IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 末田 たつ恵の特許一覧

<>
  • 特開-就寝用頭部カバー 図1
  • 特開-就寝用頭部カバー 図2
  • 特開-就寝用頭部カバー 図3
  • 特開-就寝用頭部カバー 図4
  • 特開-就寝用頭部カバー 図5
  • 特開-就寝用頭部カバー 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022076212
(43)【公開日】2022-05-19
(54)【発明の名称】就寝用頭部カバー
(51)【国際特許分類】
   A47C 29/00 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
A47C29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186525
(22)【出願日】2020-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】517029406
【氏名又は名称】末田 たつ恵
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】末田たつ恵
(57)【要約】
【課題】
コンパクトに畳むことができて収納や携帯に便利であり、安全性にも優れた就寝用頭部カバーを提供する。
【解決手段】
就寝者の頭部を覆うカバー部10と、カバー部10をドーム状に展張した状態に保持するフレーム部20とを備えた就寝用頭部カバー1において、フレーム部20が、弾性変形可能な1本のフレーム用線材21を8の字状に捻ることで形成された2箇所の環状部分20bを有し、カバー部10における対向する一対の面部を、フレーム部20の前記2箇所の環状部分20bがそれぞれ保持するようにした。本発明の就寝用頭部カバー1においては、8の字状のフレーム用線材21をさらに捻ることで、フレーム部20をコンパクトに畳むことができる。したがって、収納や携帯に便利である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝者の頭部を覆うカバー部と、
カバー部をドーム状に展張した状態に保持するフレーム部と
を備えた就寝用頭部カバーであって、
フレーム部が、弾性変形可能な1本のフレーム用線材を8の字状に捻ることで形成された2箇所の環状部分を有し、
カバー部における対向する一対の面部を、フレーム部の前記2箇所の環状部分がそれぞれ保持するようにした
ことを特徴とする就寝用頭部カバー。
【請求項2】
カバー部とフレーム部とが別体とされ、
フレーム用線材を8の字状に保持するための線材保持部材をさらに備えた
請求項1記載の就寝用頭部カバー。
【請求項3】
フレーム部に対してカバー部を位置決めするための位置決め用目印がカバー部に設けられた請求項2記載の就寝用頭部カバー。
【請求項4】
カバー部とフレーム部とが一体的に構成され、
カバー部によって、フレーム用線材が8の字状に保持された
請求項1記載の就寝用頭部カバー。
【請求項5】
フレーム部における前記2箇所の環状部分のそれぞれに、フレーム用線材が略直線状に延びる接地部が設けられた請求項1~4いずれか記載の就寝用頭部カバー。
【請求項6】
カバー部が、
就寝者の頭部の首側に配される前面部と、
就寝者の頭部の頭頂側に配される背面部と、
就寝者の頭部の左側に配される左面部と、
就寝者の頭部の右側に配される右面部と
を備え、
前面部と左面部との境界部又は前面部と右面部との境界部のいずれか一方に、就寝者の頭部を挿入するためのスリットが設けられた
請求項1~5いずれか記載の就寝用頭部カバー。
【請求項7】
カバー部の内側又はフレーム部の内側に、小物収納用ポケットが備えられた請求項1~6いずれか記載の就寝用頭部カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝者の頭部を覆うことで、睡眠環境を整えることができる就寝用頭部カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠は、健康の基本である。しかし、種々の原因によって安眠が妨げられる場合がある。例えば、花粉症はその代表例である。我が国において、花粉症を有する人の数は、全国民の25~30%に達するとも言われている。花粉症を発症すると、花粉の飛散量が多い季節においては、日中の活動時だけでなく夜間の就寝時にもくしゃみや鼻水が出ることがあり、安眠が妨げられがちになる。また、近年、新型ウィルスの流行の影響もあり、感染症の予防に対する関心が高まっているところ、例えば、家族の中に感染者が出たにもかかわらずその家族と同室で眠らざるを得ない場合等には、感染のリスクが気になって安眠が妨げられることも考えられる。花粉対策や感染予防としては、従来、衛生マスク等を装着することも行われているが、衛生マスク等を装着したまま就寝すると、その違和感によってむしろ睡眠の質が低下する虞がある。
【0003】
このため、花粉が飛散しやすい時期や、ウィルス等の感染を予防したい場合等には、空気清浄機等を用いて室内の花粉やウィルス等を除去した状態で就寝することが好ましい。しかし、空気清浄機は、高価であることに加えて、据え置き型のものが多く、必ずしも、手軽に利用できるものではない。また、空気清浄機を就寝時に使用すると、そのモーター音等によって快適な睡眠が妨げられる虞もある。
【0004】
このような実状に鑑みてか、これまでには、就寝者の頭部を覆う就寝用頭部カバーが提案されている。例えば、特許文献1には、同文献の図1~3に示されるように、本体頭部板5に固定したパイプ1に、ベール部6を垂れ下げた状態で取り付けたナイトベールが提案されている。このような就寝用頭部カバーで頭部を覆って就寝すれば、衛生マスク等を装着しなくとも、就寝者の頭部に接近する花粉やウィルス等の数を減らすことができ、安心して睡眠を取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3126709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の特許文献1のナイトベールは、ある程度重量を有するものであると考えられることに加えて、同文献の図1に示される状態よりはコンパクトにならないため、不使用時に嵩張るだけでなく、旅行先等に手軽に携帯できるものとはなっていない。また、特許文献1のナイトベールは、本体頭部板5やパイプ1等、剛性を有する硬い部材を就寝者の頭部に配置するものとなっており、就寝者が寝返り等すると、頭部を本体頭部板5やパイプ1等に打ちつける虞がある等、安全性に疑問を有するものとなっている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、コンパクトに畳むことができて収納や携帯に便利であり、安全性にも優れた就寝用頭部カバーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
就寝者の頭部を覆うカバー部と、
カバー部をドーム状に展張した状態に保持するフレーム部と
を備えた就寝用頭部カバーであって、
フレーム部が、弾性変形可能な1本のフレーム用線材を8の字状に捻ることで形成された2箇所の環状部分を有するものとされ、
カバー部における対向する一対の面部を、フレーム部の前記2箇所の環状部分がそれぞれ保持するようにした
ことを特徴とする就寝用頭部カバー
を提供することによって解決される。
【0009】
本発明の就寝用頭部カバーにおいては、カバー部を保持するフレーム部が、弾性変形可能な1本のフレーム用線材を8の字状に捻って形成された骨格構造を有している。この8の字状のフレーム用線材をさらに捻ると、後で詳しく説明するように、フレーム部をコンパクトに畳むことができる。したがって、就寝用頭部カバーを嵩張らない状態で収納することや携帯することができる。加えて、もし就寝者が寝返りを打った際に頭部をフレーム部にぶつける等しても、フレーム用線材が弾性変形することで、その衝撃を吸収することができる。したがって、本発明の就寝用頭部カバーは、安全性にも優れている。
【0010】
本発明の就寝用頭部カバーにおけるカバー部とフレーム部とは、別体としてもよいし、一体的に構成してもよい。カバー部とフレーム部とを別体とすると、カバー部を取り外して洗うことができ、カバー部を清潔に保つことができる。加えて、目的や気温等によってカバー部を取り換えることもできる。この場合には、フレーム用線材を8の字状に保持するための線材保持部材をさらに備えることが好ましい。
【0011】
しかし、カバー部とフレーム部とを別体とした場合には、フレーム部から取り外したカバー部を再度フレーム部に取り付けようとする際に、カバー部とフレーム部との位置関係が分かり辛くなる虞がある。特に、カバー部を布地等の可撓性素材で形成した場合には、フレーム部から取り外したカバー部が不定形となるため、この問題がより顕著に表れる。このため、フレーム部に対してカバー部を位置決めするための位置決め用目印をカバー部に設けると好ましい。これにより、カバー部とフレーム部との位置関係を分かりやすくして、カバー部をフレーム部に対して取り付けやすくすることができる。
【0012】
一方、カバー部とフレーム部とを一体的に形成する場合には、カバー部によって、フレーム用線材を8の字状に保持すると好ましい。これにより、上述した線材保持部材を設ける必要が無くなり、就寝用頭部カバーを構成する部材を少なくすることができる。したがって、就寝用頭部カバーをよりコンパクトで軽量なものとすることができる。また、製造コストを抑えることもできる。
【0013】
本発明の就寝用頭部カバーにおいては、フレーム部における前記2箇所の環状部分のそれぞれに、フレーム用線材が略直線状に延びる接地部を設けることが好ましい。フレーム部を設置する際には、フレーム部がこの接地部において接地するようにすると、フレーム部を安定して設置することができる。
【0014】
本発明の就寝用頭部カバーにおいては、カバー部を、就寝者の頭部の首側に配される前面部と、就寝者の頭部の頭頂側に配される背面部と、就寝者の頭部の左側に配される左面部と、就寝者の頭部の右側に配される右面部とを備えたものとし、前面部と左面部との境界部又は前面部と右面部との境界部のいずれか一方に、就寝者の頭部を挿入するためのスリットを設けると好ましい。
【0015】
これにより、花粉やウィルス等がカバー部内に浸入することをより効果的に防止することができる。というのも、例えば、カバー部の前面部の中心部分にスリットを設けた場合には、就寝者の首や胴体に押し広げられてスリットが広がりやすくなり、その広がった部分から花粉等が浸入しやすくなる虞があるところ、スリットを、前面部と左面部との境界部又は前面部と右面部との境界部に設けることで、スリットが広がりにくくすることができるからである。
【0016】
本発明の就寝用頭部カバーにおいては、カバー部の内側又はフレーム部の内側に、小物収納用ポケットを備えることも好ましい。これにより、小物収納用ポケット内に、例えば、ヒーリング効果のある鉱物や心地良い芳香を有する木片等を収納することができ、カバー部内の空間をより睡眠に適したものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、コンパクトに畳むことができて収納や携帯に便利であり、安全性にも優れた就寝用頭部カバーを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る就寝用頭部カバーのカバー部をフレーム部に取り付ける様子を示した図である。
図2図1に示したフレーム部を抜き出して示した図であって、フレーム用線材を保持する線材保持部材を透明な状態で示した図である。
図3図1に示したフレーム部を畳む手順を説明する図であって、ステップ1を終えた状態を示した図である。
図4図1に示したフレーム部を畳む手順を説明する図であって、ステップ2を終えた状態を示した図である。
図5図1に示したフレーム部を畳む手順を説明する図であって、ステップ3を行っている途中の状態を示した図である。
図6図1に示したフレーム部を畳む手順を説明する図であって、ステップ3を終えた状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.本発明の概要
本発明の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、説明の便宜上、就寝状態(仰向け状態)における就寝者の頭部から見て首側を「前」、就寝者の頭部から見て頭頂側を「後」、就寝者の頭部に向かって左側を「左」、就寝者の頭部に向かって右側を「右」、重力方向上側を「上」、重力方向下側を「下」と表現することがある。
【0020】
図1は、本発明に係る就寝用頭部カバー1のカバー部10をフレーム部20に取り付ける様子を示した図である。本発明の就寝用頭部カバー1は、図1に示すように、カバー部10と、フレーム部20とを備えている。カバー部10は、可撓性の面材で形成されており、フレーム部20によってドーム状に展張した状態に保持される。就寝者は、展張した状態のカバー部10に頭部を挿入した状態で(カバー部10で頭部を覆った状態で)眠ることにより、安眠を妨げる要因(例えば、花粉やウィルス等)を軽減して快適な睡眠を取ることができる。
【0021】
カバー部10とフレーム部20とは、一体的に構成(取り外すことができないように)してもよいが、本実施形態の就寝用頭部カバー1においては、カバー部10とフレーム部20とを別体(取り外し可能)としている。カバー部10は、図1の矢印Aに示すように、フレーム部20に上から被せることによって、フレーム部20に取り付けられる。収納時や携帯時には、カバー部10をフレーム部20から外し、それぞれ畳むことによって、就寝用頭部カバー1全体をコンパクトに収納することができる。また、取り外したカバー部10は洗濯機等で洗濯することができるため、カバー部10を清潔に保つことができる。さらに、複数のカバー部10を用意すれば、季節や目的によってカバー部10を取り換えて使用することもできる。
【0022】
以下、本実施形態の就寝用頭部カバー1を構成する各部について、詳しく説明する。
【0023】
2.カバー部
カバー部10は、就寝者の頭部を覆って、頭部周辺の空間を睡眠に適した状態に整えるためのものである。カバー部10は、就寝者の頭部全体を覆うことができれば、その具体的な形状を特に限定されない。本実施形態のカバー部10は、図1に示すように、前面部11と、背面部12と、左面部13と、右面部14とを備えたドーム状に形成されている。
【0024】
カバー部10は、可撓性の面材で形成されている。このような面材としては、例えば、各種の生地や、メッシュ地や、樹脂シート等が挙げられる。カバー部10の素材は、より具体的には、就寝用頭部カバー1の用途によって適宜選択される。例えば、本発明の就寝用頭部カバー1を花粉除けの目的で用いる場合には、カバー部10を、花粉を通過させにくい生地等で形成することができる。このような生地としては、例えば、表面に樹脂加工を施した織物等(例えば、東レ社の「アンチポラン」(登録商標)等)が挙げられる。また、本発明の就寝用頭部カバー1を感染予防の目的で用いる場合には、カバー部10を、ウィルスや、感染性の細菌や、これらを含む飛沫等を通過させにくい生地等で形成することができる。さらに、本発明の就寝用頭部カバー1を虫除けの目的で用いる場合には、カバー部10を、メッシュ地等で形成することもできる。カバー部10には、抗菌処理等を施すこともできる。さらにまた、本発明の就寝用頭部カバー1を遮光の目的で用いる場合には、カバー部10を、遮光性の高い生地等で形成することができる。カバー部10は、その全体を同じ素材で形成する必要は無く、2種類以上の素材を組み合わせて形成してもよい。本実施形態の就寝用頭部カバー1においては、カバー部10の略全体を、花粉を通過させにくい織物生地で形成している。
【0025】
カバー部10の前面部11は、使用時において、就寝者の頭部の首側(身体側)に配される部分であり、背面部12は、就寝者の頭部の頭頂側に配される部分であり、左面部13は、就寝者の頭部の左側に配される部分であり、右面部14は、就寝者の頭部の右側に配される部分である。
【0026】
前面部11の下端側は、フレーム部20の下端縁よりも長くなるように延長された前タレ部11aとなっている。この前タレ部11aは、就寝者がカバー部10内に頭部を挿入した際に、カバー部10から突出した就寝者の身体の上に垂れ下がることにより、カバー部10と就寝者の身体との間に隙間ができにくくするためのものである。これにより、花粉やウィルス等がカバー部10内により浸入しにくくすることができる。前タレ部11aは、前面部11の下端側の一部に設けてもよいが、本実施形態においては、前面部11の下端側全体に設けている。前タレ部11aは、前面部11とは別体で形成したものを前面部11に接続することで形成してもよいが、本実施形態においては、前面部11の下端側を延長することで前タレ部11aを形成している。
【0027】
前タレ部11aの長さL(前面部11のうち、フレーム部20に保持されない部分の長さのこと。図1の符号Lを参照。以下同じ。)は、就寝用頭部カバー1の用途やカバー部10の素材等によって適宜決定される。前タレ部11aが短すぎると、就寝者が寝返りを打った際等に、カバー部10と就寝者の身体との間に隙間ができやすくなる虞がある。このため、前タレ部11aの長さLは、10cm以上とすると好ましく、20cm以上とするとより好ましく、30cm以上とするとさらに好ましい。しかし、前タレ部11aが長すぎると、結果としてカバー部10全体が大きく重くなり、カバー部10をコンパクトに畳みにくくなる虞がある。このため、前タレ部11aの長さLは、120cm以下とすると好ましく、100cm以下とするとより好ましく、80cm以下とするとさらに好ましい。本実施形態においては、前タレ部11aの長さLを60cm程度としている。
【0028】
本実施形態の就寝用頭部カバー1においては、前面部11と左面部13との境界部に、スリット15を設けている。これにより、カバー部10がフレーム部20によってピンと張られた状態となっていたとしても、前面部11をめくりやすくして、カバー部10内に就寝者の頭部を挿入しやすくすることができる。なお、スリット15は、前面部11と右面部14との境界部に設けてもよい。
【0029】
しかし、スリット15を設けると、このスリット15を通じてカバー部10内に花粉やウィルス等が浸入しやすくなる虞がある。この点、本実施形態の就寝用頭部カバー1においては、スリット15の内側に、スリット15を閉じるためのスリット閉塞手段(図示省略)を設けている。これにより、カバー部10内に頭部を挿入した後にスリット15を内側から閉じて、花粉やウィルス等がカバー部10内により浸入しにくくすることができる。スリット閉塞手段は、スリット15を少なくとも部分的に閉じることができれば、その具体的な構成を特に限定されない。スリット閉塞手段としては、例えば、ボタンや、紐や、面テープ等が例示される。スリット閉塞手段を設ける位置も限定されず、スリット15の端部や外側であってもよい。
【0030】
前面部11におけるスリット15に沿った箇所(図1においてハッチングで示した箇所)には、前面部11を形成する布地を二重に重ねた複層部11bを設けている。この複層部11bを設けることにより、複層部11bが設けられた箇所を他の部分よりも重くして、前面部11がめくれあがってスリット15が大きく開くことを防ぐことができる。したがって、前述のスリット閉塞手段(図示省略)でスリット15を閉じていないときにも、スリット15が開きすぎないようにすることができる。また、この複層部11bが設けられた箇所は、カバー部10内に頭部を出し入れする際に就寝者が頻繁に触る部分でもあるため、擦り切れたり傷が付いたりしやすいところ、複層部11bを設けることによってこの部分を補強することもできる。複層部11bは、生地を三重以上に重ねたものであってもよい。また、前面部11を形成する面材とは異なる種類の面材(生地やシート等)を重ねたものであってもよい。
【0031】
スリット15の長さL(前面部11と左面部13との境界部のうち、スリット15が設けられた箇所の長さのこと。図1の符号Lを参照。以下同じ。)は、特に限定されないが、スリット15が短すぎると、スリット15を大きく開きにくくなり、就寝者がカバー部10内に頭部を挿入しにくくなる虞がある。このため、スリット15の長さLは、10cm以上とすると好ましく、15m以上とするとより好ましく、20cm以上とするとさらに好ましい。しかし、スリット15が長すぎると、就寝者がカバー部10内に頭部を出し入れする際にスリット15が大きく開きすぎてしまい、カバー部10内に花粉やウィルス等が入りやすくなる虞がある。また、上記のスリット閉塞手段を設けなければならない範囲が広くなる。このため、スリット15の長さLは、100cm以下とすると好ましく、70cm以下とするとより好ましく、50cm以下とするとさらに好ましい。本実施形態においては、スリット15の長さLを40cm程度としている。
【0032】
ところで、既に述べたように、本実施形態の就寝用頭部カバー1におけるカバー部10とフレーム部20とは別体となっており、収納時や携帯時には、カバー部10とフレーム部20とをそれぞれ畳むことで、就寝用頭部カバー1全体をコンパクトにすることができる。就寝用頭部カバー1を使用する際には、畳んだフレーム部20を再度展開し、折り畳んだカバー部10を広げてフレーム部20に被せる。しかし、フレーム部20に被せる前のカバー部10は不定形であるため、カバー部10とフレーム部20との位置関係が分かりにくくなりがちである。
【0033】
この点、本実施形態の就寝用頭部カバー1においては、図1に示すように、ドーム状に形成されたカバー部10の頂部に、ループ状の位置決め用目印16を設けている。この位置決め用目印16をフレーム部20の頂部20aに合わせることで、カバー部10の頂部をフレーム部20の頂部20aに対して簡単に位置決めすることができる。また、位置決め用目印16を手に持ってカバー部10をある程度の高さまで持ち上げると、前タレ部11aがどこにあるのかもすぐに見つけることができる。したがって、前後左右方向におけるカバー部10の位置決めも簡単に行うことができる。
【0034】
位置決め用目印16は、フレーム部20に対するカバー部10の位置決めを容易にすることができるものであれば、その具体的な構成を特に限定されない。位置決め用目印16は、例えば、カバー部10の一部を他の部分とは別の色彩や模様等にしたものであってもよい。位置決め用目印16を設ける箇所は、カバー部10の頂部に限定されず、カバー部10の面部や端部であってもよい。位置決め用目印16は、カバー部10ではなくフレーム部20に設けるようにしてもよいし、カバー部10とフレーム部20との両方に設けてもよい。
【0035】
本実施形態の就寝用頭部カバー1においては、カバー部10の内側に、小物収納用ポケット(図示省略)を設けている。この小物収納用ポケットの中に、ヒーリング効果のある鉱物(例えば、パワーストーン等)や、心地良い芳香を有する木片等を入れることで、よりリラックスして上質な睡眠を取ることができる。小物収納用ポケットを設ける位置は、特に限定されない。本実施形態においては、カバー部10の内側における四隅(すなわち、前面部11と左面部13との境界部の下端部、前面部11と右面部14との境界部の下端部、背面部12と左面部13との境界部の下端部、及び、背面部12と右面部14との境界部の下端部)のそれぞれに、小物収納用ポケットを設けている。これにより、小物収納用ポケットに入れた鉱物等が、重りとしての機能も果たすようになり、カバー部10の裾がめくれ上がりにくくすることができる。小物収納用ポケットは、フレーム部20の内側や外側に設けることもできる。
【0036】
3.フレーム部
3.1 フレーム部の構成
図2は、図1に示したフレーム部20を抜き出して示した図であって、フレーム用線材21を保持する線材保持部材22を透明な状態で示した図である。フレーム部20は、カバー部10を展張した状態に保持するための構造体である。本実施形態の就寝用頭部カバー1におけるフレーム部20は、図2に示すように、1本のフレーム用線材21と、線材保持部材22とを備えている。
【0037】
フレーム用線材21は、フレーム部20の骨格を為す部材であり、弾性変形可能な線材で形成されている。フレーム用線材21は、図2に示すように、全体としてドーム状の骨格を形成している。この骨格は、1本のフレーム用線材21を平面視8の字状に捻り、さらに正面視アーチ状となるように撓ませることによって形成されている。結果として、フレーム用線材21は、対向する2箇所の環状部分20bを形成している。後述するように、それぞれの環状部分20bは、三角形状を為している。
【0038】
線材保持部材22は、フレーム用線材21が上述した立体的形状を有するように保持するための部材であり、第一面部22aと、第二面部22bと、第三面部22cと、第四面部22dと、第五面部(底面部)22eとを備えている。
【0039】
第二面部22b及び第四面部22dは、フレーム用線材21が形成する2箇所の環状部分20bの形状を保持するための部分である。すなわち、それぞれの環状部分20bは、フレーム用線材21の弾性によって円環状になろうとするところ、第二面部22b及び第四面部22dでフレーム用線材21を保持することにより、それぞれの環状部分20bが略三角形状を為すようにしている。
【0040】
第一面部22a及び第三面部22cは、フレーム用線材21を正面視アーチ状に撓ませるための部分である。すなわち、平面視8の字状に捻られたフレーム用線材21は、正面視が略一直線状となるように(環状部分20b同士が離れるように)開こうとするところ、環状部分20bを保持する第二面部22bと第四面部22dとの間を第一面部22a及び第三面部22cで繋ぐことによって、環状部分20b同士の距離を近づけて、フレーム用線材21が全体としてアーチ状となるようにしている。
【0041】
底面部22eは、フレーム部20の底面を為す部分である。底面部22eは、フレーム用線材21の形状保持という観点から見れば、設ける必要がない部分である。しかし、この底面部22eは、就寝者の頭部の下(実際には、枕や敷布団の下)に敷かれる部分であるところ、底面部22eを設けることにより、就寝者の頭部の重みで底面部22eを押さえて、フレーム部20を動きにくくすることができる。したがって、使用時におけるフレーム部20の安定性を高めることが可能になる。
【0042】
フレーム部20における、2箇所の環状部分20bのそれぞれの下端部には、図2に示すように、フレーム用線材21が略直線状に延びる(線材保持部材22によって、フレーム用線材21が略直線状となるように保持された)接地部20cを設けている。このため、フレーム部20のそれぞれの環状部分20bは、単純な円形や楕円形ではなく、三角形状を為している。これにより、フレーム部20を設置面に立設した際に、フレーム部20を安定させやすくすることができる。接地部20cにおけるフレーム用線材21は、2箇所以上に分かれて略直線状となっていてもよい。
【0043】
このフレーム部20に対して、カバー部10をどの向きで取り付けるかは限定されず、例えば、フレーム部20の2箇所の環状部分20bが、カバー部10の前面部11と背面部12とを保持するようにしてもよい。しかし、この場合には、就寝者が頭部を挿入する前面部11の下端にフレーム用線材21の接地部20cが配されるようになるため、就寝者の身体の下にフレーム用線材21が敷かれてしまい、就寝者に違和感を与える虞がある。この点、本実施形態の就寝用頭部カバー1においては、図1に示すように、フレーム部20の2箇所の環状部分20bが、カバー部10の左面部13と右面部14とを保持するようにしている。これにより、就寝者の身体の下にフレーム用線材21が配されないようにすることができる。線材保持部材22における、カバー部10の前面部11に重なる第一面部22aには、就寝者の頭部を挿入するための開口部(頭部挿入口22a)を設けている。
【0044】
フレーム用線材21は、人の力で弾性変形させることができる程度の柔らかさを有する弾性線材であれば、その具体的な素材を特に限定されない。フレーム用線材21は、例えば、樹脂や、金属で形成することができる。フレーム用線材21の断面形状は特に限定されず、多角形状や、楕円状とすることができる。本実施形態においては、フレーム用線材21の断面形状を長方形状としている。
【0045】
フレーム部20の寸法は、就寝者の頭部全体を収容することができれば、特に限定されない。しかし、フレーム部20の寸法が小さすぎると、就寝用頭部カバー1の内部空間が狭くなり、就寝者が圧迫感を感じたり、息苦しさを感じたりする虞がある。このため、フレーム部20の前後幅及び左右幅は、いずれも、50cm以上とすることが好ましく、60cm以上とすることがより好ましく、70cm以上とすることがさらに好ましい。一方、フレーム部20の寸法が大きすぎると、使用時に嵩張って邪魔になるだけでなく、フレーム部20をコンパクトに畳みにくくなる虞もある。このため、フレーム部20の前後幅及び左右幅は、いずれも、2m以下とすることが好ましく、1.7m以下とすることがより好ましく、1.5m以下とすることがさらに好ましい。
【0046】
線材保持部材22は、フレーム用線材21を所望の形状に保持できるのであれば、その具体的な構成を限定されない。線材保持部材22は、非伸縮性の可撓性素材で形成すると、フレーム部20をコンパクトに畳みやすくなるため好ましい。線材保持部材22は、紐等で形成してもよいが、本実施形態においては面材で形成している。これにより、フレーム部20の構造をより安定させることができる。本実施形態においては、第一面部22aと、第二面部22bと、第四面部22dと、第五面部(底面部)22eとを非伸縮性の布地で形成しており、第三面部22cを非伸縮性のメッシュ地で形成している。
【0047】
フレーム用線材21を線材保持部材22に保持させる方法は特に限定されない。フレーム用線材21は、例えば、線材保持部材22に接着することで線材保持部材22に保持させてもよい。本実施形態においては、第二面部22bに形成された鞘状の線材挿通部22bの内部、及び、第四面部22dに形成された鞘状の線材挿通部22dの内部にフレーム用線材21を通すことによって、フレーム用線材21を線材保持部材22に保持させている。
【0048】
3.2 フレーム部を畳む方法
図3図6は、図1に示したフレーム部20を畳む手順を説明する図である。図3は、ステップ1を終えた状態を示した図である。図4は、ステップ2を終えた状態を示した図である。図5は、ステップ3を行っている途中の状態を示した図である。図6は、ステップ3を終えた状態を示した図である。
【0049】
フレーム部20は、図2に示す展開状態から、以下のステップ1~ステップ3を経ることにより、図6に示す畳み状態へとコンパクトに畳むことができる。
[ステップ1]
図2に示す展開状態から、フレーム部20の2箇所の環状部分20bが重なる(線材保持部材22の第二面部22bと第四面部22dとが重なる)ように、フレーム部20全体を畳む。これにより、フレーム部20は、図3に示す状態(全体として略三角形状を為す状態)となる。
[ステップ2]
ステップ1を終えた状態(図3に示す状態)から、図3の矢印Bに示すように、フレーム部20の頂部20a(三角形の頂角)を手前側に引っ張り、接地部20c(三角形の底辺)の中央付近に合わせる。これにより、図4に示すように、フレーム部20の左右に2箇所の円弧状部分20dができる。
[ステップ3]
ステップ2を終えた状態(図4に示す状態)から、図4の矢印C及び矢印Dに示すように、2箇所の円弧状部分20dを左右から中央に向かって倒しながら重ね、図5の矢印Eに示すように、フレーム部20の頂部20aを、重なった円弧状部分20dの下に潜り込ませる。すると、図6に示すように、フレーム部20全体を扁平な円盤状に畳んだ畳み状態とすることができる。畳み状態のフレーム部20は、再度展開してしまわないように、別途用意したバッグ等の中に収納することが好ましい。
【0050】
3.3 フレーム部の展開方法
図6に示す畳み状態のフレーム部20は、ワンステップで図2に示す展開状態へと展開することができる。すなわち、図6に示す状態から、上側に重ねられた円弧状部分20dを持ち上げると、弾性を有するフレーム用線材21(図2)の復元力によって、フレーム部20が図2に示す状態までひとりでに展開する。このように、本発明の就寝用頭部カバー1は、使用時のセットアップに時間や手間がかからないという利点も有している。
【0051】
4.他の実施形態
以上においては、カバー部10とフレーム部20とを別体とする場合について説明した。しかし、本発明の就寝用頭部カバー1においては、カバー部10とフレーム部20とを一体的に構成してもよい。この場合には、フレーム部20を展開した後にカバー部10をフレーム部20に取り付ける必要がなく、フレーム部20を展開するだけでカバー部10を展張した状態とすることができるため、セットアップの手間をさらに少なくすることができる。
【0052】
カバー部10とフレーム部20とを一体的に構成する場合においては、線材保持部材22を設けることもできるが、線材保持部材22を設けず、カバー部10によってフレーム用線材21を8の字状に保持することが好ましい。これにより、就寝用頭部カバー1をより軽量でコンパクトなものとすることができる。カバー部10でフレーム用線材21を保持する場合において、上述したスリット15を設ける場合、スリット15を前面部11の上端まで設けてしまうと、フレーム用線材21を安定的に保持しにくくなる虞がある。このため、スリット15の上端が、前面部11の上端よりも下方に配されるようにすると好ましい。
【0053】
カバー部10とフレーム部20とを一体的に構成する場合におけるカバー部10は、既に説明した前面部11、背面部12、左面部13及び右面部14に加えて、就寝者の頭部の下に配される底面部(図示せず)も備えるようにすると好ましい。これにより、就寝者の頭部の重みで底面部を押さえて、就寝用頭部カバー1を動きにくくすることができ、使用時における就寝用頭部カバー1の安定性を高めることが可能になる。
【0054】
5.本発明の用途
本発明の就寝用頭部カバー1は、就寝者の頭部を覆うことで睡眠環境を整える目的で用いられるのであれば、その具体的な用途を特に限定されない。本発明の就寝用頭部カバー1は、既に述べたように、例えば、花粉除けや、感染防止の目的に好適に用いることができる。本発明の就寝用頭部カバー1は、また、災害時における避難所等でも便利に使用することができる。すなわち、災害時の避難所等においては、多くの人が狭い空間に集まった状態で睡眠を取らざるを得ない場合が多く、感染症の蔓延が懸念されるところ、本発明の就寝用頭部カバー1を用いることで、就寝中の感染を防止することができる。また、避難所等においては、緊急事態であるためにプライバシーへの配慮が充分になされず、他人から見える場所での就寝を余儀なくされることも多いところ、本発明の就寝用頭部カバー1を用いると、他人に寝顔を見られることなく就寝することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 就寝用頭部カバー
10 カバー部
11 前面部
11a 前タレ部
11b 複層部
12 背面部
13 左面部
14 右面部
15 スリット
16 位置決め用目印
20 フレーム部
20a 頂部
20b 環状部分
20c 接地部
20d 円弧状部分
21 フレーム用線材
22 線材保持部材
22a 第一面部
22a 頭部挿入口
22b 第二面部
22b 線材挿通部
22c 第三面部
22d 第四面部
22d 線材挿通部
22e 第五面部(底面部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6