
本開示に用いられる炭素源としては、例えば、微生物の培養に一般的に用いられる炭素源が挙げられる。より具体的には、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖類;有機酸等が例示される。
単糖類としては、例えば、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、エリトロース、トレオース、グリセルアルデヒド等のアルドース;プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、リブロース、キシルロース、エリトルロース、ジヒドロキシアセトン等のケトース;N-アセチルグルコサミン等が挙げられる。中でも、N-アセチルグルコサミンが好ましい。オリゴ糖類としては、例えば、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖類等が挙げられる。中でも、マルトースが好ましい。多糖類としては、例えば、澱粉、セルロース、グリコーゲン、デキストラン、グルコマンナン、キシラン等が挙げられる。また、糖類としては、糖蜜、蜂蜜、果糖ブドウ糖液糖、澱粉加水分解物、水飴などの糖類の混合物であってもよい。有機酸としては、例えば、グルコン酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
また、本開示に用いられる炭素源としては、例えばPETを用いることもできる。PETはジカルボン酸成分であるテレフタル酸、及びジオール成分であるエチレングリコールの重縮合体である。PETとしては、結晶性PET(C-PETとも称される)であってもよく、非晶性PET(アモルファスPET、又はA-PETとも称される)であってもよい。中でも、非晶性PETを好適に用いることができる。また、本開示に用いられる炭素源としては、例えばイソフタル酸共重合体PETを用いることもできる。また、本開示に用いられる炭素源としては、例えばPETの構成成分である、テレフタル酸又はエチレングリコールを用いることもできる。また、本開示に用いられる炭素源としては、モノヒドロキシエチルテレフタル酸(MHET)、ビスヒドロキシエチルテレフタル酸(BHET)等のPETの加水分解物を用いることもできる。
PETの形態は特に限定されず、例えば、顆粒状、繊維状、フィルム状、塊状、ボトル状、粒状、フレーク状、ペレット状、これらの混合体等が挙げられる。
これらの炭素源は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物中、例えば、炭素源は、PETのみであってもよい。換言すれば、ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物は、PET以外に、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖類;有機酸等を含んでいなくても良い。
【0020】
ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物中、炭素源の含有量は、適宜設定することができ、例えば、1~99.9999質量%とすることができる。
【0021】
ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物中、イデオネラ・サカイエンシス及び炭素源の含有割合は、適宜設定することができ、例えば、0.0001:99.9999~90:10とすることができる。
【0022】
ポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物は、上述した成分の他、さらに他の成分を含有することができる。
【0023】
他の成分としては、例えば、溶媒、分散媒(例えば、グリセロール、DMSO、スキムミルク等)、保存剤、賦形剤、活性剤、防腐剤、pH調整剤、安定化剤、培地成分(例えば、寒天;アンモニウム塩、硝酸塩、酵母エキス、ペプトン等の窒素源;炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の無機塩;ビタミン源;微量元素;抗生物質等)などが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本開示のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物は、イデオネラ・サカイエンシスと、炭素源又は他の成分とを混合することによって用時調製されるものであってもよい。
【0024】
本開示のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物は、固体状(例えば、粉末状、顆粒状、ゲル状、ペースト状など)であってもよく、液体状(例えば、溶液状、懸濁液状)等であってもよい。
【0025】
本開示のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物は、イデオネラ・サカイエンシスと、必要に応じて炭素源又は他の成分とを組み合わせて常法により調製することができる。
【0026】
本開示のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物は、ポリヒドロキシアルカン酸を製造するための組成物として好適に用いることができる。
【0027】
本開示は、ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法をも包含する。本明細書において、当該方法を「本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法」と表記することがある。
【0028】
本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法は、イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させることを含むことを特徴とする。より具体的には、本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法は、イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料を用いて培養することを含むことを特徴とする。また、本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法は、本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造用組成物を用いるものであってもよい。
【0029】
炭素源を含む試料としては、本開示に用いられる炭素源を含む限り、特に限定されない。本開示に用いられる炭素源としては、上述した記載を援用することができる。
また、本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法において、例えば、炭素源は、PETのみであってもよい。換言すれば、本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法において、炭素源として、PET以外に、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖類;有機酸等が含まれていなくても良い。
本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法が、本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造用組成物を用いるものである場合、本開示のポリヒドロキシアルカン酸製造用組成物に含まれる炭素源の有無に関わらず、別途炭素源を作用させることもできる。
【0030】
炭素源を含む試料は、固体状(例えば、粉末状、顆粒状、ゲル状、ペースト状など)であってもよく、液体状(例えば、溶液状、懸濁液状)等であってもよい。
【0031】
イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させる方法(より具体的には、イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料を用いて培養する方法)としては、慣用の方法および条件を採用することができ、例えば、イデオネラ・サカイエンシスを培養する際に用いられる方法および条件を採用することができる。例えば、イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させる際には、必要に応じて攪拌、振盪、通気などを行うことができる。
また、イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させる際には、イデオネラ・サカイエンシス及び炭素源を含む試料の他、さらに他の成分を混合してもよい。他の成分としては、例えば、微生物の培養に一般的に用いられる成分等が挙げられる。より具体的には、例えば、アンモニウム塩、硝酸塩、酵母エキス、ペプトン等の窒素源;炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の無機塩;ビタミン源;微量元素;抗生物質等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、当該他の成分は、炭素源を含む試料中に含まれていてもよい。
【0032】
イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させる温度としては、イデオネラ・サカイエンシスが生存する限り、特に限定されず、例えば、15~42℃とすることができる。当該範囲の上限若しくは下限は、例えば、20、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、又は41℃であってもよい。より具体的には、例えば、25~39℃であってもよい。
【0033】
イデオネラ・サカイエンシスを、炭素源を含む試料に作用させる時間としては、特に限定されず、例えば1日~1ヶ月とすることができる。当該範囲の上限若しくは下限は、例えば、7、14、21、又は28日であってもよい。より具体的には、例えば、7~14日であってもよい。
【0034】
本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法における、イデオネラ・サカイエンシスと炭素源との割合は、適宜設定することができ、例えば、0.0001:99.9999~90:10とすることができる。
【0035】
本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法は、さらに、イデオネラ・サカイエンシスから、ポリヒドロキシアルカン酸を抽出することを含むことができる。抽出方法としては、慣用の方法および反応条件を採用することができる。
【0036】
本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法においては、炭素源としてPETを用いる場合に、PETを分解するために、PETを高温で処理しなくてもよい。例えば、PETの融解温度、より具体的には255℃以上で処理しなくてもよい。
【0037】
本開示のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法においては、炭素源としてPETを用いる場合に、PETを分解するために、PETをイデオネラ・サカイエンシス由来のPETase以外のPET分解酵素で処理しなくてもよい。イデオネラ・サカイエンシス由来のPETase以外のPET分解酵素としては、例えば、PET分解活性を有するクチナーゼ等が挙げられる。
【0038】
本開示によれば、ポリヒドロキシアルカン酸を製造することができる。また、イデオネラ・サカイエンシスは、PETを分解し、かつポリヒドロキシアルカン酸を産生することができることから、本開示によれば、PETからポリヒドロキシアルカン酸を製造することができる。
【0039】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0040】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0041】
本開示の内容を以下の実験例を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「質量%」を意味する。
【0042】
アモルファスPET(A-PET)顆粒を70%エタノールで滅菌し、クリーンベンチ内で60分間風乾後、デシケーター(湿度0%)で24時間乾燥した。その後、クリーンベンチ内でシャーレ(φ90)に50mLの最少培地を分注し、炭素源として、それぞれに滅菌A-PET顆粒10g、あるいは滅菌マルトース溶液を終濃度1%になるよう添加した。最少培地の組成は以下の通りである。
0.01%酵母エキス、0.02%炭酸水素ナトリウム、0.1%硫酸アンモニウム、0.01%炭酸カルシウム、0.1%ビタミン混合物(0.25%チアミン-塩酸塩、0.005%ビオチン、及び0.05%ビタミンB12)、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した0.2%微量元素(0.5%MgSO4・7H2O、0.05%CuSO4・5H2O、0.05%MnSO4・5H2O、0.05%ZnSO4・7H2O)
【0043】
栄養培地(1.0%ポリペプトン、0.2%酵母エキス、及び0.1%MgSO4)で前培養したイデオネラ・サカイエンシス NBRC 110686を初期OD660=0.002となるように植菌し、30℃、50rpmで往復振盪を行った。216時間後に培養液を遠心(5000×g、10分間)し、菌体のみを回収した。その後、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を計測した。
【0044】
得られた乾燥菌体10~30mgに2mlの硫酸-メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱することにより、菌体内ポリヒドロキシアルカン酸分解物のメチルエステルを得た。これに1mlの蒸留水を添加して激しく攪拌した。静置して二層に分離させた後、下層の有機層を取り出し、その組成をキャピラリーガラスクロマトグラフ装置により分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所製GC-2014、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製InertCap-1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。温度条件は、初発温度100℃から8℃/分の速度で昇温した。内部標準物質としてオクタン酸メチルを用い、ヒドロキシアルカン酸メチルエステルのピークエリアから菌体におけるポリヒドロキシアルカン酸含量を算出した。
【0045】
炭素源として、滅菌A-PET顆粒を用いた場合の分析結果を
図2に示す。なお、炭素源として、マルトースを用いた場合には、乾燥菌体重量あたりのPHA(より具体的にはPHB)含量が、20.9重量%であったのに対して、PETを用いた場合には、33.8重量%であった。