(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076166
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】縦型粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 17/16 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
B02C17/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186456
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】597009046
【氏名又は名称】日本アイリッヒ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】橋口 敬生
(72)【発明者】
【氏名】畑瀬 裕基
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063FF15
4D063FF35
4D063GA02
4D063GA07
4D063GA10
4D063GB02
4D063GB05
4D063GC40
4D063GD27
(57)【要約】
【課題】処理槽およびスクリューを容易に取り外すことが可能な縦型粉砕機を提供する。
【解決手段】縦型粉砕機1は、鉛直方向に延びる処理槽2と、処理槽2内に配置され、鉛直方向に延びるスクリュー10と、処理槽2の上方に配置され、スクリュー10を回転させる駆動機3と、駆動機3の駆動軸9とスクリュー10のスクリュー軸13とを連結する駆動力伝達機構11と、処理槽2を支持する支持構造体5と、処理槽2にスラリーを投入するためのシュート6と、処理槽2の上部側面に連結される水簸槽25と、を備える。駆動力伝達機構11は、回転軸4と、該回転軸4をスクリュー軸13に連結するカップリング18と、を有している。シュート6は、支持構造体5にシュート締結具31を介して着脱自在に取り付けられており、水簸槽25は、処理槽2に水簸槽締結具26を介して着脱自在に取り付けられている。カップリング18は、処理槽2の上方に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる処理槽に収容された粒体を含むスラリーと粉砕媒体とを撹拌して、前記粒体を粉砕する縦型粉砕機であって、
前記処理槽内に配置され、鉛直方向に延びるスクリューと、
前記処理槽の上方に配置され、前記スクリューを回転させる駆動機と、
前記駆動機の駆動軸と前記スクリューのスクリュー軸とを連結する駆動力伝達機構と、
前記処理槽を支持する支持構造体と、
前記処理槽に前記スラリーを投入するためのシュートと、
前記処理槽の上部側面に連結される水簸槽と、を備え、
前記駆動力伝達機構は、回転軸と、前記回転軸を前記スクリュー軸に連結するカップリングと、を有しており、
前記シュートは、前記支持構造体にシュート締結具を介して着脱自在に取り付けられており、
前記水簸槽は、前記処理槽に水簸槽締結具を介して着脱自在に取り付けられており、
前記カップリングは、前記処理槽の上方に配置されている、縦型粉砕機。
【請求項2】
前記支持構造体は、
複数の柱と、
各柱に固定され、前記処理槽を支持する支持ブラケットと、
隣接する前記柱の上面を接続する固定フレームと、
隣接する前記柱の側面を接続する補強フレームを含んでおり、
前記補強フレームは、前記柱にフレーム締結具を介して着脱自在に取り付けられている、請求項1に記載の縦型粉砕機。
【請求項3】
前記スクリューは、
前記スクリュー軸と、
前記スクリュー軸に挿入される複数の羽根セグメントと、
前記スクリュー軸の下端に形成されたねじ穴にねじ込まれるエンドボルトと、
を備える、請求項1または2に記載の縦型粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽に収容された粒体を含むスラリーと粉砕媒体とを撹拌して、粒体を所望の粒径を有する粉体に粉砕する縦型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、縦型粉砕機を用いて、鉄、非鉄金属、貴金属鉱石、無機物および/または有機物などの様々な塊状物または粒状物(以下、単に「粒体」と称する)を粉砕して所望の粒径を有する粉状物(以下、単に「粉体」と称する)を生成している(例えば、特許文献1参照)。縦型粉砕機は、タワーミルとも称されることがある。この縦型粉砕機は、例えば、鉛直方向に延びる処理槽と、処理槽内に配置されるスクリューと、スクリューを回転させる駆動機と、を備えている。駆動機は、処理槽の上方に配置される。スクリューは、鉛直方向に延びており、該スクリューのスクリュー軸は駆動機の回転軸と処理槽内で連結される。
【0003】
縦型粉砕機を用いて粒体から粉体を生成するときは、水、溶剤、油、腐食性流体、プロセス溶液などの液体に粒体を混合させたスラリーと、複数の粉砕媒体を処理槽内に投入して、スクリューを回転させる。粉砕媒体は、例えば、鋼鉄製ボール、またはセラミック製ボールである。本明細書では、粉砕媒体を、「粉砕ボール」と称することがある。スクリューの回転によって、処理槽内で、スラリーと粉砕ボールとが撹拌され、スラリー内の粒体同士の接触、および粒体と粉砕ボールとの接触により、粒体が粉砕される。この粉砕処理を所定時間継続することで、粒体から所望の粒径を有する粉体を生成することができる。なお、この粉砕処理は、回分式粉砕だけでなく、分級機を組み合わせた連続式粉砕にも適用することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
縦型粉砕機で粉砕処理を繰り返すと、処理槽の内面、およびスクリューの外面が摩耗する。そのため、処理槽および/またはスクリューを定期的にメンテナンスまたは補修する必要がある。さらに、前の粉砕処理で用いた粒体と異なる粒体を処理する場合、得られるスラリーが前の粉砕処理で用いた粒体(および粉体)に汚染されることがあるため、処理槽およびスクリューの清掃が要求される。特に、粉砕処理後のスクリューの表面に粒体(および粉体)が固着または残留していることがあり、粉体の汚染防止の観点から、スクリューの清掃は重要な課題である。
【0006】
処理槽およびスクリューのメンテナンス、補修、および清掃を行う際には、処理槽およびスクリューを縦型粉砕機から取り外す必要がある。しかしながら、従来の縦型粉砕機では、一旦、駆動機および回転軸を縦型粉砕機から取り外してから、スクリューを処理槽の上方に引き抜いていた。さらに、処理槽は、水簸槽との分離や固定フレームの分解を行った後で、該固定フレームから上方に引き抜く必要がある。また、スクリューのメンテナンスにおいては、スクリューの運搬、加工場での補修作業(肉盛り溶接など)が必要である。そのため、処理槽およびスクリューの取り外し作業、清掃、及びメンテナンに多くの時間、および労力が必要となっている。
【0007】
そこで、本発明は、処理槽およびスクリューを簡便に取り外すし、メンテナンス、補修、および清掃を容易に行うことが可能な縦型粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、鉛直方向に延びる処理槽に収容された粒体を含むスラリーと粉砕媒体とを撹拌して、前記粒体を粉砕する縦型粉砕機であって、前記処理槽内に配置され、鉛直方向に延びるスクリューと、前記処理槽の上方に配置され、前記スクリューを回転させる駆動機と、前記駆動機の駆動軸と前記スクリューのスクリュー軸とを連結する駆動力伝達機構と、前記処理槽を支持する支持構造体と、前記処理槽に前記スラリーを投入するためのシュートと、前記処理槽の上部側面に連結される水簸槽と、を備え、前記駆動力伝達機構は、回転軸と、前記回転軸を前記スクリュー軸に連結するカップリングと、を有しており、前記シュートは、前記支持構造体にシュート締結具を介して着脱自在に取り付けられており、前記水簸槽は、前記処理槽に水簸槽締結具を介して着脱自在に取り付けられており、前記カップリングは、前記処理槽の上方に配置されている、縦型粉砕機が提供される。
【0009】
一態様では、前記支持構造体は、複数の柱と、各柱に固定され、前記処理槽を支持する支持ブラケットと、隣接する前記柱の上面を接続する固定フレームと、隣接する前記柱の側面を接続する補強フレームを含んでおり、前記補強フレームは、前記柱にフレーム締結具を介して着脱自在に取り付けられている。
一態様では、前記スクリューは、前記スクリュー軸と、前記スクリュー軸に挿入される複数の羽根セグメントと、前記スクリュー軸の下端に形成されたねじ穴にねじ込まれるエンドボルトと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水簸槽およびシュートを容易に処理槽から切り離すことができる。さらに、カップリングが処理槽の外部に設けられているので、駆動力伝達機構の回転軸とスクリューのスクリュー軸との連結を縦型粉砕機の外部から行うことができる。その結果、処理槽およびスクリューを支持構造体から簡便に取り外し、メンテナンス、補修、および清掃を容易に行うことが可能となる。さらに、複数の羽根セグメントを備えたスクリューを採用する実施形態では、各羽根セグメントをスクリュー軸から容易に分離することができる。その結果、摩耗した、または汚損された羽根セグメントを交換するだけで、スクリュー全体のメンテナンス、補修、および清掃が完了する。すなわち、スクリュー全体のメンテナンス、補修、および清掃を短時間で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る縦型粉砕機を示す模式図である。
【
図4】
図4は、固定フレームおよび補強フレームを取り外した後で、処理槽とスクリューを縦型粉砕機から取り外した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る縦型粉砕機を示す模式図である。
図1に示す縦型粉砕機1は、鉛直方向に延び、略円筒形状を有する処理槽2と、処理槽2内に配置され、鉛直方向に延びるスクリュー10と、処理槽2の上方に配置され、スクリュー10を回転させる駆動機3と、処理槽2を支持する支持構造体5と、を備える。
【0013】
スクリュー10は、スクリュー軸13と、該スクリュー軸13に挿入される複数の羽根セグメント12と、スクリュー軸13の下端に形成されたねじ穴にねじ込まれるエンドボルト15と、を有している。本実施形態では、スクリュー軸13の中心軸線は、処理槽2の中心軸線に一致する。一実施形態では、スクリュー軸13の中心軸線は、処理槽2の中心軸線に一致しなくてもよい。なお、スクリュー10の詳細な構造については、後述する。
【0014】
縦型粉砕機1は、さらに、被破砕物としての粒体と、粉砕ボール(粉砕媒体)8とを投入するためのシュート6と、処理槽2の上部側面に連結される水簸槽25と、を有している。縦型粉砕機1の処理槽2に投入される粒体は、塊状物または粒状物である限り特に限定されないが、例えば、鉄、非鉄金属、貴金属鉱石、無機物、および/または有機物を含んでいる。粒体は、水、溶剤、油、腐食性流体、プロセス溶液などの液体と混合されたスラリーの状態で、シュート6から処理槽2に投入される。一実施形態では、粒体と、上記液体とを、シュート6を介して処理槽2に投入し、この状態で、スクリュー10を回転させることによって処理槽2内で、粒体と液体との混合(スラリー化)を行ってもよい。
【0015】
図1に示すシュート6は、取り付け座6aを有しており、この取り付け座6aが支持構造体5にシュート締結具(例えば、ボルト)21によって着脱自在に取り付けられている。シュート6を支持構造体5に取り付けると、シュート6の排出口は、処理槽2の上蓋に形成された投入口に接続される。
【0016】
シュート6から処理槽2に投入される粉砕ボール8の材料および大きさは、スラリーに含まれる粒体を粉砕できる限り、特に限定されない。粉砕ボール8の材料の例としては、セラミックス、無機材料、耐腐食材料、または鋼鉄などがあげられる。粉砕ボール8の直径は、例えば、6~25mmの範囲にある。図示はしないが、球形状以外の形状を有する粉砕媒体を処理槽2に投入してもよい。例えば、粉砕媒体は、円筒形状を有していてもよい。
【0017】
処理槽2の上部側面に連結される水簸槽25は、処理槽2の上部から流出したスラリーが供給される槽である。水簸槽25は、沈降分離器として機能し、水簸槽25の下部に沈降した粒体は、スラリーとともにリターンライン(図示せず)を介して処理槽2の下部に戻される。水簸槽25の上部から流出したスラリーは、図示しない後段の処理設備(例えば、固液分離装置、分級器など)に送られ、粉体と液体とに分離される。
図1に示す水簸槽25は、処理槽2の上部側面から突出するフランジ部25aに水簸槽締結具(例えば、ボルト)26によって着脱自在に取り付けられている。
【0018】
本実施形態では、駆動機3は、駆動軸9を有する電動モータであり、支持構造体5の上面に固定されたモータフレーム17に支持されている。しかしながら、駆動機3は、電動モータに限定されない。駆動機3の駆動軸9は、駆動力伝達機構11を介して、スクリュー10のスクリュー軸13に連結されている。駆動力伝達機構11は、駆動機3の駆動軸9の回転をスクリュー10のスクリュー軸13に伝達する機構である。
【0019】
本実施形態では、駆動力伝達機構11は、回転軸4と、回転軸4を支持する軸受20とを備える。回転軸4の一端は、スクリュー10のスクリュー軸13と、処理槽2の外部に配置されたカップリング(第1カップリング)18を介して連結されており、回転軸4の他端は、駆動機3の駆動軸9とカップリング(第2カップリング)19を介して連結されている。駆動機3の駆動軸9を回転させると、第2カップリング19、回転軸4、および第1カップリング18を介してスクリュー10のスクリュー軸13が回転する。
【0020】
図1に示す支持構造体5は、鉛直方向に延びる4つ柱5aと、各柱5aの下部に配置された支持ブラケット5bと、隣接する2本の柱5aの上面を接続する4つの固定フレーム5cとを有する。各支持ブラケット5bは、柱5aの側面に固定されており、防振ゴムを介して処理槽2の下面を支持する。本実施形態では、各固定フレーム5cは、矩形状の板材であり、固定フレーム締結具(例えば、ボルト)5dによって2本の柱5aの上面に着脱自在に取り付けられている。
【0021】
本実施形態では、支持構造体5は、さらに、隣接する2本の柱5aの上端部の側面を互いに接続する4つの補強フレーム5eを有している。
図1では、一つの補強フレーム5eのみが描かれている。各補強フレーム5eの両端部は、補強フレーム締結具5fによって、柱5aの側面に着脱自在に取り付けられている。これら補強フレーム5eは、処理槽2を支持する支持構造体5の強度を増加させる補強材として機能する。処理槽2を支持する支持構造体5の強度が十分に高い場合は、補強フレーム5eを省略してもよい。
【0022】
図1に示す補強フレーム5eは、柱5aの上端部の側面に接続されているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、補強フレーム5eは、柱5aの上端部と支持ブラケット5bとの間で、隣接する2本の柱5aの側面を互いに接続してもよい。補強フレーム5eの延びる方向は、水平方向に限定されない。
【0023】
図2は、
図1に示すスクリューを示す模式図である。
図2に示すスクリュー10は、複数の(
図2では、5つの)羽根セグメント12と、スクリュー軸13とを備えている。各羽根セグメント12は、その中央に貫通孔を有しており、該貫通孔にスクリュー軸13を挿入可能に構成されている。本実施形態では、複数の羽根セグメント12をスクリュー軸13に挿入すると、鉛直方向に螺旋状に連続して延びる2条の羽根がスクリュー10に形成される。より具体的には、スクリュー軸13にはキー(図示せず)が形成されており、各羽根セグメント12の貫通孔には、該キーに係合可能なキー溝(図示せず)が形成されている。各羽根セグメント12のキー溝をスクリュー軸13のキーに合わせた状態で、各羽根セグメント12をスクリュー軸に順次挿入すると、スクリュー軸13に沿って螺旋状に連続して延びる2条の羽根が形成される。なお、各羽根セグメント12をスクリュー軸13に連結する方法は、キー係合方式に限定されない。
【0024】
スクリュー10のスクリュー軸13の上部には、該スクリュー軸13の径方向に突出する段部(図示せず)が形成されており、この段部は、羽根セグメント13の上部ストッパとして機能する。さらに、スクリュー軸13の末端には、ねじ穴(図示せず)が形成されている。スクリュー10は、スクリュー軸13に形成されたねじ穴にねじ込まれるエンドボルト(下部ストッパ)15をさらに有する。複数の羽根セグメント12をスクリュー軸13に挿入した状態で、エンドボルト15をスクリュー軸13にねじ込むと、複数の羽根セグメント12は上部ストッパとエンドボルト15とに挟まれ、これによりスクリュー軸13に固定される。
【0025】
図3は、
図2に示すスクリューの概略分解図である。
図3では、複数の羽根セグメント12のうちの2つの羽根セグメント12が描かれており、残りの羽根セグメント12は図示を省略している。
図3に示すように、エンドボルト15をスクリュー軸13から取り外すと、複数の羽根セグメント12のそれぞれをスクリュー軸13から取り外すことができる。
【0026】
本実施形態では、スクリュー10は、2条の羽根を有しているが、本実施形態はこの例に限定されない。例えば、スクリュー10は、1条の羽根を有していてもよいし、3条以上の羽根を有していてもよい。
【0027】
次に、
図1を参照して、このように構成された縦型粉砕機1の運転方法について説明する。
図1では、スクリュー10を回転させて粉砕処理を実行している処理槽2が模式的に描かれている。最初に、粒体、液体(溶媒)、および粉砕ボール8がシュート6を介して処理槽2に投入される。次いで、
図1に示すように、駆動機3が駆動され、これによりスクリュー10が回転して、処理槽2内の粒体、および液体(溶媒)が粉砕ボール8とともに撹拌され、スラリー化される。
【0028】
スクリュー10は螺旋状に連続して延びる羽根を有しているため、スラリーおよび粉砕ボール8は、スクリュー10のスクリュー軸12の軸方向に沿って上方に移動する。スラリーおよび粉砕ボール8が処理槽2の上部まで移動すると、今度は、スラリーおよび粉砕ボール8が自重によって処理槽2の内面に沿って下方に移動する。すなわち、処理槽2内にはスラリーと粉砕ボール8の対流が発生する。この対流によって、スラリーに含まれる粒体同士が接触し、さらに、粒体と粉砕ボール8とが接触して、粒体が所望の粒径を有する粉体まで粉砕される。
【0029】
粉砕が進行してスラリー内の粉体の割合が高くなると、スラリーが自重によって処理槽2内を落下する速度よりも、スラリーがスクリュー10の回転によって上方に移動する速度が大きくなる。その結果、処理槽2内で対流するスラリーの一部が処理槽2の上部側面に連結される水簸槽25に流入する。水簸槽25では、重力の作用による分級処理が行われる。具体的には、粗い粒体は、水簸槽25の底に沈降し、該水簸槽25の下部からスラリーとともにリターンライン(図示せず)を通って処理槽2に戻され、再度粉砕される。一方で、細かい粉体は、スラリーとともに水簸槽25の上部から他の処理設備(例えば、気液分離装置、分級器など)に送られ、粉体と液体とに分離される。そして、水簸槽25の上部から流出したスラリーと同量の新たなスラリーがシュート6を介して処理槽2に供給される。
【0030】
このように運転される縦型粉砕機1の処理槽2およびスクリュー10を、メンテナンス、補修、および清掃するときは、最初に、駆動機3の運転を停止して、スクリュー10の回転を停止させる。次いで、処理槽2の底部に連結されたドレン配管36を介して、処理槽2内のスラリーおよび粉砕ボール8を排出する。ドレン配管36の末端は、例えば、大気に解放されており、ドレン配管36には、ドレンバルブ37が配置されている。ドレンバルブ37を開くことで、スラリーおよび粉砕ボール8が処理槽2からドレン配管36を介して排出される。処理槽2から排出されたスラリーおよび粉砕ボール8は、例えば、回収容器(図示せず)に貯留される。一実施形態では、ドレン配管36は、処理槽2の下部側面に連結されてもよい。この場合でも、ドレン配管36には、ドレンバルブ37が配置される。
【0031】
次いで、カップリング18の係合を解除して、スクリュー10のスクリュー軸13を駆動力伝達機構11の回転軸4から切り離す。さらに、シュート締結具21を取り外して、シュート6を処理槽2から切り離し、水簸槽締結具26を取り外して、水簸槽25を処理槽2から切り離す。これらの作業によって、処理槽2を支持構造体5から切り離すことができる。
【0032】
本実施形態では、上記した固定フレーム5cおよび補強フレーム5eが処理槽2の上端部よりも下方に位置している(
図1参照)。この場合は、固定フレーム締結具5dと補強フレーム締結具5fとを支持構造体5から取り外して、固定フレーム5cおよび補強フレーム5eを支持構造体5から切り離す。これにより、処理槽2をスクリュー10とともに、縦型粉砕機1から水平方向に容易に取り出すことができる。
【0033】
図示はしないが、固定フレーム5cおよび補強フレーム5eが処理槽2の上端部よりも上方に位置している場合は、処理槽2およびスクリュー10を縦型粉砕機1から取り外す際に、固定フレーム5cおよび補強フレーム5eを支持構造体5から取り外す必要はない。
【0034】
図4は、固定フレームおよび補強フレームを取り外した後で、処理槽とスクリューを縦型粉砕機から取り外した状態を示す模式図である。
図4に示すように、カップリング18の係合を解除し、さらに、処理槽2から水簸槽25とシュート6とを取り外すだけで、処理槽2およびスクリュー10を容易に縦型粉砕機1から取り外すことができる。なお、カップリング18が処理槽2の外部に設けられているので、作業者は、スクリュー10のスクリュー軸13を容易に動力伝達機構11の回転軸4から取り外すことができる。
【0035】
処理槽2から取り出されたスクリュー10は、スクリュー軸13の下端にねじ込まれたエンドボルト15を外して、各羽根セグメント12をスクリュー軸13から引き抜く。これにより、スクリュー軸13,各羽根セグメント12、およびエンドボルト15のそれぞれを個別にメンテナンス、補修、および清掃することができる。特に、各羽根セグメント12を完全に清掃することができるので、次の粉砕処理の際に、前の粉砕処理で用いた粉体による汚染を防止することができる。
【0036】
図2および
図3に示すように、複数の羽根セグメント12は、同一の形状を有しており、スクリュー軸13から分離可能な一体成型品である。一体成型による羽根セグメント12は、例えば、耐摩耗性材料を用いた鋳造物である。あるいは、羽根セグメント12は、樹脂、またはセラミックスからなる一体成型品であってもよい。このような分離可能な構造により、複数の羽根セグメント12のうちのいくつかに摩耗が進行するか、損傷が発生した場合でも、該不良セグメントのみを新しい羽根セグメント12に交換することにより、スクリュー10一式の交換が不要になる。また、羽根セグメント12の在庫管理も容易となる。そのため、縦型粉砕機1のメンテナンスコストを低減することができる。
【0037】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 縦型粉砕機
2 処理槽
3 駆動機
4 回転軸
5 支持構造体
6 シュート
8 粉砕ボール
9 駆動軸
10 スクリュー
11 駆動力伝達機構
12 羽根セグメント
13 スクリュー軸
15 エンドボルト
17 モータフレーム
18 カップリング
20 軸受
21 シュート締結具
25 水簸槽
26 水簸槽締結具